説明

サイクロン式流体分離器

サイクロン式流体分離器は、流体がその中で加速される管状ハウジング(10)と、そのハウジングとそのハウジング内(10)に装着された中心体(1)との間の環状空間を通る流体に旋回を起こさせる旋回付加手段(2)とを有し、その中心体(1)が、中心体(1)の固有振動数を増加させるために中心体(1)の細長い尾部(8)に引張荷重を課するテンション手段(20、22);中心体(1)の少なくとも一部分(8)の振動を抑制する振動減衰手段(31、50、60);中心体(1)の区画式管状尾部(8)内に配置された個体粒子(31)、中心体(1)の管状尾部(8)とテンションロッド(51)との間に配置された粘性液体(50)、及び中心体(1)の尾部(8)を貫通して穿孔された開口部(60);及び/又は、中心体(1)の中心開口(82)を通して噴出される低圧流体(80)などの共振抑制手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式流体分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
気体混合物は、サイクロン式分離器内で、凝結性成分が凝結するように混合物を膨張して冷却し、次いで、凝結した液体成分から気体成分を分けることによって、分離することができる。
【0003】
国際公開第03029739号パンフレットは、流体を遷音速又は超音速に加速することができるスロート部分と、ハウジングと中心体との間の環状空間を通る流体に旋回を起こさせる旋回付加手段とを備え、その環状空間がハウジングの中心軸に対して実質的に同軸に配置されている、サイクロン式分離器を開示している。
【0004】
ハウジングの内面と中心体の外面との間の環状空間を通って高速で流れる流体混合物は、ハウジング及び中心体に振動力を加えることがある。
【0005】
また、中心体を流線形にすることが望ましく、それにより、水滴形の前方部分と、細長い尾部とを有するような中心体を構成することが必要になり得る。この尾部は、長いことも短いこともあり、ハウジングによって支持されることも支持されないこともある。中心体の振動は、装置の流体の流れ及び分離性能に悪影響を及ぼすおそれがあり、中心体を損傷し、更にはその破壊を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03029739号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、サイクロン式流体分離器の中心体の振動問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、流体がその中で加速される管状ハウジングと、そのハウジングとそのハウジング内に装着された中心体との間の環状空間を通る流体に旋回を起こさせる旋回付加手段とを有し、その中心体が共振抑制手段を備える、サイクロン式流体分離器が提供される。
【0009】
共振抑制手段は、中心体の固有振動数を増加させ、且つ/又は中心体の少なくとも一部分の振動を減衰するように構成されてもよい。
【0010】
これを達成するために、中心体が、少なくとも部分的に固体粒子及び/又は粘性液体で充填された管状尾部を備えてもよく、管状尾部が所定の軸方向引張力を受けてもよい。
【0011】
更に、テンションロッドが中心体の管状尾部内に配置されてもよく、それにより、環状間隙が、テンションロッドの外面と中心体の管状尾部の内面との間に作られ、その環状間隙が、粘性液体で少なくとも部分的に充填される。
【0012】
或いは、サイクロン式流体分離器は、中心体が、多孔型の尾部を備えてもよく、それにより、尾部の両側間の圧力差が減少し、尾部の前記両側間の圧力差の変化によって生じる尾部の振動が抑制される。
【0013】
そのような場合には、中心体が、水滴形の前方部分と、細長い、実質的に円筒形の尾部とを有してもよく、その尾部は、その長さに沿って分布する実質的に放射状の孔によってその尾部を穿孔することにより、実質的に多孔性になされ、また、その孔は、尾部の外周に沿って一定の接線方向間隔で分布している。
【0014】
本発明によるサイクロン式流体分離器の別の実施形態では、中心体が、中心軸に実質的に一致する長手方向軸を有する長手方向開口を備え、その長手方向開口が、使用中、低圧流体がそれを通って管状ハウジング中に噴出するダクトとして構成され、低圧流体が、スロート部分の下流に配置された実質的に円筒形のハウジング部分内で、スロート部分を通って流れる流体と混合し、低圧流体が、スロート部分を通って実質的に円筒形のハウジング部分に流れ込む流体よりも低い静圧を有する。
【0015】
そのような場合には、管状ハウジングが、中央に高気体濃度流体出口が配置された尾部を備えてもよく、その高気体濃度流体出口は、環状の高液体濃度流体出口によって取り囲まれ、高液体濃度流体を低圧流体として環状高液体濃度流体出口から中心体の長手方向開口中に再循環させるために、再循環導管が、環状高液体濃度流体出口と中心体の長手方向開口との間に配置されている。
【0016】
本発明によるサイクロン式流体分離器のスロート部分は、使用中、流体がスロート部分内で実質的に音速又は超音速まで加速されることにより冷却され、その結果、1又は複数の凝結性成分がスロート部分で凝結するように構成されてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、本発明による分離器によって流体混合物を分離する方法であって、砂及び/又は他の土壌粒子などの個体汚染物質、及び/又は、水、凝縮物、二酸化炭素、硫化水素及び/又は水銀などの凝結性汚染物質を含む汚染された天然ガス流から精製天然ガス流を得るために用いられる方法も提供される。
【0018】
本発明によるサイクロン式分離器及び方法のこれら及びその他の特徴、目的、利点、及び実施形態が、添付特許請求の範囲、要約、及び以下の添付図面が参照される好ましい実施形態の詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】細長い尾部を有する中心体をもつサイクロン式分離器の長手方向概略断面図である。
【図2】図1に示す中心体の尾部の下流端部に引張荷重を加えるクランプ構造の概略3次元拡大図である。
【図3】固体粒子で充填された、図1に示された中心体の区画式管状尾部の断面図である。
【図4】図3に示された区画式管状尾部の長手方向断面図である。
【図5】粘性液体で充填され、テンションロッドを囲んで配置された、図1に示された中心体の管状尾部の断面図である。
【図6】図1に示された中心体の、有孔の細長い尾部の断面図である。
【図7】図6に示された有孔の細長い尾部の長手方向断面図である。
【図8】流体励起振動を抑制するために低圧流体がそれを通って噴出される中心開口を中心体が有するサイクロン式流体分離器の概略長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図1〜8では、それらに表示されているサイクロン式流体分離器の同様な実施形態の同様な構成要素を示すのに、適切な場合には、同様な参照番号が使用されている。
【0021】
ここで図1を参照すると、一連の旋回付加翼2が取り付けられた流線形で水滴形の中心体1を有する旋回入口装置を備えるサイクロン式慣性分離器が示され、中心体1は、中心体1と分離器ハウジング10との間に環状流路3を形成するように、分離器の中心軸Iと同軸に分離器ハウジング10の内部に配置されている。分離器は、使用中、旋回流体流が分岐流体分離室5にそこから送り込まれる環状スロート部分4を更に備え、分岐流体分離室5には、気体成分用の中央一次出口導管7と、凝結性物質を多く含む流体成分用の外側2次出口導管6とが設置されている。中心体1は、流れを直線的にするブレード9のアセンブリが取り付けられている実質的に円筒形の細長い尾部8を有する。中心体1は、好ましくは、環状スロート部分4の最小内幅すなわち内径2Rn minより大きい最大外幅すなわち外径2Ro maxを有する。
【0022】
旋回付加翼2は、流体流にサーキュレーション(Γ)を生成するために、中心軸Iに対して角度(α)で配向されている。αは20°〜50°であることが好ましい。流体流は、その後、環状流領域3に流し込まれる。この領域の断面積は、Aannulus=π.(Router−Rinner)として定義される。最後の2変数は、選択位置での円環の外半径及び内半径である。その位置での円環の平均半径は、Rmean=√[1/2(Router+Rinner)]として定義される。
【0023】
平均円環半径Rmean、maxの最大値位置で、流体流は、旋回付加翼2のアセンブリの間を速度(U)で流れ、その翼が、流体流の流れ方向を転向角(α)に対応して転向させ、それにより、Uφ=U.sin(α)に等しい接線方向速度成分、及びU=U.cos(α)に等しい軸方向速度成分が得られる。
【0024】
旋回付加翼2の下流の環状空間3では、旋回流体流は高速へ膨張し、平均円環半径はRmean、maxからRmean、minへ徐々に減少する。
【0025】
この環状膨張中に2つのプロセスが起こることが分かっている。即ち、
(1)流れの熱又はエンタルピ(h)が、量Δh=−1/2Uで減少し、それによって、まず相平衡に達した流れ組成物が凝結する。この結果、小さな液体又は固体粒子を含んだ霧状の旋回流が生じる。
【0026】
接線方向速度成分は、実質的に式Uφ、final=Uφ、initial.(Rmean、max/Rmean、min)に従って、平均円環半径Uφに反比例して増加する。
【0027】
その結果、流体粒子の遠心加速度(a)が大幅に増加することになり、それは最終的にa=(Uφ、final/Rmean、min)の程度までになる。
【0028】
管状スロート部分4では、流体流は、より高速に更に膨張させられるか、又は実質的に一定速度に保たれ得る。第1の場合には、凝結は進行し、粒子は大きくなる。後者の場合には、凝結は、所定の緩和時間後に殆ど停止する。どちらの場合でも、遠心作用が、分離器ハウジングの内壁に隣接する流れ領域の外周へ粒子を移動させ、その領域は分離領域と呼ばれている。粒子がこの流れ領域の外周まで移動する時間によって、管状スロート部分4の長さが決まる。
【0029】
管状スロート部分4の下流では、凝結性物質を多く含む「湿潤」流体成分は、分岐流体分離室5の内面近くに集まりやすく、「乾燥」気体状流体成分は、中心軸I位置又はその近くに集められ、その結果、凝結性物質を多く含む湿った「湿潤」流体成分は、1スロット又は一連のスロット、或いは(微小)多孔部分を介して外側湿潤流体出口6に送り込まれ、「乾燥」気体成分は中央乾燥流体出口導管7に送り込まれる。
【0030】
分岐中央乾燥流体出口導管7中では、流体流は更に減速され、その結果、残っている運動エネルギーはポテンシャルエネルギーに変換される。分岐中央乾燥流体出口導管7には、サーキュレーションエネルギーを回収するために、流れを直線的にする翼9のアセンブリを設置することができる。
【0031】
気体混合物は、図1に示される分離器に左から入る。気体は、中心体1上を狭い環形状の流れダクト通って導かれ、その間に、中心体1の外周を廻って配置された案内翼2によって角運動量を得る。旋回流は環状ダクト4を流れながら膨張する。旋回は、スロート部分4に向かう収縮路中で膨張している間に強さを増す。膨張中に、高沸点気体成分は、旋回付加翼2とスロート部分4との間で凝結を始め、沸点が低めの成分は、スロート部分4と流体分離室5の渦ファインダとの間で凝結を始める。その結果生じる液滴は、旋回運動が起こす遠心力によって流れ領域の外周へ移送される。渦ファインダ5において、流れは、流れの外周の「湿潤」流と、流れの中心部の「乾燥」流とに分けられる。
【0032】
細長い尾部8を用いて中心体1を伸長することによって、中心軸に向かっての渦流れの接線方向運動量の急激な増加が抑止され、それによって、流れの不安定化(即ち、渦崩壊)が回避される。中心に配置された、細長い尾部8を有する水滴形の中心体1が存在することは、高い分離効率を有する超音速サイクロン式分離器を形成するのに有益である。高い分離効率は、流れの角運動量を最大化することによって得られる。しかし、角運動量の増加は、渦崩壊の発生によって制限される。渦崩壊は、角運動量を大幅に減少させる。水滴形の中心体1は、中心体の無い流れ領域に比較して、渦崩壊を発生させることなく、断面流れの角運動量を増加させることができる。或いは、細長い後端部によって設けられる前記抑止は、図8に示すように、長手方向開口を通して水滴形の中心体の端部で低圧流体を噴出させることによって達成することもできる。
【0033】
流れがその中に確立されている円筒形流れダクトの中心に配置された細長い後端部8を備える中心体1を考察する。最初の半径方向位置r=(x,y)から新しい半径方向位置r=(x,y)への微小変位によって、中心体がそこへ変位した流れ断面の部分の流れが加速され、中心体1がそこから変位した流れ断面の部分の流れが減速される。その結果生じる静圧差が確実に揚力を生じ、その揚力は、当然、中心体1の表面に対して垂直である。この垂直方向力が更に湾曲を生じさせ、次々と新しい半径方向位置r=(x,y)へ変位させる。最終的変位の大きさは、一方で流れによる力(即ち垂直方向力)、他方で中心体1の曲げ剛性(即ち単位変位当たりの反作用力)による反作用の結果である。中心体1の曲げ剛性が十分に高ければ、その結果生じる力は変位の方向とは反対の方向を有し、その点で、中心体構造は質量ばね系として振舞うといえる。しかし、曲げ剛性が不十分であれば、その結果生じる力は変位の方向になり、中心体1はハウジング10の境界に向かって変位し、又は負荷が最終強度限界を超えて材料が破壊するまで変位する。曲げ剛性は、単に、慣性モーメント(即ち中心体形状)、材料の弾性率(E)、及び中心体1に掛けられたプリテンション力に依存する。
【0034】
中心体1上に旋回流体流速によって引き起こされる力は、以下のように計算することができる。
【0035】
円筒形流れダクトの中心に配置され、ここでは渦流れが存在する中心体1を考察する。最初の半径方向及び接線方向位置[r,φ]=(x,y)から新しい位置[r,φ]=[x,y]への微小変位は、中心体の表面に垂直な力だけではなく、接線方向の変位を生じさせる、中心体の表面に対し接線方向の力も発生させる。中心体のこの接線方向の動きは、その曲げ剛性−半径方向のみに働く−によって拘束されず、従って、進行する中心体の軸回転運動が生じる。軸回転運動が大きくなるのを回避するために、中心体を安定化させる減衰機構が必要になる。
【0036】
以上を要約すると、静的に安定な中心体1は、質量ばね系として振る舞い、従って、流れが中心体1を励起している限りはその固有振動数での調和モードで振動する。対応する量の自由振動エネルギーが、質量ばね系から取り除かれる必要がある(即ち消散される必要がある)。従って、動的安定性を得るために、減衰機構が必要になる。或いは、振動の周期が気体の流れの滞留時間に比較して小さくなる程に中心体構造の固有振動数が高くなる点まで、中心体構造の質量−剛性を増加させてもよい。その場合には、流れは、中心体1に所定の揚力を掛けることがなく、従って、励起されない。更に、中心体1に掛かる揚力は、中心体の断面を通って半径方向に配向された開口によって、下面と上面との間で圧力を平衡させて抑えることができる。
【0037】
細長い尾部8付き水滴形中心体1を振動させないように支持する適切な態様が、本明細書の以下に記載される。
【0038】
図1に示される実施形態では、旋回付加翼2及び旋回除去翼9が、細長い尾部8付き中心体1を環状分離器ハウジング10内に支持している。旋回付加翼2及び旋回除去翼9は流体流れ中に突き出ているので、これらを流れの低速領域(200m/s未満)に配置して不必要な圧力損失を回避することが好ましい。三角形11、12、及び13は、図1に示される超音速サイクロン式分離器において、細長い尾部8付き水滴形中心体1が、管状分離器ハウジング10内にどのように支持され得るかを示す。即ち、
1)固定式支持部11が旋回付加翼2の傍に設けられ、
2)半径方向拘束支持部12が、乾燥気体出口導管7内のスペーサリブ14の傍に設けられ、
3)固定式支持部13が、乾燥気体出口導管7内の旋回除去翼(9)の下流に設けられている。
【0039】
所定の中心体の幾何形状に対して支持部の様式及び支持部の位置を選択することによって、そのモード形状並びにその慣性モーメントが決まる。支持点の数は、超音速サイクロン式分離器の特定の幾何形状に応じて、2以上の如何なる数にもなり得る。
【0040】
細長い尾部8付き中心体1にプリテンション荷重を掛けることによって、曲げ剛性が増加し、即ち静的安定性が増加し、従って、その固有振動数が増加する。中心体の固有振動数を増加させると、実効上の減衰特性も向上することが理解されよう。プリテンション荷重は、中心体1の尾部8の断面で平均引張応力5000MPaに達し得る。1000MPaを超える高プリテンション荷重の場合には、ねじ結合を避けることが好ましい。
【0041】
従って、図2に示されるような特別のクランプ構造が、中心体1、8の下流端部を、又、任意選択で上流端部を所定位置に保持し、引張荷重を受け持つのに使用され得る。
【0042】
中心体1の尾部8の下流端部が、円錐形チューブ20内にクランプされ、円錐形チューブ20には長手方向溝21を切って円錐形楔20A、20Bを形成することができる。この楔状円錐形チューブ20は、中心体1に軸方向荷重が掛かると直ぐに、中心体1の尾部8の外面とクランプハウジング22の内面との間で固く締め上げられる。
【0043】
細長い尾部8付き中心体1を構成するために好適な材料は、
− 十分な材料剛性を得るために、高縦弾性係数又は弾性率を有する材料、
− 剛性を高める高引張荷重を可能にするために高降伏強度を有する材料、
− 作動上の堅牢性を保証するために衝撃荷重を可能にする高降伏強度を有する材料、
− 通常0℃から−100℃までの低温領域内で、水素誘因性亀裂を回避するために腐食及び水素脆性に対して高い耐性を有する材料
である。
【0044】
2つのタイプの材料がこれらの要件を満足する。即ち、
1)高品位焼入合金鋼、及び
2)一方向炭素繊維強化樹脂
である。
【0045】
適切な高品位焼入合金鋼(1)は、少なくとも以下の成分を含む冷間加工された材料である。即ち、クロミウム、ニッケル、モリブデン、及びコバルトである。
【0046】
適切な一方向炭素繊維強化樹脂(2)は、高弾性率炭素繊維を少なくとも40体積%の充填率で含む。繊維間の隙間がナノチューブで充填されていてもよく、それにより繊維マトリックスが更に強化され得る。
【0047】
動的不安定性(即ち撓み/変位の増加)を回避するために、共振減衰機構を使用して、流れからもたらされる振動エネルギーを消散することができる。振動モードは、細長い尾部8付き中心体1の1次モード形状、並びに支持点11、12、及び13の間の距離によって決まる。
【0048】
細長い尾部8付き中心体1の曲げ剛性が高く、比重量が低い程、その固有振動数が高くなる。所定のレベルの励振力−中心体に掛かる−に対して、固有振動数が高い程、中心体の撓みが小さくなる。最大許容撓みの低い方の限界値は、撓みによって生じる流れの乱れによって決まり、通常、中心体の最小直径の1%〜5%の範囲である。最大許容撓みの高い方の限界値−通常、中心体の最小直径の5%〜50%の範囲にある−は、撓みが増加すると中心体の支持点の近傍の応力を増加させるので、材料の降伏強度及び中心体形状の慣性モーメントによって決まる。一般に、曲げ剛性が高い程、単位撓み当たりの応力レベルが高く、従って、許容撓みの高い方の限界値が低くなるということができる。しかし、曲げ剛性が高い程、固有振動数が高く、実際の撓みが小さくなるので、それは相殺される。
【0049】
図3〜5は、図1に示された細長い尾部8付き中心体1の共振レベルを、最大撓みの限界値内に低下させる2つのコンセプトを示す。即ち、
1)図3及び4に示される粒子減衰機構、及び
2)図5に示される粘性液体減衰機構
である。
【0050】
図3及び4に示される粒子減衰機構は、中心体1の尾部8内に1又は複数の円筒形空洞30を備え、その空洞30は、少なくとも部分的に小さい粒子31で充填されている。粒子減衰機構の原理は、集積粒子の大部分が、流体の力によって誘起される中心体1の尾部8の振動により運動を起こすことである。集積粒子の大部分は、中心体1の尾部8それ自体の振動とは位相が外れた振動運動を起こす筈である。そのとき、中心体1の尾部8の振動エネルギーは、粒子と尾部8の壁との間の衝突、及び粒子相互の衝突を介して消散される。
【0051】
充填又は封入率は少なくとも60%(通常25〜30体積%の粒子間の空隙体積を除く)、最大充填率は95%であるべきである。好ましい充填率は75〜85%である。粒子31は、0.1〜5mmで変化し得る直径d、好ましくは0.6〜2.2mmの直径dを有し得る。しかし、より良い基準は、粒子直径dを尾部8の内径D1で割った比率d/D1であり、その比率は0.04〜0.25で変化し得る。比率d/D1は、好ましくは、0.12〜0.2の範囲内で選択される。粒子の材料の密度は大きいものが選択され、少なくとも3kg/mより大きく、好ましくは、8kg/mより大きい。粒子31の材料は耐摩耗性を極めて高くするべきである。粒子31に好適な材料はタングステンカーバイド(WC)である。粒子31間の隙間は、空気又は別の適切な気体で充填することができる。その粘性が極めて高くなければ、液体をこの目的に使用することも可能である。
【0052】
尾部8の円筒形空洞30の好ましい寸法は、D1min=0.4×D2とD1max=0.8×D2との間である。
【0053】
粒子31が、円筒形空洞30の外端部の1箇所に集中するのを回避するために、即ち、粒子が、中心体1の尾部8の全長に亘って可能な限り一様に分布することを保証するために、尾部8を長手方向で分割することが、更に好ましい。
【0054】
図5は、粒子31で充填され、分離円盤32A〜32Dによって分離された一連の空洞30A〜30Dを備える尾部8を示す。各空洞区画30A〜30Dの好ましい全長は、L1=1×D1〜L1=4×D1である。好ましい充填率では、各区画30A〜30Dの粒子30の体積%が75〜85である。
【0055】
図5は、液体減衰機構を備える中心体1の尾部8を示す。液体減衰機構は、中心体1の管状尾部8内に配置され、尾部8は粘性液体50で充填され、粘性液体50中にはテンションロッド51が配置されている。テンションロッドの外径と中心体1の管状尾部8の内径との間の環状隙間は、粘性流体50で充填されている。
【0056】
テンションロッド51は高引張力下に置かれており、1000〜5000MPaの平均引張応力を生じている。中心体1の尾部8は、プリテンションなしか、又は僅かにプリテンションが掛かったいずれかの状態で取り付けられており、0〜500MPaの平均引張応力を生じている。テンションロッド51の固有振動数が、中心体1の管状尾部8自体の固有振動数より大幅に高いので、尾部8が励起された場合にロッド51と尾部8との間に相対運動が生じる。その結果、ロッド51と尾部8との間の隙間にある粘性流体50が交番モードで変位させられる。このようにして、中心体1の細長い尾部8によってもたらされた共振エネルギーが、交番運動を行う流体50の粘性力によって消散される。粘性流体50は、温度範囲240〜270Kで絶対粘性係数10−4〜10−2Pa.sを有する任意の蒸気、液体、液体−液体エマルジョン、固体−液体懸濁液でよい。粘性流体は非腐食性であることが好ましく、その粘性が温度に殆ど依存しないことが望ましい。好適な粘性流体は、非ニュートン流体である。例えば、ずり粘性流体を、小振幅領域で、即ちロッドと中心体との相対運動が小さいとき、減衰を最大化するために適用することができる。
【0057】
中心体1の尾部8の材料は、任意の好適な耐食合金(例えば、AISI316、インコネル(Inconel)、インコロイ(Incolloy)、MP35N等)、又は繊維強化材(樹脂/合金)でもよい。テンションロッド51は、MP35N、マルエージング鋼(Maraging)、又は炭素繊維強化エポキシマトリックス複合材などの高引張強度を有する材料から製作することができる。
【0058】
内径D1及び外径D2を有する管状尾部8の内面と外径D3を有するテンションロッドとの間の環状間隙の好ましい寸法は以下の通りである。
Dlmin=0.60×D2:D1max=0.95×D2
D3min=0.70×Dl:D3max=0.95×Dl
【0059】
図6及び7は、細長い尾部8の一実施形態を示し、尾部には半径方向開口(aperture)60が穿孔され、それにより実質的に多孔型の尾部8が形成されている。開口60は、尾部8の周りの旋回流体流れ61によってもたらされる半径方向力を抑えるように働く。旋回渦流れ61によってもたらされる垂直方向力に曝されている中心体1の尾部8の不安定化を回避するために、中心体1の尾部8の表面を部分的に多孔型にして、中心体1の細長い尾部8の周りの圧力擾乱を等化させる。
【0060】
閉じ込められた渦流れ61によって取り囲まれた細長い円筒形尾部8を考察すると、尾部8の半径方向撓みは、通常、撓みと同じ方向に作用する垂直力を発生させる。この垂直力は、尾部8の上面での旋回流体流れ61の低静圧Plowから生じ、その間、反対側の尾部8の下面には高圧力Phighが存在する。開口60は、直径に沿って穿孔された孔を用いて尾部8の両側を連通させることによって、この圧力差Δ(Phigh−Plow)を等化させるように働く。
【0061】
図6は、3つの開口60A〜Cが、尾部8の1つの断面に沿って60度の一定の接線方向間隔で穿孔され、それにより、尾部8の両側の流体流束間の圧力差が抑制される実施形態を示す。
【0062】
通常、尾部8の1断面当たりの開口60の数(n)は、開口60の固有寸法に応じて最低の2個から40個まで変化し得る。開口60の直径と尾部8の直径との比d/D1が小さい程、nは大きくなり得る。d/D1の最小値を0.03以上に、d/D1の最大値を0.3以下に制限することが好ましい。d/D1の最小値は、dが小さくなると増加する、破片又は氷/水和物で孔を詰まらせる危険性によって決定され、最大値は、dが増加すると大きくなる、表面の不連続性による渦流れへの擾乱によって左右される。比d/D1が選定されると、垂直な流れ力の抑制度は孔の総数(N)によって決まり、その総数は、1断面当たりの穴の数(n)に全長に沿う穿孔断面の数(i)を掛けた積に従う。P=n×(d/D1)×(i/L)として定義される総表面多孔度は、0.1≦P≦0.8の範囲でよく、好ましくは0.3〜0.6である。
【0063】
図8は、本発明によるサイクロン式分離器の一実施形態を示し、その実施形態では、図1〜7に示された分離器の細長い尾部8の機能が、低圧流体80を、中心体1の中心開口82を通して、分離器の管状ハウジング10を通って流れる渦81の中心部中に噴出することによって置き換えられる。中心開口82を介して噴出される前に、低圧流体に旋回運動を付加してもよい。この旋回運動は、高圧流れの旋回運動に対して、並流又は対向流のいずれでもよい。
【0064】
低圧流体80の入口運動量は、中心体1の外面に沿って通過する高圧流れ81の運動量に比較して小さい。装置の細長い管状流体分離部4内で大幅な運動量の交換が行われ、そこでは、低圧流体80が高圧旋回流体81によって推進される。中心体1と同様、高圧旋回流体81の接線方向運動量は、管部分4の中心部の低運動量流れの存在によって制限される。旋回高圧流体流束81が接線方向運動量を失うにつれて、低圧流体流束80は接線方向運動量が増加する。全体として、低圧流体流束80は、旋回高圧流体流束81と混合し、管状分離部4内で加速される。
【0065】
核形成及び凝結によって形成された液体類は、これらが渦流れ内で管の外周へ分離されるのに十分な滞留時間を管状分離部4内で与えられる。
【0066】
低圧流体は、環状湿潤気体排出導管6から流れて来る、液体濃度の高い「湿潤」流体の一部分でもよく、その「湿潤」流体の一部分は、湿潤気体再循環導管84を介して中心体1内部の開口82中に再循環される。湿潤気体再循環導管84には制御バルブ85が設置されて、低圧流体流量80が高圧流体81の流体流量の5〜80%になるように低圧流体流量80を制御する。低圧流体流量80は、高圧流体流量の25〜60%であることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体がその中で加速される管状ハウジングと、前記ハウジングと該ハウジング内に装着された中心体との間の環状空間を通る前記流体に旋回を起こさせる旋回付加手段とを有し、前記中心体が共振抑制手段を備える、サイクロン式流体分離器。
【請求項2】
共振抑制手段が、中心体の固有振動数を増加させるように構成されている、請求項1に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項3】
中心体が管状尾部を備え、該管状尾部が、少なくとも部分的に固体粒子及び/又は粘性液体で充填されている、請求項2に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項4】
共振抑制手段が振動減衰手段を備え、該振動減衰手段が中心体の少なくとも一部分の振動を抑制する、請求項1に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項5】
テンションロッドの外面と中心体の管状尾部の内面との間に環状間隙が存在するように、テンションロッドが中心体の管状尾部内に配置され、前記環状間隙が、ずり粘性非ニュートン流体などの粘性液体で少なくとも部分的に充填されている、請求項4に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項6】
中心体が多孔性の尾部を備え、それにより、前記尾部の対向する両側間の圧力差が減少し、前記尾部の両側間の圧力差の変化によって生じる前記尾部の振動が抑制される、請求項4に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項7】
中心体の尾部が、管状ハウジングの少なくともかなりの部分に亘って伸長し、前記尾部の長手方向軸に対して実質的に半径方向に配向された孔を備え、前記孔が、前記中心体の前記尾部の両側間に流体連通を形成する、請求項6に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項8】
中心体が、水滴形の前方部分と、実質的に円筒形の細長い尾部とを有し、前記尾部が、その長さに沿って分布する実質的に放射状の孔によって前記尾部を穿孔することにより、実質的に多孔性であり、かつ前記孔が、前記尾部の外周に沿って一定の接線方向間隔で分布している、請求項7に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項9】
中心体が、管状ハウジングの入口部分から前記管状ハウジングの出口部分まで伸長し、所定の軸方向引張力を受けるように前記管状ハウジングによって支持されている、請求項1〜8のいずれかに記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項10】
中心体が、1000Mpaを超える軸方向引張荷重を受け、少なくともその一端で楔形状の締上げ嵌合によって管状ハウジングに連結されている、請求項9に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項11】
中心体が、管状ハウジングの中心軸と実質的に同軸の長手方向対称軸を有する水滴形部分を備え、それにより、環状流体チャネルが、前記中心体の外面と前記管状ハウジングの内面との間に生成され、前記環状流体チャネル内に一連の旋回付加翼が配置され、前記旋回付加翼が、前記水滴形部分の直径の大きな中央部分の周りに配置され、前記環状流体チャネルが、前記中心体の前記中央部分より外径の小さい前記中心体の部分の周りに配置されたスロート部分を形成する、請求項1に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項12】
中心体が、中心軸に実質的に一致する長手方向軸を有する長手方向開口を備え、前記長手方向開口が、使用中、低圧流体がそれを通って管状ハウジング中に注入されるダクトとして構成され、前記低圧流体が、スロート部分の下流に配置された実質的に円筒形のハウジング部分内で、前記スロート部分を通って流れる流体と混合し、前記低圧流体が、スロート部分を通って実質的に円筒形のハウジング部分に流れ込む流体よりも低い静圧を有する、請求項11に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項13】
中心体内のダクトが、高圧流体の旋回運動に対して並流又は対向流いずれかの方向で低圧流体をスロート部分に流れ込ませる旋回付加翼を備える、請求項12に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項14】
管状ハウジングが、中央に高気体濃度流体出口が配置された尾部を備え、前記高気体濃度流体出口が、環状の高液体濃度流体出口によって取り囲まれ、高液体濃度流体を低圧流体として前記環状高液体濃度流体出口から中心体の長手方向開口中に再循環させるために、再循環導管が、前記環状高液体濃度流体出口と前記中心体の前記長手方向開口との間に配置されている、請求項12に記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項15】
スロート部分が、使用中、流体が前記スロート部分内で実質的に音速又は超音速まで加速されることにより冷却され、その結果、1又は複数の凝結性成分がスロート部分で凝結するように構成されている、請求項1〜14のいずれかに記載のサイクロン式流体分離器。
【請求項16】
共振抑制手段が、下記の特徴を1又は複数含む、請求項1に記載のサイクロン式流体分離器
−中心体(1)の固有振動数を増加させるように、前記中心体(1)の細長い尾部(8)に引張荷重を課するテンション手段(20、22);
−中心体の少なくとも一部分の振動を抑制する振動減衰手段と、
−中心体(1)の区画式管状尾部(8)内に配置された固体粒子(31);
−中心体(1)の管状尾部(8)とテンションロッド(51)との間に配置された粘性液体(50);
−中心体(1)の尾部(8)を貫通して半径方向に穿孔された開口(60);及び
−中心体(1)の中心開口(82)を通して注入される低圧流体(80)。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のサイクロン式流体分離器によって流体混合物を分離する方法であって、砂及び/又は他の土壌粒子などの個体汚染物質、及び/又は、水、凝縮物、二酸化炭素、硫化水素及び/又は水銀などの凝結性汚染物質を含む汚染された天然ガス流から精製天然ガス流を得るために用いられる方法。
【請求項18】
サイクロン式流体分離器が、下記の特徴を1又は複数含む、請求項17に記載の方法。
−中心体(1)の固有振動数を増加させるために、前記中心体(1)の細長い尾部(8)に引張荷重を課するテンション手段(20、22);
−中心体の少なくとも一部分の振動を抑制する振動減衰手段;
−中心体(1)の区画式管状尾部(8)内に配置された固体粒子(31);
−中心体(1)の管状尾部(8)とテンションロッド(51)との間に配置された粘性液体(50);
−中心体(1)の尾部(8)を貫通して半径方向に穿孔された開口(60);及び
−中心体(1)の中心開口(82)を通して噴出される低圧流体(80)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−522634(P2010−522634A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500173(P2010−500173)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052703
【国際公開番号】WO2008/116732
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509267085)ツイスター ビー.ブイ. (3)
【氏名又は名称原語表記】TWISTER B.V.
【Fターム(参考)】