サスペンション用基板、サスペンション用基板の製造方法、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブ
【課題】本発明は、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。そのため、HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャー)にも高機能化が求められている。
【0003】
サスペンション用基板に形成されるリード配線およびライト配線としては、一般的には、それぞれ絶縁層上に一対の配線からなるものが用いられ、差動伝送により電気信号の伝送が行われる。
ここで、このような一対の配線間(第1導体層および第2導体層)には、差動伝送路の特性インピーダンスが存在する。そして、このような特性インピーダンスについては、それぞれ、リード配線およびライト配線が接続される読み取り用(再生用)および書き込み用(記録用)のヘッドのインピーダンスにマッチングするように調整される。
【0004】
一対の配線(第1導体層および第2導体層)の配置としては、従来、絶縁層の同一表面上に形成されていた。これに対して、配線の高密度化やインピーダンスの低下を目的として、一対の配線における一方の配線(第1導体層)と他方の配線(第2導体層)とを、絶縁層を介して積層したスタック構造のサスペンション用基板が知られている(特許文献1の図9)。スタック構造のサスペンション用基板では、特性インピーダンスの調整のために、上記第1導体層および第2導体層どうしが平面視上所定の幅で重なるように配置される必要がある。
【0005】
しかしながら、近年の低消費電力化に伴い、電圧を下げる必要が生じている。一方、磁化反転のために必要な電流値は決まっていることから、従来と同一の電流が必要になる。このため、電圧が下がった場合であってもそれまでと同一の電流をえるために、低インピーダンス化が必要となる。
また、インピーダンス・マッチングをとるために要求される特性インピーダンスの精度は、目的のインピーダンス値の±数%であり、特性インピーダンスが低くなると、それに伴い要求される精度の絶対値が小さくなる。
このため、スタック構造の場合には、上記導体層どうしの平面視上の重なりの程度、すなわち、上記第1導体層および第2導体層の位置精度をより高精度でコントロールする必要が生じている。
しかしながら、スタック構造の導体層が位置精度良く形成されているかを精度良く検出するには、最終的に製造されたサスペンション用基板を切断し、その断面を測定する等の方法しかなく、全数検査が困難であるといった問題や、時間や手間がかかり非効率的であるといった問題があった。
また、その結果、上記サスペンション用基板をHDDに組み込んだ後に特性インピーダンスの調整が不十分である等の不具合が発見され、歩留まりが低下し、コスト上昇の要因となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−133988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成されたポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成されたポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記透明性ポリイミド樹脂の厚みを上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合に、上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記第1導体層および第2導体層がスタック構造を有するものである場合であっても、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の光により、上記第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出の容易なものとすることができる。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含むものであることにより、上記波長470nmから525nmの範囲内の光を用いたズレ検出の容易なものとすることができる。
【0010】
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂が、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであり、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が15質量%以下であることが好ましい。上記透明性ポリイミド樹脂が感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであることにより絶縁層の形成を容易なものとすることができ、また、上記感光剤の添加により容易に感光性を付与することができるからである。
また、上記感光剤の残渣の含有量が上記範囲内であることにより、上記波長の光の透過率の高いものとすることができるからである。
【0011】
本発明においては、上記感光剤が、クマル酸アミド系光塩基発生剤であることが好ましい。上記感光剤残渣の含有量を少ないものとすることが容易だからである。
【0012】
本発明においては、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚さが、24μm以上であることが好ましい。上記導体層や絶縁層の厚み等について設計の自由度の高いものもとすることができるからである。
【0013】
本発明は、上述のサスペンション用基板の検査方法であって、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするサスペンション用基板の検査方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上述のサスペンション用基板であることにより、上記光を用いて、上記ズレ幅を容易に検出することができる。
【0015】
本発明においては、上記入射光が、長波長域の光を含み、上記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことが好ましい。歩留まりを向上させることができるからである。
【0016】
本発明は、上述のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上記検査工程を有することにより、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレを容易に検出することができる。このため、上記ズレの少ないサスペンション用基板を安定的に得ることができる。
【0018】
本発明は、上述のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0019】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続安定性に優れたサスペンションとすることができる。
【0020】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子(例えば、スライダ)と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0021】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、接続安定性に優れた素子付サスペンションとすることができる。
【0022】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0023】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、安定性に優れたハードディスクドライブとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板を提供できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のサスペンション用基板の検査方法の一例を示す説明図である。
【図3】本発明のサスペンション用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のサスペンション用基板の形成方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明のサスペンション用基板の検査方法の一例を示す説明図である。
【図6】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図8】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図9】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図10】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の測定結果である。
【図11】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の計算結果(1μm換算)である。
【図12】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の計算結果(27μm換算)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、サスペンション用基板、それを用いたサスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブ、ならびにその検査方法および製造方法に関するものである。
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション用基板の検査方法、サスペンション用基板の製造方法、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0027】
A.サスペンション用基板
まず、本発明のサスペンション用基板について説明する。
本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするものである。
【0028】
このような本発明のサスペンション用基板について図を参照して説明する。図1は本発明のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明のサスペンション用基板10は、上記金属支持基板1と、上記金属支持基板1上に形成されたベース絶縁層2と、上記ベース絶縁層2上に形成された銅を含む導体部3およびめっき層4を有する第1導体5と、上記第1導体層5上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層6と、上記中間絶縁層6上に形成された銅を含む導体部3およびめっき層4を有する第2導体層7と、上記第2導体層7上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層8と、を有するものであって、上記中間絶縁層6およびカバー絶縁層8の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であること、すなわち、上記カバー絶縁層8表面から470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射した場合の、上記ベース絶縁層2表面からの反射光の強度が25%以上のものである。
【0029】
波長470nmから525nmの範囲内の光は、銅による反射率が十分に高い。このため、銅を含む上記導体層を安定的に検出することができる。また、上記波長の光は、より波長の長い赤色等の光と比較して散乱率が高く、上記導体層を高精度で検出することができる。また、上記波長より短い紫外光等の短波長光と比較してカメラ感度が高く、上記導体層のズレ幅を高精度で検出することができ、また光の照射時に上記サスペンション用基板を構成する材料が焼ける等の不具合の少ないものとすることができる。
また、上記入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記カバー絶縁層側からみてより深い位置に形成される第1導体層を、上記中間絶縁層やカバー絶縁層と十分に区別して判別することができる。
このように上記絶縁層が上記波長の光を十分に透過できることにより、各構成に劣化を生じることなく、上記銅を含む導体層のズレ幅を高精度で検出することができる。
【0030】
本発明によれば、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の、すなわち、上記透明性ポリイミド樹脂を、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層に、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射することで、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層に覆われる第1導体層および第2導体層の平面視形状を精度良く検出することを可能とし、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりの幅の、設計上の上記重なりの幅からのズレであるズレ幅を安定的に検出することができる。
したがって、上記第1導体層および第2導体層がスタック構造を有するものである場合であっても、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の光により、上記第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出の容易なものとすることができる。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含むものであることにより、上記波長470nmから525nmの範囲内の光を用いたズレ検出の容易なものとすることができる。
【0031】
本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板、ベース絶縁層、第1導体層、中間絶縁層、第2導体層およびカバー絶縁層を少なくとも有するものである。
以下、本発明のサスペンション用基板の各構成について詳細に説明する。
【0032】
1.中間絶縁層およびカバー絶縁層
本発明に用いられる中間絶縁層およびカバー絶縁層は透明性ポリイミド樹脂からなるものである。
【0033】
(1)透明性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、その厚みを上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上のものである。
また、本発明において、入射光に対する反射光の強度とは、図2に示すように、対象物の表面側から照射した入射光の強度(入射光強度)に対する、対象物の裏面で反射した光を表面側で検出した反射光の強度(反射光強度)の割合、すなわち、対象物の厚みをHとすると、2Hの厚みの対象物を透過した場合の透過率を示すものである。
したがって、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の入射光に対する反射光の強度とは、上記合計の厚みの2倍の厚みとした場合の透過率をいうものである。
また、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であるとは、470nmから525nmの範囲内の波長のいずれの波長においても上記入射光強度に対する反射光強度の割合が25%以上となることをいうものである。
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂の上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度、すなわち、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層全体の上記波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であるが、上記強度については高ければ高い程検出が容易になるので、上限については特に限定されるものではない。
【0034】
このような透明性ポリイミド樹脂の透過率としては、上述の入射光に対する反射光の強度を達成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚み等により異なるものであるが、例えば、厚みが1μmの場合において、上記470nmから525nmの範囲内の光の透過率が80%以上であることが好ましく、なかでも、80%〜99%の範囲内であることが好ましく、特に85%〜95%の範囲内であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、上記絶縁層の上記波長の光の透過率を上記範囲とすることが容易だからである。
【0035】
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、主成分としてポリイミド樹脂を含むものである。
ここで、主成分として含むとは、上記ポリイミド樹脂の含有量が、上記透明性ポリイミド樹脂中に50質量%以上であることをいうものであり、なかでも本発明においては、65質量%以上であることが好ましく、特に、70質量%以上であることが好ましく、中でも特に80質量%以上であることが好ましい。上記ポリイミド樹脂の含有量が上述の範囲内であることにより、絶縁性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれるポリイミド樹脂の含有量は高ければ高いほど良いため、上限については特に限定されるものではない。
【0036】
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、主成分として上記ポリイミド樹脂を含み、上述の光学的特性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられるものを使用することができる。具体的には、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂からなるものや、上記ポリイミド成分を含み上記感光剤を実施的に含まない非感光性ポリイミド樹脂からなるものを用いることができる。
上記透明性ポリイミド樹脂が感光性ポリイミド樹脂からなるものであることにより、上記絶縁層の形成を容易なものとすることができるからである。また、上記非感光性ポリイミド樹脂からなるものであることにより、反り等の少ないものとすることができるからである。
【0037】
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂が、上記ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂からなるものである場合には、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、なかでも5質量%以下であることが好ましく、特に、3質量%以下であることが好ましく、なかでも特に、実質的に感光剤の残渣を含まないことが好ましい。上記感光剤の残渣の含有量が上述の範囲であることにより、上記波長の光の透過率の高いものとすることができるからである。
なお、上記感光剤の残渣の含有量の測定方法としては、上記感光剤の残渣の含有量を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、感光剤を含まない非感光性ポリイミド樹脂を用いて形成された透明性ポリイミド樹脂の熱重量減少温度を比較することで判断することができる。より具体的には、上記非感光性ポリイミド樹脂を上記感光性ポリイミド樹脂と同条件の熱処理でイミド化してなるものの熱重量減少温度を比較することで、判断することができる。
また、熱処理条件としては、上記中間絶縁層およびカバー層の形成時の条件と同様とすることができる。
【0038】
(a)感光性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる感光性ポリイミド樹脂は、上記ポリイミド成分および感光剤を含むものである。
【0039】
(i)ポリイミド成分
本発明に用いられるポリイミド成分としては、ポリイミドの状態で溶媒に可溶であるものを用いても良いし、加熱処理等のイミド化により上記ポリイミド樹脂となるポリイミド前駆体を用いたものでもよい。保存安定性の観点からは前者が好ましく、線膨張係数との諸特性との両立という観点からは、後者が好ましい。本発明においては、後者の前駆体を用いたものが、各種特性、特に線膨張係数の制御の観点から好ましく用いられる。また上記ポリイミド成分は、上記感光剤を含むことで感光性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、下記式(1)で表される構造を有するポリイミド、および下記式(2)、(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体を用いることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
(式(1)から(3)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、R3は水素原子もしくは1価の有機基繰り返されるR1同士およびR2同士、R3同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
【0044】
本発明におけるポリイミド成分としては、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーのみ用いても、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーを混ぜて使っても、1つのポリマー分子鎖中に上記式(1)、式(2)および式(3)の構造が混ざったものを用いることもできる。
本発明においては、上記ポリイミド成分が上記式(2)または(3)の構造のポリイミド前駆体を少なくとも含むものであることが好ましい。溶媒への溶解性に優れるからである。
本発明においては、なかでも、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル化物などの誘導体)が全体の50%以上あることが望ましく、75%以上であることがさらに好ましく、全て、下記式(2)で示されるポリアミック酸およびその誘導体であることが好ましい。
ポリアミック酸は、酸二無水物とジアミンを溶液中で混合するのみで得られるので、1段階の反応で合成することができ、合成が容易で低コストで入手できるからである。
【0045】
また、副次的な効果として、用いるポリイミド成分が、上記式(2)で示されるようなポリアミック酸である場合、感光剤として用いられる塩基性物質の触媒効果によりイミド化に要する温度が低くても十分な為、最終キュア温度を300℃未満、更に好ましくは250℃以下まで下げることが可能である。従来のポリアミック酸はイミド化するために最終キュア温度を300℃以上とする必要があった為、用途が制限されていたが、最終キュア温度を下げることが可能になったことによって、より広範囲の用途に適用が可能である。
【0046】
また、式(2)からなるポリアミック酸(およびその誘導体)については、合成の容易さおよびアルカリ現像液に対する溶解性の高さから、R3が全て水素原子であるポリアミック酸であることが特に好ましい。しかし、現像速度が速すぎて、パターン残存部の溶解性が高すぎる場合には、イミド化が進行したものを用いるもしくは、上記(2)および(3)におけるR3に1価の有機基を導入して溶解速度を下げることができる。
【0047】
なお、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)の含有率は、100%−イミド化率(%)で求めることができる。したがって、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)が全体の50%である場合には、イミド化率が50%であることを示す。
また、イミド化率は、例えば、赤外線吸収スペクトルを用いて確認することができる。具体的には、上記ポリイミド樹脂に含まれるイミド結合由来のC=O二重結合のピーク面積から定量することにより求めることができる。
【0048】
また、式(3)については、左右非対称であるが、1つのポリマー分子鎖中に左右の向きが異なるものが含まれていてもよい。
【0049】
なお、R1の4価は酸と結合するための価数のみを示しているが、他に更なる置換基を有していても良い。同様に、R2の2価はアミンと結合するための価数のみを示しているが、他に更なる置換基を有していても良い。
【0050】
上記式(1)から(3)において、一般に、R1は酸二無水物由来の構造であり、R2はジアミン由来の構造である。
【0051】
本発明に用いられるポリイミド成分を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、上記(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体の形成方法としては、(i)酸二無水物とジアミンからポリアミック酸を合成する手法や、(ii)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成したエステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させて形成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
また、上記(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体または上記(1)で表されるポリイミドの形成方法としては、上記(2)で表されるポリイミド前駆体を加熱によりイミド化する方法が挙げられる。
【0052】
また、上記式(1)〜(3)で表される構造を有するポリイミド成分は、酸二無水物とジアミンの反応により得られるが、最終的に得られるポリイミド樹脂に優れた耐熱性及び寸法安定性を付与する点から、前記化学式(1)〜(3)において、R1又はR2が芳香族化合物であることが好ましく、R1及びR2が芳香族化合物であることがより好ましい。
本発明においては、最終的に得られるポリイミド樹脂に耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが特に好ましい。
またこのとき、前記化学式(1)〜(3)のR1において、当該R1に結合している4つの基((−CO−)4)は同一の芳香環に結合していても良く、異なる芳香環に結合していても良い。同様に、前記化学式(1)〜(3)のR2において、当該R2に結合している2つの基((−NH−)2)は同一の芳香環に結合していても良く、異なる芳香環に結合していても良い。
【0053】
また、前記化学式(1)〜(3)で表されるポリイミド成分は、単一の繰り返し単位からなるものでも、2種以上の繰り返し単位から成るものでもよい。
【0054】
本発明において、上記ポリイミド成分を得るための反応に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
【0055】
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0056】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、透明性をそれほど損なわずに溶解性や熱膨張率等の物性を調整することが可能である。また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
【0057】
一方、ジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されず、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0058】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等の芳香族アミン;
【0059】
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等の脂肪族アミン;
【0060】
1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミンが挙げられる。グアナミン類としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどを挙げることができ、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0061】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0062】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミド樹脂は低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4―ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0063】
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(4)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0064】
【化4】
【0065】
(化学式(4)中、aは1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
【0066】
さらに、上記式(4)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0067】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
【0068】
本発明に用いられる式(2)で表されるポリイミド成分を合成するには、例えば、アミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチルピロリドンなどの有機極性溶媒に溶解させた溶液を冷却しながら、そこへ等モルの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を徐々に加え撹拌することにより得ることができる。
【0069】
本発明に用いられるポリイミド成分は、感光性ポリイミド樹脂とした際の感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長に対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
露光波長に対してポリイミド成分の透過率が高いということは、それだけ、電磁波のロスが少ないということであり、高感度の感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0070】
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、更に好ましくは15%、特に好ましくは50%以上である。
【0071】
本発明に用いられるポリイミド成分の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミド樹脂などの高分子とした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
【0072】
本発明に用いられるポリイミド成分の含有量としては、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、上記感光性ポリイミド樹脂の固形分全体に対し、50質量%以上であることが好ましく、なかでも、70質量%以上であることが好ましい。
なお、感光性ポリイミド樹脂の固形分とは溶媒以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0073】
(ii)感光剤
本発明に用いられる感光剤としては、上記ポリイミド成分に感光性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、感光性ポリイミド樹脂に一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、電磁波の照射と加熱により、塩基を発生する塩基発生剤等を用いることができる。より具体的には、下記一般式(a)で表されるようなクマル酸アミド系塩基発生剤、カーバメート型塩基発生剤およびニフェジピン等の塩基発生剤、またはこれらの混合物を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、上記クマル酸アミド系塩基発生剤を好ましく用いることができる。上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、上記ポリイミド成分をイミド化する加熱処理等により、分解または揮発し易いものである。このため、上記透明性ポリイミドを上記感光剤の残渣の少ないものとすることができ、透過率に優れた絶縁層とすることができるからである。したがって、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みが厚い場合であっても、十分な透過率を示すものとすることができ、上記導体層のズレ幅を容易に検出可能なものとすることができるからである。
【0074】
【化5】
【0075】
(式(a)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R21及びR22の少なくとも1つは1価の有機基である。R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0076】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、上記のような特定の構造を有するため、紫外線などの光線が照射されることにより、上記式(a)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR21R22)を生成する。すなわち、上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、その構造に応じて、塩基として、第1級アミン、第2級アミン、アミジン系化合物を生成しうる。
また、アミンの触媒作用によって、上記ポリイミド成分が最終生成物となる際の反応が開始される温度を下げたり、上記ポリイミド成分が最終生成物となる硬化反応を開始することができる。
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、電磁波が照射されるだけでも塩基を発生するが、適宜加熱をすることにより、塩基の発生が促進される。
【0077】
【化6】
【0078】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、環化することで、フェノール性水酸基を消失し、溶解性が変化し、塩基性水溶液等の場合には溶解性が低下する。これにより、上記ポリイミド成分の最終生成物への反応による溶解性の低下を更に補助する機能を有し、露光部と未露光部の溶解性コントラストを大きくすることが可能となる。
【0079】
R21及びR22は、それぞれ、独立に水素原子又は1価の有機基であるが、R21及びR22のうち少なくとも1つは1価の有機基である。また、NHR21R22は、塩基(塩基性物質)であるが、R21及びR22は、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。R21及びR22に、アミノ基が含まれてしまうと、塩基発生剤自体が塩基性物質となり、上記ポリイミド成分の反応を促進してしまい、露光部と未露光部での溶解性コントラストの差が小さくなってしまう恐れがある。但し、例えば、R21及びR22の有機基中に存在する芳香環にアミノ基が結合している場合のように、電磁波の照射と加熱後に発生する塩基との塩基性と差が生じる場合には、R21及びR22の有機基にアミノ基を含まれていても用いることができる場合もある。
1価の有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0080】
また、R21及びR22は、それらが結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
【0081】
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0082】
前記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0083】
生成する塩基性物質はNHR21R22であるため、1級アミン、2級アミン、又は複素環式化合物が挙げられる。またアミンには、それぞれ、脂肪族アミン及び芳香族アミンがある。なお、ここでの複素環式化合物は、NHR21R22が環状構造を有し且つ芳香族性を有しているものをいう。芳香族複素環式化合物ではない、非芳香族複素環式化合物は、ここでは脂環式アミンとして脂肪族アミンに含まれる。
【0084】
更に、生成するNHR21R22は、アミド結合を形成可能なNH基を1つだけ有するモノアミン等の塩基性物質だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基性物質であってもよい。生成するNHR21R22がNH基を2つ以上有する塩基性物質の場合、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、アミド結合を形成可能なNH基を有する塩基を電磁波の照射と加熱により発生するような光潜在性部位が更に結合している構造が挙げられる。上記光潜在性部位としては、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、式(a)のR21及び/又はR22を除いた残基が更に結合している構造が挙げられる。
【0085】
生成するNHR21R22のうち、脂肪族1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソアミルアミン、tert−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘプタンアミン、オクチルアミン、2−オクタンアミン、2,4,4−トリメチルペンタン−2−アミン、シクロオクチルアミン等が挙げられる。
【0086】
芳香族1級アミンとしては、アニリン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、及び4−アミノフェノール等が挙げられる。
【0087】
脂肪族2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、メチルアジリジン、ジメチルアジリジン、メチルアゼチジン、ジメチルアゼチジン、トリメチルアゼチジン、メチルピロリジン、ジメチルピロリジン、トリメチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、トリメチルピペリジン、テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジン等が挙げられ、中でも脂環式アミンが好ましい。
【0088】
芳香族2級アミンとしては、メチルアニリン、ジフェニルアミン、及びN−フェニル−1−ナフチルアミンが挙げられる。また、アミド結合を形成可能なNH基を有する芳香族複素環式化合物としては、塩基性の点から分子内にイミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)を有することが好ましく、イミダゾール、プリン、トリアゾール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0089】
アミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基としてはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミンを挙げることができる。
【0090】
R21及びR22の位置に導入される置換基によって、生成する塩基性物質の熱物性や塩基性度が異なる。
上記ポリイミド成分から最終生成物への反応に対する反応開始温度を低下させる等の触媒作用は、塩基性の大きい塩基性物質の方が触媒としての効果が大きく、より少量の添加で、より低い温度での最終生成物への反応が可能となる。一般に1級アミンよりは2級アミンの方が塩基性は高く、その触媒効果が大きい。
また、芳香族アミンよりも脂肪族アミンの方が塩基性が強いため好ましい。
【0091】
また、本発明で発生する塩基が、2級アミン及び/又は複素環式化合物である場合には、塩基発生剤としての感度が高くなる点から好ましい。これは、2級アミンや複素環式化合物を用いることで、アミド結合部位の活性水素がなくなり、このことにより、電子密度が変化し、異性化の感度が向上するからではないかと推定される。
【0092】
また、脱離する塩基の熱物性、及び塩基性度の点から、R21及びR22の有機基は、それぞれ独立に炭素数1〜20が好ましく、更に炭素数1〜12が好ましく、特に炭素数1〜8であることが好ましい。
【0093】
また、上記クマル酸アミド系塩基発生剤から生ずる塩基は、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。発生する塩基がアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する場合には、塩基発生剤において、電磁波の照射と加熱により切断されるアミド結合を2つ以上有することになり、例えば桂皮酸誘導体残基のような吸光団が1分子に2つ以上存在することになる。このような場合には、通常分子量が大きくなるため、溶媒溶解性が悪くなるという問題がある。また、吸光団を1分子内に2つ以上有する場合、吸光団と塩基が結合しているアミド結合が1つ切断されれば塩基になるが、吸光団を未だ含むような塩基は分子量が大きいため、拡散性が悪くなり、塩基発生剤として用いる場合の感度が悪くなってしまう。更に、塩基発生剤を合成する際、吸光団が1つの場合には、相対的に安価な塩基を過剰量加えて合成するが、吸光団が2つ以上の場合には、相対的に高価な吸光団部分の原料を過剰量加える必要がある。また、アミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有するような塩基の場合、合成後の精製が困難であるという問題もある。中でも特に、ポリイミド前駆体と組み合わせる場合には、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。
【0094】
発生する2級アミン及び/又は複素環式化合物の構造としては、中でも、下記式(b)で表されることが好ましい。
【0095】
【化7】
【0096】
(式(b)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数4〜22のシクロアルキル基である。R21及びR22は、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0097】
式(b)のR21及びR22において、アルキル基は直鎖でも分岐でも良い。アルキル基としては更に炭素数1〜8であることが好ましく、シクロアルキル基としては更に炭素数4〜10であることが好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数4〜12の環状構造となっている脂環式アミンも好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数2〜12の環状構造となっている複素環式化合物も好ましい。
【0098】
R23、R24、R25及びR26、は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
1価の有機基としては、特に制限がなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0099】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0100】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
中でも、R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0101】
また、R23〜R26は、それらのうち2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R23〜R26は、それらの2つ以上が結合して、R23〜R26が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していても良い。
【0102】
本発明においては本発明の置換基R23〜R26に、置換基を1つ以上導入することが好ましい。すなわち、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であることが好ましい。置換基R23〜R26に、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。芳香族環の共役鎖を伸ばすような置換基を導入することにより、吸収波長を長波長にシフトすることができる。また、溶解性や組み合わせる高分子前駆体との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせる高分子前駆体の吸収波長も考慮しながら、感光性樹脂組成物の感度を向上させることが可能である。
【0103】
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
【0104】
R23〜R26としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基(−ROAr基)、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基をもつ炭素数2〜11のアルキル基、水酸基をもつ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基(−SR基)、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(−SCH3)等が好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でも良い。
また、R23〜R26としては、それらの2つ以上が結合して、R23〜R26が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0105】
また、本発明において、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが水酸基である場合、R23、R24、R25及びR26に水酸基を含まない化合物と比べ、塩基性水溶液等に対する溶解性の向上、および吸収波長の長波長化が可能な点から好ましい。また、特にR26がフェノール性水酸基である場合、シス体に異性化した化合物が環化する際の反応サイトが増えるため、環化しやすくなる点から好ましい。
【0106】
化学式(a)で表される構造は、トランス体及び/又はシス体であり、トランス体のみを用いても良いし、トランス体とシス体の混合物を用いても良いが、溶解性コントラストを高められる点から、トランス体の割合が90〜100%であることが好ましく、トランス体のみを用いることがより好ましい。
【0107】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、加熱して初期の重量から5%重量が減少したときの温度(5%重量減少温度)が100℃以上であることが好ましい。感光性ポリイミド樹脂の場合、塗膜を形成する際にN−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いる必要があるが、このように5%重量減少温度が高い場合には残留溶媒の影響が少なくなるような乾燥条件で塗膜を形成することができる。これにより、残留溶媒の影響による露光部と未露光部での溶解性コントラストの減少を抑制することができる。
【0108】
また、本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂中に上記感光剤に由来する不純物が残存しないことが好ましいため、本発明に用いられるクマル酸アミド系塩基発生剤は、現像後に行う加熱のプロセス(例えば、イミド化のプロセス)で分解、又は揮発してしまうことが好ましい。具体的には、初期の重量から50%重量が減少したときの温度(50%重量減少温度)が400℃以下であることが好ましく、更に350℃以下であることが好ましい。また、発生する塩基の沸点が25℃以上であることが、室温での取り扱い性が良好になることから好ましい。発生する塩基の沸点が25℃以上でない場合には、塗膜とした際に、特に乾燥時に生成したアミンが蒸発しやすくなってしまうため作業が困難となる恐れがある。
【0109】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤を用いる際の、塩基を発生させるための加熱温度としては、組み合わせる高分子前駆体や目的により適宜選択され、特に限定されない。塩基発生剤が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱も同時に行われても良い。反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上である。しかしながら、組み合わせて用いられる高分子前駆体によっては、例えば60℃以上の加熱で未露光部についても硬化するものもあるので、好適な加熱温度は、上記に限定されない。
また、上記クマル酸アミド系塩基発生剤の塩基発生以外の分解を防ぐために、300℃以下で加熱することが好ましい。
【0110】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は電磁波の照射のみでも塩基を発生するが、適宜加熱することにより塩基の発生が促進される。従って、効率的に塩基を発生させるために、上記クマル酸アミド系塩基発生剤を用いる際には、露光後又は露光と同時に加熱を行うことにより塩基を発生する。露光と加熱を交互に行ってもよい。最も効率が良い方法は、露光と同時に加熱する方法である。
【0111】
本発明におけるクマル酸アミド系塩基発生剤の合成方法を、2−ヒドロキシ桂皮酸アミドを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明における塩基発生剤は、複数の従来公知の合成ルートで合成することができる。
【0112】
2−ヒドロキシ桂皮酸アミドは、例えば、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンを反応させることにより合成できる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の縮合剤存在下、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンをテトラヒドロフランに溶解し、撹拌することで目的物を得ることができる。
各置換基を導入した桂皮酸の合成は、対応する置換基を有するヒドロキシベンズアルデヒドにwittig反応または、Knoevenagel反応、又はPerkin反応を行うことで合成できる。中でも、wittig反応はトランス体が選択的に得られやすい点から好ましい。尚、例えば、上記対応する置換基を有するアルデヒドの合成は、対応する置換基を有するフェノール等にDuff反応やVilsmeier−Haack反応を行うことで合成できる。
【0113】
本発明における塩基発生剤は、ポリイミド成分が最終生成物となるための塩基発生の機能を十分に発揮させるために、露光波長の少なくとも一部に対して吸収を有する必要がある。一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長としては、365nm、405nm、436nmがある。このため、本発明におけるクマル酸アミド系塩基発生剤は、少なくとも365nm、405nm、436nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長の電磁波に対して吸収を有することが好ましい。このような場合、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0114】
上記感光剤は、そのモル吸光係数が、電磁波の波長365nmにおいて100以上、又は405nmにおいて1以上であることが、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0115】
なお、本発明における感光剤が上記波長領域に吸収を有することは、当該波長領域に吸収をもたない溶媒(例えば、アセトニトリル)に、上記感光剤を1×10−4mol/L以下の濃度(通常、1×10−4mol/L〜1×10−5mol/L程度。適度な吸収強度となるように、適宜、調節してもよい。)で溶解し、紫外可視分光光度計(例えば、UV−2550(株)島津製作所製))により吸光度を測定することにより明らかにすることができる。
【0116】
本発明に用いられる感光剤の含有量としては、所望のパターンの感光性ポリイミド絶縁層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な含有量とすることができる。
一般的にポリイミド樹脂は高耐熱性の樹脂として知られており、高い耐熱性を有することから、ポリイミド成分よりも、感光剤の方が耐熱性が低い傾向にあるので、ポリイミド成分に対する感光剤の割合を減らした方が、低アウトガス性となる。
このようなことから上記感光剤の含有量は少ない方が好ましく、本発明においては、上記感光剤が、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.5重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。
なお、本発明における感光剤が、上記クマル酸アミド系塩基発生剤である場合には、
その含有量としては、上述の範囲より多いものとすることができる。上記クマル酸アミド系塩基発生剤は加熱等により分解または揮発により残存しにくいため、含有量が多い場合であっても、上記透明性ポリイミド樹脂中への残存量が少ないものとすることができるからである。具体的には、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.5重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも、1重量部〜25重量部の範囲内であることが好ましく、特に、3重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましい。十分な感光性を付与することができ、かつ、その場合であっても上記透明性ポリイミド樹脂への残存が少ないからである。したがって、露光・現像によるパターニングが容易で、かつ、透明性に優れた絶縁層を形成することができるからである。
【0117】
(iii)溶媒
本発明における感光性ポリイミド樹脂としては、必要に応じて溶媒を含むものであっても良い。
このような溶媒としては、上記ポリイミド成分を均一に分散または溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。
【0118】
また、ポリイミド成分としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸を用いる場合には、ポリアミック酸の合成反応により得られた溶液をそのまま溶媒として用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良い。
【0119】
(iv)増感剤
本発明においては、上記光塩基発生剤の吸収波長がポリイミド成分の吸収波長と重なる部分があり、十分な感度が得られない場合において、感度向上の手段として、増感剤の添加が効果を発揮する場合がある。また、ポリイミド成分を透過する電磁波の波長帯に上記光塩基発生剤が吸収波長を有する場合においても、感度向上の手段として、増感剤を添加することができる。ただし、増感剤の添加によるポリイミド成分の含有率の減少に伴う、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の低下に関して考慮に入れる必要がある。
【0120】
増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントン及び、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、シアニン及び、その誘導体、メロシアニン及び、その誘導体、クマリン系及び、その誘導体、ケトクマリン及び、その誘導体、ケトビスクマリン、及びその誘導体、シクロペンタノン及び、その誘導体、シクロヘキサノン及び、その誘導体、チオピリリウム塩及び、その誘導体、キノリン系及び、その誘導体、スチリルキノリン系及び、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系及び、その誘導体、オキソノール系及び、その誘導体、ローダミン系及び、その誘導体、ピリリウム塩及び、その誘導体等が挙げられる。
【0121】
シアニン、メロシアニン及び、その誘導体の具体例としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨ−ジド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。
クマリン、ケトクマリン及び、その誘導体の具体例としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
チオキサントン及び、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0122】
さらに他にはベンゾフェノン、アセトフェノン、アントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、1,2−ベンズアンスラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、p,p’−テトラエチルジアミノベンゾフェノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、2,5−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロペンタン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)−カルコン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)−カルコン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、1,3−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−アセトン、1,3−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−アセトン、N−フェニル−ジエタノールアミン、N−p−トリル−ジエチルアミン、などが挙げられる。
本発明ではこれらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。
【0123】
(v)その他
本発明における感光性ポリイミド樹脂は、少なくとも上記ポリイミド成分、感光剤、および溶媒を含むものであるが、必要に応じて他の成分を含むものであっても良い。
このような他の成分としては、熱硬化性成分、ポリイミド前駆体以外のバインダー樹脂、その他の添加剤を配合して、感光性ポリイミド樹脂を調製してもよい。
【0124】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0125】
また、本発明における他の任意成分の配合割合は、上記感光性ポリイミド樹脂の固形分全体に対し、0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、20質量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくいからである。
【0126】
(b)非感光性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる非感光性ポリイミド樹脂としては、実質的に感光性を有さないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリイミド成分を含み、上記感光剤を実質的に含まないものを挙げることができる。
なお、実質的に含まないとは、一般的な感光性ポリイミド樹脂での露光・現像条件でパターニングできない程度の含有量以下の含有量であることをいうものであり、通常、全く含まれないものである。
【0127】
本発明に用いられる非感光性ポリイミド樹脂は、必要に応じて溶媒やその他の成分を含むことができる。このような溶媒およびその他の成分としては、上記「(a)感光性ポリイミド樹脂」の項に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0128】
(2)中間絶縁層およびカバー絶縁層
本発明に用いられる中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚み、すなわち、上記第1導体層が形成される上記ベース絶縁層表面から上記カバー絶縁層表面までの距離としては、上記導体層や絶縁層を安定的に形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、20μm〜35μmの範囲内とすることができる。
本発明において、上記絶縁層を高い透過率を有するものとする観点からは、上記絶縁層の厚みはできるだけ薄い方が好ましいが、上記透明性ポリイミド樹脂が、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合に、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上となる範囲内で厚みが厚い方が好ましい。具体的には、25μm〜35μmの範囲内であることが好ましく、特に、30μm〜35μmの範囲内であることが好ましい。上記導体層や絶縁層の厚み等について設計の自由度の高いものもとすることができるからである。また、入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、十分にズレ幅を検出することができるからである。
【0129】
本発明における中間絶縁層の厚み、すなわち、上記第1導体層を含む、上記ベース絶縁層表面から上記中間絶縁層の表面までの距離としては、上記第1導体層を安定的に覆うことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm〜25μmの範囲内とすることができる。また、上記カバー絶縁層の厚み、すなわち、上記第2導体層を含む、上記中間絶縁層表面から上記カバー絶縁層の表面までの距離としては、上記第2導体層を安定的に覆うことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm〜20μmの範囲内とすることができる。
【0130】
本発明において用いられる中間絶縁層およびベース絶縁層の形成方法としては、所望のパターンの中間絶縁層およびベース絶縁層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記材料を含む液状の絶縁層形成用塗工液を塗布またはドライフィルム状の材料を貼り合わせ、その後、露光・現像またはフォトリソ法によりパターニングする方法を用いることができる。
【0131】
2.第1導体層および第2導体層
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、それぞれ、上記ベース絶縁層および中間絶縁層上に形成され、上記第1導体層および第2導体層が平面視上少なくとも一部が重複するように形成されるものである。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものである。
【0132】
本発明における導体部としては、少なくとも銅を含むものである。このような導体部を構成する材料に含まれる銅の含有量としては、上記導体層が所望の導電性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、銅のみからなるものである。
【0133】
本発明に用いられる導体部の厚みとしては、上記導体層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば5μm〜18μmの範囲内とすることができ、なかでも9μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。
【0134】
本発明に用いられる導体部の幅としては、所望の導電性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のサスペンション用基板の低剛性化を図ることができるからである。
【0135】
本発明に用いられる導体部の形成方法としては、上記導体部を精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられる方法を使用することができる。例えば、上記導体部の材料からなる導体部形成用層を電界めっき法等により形成した後、レジストを用いたエッチングによりパターニングし、上記導体部を形成する方法を挙げることができる。
【0136】
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、平面視上少なくとも一部が重複するように形成されるものである。
ここで、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重複の程度については、上記各導体層の幅や要求される特性インピーダンス等に応じて適宜設定されるものである。
【0137】
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、上記導体部がめっき層により被覆されるものであっても良い。特に、はんだパッドのように、表面が露出する箇所はめっき層により被覆されることが好ましい。めっき層の一例としては、金めっき層を挙げることができる。また、金めっき層の下地としてニッケルめっき層が形成されていても良い。めっき層の厚さは、例えば0.1μm〜4.0μmの範囲内とすることができる。
本発明において、上記めっき層を形成する方法としては、例えば、電解めっき法を挙げることができる。
【0138】
3.金属支持基板
本発明に用いられる金属支持基板は、上記ベース絶縁層、導体層(第1導体層および第2導体層)、および絶縁層(中間絶縁層およびカバー絶縁層)を支持するものである。
このような金属支持基板の材料としては、特に限定されるものではないが、ばね性を有する金属であることが好ましく、具体的には、SUS等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる金属支持基板の厚さとしては、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内とすることができる。
【0139】
本発明に用いられる金属支持基板の形成箇所としては、本発明のサスペンション用基板が所望の機械強度を有するものとすることができるものであれば良いが、なかでも、図3に例示するように、上記第1導体層および第2導体層が形成される位置に開口部が形成されるものであることが好ましい。ノイズの少ないものとすることができるからである。
【0140】
本発明に用いられる金属支持基板の形成方法としては、所望のパターンの金属支持基板を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられる方法を使用することができる。具体的には、レジストを用いたエッチングによりパターニングする方法等を用いることができる。
【0141】
4.ベース絶縁層
本発明に用いられるベース絶縁層は、上記金属支持基板上に形成されるものである。
【0142】
このようなベース絶縁層の材料としては、上記金属支持基板と上記第1導体層との短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではなく、通常ポリイミド樹脂(PI)等の絶縁性樹脂を挙げることができる。また、上記ベース絶縁層の材料は、感光性材料であっても良いが、非感光性材料であることが好ましい。材料選択の幅を広いものとすることができるからである。また、非感光性材料は吸湿膨張係数が低く、反り等の発生の少ないものとすることができるからである。
このような感光性材料および非感光性材料としては、具体的には、上記「1.中間絶縁層およびカバー絶縁層」の項に記載の感光性ポリイミド樹脂および非感光性ポリイミド樹脂を用いることができる。
【0143】
また、上記ベース絶縁層の厚さとしては、上記金属支持基板と上記第1導体層との短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、5μm〜10μmの範囲内とすることができる。
【0144】
本発明において用いられるベース絶縁層の形成方法としては、所望のパターンのベース絶縁層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記中間絶縁層およびベース絶縁層と同様とすることができる。
【0145】
5.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板の製造方法としては、上記各構成が精度良く形成される方法であれば良い。
このようなサスペンション用基板の各構成の形成方法としては、上記「1.中間絶縁層およびカバー絶縁層」、「2.第1導体層および第2導体層」、「3.金属支持基板」および「4.ベース絶縁層」の項に記載方法を用いることができる。
また、上記金属支持基板、ベース絶縁層および第1導体層については、上記金属支持基板上に、上記ベース絶縁層および第1導体層をこの順で形成するものであっても良く、上記金属支持基板を構成する材料からなる金属基板形成用層と、上記金属基板形成用層上に形成され、上記ベース絶縁層を形成可能な材料からなるベース絶縁層形成用層と、上記ベース絶縁層形成用層上に形成され、上記第1導体層を形成可能な材料からなる第1導体層形成用層とを有する積層体を形成した後に、上記第1導体層および金属支持基板、ベース絶縁層の順で形成するものであっても良い。
本発明においては、なかでも、上記積層体を用いる方法であることが好ましい。上記各構成を精度良く形成することができるからである。
【0146】
このようなサスペンション用基板の製造方法としては、具体的には、図4に例示するように、まず、金属支持基板を形成可能な金属支持基板形成用層1xを準備し、上記金属支持基板形成用層1xの表面上にベース絶縁層を形成可能なベース絶縁層形成用層2x、上記ベース絶縁層形成用層2x上にスパッタリング法を用いてシード層(図示せず)を形成し、その後、上記シード層上に、電解めっき法により銅からなり、上記第1導体層を形成可能な第1導体層形成用層5xを形成することにより積層体を形成する(図4(a))。
その後、図4(b)に示すように、上記金属支持基板形成用層1xおよび上記導体層形成用層5x上に、ドライフィルムレジスト(DFR)を用いてレジストを形成し、ウェットエッチングすることにより、上記金属支持基板形成用層1xから金属支持基板1を、上記第1導体層形成用層5xから銅の導体部3からなる第1導体層5を形成し、その後、感光性ポリイミド樹脂を含む塗工液を塗布・乾燥した後、露光・現像し、さらに、加熱処理を行いイミド化することにより中間絶縁層6を形成する(図4(b))。
その後、図4(c)に示すように、パターン状のレジストを配置した状態で、電解めっきすることにより銅の導体部3からなる第2導体層7を形成する。さらに図4(d)に示すように上記第2導体層7を覆うようにカバー絶縁層の材料を含む塗工液を塗布し、乾燥した後、露光・現像し、さらに、加熱処理によりイミド化することによりカバー絶縁層8を形成する方法を挙げることができる。
【0147】
本発明のサスペンション用基板の用途としては、ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドサスペンション等に用いられ、なかでも配線が高密度化された場合であっても、ノイズが少ないことを要求されるハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドサスペンションに好適に用いられる。
【0148】
B.サスペンション用基板の検査方法
次に、サスペンション用基板の検査方法について説明する。
本発明のサスペンション用基板の検査方法は、上述のサスペンション用基板の検査方法であって、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするものである。
【0149】
このような本発明のサスペンション用基板の検査方法を図を参照して説明する。既に説明した図2に示すように、本発明のサスペンション用基板の検査方法は、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出するものである。
【0150】
本発明によれば、上述のサスペンション用基板であることにより、上記光を用いて、上記ズレ幅を容易に検出することができる。
【0151】
本発明において用いられる上記サスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0152】
本発明において用いられる光は、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を用いるものである。
本発明においては、上記470nmから525nmの範囲内に含まれるいずれかの波長の光を用いるものであれば良いが、なかでも、470nm、505nmおよび525nmの波長の光を含むことが好ましく、特に、470nmから525nmの範囲内の全ての波長の光を用いて検出することが好ましい。より精度良く、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することができるからである。
また、本発明においては、上記入射光が、長波長域の光を含み、上記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことが好ましい。歩留まりを向上させることができるからである。
本発明における長波長域の光としては、525nm以上の波長の光であれば特に限定されるものではなく、検出する異物等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、525nm〜850nmの範囲内の光であることが好ましく、なかでも、660nm〜850nmの範囲内の光であることが好ましい。上記光が上述の波長の光を含むことにより、異物等をより精度良く検出することができるからである。
【0153】
本発明において、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出する方法としては、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記第1および第2導体層それぞれについて、上記サスペンション用基板上の位置決めマークからの距離を測定し、設計上の距離とのズレ幅を検出する方法等を挙げることができるが、なかでも、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体の幅を、設計上の上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体幅と比較する方法、すなわち、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体の幅と、目標とする平面視上の全体幅とを比較する方法を好ましく用いることができる。例えば、図5に例示するように、上記第1導体層および第2導体層が同一幅であり、両者が、平面視上完全に重なるように設計した場合、上記第1導体層および第2導体層の全体幅を検出し、目標の全体幅と比較することで、ズレ幅を求めることができる。
【0154】
本発明において、上記入射光を照射する箇所としては、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を精度良く検出できる箇所であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記サスペンション用基板の上記第1導体層および第2導体層が平面視上重複するスタック構造を形成している箇所の一部であっても良く、スタック構造を形成している全ての上記第1導体層および第2導体層を検査するものであっても良い。
【0155】
C.サスペンション用基板の製造方法
次に、サスペンション用基板の製造方法について説明する。
本発明のサスペンション用基板の製造方法は、上述のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、を有することを特徴とするものである。
【0156】
このような本発明のサスペンション用基板の製造方法について、図を参照して説明する。図6は本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す工程図である。図6に例示するように、まず、上記サスペンション用基板10を形成し(図6(a))、次いで、図6(b)に示すように、上記カバー絶縁層8側から上記波長の光を入射光として照射し、反射光を検出し、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出するものである。
なお、図6(a)がサスペンション用基板形成工程であり、図6(b)が検査工程である。また、図6中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
本発明によれば、上記検査工程を有することにより、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレを容易に検出することができる。このため、上記ズレの少ないサスペンション用基板を安定的に得ることができる。
【0158】
本発明のサスペンション用基板の製造方法は、少なくとも上記サスペンション用基板形成工程および検査工程を有するものである。
以下、このような本発明のサスペンション用基板の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0159】
1.サスペンション用基板形成工程
本発明におけるサスペンション用基板形成工程は、上記サスペンション用基板を形成する工程である。
このようなサスペンション用基板の形成方法としては、上記各構成を精度良く形成できる方法であれば良く、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様とすることができる。
【0160】
2.検査工程
本発明における検査工程は、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する工程である。
ここで、上記サスペンション用基板の検査方法については上記「B.サスペンション用基板の検査方法」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
本工程においては、上記サスペンション用基板の検査方法で検査した後に、検査結果に基づいて、良・不良を判断する判断処理を行うものであることが好ましい。
【0162】
本工程における判断処理方法としては、上記検査結果に基づいて良・不良の判断を行うものであれば良いが、具体的には、設計上の重なり状態からのズレ幅のち、許容範囲内の特性インピーダンスとすることができる許容ズレ幅より大きいか小さいかにより行う方法を挙げることができる。より具体的には、上記第1導体層および第2導体層の全体幅を、設計上の上記全体幅と比較する場合には、検査により得られた上記全体幅と、設計上の全体幅とのズレ幅が、上記許容ズレ幅以上であるか否かで判断する方法を用いることができる。
本工程においては、上記許容ズレ幅としては、上記導体層や絶縁層のサイズ等により異なるものであり、許容範囲内の特性インピーダンスを達成できるものであれば特に限定されるものではないが、得られた第1導体層および第2導体層が有する特性インピーダンスを、目標の特性インピーダンスの±7%以内とすることができるものであることが好ましく、なかでも、±5%以内とすることができるものであることが好ましい。具体的には、上記許容ズレ幅が、±20μm以内であることが好ましく、なかでも、±10μm以内であることが好ましい。上記ズレ幅が上述の範囲であることにより、ノイズ等の少ないものとすることができるからである。
【0163】
D.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0164】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続安定性に優れたサスペンションとすることができる。
【0165】
図7は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図7に示されるサスペンション30は、上述したサスペンション用基板10と、素子実装領域20が形成されている表面とは反対側のサスペンション用基板10の表面に備え付けられたロードビーム31とを有するものである。
【0166】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。サスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0167】
E.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子(例えば、スライダ)と、を有することを特徴とするものである。
【0168】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、接続安定性に優れた素子付サスペンションとすることができる。
【0169】
図8は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図8に示される素子付サスペンション40は、上述したサスペンション30と、サスペンション30の素子実装領域20に実装された素子(例えば、スライダ)41とを有するものである。
【0170】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子(例えば、スライダ)を有するものである。上記サスペンションについては、上記「D.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0171】
F.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0172】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0173】
図9は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図9に示されるハードディスクドライブ50は、上述した素子付サスペンション40と、素子付サスペンション40がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション40の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0174】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「E.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0175】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0176】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0177】
[実施例1]
(ポリイミド前駆体溶液の調製)
ODA(4,4−ジアミノジフェニルエテル)2.0g(20mmol)と、パラフェニレンジアミン(PPD)8.66g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、181gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら攪拌した。完全に溶解したことを確認した後、少しずつ30分かけてBPDA(3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸無水物29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0178】
(光塩基発生剤の調製)
100mlフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mlに加えた。50mlフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド2.67g(6.2mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド945mg(6.2mmol)をメタノール10mlに溶解し、よく攪拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下下。
3時間攪拌した後、TLCにより反応の終了を確認した上でろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50ml加え、1時間攪拌した。
反応終了後、ろ過により、トリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し、反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで、2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸を1.00g得た。
続いて、100ml三口フラスコ中、2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸500mg(3.0mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mlに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.586g(3.0mmol)を加えた。
30分後、ピペリジン0.3ml(3.0mmol)を加えた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。ジエチルエーテルで抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜10/1)により精製することにより、クマル酸アミド系光塩基発生剤を64mg得た。
【0179】
(透明性ポリイミド樹脂用組成物の調製)
ポリイミド前駆体溶液に、得られた光塩基発生剤を添加し、光塩基発生剤がポリアミック酸固形分に対して15wt%含まれる透明性ポリイミド樹脂用組成物を調整した。また、固形分濃度が20wt%となるようにNMPを添加した。
【0180】
[実施例2]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を10wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0181】
[実施例3]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を20wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0182】
[実施例4]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を25wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0183】
[実施例5]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を30wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0184】
[実施例6]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0185】
[実施例7]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0186】
[実施例8]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0187】
[実施例9]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0188】
[実施例10]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0189】
[比較例1]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0190】
[比較例2]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0191】
[比較例3]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0192】
[比較例4]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0193】
[比較例5]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0194】
[比較例6]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0195】
[比較例7]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0196】
[比較例8]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0197】
[比較例9]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0198】
[比較例10]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0199】
[比較例6]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0200】
[評価]
実施例および比較例で得られた透明性ポリイミド樹脂用組成物を用いて、スピンコート法を用いてガラス上に塗布し、100℃に設定されたホットプレート上で10分間加熱し、塗膜を形成し、その後、1000mJ/cm2にて露光し、170℃で10分間ポストベークを行った。次いで、窒素雰囲気下のオーブンで350℃で1時間キュア(イミド化処理)を行い、透明性ポリイミド樹脂の塗膜を形成した。この塗膜を用いて(1)厚みによる透過性評価および(2)添加量による透過性評価を行った。
なお、実施例1、実施例6、比較例1および比較例6で調製した透明性ポリイミド樹脂用組成物を用いて、2.3μm〜2.7μmの膜厚の塗膜を形成した際の条件および経緯を表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
(1)厚みによる透過性評価および
実施例1、実施例6、比較例1および比較例6について上記方法により得られたそれぞれの厚みの塗膜について、入射光に対する反射光の強度の割合を、分光測定装置(SHIMADZU製UV−2550(PC)S GLP)にて測定した。測定された結果を図10に示す。
また、得られた結果に基づいて、Lambert−Beerの法則により厚みを1μm、4μm、13μm、24μm、および32μmとした場合の470nmおよび525nmの入射光に対する反射光の強度の割合を計算した。結果を下記表2に示す。
また、300nm〜800nmの波長でスキャンした場合の1μmおよび27μmとした場合の結果を計算により求めた。結果を図11および図12に示す。
なお、下記表3は、スタック構造でないサスペンション用基板(ケースNO.1〜4)およびスタック構造のサスペンション用基板(ケースNO.5〜10)の各構成の厚みを示すものである。なお、この表においては中間絶縁層およびカバー絶縁層はそれぞれ第1導体層および第2導体層表面からの厚みを示すものである。表3に示すように、13μmの厚みは、スタック構造ではないサスペンション用基板を想定したものであり、24μmの厚みは、スタック構造のなかで比較的膜厚が薄い場合を想定したものであり、32μmの膜厚は、スタック構造の中で比較的膜厚が厚い場合を想定したものである。
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
(2)添加量による透過性評価
実施例2〜5、比較例2〜5および比較例7〜10についても実施例1、比較例1および比較例6と同様に、それぞれ塗膜を形成し、上記分光測定装置にて測定を行った。この測定結果およびLambert−Beerの法則にお基づいて、厚みを1μmとした場合の、470nmおよび525nmの波長の入射光に対する反射光の強度の割合を上記分光測定装置にて測定した。結果を表4に示す。
【0206】
【表4】
【0207】
(3)まとめ
表2に示すように、実施例ではスタック構造とした場合であっても入射光に対する反射率を安定的に25%以上とすることができることが確認できた。
また、表3に示すように、クマル酸アミド系光塩基発生剤は、透明性ポリイミド樹脂用組成物への添加量にかかわらず、入射光に対する反射光の強度を大きいものとできることが確認できた。これは、上記クマル酸アミド系光塩基発生剤が、キュア時に分解・揮発することにより除去され、上記透明性ポリイミド樹脂を感光剤の残存量の少ないものとすることができたためと考えられる。
【符号の説明】
【0208】
1 … 金属支持基板
2 … ベース絶縁層
3 … 導体部
4 … めっき層
5 … 第1導体層
6 … 中間絶縁層
7 … 第2導体層
8 … カバー絶縁層
10 … サスペンション用基板
20 … スライダ実装領域
30 … サスペンション
31 … ロードビーム
40 … 素子付サスペンション
41 … 素子(スライダ)
50 … ハードディスクドライブ
51 … ディスク
52 … スピンドルモータ
53 … アーム
54 … ボイスコイルモータ
55 … ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。そのため、HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャー)にも高機能化が求められている。
【0003】
サスペンション用基板に形成されるリード配線およびライト配線としては、一般的には、それぞれ絶縁層上に一対の配線からなるものが用いられ、差動伝送により電気信号の伝送が行われる。
ここで、このような一対の配線間(第1導体層および第2導体層)には、差動伝送路の特性インピーダンスが存在する。そして、このような特性インピーダンスについては、それぞれ、リード配線およびライト配線が接続される読み取り用(再生用)および書き込み用(記録用)のヘッドのインピーダンスにマッチングするように調整される。
【0004】
一対の配線(第1導体層および第2導体層)の配置としては、従来、絶縁層の同一表面上に形成されていた。これに対して、配線の高密度化やインピーダンスの低下を目的として、一対の配線における一方の配線(第1導体層)と他方の配線(第2導体層)とを、絶縁層を介して積層したスタック構造のサスペンション用基板が知られている(特許文献1の図9)。スタック構造のサスペンション用基板では、特性インピーダンスの調整のために、上記第1導体層および第2導体層どうしが平面視上所定の幅で重なるように配置される必要がある。
【0005】
しかしながら、近年の低消費電力化に伴い、電圧を下げる必要が生じている。一方、磁化反転のために必要な電流値は決まっていることから、従来と同一の電流が必要になる。このため、電圧が下がった場合であってもそれまでと同一の電流をえるために、低インピーダンス化が必要となる。
また、インピーダンス・マッチングをとるために要求される特性インピーダンスの精度は、目的のインピーダンス値の±数%であり、特性インピーダンスが低くなると、それに伴い要求される精度の絶対値が小さくなる。
このため、スタック構造の場合には、上記導体層どうしの平面視上の重なりの程度、すなわち、上記第1導体層および第2導体層の位置精度をより高精度でコントロールする必要が生じている。
しかしながら、スタック構造の導体層が位置精度良く形成されているかを精度良く検出するには、最終的に製造されたサスペンション用基板を切断し、その断面を測定する等の方法しかなく、全数検査が困難であるといった問題や、時間や手間がかかり非効率的であるといった問題があった。
また、その結果、上記サスペンション用基板をHDDに組み込んだ後に特性インピーダンスの調整が不十分である等の不具合が発見され、歩留まりが低下し、コスト上昇の要因となるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−133988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成されたポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成されたポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記透明性ポリイミド樹脂の厚みを上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合に、上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記第1導体層および第2導体層がスタック構造を有するものである場合であっても、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の光により、上記第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出の容易なものとすることができる。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含むものであることにより、上記波長470nmから525nmの範囲内の光を用いたズレ検出の容易なものとすることができる。
【0010】
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂が、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであり、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が15質量%以下であることが好ましい。上記透明性ポリイミド樹脂が感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであることにより絶縁層の形成を容易なものとすることができ、また、上記感光剤の添加により容易に感光性を付与することができるからである。
また、上記感光剤の残渣の含有量が上記範囲内であることにより、上記波長の光の透過率の高いものとすることができるからである。
【0011】
本発明においては、上記感光剤が、クマル酸アミド系光塩基発生剤であることが好ましい。上記感光剤残渣の含有量を少ないものとすることが容易だからである。
【0012】
本発明においては、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚さが、24μm以上であることが好ましい。上記導体層や絶縁層の厚み等について設計の自由度の高いものもとすることができるからである。
【0013】
本発明は、上述のサスペンション用基板の検査方法であって、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするサスペンション用基板の検査方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上述のサスペンション用基板であることにより、上記光を用いて、上記ズレ幅を容易に検出することができる。
【0015】
本発明においては、上記入射光が、長波長域の光を含み、上記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことが好ましい。歩留まりを向上させることができるからである。
【0016】
本発明は、上述のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、上記検査工程を有することにより、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレを容易に検出することができる。このため、上記ズレの少ないサスペンション用基板を安定的に得ることができる。
【0018】
本発明は、上述のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0019】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続安定性に優れたサスペンションとすることができる。
【0020】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子(例えば、スライダ)と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0021】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、接続安定性に優れた素子付サスペンションとすることができる。
【0022】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0023】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、安定性に優れたハードディスクドライブとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出が容易なサスペンション用基板を提供できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のサスペンション用基板の検査方法の一例を示す説明図である。
【図3】本発明のサスペンション用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のサスペンション用基板の形成方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明のサスペンション用基板の検査方法の一例を示す説明図である。
【図6】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図8】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図9】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図10】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の測定結果である。
【図11】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の計算結果(1μm換算)である。
【図12】実施例において作製した塗膜の入射光に対する反射光の強度の計算結果(27μm換算)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、サスペンション用基板、それを用いたサスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブ、ならびにその検査方法および製造方法に関するものである。
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション用基板の検査方法、サスペンション用基板の製造方法、サスペンション、素子付サスペンションおよびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0027】
A.サスペンション用基板
まず、本発明のサスペンション用基板について説明する。
本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、上記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、上記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、上記中間絶縁層上に、上記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、上記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするものである。
【0028】
このような本発明のサスペンション用基板について図を参照して説明する。図1は本発明のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明のサスペンション用基板10は、上記金属支持基板1と、上記金属支持基板1上に形成されたベース絶縁層2と、上記ベース絶縁層2上に形成された銅を含む導体部3およびめっき層4を有する第1導体5と、上記第1導体層5上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層6と、上記中間絶縁層6上に形成された銅を含む導体部3およびめっき層4を有する第2導体層7と、上記第2導体層7上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層8と、を有するものであって、上記中間絶縁層6およびカバー絶縁層8の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であること、すなわち、上記カバー絶縁層8表面から470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射した場合の、上記ベース絶縁層2表面からの反射光の強度が25%以上のものである。
【0029】
波長470nmから525nmの範囲内の光は、銅による反射率が十分に高い。このため、銅を含む上記導体層を安定的に検出することができる。また、上記波長の光は、より波長の長い赤色等の光と比較して散乱率が高く、上記導体層を高精度で検出することができる。また、上記波長より短い紫外光等の短波長光と比較してカメラ感度が高く、上記導体層のズレ幅を高精度で検出することができ、また光の照射時に上記サスペンション用基板を構成する材料が焼ける等の不具合の少ないものとすることができる。
また、上記入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記カバー絶縁層側からみてより深い位置に形成される第1導体層を、上記中間絶縁層やカバー絶縁層と十分に区別して判別することができる。
このように上記絶縁層が上記波長の光を十分に透過できることにより、各構成に劣化を生じることなく、上記銅を含む導体層のズレ幅を高精度で検出することができる。
【0030】
本発明によれば、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの上記透明性ポリイミド樹脂の、すなわち、上記透明性ポリイミド樹脂を、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層に、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射することで、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層に覆われる第1導体層および第2導体層の平面視形状を精度良く検出することを可能とし、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりの幅の、設計上の上記重なりの幅からのズレであるズレ幅を安定的に検出することができる。
したがって、上記第1導体層および第2導体層がスタック構造を有するものである場合であっても、上記カバー絶縁層表面から470nmから525nmの範囲内の波長の光により、上記第1導体層および第2導体層の平面視上のズレ検出の容易なものとすることができる。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含むものであることにより、上記波長470nmから525nmの範囲内の光を用いたズレ検出の容易なものとすることができる。
【0031】
本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板、ベース絶縁層、第1導体層、中間絶縁層、第2導体層およびカバー絶縁層を少なくとも有するものである。
以下、本発明のサスペンション用基板の各構成について詳細に説明する。
【0032】
1.中間絶縁層およびカバー絶縁層
本発明に用いられる中間絶縁層およびカバー絶縁層は透明性ポリイミド樹脂からなるものである。
【0033】
(1)透明性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、その厚みを上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上のものである。
また、本発明において、入射光に対する反射光の強度とは、図2に示すように、対象物の表面側から照射した入射光の強度(入射光強度)に対する、対象物の裏面で反射した光を表面側で検出した反射光の強度(反射光強度)の割合、すなわち、対象物の厚みをHとすると、2Hの厚みの対象物を透過した場合の透過率を示すものである。
したがって、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の入射光に対する反射光の強度とは、上記合計の厚みの2倍の厚みとした場合の透過率をいうものである。
また、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であるとは、470nmから525nmの範囲内の波長のいずれの波長においても上記入射光強度に対する反射光強度の割合が25%以上となることをいうものである。
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂の上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合の、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度、すなわち、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層全体の上記波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であるが、上記強度については高ければ高い程検出が容易になるので、上限については特に限定されるものではない。
【0034】
このような透明性ポリイミド樹脂の透過率としては、上述の入射光に対する反射光の強度を達成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚み等により異なるものであるが、例えば、厚みが1μmの場合において、上記470nmから525nmの範囲内の光の透過率が80%以上であることが好ましく、なかでも、80%〜99%の範囲内であることが好ましく、特に85%〜95%の範囲内であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、上記絶縁層の上記波長の光の透過率を上記範囲とすることが容易だからである。
【0035】
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、主成分としてポリイミド樹脂を含むものである。
ここで、主成分として含むとは、上記ポリイミド樹脂の含有量が、上記透明性ポリイミド樹脂中に50質量%以上であることをいうものであり、なかでも本発明においては、65質量%以上であることが好ましく、特に、70質量%以上であることが好ましく、中でも特に80質量%以上であることが好ましい。上記ポリイミド樹脂の含有量が上述の範囲内であることにより、絶縁性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれるポリイミド樹脂の含有量は高ければ高いほど良いため、上限については特に限定されるものではない。
【0036】
本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂は、主成分として上記ポリイミド樹脂を含み、上述の光学的特性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられるものを使用することができる。具体的には、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂からなるものや、上記ポリイミド成分を含み上記感光剤を実施的に含まない非感光性ポリイミド樹脂からなるものを用いることができる。
上記透明性ポリイミド樹脂が感光性ポリイミド樹脂からなるものであることにより、上記絶縁層の形成を容易なものとすることができるからである。また、上記非感光性ポリイミド樹脂からなるものであることにより、反り等の少ないものとすることができるからである。
【0037】
本発明においては、上記透明性ポリイミド樹脂が、上記ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂からなるものである場合には、上記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、なかでも5質量%以下であることが好ましく、特に、3質量%以下であることが好ましく、なかでも特に、実質的に感光剤の残渣を含まないことが好ましい。上記感光剤の残渣の含有量が上述の範囲であることにより、上記波長の光の透過率の高いものとすることができるからである。
なお、上記感光剤の残渣の含有量の測定方法としては、上記感光剤の残渣の含有量を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、感光剤を含まない非感光性ポリイミド樹脂を用いて形成された透明性ポリイミド樹脂の熱重量減少温度を比較することで判断することができる。より具体的には、上記非感光性ポリイミド樹脂を上記感光性ポリイミド樹脂と同条件の熱処理でイミド化してなるものの熱重量減少温度を比較することで、判断することができる。
また、熱処理条件としては、上記中間絶縁層およびカバー層の形成時の条件と同様とすることができる。
【0038】
(a)感光性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる感光性ポリイミド樹脂は、上記ポリイミド成分および感光剤を含むものである。
【0039】
(i)ポリイミド成分
本発明に用いられるポリイミド成分としては、ポリイミドの状態で溶媒に可溶であるものを用いても良いし、加熱処理等のイミド化により上記ポリイミド樹脂となるポリイミド前駆体を用いたものでもよい。保存安定性の観点からは前者が好ましく、線膨張係数との諸特性との両立という観点からは、後者が好ましい。本発明においては、後者の前駆体を用いたものが、各種特性、特に線膨張係数の制御の観点から好ましく用いられる。また上記ポリイミド成分は、上記感光剤を含むことで感光性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、下記式(1)で表される構造を有するポリイミド、および下記式(2)、(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体を用いることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
(式(1)から(3)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、R3は水素原子もしくは1価の有機基繰り返されるR1同士およびR2同士、R3同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
【0044】
本発明におけるポリイミド成分としては、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーのみ用いても、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーを混ぜて使っても、1つのポリマー分子鎖中に上記式(1)、式(2)および式(3)の構造が混ざったものを用いることもできる。
本発明においては、上記ポリイミド成分が上記式(2)または(3)の構造のポリイミド前駆体を少なくとも含むものであることが好ましい。溶媒への溶解性に優れるからである。
本発明においては、なかでも、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル化物などの誘導体)が全体の50%以上あることが望ましく、75%以上であることがさらに好ましく、全て、下記式(2)で示されるポリアミック酸およびその誘導体であることが好ましい。
ポリアミック酸は、酸二無水物とジアミンを溶液中で混合するのみで得られるので、1段階の反応で合成することができ、合成が容易で低コストで入手できるからである。
【0045】
また、副次的な効果として、用いるポリイミド成分が、上記式(2)で示されるようなポリアミック酸である場合、感光剤として用いられる塩基性物質の触媒効果によりイミド化に要する温度が低くても十分な為、最終キュア温度を300℃未満、更に好ましくは250℃以下まで下げることが可能である。従来のポリアミック酸はイミド化するために最終キュア温度を300℃以上とする必要があった為、用途が制限されていたが、最終キュア温度を下げることが可能になったことによって、より広範囲の用途に適用が可能である。
【0046】
また、式(2)からなるポリアミック酸(およびその誘導体)については、合成の容易さおよびアルカリ現像液に対する溶解性の高さから、R3が全て水素原子であるポリアミック酸であることが特に好ましい。しかし、現像速度が速すぎて、パターン残存部の溶解性が高すぎる場合には、イミド化が進行したものを用いるもしくは、上記(2)および(3)におけるR3に1価の有機基を導入して溶解速度を下げることができる。
【0047】
なお、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)の含有率は、100%−イミド化率(%)で求めることができる。したがって、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)が全体の50%である場合には、イミド化率が50%であることを示す。
また、イミド化率は、例えば、赤外線吸収スペクトルを用いて確認することができる。具体的には、上記ポリイミド樹脂に含まれるイミド結合由来のC=O二重結合のピーク面積から定量することにより求めることができる。
【0048】
また、式(3)については、左右非対称であるが、1つのポリマー分子鎖中に左右の向きが異なるものが含まれていてもよい。
【0049】
なお、R1の4価は酸と結合するための価数のみを示しているが、他に更なる置換基を有していても良い。同様に、R2の2価はアミンと結合するための価数のみを示しているが、他に更なる置換基を有していても良い。
【0050】
上記式(1)から(3)において、一般に、R1は酸二無水物由来の構造であり、R2はジアミン由来の構造である。
【0051】
本発明に用いられるポリイミド成分を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、上記(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体の形成方法としては、(i)酸二無水物とジアミンからポリアミック酸を合成する手法や、(ii)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成したエステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させて形成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
また、上記(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体または上記(1)で表されるポリイミドの形成方法としては、上記(2)で表されるポリイミド前駆体を加熱によりイミド化する方法が挙げられる。
【0052】
また、上記式(1)〜(3)で表される構造を有するポリイミド成分は、酸二無水物とジアミンの反応により得られるが、最終的に得られるポリイミド樹脂に優れた耐熱性及び寸法安定性を付与する点から、前記化学式(1)〜(3)において、R1又はR2が芳香族化合物であることが好ましく、R1及びR2が芳香族化合物であることがより好ましい。
本発明においては、最終的に得られるポリイミド樹脂に耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが特に好ましい。
またこのとき、前記化学式(1)〜(3)のR1において、当該R1に結合している4つの基((−CO−)4)は同一の芳香環に結合していても良く、異なる芳香環に結合していても良い。同様に、前記化学式(1)〜(3)のR2において、当該R2に結合している2つの基((−NH−)2)は同一の芳香環に結合していても良く、異なる芳香環に結合していても良い。
【0053】
また、前記化学式(1)〜(3)で表されるポリイミド成分は、単一の繰り返し単位からなるものでも、2種以上の繰り返し単位から成るものでもよい。
【0054】
本発明において、上記ポリイミド成分を得るための反応に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
【0055】
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0056】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、透明性をそれほど損なわずに溶解性や熱膨張率等の物性を調整することが可能である。また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
【0057】
一方、ジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されず、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0058】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等の芳香族アミン;
【0059】
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等の脂肪族アミン;
【0060】
1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミンが挙げられる。グアナミン類としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどを挙げることができ、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0061】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0062】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミド樹脂は低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4―ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0063】
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(4)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0064】
【化4】
【0065】
(化学式(4)中、aは1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
【0066】
さらに、上記式(4)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0067】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
【0068】
本発明に用いられる式(2)で表されるポリイミド成分を合成するには、例えば、アミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチルピロリドンなどの有機極性溶媒に溶解させた溶液を冷却しながら、そこへ等モルの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を徐々に加え撹拌することにより得ることができる。
【0069】
本発明に用いられるポリイミド成分は、感光性ポリイミド樹脂とした際の感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長に対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
露光波長に対してポリイミド成分の透過率が高いということは、それだけ、電磁波のロスが少ないということであり、高感度の感光性ポリイミド樹脂を得ることができる。
【0070】
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、更に好ましくは15%、特に好ましくは50%以上である。
【0071】
本発明に用いられるポリイミド成分の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミド樹脂などの高分子とした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
【0072】
本発明に用いられるポリイミド成分の含有量としては、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、上記感光性ポリイミド樹脂の固形分全体に対し、50質量%以上であることが好ましく、なかでも、70質量%以上であることが好ましい。
なお、感光性ポリイミド樹脂の固形分とは溶媒以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0073】
(ii)感光剤
本発明に用いられる感光剤としては、上記ポリイミド成分に感光性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、感光性ポリイミド樹脂に一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、電磁波の照射と加熱により、塩基を発生する塩基発生剤等を用いることができる。より具体的には、下記一般式(a)で表されるようなクマル酸アミド系塩基発生剤、カーバメート型塩基発生剤およびニフェジピン等の塩基発生剤、またはこれらの混合物を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、上記クマル酸アミド系塩基発生剤を好ましく用いることができる。上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、上記ポリイミド成分をイミド化する加熱処理等により、分解または揮発し易いものである。このため、上記透明性ポリイミドを上記感光剤の残渣の少ないものとすることができ、透過率に優れた絶縁層とすることができるからである。したがって、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みが厚い場合であっても、十分な透過率を示すものとすることができ、上記導体層のズレ幅を容易に検出可能なものとすることができるからである。
【0074】
【化5】
【0075】
(式(a)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R21及びR22の少なくとも1つは1価の有機基である。R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0076】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、上記のような特定の構造を有するため、紫外線などの光線が照射されることにより、上記式(a)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR21R22)を生成する。すなわち、上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、その構造に応じて、塩基として、第1級アミン、第2級アミン、アミジン系化合物を生成しうる。
また、アミンの触媒作用によって、上記ポリイミド成分が最終生成物となる際の反応が開始される温度を下げたり、上記ポリイミド成分が最終生成物となる硬化反応を開始することができる。
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、電磁波が照射されるだけでも塩基を発生するが、適宜加熱をすることにより、塩基の発生が促進される。
【0077】
【化6】
【0078】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、環化することで、フェノール性水酸基を消失し、溶解性が変化し、塩基性水溶液等の場合には溶解性が低下する。これにより、上記ポリイミド成分の最終生成物への反応による溶解性の低下を更に補助する機能を有し、露光部と未露光部の溶解性コントラストを大きくすることが可能となる。
【0079】
R21及びR22は、それぞれ、独立に水素原子又は1価の有機基であるが、R21及びR22のうち少なくとも1つは1価の有機基である。また、NHR21R22は、塩基(塩基性物質)であるが、R21及びR22は、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。R21及びR22に、アミノ基が含まれてしまうと、塩基発生剤自体が塩基性物質となり、上記ポリイミド成分の反応を促進してしまい、露光部と未露光部での溶解性コントラストの差が小さくなってしまう恐れがある。但し、例えば、R21及びR22の有機基中に存在する芳香環にアミノ基が結合している場合のように、電磁波の照射と加熱後に発生する塩基との塩基性と差が生じる場合には、R21及びR22の有機基にアミノ基を含まれていても用いることができる場合もある。
1価の有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0080】
また、R21及びR22は、それらが結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
【0081】
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0082】
前記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0083】
生成する塩基性物質はNHR21R22であるため、1級アミン、2級アミン、又は複素環式化合物が挙げられる。またアミンには、それぞれ、脂肪族アミン及び芳香族アミンがある。なお、ここでの複素環式化合物は、NHR21R22が環状構造を有し且つ芳香族性を有しているものをいう。芳香族複素環式化合物ではない、非芳香族複素環式化合物は、ここでは脂環式アミンとして脂肪族アミンに含まれる。
【0084】
更に、生成するNHR21R22は、アミド結合を形成可能なNH基を1つだけ有するモノアミン等の塩基性物質だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基性物質であってもよい。生成するNHR21R22がNH基を2つ以上有する塩基性物質の場合、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、アミド結合を形成可能なNH基を有する塩基を電磁波の照射と加熱により発生するような光潜在性部位が更に結合している構造が挙げられる。上記光潜在性部位としては、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、式(a)のR21及び/又はR22を除いた残基が更に結合している構造が挙げられる。
【0085】
生成するNHR21R22のうち、脂肪族1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソアミルアミン、tert−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘプタンアミン、オクチルアミン、2−オクタンアミン、2,4,4−トリメチルペンタン−2−アミン、シクロオクチルアミン等が挙げられる。
【0086】
芳香族1級アミンとしては、アニリン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、及び4−アミノフェノール等が挙げられる。
【0087】
脂肪族2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、メチルアジリジン、ジメチルアジリジン、メチルアゼチジン、ジメチルアゼチジン、トリメチルアゼチジン、メチルピロリジン、ジメチルピロリジン、トリメチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、トリメチルピペリジン、テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジン等が挙げられ、中でも脂環式アミンが好ましい。
【0088】
芳香族2級アミンとしては、メチルアニリン、ジフェニルアミン、及びN−フェニル−1−ナフチルアミンが挙げられる。また、アミド結合を形成可能なNH基を有する芳香族複素環式化合物としては、塩基性の点から分子内にイミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)を有することが好ましく、イミダゾール、プリン、トリアゾール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0089】
アミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基としてはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミンを挙げることができる。
【0090】
R21及びR22の位置に導入される置換基によって、生成する塩基性物質の熱物性や塩基性度が異なる。
上記ポリイミド成分から最終生成物への反応に対する反応開始温度を低下させる等の触媒作用は、塩基性の大きい塩基性物質の方が触媒としての効果が大きく、より少量の添加で、より低い温度での最終生成物への反応が可能となる。一般に1級アミンよりは2級アミンの方が塩基性は高く、その触媒効果が大きい。
また、芳香族アミンよりも脂肪族アミンの方が塩基性が強いため好ましい。
【0091】
また、本発明で発生する塩基が、2級アミン及び/又は複素環式化合物である場合には、塩基発生剤としての感度が高くなる点から好ましい。これは、2級アミンや複素環式化合物を用いることで、アミド結合部位の活性水素がなくなり、このことにより、電子密度が変化し、異性化の感度が向上するからではないかと推定される。
【0092】
また、脱離する塩基の熱物性、及び塩基性度の点から、R21及びR22の有機基は、それぞれ独立に炭素数1〜20が好ましく、更に炭素数1〜12が好ましく、特に炭素数1〜8であることが好ましい。
【0093】
また、上記クマル酸アミド系塩基発生剤から生ずる塩基は、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。発生する塩基がアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する場合には、塩基発生剤において、電磁波の照射と加熱により切断されるアミド結合を2つ以上有することになり、例えば桂皮酸誘導体残基のような吸光団が1分子に2つ以上存在することになる。このような場合には、通常分子量が大きくなるため、溶媒溶解性が悪くなるという問題がある。また、吸光団を1分子内に2つ以上有する場合、吸光団と塩基が結合しているアミド結合が1つ切断されれば塩基になるが、吸光団を未だ含むような塩基は分子量が大きいため、拡散性が悪くなり、塩基発生剤として用いる場合の感度が悪くなってしまう。更に、塩基発生剤を合成する際、吸光団が1つの場合には、相対的に安価な塩基を過剰量加えて合成するが、吸光団が2つ以上の場合には、相対的に高価な吸光団部分の原料を過剰量加える必要がある。また、アミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有するような塩基の場合、合成後の精製が困難であるという問題もある。中でも特に、ポリイミド前駆体と組み合わせる場合には、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。
【0094】
発生する2級アミン及び/又は複素環式化合物の構造としては、中でも、下記式(b)で表されることが好ましい。
【0095】
【化7】
【0096】
(式(b)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数4〜22のシクロアルキル基である。R21及びR22は、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0097】
式(b)のR21及びR22において、アルキル基は直鎖でも分岐でも良い。アルキル基としては更に炭素数1〜8であることが好ましく、シクロアルキル基としては更に炭素数4〜10であることが好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数4〜12の環状構造となっている脂環式アミンも好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数2〜12の環状構造となっている複素環式化合物も好ましい。
【0098】
R23、R24、R25及びR26、は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
1価の有機基としては、特に制限がなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0099】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0100】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
中でも、R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0101】
また、R23〜R26は、それらのうち2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R23〜R26は、それらの2つ以上が結合して、R23〜R26が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していても良い。
【0102】
本発明においては本発明の置換基R23〜R26に、置換基を1つ以上導入することが好ましい。すなわち、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であることが好ましい。置換基R23〜R26に、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。芳香族環の共役鎖を伸ばすような置換基を導入することにより、吸収波長を長波長にシフトすることができる。また、溶解性や組み合わせる高分子前駆体との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせる高分子前駆体の吸収波長も考慮しながら、感光性樹脂組成物の感度を向上させることが可能である。
【0103】
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
【0104】
R23〜R26としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基(−ROAr基)、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基をもつ炭素数2〜11のアルキル基、水酸基をもつ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基(−SR基)、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(−SCH3)等が好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でも良い。
また、R23〜R26としては、それらの2つ以上が結合して、R23〜R26が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0105】
また、本発明において、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが水酸基である場合、R23、R24、R25及びR26に水酸基を含まない化合物と比べ、塩基性水溶液等に対する溶解性の向上、および吸収波長の長波長化が可能な点から好ましい。また、特にR26がフェノール性水酸基である場合、シス体に異性化した化合物が環化する際の反応サイトが増えるため、環化しやすくなる点から好ましい。
【0106】
化学式(a)で表される構造は、トランス体及び/又はシス体であり、トランス体のみを用いても良いし、トランス体とシス体の混合物を用いても良いが、溶解性コントラストを高められる点から、トランス体の割合が90〜100%であることが好ましく、トランス体のみを用いることがより好ましい。
【0107】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は、加熱して初期の重量から5%重量が減少したときの温度(5%重量減少温度)が100℃以上であることが好ましい。感光性ポリイミド樹脂の場合、塗膜を形成する際にN−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いる必要があるが、このように5%重量減少温度が高い場合には残留溶媒の影響が少なくなるような乾燥条件で塗膜を形成することができる。これにより、残留溶媒の影響による露光部と未露光部での溶解性コントラストの減少を抑制することができる。
【0108】
また、本発明に用いられる透明性ポリイミド樹脂中に上記感光剤に由来する不純物が残存しないことが好ましいため、本発明に用いられるクマル酸アミド系塩基発生剤は、現像後に行う加熱のプロセス(例えば、イミド化のプロセス)で分解、又は揮発してしまうことが好ましい。具体的には、初期の重量から50%重量が減少したときの温度(50%重量減少温度)が400℃以下であることが好ましく、更に350℃以下であることが好ましい。また、発生する塩基の沸点が25℃以上であることが、室温での取り扱い性が良好になることから好ましい。発生する塩基の沸点が25℃以上でない場合には、塗膜とした際に、特に乾燥時に生成したアミンが蒸発しやすくなってしまうため作業が困難となる恐れがある。
【0109】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤を用いる際の、塩基を発生させるための加熱温度としては、組み合わせる高分子前駆体や目的により適宜選択され、特に限定されない。塩基発生剤が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱も同時に行われても良い。反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上である。しかしながら、組み合わせて用いられる高分子前駆体によっては、例えば60℃以上の加熱で未露光部についても硬化するものもあるので、好適な加熱温度は、上記に限定されない。
また、上記クマル酸アミド系塩基発生剤の塩基発生以外の分解を防ぐために、300℃以下で加熱することが好ましい。
【0110】
上記クマル酸アミド系塩基発生剤は電磁波の照射のみでも塩基を発生するが、適宜加熱することにより塩基の発生が促進される。従って、効率的に塩基を発生させるために、上記クマル酸アミド系塩基発生剤を用いる際には、露光後又は露光と同時に加熱を行うことにより塩基を発生する。露光と加熱を交互に行ってもよい。最も効率が良い方法は、露光と同時に加熱する方法である。
【0111】
本発明におけるクマル酸アミド系塩基発生剤の合成方法を、2−ヒドロキシ桂皮酸アミドを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明における塩基発生剤は、複数の従来公知の合成ルートで合成することができる。
【0112】
2−ヒドロキシ桂皮酸アミドは、例えば、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンを反応させることにより合成できる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の縮合剤存在下、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンをテトラヒドロフランに溶解し、撹拌することで目的物を得ることができる。
各置換基を導入した桂皮酸の合成は、対応する置換基を有するヒドロキシベンズアルデヒドにwittig反応または、Knoevenagel反応、又はPerkin反応を行うことで合成できる。中でも、wittig反応はトランス体が選択的に得られやすい点から好ましい。尚、例えば、上記対応する置換基を有するアルデヒドの合成は、対応する置換基を有するフェノール等にDuff反応やVilsmeier−Haack反応を行うことで合成できる。
【0113】
本発明における塩基発生剤は、ポリイミド成分が最終生成物となるための塩基発生の機能を十分に発揮させるために、露光波長の少なくとも一部に対して吸収を有する必要がある。一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長としては、365nm、405nm、436nmがある。このため、本発明におけるクマル酸アミド系塩基発生剤は、少なくとも365nm、405nm、436nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長の電磁波に対して吸収を有することが好ましい。このような場合、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0114】
上記感光剤は、そのモル吸光係数が、電磁波の波長365nmにおいて100以上、又は405nmにおいて1以上であることが、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0115】
なお、本発明における感光剤が上記波長領域に吸収を有することは、当該波長領域に吸収をもたない溶媒(例えば、アセトニトリル)に、上記感光剤を1×10−4mol/L以下の濃度(通常、1×10−4mol/L〜1×10−5mol/L程度。適度な吸収強度となるように、適宜、調節してもよい。)で溶解し、紫外可視分光光度計(例えば、UV−2550(株)島津製作所製))により吸光度を測定することにより明らかにすることができる。
【0116】
本発明に用いられる感光剤の含有量としては、所望のパターンの感光性ポリイミド絶縁層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な含有量とすることができる。
一般的にポリイミド樹脂は高耐熱性の樹脂として知られており、高い耐熱性を有することから、ポリイミド成分よりも、感光剤の方が耐熱性が低い傾向にあるので、ポリイミド成分に対する感光剤の割合を減らした方が、低アウトガス性となる。
このようなことから上記感光剤の含有量は少ない方が好ましく、本発明においては、上記感光剤が、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.5重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。
なお、本発明における感光剤が、上記クマル酸アミド系塩基発生剤である場合には、
その含有量としては、上述の範囲より多いものとすることができる。上記クマル酸アミド系塩基発生剤は加熱等により分解または揮発により残存しにくいため、含有量が多い場合であっても、上記透明性ポリイミド樹脂中への残存量が少ないものとすることができるからである。具体的には、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.5重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも、1重量部〜25重量部の範囲内であることが好ましく、特に、3重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましい。十分な感光性を付与することができ、かつ、その場合であっても上記透明性ポリイミド樹脂への残存が少ないからである。したがって、露光・現像によるパターニングが容易で、かつ、透明性に優れた絶縁層を形成することができるからである。
【0117】
(iii)溶媒
本発明における感光性ポリイミド樹脂としては、必要に応じて溶媒を含むものであっても良い。
このような溶媒としては、上記ポリイミド成分を均一に分散または溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。
【0118】
また、ポリイミド成分としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸を用いる場合には、ポリアミック酸の合成反応により得られた溶液をそのまま溶媒として用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良い。
【0119】
(iv)増感剤
本発明においては、上記光塩基発生剤の吸収波長がポリイミド成分の吸収波長と重なる部分があり、十分な感度が得られない場合において、感度向上の手段として、増感剤の添加が効果を発揮する場合がある。また、ポリイミド成分を透過する電磁波の波長帯に上記光塩基発生剤が吸収波長を有する場合においても、感度向上の手段として、増感剤を添加することができる。ただし、増感剤の添加によるポリイミド成分の含有率の減少に伴う、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の低下に関して考慮に入れる必要がある。
【0120】
増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントン及び、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、シアニン及び、その誘導体、メロシアニン及び、その誘導体、クマリン系及び、その誘導体、ケトクマリン及び、その誘導体、ケトビスクマリン、及びその誘導体、シクロペンタノン及び、その誘導体、シクロヘキサノン及び、その誘導体、チオピリリウム塩及び、その誘導体、キノリン系及び、その誘導体、スチリルキノリン系及び、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系及び、その誘導体、オキソノール系及び、その誘導体、ローダミン系及び、その誘導体、ピリリウム塩及び、その誘導体等が挙げられる。
【0121】
シアニン、メロシアニン及び、その誘導体の具体例としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨ−ジド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。
クマリン、ケトクマリン及び、その誘導体の具体例としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
チオキサントン及び、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0122】
さらに他にはベンゾフェノン、アセトフェノン、アントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、1,2−ベンズアンスラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、p,p’−テトラエチルジアミノベンゾフェノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、2,5−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロペンタン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)−カルコン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)−カルコン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、1,3−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−アセトン、1,3−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−アセトン、N−フェニル−ジエタノールアミン、N−p−トリル−ジエチルアミン、などが挙げられる。
本発明ではこれらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。
【0123】
(v)その他
本発明における感光性ポリイミド樹脂は、少なくとも上記ポリイミド成分、感光剤、および溶媒を含むものであるが、必要に応じて他の成分を含むものであっても良い。
このような他の成分としては、熱硬化性成分、ポリイミド前駆体以外のバインダー樹脂、その他の添加剤を配合して、感光性ポリイミド樹脂を調製してもよい。
【0124】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0125】
また、本発明における他の任意成分の配合割合は、上記感光性ポリイミド樹脂の固形分全体に対し、0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、20質量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくいからである。
【0126】
(b)非感光性ポリイミド樹脂
本発明に用いられる非感光性ポリイミド樹脂としては、実質的に感光性を有さないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリイミド成分を含み、上記感光剤を実質的に含まないものを挙げることができる。
なお、実質的に含まないとは、一般的な感光性ポリイミド樹脂での露光・現像条件でパターニングできない程度の含有量以下の含有量であることをいうものであり、通常、全く含まれないものである。
【0127】
本発明に用いられる非感光性ポリイミド樹脂は、必要に応じて溶媒やその他の成分を含むことができる。このような溶媒およびその他の成分としては、上記「(a)感光性ポリイミド樹脂」の項に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0128】
(2)中間絶縁層およびカバー絶縁層
本発明に用いられる中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚み、すなわち、上記第1導体層が形成される上記ベース絶縁層表面から上記カバー絶縁層表面までの距離としては、上記導体層や絶縁層を安定的に形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、20μm〜35μmの範囲内とすることができる。
本発明において、上記絶縁層を高い透過率を有するものとする観点からは、上記絶縁層の厚みはできるだけ薄い方が好ましいが、上記透明性ポリイミド樹脂が、上記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みとした場合に、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上となる範囲内で厚みが厚い方が好ましい。具体的には、25μm〜35μmの範囲内であることが好ましく、特に、30μm〜35μmの範囲内であることが好ましい。上記導体層や絶縁層の厚み等について設計の自由度の高いものもとすることができるからである。また、入射光に対する反射光の強度が25%以上であることにより、十分にズレ幅を検出することができるからである。
【0129】
本発明における中間絶縁層の厚み、すなわち、上記第1導体層を含む、上記ベース絶縁層表面から上記中間絶縁層の表面までの距離としては、上記第1導体層を安定的に覆うことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm〜25μmの範囲内とすることができる。また、上記カバー絶縁層の厚み、すなわち、上記第2導体層を含む、上記中間絶縁層表面から上記カバー絶縁層の表面までの距離としては、上記第2導体層を安定的に覆うことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm〜20μmの範囲内とすることができる。
【0130】
本発明において用いられる中間絶縁層およびベース絶縁層の形成方法としては、所望のパターンの中間絶縁層およびベース絶縁層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記材料を含む液状の絶縁層形成用塗工液を塗布またはドライフィルム状の材料を貼り合わせ、その後、露光・現像またはフォトリソ法によりパターニングする方法を用いることができる。
【0131】
2.第1導体層および第2導体層
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、それぞれ、上記ベース絶縁層および中間絶縁層上に形成され、上記第1導体層および第2導体層が平面視上少なくとも一部が重複するように形成されるものである。
また、上記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものである。
【0132】
本発明における導体部としては、少なくとも銅を含むものである。このような導体部を構成する材料に含まれる銅の含有量としては、上記導体層が所望の導電性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、銅のみからなるものである。
【0133】
本発明に用いられる導体部の厚みとしては、上記導体層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば5μm〜18μmの範囲内とすることができ、なかでも9μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。
【0134】
本発明に用いられる導体部の幅としては、所望の導電性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のサスペンション用基板の低剛性化を図ることができるからである。
【0135】
本発明に用いられる導体部の形成方法としては、上記導体部を精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられる方法を使用することができる。例えば、上記導体部の材料からなる導体部形成用層を電界めっき法等により形成した後、レジストを用いたエッチングによりパターニングし、上記導体部を形成する方法を挙げることができる。
【0136】
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、平面視上少なくとも一部が重複するように形成されるものである。
ここで、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重複の程度については、上記各導体層の幅や要求される特性インピーダンス等に応じて適宜設定されるものである。
【0137】
本発明に用いられる第1導体層および第2導体層は、上記導体部がめっき層により被覆されるものであっても良い。特に、はんだパッドのように、表面が露出する箇所はめっき層により被覆されることが好ましい。めっき層の一例としては、金めっき層を挙げることができる。また、金めっき層の下地としてニッケルめっき層が形成されていても良い。めっき層の厚さは、例えば0.1μm〜4.0μmの範囲内とすることができる。
本発明において、上記めっき層を形成する方法としては、例えば、電解めっき法を挙げることができる。
【0138】
3.金属支持基板
本発明に用いられる金属支持基板は、上記ベース絶縁層、導体層(第1導体層および第2導体層)、および絶縁層(中間絶縁層およびカバー絶縁層)を支持するものである。
このような金属支持基板の材料としては、特に限定されるものではないが、ばね性を有する金属であることが好ましく、具体的には、SUS等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる金属支持基板の厚さとしては、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内とすることができる。
【0139】
本発明に用いられる金属支持基板の形成箇所としては、本発明のサスペンション用基板が所望の機械強度を有するものとすることができるものであれば良いが、なかでも、図3に例示するように、上記第1導体層および第2導体層が形成される位置に開口部が形成されるものであることが好ましい。ノイズの少ないものとすることができるからである。
【0140】
本発明に用いられる金属支持基板の形成方法としては、所望のパターンの金属支持基板を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、サスペンション用基板に一般的に用いられる方法を使用することができる。具体的には、レジストを用いたエッチングによりパターニングする方法等を用いることができる。
【0141】
4.ベース絶縁層
本発明に用いられるベース絶縁層は、上記金属支持基板上に形成されるものである。
【0142】
このようなベース絶縁層の材料としては、上記金属支持基板と上記第1導体層との短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではなく、通常ポリイミド樹脂(PI)等の絶縁性樹脂を挙げることができる。また、上記ベース絶縁層の材料は、感光性材料であっても良いが、非感光性材料であることが好ましい。材料選択の幅を広いものとすることができるからである。また、非感光性材料は吸湿膨張係数が低く、反り等の発生の少ないものとすることができるからである。
このような感光性材料および非感光性材料としては、具体的には、上記「1.中間絶縁層およびカバー絶縁層」の項に記載の感光性ポリイミド樹脂および非感光性ポリイミド樹脂を用いることができる。
【0143】
また、上記ベース絶縁層の厚さとしては、上記金属支持基板と上記第1導体層との短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、5μm〜10μmの範囲内とすることができる。
【0144】
本発明において用いられるベース絶縁層の形成方法としては、所望のパターンのベース絶縁層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記中間絶縁層およびベース絶縁層と同様とすることができる。
【0145】
5.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板の製造方法としては、上記各構成が精度良く形成される方法であれば良い。
このようなサスペンション用基板の各構成の形成方法としては、上記「1.中間絶縁層およびカバー絶縁層」、「2.第1導体層および第2導体層」、「3.金属支持基板」および「4.ベース絶縁層」の項に記載方法を用いることができる。
また、上記金属支持基板、ベース絶縁層および第1導体層については、上記金属支持基板上に、上記ベース絶縁層および第1導体層をこの順で形成するものであっても良く、上記金属支持基板を構成する材料からなる金属基板形成用層と、上記金属基板形成用層上に形成され、上記ベース絶縁層を形成可能な材料からなるベース絶縁層形成用層と、上記ベース絶縁層形成用層上に形成され、上記第1導体層を形成可能な材料からなる第1導体層形成用層とを有する積層体を形成した後に、上記第1導体層および金属支持基板、ベース絶縁層の順で形成するものであっても良い。
本発明においては、なかでも、上記積層体を用いる方法であることが好ましい。上記各構成を精度良く形成することができるからである。
【0146】
このようなサスペンション用基板の製造方法としては、具体的には、図4に例示するように、まず、金属支持基板を形成可能な金属支持基板形成用層1xを準備し、上記金属支持基板形成用層1xの表面上にベース絶縁層を形成可能なベース絶縁層形成用層2x、上記ベース絶縁層形成用層2x上にスパッタリング法を用いてシード層(図示せず)を形成し、その後、上記シード層上に、電解めっき法により銅からなり、上記第1導体層を形成可能な第1導体層形成用層5xを形成することにより積層体を形成する(図4(a))。
その後、図4(b)に示すように、上記金属支持基板形成用層1xおよび上記導体層形成用層5x上に、ドライフィルムレジスト(DFR)を用いてレジストを形成し、ウェットエッチングすることにより、上記金属支持基板形成用層1xから金属支持基板1を、上記第1導体層形成用層5xから銅の導体部3からなる第1導体層5を形成し、その後、感光性ポリイミド樹脂を含む塗工液を塗布・乾燥した後、露光・現像し、さらに、加熱処理を行いイミド化することにより中間絶縁層6を形成する(図4(b))。
その後、図4(c)に示すように、パターン状のレジストを配置した状態で、電解めっきすることにより銅の導体部3からなる第2導体層7を形成する。さらに図4(d)に示すように上記第2導体層7を覆うようにカバー絶縁層の材料を含む塗工液を塗布し、乾燥した後、露光・現像し、さらに、加熱処理によりイミド化することによりカバー絶縁層8を形成する方法を挙げることができる。
【0147】
本発明のサスペンション用基板の用途としては、ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドサスペンション等に用いられ、なかでも配線が高密度化された場合であっても、ノイズが少ないことを要求されるハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドサスペンションに好適に用いられる。
【0148】
B.サスペンション用基板の検査方法
次に、サスペンション用基板の検査方法について説明する。
本発明のサスペンション用基板の検査方法は、上述のサスペンション用基板の検査方法であって、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするものである。
【0149】
このような本発明のサスペンション用基板の検査方法を図を参照して説明する。既に説明した図2に示すように、本発明のサスペンション用基板の検査方法は、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を照射し、反射光を検出することにより、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出するものである。
【0150】
本発明によれば、上述のサスペンション用基板であることにより、上記光を用いて、上記ズレ幅を容易に検出することができる。
【0151】
本発明において用いられる上記サスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0152】
本発明において用いられる光は、470nmから525nmの範囲内の波長の入射光を用いるものである。
本発明においては、上記470nmから525nmの範囲内に含まれるいずれかの波長の光を用いるものであれば良いが、なかでも、470nm、505nmおよび525nmの波長の光を含むことが好ましく、特に、470nmから525nmの範囲内の全ての波長の光を用いて検出することが好ましい。より精度良く、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することができるからである。
また、本発明においては、上記入射光が、長波長域の光を含み、上記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことが好ましい。歩留まりを向上させることができるからである。
本発明における長波長域の光としては、525nm以上の波長の光であれば特に限定されるものではなく、検出する異物等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、525nm〜850nmの範囲内の光であることが好ましく、なかでも、660nm〜850nmの範囲内の光であることが好ましい。上記光が上述の波長の光を含むことにより、異物等をより精度良く検出することができるからである。
【0153】
本発明において、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出する方法としては、上記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記第1および第2導体層それぞれについて、上記サスペンション用基板上の位置決めマークからの距離を測定し、設計上の距離とのズレ幅を検出する方法等を挙げることができるが、なかでも、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体の幅を、設計上の上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体幅と比較する方法、すなわち、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の全体の幅と、目標とする平面視上の全体幅とを比較する方法を好ましく用いることができる。例えば、図5に例示するように、上記第1導体層および第2導体層が同一幅であり、両者が、平面視上完全に重なるように設計した場合、上記第1導体層および第2導体層の全体幅を検出し、目標の全体幅と比較することで、ズレ幅を求めることができる。
【0154】
本発明において、上記入射光を照射する箇所としては、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を精度良く検出できる箇所であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記サスペンション用基板の上記第1導体層および第2導体層が平面視上重複するスタック構造を形成している箇所の一部であっても良く、スタック構造を形成している全ての上記第1導体層および第2導体層を検査するものであっても良い。
【0155】
C.サスペンション用基板の製造方法
次に、サスペンション用基板の製造方法について説明する。
本発明のサスペンション用基板の製造方法は、上述のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、を有することを特徴とするものである。
【0156】
このような本発明のサスペンション用基板の製造方法について、図を参照して説明する。図6は本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す工程図である。図6に例示するように、まず、上記サスペンション用基板10を形成し(図6(a))、次いで、図6(b)に示すように、上記カバー絶縁層8側から上記波長の光を入射光として照射し、反射光を検出し、上記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出するものである。
なお、図6(a)がサスペンション用基板形成工程であり、図6(b)が検査工程である。また、図6中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
本発明によれば、上記検査工程を有することにより、スタック構造の第1導体層および第2導体層の平面視上のズレを容易に検出することができる。このため、上記ズレの少ないサスペンション用基板を安定的に得ることができる。
【0158】
本発明のサスペンション用基板の製造方法は、少なくとも上記サスペンション用基板形成工程および検査工程を有するものである。
以下、このような本発明のサスペンション用基板の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0159】
1.サスペンション用基板形成工程
本発明におけるサスペンション用基板形成工程は、上記サスペンション用基板を形成する工程である。
このようなサスペンション用基板の形成方法としては、上記各構成を精度良く形成できる方法であれば良く、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様とすることができる。
【0160】
2.検査工程
本発明における検査工程は、上記サスペンション用基板を上述のサスペンション用基板の検査方法により検査する工程である。
ここで、上記サスペンション用基板の検査方法については上記「B.サスペンション用基板の検査方法」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
本工程においては、上記サスペンション用基板の検査方法で検査した後に、検査結果に基づいて、良・不良を判断する判断処理を行うものであることが好ましい。
【0162】
本工程における判断処理方法としては、上記検査結果に基づいて良・不良の判断を行うものであれば良いが、具体的には、設計上の重なり状態からのズレ幅のち、許容範囲内の特性インピーダンスとすることができる許容ズレ幅より大きいか小さいかにより行う方法を挙げることができる。より具体的には、上記第1導体層および第2導体層の全体幅を、設計上の上記全体幅と比較する場合には、検査により得られた上記全体幅と、設計上の全体幅とのズレ幅が、上記許容ズレ幅以上であるか否かで判断する方法を用いることができる。
本工程においては、上記許容ズレ幅としては、上記導体層や絶縁層のサイズ等により異なるものであり、許容範囲内の特性インピーダンスを達成できるものであれば特に限定されるものではないが、得られた第1導体層および第2導体層が有する特性インピーダンスを、目標の特性インピーダンスの±7%以内とすることができるものであることが好ましく、なかでも、±5%以内とすることができるものであることが好ましい。具体的には、上記許容ズレ幅が、±20μm以内であることが好ましく、なかでも、±10μm以内であることが好ましい。上記ズレ幅が上述の範囲であることにより、ノイズ等の少ないものとすることができるからである。
【0163】
D.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0164】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続安定性に優れたサスペンションとすることができる。
【0165】
図7は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図7に示されるサスペンション30は、上述したサスペンション用基板10と、素子実装領域20が形成されている表面とは反対側のサスペンション用基板10の表面に備え付けられたロードビーム31とを有するものである。
【0166】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。サスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0167】
E.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションの素子実装領域に実装された素子(例えば、スライダ)と、を有することを特徴とするものである。
【0168】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、接続安定性に優れた素子付サスペンションとすることができる。
【0169】
図8は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図8に示される素子付サスペンション40は、上述したサスペンション30と、サスペンション30の素子実装領域20に実装された素子(例えば、スライダ)41とを有するものである。
【0170】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子(例えば、スライダ)を有するものである。上記サスペンションについては、上記「D.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0171】
F.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0172】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0173】
図9は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図9に示されるハードディスクドライブ50は、上述した素子付サスペンション40と、素子付サスペンション40がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク51と、ディスク51を回転させるスピンドルモータ52と、素子付サスペンション40の素子を移動させるアーム53およびボイスコイルモータ54と、上記の部材を密閉するケース55とを有するものである。
【0174】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「E.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0175】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0176】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0177】
[実施例1]
(ポリイミド前駆体溶液の調製)
ODA(4,4−ジアミノジフェニルエテル)2.0g(20mmol)と、パラフェニレンジアミン(PPD)8.66g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、181gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら攪拌した。完全に溶解したことを確認した後、少しずつ30分かけてBPDA(3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸無水物29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0178】
(光塩基発生剤の調製)
100mlフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mlに加えた。50mlフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド2.67g(6.2mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド945mg(6.2mmol)をメタノール10mlに溶解し、よく攪拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下下。
3時間攪拌した後、TLCにより反応の終了を確認した上でろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50ml加え、1時間攪拌した。
反応終了後、ろ過により、トリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し、反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで、2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸を1.00g得た。
続いて、100ml三口フラスコ中、2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸500mg(3.0mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mlに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.586g(3.0mmol)を加えた。
30分後、ピペリジン0.3ml(3.0mmol)を加えた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。ジエチルエーテルで抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜10/1)により精製することにより、クマル酸アミド系光塩基発生剤を64mg得た。
【0179】
(透明性ポリイミド樹脂用組成物の調製)
ポリイミド前駆体溶液に、得られた光塩基発生剤を添加し、光塩基発生剤がポリアミック酸固形分に対して15wt%含まれる透明性ポリイミド樹脂用組成物を調整した。また、固形分濃度が20wt%となるようにNMPを添加した。
【0180】
[実施例2]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を10wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0181】
[実施例3]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を20wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0182】
[実施例4]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を25wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0183】
[実施例5]
光塩基発生剤のポリアミック酸に対する濃度を30wt%とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0184】
[実施例6]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0185】
[実施例7]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0186】
[実施例8]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0187】
[実施例9]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0188】
[実施例10]
光塩基発生剤を含まない以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0189】
[比較例1]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0190】
[比較例2]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0191】
[比較例3]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0192】
[比較例4]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0193】
[比較例5]
光塩基発生剤をニフェジピンとした以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0194】
[比較例6]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0195】
[比較例7]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例2と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0196】
[比較例8]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例3と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0197】
[比較例9]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例4と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0198】
[比較例10]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例5と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0199】
[比較例6]
光塩基発生剤をカーバメート型光塩基発生剤DNCDP({[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)とした以外は実施例1と同様にして透明性ポリイミド樹脂用組成物を得た。
【0200】
[評価]
実施例および比較例で得られた透明性ポリイミド樹脂用組成物を用いて、スピンコート法を用いてガラス上に塗布し、100℃に設定されたホットプレート上で10分間加熱し、塗膜を形成し、その後、1000mJ/cm2にて露光し、170℃で10分間ポストベークを行った。次いで、窒素雰囲気下のオーブンで350℃で1時間キュア(イミド化処理)を行い、透明性ポリイミド樹脂の塗膜を形成した。この塗膜を用いて(1)厚みによる透過性評価および(2)添加量による透過性評価を行った。
なお、実施例1、実施例6、比較例1および比較例6で調製した透明性ポリイミド樹脂用組成物を用いて、2.3μm〜2.7μmの膜厚の塗膜を形成した際の条件および経緯を表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
(1)厚みによる透過性評価および
実施例1、実施例6、比較例1および比較例6について上記方法により得られたそれぞれの厚みの塗膜について、入射光に対する反射光の強度の割合を、分光測定装置(SHIMADZU製UV−2550(PC)S GLP)にて測定した。測定された結果を図10に示す。
また、得られた結果に基づいて、Lambert−Beerの法則により厚みを1μm、4μm、13μm、24μm、および32μmとした場合の470nmおよび525nmの入射光に対する反射光の強度の割合を計算した。結果を下記表2に示す。
また、300nm〜800nmの波長でスキャンした場合の1μmおよび27μmとした場合の結果を計算により求めた。結果を図11および図12に示す。
なお、下記表3は、スタック構造でないサスペンション用基板(ケースNO.1〜4)およびスタック構造のサスペンション用基板(ケースNO.5〜10)の各構成の厚みを示すものである。なお、この表においては中間絶縁層およびカバー絶縁層はそれぞれ第1導体層および第2導体層表面からの厚みを示すものである。表3に示すように、13μmの厚みは、スタック構造ではないサスペンション用基板を想定したものであり、24μmの厚みは、スタック構造のなかで比較的膜厚が薄い場合を想定したものであり、32μmの膜厚は、スタック構造の中で比較的膜厚が厚い場合を想定したものである。
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
(2)添加量による透過性評価
実施例2〜5、比較例2〜5および比較例7〜10についても実施例1、比較例1および比較例6と同様に、それぞれ塗膜を形成し、上記分光測定装置にて測定を行った。この測定結果およびLambert−Beerの法則にお基づいて、厚みを1μmとした場合の、470nmおよび525nmの波長の入射光に対する反射光の強度の割合を上記分光測定装置にて測定した。結果を表4に示す。
【0206】
【表4】
【0207】
(3)まとめ
表2に示すように、実施例ではスタック構造とした場合であっても入射光に対する反射率を安定的に25%以上とすることができることが確認できた。
また、表3に示すように、クマル酸アミド系光塩基発生剤は、透明性ポリイミド樹脂用組成物への添加量にかかわらず、入射光に対する反射光の強度を大きいものとできることが確認できた。これは、上記クマル酸アミド系光塩基発生剤が、キュア時に分解・揮発することにより除去され、上記透明性ポリイミド樹脂を感光剤の残存量の少ないものとすることができたためと考えられる。
【符号の説明】
【0208】
1 … 金属支持基板
2 … ベース絶縁層
3 … 導体部
4 … めっき層
5 … 第1導体層
6 … 中間絶縁層
7 … 第2導体層
8 … カバー絶縁層
10 … サスペンション用基板
20 … スライダ実装領域
30 … サスペンション
31 … ロードビーム
40 … 素子付サスペンション
41 … 素子(スライダ)
50 … ハードディスクドライブ
51 … ディスク
52 … スピンドルモータ
53 … アーム
54 … ボイスコイルモータ
55 … ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、
前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、
前記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、
前記中間絶縁層上に、前記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、
前記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、
前記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの前記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記透明性ポリイミド樹脂が、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであり、
前記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が、15質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記感光剤がクマル酸アミド系光塩基発生剤であることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚さが、24μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板の検査方法であって、
前記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、前記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするサスペンション用基板の検査方法。
【請求項6】
前記入射光が、長波長域の光を含み、前記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことを特徴とする請求項5に記載のサスペンション用基板の検査方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、
前記サスペンション用基板を請求項5または請求項6に記載のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項9】
請求項8に記載のサスペンションと、前記サスペンションのスライダ実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項10】
請求項9に記載の素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項1】
金属支持基板と、
前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層上に形成された第1導体層と、
前記第1導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなる中間絶縁層と、
前記中間絶縁層上に、前記第1導体層と平面視上少なくとも一部が重複するように形成された第2導体層と、
前記第2導体層上に形成された透明性ポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記第1導体層および第2導体層が少なくとも銅を含む導体部を有するものであり、
前記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚みの前記透明性ポリイミド樹脂の470nmから525nmの範囲内の波長の入射光に対する反射光の強度が25%以上であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記透明性ポリイミド樹脂が、ポリイミド成分および感光剤を含む感光性ポリイミド樹脂を用いてなるものであり、
前記透明性ポリイミド樹脂に含まれる感光剤の残渣の含有量が、15質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記感光剤がクマル酸アミド系光塩基発生剤であることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記中間絶縁層およびカバー絶縁層の合計の厚さが、24μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板の検査方法であって、
前記サスペンション用基板のカバー絶縁層側から少なくとも波長470nmから525nmの範囲内の入射光を照射し、反射光を検出することにより、前記第1導体層および第2導体層の平面視上の重なりのズレ幅を検出することを特徴とするサスペンション用基板の検査方法。
【請求項6】
前記入射光が、長波長域の光を含み、前記ズレ幅の検出と同時に異物の検出を行うことを特徴とする請求項5に記載のサスペンション用基板の検査方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板を形成するサスペンション用基板形成工程と、
前記サスペンション用基板を請求項5または請求項6に記載のサスペンション用基板の検査方法により検査する検査工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項9】
請求項8に記載のサスペンションと、前記サスペンションのスライダ実装領域に実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項10】
請求項9に記載の素子付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−113773(P2012−113773A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260229(P2010−260229)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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