説明

サイドシルスカッフ構造

【課題】 剛性の向上を図りうるサイドシルスカッフ構造を提供する。
【解決手段】 車両のドア開口下縁部に設けられたサイドシル部の上方を覆うサイドシルスカッフ構造であって、サイドシル部3よりも車室内側に突出する突出部7bを設け、この突出部7bの裏面から下方に延びて車両のフロアパネル6へ当接する支柱74を形成したことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性の向上を図りうるサイドシルスカッフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアパネルが設けられるドア開口部の下縁部には、サイドシルアウタパネルとサイドシルインナパネルによって閉じ断面に形成したサイドシル部が設けられている。このサイドシル部の上方には、サイドシルアウタパネルとサイドシルインナパネルの接合部を覆うとともに、美的外観を保つためにサイドシルスカッフが設けられている。通常、サイドシルスカッフの車室内側端部は、フロアパネル上に敷かれたカーペットに当接し、カーペットを介して車体のフロアに支えられている。
【0003】
図5は従来のサイドシルスカッフ構造を示したもので、サイドシル部100は、サイドシルアウタパネル101とサイドシルインナパネル102で構成され、それぞれフランジ部101a,102a、および101b、102bを介して互いに接合され、閉じ断面が形成されている。このサイドシルインナパネル102の側面には、フロアパネル103の端面が接合されて車室内フロアが形成されている。
【0004】
サイドシル部100は、上記のように相互に接合された上部側のフランジ部101a,102aが、サイドドアを開閉して乗降する際の乗降空間へと突出している。そこで、上記上部側のフランジ部101a,102a接合部による乗降性や、美的外観の低下を生じさせないように、上記サイドシル部100の上面側を覆うサイドシルスカッフ104が設けられている。このサイドシルスカッフ104は、サイドドアを開閉して乗降する際の乗降性や、美的外観を向上させるために設けられるものであり、従来は、合成樹脂材料製の薄板により構成されていた。このサイドシルスカッフ104は、室外側をサイドシル部100にクリップ105を介して固定されており、かつ室内側をカーペット106の下に潜り込ませてフロアパネル103に固定している(特許文献1を参照)。
【0005】
また、一方、図6に示すようにサイドシルスカッフ200の裏面にクリップ取付座201を一体成形し、このクリップ取付座201にクリップ202を装着して、このクリップ202をサイドシル部100の上部側のフランジ部101a,102a接合部に係合させて固定するものも知られている。このサイドシルスカッフ200には、裏面にリブ200aが一体成形されており、このリブ200aをサイドシル部100の上面に当接させてサイドシルスカッフ200の変形を防止するものが知られている。このサイドシルスカッフ200は室内側に延ばした突出部でカーペット106を押さえるようにしている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】実公平8−8913号公報
【特許文献2】実開平2−139149号公報
【特許文献3】特開平9−112513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術によると、サイドシルスカッフ104の車室内側では、フロアパネル103までの距離が長いので、剛性が不充分となる。特に、カーペット106とフロアパネル103の間が空いている場合は、サイドシルスカッフ104にかかる荷重をカーペット106で支えることができない。
また、特許文献2の技術では、サイドシル部100の上部側のフランジ部101a,102a接合部にクリップ202で留めているので、サイドシルスカッフ200の取付位置が高くなり、かつリブ200a高さが高くなると、剛性が不充分となる。このため、リブ200aの厚みを増すと表面側にいわゆるヒケが発生してしまう不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、剛性の向上を図りうるサイドシルスカッフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、車両のドア開口下縁部に設けられたサイドシル部の上方を覆うサイドシルスカッフ構造であって、サイドシルスカッフ本体に、サイドシル部よりも車室内側に突出する突出部を設け、この突出部の裏面から下方に延びて車両のフロアパネルへ当接する支柱を形成したことにある。
また、本発明は、上記サイドシル部に留めるクリップを支持するクリップ取付座と上記支柱を上記サイドシルスカッフ本体の車幅方向に並設し、該クリップ取付座と上記支柱を連結したことにある。
さらに、本発明は、上記サイドシル部に留めるクリップを支持するクリップ取付座と上記支柱を上記サイドシルスカッフ本体の車幅方向に並設し、上記クリップ取付座を、クリップを取り付ける取付面と、この取付面を支持する縦壁で構成し、上記支柱を、上記フロアパネルに当接する当接面と、この当接面を支持する縦壁で構成し、上記クリップ取付座の縦壁の幅方向と、上記支柱の縦壁の幅方向を同一方向に設定したことにある。
またさらに、上記フロアパネル上に配設されるカーペットの端部を上記支柱によって固定したことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、デザイン上、サイドシル部よりも車室内側に突出する突出部を設けたサイドシルスカッフの突出部にかかる荷重を支柱によって支えることができ、剛性の向上を図ることができる。サイドシルスカッフは突出部の裏面から下方に延びて車両のフロアパネルへ当接する支柱を形成したので、突出部にかかる荷重を剛性のあるフロアパネルで支えることができるとともに、サイドシルスカッフの剛性の向上を図ることができる。したがって、フロア嵩上げ材を用いた車両、つまり、車体のフロアパネルに対してカーペットの高さを変更する車両に特に有効である。
また、クリップ取付座と支柱を連結したので、クリップ取付座と支柱の剛性の向上を図ることができる。
さらに、クリップ取付座の縦壁の幅方向と、上記支柱の縦壁の幅方向を同一方向に設定したので、クリップ取付座と支柱を同じスライド型で成形することができることから、型構成が簡単になるとともに、型の抜き方向をクリップ取付座と支柱を同方向に設定することができる。
またさらに、フロアパネル上に配設されるカーペットの端部を上記支柱によって固定したので、カーペットのずれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、自動車のサイドシル部を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図、図3はサイドシルスカッフを下方から見た斜視図、図4は図3のB部拡大図である。
【0011】
図1および図2において、1は自動車の車体2のサイドドアを取り外して示すドア開口部で、このドア開口部1の下縁部には車体の前後方向にサイドシル部3が設けられている。このサイドシル部3は、サイドシルアウタパネル4とサイドシルインナパネル5で略四角形断面の閉じ断面構造に形成されており、サイドシルインナパネル5の上面側にフロアパネル6の側縁部が接合されている。サイドシルアウタパネル4とサイドシルインナパネル5の上部側フランジ部4a,5aは互いにスポット溶接されており、このフランジ部4a,5aの上方には、ドア開口部1の下縁部に沿ってサイドシルスカッフ7が車体の前後方向に配設されている。
【0012】
このサイドシルスカッフ7は、図3に示すように、横断面略円弧状に形成した車体前後方向に長尺の帯状のカバー部材である。このサイドシルスカッフ7は、樹脂成形によって成形したもので、サイドシルスカッフ本体7aの裏面側に長手方向に沿って複数のクリップ取付座71が所定間隔で一体成形されている。このクリップ取付座71は、図4に示すように、クリップ8を取り付けるクリップ取付面72と、このクリップ取付面72を支持する三方の縦壁73とで水平断面で略コ字形に構成されている。クリップ取付面72は、サイドシルインナパネル5の取付面に沿って形成されており、クリップ8の軸方向がサイドシルインナパネル5の取付面に直交するように形成されている。上記クリップ取付面72には、クリップ8を係合する係合溝72aが形成されており、この係合溝72aに括れ部8aを係合させてクリップ8が装着されている(図2参照)。上記クリップ取付座71は、スライド型を利用して成形されるもので、クリップ取付座71の三方の縦壁73は、スライド型の抜き方向を考慮して開口側を形成したもので、車幅方向に対峙する一対の壁部73a,73aと、車体前後方向に向いた1つの壁部73bとで構成されている。
【0013】
上記サイドシルスカッフ7は、図2に示すように、サイドシルスカッフ本体7aの車幅方向に、サイドシル部3よりも車室内側に突出する突出部7bを設けており、この突出部7bの裏面側には、車体の前後方向に沿って所定間隔で、下方向に向けて突出した箱形状の支柱74が垂設されている。この支柱74は上記クリップ取付座71と車幅方向に並ぶように並設されており、フロアパネル6に当接する当接面75と、この当接面75を支持する三方の縦壁76とで水平断面で略コ字形に構成されている。この支柱74の三方の縦壁76は、スライド型の抜き方向を考慮して開口側を形成したもので、車幅方向に対向する一対の壁部76a,76aと、車体前後方向に向いた1つの壁部76bとで構成されている。クリップ取付座71の1つの壁部73bと、支柱74の1つの壁部76bとは、壁部73b,壁部76b相互間を連結する縦壁77と、壁部73a,76a相互間を連結する曲線状に湾曲した連結片78とで車幅方向に連続するように一体成形されている。上記壁部73bと壁部76bと縦壁77とは、一枚の板で一体に成形することもできる。
これによって、クリップ取付座71と支柱74は共通のスライド型を利用して一体成形することができる。なお、上記実施の形態では、クリップ取付座71のクリップ取付面72にはクリップ8を係合する係合溝72aを2箇所に形成したが、総てのクリップ取付座71に係合溝72aを形成しても良い。
【0014】
上記サイドシルスカッフ7のクリップ取付座71に組み付けられたクリップ8は、サイドシルインナパネル5に形成された係合穴9に係合させてサイドシル部3に組みつけられており、サイドシルスカッフ7の支柱74は、フロアパネル6に配設されたカーペット10の側縁部に形成された穴10aに通して、フロアパネル6に当接されている。上記サイドシルスカッフ7の突出部7bの側縁部はカーペット10上面に当接して組み付けられている。カーペット10は、図示しない嵩上げ材によりフロアパネル6よりも上方に配置されている。また、クリップ取付座71の一対の壁部73a,73aと、支柱74の一対の壁部76a,76aと、クリップ取付座71の1つの壁部76bと、支柱74の1つの壁部76bと、縦壁77とは、それぞれ薄肉部を介してサイドシルスカッフ7の裏面と結合されている。
【0015】
上記構成によると、サイドシルスカッフ7はサイドシルインナパネル5に形成された係合穴9に、クリップ取付座71に組み付けられたクリップ8を係合することにより、サイドシル部3に組み付けられる。サイドシルスカッフ7の支柱74は、カーペット10の側縁部に形成された穴10aに通してフロアパネル6に当接するので、カーペット10の保持を行うとともに、サイドシルスカッフ7の上面の剛性を保つことができる。したがって、サイドシルスカッフ7の上面を踏んだ際の面剛性を保つことができる。上記支柱74は上記クリップ取付座71と車幅方向に並ぶように並設されているので、共通のスライド型を利用して成形することができ、型費の削減を図ることができる。スライド型を使って成形できるので、深いフロアにも適用することができる。このように、支柱74によってサイドシルスカッフ7を支えることができるので、サイドシル部3とフロアパネル6の高さが異なる車両で、デザイン上、サイドシルスカッフ7をサイドシル部3よりも突出させる場合、支柱74によってサイドシルスカッフ7の突出部7bにかかる荷重を支えることができ、剛性が向上する。クリップ取付座71と支柱74を縦壁77と、円弧状の連結片78とで連結しているので、クリップ取付座71と支柱74の剛性の向上を図れ、成型時の材料の流れが良くなり、成形性が向上する。本発明では、車体のフロアパネル6の上方に嵩上げ材を用いて間隔を空けてカーペット10を配置し、その上方にカーペット10の端部を覆うようにサイドシルスカッフ7を配置している。しかしながら、サイドシルスカッフ7は突出部7bの裏面から下方に延びて車両のフロアパネル6へ当接する支柱74を形成したので、突出部7にかかる荷重を剛性のあるフロアパネル6で支えることが可能となる。したがって、フロア嵩上げ材を用いた車両、つまり、車体のフロアパネル6に対してカーペット10の高さを変更する車両に特に有効である。
【0016】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、サイドシルスカッフ7の裏面のクリップ取付座71と同位置に支柱74を設けたがクリップ取付座71の数を増やすことにより支柱74の数を増やすこともできる。など、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるサイドシルスカッフ構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のサイドシルスカッフを下方から見た斜視図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】従来のサイドシルスカッフ構造を示す断面図である。
【図6】従来のサイドシルスカッフ構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ドア開口部
2 車体
3 サイドシル部
4 サイドシルアウタパネル
5 サイドシルインナパネル
6 フロアパネル
7 サイドシルスカッフ
8 クリップ
71 クリップ取付座
72 クリップ取付面
73,76,77 縦壁
74 支柱
75 当接面
78 連結片
7a サイドシルスカッフ本体
7b 突出部
72a 係合溝
73a,73b,76a,76b 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口下縁部に設けられたサイドシル部の上方を覆うサイドシルスカッフ構造であって、サイドシルスカッフ本体に、サイドシル部よりも車室内側に突出する突出部を設け、この突出部の裏面から下方に延びて車両のフロアパネルへ当接する支柱を形成したことを特徴とするサイドシルスカッフ構造。
【請求項2】
上記サイドシル部に留めるクリップを支持するクリップ取付座と上記支柱を上記サイドシルスカッフ本体の車幅方向に並設し、該クリップ取付座と上記支柱を連結したことを特徴とする請求項1に記載のサイドシルスカッフ構造。
【請求項3】
上記サイドシル部に留めるクリップを支持するクリップ取付座と上記支柱を上記サイドシルスカッフ本体の車幅方向に並設し、上記クリップ取付座を、クリップを取り付ける取付面と、この取付面を支持する縦壁で構成し、上記支柱を、上記フロアパネルに当接する当接面と、この当接面を支持する縦壁で構成し、上記クリップ取付座の縦壁の幅方向と、上記支柱の縦壁の幅方向を同一方向に設定したことを特徴とする請求項1に記載のサイドシルスカッフ構造。
【請求項4】
上記フロアパネル上に配設されるカーペットの端部を上記支柱によって固定したことを特徴とする請求項1に記載のサイドシルスカッフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−298030(P2006−298030A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119311(P2005−119311)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】