説明

サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】耐カットグロス性及び転がり抵抗特性を両立できるサイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム及び希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜95質量%であるゴム成分を含有するサイドウォール用ゴム組成物に関する。
[化1]


(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイドウォールには、通常、耐カットグロス(cut growth)性を向上させる目的で、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムを配合したゴム組成物を使用している。
【0003】
また、近年では、車の低燃費化への要求が高まっており、トレッドだけでなく、サイドウォールにおいても、転がり抵抗の低減(転がり抵抗特性の改善)が求められている。
【0004】
転がり抵抗特性を改善する方法として、特許文献1〜3には、変性ブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴムなどの変性ジエン系ゴムを用いることが提案されている。しかし、転がり抵抗特性及び耐カットグロス性を両立させる点については、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−114939号公報
【特許文献2】特開2005−126604号公報
【特許文献3】特開2005−325206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性を両立できるサイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム及び希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜95質量%であるゴム成分を含有するサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0008】
上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムは、ビニル含量が35質量%以下であり、上記希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムは、シス含量が95質量%以上、ビニル含量が1.8質量%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定化合物により変性されたブタジエンゴム及び希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が一定の範囲内であるゴム組成物であるので、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性をバランス良く改善することができる。従って、該ゴム組成物をサイドウォールに使用することにより、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性が両立した空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴム組成物は、上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム(以下「変性BR」ともいう)と、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(以下、「希土類系BR」ともいう)との合計含有量が一定の範囲内である。
【0012】
変性BRを用いることにより、転がり抵抗特性を改善することができるが、その一方で、耐カットグロス性が悪化する傾向があった。これに対し、本発明のゴム組成物は、変性BR及び希土類系BRを併用することで、変性BRに起因する耐カットグロス性の悪化を希土類系BRによって抑制することができ、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性をバランス良く改善することが可能となる。また、耐カットグロス性が改善されることでタイヤの寿命が延びるため、長期に渡って転がり抵抗特性の改善効果の恩恵を受けることができる。
【0013】
上記式(1)で表される化合物において、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0014】
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0015】
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。R、R及びRとしては、アルコキシ基が好ましい。これにより、各性能の改善効果を高めることができる。
【0016】
及びRのアルキル基としては、例えば、上記アルキル基と同様の基を挙げることができる。R及びRとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)が好ましい。これにより、各性能の改善効果を高めることができる。
【0017】
及びRの環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基がより好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0018】
n(整数)としては、2〜5が好ましい。これにより、各性能の改善効果を高めることができる。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが1以下であると変性反応が阻害される場合があり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0019】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、下記式(2)〜(9)で表される化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、転がり抵抗特性の改善効果が高いという点から、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、ブタジエンゴムを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、ブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
変性されるブタジエンゴム(BR)としては特に限定されず、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。また、特表2003−514078号公報等に記載されているランタン系列希土類含有化合物を含む触媒を用いて重合して得られたBRも使用できる。
【0023】
変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、転がり抵抗特性が悪化する傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。
【0024】
ゴム成分100質量%中の変性BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、転がり抵抗特性を充分に改善できないおそれがある。該変性BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。70質量%を超えると、希土類系BRの含有量が少なくなるため、耐カットグロス性を充分に改善できないおそれがある。
【0025】
本発明のゴム組成物では、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)が使用されるが、上記希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0026】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0027】
有機アルミニウム化合物としては、AlR(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlX3−k(式中、Xはハロゲン、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基、kは1、1.5、2又は3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;MeSrCl、MeSrCl、MeSrHCl、MeSrClなどのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0028】
上記希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合又は塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0029】
上記希土類系BRは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が好ましくは35以上、より好ましくは40以上である。35未満であると、ゴム流れによって適正なサイドウォールゲージを維持できないおそれがある。該ムーニー粘度は、好ましくは55以下、より好ましくは50以下である。55を超えると、ゴム組成物が硬くなりすぎて、スムーズなエッジで押し出すことが困難になるおそれがある。
なお、ムーニー粘度は、ISO289、JIS K6300に準じて測定される。
【0030】
上記希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上である。2.3未満であると、ロール巻き付き性が悪化し、熱入れしにくくなる傾向がある。該Mw/Mnは、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。3.5を超えると、押し出し時にエッジ切れが発生しやすくなる傾向がある。
【0031】
上記希土類系BRのMwは、好ましくは50×10以上、より好ましくは55×10以上であり、また、好ましくは70×10以下、より好ましくは65×10以下である。更に、上記希土類系BRのMnは、好ましくは18×10以上、より好ましくは20×10以上であり、また、好ましくは30×10以下、より好ましくは25×10以下である。MwやMnが下限未満であると、未加硫ゴム組成物の粘度が低く、加硫後に適正な厚みを確保できないおそれがある。上限を超えると、加工時に発熱し、ゴム焼け(スコーチ)が発生しやすくなる傾向がある。
なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0032】
上記希土類系BRのビニル含量は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。1.8質量%を超えると、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。ビニル含量の下限は特に限定されない。
【0033】
上記希土類系BRのシス含量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。上記範囲内であれば、耐カットグロス性の改善効果を高めることができる。シス含量の上限は特に限定されない。
なお、本発明において、変性BR、希土類系BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)及びシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0034】
ゴム成分100質量%中の希土類系BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、耐カットグロス性を充分に改善できないおそれがある。該希土類系BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。70質量%を超えると、変性BRの含有量が少なくなるため、転がり抵抗特性を充分に改善できないおそれがある。
【0035】
上記変性BR及び希土類系BRの合計含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、良好な亀裂成長抵抗が得られないおそれがある。該合計含有量は、95質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。95質量%を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり過ぎて、加工できなくなるおそれがある。
【0036】
本発明のゴム組成物に使用される変性BR及び希土類系BR以外のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルニトリル(NBR)、イソモノオレフィンとパラアルキルスチレンとの共重合体のハロゲン化物等を使用できる。なかでも、成型時の粘着性が良好であるという点から、変性BR及び希土類系BRとともに、NRを使用することが好ましい。
【0037】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0038】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。15質量%未満であると、耐カットグロス性が劣る傾向がある。該NRの含有量は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。85質量%を超えると、亀裂成長抵抗が大幅に低下するおそれがある。
【0039】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、FF、GPFなどが挙げられる。カーボンブラックの配合により、補強性が付与され、特に耐カットグロス性が改善されるため、本発明の効果を良好に得ることができる。
【0040】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。30m/g未満であると、補強性が低く、引っ張り強度や亀裂成長抵抗が劣る傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、160m/g以下が好ましく、140m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。160m/gを超えると、補強性が強くなり過ぎて、加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0041】
カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上である。10質量部未満であると、補強性が低く、引っ張り強度や亀裂成長抵抗が劣る傾向がある。該カーボンブラックの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。100質量部を超えると、補強性が強くなり過ぎて、加工性が悪化する傾向がある。
【0042】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、シリカ、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化防止剤、老化防止剤、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤等を含有してもよい。
【0043】
本発明のゴム組成物を用い、通常の方法で空気入りタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてサイドウォールを作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成型機上にて加熱加圧することにより製造できる。
【0044】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック、バス、二輪車などに使用でき、なかでも、トラック、バスなどの重荷重車に好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム:SIR20
変性BR(BR(1)):住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(ビニル含量:15質量%、R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
Nd系BR(BR(2)):ランクセス(株)製のBuna CB24(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス含量:94.8質量%、ビニル含量:0.4質量%、ML1+4(100℃):44、Mw/Mn:2.7、Mw:59.7×10、Mn:22.2×10
非変性BR(BR(3)):宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:95.8質量%、ビニル含量:2.0質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックHA(チッ素吸着比表面積(NSA):74m/g)
粘着レジン:東ソー(株)製のぺトコールLX
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:バイエル社製のブルカノックス4020
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
粉末硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:三新化学工業(株)製のサンセラーCM
【0047】
実施例1〜4及び比較例1〜5
表1に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォール形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合せ、150℃で30分間加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:11R22.5 14P)を作製した。
【0048】
得られた試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。試験結果を表1に示す。
【0049】
(耐カットグロス性)
正規内圧を充填した上記試験用タイヤを車両に装着し、岩石、採石などが散乱した悪路を30万km走行した後、上記試験用タイヤのサイドウォールに生じたカット傷を目視で観察し、下記基準で耐カットグロス性を評価した。
◎:カット傷の大きさが0mm以上2mm未満
○:カット傷の大きさが2mm以上4mm未満
△:カット傷の大きさが4mm以上6mm未満
×:カット傷の大きさが6mm以上
【0050】
(転がり抵抗特性)
上記試験用タイヤのサイドウォールから試験片を切り出し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪み10%および動歪み2%の条件下で、70℃における上記試験片の損失正接tanδを測定し、下記基準で転がり抵抗特性を評価した。
◎:tanδが0.04以上0.05未満
○:tanδが0.05以上0.07未満
△:tanδが0.07以上0.10未満
×:tanδが0.10以上
【0051】
【表1】

【0052】
表1より、変性BR及びNd系BRを併用し、かつそれらの合計含有量が一定の範囲内である実施例では、両立が困難な耐カットグロス性及び転がり抵抗特性をバランス良く両立できた。
【0053】
一方、変性BR及びNd系BRを併用していない比較例1〜3では、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性をバランス良く両立することができなかった。また、変性BR及びNd系BRを併用しているが、それらの合計含有量が一定の範囲外である比較例4及び5では、耐カットグロス性及び転がり抵抗特性が非常に低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム及び希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムの合計含有量が5〜95質量%であるゴム成分を含有するサイドウォール用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムは、ビニル含量が35質量%以下であり、
前記希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムは、シス含量が95質量%以上、ビニル含量が1.8質量%以下である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−116823(P2011−116823A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273554(P2009−273554)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】