説明

サファイア単結晶インゴットのコアリング方法及び装置

【課題】サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて結晶方向のa軸と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックをコアドリル刃先部の損傷をもたらすことなく、コアリングすることができる方法を提供する。
【解決手段】前記インゴットにテーブル上に置く平坦な基準面を作成すると共に、該基準面と平行をなす平坦な加工面を作成し、前記基準面をテーブル上に固定することなく載置したのち、前記加工面をコアビットによるコアリング作業の邪魔にならない箇所で押え装置により押えて固定し、ついでコアビットの刃先部を前記加工面に当て、始めは低速で、所定量切込み後は送り速度を上げて一定の高速送りとし、コアリング作業終了付近で、送り速度を低下させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて円柱状のブロックをくり抜くコアリング方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板となるウェハは通常、サファイア単結晶インゴットから切削加工した円柱状のブロックを一定の厚みにスライスすることにより得られ、下記特許文献1には、CZ法(チョクラルスキー法)又はEFG法(Edge-defined Film-fed. Growth Method)等によって得られたサファイア単結晶インゴットからコアドリルを用い、円筒状のコアビットを2〜10mm/minの送り速度で送って円柱状のブロックをくり抜くコアリング方法が開示されており、コアドリルを用いたコアリング方法は、断面が真円に近い精度の良好な円柱状のブロックを1回のコアリング作業で容易かつ短時間で得られる、としている。
【0003】
下記特許文献1にはまた、所望の結晶方位を有するウェハを製造するためにサファイア単結晶インゴットの結晶成長方向であるa軸に対して、所定の角度或いはa軸と直交するc軸の方向へ穿孔することにより、サファイア単結晶インゴットと異なる結晶方位を有する円柱状のブロックをくり抜くコアリング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キロプロス法で成長させたサファイア単結晶インゴットは、図1に示すように、概して砲弾型で、結晶成長方向aと直交する断面であり、一点鎖線で示すc軸方向の断面が略円形で結晶成長方向で変化するいびつな形状をなしている。
一方CZ法で成長させたサファイア単結晶インゴットは、図2に示すように結晶成長方向が一点鎖線で示すc軸となり、該c軸と直交する断面は略六角形をなしている。
【0006】
いずれのインゴットにおいてもコアドリルを用いて、例えばc軸方向の円柱状のブロックを製造する場合には、機械切削加工によりa軸と平行な一つの基準面を作成し、ついでコアリング時のインゴットの方位が所望の方位となるように基準面を精密に研磨したのち、コアドリル下のプレート上に基準面を当て、接着剤にてサファイア単結晶インゴットを固定してコアリングを行うが、コアビットはドリルのようなセンターを有しないため狙った位置に正確に切り込むことが容易でない。すなわちインゴットへ切り込む際、図3に示すようにコアドリルを構成するコアビット1の刃先部2の一部がインゴット3の傾斜ないし湾曲部に当たると、刃先部2が図の矢印方向に逃げたり、ブレたりし易くなる。しかもサファイアは硬度が高いうえに靭性が低く脆いため、前述する刃先部のブレによりインゴットが欠けたり、割れやひびを生じ易い。
【0007】
接着剤により固定されたインゴットは、コアリング作業を安定して行うことができるが、接着剤は固まるまでに時間がかかるうえ、折角基準面を精密に研磨しても介在する接着剤によりインゴットの方位が所望の方位よりずれて傾くことがある。またコアリング作業後は、インゴットとくり抜かれた円柱状のブロックをプレートより取外さねばならないが、接着剤を剥離するためには湯に入れて煮沸せねばならず、手間がかかり、時間も長くなる。
【0008】
コアリング作業では、切込み開始時のインゴットに対するコアビット刃先部の位置決めは従来目視により行っており、また開始時の送りは0.1〜0.3mm/minの低速で、この低速送りは、上向きの突状をなすインゴットに対し、一般にはコアビットの刃先部の一部又は全てが切込まれ、切削が安定するまで行われるため時間がかかっていた。
【0009】
本発明は、サファイア単結晶インゴットからコアドリルを用いて結晶方向のa軸と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックをコアドリル刃先部の損傷をもたらすことなく、コアリングすることができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係わる発明は、コアドリルを用い、該コアドリルを構成する円筒状のコアビットを送りモータで送って、テーブル上に設置されるサファイア単結晶インゴットをコアリングし、結晶方向と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックを製造する方法であって、前記インゴットにテーブル上に置く平坦な基準面を作成すると共に、該基準面と平行をなす平坦な加工面を作成し、前記基準面をテーブル上に固定することなく載置したのち、上向きをなす前記加工面をコアビットによるコアリング作業の邪魔にならない箇所で押え装置により押えて固定し、ついでコアビットの刃先部を前記加工面に当て、始めは低速で、所定量切込み後は送り速度を上げて一定の高速送りとし、コアリング作業終了付近で、送り速度を低下させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明を実施する装置であって、先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを上下方向に送る送り装置とを有するコアドリルと、テーブル上に載置される前記インゴットの加工面をコアビットによるコアリング作業の邪魔にならない箇所で押える押え装置と、コアビット刃先部がインゴットへの切込み開始基準位置に達したか否かを検知する検知手段と、切込み時における前記刃先部の送り量を計測する計測手段と、前記検知手段による切込み開始基準位置の検知後、前記計測手段によって計測された送り量より前記刃先部の上下位置を求め、求めた刃先部の上下位置が前記加工面近くに設定された上位位置に達するまで、前記送りモータの回転数を低速に制御し、前記上位位置に達すると、前記送りモータの回転数を高速の設定数に増加させて該設定数に維持し、送り量より求めた前記刃先部の上下位置がテーブル近くに設定した下位位置に達すると、低速送りとなるように前記送りモータの回転数を制御する制御装置とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係わる発明は、請求項2に係わる発明において、前記押え装置は、コアビットの軸心に通され、下端に押え具を備えた中空な押え棒と、該押え棒を押下げる押下げ装置を有し、前記押え棒はコアビット内に開口を備え、外部より押え棒内に供給されたドレッシングパウダーが前記開口を通してコアビット内に放出されることを特徴とし、
請求項4に係わる発明は、請求項2又は3に係わる発明において、インゴットが載置されるテーブルをxy制御し、インゴットにマーク付けされたマークをコアビットの軸心に一致させる位置決め手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係わる発明によると、インゴットの加工面は平坦であるため、押え装置による押えが行い易いこと、押え装置でテーブル上のインゴットを押えることにより、従来法のように基準面を接着剤でプレートに接着させることなく、インゴットを固定させることができ、したがって接着剤を用いる従来法のような接着剤の固化時間や接着剤を剥がすための手間や時間が不要となり、その分時間が短縮され、作業性が向上すると共に、接着剤を介在させた場合のようにインゴットの方位が所望の方位よりずれることがないこと、インゴットの上部が山状をなしていると、刃先部の大部分がインゴットに切込まれ、切込み状態が安定するまでに必要な低速送りの時間が比較的長くかかるが、加工面が平坦であることにより刃先部が例えば1〜2mmでも切込まれると安定し、低速送りの時間を短縮させ、コアリング作業に要する時間をより短縮させることができること等の効果を有する。
【0014】
請求項2に係わる発明によると、請求項1に係わる発明のコアリング作業時の送りを自動化することができる。
請求項3に係わる発明によると、コアリング作業時、コアビットの切れ味が低下すると、従来はコアビットの回転を一旦停止してドレッシングパウダーをインゴットの切込み箇所に投入していたが、本発明においては、コアビットを停止させることなく、押え棒を通してコアビット内にドレッシングパウダーを供給することができる。
【0015】
請求項4に係わる発明によると、テーブル上に載置されるインゴットの位置決めを目視によることなく精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】キロプロス法で作成したインゴットの概略図。
【図2】CZ法で作成したインゴットの概略図。
【図3】コアビット刃先部がインゴットの傾斜部に当たるときの説明図。
【図4】本装置の模式図。
【図5】コアドリルユニットの正面図。
【図6】基準面と加工面が形成されるインゴットの概略図。
【図7】インゴットをテーブル上に設置した概略図。
【図8】インゴットをテーブル上に設置した別の態様を示す概略図。
【図9】インゴットを押え具で固定した状態を示す概略図。
【図10】作業開始時、インゴットの加工面上に感圧シートを置いた状態を示す概略図。
【図11】インゴットを押え具と固定具で固定した状態を示す概略図。
【図12】冷却水とドレッシングパウダーを注入したときの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態のサファイア結晶インゴットのコアリング作業を行う装置について図面により説明する。
図4は、コアリング装置全体の模式図を示すものであり、図5はコアリング装置のコアドリルユニットを示すもので、該コアドリルユニットは、先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部11を備えたコアビット12を有し、該コアビット12は駆動モータ13より歯車伝導装置14を介して回転駆動される中空状の主軸15の下端に取外し可能に取付けられ、垂直軸線の回りを回転駆動されるようになっている。
【0018】
コアビット12はまた、送りモータ16を備えた送り機構17により前記垂直軸線に沿って送られて昇降できるようになっており、送り機構17は前記送りモータ16により回転駆動されるボールネジ(図示しない)と、図5に示すボールネジの手前側にボールネジと並設されるガイドレール18と、該ガイドレール18に昇降可能に支持され、かつ前記ボールネジに螺着される図示しないナットを有するブラケット19を有し、ブラケット19は該ブラケット19に固着の円筒体20において前記主軸15を回転自在に軸支し、垂直軸線方向には主軸15と一体となって昇降するようになっている。
【0019】
主軸15の軸心には、後述の押下げ手段、例えばバネ装置、空気圧又は油圧シリンダー22と共に押え装置を構成する中空な押え棒21が昇降可能に通され、該押え棒21は上方に突出する部分の上端において、コアドリルユニットの一部を構成する前記押下げ手段としての油圧シリンダー22のピストンロッド23に連結され、ピストンロッド23の進退に伴って昇降すると共に、主軸15よりコアビット内に突出する下部にドレッシングパウダー及び冷却水を放出する開口25を備え、また下端に押え具24を取付けている。そして押え棒21の上端部には、図4に示されるようにドレッシングパウダーの供給ライン27と冷却水、例えば水道水の供給ライン28が接続され、供給ライン27は例えばコンプレッサー等の圧縮空気源に接続され、ライン27上にはドレッシングパウダーが入れられるホッパー29と電磁弁31が設けられ、電磁弁31を開くと、圧縮空気源から圧縮空気がライン27を通り、ホッパー内のドレッシングパウダーを伴って押え棒21に供給されるようになっている。電磁弁31を閉じると、ドレッシングパウダーの供給が停止される。
【0020】
供給ライン28は冷却水として水道水を用いる場合、蛇口に接続され、ライン上には電磁弁32が設けられている。この電磁弁32の開閉により冷却水の供給或いは停止が行われる。前記ブラケット19はまた、90°の角度で配置される一対のレーザラインマーカ34を有し(図には一つのレーザラインマーカ34のみを示し、他のレーザラインマーカは図示省略してある。)、各レーザラインマーカ34から直線状のレーザ光がサファイア結晶インゴット35に照射され、レーザ光の交点が表示されるようになっている。
【0021】
コアドリルユニットのベース37上には図5に示すように、y方向に移動可能なテーブル38aと、該テーブル38a下においてx方向に移動可能なテーブル38bよりなるテーブル38が設置され、テーブル38aはy軸用モータ41と、図示しないボールネジ又はピニオンラック機構により矢印のy方向に送られ、またテーブル38bはx軸用モータ42と図示しないボールネジ又はピニオンラック機構によりx軸方向に送られるようになっている。
【0022】
制御装置44は、CPUと、送り制御用のプログラム、インゴット位置決め用のプログラム、送りモータ16の回転数よりコアビット刃先部の上下位置を算出する計算式、などを格納するROMと、送りモータ16の回転数を計測し、送り量計測の計測手段としてのエンコーダ45(図4)によって計測された計測値、その他各種のデータを一時的に記憶するRAM等からなって全体がパソコンで構成されている。そして前記y軸用モータ41及びx軸用モータ42を制御する機能と(両モータ41及び42はそれぞれ、制御装置44によることなく、手動ボタンの操作によっても起動、停止を行うことができるようになっている)、油圧シリンダーの切換弁43a、43bをON−OFF制御する機能と、前記電磁弁31、32をON−OFF制御する機能と、コアビット12を回転駆動する駆動モータ13及び送りモータ16を制御する機能と、送りモータ16のエンコーダ45から読取った回転数の累積値から前記コアビット刃先部11の送り量を演算する機能と、前記インゴット35上端の加工面上に載置され、検知手段を構成する感知シート(後述する)などからの検出信号からインゴット35の前記加工面までの距離を求める機能と、求めたインゴット加工面までの距離と、インゴット35が載置されるテーブル38までの距離からインゴット35の高さを演算し、加工面近く、例えば加工面から1〜2mmに設定され、切込みが安定する上位位置に達するまでは例えば0.05〜0.1mm/minの超低速送りに、コアビット刃先部11が前記上位地に達すると、例えば5〜10mm/minの高速送りに、切終り近くの設定された下位置に達すると、例えば0.1〜0.3mm/minの低速送りになるように送りモータ16を制御する機能と、外部からの入力手段により前記電磁弁31、32を開閉制御する機能とを有している。
【0023】
本装置は以上のように構成され、サファイア単結晶インゴットから円柱状のブロックをくり抜くコアリング作業は次のようにして行われる。以下はインゴットとしてキプロス法で作成したインゴット35を用いた例を示すものである。
始めに先ず、インゴット35を結晶成長方向aと平行な基準面と、該基準面と平行な加工面を機械切削加工により形成し(図6)、基準面を下向きにしてテーブル35上にプレート47、例えばカーボンプレートを介して設置する(図7)プレート47を置く代わりに図8に示すようにテーブル35に刃先部11がオーバーカットする逃げのための環状溝46を形成しておいてもよい。
【0024】
次にインゴット35から採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心点に相当する箇所にマーク付けを行う。このマーク付けは例えばポンチを打ち込むか、或いはマジックその他筆記具によって記される。
【0025】
マーク付け後、一対のレーザラインマーカ34によりインゴット上に当てられた直交するラインの交点が前記マークに合致するようにボタン操作によってy軸用モータ41及びx軸用モータ42を起動停止操作しながらテーブル38a、38bのxy制御を行う。
【0026】
インゴット35にマーク付けされたマークをレーザラインマーカ34の交点に合致させることにより位置決めが行われ、したがってサファイア単結晶インゴット35から採取しようとする円柱状ブロックの円形断面の中心が前記コアビットの回転中心に位置するように前記インゴットを位置決めする位置決め手段は、前記マーク付け、レーザラインマーカ34、y軸用モータ41及びx軸用モータ42等により構成されるが、インゴットの位置決め手段は、これに限定されるものではなく、既知の任意の手段を用いることができる。
【0027】
次に図示しない外部入力手段から制御装置44への入力により油圧シリンダー22の切換弁43a、43bを切換え、押え棒21を押下げて押え棒下端の押え具24をインゴット35の加工面に押付け、テーブル上のインゴット35を固定する(図9)。固定後、刃先部11が切込み開始基準位置に達したか否かを検知する検知手段、例えば刃先部11が当たっても損傷しにくい銅板等よりなり、コアビットの刃先が接触すると通電する感知シート51をテーブル38上のインゴット35の加工面上に置き、制御装置44のコアリング開始ボタン(図示しない)を押す。すると、送りモータ16が起動し、コアビット12をガイドレール18に沿って降下させる。コアビット12の降下は刃先部11が前記感知シート51に達し(図10)、該感知シート51の通電が制御装置44に出力されるまで行われ、制御装置44は前記出力が行われると、刃先部11が切込み開始基準位置に達した、と判断し、このときの送り量を送りモータ16の回転数を読取ったエンコーダ45の累積値から演算する。そして予め求めておいた上死点に位置する刃先部11とテーブル38間の距離から感知シート51の厚みを差し引いてインゴット35の高さを求める。
前記感知シート51からの出力によって制御装置44はまた、送りモータ16を一旦一定量逆回転させ、コアビット刃先部11を設定時間の間、若干持ち上げる。
【0028】
コアビット12の刃先部11が若干持上げられた時点で感圧シート51がインゴット35の加工面上から取外される。設定時間経過すると、制御装置44が送りモータ16を制御し、コアビット12を前記切込み開始基準位置(因みにこの基準位置は、インゴットの加工面に感知シート51の厚みを加えたものとなる)まで降下させる。コアビット12の送り速度は、前記切込み開始基準位置までは高速で、切込み開始基準位置に達すると、超低速に送りモータ16を制御する。超低速な送りは、刃先部11が加工面から例えば1〜2mmに設定された上位位置に達するまで行われ、上位位置に達すると高速送りに切換えられる。以後この高速送りが維持される。この高速送りは送り量から求めた刃先部11の上下位置が基準面から例えば1〜2mmに設定された下位位置に達するまで行われ、下位位置に達すると、低速送りに切換えられる。
【0029】
図11において、aは加工面から前記上位位置までの超低速送りが行われる区間、bは下位位置から基準面まで低速送りが行われる区間を示し、ab間は高速送りが行われる区間を示している。
【0030】
コアリング終了時において、刃先部11がカーボンプレート47に達すると、送りモータ16が停止される。この間、切れ味の低下を目視すると、図示しない外部入力手段から制御装置44への入力により、制御装置44は電磁弁31、32を開き、ドレッシングパウダーと冷却水を押え棒21内に通し、下端の開口25よりコアビット内に周辺に向けて放出する。放出された冷却水とパウダーは切込み溝内に入り込み、刃先部を冷却すると共に、ドレッシングを行う(図12)。これによりコアリングが連続して行えるようになる。なお、冷却水とパウダーの注入を目視によって行う代わりに、送りモータ16及び又は駆動モータ13のトルクを計測し、該計測値又はその変化率が設定値に達したとき、制御装置44が電磁弁31、32を制御し、冷却水とパウダーの注入を行うようにしてもよい。この場合、冷却水とパウダーの注入が自動的に行えるようになる。
【0031】
前記実施形態では、インゴット上に感知シート51を置き、コアビット刃先部11が感知シート51に接触した位置で切り込み開始時の刃先部11の上下方向の位置決めが行われ、前記位置でコアビット12を一旦若干上昇させたのち、再度降下し、前記位置よりコアビット12を超低速で送る操作を自動的に行うようにしているが、切込み開始基準位置上方の前記一旦上昇した位置からコアビット12を超低速で送るようにしてもよいし(作業時間は若干増加するが)、前述するようなコアビット刃先部11の位置決め操作を行わないで、いきなりコアビットを目測にて降下させ、インゴット35に接触する直前で送りを一旦停止して位置決めし、その後、前述するような自動運転を行うようにすることもできなくはないが、コアビット12をインゴット35に接触する直前で一旦停止させて位置決めする作業は微調整が困難であり、誤ってコアビット刃先部11がインゴット35に接触した場合、刃先部11が破損し易くなる。
【0032】
テーブル上のインゴット35は前述するように、押え具24によって固定されるが、押え具24以外に図8、図11及び図12に示すような固定具53を設け、該固定具53でインゴット35の周縁を押えて固定しておくのが望ましい。コアリング終了に伴ってくり抜かれた円柱状のブロックは周りのインゴット35と縁切りされるが、ブロックは押え具24により固定されていても縁切りされた周りのインゴット35は非固定状態となるためである。前記押え装置は、前述するように押え具24より構成されるが、固定具53は押え装置に含めてもよいし含めなくてもよい。
【0033】
前記固定具53は、テーブル38に縦向きに取付けられる軸54と、該軸54に上下方向にスライド可能に取付けられる押え部58と、軸上端に取着の押え板56と押え部58との間の軸54に装着されるバネ57よりなっている。
【0034】
コアリング時においては、図5に示すように、テーブル上にインゴット35を囲む囲い55を設け、粉塵が飛散しないようにするのが望ましい。
【0035】
前記実施形態では、インゴットとしてキロプロス法で作成したインゴットを用いたが、図2に示すようにCZ法で作成したインゴットを使用する場合には、結晶成長方向cと直行するa軸方向に一点鎖線で示す基準面と加工面を同様にして形成する。
【符号の説明】
【0036】
11・・刃先部
12・・コアビット
13・・駆動モータ
15・・主軸
16・・送りモータ
21・・押え棒
22・・油圧シリンダー
24・・押え具
25・・開口
34・・レーザマーカ
35・・インゴット
38・・テーブル
44・・制御装置
47・・カーボンプレート
51・・感圧シート
53・・固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアドリルを用い、該コアドリルを構成する円筒状のコアビットを送りモータで送って、テーブル上に設置されるサファイア単結晶インゴットをコアリングし、結晶方向と所望の角度を有する結晶方位の円柱状ブロックを製造する方法であって、前記インゴットにテーブル上に置く平坦な基準面を作成すると共に、該基準面と平行をなす平坦な加工面を作成し、前記基準面をテーブル上に固定することなく載置したのち、前記加工面をコアビットによるコアリング作業の邪魔にならない箇所で押え装置により押えて固定し、ついでコアビットの刃先部を前記加工面に当て、始めは低速で、所定量切込み後は送り速度を上げて一定の高速送りとし、コアリング作業終了付近で、送り速度を低下させることを特徴とするサファイア単結晶インゴットから円柱状ブロックをコアリングする方法。
【請求項2】
先端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を備えたコアビットと、該コアビットを回転駆動する回転駆動装置と、送りモータを備え、前記コアビットを上下方向に送る送り装置とを有するコアドリルと、テーブル上に載置される前記インゴットの加工面をコアビットによるコアリング作業の邪魔にならない箇所で押える押え装置と、コアビット刃先部がインゴットへの切込み開始基準位置に達したか否かを検知する検知手段と、切込み時における前記刃先部の送り量を計測する計測手段と、前記検知手段による切込み開始基準位置の検知後、前記計測手段によって計測された送り量より前記刃先部の上下位置を求め、求めた刃先部の上下位置が前記加工面近くに設定された上位位置に達するまで、前記送りモータの回転数を低速に制御し、前記上位位置に達すると、前記送りモータの回転数を高速の設定数に増加させて該設定数に維持し、送り量より求めた前記刃先部の上下位置がテーブル近くに設定した下位位置に達すると、低速送りとなるように前記送りモータの回転数を制御する制御装置とを有することを特徴とする請求項1記載のコアリング方法を実施する装置。
【請求項3】
前記押え装置は、コアビットの軸心に通され、下端に押え具を備えた中空な押え棒と、該押え棒を押下げる押下げ装置を有し、前記押え棒はコアビット内に開口を備え、外部より押え棒内に供給されたドレッシングパウダーが前記開口を通してコアビット内に放出されることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
インゴットが載置されるテーブルをxy制御し、インゴットにマーク付けされたマークをコアビットの軸心に一致させる位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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