説明

ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性能及び耐摩耗性をバランス良く改善するとともに、グリップ性能にも優れたゴム組成物、それをトレッド等のタイヤの各部材に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる極性基含有共重合体、及び天然ゴムの主鎖に水酸基が直接結合する改質天然ゴムを含むゴム組成物であって、上記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、上記極性基含有共重合体は、上記極性基含有ビニル化合物の含有量が0.05〜40質量%であり、上記改質天然ゴムの水酸基の含有量は、イソプレンユニットに対して、1〜20モル%であり、上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であるゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには、低燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能などの性能が要求されている。これらの性能のうち、低燃費性能とグリップ性能のバランスを向上できる点から、充填材としてシリカが多用されている。また、シリカ配合において、これらの性能を高めるために、ゴムにシリカとの親和性の高い変性基を導入し、更なる低燃費性能の向上も図られており、例えば、ラジカル重合法やLiなどを用いたアニオン重合法などを用いて変性ゴムが合成されている。更に、耐摩耗性能に優れるという点から、高シス1,4−ポリブタジエン(BR)がタイヤのトレッドゴムなどに広く使用されている。
【0003】
耐摩耗性能と低燃費性能をバランス良く向上させる観点から、高シスBRに変性基を導入することが考えられ、近年、ネオジムを主成分とする触媒とアルミニウム化合物を用いる手法などにより、末端に極性基を有する高シス1,4−ポリブタジエンを合成し、シリカの分散を向上させる試みがなされている。しかし、低燃費性能と耐摩耗性能をバランス良く向上する要求は高く、更なる改善が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ゴムをアミノ基とアルコキシ基とを含有する有機ケイ素化合物で変性することによりシリカとの親和性を高める試みがなされているが、未だ改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性能及び耐摩耗性をバランス良く改善するとともに、グリップ性能にも優れたゴム組成物、それをトレッド等のタイヤの各部材に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高シス含量による優れた耐摩耗性能、主鎖や末端変性による低燃費性能をバランス良く向上することを鋭意検討した結果、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物を共重合したポリマーを用いることで耐摩耗性能とシリカの分散性が従来より向上し、上記の性能がバランス良く向上できることを見出した。そして更に、このポリマーと、天然ゴムの主鎖に水酸基が直接結合した改質天然ゴムとを併用することで、シリカの分散性が更に向上し、これらの性能のバランスが顕著に改善されることも見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる極性基含有共重合体、及び天然ゴムの主鎖に水酸基が直接結合する改質天然ゴムを含むゴム組成物であって、上記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、上記極性基含有共重合体は、上記極性基含有ビニル化合物の含有量が0.05〜40質量%であり、上記改質天然ゴムの水酸基の含有量は、イソプレンユニットに対して、1〜20モル%であり、上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であるゴム組成物に関する。
【0009】
上記極性基は、水酸基、−NR、又は−Si(OR)(R)3−kで表される基であることが好ましい。
(但し、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)
【0010】
上記極性基含有ビニル化合物は、下記一般式(I);
【化1】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、上記−NR、又は上記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。上記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
上記極性基含有共重合体は、上記共役ジエン化合物に由来するユニットを50質量%以下及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを50質量%以上有する構成単位Aを0.1〜20質量%含み、上記共役ジエン化合物に由来するユニットを60質量%以上及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを40質量%以下有する構成単位Bを80〜99.9質量%含むもので、かつ該極性基含有共重合体の末端部に該構成単位Aを有するものが好ましい。
【0012】
上記極性基含有共重合体は、触媒として遷移金属含有化合物を使用し、上記共役ジエン化合物と上記極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる活性末端を有する共重合体に、更に上記極性基含有ビニル化合物を該活性末端に反応させて得られるものであることが好ましい。
【0013】
上記極性基含有共重合体において、上記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであることが好ましい。
上記改質天然ゴムがエポキシ基を有することが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物は、全ゴム成分100質量%中、上記極性基含有共重合体を10〜80質量%、上記改質天然ゴムを10〜90質量%含み、かつ該全ゴム成分100質量部に対してシリカを10〜150質量部含むことが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の極性基含有ビニル化合物を共役ジエン化合物とともに共重合して得られた極性基含有共重合体と、特定の改質天然ゴムと併用したゴム組成物であるので、これをトレッドなどに用いた空気入りタイヤにおいて、低燃費性能及び耐摩耗性能をバランス良く高めることができる。また、これとともに、優れたグリップ性能も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、特定の極性基含有共重合体及び改質天然ゴムを含む。
上記極性基含有共重合体は、共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られるものである。また、上記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物である。つまり、極性基含有ビニル化合物が下記式(I)の場合は、二重結合(重合性不飽和結合)とX(極性基)とを有し、かつ二重結合を形成する2つの炭素原子のうちのRとCが結合する炭素原子とXが結合する炭素原子とが「−(C(R−」におけるn個のC(少なくとも1個の炭素原子)を介して結合している。更に、極性基含有共重合体において、上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上である。
【0017】
上記極性基含有ビニル化合物における重合性不飽和結合、極性基は、それぞれ1個でもよく、2個以上であってもよい。
【0018】
重合性不飽和結合としては特に限定されないが、重合性二重結合が好適である。極性基としては特に限定されず、例えば、−NR(Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基)、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、スルホニル基、チオカルボニル基、−Si(OR)(R)3−kで表される基(Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)等が挙げられるが、なかでも、水酸基(−OH)、−NR、−Si(OR)(R)3−kで表される基(トリアルコキシシリル基など)が好ましい。この場合、優れた低燃費性能及び耐摩耗性能を両立できる。また、良好なグリップ性能も得られる。
【0019】
−NR、−Si(OR)(R)3−kで表される基において、R(炭素数1〜8の炭化水素基)としては特に限定されず、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基などのアルキル基などが挙げられる。−Si(OR)(R)3−kで表される基の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などが挙げられる。
【0020】
上記極性基含有ビニル化合物としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が好ましく、なかでも、下記一般式(I−1)及び/又は(I−2)で表される化合物を好適に使用できる。この場合、優れた低燃費性能及び耐摩耗性能をバランス良く改善できる。また、良好なグリップ性能も得られる。
【化2】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、上記−NR、又は上記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。上記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0021】
【化3】

(式(I−1)、(I−2)中、R、R、R、X、nは、前記と同様である。)
なお、式(I−1)、(I−2)においても、式(I)と同様、環構造を形成してもよい。
【0022】
式(I)で表される極性基含有ビニル化合物において、共重合の容易さの点から、Rは水素、ビニル基又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましく、Rは水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基が好ましい。良好な耐摩耗性能、低燃費性能、グリップ性能の点から、Rは水素、炭素数1〜4の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基が好ましい。R、Rの脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基が挙げられる。Rの脂肪族炭化水素基としては、R、Rで挙げた脂肪族炭化水素基の他に、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。またRの脂環族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。なお、Rは、置換基を有していてもよい。
【0023】
共重合の容易さの点から、nは2〜10が好ましく、4〜10がより好ましい。nが10を超えると、コストが高くなる傾向がある。なお、nが2以上の整数である場合、式(I)の化合物は、−(C(R)−で表されるユニットを2個以上有しているが、同一ユニット内のR、異なるユニットのRは、それぞれが同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0024】
式(I)で表される極性基含有ビニル化合物としては、例えば、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチリデン−ヘキサン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、2−メチル−5−へキセン−1−オール、4−メチリデンヘキサン−2−オール、4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、4−メチリデンへキサン−1−オール、5−メチル−5−へキセン−1−オール、5−メチリデンヘプタン−1−オール、5−ヘキセン−4−メチル−1−オール、4,5−ジメチル−5−ヘキセン−1−オール、4−メチル−5−メチリデンヘプタン−1−オール、3,4−ジメチル−5−へキセン−1−オール、3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジメチル−5−メチリデンへプタン−1−オール、2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン−1−オール、3−ヒドロキシ−6−メチル−7−オクテン、6−へプテン−1−オール、6−メチル−6−ヘプテン−1−オール、6−メチリデンオクタン−1−オール、7−オクテン−1−オール、7−メチル−7−オクテン−1−オール、7−メチリデンノナン−1−オール、8−ノネン−1−オール、8−メチル−8−ノネン−1−オール、8−メチリデンデカン−1−オール、9−デセン−1−オール、9−メチル−9−デセン−1−オール、9−メチリデンウンデカン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、10−メチル−10−ウンデセン−1−オール、10−メチリデンドデカン−1−オール、7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン−1−オール、2−シクロへキシル−5−ヘキセン−1−オール、3−シクロヘキシル−6−へプテン−2−オール、4−ヘキセン−1−オール、5−ヘプテン−1−オール、6−オクテン−1−オール、7−ノネン−1−オール、8−デセン−1−オール、4−メチル−5−ヘプテン−2−オール、5−メチル−6−オクテン−2−オール、6−メチル−7−ノネン−2−オール、3−メチル−4−へキセン−1−オール、4−メチル−5−へプテン−1−オール、5−メチル−6−オクテン−1−オール、6−メチル−7−ノネン−1−オール、7−メチル−8−デセン−1−オール、3−メチル−4−ヘプテン−1−オール、4−メチル−5−オクテン−1−オール、5−メチル−6−ノネン−1−オール、4−ヘプテン−1−オール、5−オクテン−1−オール、6−ノネン−1−オール、5,6−ジメチル−5−ヘプテン−1−オール、(Z)−5−メチル−5−ヘプテン−1−オール、(E)−7−メチル−7−ノネン−2−オールなどが挙げられる。これらの中では、入手の容易性、共重合の容易性又は性能改善などから、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−へキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、9−デセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、4−へプテン−1−オール、5−オクテン−1−オールが好ましい。
【0025】
また、以上で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を−NHに置換した化合物も挙げられ、例えば、1−アミノ−3−ブテン、1−アミノ−3−メチル−3−ブテン、1−アミノ−(3−メチリデン)ヘキサン、2−アミノ−4−ヘキセン、2−アミノ−4−メチル−4−へキセン、2−アミノ−(4−メチリデン)ヘキサン、1−アミノ−4−ペンテン、1−アミノ−4−メチル−4−ペンテン−1−オール、1−アミノ−(4−メチリデン)へキサン、1−アミノ−5−メチル−5−へキセン、1−アミノ−(5−メチリデン)ヘプタン、1−アミノ−4−メチル−5−ヘキセン、1−アミノ−4,5−ジメチル−5−ヘキセン、1−アミノ−4−メチル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−アミノ−3,4−ジメチル−5−へキセン、1−アミノ−3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン、1−アミノ−3,4−ジメチル−(5−メチリデン)へプタン、1−アミノ−2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン、3−アミノ−6−メチル−7−オクテン、1−アミノ−6−へプテン、1−アミノ−6−メチル−6−ヘプテン、1−アミノ−(6−メチリデン)オクタン、1−アミノ−7−オクテン、1−アミノ−7−メチル−7−オクテン、1−アミノ−(7−メチリデン)ノナン、1−アミノ−8−ノネン、1−アミノ−8−メチル−8−ノネン、1−アミノ−(8−メチリデン)デカン、1−アミノ−9−デセン、1−アミノ−9−メチル−9−デセン、1−アミノ−(9−メチリデン)ウンデカン、1−アミノ−10−ウンデセン、1−アミノ−10−メチル−10−ウンデセン、1−アミノ−10−メチリデンドデカン、1−アミノ−7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン、1−アミノ−2−シクロへキシル−5−ヘキセン、2−アミノ−3−シクロヘキシル−6−へプテン、1−アミノ−4−ヘキセン、1−アミノ−5−ヘプテン、1−アミノ−6−オクテン、1−アミノ−7−ノネン、1−アミノ−8−デセン、1−アミノ−4−メチル−5−ヘプテン、2−アミノ−5−メチル−6−オクテン、2−アミノ−6−メチル−7−ノネン、1−アミノ−3−メチル−4−へキセン、1−アミノ−4−メチル−5−へプテン、1−アミノ−5−メチル−6−オクテン、1−アミノ−6−メチル−7−ノネン、1−アミノ−7−メチル−8−デセン、1−アミノ−3−メチル−4−ヘプテン、1−アミノ−4−メチル−5−オクテン、1−アミノ−5−メチル−6−ノネン、1−アミノ−4−ヘプテン、1−アミノ−5−オクテン、1−アミノ−6−ノネンなどが挙げられる。
【0026】
更に、上記で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を−NHCHに置換した化合物(1−(N−メチルアミノ)−3−ブテン、1−(N−メチルアミノ)−3−メチル−3−ブテンなど)、−N(CHに置換した化合物(1−(N,N−ジメチルアミノ)−3−ブテン、1−(N,N−ジメチルアミノ)−3−メチル−3−ブテンなど)も挙げられる。
【0027】
また、上記で列挙した水酸基含有ビニル化合物の水酸基を上記−Si(OR)(R)3−kで表される基に置換した化合物も挙げられ、例えば、1−トリエトキシシリル−3−ブテン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−3−ブテン、1−トリエトキシシリル−(3−メチリデン)ヘキサン、2−トリエトキシシリル−4−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−4−メチル−4−へキセン、2−トリエトキシシリル−(4−メチリデン)ヘキサン、1−トリエトキシシリル−4−ペンテン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−4−ペンテン−1−オール、1−トリエトキシシリル−(4−メチリデン)へキサン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−5−へキセン、1−トリエトキシシリル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−4,5−ジメチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−(5−メチリデン)ヘプタン、1−トリエトキシシリル−3,4−ジメチル−5−へキセン、1−トリエトキシシリル−3,4,5−トリメチル−5−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−3,4−ジメチル−(5−メチリデン)へプタン、1−トリエトキシシリル−2−エチル−5−メチル−5−ヘキセン、3−トリエトキシシリル−6−メチル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−へプテン、1−トリエトキシシリル−6−メチル−6−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−(6−メチリデン)オクタン、1−トリエトキシシリル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−7−メチル−7−オクテン、1−トリエトキシシリル−(7−メチリデン)ノナン、1−トリエトキシシリル−8−ノネン、1−トリエトキシシリル−8−メチル−8−ノネン、1−トリエトキシシリル−(8−メチリデン)デカン、1−トリエトキシシリル−9−デセン、1−トリエトキシシリル−9−メチル−9−デセン、1−トリエトキシシリル−(9−メチリデン)ウンデカン、1−トリエトキシシリル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−10−メチル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−10−メチリデンドデカン、1−トリエトキシシリル−7,9,10−トリメチル−10−ウンデセン、1−トリエトキシシリル−2−シクロへキシル−5−ヘキセン、2−トリエトキシシリル−3−シクロヘキシル−6−へプテン、1−トリエトキシシリル−4−ヘキセン、1−トリエトキシシリル−5−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−6−オクテン、1−トリエトキシシリル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−8−デセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−ヘプテン、2−トリエトキシシリル−5−メチル−6−オクテン、2−トリエトキシシリル−6−メチル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−4−へキセン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−へプテン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−6−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−メチル−7−ノネン、1−トリエトキシシリル−7−メチル−8−デセン、1−トリエトキシシリル−3−メチル−4−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−4−メチル−5−オクテン、1−トリエトキシシリル−5−メチル−6−ノネン、1−トリエトキシシリル−4−ヘプテン、1−トリエトキシシリル−5−オクテン、1−トリエトキシシリル−6−ノネンなどが挙げられる。更に、上記で列挙したアルコキシシリル化合物のトリエトキシシリル基を、ジエトキシメチルシリル基に置換した化合物(1−(ジエトキシメチルシリル)−3−ブテン、1−(ジエトキシメチルシリル)−(3−メチリデン)ヘキサンなど)、エトキシジメチルシリル基に置換した化合物(1−(エトキシジメチルシリル)−3−メチル−3−ブテン、2−(エトキシジメチルシリル)−4−ヘキセンなど)、メトキシジメチルシリル基に置換した化合物(2−メトキシジメチルシリル−4−メチル−4−へキセン、1−メトキシジメチルシリル−4−ペンテンなど)なども挙げられる。
上記極性基含有ビニル化合物は単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
本発明で使用できる共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンを用いることが好ましく、耐摩耗性能に優れる点から、1,3−ブタジエンが特に好ましい。また、耐摩耗性能の点から、上記極性基含有共重合体における1,3−ブタジエンの含有量は95モル%以上であることが好適である。共役ジエン化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記極性基含有共重合体は、上記式(I)で表される極性基含有ビニル化合物を、上記共役ジエン化合物と共重合させることにより製造できる。重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に重合体の設計の自由度、加工性等の観点から溶液重合法が好ましい。
【0030】
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が3質量%未満では、得られる重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶媒中のモノマー濃度は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。溶媒中のモノマー濃度が20質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて攪拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0031】
溶液重合法において、触媒の種類は特に規定しないが、ランタニド(Nd等)、Ti、Co、Ni含有化合物等の遷移金属含有化合物を触媒として使用できる。また、Al、B含有化合物を助触媒として使用できる。
【0032】
ランタニド含有化合物(Nd含有化合物など)としては、原子番号57〜71の元素を含むものであれば特に限定されず、例えば、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、アルコキサイド、リン酸塩又は亜リン酸塩、ハロゲン化物などが挙げられるが、取り扱いの容易性、タイヤ性能の改善の点から、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体が好ましい。Ti含有化合物としては、例えば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換シクロペンタジエニル基又は置換インデニル基を1つを含み、かつハロゲン、アルコキシル基、アルキル基の中から選ばれる置換基を3つ有する化合物などが挙げられ、触媒性能やタイヤ性能の改善の点から、アルコキシシリル基を1つ有する化合物が好ましい。Co含有化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体、有機ホスフィン錯体などが挙げられる。Ni含有化合物としては、例えば、ハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体などが挙げられるが、特に限定しない。
【0033】
助触媒として用いるAl含有化合物としては、例えば、有機アルミノキサン類、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、水素化有機アルミニウム化合物などであれば特に限定されないが、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、へキシルアルミノキサン、クロロアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドが好ましく、これらは混合物で用いても良い。また、B含有化合物としては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート等のアニオン種を含む化合物が挙げられる。
【0034】
上記極性基含有共重合体の調製では、上記極性基含有ビニル化合物の中でプロトン性を有する化合物を用いる場合は、重合反応の阻害を防ぐため、該化合物を予め不活性化させた後に共重合させることが好ましい。不活性化の方法は特に限定されないが、例えば、式(I)で表される極性基含有ビニル化合物と共役ジエン系化合物との共重合反応を行う前に予め、式(I)で表される極性基含有ビニル化合物と下記一般式(II);
M(R (II)
(式(II)中、Mは、アルミニウム、ホウ素、ケイ素又はチタンを表す。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基、又はハロゲン類を表し、同一であっても異なっていてもよい。mは、3又は4の整数を表す。)
で表される化合物とを反応させることが挙げられる。これにより、重合反応の阻害要因の1つである極性基含有ビニル化合物の水酸基等の極性基が不活性化され、該反応により得られた反応生成物と上記共役ジエン化合物とを共重合することで、目的とする極性基含有共重合体を良好に製造できる。
【0035】
の炭素数は1〜6が好ましい。Rの脂肪族若しくは脂環族炭化水素基としては、例えば、上記Rと同様の基を挙げることができ、脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基としては、該脂肪族若しくは脂環族炭化水素基に対応するアルコキシ基が挙げられる。また、Rのハロゲン類としては、塩素、臭素、フッ素等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(II)で表される化合物としては、下記一般式(III)、(IV)で表される有機金属化合物を好適に使用できる。
【化4】

(式(III)、(IV)中、Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Mは、ケイ素又はチタンを表す。)
、Rの炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基としては、例えば、上記Rと同様の基を挙げることができる。Rの炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族アルコキシ基としては、該脂肪族若しくは脂環族炭化水素基に対応するアルコキシ基が挙げられる。
【0037】
式(III)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどが挙げられる。式(IV)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタンなどが挙げられる。
【0038】
上記極性基含有ビニル化合物と上記一般式(II)で表される化合物との反応に使用する容器は特に限定されないが、少なくとも窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0039】
前記触媒を重合開始剤として用い、極性基含有共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、式(I)及び式(II)の反応生成物と、共役ジエン化合物とを、前記ランタニド、Ti、Co、Ni含有化合物を触媒、前記Al、B含有化合物を助触媒として用いて共重合することにより、目的の極性基含有重合体を得ることができる。
【0040】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
上記極性基含有共重合体は、上記共役ジエン化合物に由来するユニットを50質量%以下及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを50質量%以上有する構成単位Aを0.1〜20質量%含み、上記共役ジエン化合物に由来するユニットを60質量%以上及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを40質量%以下有する構成単位Bを80〜99.9質量%含むもので、かつ該極性基含有共重合体の末端部に該構成単位Aを有するものが好ましい。即ち、極性基含有共重合体の少なくとも末端部に極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを50質量%以上有する構成単位Aが存在するとともに、該ユニットを40質量%以下しか有さない構成単位Bも共重合体中に存在している。これにより、シリカの分散性が高められるため、優れた低燃費性能及び耐摩耗性能をバランス良く改善できる。また、良好なグリップ性能も得られる。このような共重合体としては、例えば、上記共役ジエン化合物に由来するユニット60質量%以上及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニット40質量%以下をランダム構造に有するポリマー部分Iの末端に、上記共役ジエン化合物に由来するユニット50質量%以下(好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは0質量%)及び上記極性基含有ビニル化合物に由来するユニット50質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは100質量%)有するポリマー部分IIを結合させたものが挙げられる。ここで、ポリマー部分IIが極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを100質量%有している場合は、上記の共重合体は、ランダム構造のポリマー部分Iの末端に上記極性基含有ビニル化合物からなるブロック構造を有している。
【0042】
上記構成単位A及びBを有する極性基含有共重合体は、例えば、触媒として上記遷移金属含有化合物を使用し、上記共役ジエン化合物と上記極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる活性末端を有する共重合体に、更に上記極性基含有ビニル化合物を該活性末端に反応させて得ることができる。具体的には、上記不活性な有機溶剤中において、式(I)及び式(II)の反応生成物と共役ジエン化合物とを、上記触媒、助触媒を用いて共重合することによって活性末端を有する共重合体溶液が得られ、次いで、得られた共重合体溶液と、式(I)及び式(II)の反応生成物とを更に反応させることにより、目的の極性基含有共重合体を得ることができる。
【0043】
本発明においては、共重合反応後に必要に応じて、シリカとの親和性を少しでも高める目的で公知の末端変性剤を用いて変性を加えることができる。変性とは、前記極性基含有共重合体の活性な末端部位と前記変性剤が反応して末端変性されることである。末端変性すると、シリカ上にある水酸基などの特性基との親和性が向上するため、シリカの分散性が良くなり、低燃費性能、耐摩耗性能、グリップ性能が向上する傾向がある。
【0044】
変性剤としては特に限定されず、例えば、ケイ素化合物では、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールなどが挙げられる。
【0045】
本発明においては、この反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。重合反応後にアルコールを加えることで、上記極性基含有ビニル化合物の水酸基などの極性基に結合していた式(II)で表される化合物が脱離し極性基が生成するため、シリカとの親和性がより高まる。
【0046】
上記極性基含有共重合体における極性基含有ビニル化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下である。0.05質量%未満では、耐摩耗性能、低燃費性能、グリップ性能の改善効果が得られにくく、一方、40質量%を超えると、反応時間とコストが増加する反面、それにともなう改善効果が十分でない傾向がある。
なお、本発明において、極性基含有ビニル化合物の含有量は、後述の実施例の方法により測定される。
【0047】
上記極性基含有共重合体は、該共重合体における上記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量(極性基含有共重合体における共役ジエン化合物ユニット中の二重結合のシス含量)が80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上である。80モル%未満であると、耐摩耗性能が充分でない可能性がある。
なお、本発明において、シス成分量(シス含量)は、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0048】
前記極性基含有共重合体の重量平均分子量Mwは、1.0×10〜2.0×10であることが好ましく、下限は1.0×10がより好ましく、2.0×10が更に好ましい。上限は1.0×10がより好ましい。重量平均分子量が1.0×10未満ではヒステリシスロスが大きく十分な低燃費性能が得られにくいだけでなく、耐摩耗性能も低下する傾向がある。一方、2.0×10を超えると、加工性が著しく低下する傾向がある。
【0049】
また、前記極性基含有共重合体のMw/Mnは、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。4.5を超えると、低分子量成分の量が増えるため、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、後述の実施例の方法により測定される。
【0050】
本発明のゴム組成物において、上記極性基含有共重合体の含有量は、全ゴム成分(極性基含有共重合体、改質天然ゴム、後述する他のジエン系ゴム成分を含むゴム成分の全量)100質量%中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性能、耐摩耗性能、グリップ性能の改善効果が得られにくくなる傾向がある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。80質量%を超えると、破壊強度が低下する傾向にある。
【0051】
本発明のゴム組成物では、上記極性基含有共重合体とともに、天然ゴムの主鎖に水酸基が直接結合する改質天然ゴム(水酸基化天然ゴム)が使用される。これにより、低燃費性能及び耐摩耗性能をバランスよく改善する効果が顕著に得られ、両性能を良好に両立ができる。また、改質天然ゴムとしては、エポキシ基を有するものが好ましい。主鎖に直接結合する水酸基を有するエポキシ化天然ゴム(水酸基化エポキシ化天然ゴム)を使用した場合は、低燃費性能、耐摩耗性能及びグリップ性能をバランスよく改善し、すべての性能を良好に得ることができる。
【0052】
本発明では、水酸基を天然ゴム主鎖に直接結合させることにより、シリカ等のフィラーと天然ゴムの相互作用を強くする(なじみを良くする)効果が得られ、フィラーの均一分散を促し、低燃費性能及び耐摩耗性能をバランス良く向上できる。また、水酸基を天然ゴム主鎖に直接結合させることに加えて、更にエポキシ化を施すことにより、前記相互作用、均一分散の作用効果をより高めることができ、低燃費性能及び耐摩耗性能だけでなく、更にグリップ性能をもより高度なレベルでバランス良く両立できる。
【0053】
改質天然ゴムの水酸基の含有量(水酸基化率:天然ゴムのイソプレンユニットに対して水酸基が結合した割合)は、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、水酸基化率は、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、8モル%以下が更に好ましい。1モル%未満であると、上記相互作用を高める効果が少なく、20モル%を超えると、ゴムが硬くなり易くなるとともに耐摩耗性能が低下する傾向がある。
【0054】
改質天然ゴムのエポキシ化率(天然ゴムのイソプレンユニットに対するエポキシ基の割合)5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、上記エポキシ化率は、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。5モル%未満であると、グリップ性能の改善効果が少なく、40モル%を超えると、ゴムが硬くなりすぎるとともに低燃費性能が低下する傾向がある。
【0055】
なお、改質天然ゴムの水酸基化率、エポキシ化率は、後述の実施例に記載の方法にて測定できる。
本発明における改質天然ゴムは、アミン類により修飾されていないもの(例えば、主鎖にアミン類が結合していないもの)であってもよい。
【0056】
改質天然ゴム(水酸基化天然ゴム、水酸基化エポキシ化天然ゴム)を製造する方法としては特に限定されず、例えば、天然ゴム又はエポキシ化天然ゴムの主鎖に、公知の方法で水酸基を導入することにより製造できる。例えば、天然ゴム又はエポキシ化天然ゴムを有機溶媒に溶解させた後、酸触媒及び水を所定量加え、反応溶液を室温以上、反応溶液の還流温度以下の温度に維持しながら反応させることにより調製できる。反応時間は主に酸触媒及び水の添加量、反応温度に影響され、これらの制御により天然ゴム又はエポキシ化天然ゴムの不飽和結合に対する水酸基変性率を制御することが可能である。
【0057】
天然ゴムとしては、RSS#3、TSR20、KR7などのゴム業界で一般的に使用されているものを挙げることができる。
また、エポキシ化天然ゴム(ENR)としては、市販のENRを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化して用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては特に限定されず、例えば、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行うことができる(特公平4−26617号公報、特開平2−110182号公報、UK Patent GB2113692、等)。過酸法としては、例えば、NRに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法などが挙げられる。
【0058】
本発明のゴム組成物において、改質天然ゴムの配合量は、全ゴム成分100質量%中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以下である。10質量%未満であると、低燃費性能及び耐摩耗性能のバランスの向上効果が少ない傾向がある。また、上記配合量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性が悪化する傾向にある。
【0059】
本発明のゴム組成物は、極性基含有共重合体及び改質天然ゴム以外の他のジエン系ゴム成分を含んでもよい。他のジエン系ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などが挙げられる。なかでも、低燃費性能、耐摩耗性能、グリップ性能をバランス良く改善できる点から、NR、SBR、BRが好ましい。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0060】
本発明のゴム組成物には、シリカを配合することが好ましい。シリカ配合において、極性基含有共重合体及び改質天然ゴムを使用することでシリカの分散性を高めることができ、効率的に補強効果が得られる。
【0061】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/gである。チッ素吸着比表面積が30m/g未満のシリカでは、耐摩耗性能、グリップ性能が低下する傾向があり、250m/gを超えるシリカでは、加工性が悪化するとともに、シリカの分散性が低下し、前記性能をバランス良く改善できない傾向がある。
なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0062】
シリカの配合量は、全ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、低燃費性能の改善効果が充分に得られない傾向がある。また、シリカの配合量は、全ゴム成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が低下する傾向がある。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい(例えば、異なるNSAを有する数種類のシリカの併用)。
【0063】
本発明では、シリカとともにシランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾ−ルテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、事前にこれらを縮合させたオリゴマーとして使用してもよい。
【0064】
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部を超えると、その配合量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0065】
本発明では、補強剤としてカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、80〜280m/gが好ましく、下限は100m/g、上限は250m/gがより好ましい。カーボンブラックのNSAが80m/g未満では十分なウェットグリップ性能が得られず、また耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、280m/gを超えると、分散性に劣り、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0066】
カーボンブラックの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、下限は10質量部、上限は100質量部がより好ましい。カーボンブラックの含有量が5質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明のゴム組成物には、その他の補強剤、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、軟化剤、可塑剤などのタイヤ用又は一般のゴム組成物用に配合される各種配合剤及び添加剤を配合できる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0068】
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物又は硫黄系加硫剤を挙げることができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。また、硫黄系加硫剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド等が挙げられる。なかでも、配合効果及び強度特性の点から硫黄等の硫黄系加硫剤が好ましい。
【0069】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。なかでも、加硫特性に優れる点から、スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられ、グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)等が挙げられる。
【0070】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫(架橋)する方法等により製造できる。
【0071】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて前記各種薬品を配合したゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材(トレッド等)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを得る。
【実施例】
【0072】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、モノマー溶液(1)〜(2)の合成、触媒溶液(1)の合成、重合体(1)〜(4)の合成、改質天然ゴム(1)〜(3)の合成で用いた各種薬品について説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
シクロヘキサン:関東化学(株)製の無水シクロヘキサン
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
9−デセン−1−オール:関東化学(株)製の9−デセン−1−オール
エチルヘキサン酸ネオジム:和光純薬工業(株)製のエチルヘキサン酸ネオジム
トリイソブチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製のトリイソブチルアルミ/へキサン溶液
塩化ジエチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製の塩化ジエチルアルミニウム/へキサン溶液
水素化イソジブチルアルミニウム:東ソー・ファインケム(株)製の水素化イソジブチルアルミニウム/トルエン溶液
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
PMAO(ポリメチルアルミノシロキサン):東ソー・ファインケム(株)製PMAO
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT):関東化学(株)製の2,6−tert−ブチル−p−クレゾール
天然ゴム(NR):TSR20
エポキシ化天然ゴム(ENR25):クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthris Berhad)(マレーシア)製のエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率:28%モル)
【0073】
得られたポリマーの分析は以下の方法で行った。
(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの測定)
Mw、Mnは、東ソー(株)製GPC−8000シリーズの装置を用い、検知器として示差屈折計を用い、分子量は標準ポリスチレンにより校正した。
【0074】
(重合体中の極性基含有ビニル化合物量及びブタジエンユニット中のシス含量の測定)
重合体中の極性基含有ビニル化合物の量及びブタジエンユニット中の二重結合のシス含量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。測定は、合成した重合体、中間体を1gずつ15mlのトルエンに溶解させ、それぞれ30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで精製後、乾燥させて精製したものについて行った。
【0075】
また、得られた改質天然ゴム(乾燥ゴム)のエポキシ化率、水酸基化率は、以下の方法により測定した。
(エポキシ化率、水酸基化率の測定方法)
得られた乾燥ゴムを重水素化クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴(NMR)分光分析により、炭素−炭素二重結合部と脂肪族部の積分値h(ppm)の比から以下の算出式を用いてエポキシ化率を算出した。その変化率と全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)による水酸基の吸収ピーク(3400cm−1)の変化率から水酸基化率を算出した。
(エポキシ化率E%)=3×h(2.69)/(3×h(2.69)+3×h(5.14)+h(0.87))×100
なお、H−NMRの測定には、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いた。
【0076】
〔重合体の作製〕
製造例1(モノマー溶液(1)の合成)
200ccガラス製容器を窒素置換し、シクロヘキサン50mlと9−デセン−1−オールを150mmol入れ攪拌した。更に1M−トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液170mlを滴下し、滴下終了後室温で30分間攪拌した。得られた溶液は、遮光下窒素雰囲気を保ったまま冷蔵庫に保管した。
【0077】
製造例2(モノマー(2)の合成)
500ccガラス製二口フラスコを窒素置換し、オルトけい酸テトライソプロピル700mmolを入れ攪拌し、70℃オイルバス上で9−デセン−1−オール350mmolを30分間かけて滴下した。更に、オイルバスの温度を85℃に上げ、反応に伴い生成するイソプロパノールを留去しながら2時間攪拌した。未反応のオルトけい酸テトライソプロピルを減圧蒸留し、モノマー(2)を約120g得た。
【0078】
製造例3(触媒溶液(1)の合成)
50mlガラス容器を窒素置換し、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(3.5mol/L)4ml、エチルヘキサン酸ネオジム/ヘキサン溶液(0.2mol/L)1ml、PMAO(Al:6.8質量%)を8ml加え攪拌を行った。5分後1M−水素化イソジブチルアルミニウム/ヘキサン溶液を5ml加え、更に5分後、1M−塩化ジエチルアルミニウム/ヘキサン溶液を2ml加え、触媒溶液(1)を得た。
【0079】
製造例4(重合体(1)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを0.3mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を3ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後更に2日間減圧乾燥を行い、重合体(1)約75gを得た。重合体(1)の重量平均分子量は22×10、Mw/Mn=2.4であった。
【0080】
製造例5(重合体(2)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを6.0mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を3ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後更に2日間減圧乾燥を行い、重合体(2)約75gを得た。重合体(2)の重量平均分子量は21×10、Mw/Mn=2.8であった。
【0081】
製造例6(重合体(3)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、モノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを3.0mmol、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml入れ攪拌した。10分後、触媒溶液(1)を3ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。2時間後、反応釜から分析用に反応液の一部(約30ml)を抜き取りメタノール中に展開することで中間体(3)を1.0g(反応率約85%)得た。
中間体を抜き取った直後の反応釜にモノマー溶液(1)として9−デセン−1−オールを3.0mmol追加し、更に2時間反応させた後、0.01M−BHTイソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液を、同容量のメタノール中に展開することで沈殿物を得た。沈殿物を1晩風乾後更に2日間減圧乾燥を行い、重合体(3)約74gを得た。重合体(3)の重量平均分子量は21×10、Mw/Mn=3.1であった。
【0082】
製造例7(重合体(4)の合成)
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置喚し、シクロヘキサンを1800ml、ブタジエンを75g、トリイソブチルアルミ/ヘキサン溶液を1ml、モノマー(2)を3.9mmol入れ、10分攪拌後、触媒溶液(1)を2ml添加し、40℃を保ったまま攪拌を行った。2時間後、反応釜から反応液の一部(約30ml)を抜き取り中間体(4)溶液0.9g(反応率83%)を得た。
中間体を抜き取った直後の反応釜に、更にモノマー(2)を1.9mmo1追加し攪拌を続けた。3時問後、0.01M−BHT/イソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。
反応溶液は、冷却後、別途用意しておいたメタノール3L中に加え、得られた沈殿物を1晩風乾し、更に2日間減圧乾燥を行い、重合体(4)73gを得た。重合体(4)の重量平均分子量は28×10、Mw/Mn=2.7であった。
【0083】
重合体(1)〜(4)及び中間体(3)〜(4)のそれぞれについてH−NMR測定を行った結果(極性基含有ビニル化合物量、シス含量)を表1に示した。
なお、この結果は、重合体(3)、(4)が、構成単位A及びBを有し、かつ該Aを末端部に有していることも示している。
【0084】
【表1】

【0085】
〔改質天然ゴムの作製〕
製造例8(改質天然ゴム(1)の作製)
5000mlのガラス反応容器に温度計及びフッ化炭素樹脂羽根の機械攪拌機を取り付けて温度制御可能な浴槽中に設置し、これを反応器とした。トルエンにエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率28mol%)100質量部を溶解させた後、酸触媒(パラトルエンスルホン酸)及び水をそれぞれ1質量部、7質量部添加した。溶液を激しく攪拌しながら反応溶液の還流温度を保ちつつ、5時間攪拌させた。反応溶液をメタノールにより凝固させて水洗後、50〜60℃で6時間の真空乾燥を行うことにより、改質天然ゴム(1)(水酸基化エポキシ化天然ゴム)を得た。
【0086】
製造例9(改質天然ゴム(2))
5000mlのガラス反応容器に温度計及びフッ化炭素樹脂羽根の機械攪拌機を取り付けて温度制御可能な浴槽中に設置し、これを反応器とした。トルエンに天然ゴム100質量部を溶解させた後、酸触媒(パラトルエンスルホン酸)及び水をそれぞれ8質量部、50質量部添加した。溶液を激しく攪拌しながら反応溶液の還流温度を保ちつつ、5時間攪拌させた。反応溶液をメタノールにより凝固させて水洗後、50〜60℃で6時間の真空乾燥を行うことにより、改質天然ゴム(2)(水酸基化天然ゴム)を得た。
【0087】
製造例10(改質天然ゴム(3))
5000mlのガラス反応容器に温度計及びフッ化炭素樹脂羽根の機械攪拌機を取り付けて温度制御可能な浴槽中に設置し、これを反応器とした。トルエンにエポキシ化天然ゴム(エポキシ化28mol%)100質量部を溶解させた後、酸触媒(パラトルエンスルホン酸)及び水をそれぞれ10質量部、80質量部添加した。溶液を激しく攪拌しながら反応溶液の還流温度を保ちつつ、5時間攪拌させた。反応溶液をメタノールにより凝固させて水洗後、50〜60℃で6時間の真空乾燥を行うことにより、改質天然ゴム(3)(水酸基化エポキシ化天然ゴム)を得た。
【0088】
調製した改質天然ゴム(1)〜(3)の水酸基化率、エポキシ化率を表2に示した。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例1〜5及び比較例1〜8
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
重合体:上記製造例で製造
エポキシ化天然ゴム(ENR25):クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthris Berhad)(マレーシア)製のエポキシ化天然ゴム(エポキシ化率:28%モル)
改質天然ゴム:上記製造例で製造
天然ゴム(NR):TSR20
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(NSA):175m/g)
シランカップリング剤:テグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤D:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0091】
表3に示す配合処方にしたがって、混練り配合し、各種供試ゴム組成物を得た。これらの配合物を170℃で20分間プレス加硫して加硫物を得て、これらについて以下に示す試験方法により低燃費性能、耐摩耗性能を評価した。
【0092】
(低燃費性能)
ティ・エス・インスツルメント(株)製の粘弾性測定試験機を用いて、温度50℃、周波数10Hz、振幅1%におけるtanδを比較例1を100とした指数で示した。指数が大きいほどtanδが低く、低燃費性能に優れる。
【0093】
(耐摩耗性能)
LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、各加硫ゴム試験片の容積損失量を測定した。比較例1の容積損失量を100とした指数で示した。当該数値が大きいほど耐摩耗性能に優れている。
【0094】
【表3】

【0095】
表3に示すように、特定量の水酸基含有モノマーを使用し、かつブタジエンユニットを高シス含量とした共重合体と、特定量の水酸基を有するNR又は特定量の水酸基及びエポキシ基を有するNRとを併用した実施例では、これらを併用しない比較例に比べて、低燃費性能及び耐摩耗性能をともに顕著に改善できる明らかとなった。また、共重合体の末端に構成単位Aを導入した重合体(3)を使用すると、導入していない重合体(2)を使用する場合に比べて、改善効果が非常に大きかった(実施例1及び2、実施例3及び4)。更に、水酸基化エポキシ化天然ゴムを使用した場合も、水酸基化天然ゴムを使用するに比べて、改善効果が大きかった(実施例1及び3、実施例2及び4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物と極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる極性基含有共重合体、及び天然ゴムの主鎖に水酸基が直接結合する改質天然ゴムを含むゴム組成物であって、
前記極性基含有ビニル化合物は、重合性不飽和結合と極性基とを有し、かつ該重合性不飽和結合を形成するいずれかの炭素原子と該極性基が結合する炭素原子とが少なくとも1個の炭素原子を介して結合する化合物であり、
前記共役ジエン化合物の二重結合部分のシス含量は、80モル%以上であり、
前記極性基含有共重合体は、前記極性基含有ビニル化合物の含有量が0.05〜40質量%であり、
前記改質天然ゴムの水酸基の含有量は、イソプレンユニットに対して、1〜20モル%であるゴム組成物。
【請求項2】
水酸基、−NR、又は−Si(OR)(R)3−kで表される基である請求項1記載のゴム組成物。
(但し、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)
【請求項3】
前記極性基含有ビニル化合物は、下記一般式(I);
【化1】

(式(I)中、Rは、水素、ビニル基又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素又は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Rは、水素、又は炭素数1〜8の脂肪族若しくは脂環族炭化水素基を表す。Xは、水酸基、前記−NR、又は前記−Si(OR)(R)3−kで表される基を表す。nは、1〜10の整数を表す。前記R、R、R、該Rが結合する炭素原子、該Rが結合する炭素原子は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
で表される化合物である請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記極性基含有共重合体が、前記共役ジエン化合物に由来するユニットを50質量%以下及び前記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを50質量%以上有する構成単位Aを0.1〜20質量%含み、前記共役ジエン化合物に由来するユニットを60質量%以上及び前記極性基含有ビニル化合物に由来するユニットを40質量%以下有する構成単位Bを80〜99.9質量%含むもので、かつ該極性基含有共重合体の末端部に該構成単位Aを有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記極性基含有共重合体が、触媒として遷移金属含有化合物を使用し、前記共役ジエン化合物と前記極性基含有ビニル化合物とを共重合して得られる活性末端を有する共重合体に、更に前記極性基含有ビニル化合物を該活性末端に反応させて得られるものである請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記改質天然ゴムがエポキシ基を有する請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
全ゴム成分100質量%中、前記極性基含有共重合体を10〜80質量%、前記改質天然ゴムを10〜90質量%含み、かつ該全ゴム成分100質量部に対してシリカを10〜150質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−38010(P2011−38010A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187444(P2009−187444)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】