説明

ゴム配合用樹脂補強剤

【課題】 ゴム組成物に配合することにより、従来レベル又はそれ以上の低転がり抵抗性を達成しながら、弾性率を向上することができるゴム配合用樹脂補強剤を提供する。
【解決手段】 フェノール(A)とクレゾール類(B)の重量比(A/B)が15/85〜85/15で、クレゾール類(B)がメタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)からなり、メタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)の重量比(C/D)が50/50〜75/25であることを特長とするノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム配合用樹脂補強剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ゴム及び合成ゴムの硬度及び弾性率などの機械的特性を向上させるために、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック等配合剤を多量に配合する方法などとともに、熱硬化性樹脂、なかでもフェノール樹脂を併用することが実施されている。通常はノボラック型フェノール樹脂を硬化剤とともに用いるが、一般的に未変性フェノール樹脂は極性が高いため、ゴムのような極性の低い物質とは相溶性が悪く、ゴムの機械的特性を十分に向上させることができない。このため、ノボラック型フェノール樹脂として、カシューオイルやトールオイルに代表される植物系オイルを用いたオイル変性ノボラック型フェノール樹脂を用い、フェノール樹脂骨格中に比較的長鎖のアルキル基を導入することにより、フェノール樹脂の極性をゴムに近づけ、ゴムとの相溶性を改善する試みがなされてきており、実用化がされている。
一方、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出削減の観点から、自動車のさらなる燃費向上の要求が強まっている。タイヤは燃費に大きく影響する自動車部材の一つであり、タイヤの転がり抵抗を低減させることにより燃費を改善する取り組みが活発に行なわれている。転がり抵抗を低減させる手法として、ゴムポリマーのガラス転移点を低減したり、充填剤の配合量を低減したり、充填剤にシリカを用いたりすることが知られている。これらのうち、充填剤の配合を低減する手法が比較的容易で、その効果も大きいが、反面、ゴム組成物の弾性率が低下してしまう問題がある。
このような低下した弾性率を向上させる手法としてフェノール樹脂の添加が考えられるが、一般的にフェノール樹脂が配合されたゴム組成物は、弾性率は高いものの、低発熱性が悪化してしまうため、弾性率は向上できるものの、せっかく低減した転がり抵抗が再度悪化してしまい好ましくない。そのため、発熱性の悪化を抑制しながら、弾性率の向上を目指す手法として、ゴム配合物への添加条件の最適化(例えば、特許文献1参照)や、特定の化合物と組み合わせて使用する(例えば、特許文献2参照)ことなどが開発されているが、満足できるレベルに至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−117927
【特許文献2】特開2009−286880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ゴム組成物に配合することにより、従来レベル又はそれ以上の低転がり抵抗性を達成しながら、弾性率を向上することができるゴム配合用樹脂補強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、以下の本発明[1]〜[8]により達成される。
[1] フェノール及びクレゾール類とアルデヒド類とを反応させて合成されるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤であって、フェノール(A)とクレゾール類(B)の重量比(A/B)が15/85〜85/15で、クレゾール類(B)がメタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)からなり、メタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)の重量比(C/D)が50/50〜75/25であるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなることを特長とするゴム配合用樹脂補強剤。
[2] フェノール(A)、メタクレゾール(C)及びパラクレゾール(D)とアルデヒド類(E)とを酸性触媒のもとで反応させて得られる前記[1]に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
[3] フェノール(A)とメタクレゾール(C)とパラクレゾール(D)の合計に対するアルデヒド類(E)のモル比率が、0.3〜0.8である前記[1]又は[2]に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
[4] 軟化点が80〜180℃である前記[1]ないし[3]のいずれか1項に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
[5] ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂とエタノールとの重量比が1/1の溶液において、溶液粘度が20〜150μm2 /sである前記[1]ないし[4]のいずれか1項に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
[6] ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂が、カシューオイルまたはトールオイルで変性されたものである前記[1]ないし[5]のいずれかに記載のゴム配合用樹脂補強剤。
[7]天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びエチレン・プロピレンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるゴムと、[1]ないし[6]のいずれかに記載のゴム配合用樹脂補強剤と、その硬化剤とを含有することを特徴とするゴム組成物。
[8]硬化剤がヘキサメチレンテトラミン、多価メチロールメラミン誘導体から選んだ少なくとも一種である前記[7]に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤をゴム補強用に用いた場合、従来レベル又はそれ以上の低転がり抵抗性を達成しながら、弾性率を向上することができるゴム配合物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤について説明する。
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂は、フェノール(A)とクレゾール類(B)の重量比(A/B)が15/85〜85/15で、クレゾール類(B)がメタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)からなり、メタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)の重量比(C/D)が50/50〜75/25であることを特長とする。
【0008】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂は、フェノール(A)、メタクレゾール(C)、パラクレゾール(D)とアルデヒド類(E)とを反応させて合成する。
【0009】
ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂に用いるアルデヒド類(E)としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
これらのアルデヒド類の中でも、反応性が優れ、安価であるホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドから選ばれるものが好ましく、ホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0010】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂の合成方法としては、フェノール(A)、メタクレゾール(C)、パラクレゾール(D)及び上述したアルデヒド類(E)を、酸性触媒の存在下で反応させた後、脱水工程により水を除去して得ることができる。
【0011】
ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂に用いる酸性触媒としては、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類を単独または2種類以上併用して使用できる。
【0012】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂の合成において、フェノール(A)、メタクレゾール(C)、パラクレゾール(D)の合計とアルデヒド類との反応モル比としては、フェノール(A)、メタクレゾール(C)、パラクレゾール(D)の合計1モルに対して、アルデヒド類(E)0.30〜0.80モルとすることが好ましい。さらに好ましくは、アルデヒド類(E)0.33〜0.77モルである。前記モル比が前記下限値未満であると樹脂の取り扱いが難しくなる場合があり、前記上限値を超えると反応制御が困難になる場合がある。
【0013】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂の軟化点は、80〜180℃とすることが好ましい。さらに好ましくは、90〜170℃である。前記軟化点が前記下限値未満であるとゴム補強用に用いた場合の低転がり抵抗性が悪化する問題が発生し、前期上限値以上であると、生産上困難になる場合がある。
【0014】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂の溶液粘度は、ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂/エタノール=1/1(重量比)の溶液において、20〜150μm2 /sであり、特に30〜140μm2 /sが好ましい。溶液粘度が20μm2 /s未満では、樹脂中の硬化反応に関与しない低分子量成分が多く、硬化性が低下する恐れがある。150μm2/sを越えると、溶融粘度が高く流動性が低下し、十分ば弾性率を付与できないことがある。
【0015】
本発明に用いるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂は、各種変性剤により変性させることも可能である。変性剤としてはカシューオイル、桐油、トールオイルなどのオイル類やシリコーンゴム、アクリルゴム、ニトリルブタジエンゴムなどのゴム類などがあげられる。
本発明のゴム配合用樹脂補強剤は、前記のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるものである。
【0016】
本発明のゴム組成物は、ゴム及び本発明のゴム配合用樹脂補強剤、硬化剤に加えて、フィラー、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。
【0017】
本発明のゴム組成物に適用されるゴムは、天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びエチレン・プロピレンゴムからなる群から選ばれる。それぞれ単独のゴムからなるものであっても、また2種以上のゴムのブレンド物であってもよい。
【0018】
本発明のゴム組成物に適用される硬化剤は、三次元架橋により硬化させることによる高弾性化を図るためホルムアルデヒド発生剤が用いられる。ホルムアルデヒド発生剤としては、ヘキサメチレンテトラミンや、ヘキサメトキシメチルメラミンのような多価メチロール化メラミン誘導体などが用いられる。
【0019】
本発明のゴム組成物を調製する方法としては、例えば、本発明のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂とゴムとをバンバリーミキサー、ニーダ、2本ロール等を用いて混練する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ここに記載されている「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0021】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール200部、メタクレゾール440部、パラクレゾール360部、37%ホルマリン392部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂720部を得た。
【0022】
(実施例2)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール400部、メタクレゾール330部、パラクレゾール270部、37%ホルマリン402部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂725部を得た。
【0023】
(実施例3)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール600部、メタクレゾール220部、パラクレゾール180部、37%ホルマリン412部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂730部を得た。
【0024】
(実施例4)
メタクレゾール560部、パラクレゾール240部とすること以外は、実施例1と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂720部を得た。
(実施例5)
メタクレゾール420部、パラクレゾール180部とすること以外は、実施例2と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂725部を得た。
【0025】
(実施例6)
メタクレゾール280部、パラクレゾール120部とすること以外は、実施例3と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂730部を得た。
(実施例7)
37%ホルマリンを275部にすること以外は、実施例1と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂660部を得た。
(実施例8)
37%ホルマリンを533部にすること以外は、実施例1と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂800部を得た。
【0026】
(比較例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、37%ホルマリン586部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール樹脂870部を得た。
【0027】
(比較例2)
37%ホルマリンを733部にすること以外は、比較例1と同様にして、常温で固形のノボラック型フェノール樹脂950部を得た。
【0028】
(比較例3)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、メタクレゾール550部、パラクレゾール450部、37%ホルマリン306部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型クレゾール樹脂650部を得た。
【0029】
(比較例4)
37%ホルマリンを421部にすること以外は、比較例3と同様にして、常温で固形のノボラック型クレゾール樹脂710部を得た。
(比較例5)
37%ホルマリンを497部にすること以外は、比較例3と同様にして、常温で固形のノボラック型クレゾール樹脂750部を得た。
【0030】
(比較例6)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール50部、メタクレゾール523部、パラクレゾール427部、37%ホルマリン387部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂715部を得た。
【0031】
(比較例7)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール900部、メタクレゾール55部、パラクレゾール45部、37%ホルマリン503部及び蓚酸20部を仕込み後、徐々に昇温し温度が95℃に達してから120分間還流反応を行った。次いで、系内を650mmHgの真空下で脱水を行ないながら、系内の温度が200℃に達したところで反応器より取り出して常温で固形のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂830部を得た。
【0032】
<ゴム配合テスト>
上記実施例及び比較例で得られたノボラック型樹脂の特長を見るため、ゴムに配合しその物性を確認した。
【0033】
実施例1〜8および比較例1〜7で得られた樹脂を用い、表1に示す配合(重量部)で100℃の加熱混練した各種ゴム組成物を油圧プレスにて160℃20分間加硫して、厚さ2mmの加硫ゴムシートを作製した。評価結果を表2に示す。
【0034】
【表1】

(表の注)
(1)天然ゴム:RSS3
(2)カーボンブラック:三菱化学社製、HAF
(3)硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
(4)亜鉛華:堺化学社製、酸化亜鉛
(5)ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
(6)加硫促進剤:N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
(7)ヘキサメチレンテトラミン:三菱ガス化学製
【0035】
【表2】

【0036】
(a)ムーニー粘度、スコーチタイム
JIS K 6300に準拠して、東洋精機社製ムーニー粘度計を用いムーニー粘度、スコーチタイムを測定した。
(b)硬さ(タイプD)
JIS K 6253に準拠して、東洋精機社製デュロメーターを用い硬さ(タイプD)を測定した。
(c)貯蔵弾性率、tanδ
TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置を用い、動的歪2%の条件下で、50℃における貯蔵弾性率とtanδを測定した。tanδが低いほど低発熱性が良好で、タイヤにしたときの転がり抵抗が低くなると言える。
【0037】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜8のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤を配合したゴム組成物は、tanδが低い、すなわち低発熱性が良好であるにもかかわらず、硬さ、貯蔵弾性率が高い値を示し、優れた補強効果であった。また、ムーニー粘度は低く、スコーチタイムが長くゴム加工性にも優れている結果であった。
ノボラック型フェノール樹脂を配合した比較例1、2のゴム組成物は、tanδが高いうえに、硬さ、貯蔵弾性率は高くなかった。ノボラック型クレゾール樹脂を配合した比較例3、4、5のゴム組成物は、硬さ、貯蔵弾性率が高い値を示したものの、低tanδ、低ムーニー粘度、長スコーチタイムの全てを満たすことはできなかった。所定内のフェノール/クレゾール比率ではないノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂を配合した比較例6、7のゴム組成物も、高硬さ、高貯蔵弾性率、低tanδ、低ムーニー粘度、長スコーチタイムの全てを満たすことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤をゴム補強用に用いた場合、転がり抵抗を悪化させることなく、高硬度、高弾性率のゴム組成物を得ることができる。従って、従来転がり抵抗が悪化するために使用できなかったタイヤ用ゴム組成物、特にトレッド部の弾性率向上に効果的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール及びクレゾール類とアルデヒド類とを反応させて合成されるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなるゴム配合用樹脂補強剤であって、フェノール(A)とクレゾール類(B)の重量比(A/B)が15/85〜85/15で、クレゾール類(B)がメタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)からなり、メタクレゾ−ル(C)とパラクレゾール(D)の重量比(C/D)が50/50〜75/25であるノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂からなることを特長とするゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項2】
フェノール(A)、メタクレゾール(C)及びパラクレゾール(D)とアルデヒド類(E)とを酸性触媒のもとで反応させて得られる請求項1に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項3】
フェノール(A)とメタクレゾール(C)とパラクレゾール(D)の合計に対するアルデヒド類(E)のモル比率が、0.3〜0.8である請求項1又は2に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項4】
軟化点が80〜180℃である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項5】
ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂とエタノールとの重量比が1/1の溶液において、溶液粘度が20〜150μm2 /sである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項6】
ノボラック型フェノール・クレゾール共縮合樹脂が、カシューオイルまたはトールオイルで変性されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載のゴム配合用樹脂補強剤。
【請求項7】
天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びエチレン・プロピレンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるゴムと、請求項1ないし6のいずれかに記載のゴム配合用樹脂補強剤と、その硬化剤とを含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項8】
硬化剤がヘキサメチレンテトラミン、多価メチロールメラミン誘導体から選んだ少なくとも一種である請求項7に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2012−144612(P2012−144612A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3030(P2011−3030)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】