サブミクロン・フィラメントを含有するフラッシュ紡糸ウェブおよびその形成方法
約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブである不織繊維状構造物であって、より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める不織繊維状構造物およびその形成方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
その規模の大きさおよび有利な経済性のために、防護服市場は不織構造物にとって非常に望ましいものである。この市場は、流出物清掃、医療用途、ならびにペイントおよびアスベスト除去などの様々な分野での危険有害性化学薬品からの保護を含んでなる。衣類が着心地の良いものであるためには、それは、身体が熱および湿気を環境に移動させるのを容易に可能にしなければならない。この目標は、衣類が低い気流抵抗を有する布で製造されるときに達成される。同時に、衣類は予期される危険からの保護を提供する必要がある。保護の程度は、布のバリア特性の有効性に依存する。バリア特性は、最小の細孔サイズが最も有効なバリア性を提供して、布細孔サイズと関係付けられてきた。残念ながら、より小さい細孔サイズはまた一般に、より高い気流抵抗およびあまり着心地の良くない衣類をもたらす。従って、既存布よりバリアと気流との有利なバランスを与える材料を提供する必要性がある。かかる材料は、十分な保護を依然として提供しながら、着心地の悪さ、活動上の制限、および極端には、熱応力を最小限にするであろう。
【0002】
多孔性シート材料はまた、濾過材がほこり、ダストおよび粒子状物質をガス流れから除去するために使用されるガスの濾過にも使用される。例えば、エアフィルターおよび電気掃除機バッグは、同時に空気にフィルターを通過させながら、ほこり、ダストおよび粒子状物質を捕捉するようにデザインされる。多孔性シート材料はまた、胞子および細菌などの微生物を濾過して取り除くことが必要である用途にも使用される。例えば、多孔性シート材料は、手術器具などの滅菌医療品の包装に使用される。滅菌包装で、多孔性包装材料は、滅菌中の品目上の細菌を殺すために使用されるエチレンオキシドなどのガスを通さなければならないが、包装材料は、滅菌された品目を汚染するかもしれない細菌を通してはならない。良好なバリア性の多孔性シート材料の別の用途は、吸湿する乾燥物質を保持するパウチの製造用である。かかる乾燥パウチは、包装される材料でしばしば使用されて望ましくない湿気を吸収する。
【0003】
微孔性フィルムは、極めて高い液体バリア性を達成するために使用されてきた。微孔性フィルムはミクロ細孔(すなわち、直径がおよそマイクロメートルの)の相互連結ネットワークでできており、ミクロ細孔は、それらの捩れおよびサイズによって液体バリアを提供する。しかしながら、このバリアは通気性を犠牲にしており、かかるフィルムを含有する布を着用者にとって着心地の良くないものにする。加えて、微孔性フィルムはそれ自体通常非常に耐久性または布状ではないので、それは典型的には少なくとも1つの不織層または好ましくは2つの層に積層され、真ん中にフィルムのあるサンドイッチを形成する。この構造物は追加重量および高価な加工工程を追加する。
【0004】
別の設計された多層ラミネートはSMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)として知られる。防護服用の典型的なSMS構造物では、外側スパンボンド層はランダムに付着された15〜20マイクロメートル直径の連続ポリプロピレン繊維でできており、それはメルトブローン層の保護だけでなく、着心地の良さを提供する。内部メルトブローン層はバリア性を提供し、典型的には1〜3マイクロメートル直径ポリプロピレン繊維よりなる。微孔性フィルムと同様に、この構造物は、衣類の着用者に対しては追加重量を、製造業者に対しては高価なプロセス工程を追加する。
【0005】
タイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンド・オレフィンは防護服用の材料として長年にわたって使用されてきたフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート材料である。イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(デュポン)(E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont))がタイベック(登録商標)スパンボンド・オレフィン不織布を製造し、販売している。タイベック(登録商標)はデュポンによって所有される商標である。タイベック(登録商標)不織布は、その優れた強度特性、その良好なバリア性、その軽量、その適度なレベルの熱的快適性、およびほとんどの競争材料と比べて低い製造コストを生み出すその単層構造のために防護服にとって今まで良い選択肢であった。デュポンは、衣類用タイベック(登録商標)布の着心地の良さをさらに改善するために研究してきた。
【0006】
フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート、具体的にはタイベック(登録商標)スパンボンド・オレフィンシート材料の製造方法は25年以上前に初めて開発され、デュポンによって商業的利用が始まった。ブレイデス(Blades)らに付与された特許文献1は、液体の標準沸点より低い温度でポリマーにとって溶剤ではない液体紡糸剤中の繊維形成ポリマーの溶液が、液体の標準沸点より高い温度で、および自己圧力もしくはそれ以上で、より低い温度および実質的により低い圧力のゾーンへ紡糸されてプレキシフィラメント状フィルム−フィブリル・ストランドを生み出す方法を記載している。アンダーソン(Anderson)らに付与された特許文献2に開示されているように、プレキシフィラメント状フィルム−フィブリル・ストランドは、ポリマーおよび紡糸剤溶液の圧力がフラッシュ紡糸の直前に降下チャンバーでわずかに下げられるときにブレイデスらに開示されている方法を用いて最良に得られる。
【0007】
ブレイデスらおよびアンダーソンらの方法を用いるポリマーのフラッシュ紡糸は(1)紡糸剤の標準沸点より低い温度ではポリマーに対して非溶剤である、(2)高圧でポリマーと溶液を形成する、(3)溶液圧力が降下チャンバーでわずかに下げられたときにポリマーと所望の2相分散系を形成する、そして(4)降下チャンバーから実質的により低い圧力のゾーンへ放出されたときにフラッシュ蒸発する紡糸剤を必要とする。用いられる特定のポリマーに依存して、次の化合物がフラッシュ紡糸法で紡糸剤として有用であることが分かった:ベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ならびにそれらの異性体および同族体などの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;不飽和炭化水素;トリクロロフルオロメタン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエチレン、クロロホルム、塩化エチル、塩化メチルなどのハロゲン化炭化水素;アルコール;エーテル;ケトン;ニトリル;アミド;フルオロカーボン;二酸化硫黄;二酸化炭素;二硫化炭素;ニトロメタン;水;ならびに上記液体の混合物。フラッシュ紡糸に有用な様々な溶剤混合物は、シン(Shin)に付与された特許文献3、シンらに付与された特許文献4、およびシンに付与された特許文献5に開示されている。
【0008】
現在特許査定とされている、2000年10月18日に出願された(特許文献6)は、フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状ポリオレフィンおよびそれらの製造方法への最近の改善を開示しており、その全体が参照により本明細書によって援用される。
【0009】
しかしながら、今まで開発されたフラッシュ紡糸法は、有意の量のサブミクロン・フィラメントを有する繊維状ウェブを生み出さない。
【0010】
最近の取り組みは「ナノファイバー」、機能的に約1マイクロメートル未満、好ましくは約0.5マイクロメートル(すなわち、500ナノメートル)より下と定義される、「ナノ」サイズ範囲の直径のものを対象としてきた。この著しくより低い繊維径および平均細孔サイズの付随する減少は、例えば繊維表面積、坪量、強度、バリア、および透過性など、著しく異なるシート特性につながる。より低い繊維径は、改善されたバリア/透過性バランスおよびより一層の着心地の良さにつながると予期される。しかしながら、他の積層構造物のように、ナノファイバーは典型的には支持層を必要とする。
【0011】
ナノファイバーは従来、非特許文献1に記載されているような、エレクトロスピニングの技術によって製造されてきた。この方法では、電位が注射針などの金属チューブから垂れ下がった溶液中のポリマーの滴へかけられる。電極と接地されたコレクターとの間に生み出された電界は小滴の伸びをもたらしてコレクター上に非常に細かい繊維を生み出す。0.05〜1.1マイクロメートル(50〜1100nm)の範囲の直径の繊維が報告されている。この技術での主な問題は、工業的用途向けにははるかに低すぎる、約0.1グラムのポリマー溶液/分/穴の低い流量である。この制限は電界と流量とのカップリングのためである。
【0012】
ポリマーの性質に関連する、古典的なエレクトロスピニング技術の2つの他の制限がある。第1は表面濡れである。接触角が流体と固体表面との交点の角度と定義されて、保護布のバリア性は液体と表面との接触角に比例するので、特定の液体によるシート表面の濡れは重要である。バリア性は増大する接触角(すなわち、減少する濡れ)と共に増加する。先行技術で報告された研究の圧倒的多数は、血液のような水性システムによって容易に濡らされる、ポリアミド、ポリオレフィンオキシド、およびポリウレタンなどの、親水性ポリマーのエレクトロスピニングへ向けられてきた。幾人かの研究者らは、ナノファイバーが水性システムに対して改善されたバリアを有する疎水性ポリマーから製造できたと示唆してきたが、実際の例はほとんど存在しない。特許文献7は、多孔性フルオロポリマー繊維状シートの製造を開示し、0.1〜10ミクロン範囲の直径のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造を示唆している。それにもかかわらず、該特許は0.5ミクロン以上の直径の繊維を例示しているにすぎない。
【0013】
古典的なエレクトロスピニングの第2のポリマーベース制限は溶剤中のポリマー溶解度に関連する。先行技術に報告された研究の圧倒的多数は、室温および大気圧で可溶であるか、分散系へすることができるかのどちらかであるポリマーに関連する。この明らかな要件は、ナノファイバーへ紡糸するのに好適なポリマーを厳しく制限する。
【0014】
液体透過に対する良好な抵抗を保持しながら、良好な通気性および透湿性を有するバリア布を製造することは望ましいであろう。
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,081,519号明細書
【特許文献2】米国特許第3,227,794号明細書
【特許文献3】米国特許第5,032,326号明細書
【特許文献4】米国特許第5,147,586号明細書
【特許文献5】米国特許第5,250,237号明細書
【特許文献6】米国特許出願第09/691,273号明細書
【特許文献7】米国特許第4,127,706号明細書
【非特許文献1】P.K.バウムガーテン(P.K.Baumgarten)著、「アクリルマイクロ繊維の静電気紡糸(Electrostatic Spinning of Acrylic Microfibers)」、Journal of Colloid and Interface Science、第36巻、No.1(1971年5月)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1実施形態は、約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを含んでなる不織繊維状構造物であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める構造物である。
【0017】
本発明の第2実施形態は、ポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であり、フィラメント幅の最大が約1マイクロメートルより大きい構造物である。
【0018】
本発明の第3実施形態は、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であるポリオレフィンフィラメントと、前記ポリオレフィンフィラメントの間に形成された細孔との収集物を含んでなるポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を示す構造物である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、ポリオレフィン溶液を周囲より高い温度および圧力で紡糸口金に供給する工程と、前記ポリオレフィン溶液を前記紡糸口金内に配置された第1電極と接触させる工程であって、前記電極が前記ポリオレフィン溶液に電荷を与えるために、収集面に対して高い電位に帯電される工程と、前記帯電したポリオレフィン溶液を、前記第1電極の電位未満に保持された第2電極を組み込む紡糸口金出口オリフィスを通して放出してポリオレフィンフィラメントを形成する工程と、前記ポリオレフィンフィラメントを前記収集面上に収集して、約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを形成する工程であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める工程とを含んでなる、大部分のフィラメントが約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有する不織繊維状構造物の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
従来のエレクトロスピニングとは違って、本発明でのポリマー溶液はフラッシュ紡糸条件下に、すなわち、高温および溶液沸点での自己圧力より高い圧力で製造され、紡糸される。意義深いことに、本発明は、高温および高圧でのみ可溶であるポリマー材料に有利に適用できる。こうして、ポリオレフィンなどの溶解困難なポリマーからのナノファイバーが比較的高い製造速度で初めて製造された。これらのポリマーは疎水性であり、古典的な方法によって典型的にエレクトロスピニングされた通常の親水性ポリマーと比較して実質的に異なる濡れ特性およびバリア性の生成物の可能性を提供する。
【0021】
本明細書に記載されるプロセス工程は、他の技術によって製造されるものとは著しく異なるモルフォロジーを有する不織繊維状ウェブにつながり得る。本明細書で用いるところでは、用語「フィラメント」および「繊維」およびそれらの派生物(「ナノファイバー」)は同等物として意図され、それらの意味に関して何の区別も含意されるべきではない。
【0022】
古典的なエレクトロスピニングで、繊維モルフォロジーは「滑らかな、真っ直ぐなシリンダーの外観」を有する(上に引用されたバウムガーテン)。図1は、米国特許第4,127,706号明細書に開示されているような古典的なエレクトロスピニング装置であって、接地された金属注射針1が溜め(示されていない)から紡糸液を供給されてポリテトラフルオロエチレン・ナノファイバーを形成し、ナノファイバーが駆動ローラー3および遊びローラー4によって駆動されるベルト2上に付着され、ベルトに発電機5から静電荷が供給され、こうしてナノファイバーマット6を形成し、それがベルトと反対に回転するローラー7によってピックアップされる装置の略図である。
【0023】
図2は、米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書に記載されているような代わりのエレクトロスピニング装置であって、微細繊維形成ポリマー溶液を含有する溜め80、ポンプ81およびそれにポリマー溶液がポンプ送液される回転式放射装置すなわちエミッター40が提供される装置を開示している。エミッター40は一般に回転ユニオン41、複数のオフセット穴44を含む回転部分42および前方対面部分と回転ユニオンとを連結するシャフト43よりなる。回転ユニオン41は、中空シャフト43による前方対面部分42へのポリマー溶液の導入を提供する。穴44は前方対面部分42の外周周りに間隔を置いて配置される。回転部分42は次に溜めからのポリマー溶液を得て、それが静電場中で回転するとき、溶液の小滴は静電界によって収集メディア70の方へ加速される。実質的に平面の格子60がエミッター40に向かい合っており、しかしそれから離れて間隔を置いて配置され、その上に収集メディア70(すなわち、基材または複合基材)が置かれる。空気は格子を通して抜き取ることができる。収集メディア70は、格子60の隣り合った反対端に置かれているローラー71および72の周りを通過する。高電圧静電電位は、好適な静電電源61とそれぞれ格子60およびエミッター40に接続している結線62および63とを用いてエミッター40と格子60との間に維持される。
【0024】
米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書は、該装置を様々な異なるポリマーからナノファイバーを形成するために用い得ることを示唆しているが、ポリアミドベースのナノファイバーを例示しているにすぎない。
【0025】
図4は、本明細書の図2に説明される装置によって製造されたと考えられる、ドナルドソン・カンパニー(濾過における不織布ミーティング−第5回国際会議、独国シュトゥットガルト(Nonwevons in Filtration Meeting−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany)、2003年3月で発表されたチモシー H.グラフェ(Timothy H.Grafe)、クリスチン M.グラハム(Kristine M.Graham)著、「エレクトロスピニングからのナノファイバーウェブ(Nanofiber Webs from Electrospinning)」)によって製造された従来法でエレクトロスピニングされた繊維を含有する市販濾材の走査電子顕微鏡写真である。具体的には、画像は、空気濾過用途向けにセルロース基材上へエレクトロスピニングされたナノファイバーを示す。ナノファイバー径は、10ミクロンを超える直径の支持セルロース系繊維構造物に対して、約250ナノメートルである。
【0026】
図3は、本発明の新規ポリオレフィン構造物を形成するために用いられるエレクトロスピニング装置の略図である。電源120によって高電位に帯電される第1(エミッター)電極100は、金属などの導電性材料でできた紡糸口金105内に配置され、貯蔵容器(示されていない)によって提供される高圧、高温ポリオレフィン溶液流れ110と接触する。ポリオレフィン溶液流れはエミッター電極100を流れ過ぎ、その中に電荷を注入され、次に、レジスターを通って電気的にアースされている第2(平滑)電極102を流れ過ぎる。第2電極102の下流で、帯電したポリオレフィン溶液流れは紡糸口金出口オリフィス108を通って流れ、そのポイントで溶液の溶剤部分がフラッシュ蒸発し、そしてポリオレフィン溶液に与えられた電荷のために、通常小さい幅を有するフラッシュ紡糸ポリオレフィンフィラメントまたは繊維112が形成され、それは順繰りに接地されたコレクター電極104上に付着される。第2電極およびコレクター電極は必ずしもアースされている必要はないが、第1電極とは違った電位差に電気的に維持することができる。図3に例示される電荷注入装置は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,656,394号明細書に記載されているものと似している。
【0027】
本発明によって生み出された生成物モルフォロジーは、一般にプレキシフィラメント状として特徴付けることができる。カーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)(第4版、第17巻、353−355ページ)に記載されるように、用語「プレキシフィラメント状糸」は、約4ミクロン未満の平均フィルム厚さおよび25ミクロン未満の中央フィブリル幅を有する、かつ、糸の縦軸と概して同延に整列している、ランダム長さの、薄い、リボン様のフィルム−フィブリル要素の3次元統合ネットワークより実質的になるモルフォロジーで特徴付けられる糸またはストランドを意味する。プレキシフィラメント状糸で、フィルム−フィブリル要素は断続的に一体化し、かつ、糸の長さ、幅および厚さの全体にわたって様々な場所で不規則な間隔で分離し、それによって3次元ネットワークを形成する。このタイプのプレキシフィラメント状糸は、主としてフラッシュ紡糸された高密度ポリエチレン不織布、最も代表的には、デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーによって製造されるタイベック(登録商標)不織布の形で広範囲に及ぶ商品価値を見いだしてきた。従来のプレキシフィラメント状糸は、本出願に例示されるものよりはるかに大きい寸法を有する。
【0028】
図8〜10および12〜25に例示されるように、現在開示される方法に従って形成される生成物は、より小さいポリオレフィンフィラメントまたは繊維のウェブによってさらにそれら自体相互連結されているより大きいポリオレフィンフィラメントまたは繊維の複雑な相互連結ネットワークまたは「ウェブ」である。本発明の「ウェブ」は構造の点でスパイダーウェブに似ているが、フィラメントサイズおよび交差点の位置の両方の点で不規則である。より大きいフィラメントは一般に約1マイクロメートルより大きい幅を有し、より小さいフィラメントは一般に約1マイクロメートル未満の幅を有する。重要なことには、本発明の不織繊維状構造物中の全フィラメントの大部分(数で)はより小さいサブミクロン・フィラメントである。
【0029】
より小さいフィラメントは、かなりの数の小さなフィラメントが約0.1〜約0.8マイクロメートルの幅を有し、そして多くが約0.5マイクロメートルより下の幅を有して、0.01マイクロメートル〜約1マイクロメートル以下の範囲の幅を有する。
【0030】
本発明の不織構造物のフィラメントは、約0.18〜約1マイクロメートル、さらに約0.18〜約0.7マイクロメートル、またはさらに約0.18〜約0.5マイクロメートル程度の平均幅のフィラメントまたは繊維幅分布を示す。
【0031】
本発明の不織構造物の別の顕著な特徴は、フィラメントの交差点間に存在する微小の間隙または細孔サイズである。下に議論される、直径同等値として測定される平均細孔サイズ分布は約0.20〜約2.5マイクロメートルの範囲である。
【0032】
本発明の図のSEM画像から明らかな、本発明の不織ポリオレフィン構造物の別の重要な特性は、サブミクロン繊維またはフィラメントの長さが間隙または細孔の直径とほぼ同じ大きさであり、そして支持されていないサブミクロン繊維またはフィラメント長さの数学的平均が一般に約10マイクロメートルもしくはそれ未満、さらには約5マイクロメートル未満であり、幾つかの場合には約3マイクロメートル未満であり、それが、ナノファイバーの長さがそれら間の細孔のおおよそのサイズを大きく超える、図4に描写される従来のナノファイバーとは明らかに異なることである。
【0033】
本発明の重要な態様は、図3の電荷注入装置の使用によって達成できる高いポリマー処理量である。それは、従来のエレクトロスピニング装置で得ることができるものより少なくとも2桁高いポリマー溶液流量の可能性を提供する。第1(すなわち、エミッター)電極および第2(すなわち、平滑)電極が流体に浸漬されている電子銃を形成する。電極間の距離は有利にも約1つの紡糸口金オリフィス径にすぎず、非常に大きい電界、そして古典的エレクトロスピニングで提供されたものよりはるかに大きいものを提供する。このように、高速の電荷注入は低導電率流体中で可能であり、それは流体中に高密度の電荷をもたらす。さらに、この電荷は、溶液がオリフィスから出る前の非常に短い滞留時間のために溶液中に留まる。これらの特性は、溶液流量と電荷注入プロセスとの分断をもたらし、約1〜約20cm3/秒もしくはそれ以上、好ましくは約2〜約15cm3/秒、より好ましくは約2.5〜約12cm3/秒のポリマー溶液流量でのナノファイバー紡糸を可能にする。
【0034】
下の実施例は紡糸条件で単相溶液にあるポリマー/溶剤組み合わせを例示するが、本発明はそのように限定されない。2相溶液(すなわち、ポリマーに富む相および溶剤に富む相のあるもの)もまた本発明で開示される方法に有用である。
【0035】
本発明の方法によって製造される生成物に影響を及ぼすように思われる多くのプロセス・パラメーターがある。第1電極電圧(第2電極に対する)は有利には約3kVより大きいかまたはそれに等しい、約17kVほどに高くまで、好ましくは約11kV〜約16.4kVである。電荷を提供するために電極にかけられる電圧がない場合、ナノファイバーは全く生み出されない(図7)。ナノファイバーの数が大きく、かつ、それらのサイズが小さい改善されたモルフォロジーは、ポリマー溶液中のより高い電荷密度によって提供されると考えられる。電荷密度は、溶液流量で割った溶液に加えられる正味電流と定義される。収集装置が良好なファラデー(Faraday)ケージ(すなわち、金属で作られた)である場合、溶液に加えられる正味電流は、配線電流計からか、ファラデーケージと地面との間に設置されたレジスター越しに電圧を読み取るコンピューターによるかのどちらかで読み取られた、ファラデー装置からの電流の直接読みから測定することができる。収集装置が不満足なファラデーケージ(すなわち、非導電体または非導電性素子と導電性素子とのある組み合わせで作れた)である場合、溶液に加えられる正味電流は、測定された第1電極高電圧供給電流と第2電極電流との差から測定することができる。注入された電荷が紡糸口金を出る溶液カラムを覆うガスをその電界が破壊するほど十分に高いときに電荷密度上限は決定される。すべての他の条件が一定に保持される場合、達成できる最大電荷密度は一般に、増加するオリフィス径と共に低下する。典型的な電荷密度は、0.25mm直径オリフィスについて約1マイクロクーロン(microCoulomb)/mLのポリマー溶液であり、好ましくは約0.4〜約3マイクロクーロン/mLである。
【0036】
別の重要なプロセス・パラメーターはポリマー溶液の選択である。本方法は、低導電率溶剤中の付加ポリマーの紡糸に有利である。付加ポリマーの中で、ポリ炭化水素、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ならびにエチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−ブテン共重合体などのエチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体が好ましい。高密度線状ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの、すべてのタイプのポリエチレンが含まれる。使用することができるであろう他の付加ポリマーには、ポリメチルペンテンおよびプロピレン−エチレン共重合体が含まれる。使用に好適なポリオレフィンは、ASTM(米国材料試験協会)D−1238Eに従って測定されるように、約1〜約30g/10分のメルトフローインデックスが好ましくて、約0.1〜約1000g/10分のメルトフローインデックス(MFI)で特徴付けられる。
【0037】
好適な溶剤は、(a)使用されるポリマーの融点より少なくとも約25℃、好ましくは少なくとも約40℃下の沸点を有する、(b)混合および紡糸中にポリマーと実質的に反応しない、(c)本方法で用いられる温度、濃度および圧力の条件下にポリマーを溶解させる、および(d)約106pS/m(ピコジーメンス/メートル)未満の導電率を有するべきである。より好ましい溶剤は約105pS/m未満の導電率を有する。特に好ましい溶剤は約102pS/m未満の導電率を有するべきである。好適な溶剤には、ポリマーに依存して、フレオン(Freon)(登録商標)−11、アルカンのペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。ポリオレフィン溶液は、ポリマー溶液が流れている間ずっとアークを発することなく第1電極と第2電極との間の電位差を維持するために十分に低い導電率を有するべきである。
【0038】
本発明の方法を行うことができる広範囲の溶液粘度がある。この範囲を定量化するための絶対溶液粘度測定値は全くないが、我々は、好適な運転条件が溶液ポリマー濃度とポリマー分子量とをバランスさせることによって得られ得ることを見いだした。ポリマー分子量の逆尺度は、ASTM D−1238によって190℃および2.16kgで測定されるような、ポリマー・メルトフローインデックスによって与えられる。より高いメルトフローインデックスはより低いポリマー分子量を示唆する。例えば、ナノファイバーは、溶液中3重量%の濃度で30のMFIのエチレン−オクテン共重合体で容易に製造された。ほとんど同一の、しかし200のより高いMFIの材料は、類似のモルフォロジーを与えるためには溶液中5重量%、好ましくは7重量%ポリマーを必要とした。我々は、最適の紡糸液が約1〜約400g/10分のメルトフローインデックスを有するポリオレフィンで、約1重量%より高い、好ましくは約3重量%〜約15重量%のポリマー濃度を有するものであることを見いだした。この値よりはるかに低い濃度はナノファイバーを生み出さなかった。これらの値よりはるかに大きい濃度はナノファイバーなしの単鎖糸を与えた。
【0039】
紡糸口金オリフィス径は体積流量および電荷密度に影響を及ぼす。大きなオリフィス径はより大きいポリマー処理量およびオリフィス閉塞の確率の低下を提供する。好適なオリフィス径は約0.125mm〜1.25mm、さらに約0.25mm〜1.25mmである。
【0040】
紡糸温度は、ポリマーの溶融温度より高い温度であり、かつ、コレクター上へのポリマー生成物の付着前に溶剤の蒸発を達成するように溶剤沸点より高い温度であるが、溶剤がナノファイバーの形成前に揮発する(沸騰する)ほど高くないものであるべきである。少なくとも溶剤沸点のそれおよび少なくともポリマー融点のその紡糸温度が好適である。溶剤沸点より少なくとも40度高い、そしてポリマー融点より少なくとも20℃高い紡糸温度が有利である。紡糸口金の直上流で測定される本発明の紡糸圧力は、溶液の自己圧力より高い圧力であるべきであり、約1.8〜約41MPaの範囲であることができ、ポリマー溶液が沸騰するのを防ぐのに十分に高いものであるべきである。
【0041】
酸化防止剤、UV安定剤、染料、顔料、および他の類似の材料などの一般添加剤を、紡糸前に紡糸組成物に添加することができる。
【実施例】
【0042】
下記の実施例では、用いるフラッシュ紡糸装置は米国特許第5,147,586号明細書に記載されている装置の改良であった。本装置は、それぞれがチャンバーの内容物に圧力をかけるように改造されたピストンを備えた2つの高圧シリンダー型チャンバーを含んでなった。シリンダーは2.54cmの内径を有し、それぞれ50cm3の内容積であった。シリンダーを、0.23cm直径チャネルと静的ミキサーとして働く一連の微細メッシュスクリーンを含有する混合チャンバーとによって一端で互いに連結した。混合は、静的ミキサーによって容器の内容物を2つのシリンダー間を行ったり来たりさせることによって行った。ピストンは水圧システムにより供給される高圧水によって駆動させた。
【0043】
オリフィスを開くための速動手段付き効紡糸口金アセンブリをT継手によってチャネルに取り付けた。紡糸口金アセンブリは12.8mm直径および28.5mm長さのリード穴を含んでなった。紡糸口金オリフィスそれ自体は0.38mmの長さで0.12mmの直径か0.75mmの長さで0.25mmの直径かのどちらかを有した。オリフィスは、90度の開先角度で9.5mmの直径へフレア型に開いていた。絶縁性ポリフェニレンスルフィド電極ホルダーを紡糸口金のリード穴内に入れた。このホルダーは、その外周周りに等しく間隔を置いて配置された流体流れのための4つのチャネルを有した。エミッター電極をホルダーの中央に置いた。電極を、高圧シーリンググランド(コナックス社、ニューヨーク州バッファロー(Conax Inc,Buffalo,NY))を通って装置に入る高電圧ワイヤにその上流端で取り付けた。電圧をスペルマン社(ニューヨーク州ハウプパウジ)(Spellman Inc.(Hauppauge,NY))高電圧電源によって供給した。アナログ電流計およびコンピューターが供給電流を測定した。紡糸口金アセンブリをポリフェニレンスルフィド絶縁カップによって装置の残りから電気絶縁した。アナログ電流計およびコンピューターが第2電極への電流を測定した。本明細書に記載されるタイプの電気的アセンブリは「スプレー三極管(Spray Triode)」として知られ、米国特許第6,656,394号明細書に開示されている。
【0044】
興味のあるポリマーを1つのシリンダーへ装入した。示された溶剤を較正した高圧スクリュー式ジェネレーターによって当該シリンダーへ注入した。スクリュー式ジェネレーターの回転数を、溶剤中の材料の所望濃度を与えるために計算した。高圧水を使用してピストンを駆動させて13.8〜27.6MPaの混合圧力を発生させた。
【0045】
ポリマーおよび溶剤を次に、タイプJ熱電対(ニュージャージー州チェリー・ヒルのテクニカル・インダストリアル・プロダクツ社(Technical Industrial Products Inc.of Cherry Hill,NJ))によって測定されるような、表示温度に加熱し、当該温度に約5分間保持した。紡糸混合物の圧力を紡糸直前に約1.8〜約5.3MPaに下げた。これは、紡糸室と所望の紡糸圧力に保持されたはるかにより大きい高圧水のタンク(「蓄圧器」)タンクとの間のバルブを開くことによって行った。紡糸口金オリフィスを、紡糸室と蓄圧器との間のバルブの開口後できるだけ早く(通常、約1〜2秒)開けた。生成物を備え付けの76cm×46cm径ポリプロピレン・バケツに集めた。バケツの下流面上にアルミニウム覆いがあり、それをアナログ電流計、レジスター、そして次に地面に接続した。コンピューターはレジスター越しに電圧を監視し、記録し、そして次に地面への電流を計算した。バケツのアルミニウム覆いおよび内壁を、サンプル取り出しの容易さのために0.12mm厚さのポリエステルシートでカバーした。バケツを約1400cm3/秒の速度の窒素で連続的にパージして酸素を排除し、こうして引火性蒸気の着火を防いだ。幾つかのケースでは、炭素鋼バケツを使用した。
【0046】
紡糸口金直前の圧力を、圧力変換器(マサチューセッツ州ノーウッドのダイニスコ社(Dynisco Inc.of Norwood,MA))で測定し、紡糸の間ずっと記録し、「紡糸圧力」と言及した。紡糸圧力はコンピューターを用いて記録され、通常蓄圧器圧力設定点より約300kPa低かった。紡糸口金直前で測定される温度をまた紡糸の間ずっと記録し、「紡糸温度」と言及した。紡糸後に、ナノファイバー被覆ポリエステルシートをバケツから取り出した。断片をシートからカットし、走査電子顕微鏡で検査した。単位質量当たりの繊維表面積をまた標準BET(ブルナウアー−エメット−テラー)技法によって測定した。
【0047】
下の表1は、次の実施例に使用するポリマーをリストする。
【0048】
【表1】
【0049】
比較例1
フレオン(登録商標)11中の3重量%ポリマーAの溶液を調製し、103℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.7MPaの圧力および2.67cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。電圧をシステムに全くかけなかった。図7に示すようにナノファイバーは全く形成されなかった。
【0050】
実施例1
紡糸温度が100℃であり、圧力が2.9MPaであり、流量が2.4cm3/秒であり、そして16kVの電圧をエミッター電極にかけたことを除いては、比較例1のポリマー溶液およびパラメーターを繰り返した。生じた生成物は、図8および9に示すようにサブミクロン幅を有するフィラメントの複合ウェブによってさらに相互連結されたより大きいフィラメントの相互連結複合ウェブで特徴付けられる。
【0051】
実施例2
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、105℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.52cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図10に示す。
【0052】
実施例3
フレオン(登録商標)11中の18重量%ポリマーCの溶液を調製し、101℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.49cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物はナノファイバーを全く持たず、図11に示される。
【0053】
実施例4
ヘキサン中の9重量%ポリマーDの溶液を調製し、140℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.9MPaの圧力および3.73cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図12に示す。
【0054】
実施例5
ヘプタン中の6重量%ポリマーEの溶液を調製し、180℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、4.9MPaの圧力および1.06cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。12kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図13に示す。
【0055】
実施例6
ヘプタン中の8重量%のポリマーFとGとの90/10w/wのブレンドの溶液を調製し、181℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および1.1cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。11.8kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図14に示す。
【0056】
実施例7
オクタン中の2.5重量%ポリマーGの溶液を調製し、211℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、1.9MPaの圧力および2.82cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図15に示す。
【0057】
実施例8
オクタン中の12重量%ポリマーJの溶液を調製し、210℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.2MPaの圧力および4.42cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図16に示す。
【0058】
実施例9
オクタン中の8重量%ポリマーHの溶液を調製し、182℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.2MPaの圧力および1.25cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.7kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図17に示す。
【0059】
上記実施例からの図8〜10および12〜17の比較は、本発明の方法が、たとえあったとしてもほとんどないサブミクロン幅を有するフィラメントを示す従来法でフラッシュ紡糸されたタイベック(登録商標)、図5および6とは対照的に、サブミクロン幅を有する大部分のフィラメントを含有するフラッシュ紡糸不織構造物の製造に成功していることを明らかにする。
【0060】
実施例10〜17
次の実施例で、示されるポリマーを示される条件下での電荷注入でフラッシュ紡糸し、SEM画像を撮り、SEM画像をコニューメキシコ州アルバカーキのホーラル社(KHORAL,Inc.of Albuquerque,New Mexico)から入手可能なホーロス・プロ(KHOROS PRO)200ソフトウェア(ユニックス(UNIX)バージョン)を用いる画像解析技術で解析した。画像解析は、(1)ウェブ間隙サイズ分布−直径同等値、(2)ウェブ間隙サイズ分布−長軸、および(3)ウェブ繊維幅分布に関して定量的なデータを提供した。アスペクト比によるウェブ間隙形状分布に関するデータもまた得られた。
【0061】
直径同等値(Deq)としてのウェブ間隙サイズの測定値は、形状が不規則である不織繊維状構造物内の間隙または細孔の面積の測定、次にそれらの面積を同等面積の円の直径に換算することによって求めた。このように、不規則形状細孔の面積をパイ(π)で割り、得られた数の平方根を2倍して同等円直径を得る。
【0062】
長軸によるウェブ間隙サイズの測定値は、形状がほぼ楕円形である間隙または細孔内の最長距離を測定することによって得る。
【0063】
ウェブ繊維幅は、各繊維またはフィラメントの画像のピクセル幅として測定し、ナノメートルまたはマイクロメートル単位の相当幅に換算した。
【0064】
上記測定値のそれぞれをSEMにわたって合計し、分布の最小値、最大値および平均値を提供するために通常の統計分析を行った。
【0065】
実施例10
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、100℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.54cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図18に示す。
【0066】
実施例11
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、100℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.0MPaの圧力および2.44cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図19に示す。
【0067】
実施例12
オクタン中の5.5重量%ポリマーLの溶液を調製し、200℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、4.9MPaの圧力および1.22cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.7kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図20に示す。
【0068】
実施例13
オクタン中の6重量%ポリマーHの溶液を調製し、190℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、1.9MPaの圧力および11.9cm3/秒の流量で0.25mmの幅および0.88mmの長さを有するスロットダイを通してフラッシュ紡糸した。16.4kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図21に示す。
【0069】
実施例14
ヘプタン/ペンタン(50v/50v)の混合溶剤中の8重量%ポリマーFの溶液を調製し、192℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および1.11cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。12.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図22に示す。
【0070】
実施例15
ヘキサン中の5重量%ポリマーKの溶液を調製し、141℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.3MPaの圧力および3.59cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図23に示す。
【0071】
実施例16
オクタン中の6重量%ポリマーHの溶液を調製し、210℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および4.49cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16.4kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図24に示す。
【0072】
実施例17
実施例16の生成物のサンプルを収集バケツの異なる場所から採取し、SEM画像を撮り、画像解析を行った。生じた生成物を図25に示す。
【0073】
サンプル10〜17について行った画像解析の結果を表2で下に報告する。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に提示される画像解析データは、本発明の方法が約0.18〜約1マイクロメートル、さらに約0.18〜約0.7マイクロメートル、またはさらに約0.18〜約0.5マイクロメートル、またはさらに約0.18〜0.3マイクロメートルの数学的平均の繊維またはフィラメント幅分布、および約0.20〜約2.5マイクロメートル、さらに約0.20〜約2マイクロメートル、またはさらに約0.20〜約1.8マイクロメートルの数学的平均の間隙または細孔サイズ分布を有する不織ポリオレフィン構造物を形成したことを明らかにする。長軸により測定されるような、最大間隙サイズは約20マイクロメートル、さらに約15マイクロメートル未満、そしてさらに約1マイクロメートル〜約15マイクロメートル程度であり、長軸間隙サイズの数学的平均は約5マイクロメートル未満、さらに約0.25マイクロメートル〜約4マイクロメートル程度に低かった。
【0076】
本発明の不織繊維状構造物は、防護服、流体フィルターなど用のシート構造物の製造に用途を見いだすかもしれない。スパンボンド布、メルトブローン布、スパンレース布、織布などの他の従来布の支持スクリム上へ本発明の不織繊維状構造を付着させることが有利であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】米国特許第4,127,706号明細書に記載されているような先行技術エレクトロスピニング装置の略図である。
【図2】米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書に記載されているような別の先行技術エレクトロスピニング装置の略図である。
【図3】本発明の方法を行うために用いられるエレクトロスピニング装置の略図である。
【図4】先行技術市販ナノファイバー含有濾材の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5】先行技術従来フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート材料からのプレキシフィラメント状繊維ストランドの部分の4000倍で撮られたSEM画像である。
【図6】米国特許出願第09/691,273号明細書に開示されている方法によって製造された先行技術プレキシフィラメント状シート材料からのプレキシフィラメント状繊維ストランドの部分の5000倍で撮られたSEM画像である。
【図7】100倍の倍率での比較例1の生成物のSEM画像である。
【図8】150倍の倍率での実施例1の生成物のSEM画像である。
【図9】2500倍の倍率での実施例1の生成物のSEM画像である。
【図10】1500倍の倍率での実施例2の生成物のSEM画像である。
【図11】150倍の倍率での実施例3の生成物のSEM画像である。
【図12】1000倍の倍率での実施例4の生成物のSEM画像である。
【図13】5000倍の倍率での実施例5の生成物のSEM画像である。
【図14】5000倍の倍率での実施例6の生成物のSEM画像である。
【図15】3000倍の倍率での実施例7の生成物のSEM画像である。
【図16】1000倍の倍率での実施例8の生成物のSEM画像である。
【図17】1000倍の倍率での実施例9の生成物のSEM画像である。
【図18】3000倍の倍率での実施例10の生成物のSEM画像である。
【図19】3000倍の倍率での実施例11の生成物のSEM画像である。
【図20】3000倍の倍率での実施例12の生成物のSEM画像である。
【図21】3000倍の倍率での実施例13の生成物のSEM画像である。
【図22】10,000倍の倍率での実施例14の生成物のSEM画像である。
【図23】10,000倍の倍率での実施例15の生成物のSEM画像である。
【図24】1000倍の倍率での実施例16の生成物のSEM画像である。
【図25】1000倍の倍率での実施例17の生成物のSEM画像である。
【背景技術】
【0001】
その規模の大きさおよび有利な経済性のために、防護服市場は不織構造物にとって非常に望ましいものである。この市場は、流出物清掃、医療用途、ならびにペイントおよびアスベスト除去などの様々な分野での危険有害性化学薬品からの保護を含んでなる。衣類が着心地の良いものであるためには、それは、身体が熱および湿気を環境に移動させるのを容易に可能にしなければならない。この目標は、衣類が低い気流抵抗を有する布で製造されるときに達成される。同時に、衣類は予期される危険からの保護を提供する必要がある。保護の程度は、布のバリア特性の有効性に依存する。バリア特性は、最小の細孔サイズが最も有効なバリア性を提供して、布細孔サイズと関係付けられてきた。残念ながら、より小さい細孔サイズはまた一般に、より高い気流抵抗およびあまり着心地の良くない衣類をもたらす。従って、既存布よりバリアと気流との有利なバランスを与える材料を提供する必要性がある。かかる材料は、十分な保護を依然として提供しながら、着心地の悪さ、活動上の制限、および極端には、熱応力を最小限にするであろう。
【0002】
多孔性シート材料はまた、濾過材がほこり、ダストおよび粒子状物質をガス流れから除去するために使用されるガスの濾過にも使用される。例えば、エアフィルターおよび電気掃除機バッグは、同時に空気にフィルターを通過させながら、ほこり、ダストおよび粒子状物質を捕捉するようにデザインされる。多孔性シート材料はまた、胞子および細菌などの微生物を濾過して取り除くことが必要である用途にも使用される。例えば、多孔性シート材料は、手術器具などの滅菌医療品の包装に使用される。滅菌包装で、多孔性包装材料は、滅菌中の品目上の細菌を殺すために使用されるエチレンオキシドなどのガスを通さなければならないが、包装材料は、滅菌された品目を汚染するかもしれない細菌を通してはならない。良好なバリア性の多孔性シート材料の別の用途は、吸湿する乾燥物質を保持するパウチの製造用である。かかる乾燥パウチは、包装される材料でしばしば使用されて望ましくない湿気を吸収する。
【0003】
微孔性フィルムは、極めて高い液体バリア性を達成するために使用されてきた。微孔性フィルムはミクロ細孔(すなわち、直径がおよそマイクロメートルの)の相互連結ネットワークでできており、ミクロ細孔は、それらの捩れおよびサイズによって液体バリアを提供する。しかしながら、このバリアは通気性を犠牲にしており、かかるフィルムを含有する布を着用者にとって着心地の良くないものにする。加えて、微孔性フィルムはそれ自体通常非常に耐久性または布状ではないので、それは典型的には少なくとも1つの不織層または好ましくは2つの層に積層され、真ん中にフィルムのあるサンドイッチを形成する。この構造物は追加重量および高価な加工工程を追加する。
【0004】
別の設計された多層ラミネートはSMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)として知られる。防護服用の典型的なSMS構造物では、外側スパンボンド層はランダムに付着された15〜20マイクロメートル直径の連続ポリプロピレン繊維でできており、それはメルトブローン層の保護だけでなく、着心地の良さを提供する。内部メルトブローン層はバリア性を提供し、典型的には1〜3マイクロメートル直径ポリプロピレン繊維よりなる。微孔性フィルムと同様に、この構造物は、衣類の着用者に対しては追加重量を、製造業者に対しては高価なプロセス工程を追加する。
【0005】
タイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンド・オレフィンは防護服用の材料として長年にわたって使用されてきたフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート材料である。イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(デュポン)(E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont))がタイベック(登録商標)スパンボンド・オレフィン不織布を製造し、販売している。タイベック(登録商標)はデュポンによって所有される商標である。タイベック(登録商標)不織布は、その優れた強度特性、その良好なバリア性、その軽量、その適度なレベルの熱的快適性、およびほとんどの競争材料と比べて低い製造コストを生み出すその単層構造のために防護服にとって今まで良い選択肢であった。デュポンは、衣類用タイベック(登録商標)布の着心地の良さをさらに改善するために研究してきた。
【0006】
フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート、具体的にはタイベック(登録商標)スパンボンド・オレフィンシート材料の製造方法は25年以上前に初めて開発され、デュポンによって商業的利用が始まった。ブレイデス(Blades)らに付与された特許文献1は、液体の標準沸点より低い温度でポリマーにとって溶剤ではない液体紡糸剤中の繊維形成ポリマーの溶液が、液体の標準沸点より高い温度で、および自己圧力もしくはそれ以上で、より低い温度および実質的により低い圧力のゾーンへ紡糸されてプレキシフィラメント状フィルム−フィブリル・ストランドを生み出す方法を記載している。アンダーソン(Anderson)らに付与された特許文献2に開示されているように、プレキシフィラメント状フィルム−フィブリル・ストランドは、ポリマーおよび紡糸剤溶液の圧力がフラッシュ紡糸の直前に降下チャンバーでわずかに下げられるときにブレイデスらに開示されている方法を用いて最良に得られる。
【0007】
ブレイデスらおよびアンダーソンらの方法を用いるポリマーのフラッシュ紡糸は(1)紡糸剤の標準沸点より低い温度ではポリマーに対して非溶剤である、(2)高圧でポリマーと溶液を形成する、(3)溶液圧力が降下チャンバーでわずかに下げられたときにポリマーと所望の2相分散系を形成する、そして(4)降下チャンバーから実質的により低い圧力のゾーンへ放出されたときにフラッシュ蒸発する紡糸剤を必要とする。用いられる特定のポリマーに依存して、次の化合物がフラッシュ紡糸法で紡糸剤として有用であることが分かった:ベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ならびにそれらの異性体および同族体などの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;不飽和炭化水素;トリクロロフルオロメタン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエチレン、クロロホルム、塩化エチル、塩化メチルなどのハロゲン化炭化水素;アルコール;エーテル;ケトン;ニトリル;アミド;フルオロカーボン;二酸化硫黄;二酸化炭素;二硫化炭素;ニトロメタン;水;ならびに上記液体の混合物。フラッシュ紡糸に有用な様々な溶剤混合物は、シン(Shin)に付与された特許文献3、シンらに付与された特許文献4、およびシンに付与された特許文献5に開示されている。
【0008】
現在特許査定とされている、2000年10月18日に出願された(特許文献6)は、フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状ポリオレフィンおよびそれらの製造方法への最近の改善を開示しており、その全体が参照により本明細書によって援用される。
【0009】
しかしながら、今まで開発されたフラッシュ紡糸法は、有意の量のサブミクロン・フィラメントを有する繊維状ウェブを生み出さない。
【0010】
最近の取り組みは「ナノファイバー」、機能的に約1マイクロメートル未満、好ましくは約0.5マイクロメートル(すなわち、500ナノメートル)より下と定義される、「ナノ」サイズ範囲の直径のものを対象としてきた。この著しくより低い繊維径および平均細孔サイズの付随する減少は、例えば繊維表面積、坪量、強度、バリア、および透過性など、著しく異なるシート特性につながる。より低い繊維径は、改善されたバリア/透過性バランスおよびより一層の着心地の良さにつながると予期される。しかしながら、他の積層構造物のように、ナノファイバーは典型的には支持層を必要とする。
【0011】
ナノファイバーは従来、非特許文献1に記載されているような、エレクトロスピニングの技術によって製造されてきた。この方法では、電位が注射針などの金属チューブから垂れ下がった溶液中のポリマーの滴へかけられる。電極と接地されたコレクターとの間に生み出された電界は小滴の伸びをもたらしてコレクター上に非常に細かい繊維を生み出す。0.05〜1.1マイクロメートル(50〜1100nm)の範囲の直径の繊維が報告されている。この技術での主な問題は、工業的用途向けにははるかに低すぎる、約0.1グラムのポリマー溶液/分/穴の低い流量である。この制限は電界と流量とのカップリングのためである。
【0012】
ポリマーの性質に関連する、古典的なエレクトロスピニング技術の2つの他の制限がある。第1は表面濡れである。接触角が流体と固体表面との交点の角度と定義されて、保護布のバリア性は液体と表面との接触角に比例するので、特定の液体によるシート表面の濡れは重要である。バリア性は増大する接触角(すなわち、減少する濡れ)と共に増加する。先行技術で報告された研究の圧倒的多数は、血液のような水性システムによって容易に濡らされる、ポリアミド、ポリオレフィンオキシド、およびポリウレタンなどの、親水性ポリマーのエレクトロスピニングへ向けられてきた。幾人かの研究者らは、ナノファイバーが水性システムに対して改善されたバリアを有する疎水性ポリマーから製造できたと示唆してきたが、実際の例はほとんど存在しない。特許文献7は、多孔性フルオロポリマー繊維状シートの製造を開示し、0.1〜10ミクロン範囲の直径のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造を示唆している。それにもかかわらず、該特許は0.5ミクロン以上の直径の繊維を例示しているにすぎない。
【0013】
古典的なエレクトロスピニングの第2のポリマーベース制限は溶剤中のポリマー溶解度に関連する。先行技術に報告された研究の圧倒的多数は、室温および大気圧で可溶であるか、分散系へすることができるかのどちらかであるポリマーに関連する。この明らかな要件は、ナノファイバーへ紡糸するのに好適なポリマーを厳しく制限する。
【0014】
液体透過に対する良好な抵抗を保持しながら、良好な通気性および透湿性を有するバリア布を製造することは望ましいであろう。
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,081,519号明細書
【特許文献2】米国特許第3,227,794号明細書
【特許文献3】米国特許第5,032,326号明細書
【特許文献4】米国特許第5,147,586号明細書
【特許文献5】米国特許第5,250,237号明細書
【特許文献6】米国特許出願第09/691,273号明細書
【特許文献7】米国特許第4,127,706号明細書
【非特許文献1】P.K.バウムガーテン(P.K.Baumgarten)著、「アクリルマイクロ繊維の静電気紡糸(Electrostatic Spinning of Acrylic Microfibers)」、Journal of Colloid and Interface Science、第36巻、No.1(1971年5月)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1実施形態は、約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを含んでなる不織繊維状構造物であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める構造物である。
【0017】
本発明の第2実施形態は、ポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であり、フィラメント幅の最大が約1マイクロメートルより大きい構造物である。
【0018】
本発明の第3実施形態は、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であるポリオレフィンフィラメントと、前記ポリオレフィンフィラメントの間に形成された細孔との収集物を含んでなるポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を示す構造物である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、ポリオレフィン溶液を周囲より高い温度および圧力で紡糸口金に供給する工程と、前記ポリオレフィン溶液を前記紡糸口金内に配置された第1電極と接触させる工程であって、前記電極が前記ポリオレフィン溶液に電荷を与えるために、収集面に対して高い電位に帯電される工程と、前記帯電したポリオレフィン溶液を、前記第1電極の電位未満に保持された第2電極を組み込む紡糸口金出口オリフィスを通して放出してポリオレフィンフィラメントを形成する工程と、前記ポリオレフィンフィラメントを前記収集面上に収集して、約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを形成する工程であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める工程とを含んでなる、大部分のフィラメントが約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有する不織繊維状構造物の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
従来のエレクトロスピニングとは違って、本発明でのポリマー溶液はフラッシュ紡糸条件下に、すなわち、高温および溶液沸点での自己圧力より高い圧力で製造され、紡糸される。意義深いことに、本発明は、高温および高圧でのみ可溶であるポリマー材料に有利に適用できる。こうして、ポリオレフィンなどの溶解困難なポリマーからのナノファイバーが比較的高い製造速度で初めて製造された。これらのポリマーは疎水性であり、古典的な方法によって典型的にエレクトロスピニングされた通常の親水性ポリマーと比較して実質的に異なる濡れ特性およびバリア性の生成物の可能性を提供する。
【0021】
本明細書に記載されるプロセス工程は、他の技術によって製造されるものとは著しく異なるモルフォロジーを有する不織繊維状ウェブにつながり得る。本明細書で用いるところでは、用語「フィラメント」および「繊維」およびそれらの派生物(「ナノファイバー」)は同等物として意図され、それらの意味に関して何の区別も含意されるべきではない。
【0022】
古典的なエレクトロスピニングで、繊維モルフォロジーは「滑らかな、真っ直ぐなシリンダーの外観」を有する(上に引用されたバウムガーテン)。図1は、米国特許第4,127,706号明細書に開示されているような古典的なエレクトロスピニング装置であって、接地された金属注射針1が溜め(示されていない)から紡糸液を供給されてポリテトラフルオロエチレン・ナノファイバーを形成し、ナノファイバーが駆動ローラー3および遊びローラー4によって駆動されるベルト2上に付着され、ベルトに発電機5から静電荷が供給され、こうしてナノファイバーマット6を形成し、それがベルトと反対に回転するローラー7によってピックアップされる装置の略図である。
【0023】
図2は、米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書に記載されているような代わりのエレクトロスピニング装置であって、微細繊維形成ポリマー溶液を含有する溜め80、ポンプ81およびそれにポリマー溶液がポンプ送液される回転式放射装置すなわちエミッター40が提供される装置を開示している。エミッター40は一般に回転ユニオン41、複数のオフセット穴44を含む回転部分42および前方対面部分と回転ユニオンとを連結するシャフト43よりなる。回転ユニオン41は、中空シャフト43による前方対面部分42へのポリマー溶液の導入を提供する。穴44は前方対面部分42の外周周りに間隔を置いて配置される。回転部分42は次に溜めからのポリマー溶液を得て、それが静電場中で回転するとき、溶液の小滴は静電界によって収集メディア70の方へ加速される。実質的に平面の格子60がエミッター40に向かい合っており、しかしそれから離れて間隔を置いて配置され、その上に収集メディア70(すなわち、基材または複合基材)が置かれる。空気は格子を通して抜き取ることができる。収集メディア70は、格子60の隣り合った反対端に置かれているローラー71および72の周りを通過する。高電圧静電電位は、好適な静電電源61とそれぞれ格子60およびエミッター40に接続している結線62および63とを用いてエミッター40と格子60との間に維持される。
【0024】
米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書は、該装置を様々な異なるポリマーからナノファイバーを形成するために用い得ることを示唆しているが、ポリアミドベースのナノファイバーを例示しているにすぎない。
【0025】
図4は、本明細書の図2に説明される装置によって製造されたと考えられる、ドナルドソン・カンパニー(濾過における不織布ミーティング−第5回国際会議、独国シュトゥットガルト(Nonwevons in Filtration Meeting−Fifth International Conference,Stuttgart,Germany)、2003年3月で発表されたチモシー H.グラフェ(Timothy H.Grafe)、クリスチン M.グラハム(Kristine M.Graham)著、「エレクトロスピニングからのナノファイバーウェブ(Nanofiber Webs from Electrospinning)」)によって製造された従来法でエレクトロスピニングされた繊維を含有する市販濾材の走査電子顕微鏡写真である。具体的には、画像は、空気濾過用途向けにセルロース基材上へエレクトロスピニングされたナノファイバーを示す。ナノファイバー径は、10ミクロンを超える直径の支持セルロース系繊維構造物に対して、約250ナノメートルである。
【0026】
図3は、本発明の新規ポリオレフィン構造物を形成するために用いられるエレクトロスピニング装置の略図である。電源120によって高電位に帯電される第1(エミッター)電極100は、金属などの導電性材料でできた紡糸口金105内に配置され、貯蔵容器(示されていない)によって提供される高圧、高温ポリオレフィン溶液流れ110と接触する。ポリオレフィン溶液流れはエミッター電極100を流れ過ぎ、その中に電荷を注入され、次に、レジスターを通って電気的にアースされている第2(平滑)電極102を流れ過ぎる。第2電極102の下流で、帯電したポリオレフィン溶液流れは紡糸口金出口オリフィス108を通って流れ、そのポイントで溶液の溶剤部分がフラッシュ蒸発し、そしてポリオレフィン溶液に与えられた電荷のために、通常小さい幅を有するフラッシュ紡糸ポリオレフィンフィラメントまたは繊維112が形成され、それは順繰りに接地されたコレクター電極104上に付着される。第2電極およびコレクター電極は必ずしもアースされている必要はないが、第1電極とは違った電位差に電気的に維持することができる。図3に例示される電荷注入装置は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,656,394号明細書に記載されているものと似している。
【0027】
本発明によって生み出された生成物モルフォロジーは、一般にプレキシフィラメント状として特徴付けることができる。カーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)(第4版、第17巻、353−355ページ)に記載されるように、用語「プレキシフィラメント状糸」は、約4ミクロン未満の平均フィルム厚さおよび25ミクロン未満の中央フィブリル幅を有する、かつ、糸の縦軸と概して同延に整列している、ランダム長さの、薄い、リボン様のフィルム−フィブリル要素の3次元統合ネットワークより実質的になるモルフォロジーで特徴付けられる糸またはストランドを意味する。プレキシフィラメント状糸で、フィルム−フィブリル要素は断続的に一体化し、かつ、糸の長さ、幅および厚さの全体にわたって様々な場所で不規則な間隔で分離し、それによって3次元ネットワークを形成する。このタイプのプレキシフィラメント状糸は、主としてフラッシュ紡糸された高密度ポリエチレン不織布、最も代表的には、デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーによって製造されるタイベック(登録商標)不織布の形で広範囲に及ぶ商品価値を見いだしてきた。従来のプレキシフィラメント状糸は、本出願に例示されるものよりはるかに大きい寸法を有する。
【0028】
図8〜10および12〜25に例示されるように、現在開示される方法に従って形成される生成物は、より小さいポリオレフィンフィラメントまたは繊維のウェブによってさらにそれら自体相互連結されているより大きいポリオレフィンフィラメントまたは繊維の複雑な相互連結ネットワークまたは「ウェブ」である。本発明の「ウェブ」は構造の点でスパイダーウェブに似ているが、フィラメントサイズおよび交差点の位置の両方の点で不規則である。より大きいフィラメントは一般に約1マイクロメートルより大きい幅を有し、より小さいフィラメントは一般に約1マイクロメートル未満の幅を有する。重要なことには、本発明の不織繊維状構造物中の全フィラメントの大部分(数で)はより小さいサブミクロン・フィラメントである。
【0029】
より小さいフィラメントは、かなりの数の小さなフィラメントが約0.1〜約0.8マイクロメートルの幅を有し、そして多くが約0.5マイクロメートルより下の幅を有して、0.01マイクロメートル〜約1マイクロメートル以下の範囲の幅を有する。
【0030】
本発明の不織構造物のフィラメントは、約0.18〜約1マイクロメートル、さらに約0.18〜約0.7マイクロメートル、またはさらに約0.18〜約0.5マイクロメートル程度の平均幅のフィラメントまたは繊維幅分布を示す。
【0031】
本発明の不織構造物の別の顕著な特徴は、フィラメントの交差点間に存在する微小の間隙または細孔サイズである。下に議論される、直径同等値として測定される平均細孔サイズ分布は約0.20〜約2.5マイクロメートルの範囲である。
【0032】
本発明の図のSEM画像から明らかな、本発明の不織ポリオレフィン構造物の別の重要な特性は、サブミクロン繊維またはフィラメントの長さが間隙または細孔の直径とほぼ同じ大きさであり、そして支持されていないサブミクロン繊維またはフィラメント長さの数学的平均が一般に約10マイクロメートルもしくはそれ未満、さらには約5マイクロメートル未満であり、幾つかの場合には約3マイクロメートル未満であり、それが、ナノファイバーの長さがそれら間の細孔のおおよそのサイズを大きく超える、図4に描写される従来のナノファイバーとは明らかに異なることである。
【0033】
本発明の重要な態様は、図3の電荷注入装置の使用によって達成できる高いポリマー処理量である。それは、従来のエレクトロスピニング装置で得ることができるものより少なくとも2桁高いポリマー溶液流量の可能性を提供する。第1(すなわち、エミッター)電極および第2(すなわち、平滑)電極が流体に浸漬されている電子銃を形成する。電極間の距離は有利にも約1つの紡糸口金オリフィス径にすぎず、非常に大きい電界、そして古典的エレクトロスピニングで提供されたものよりはるかに大きいものを提供する。このように、高速の電荷注入は低導電率流体中で可能であり、それは流体中に高密度の電荷をもたらす。さらに、この電荷は、溶液がオリフィスから出る前の非常に短い滞留時間のために溶液中に留まる。これらの特性は、溶液流量と電荷注入プロセスとの分断をもたらし、約1〜約20cm3/秒もしくはそれ以上、好ましくは約2〜約15cm3/秒、より好ましくは約2.5〜約12cm3/秒のポリマー溶液流量でのナノファイバー紡糸を可能にする。
【0034】
下の実施例は紡糸条件で単相溶液にあるポリマー/溶剤組み合わせを例示するが、本発明はそのように限定されない。2相溶液(すなわち、ポリマーに富む相および溶剤に富む相のあるもの)もまた本発明で開示される方法に有用である。
【0035】
本発明の方法によって製造される生成物に影響を及ぼすように思われる多くのプロセス・パラメーターがある。第1電極電圧(第2電極に対する)は有利には約3kVより大きいかまたはそれに等しい、約17kVほどに高くまで、好ましくは約11kV〜約16.4kVである。電荷を提供するために電極にかけられる電圧がない場合、ナノファイバーは全く生み出されない(図7)。ナノファイバーの数が大きく、かつ、それらのサイズが小さい改善されたモルフォロジーは、ポリマー溶液中のより高い電荷密度によって提供されると考えられる。電荷密度は、溶液流量で割った溶液に加えられる正味電流と定義される。収集装置が良好なファラデー(Faraday)ケージ(すなわち、金属で作られた)である場合、溶液に加えられる正味電流は、配線電流計からか、ファラデーケージと地面との間に設置されたレジスター越しに電圧を読み取るコンピューターによるかのどちらかで読み取られた、ファラデー装置からの電流の直接読みから測定することができる。収集装置が不満足なファラデーケージ(すなわち、非導電体または非導電性素子と導電性素子とのある組み合わせで作れた)である場合、溶液に加えられる正味電流は、測定された第1電極高電圧供給電流と第2電極電流との差から測定することができる。注入された電荷が紡糸口金を出る溶液カラムを覆うガスをその電界が破壊するほど十分に高いときに電荷密度上限は決定される。すべての他の条件が一定に保持される場合、達成できる最大電荷密度は一般に、増加するオリフィス径と共に低下する。典型的な電荷密度は、0.25mm直径オリフィスについて約1マイクロクーロン(microCoulomb)/mLのポリマー溶液であり、好ましくは約0.4〜約3マイクロクーロン/mLである。
【0036】
別の重要なプロセス・パラメーターはポリマー溶液の選択である。本方法は、低導電率溶剤中の付加ポリマーの紡糸に有利である。付加ポリマーの中で、ポリ炭化水素、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ならびにエチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−ブテン共重合体などのエチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体が好ましい。高密度線状ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの、すべてのタイプのポリエチレンが含まれる。使用することができるであろう他の付加ポリマーには、ポリメチルペンテンおよびプロピレン−エチレン共重合体が含まれる。使用に好適なポリオレフィンは、ASTM(米国材料試験協会)D−1238Eに従って測定されるように、約1〜約30g/10分のメルトフローインデックスが好ましくて、約0.1〜約1000g/10分のメルトフローインデックス(MFI)で特徴付けられる。
【0037】
好適な溶剤は、(a)使用されるポリマーの融点より少なくとも約25℃、好ましくは少なくとも約40℃下の沸点を有する、(b)混合および紡糸中にポリマーと実質的に反応しない、(c)本方法で用いられる温度、濃度および圧力の条件下にポリマーを溶解させる、および(d)約106pS/m(ピコジーメンス/メートル)未満の導電率を有するべきである。より好ましい溶剤は約105pS/m未満の導電率を有する。特に好ましい溶剤は約102pS/m未満の導電率を有するべきである。好適な溶剤には、ポリマーに依存して、フレオン(Freon)(登録商標)−11、アルカンのペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。ポリオレフィン溶液は、ポリマー溶液が流れている間ずっとアークを発することなく第1電極と第2電極との間の電位差を維持するために十分に低い導電率を有するべきである。
【0038】
本発明の方法を行うことができる広範囲の溶液粘度がある。この範囲を定量化するための絶対溶液粘度測定値は全くないが、我々は、好適な運転条件が溶液ポリマー濃度とポリマー分子量とをバランスさせることによって得られ得ることを見いだした。ポリマー分子量の逆尺度は、ASTM D−1238によって190℃および2.16kgで測定されるような、ポリマー・メルトフローインデックスによって与えられる。より高いメルトフローインデックスはより低いポリマー分子量を示唆する。例えば、ナノファイバーは、溶液中3重量%の濃度で30のMFIのエチレン−オクテン共重合体で容易に製造された。ほとんど同一の、しかし200のより高いMFIの材料は、類似のモルフォロジーを与えるためには溶液中5重量%、好ましくは7重量%ポリマーを必要とした。我々は、最適の紡糸液が約1〜約400g/10分のメルトフローインデックスを有するポリオレフィンで、約1重量%より高い、好ましくは約3重量%〜約15重量%のポリマー濃度を有するものであることを見いだした。この値よりはるかに低い濃度はナノファイバーを生み出さなかった。これらの値よりはるかに大きい濃度はナノファイバーなしの単鎖糸を与えた。
【0039】
紡糸口金オリフィス径は体積流量および電荷密度に影響を及ぼす。大きなオリフィス径はより大きいポリマー処理量およびオリフィス閉塞の確率の低下を提供する。好適なオリフィス径は約0.125mm〜1.25mm、さらに約0.25mm〜1.25mmである。
【0040】
紡糸温度は、ポリマーの溶融温度より高い温度であり、かつ、コレクター上へのポリマー生成物の付着前に溶剤の蒸発を達成するように溶剤沸点より高い温度であるが、溶剤がナノファイバーの形成前に揮発する(沸騰する)ほど高くないものであるべきである。少なくとも溶剤沸点のそれおよび少なくともポリマー融点のその紡糸温度が好適である。溶剤沸点より少なくとも40度高い、そしてポリマー融点より少なくとも20℃高い紡糸温度が有利である。紡糸口金の直上流で測定される本発明の紡糸圧力は、溶液の自己圧力より高い圧力であるべきであり、約1.8〜約41MPaの範囲であることができ、ポリマー溶液が沸騰するのを防ぐのに十分に高いものであるべきである。
【0041】
酸化防止剤、UV安定剤、染料、顔料、および他の類似の材料などの一般添加剤を、紡糸前に紡糸組成物に添加することができる。
【実施例】
【0042】
下記の実施例では、用いるフラッシュ紡糸装置は米国特許第5,147,586号明細書に記載されている装置の改良であった。本装置は、それぞれがチャンバーの内容物に圧力をかけるように改造されたピストンを備えた2つの高圧シリンダー型チャンバーを含んでなった。シリンダーは2.54cmの内径を有し、それぞれ50cm3の内容積であった。シリンダーを、0.23cm直径チャネルと静的ミキサーとして働く一連の微細メッシュスクリーンを含有する混合チャンバーとによって一端で互いに連結した。混合は、静的ミキサーによって容器の内容物を2つのシリンダー間を行ったり来たりさせることによって行った。ピストンは水圧システムにより供給される高圧水によって駆動させた。
【0043】
オリフィスを開くための速動手段付き効紡糸口金アセンブリをT継手によってチャネルに取り付けた。紡糸口金アセンブリは12.8mm直径および28.5mm長さのリード穴を含んでなった。紡糸口金オリフィスそれ自体は0.38mmの長さで0.12mmの直径か0.75mmの長さで0.25mmの直径かのどちらかを有した。オリフィスは、90度の開先角度で9.5mmの直径へフレア型に開いていた。絶縁性ポリフェニレンスルフィド電極ホルダーを紡糸口金のリード穴内に入れた。このホルダーは、その外周周りに等しく間隔を置いて配置された流体流れのための4つのチャネルを有した。エミッター電極をホルダーの中央に置いた。電極を、高圧シーリンググランド(コナックス社、ニューヨーク州バッファロー(Conax Inc,Buffalo,NY))を通って装置に入る高電圧ワイヤにその上流端で取り付けた。電圧をスペルマン社(ニューヨーク州ハウプパウジ)(Spellman Inc.(Hauppauge,NY))高電圧電源によって供給した。アナログ電流計およびコンピューターが供給電流を測定した。紡糸口金アセンブリをポリフェニレンスルフィド絶縁カップによって装置の残りから電気絶縁した。アナログ電流計およびコンピューターが第2電極への電流を測定した。本明細書に記載されるタイプの電気的アセンブリは「スプレー三極管(Spray Triode)」として知られ、米国特許第6,656,394号明細書に開示されている。
【0044】
興味のあるポリマーを1つのシリンダーへ装入した。示された溶剤を較正した高圧スクリュー式ジェネレーターによって当該シリンダーへ注入した。スクリュー式ジェネレーターの回転数を、溶剤中の材料の所望濃度を与えるために計算した。高圧水を使用してピストンを駆動させて13.8〜27.6MPaの混合圧力を発生させた。
【0045】
ポリマーおよび溶剤を次に、タイプJ熱電対(ニュージャージー州チェリー・ヒルのテクニカル・インダストリアル・プロダクツ社(Technical Industrial Products Inc.of Cherry Hill,NJ))によって測定されるような、表示温度に加熱し、当該温度に約5分間保持した。紡糸混合物の圧力を紡糸直前に約1.8〜約5.3MPaに下げた。これは、紡糸室と所望の紡糸圧力に保持されたはるかにより大きい高圧水のタンク(「蓄圧器」)タンクとの間のバルブを開くことによって行った。紡糸口金オリフィスを、紡糸室と蓄圧器との間のバルブの開口後できるだけ早く(通常、約1〜2秒)開けた。生成物を備え付けの76cm×46cm径ポリプロピレン・バケツに集めた。バケツの下流面上にアルミニウム覆いがあり、それをアナログ電流計、レジスター、そして次に地面に接続した。コンピューターはレジスター越しに電圧を監視し、記録し、そして次に地面への電流を計算した。バケツのアルミニウム覆いおよび内壁を、サンプル取り出しの容易さのために0.12mm厚さのポリエステルシートでカバーした。バケツを約1400cm3/秒の速度の窒素で連続的にパージして酸素を排除し、こうして引火性蒸気の着火を防いだ。幾つかのケースでは、炭素鋼バケツを使用した。
【0046】
紡糸口金直前の圧力を、圧力変換器(マサチューセッツ州ノーウッドのダイニスコ社(Dynisco Inc.of Norwood,MA))で測定し、紡糸の間ずっと記録し、「紡糸圧力」と言及した。紡糸圧力はコンピューターを用いて記録され、通常蓄圧器圧力設定点より約300kPa低かった。紡糸口金直前で測定される温度をまた紡糸の間ずっと記録し、「紡糸温度」と言及した。紡糸後に、ナノファイバー被覆ポリエステルシートをバケツから取り出した。断片をシートからカットし、走査電子顕微鏡で検査した。単位質量当たりの繊維表面積をまた標準BET(ブルナウアー−エメット−テラー)技法によって測定した。
【0047】
下の表1は、次の実施例に使用するポリマーをリストする。
【0048】
【表1】
【0049】
比較例1
フレオン(登録商標)11中の3重量%ポリマーAの溶液を調製し、103℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.7MPaの圧力および2.67cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。電圧をシステムに全くかけなかった。図7に示すようにナノファイバーは全く形成されなかった。
【0050】
実施例1
紡糸温度が100℃であり、圧力が2.9MPaであり、流量が2.4cm3/秒であり、そして16kVの電圧をエミッター電極にかけたことを除いては、比較例1のポリマー溶液およびパラメーターを繰り返した。生じた生成物は、図8および9に示すようにサブミクロン幅を有するフィラメントの複合ウェブによってさらに相互連結されたより大きいフィラメントの相互連結複合ウェブで特徴付けられる。
【0051】
実施例2
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、105℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.52cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図10に示す。
【0052】
実施例3
フレオン(登録商標)11中の18重量%ポリマーCの溶液を調製し、101℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.49cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物はナノファイバーを全く持たず、図11に示される。
【0053】
実施例4
ヘキサン中の9重量%ポリマーDの溶液を調製し、140℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.9MPaの圧力および3.73cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図12に示す。
【0054】
実施例5
ヘプタン中の6重量%ポリマーEの溶液を調製し、180℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、4.9MPaの圧力および1.06cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。12kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図13に示す。
【0055】
実施例6
ヘプタン中の8重量%のポリマーFとGとの90/10w/wのブレンドの溶液を調製し、181℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および1.1cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。11.8kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図14に示す。
【0056】
実施例7
オクタン中の2.5重量%ポリマーGの溶液を調製し、211℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、1.9MPaの圧力および2.82cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図15に示す。
【0057】
実施例8
オクタン中の12重量%ポリマーJの溶液を調製し、210℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.2MPaの圧力および4.42cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図16に示す。
【0058】
実施例9
オクタン中の8重量%ポリマーHの溶液を調製し、182℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.2MPaの圧力および1.25cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.7kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図17に示す。
【0059】
上記実施例からの図8〜10および12〜17の比較は、本発明の方法が、たとえあったとしてもほとんどないサブミクロン幅を有するフィラメントを示す従来法でフラッシュ紡糸されたタイベック(登録商標)、図5および6とは対照的に、サブミクロン幅を有する大部分のフィラメントを含有するフラッシュ紡糸不織構造物の製造に成功していることを明らかにする。
【0060】
実施例10〜17
次の実施例で、示されるポリマーを示される条件下での電荷注入でフラッシュ紡糸し、SEM画像を撮り、SEM画像をコニューメキシコ州アルバカーキのホーラル社(KHORAL,Inc.of Albuquerque,New Mexico)から入手可能なホーロス・プロ(KHOROS PRO)200ソフトウェア(ユニックス(UNIX)バージョン)を用いる画像解析技術で解析した。画像解析は、(1)ウェブ間隙サイズ分布−直径同等値、(2)ウェブ間隙サイズ分布−長軸、および(3)ウェブ繊維幅分布に関して定量的なデータを提供した。アスペクト比によるウェブ間隙形状分布に関するデータもまた得られた。
【0061】
直径同等値(Deq)としてのウェブ間隙サイズの測定値は、形状が不規則である不織繊維状構造物内の間隙または細孔の面積の測定、次にそれらの面積を同等面積の円の直径に換算することによって求めた。このように、不規則形状細孔の面積をパイ(π)で割り、得られた数の平方根を2倍して同等円直径を得る。
【0062】
長軸によるウェブ間隙サイズの測定値は、形状がほぼ楕円形である間隙または細孔内の最長距離を測定することによって得る。
【0063】
ウェブ繊維幅は、各繊維またはフィラメントの画像のピクセル幅として測定し、ナノメートルまたはマイクロメートル単位の相当幅に換算した。
【0064】
上記測定値のそれぞれをSEMにわたって合計し、分布の最小値、最大値および平均値を提供するために通常の統計分析を行った。
【0065】
実施例10
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、100℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.5MPaの圧力および2.54cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図18に示す。
【0066】
実施例11
フレオン(登録商標)11中の7重量%ポリマーBの溶液を調製し、100℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.0MPaの圧力および2.44cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図19に示す。
【0067】
実施例12
オクタン中の5.5重量%ポリマーLの溶液を調製し、200℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、4.9MPaの圧力および1.22cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。13.7kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図20に示す。
【0068】
実施例13
オクタン中の6重量%ポリマーHの溶液を調製し、190℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、1.9MPaの圧力および11.9cm3/秒の流量で0.25mmの幅および0.88mmの長さを有するスロットダイを通してフラッシュ紡糸した。16.4kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図21に示す。
【0069】
実施例14
ヘプタン/ペンタン(50v/50v)の混合溶剤中の8重量%ポリマーFの溶液を調製し、192℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および1.11cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。12.1kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図22に示す。
【0070】
実施例15
ヘキサン中の5重量%ポリマーKの溶液を調製し、141℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、2.3MPaの圧力および3.59cm3/秒の流量で0.125mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。14kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図23に示す。
【0071】
実施例16
オクタン中の6重量%ポリマーHの溶液を調製し、210℃の紡糸温度の図3の装置に供給し、5.0MPaの圧力および4.49cm3/秒の流量で0.25mmの直径を有する紡糸オリフィスを通してフラッシュ紡糸した。16.4kVの電圧をエミッター電極にかけた。生じた生成物を図24に示す。
【0072】
実施例17
実施例16の生成物のサンプルを収集バケツの異なる場所から採取し、SEM画像を撮り、画像解析を行った。生じた生成物を図25に示す。
【0073】
サンプル10〜17について行った画像解析の結果を表2で下に報告する。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に提示される画像解析データは、本発明の方法が約0.18〜約1マイクロメートル、さらに約0.18〜約0.7マイクロメートル、またはさらに約0.18〜約0.5マイクロメートル、またはさらに約0.18〜0.3マイクロメートルの数学的平均の繊維またはフィラメント幅分布、および約0.20〜約2.5マイクロメートル、さらに約0.20〜約2マイクロメートル、またはさらに約0.20〜約1.8マイクロメートルの数学的平均の間隙または細孔サイズ分布を有する不織ポリオレフィン構造物を形成したことを明らかにする。長軸により測定されるような、最大間隙サイズは約20マイクロメートル、さらに約15マイクロメートル未満、そしてさらに約1マイクロメートル〜約15マイクロメートル程度であり、長軸間隙サイズの数学的平均は約5マイクロメートル未満、さらに約0.25マイクロメートル〜約4マイクロメートル程度に低かった。
【0076】
本発明の不織繊維状構造物は、防護服、流体フィルターなど用のシート構造物の製造に用途を見いだすかもしれない。スパンボンド布、メルトブローン布、スパンレース布、織布などの他の従来布の支持スクリム上へ本発明の不織繊維状構造を付着させることが有利であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】米国特許第4,127,706号明細書に記載されているような先行技術エレクトロスピニング装置の略図である。
【図2】米国特許出願公開第2003/0106294 A1号明細書に記載されているような別の先行技術エレクトロスピニング装置の略図である。
【図3】本発明の方法を行うために用いられるエレクトロスピニング装置の略図である。
【図4】先行技術市販ナノファイバー含有濾材の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5】先行技術従来フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート材料からのプレキシフィラメント状繊維ストランドの部分の4000倍で撮られたSEM画像である。
【図6】米国特許出願第09/691,273号明細書に開示されている方法によって製造された先行技術プレキシフィラメント状シート材料からのプレキシフィラメント状繊維ストランドの部分の5000倍で撮られたSEM画像である。
【図7】100倍の倍率での比較例1の生成物のSEM画像である。
【図8】150倍の倍率での実施例1の生成物のSEM画像である。
【図9】2500倍の倍率での実施例1の生成物のSEM画像である。
【図10】1500倍の倍率での実施例2の生成物のSEM画像である。
【図11】150倍の倍率での実施例3の生成物のSEM画像である。
【図12】1000倍の倍率での実施例4の生成物のSEM画像である。
【図13】5000倍の倍率での実施例5の生成物のSEM画像である。
【図14】5000倍の倍率での実施例6の生成物のSEM画像である。
【図15】3000倍の倍率での実施例7の生成物のSEM画像である。
【図16】1000倍の倍率での実施例8の生成物のSEM画像である。
【図17】1000倍の倍率での実施例9の生成物のSEM画像である。
【図18】3000倍の倍率での実施例10の生成物のSEM画像である。
【図19】3000倍の倍率での実施例11の生成物のSEM画像である。
【図20】3000倍の倍率での実施例12の生成物のSEM画像である。
【図21】3000倍の倍率での実施例13の生成物のSEM画像である。
【図22】10,000倍の倍率での実施例14の生成物のSEM画像である。
【図23】10,000倍の倍率での実施例15の生成物のSEM画像である。
【図24】1000倍の倍率での実施例16の生成物のSEM画像である。
【図25】1000倍の倍率での実施例17の生成物のSEM画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを含んでなる不織繊維状構造物であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める不織繊維状構造物。
【請求項2】
0.5マイクロメートル未満の幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントを含んでなる請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項3】
より小さいポリオレフィンフィラメントが約0.1マイクロメートル〜約0.8マイクロメートルの範囲の幅を有する請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項4】
ポリオレフィンが線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、エチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体およびそれらのブレンドよりなる群から選択される請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項5】
ポリオレフィンが線状低密度ポリエチレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項6】
ポリオレフィンが高密度ポリエチレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリプロピレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項8】
ポリオレフィンが高密度ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項9】
支持スクリム上に付着されている請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項10】
ポリオレフィンがエチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−ブテン共重合体よりなる群から選択されたエチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体である請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項11】
約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を有する、より小さいポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブ内に形成された細孔をさらに含んでなる請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項12】
より小さいポリオレフィンフィラメントが細孔の直径と同程度の大きさの長さを有する請求項11に記載の不織繊維状構造物。
【請求項13】
ポリオレフィン溶液を周囲より高い温度および圧力で紡糸口金に供給する工程と、
前記ポリオレフィン溶液を前記紡糸口金内に配置された第1電極と接触させる工程であって、前記ポリオレフィン溶液に電荷を与えるために、前記電極が収集面に対して高い電位に帯電される工程と、
前記帯電したポリオレフィン溶液を、前記第1電極の電位未満に保持された第2電極を組み込む紡糸口金出口オリフィスを通して放出してポリオレフィンフィラメントを形成する工程と、
前記ポリオレフィンフィラメントを前記収集面上に収集して約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを形成する工程であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める工程と
を含んでなる、大部分のフィラメントが約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有する不織繊維状構造物の製造方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィン溶液がポリマーの融点より少なくとも約20℃高い温度に加熱される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
圧力がポリマー溶液の沸騰を防ぐのに十分である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリオレフィン溶液が前記第1電極と第2電極との間に電位差を維持するために十分に低い導電率を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1電極と第2電極との間の電位差が少なくとも3キロボルトである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1電極と前記収集面との間の電位が少なくとも3キロボルトである請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ポリマー溶液が少なくとも約1重量%のポリオレフィンを含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項20】
ポリマー溶液が少なくとも約3重量%〜約15重量%ポリオレフィンを含んでなる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポリオレフィン溶液が約0.4〜約3マイクロクーロン/mLの電荷密度に帯電させられる請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記帯電したポリオレフィン溶液が約1〜約20cm3/秒の流量で紡糸口金出口オリフィスを通って放出される請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記帯電したポリオレフィン溶液が約1.8〜約41MPaの圧力で紡糸口金出口オリフィスを通って放出される請求項13に記載の方法。
【請求項24】
ポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であり、そしてフィラメント幅の最大が約1マイクロメートルより大きい不織繊維状構造物。
【請求項25】
フィラメント幅の平均が約0.5マイクロメートル未満である請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項26】
フィラメント幅の平均が約0.3マイクロメートル未満である請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項27】
ポリオレフィン組成物が線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、エチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体およびそれらのブレンドよりなる群から選択される請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項28】
フィラメントがすべて同じポリオレフィン組成物から形成される請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項29】
約1マイクロメートル未満の幅を有するフィラメントが約10マイクロメートル未満の長さを有する請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項30】
フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であるポリオレフィンフィラメントと、前記ポリオレフィンフィラメントの間に形成された細孔との収集物を含んでなるポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を示す不織繊維状構造物。
【請求項31】
約1マイクロメートル未満の幅を有するポリオレフィンフィラメントが細孔の直径と同程度の大きさの長さを有する請求項29に記載の不織繊維状構造物。
【請求項32】
約1マイクロメートル未満の幅を有するフィラメントが約10マイクロメートル未満の長さを有する請求項30に記載の不織繊維状構造物。
【請求項33】
前記繊維状構造物が、約15マイクロメートル未満の最大長軸細孔サイズを示す請求項29に記載の不織繊維状構造物。
【請求項1】
約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを含んでなる不織繊維状構造物であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める不織繊維状構造物。
【請求項2】
0.5マイクロメートル未満の幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントを含んでなる請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項3】
より小さいポリオレフィンフィラメントが約0.1マイクロメートル〜約0.8マイクロメートルの範囲の幅を有する請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項4】
ポリオレフィンが線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、エチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体およびそれらのブレンドよりなる群から選択される請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項5】
ポリオレフィンが線状低密度ポリエチレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項6】
ポリオレフィンが高密度ポリエチレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリプロピレンである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項8】
ポリオレフィンが高密度ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンドである請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項9】
支持スクリム上に付着されている請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項10】
ポリオレフィンがエチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−ブテン共重合体よりなる群から選択されたエチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体である請求項4に記載の不織繊維状構造物。
【請求項11】
約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を有する、より小さいポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブ内に形成された細孔をさらに含んでなる請求項1に記載の不織繊維状構造物。
【請求項12】
より小さいポリオレフィンフィラメントが細孔の直径と同程度の大きさの長さを有する請求項11に記載の不織繊維状構造物。
【請求項13】
ポリオレフィン溶液を周囲より高い温度および圧力で紡糸口金に供給する工程と、
前記ポリオレフィン溶液を前記紡糸口金内に配置された第1電極と接触させる工程であって、前記ポリオレフィン溶液に電荷を与えるために、前記電極が収集面に対して高い電位に帯電される工程と、
前記帯電したポリオレフィン溶液を、前記第1電極の電位未満に保持された第2電極を組み込む紡糸口金出口オリフィスを通して放出してポリオレフィンフィラメントを形成する工程と、
前記ポリオレフィンフィラメントを前記収集面上に収集して約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有するより小さいポリオレフィンフィラメントのウェブとさらに相互連結されている約1マイクロメートルより大きいフィラメント幅を有するポリオレフィンフィラメントの相互連結ウェブを形成する工程であって、前記より小さいポリオレフィンフィラメントが全フィラメントの大部分を占める工程と
を含んでなる、大部分のフィラメントが約1マイクロメートル未満のフィラメント幅を有する不織繊維状構造物の製造方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィン溶液がポリマーの融点より少なくとも約20℃高い温度に加熱される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
圧力がポリマー溶液の沸騰を防ぐのに十分である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリオレフィン溶液が前記第1電極と第2電極との間に電位差を維持するために十分に低い導電率を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1電極と第2電極との間の電位差が少なくとも3キロボルトである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1電極と前記収集面との間の電位が少なくとも3キロボルトである請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ポリマー溶液が少なくとも約1重量%のポリオレフィンを含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項20】
ポリマー溶液が少なくとも約3重量%〜約15重量%ポリオレフィンを含んでなる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポリオレフィン溶液が約0.4〜約3マイクロクーロン/mLの電荷密度に帯電させられる請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記帯電したポリオレフィン溶液が約1〜約20cm3/秒の流量で紡糸口金出口オリフィスを通って放出される請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記帯電したポリオレフィン溶液が約1.8〜約41MPaの圧力で紡糸口金出口オリフィスを通って放出される請求項13に記載の方法。
【請求項24】
ポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であり、そしてフィラメント幅の最大が約1マイクロメートルより大きい不織繊維状構造物。
【請求項25】
フィラメント幅の平均が約0.5マイクロメートル未満である請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項26】
フィラメント幅の平均が約0.3マイクロメートル未満である請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項27】
ポリオレフィン組成物が線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、エチレン−C3〜C10α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体およびそれらのブレンドよりなる群から選択される請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項28】
フィラメントがすべて同じポリオレフィン組成物から形成される請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項29】
約1マイクロメートル未満の幅を有するフィラメントが約10マイクロメートル未満の長さを有する請求項23に記載の不織繊維状構造物。
【請求項30】
フィラメント幅の平均が約1マイクロメートル未満であるポリオレフィンフィラメントと、前記ポリオレフィンフィラメントの間に形成された細孔との収集物を含んでなるポリオレフィン組成物から形成されたフィラメントの収集物を含んでなる不織繊維状構造物であって、約0.20〜約2.5マイクロメートルの細孔サイズ径同等分布を示す不織繊維状構造物。
【請求項31】
約1マイクロメートル未満の幅を有するポリオレフィンフィラメントが細孔の直径と同程度の大きさの長さを有する請求項29に記載の不織繊維状構造物。
【請求項32】
約1マイクロメートル未満の幅を有するフィラメントが約10マイクロメートル未満の長さを有する請求項30に記載の不織繊維状構造物。
【請求項33】
前記繊維状構造物が、約15マイクロメートル未満の最大長軸細孔サイズを示す請求項29に記載の不織繊維状構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2008−524462(P2008−524462A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546903(P2007−546903)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045472
【国際公開番号】WO2006/066025
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045472
【国際公開番号】WO2006/066025
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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