説明

サプレッションチェンバの水位計測装置

【課題】 沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバ内で水流による動圧の影響を抑制し、水位を正確に測定できる差圧式水位計測装置を提供する。
【解決手段】 気相内に突出した開放端21を有する計装配管22、気相側計装配管22に接続され基準水位レベル24を保持する凝縮槽23と、液相内に突出した開放端28を有する計装配管27と、液相側計装配管27および凝縮槽23に連結され基準水位レベル24と液相内開放端28との差圧を検出し水位を計測する水位検出手段26とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、サプレッションチェンバ1の内壁面近傍にサプレッションチェンバ1の水位に基づく圧力を伝達する孔32を有し、液相側計装配管28の開放端を覆うカバー31をサプレッションチェンバ1の内壁面に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サプレッションチェンバの水位計測装置に係り、特に、沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器内でサプレッションチェンバに蓄えられているプール水の水流の有無にかかわらず、水位を正確に計測する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器内下部に設置されているサプレッションチェンバの主な機能は、
(1) 原子炉格納容器内上部に設置されているドライウェルに高温・高圧の蒸気が放出された非常時に、その蒸気をサプレッションチェンバに取り込んで冷却し、原子炉格納容器内の圧力上昇を抑制する
(2) 非常用炉心冷却系(Emergency Core Cooling System系:ECCS系)の水源として冷却水を供給する
の2つである。
【0003】
これら非常時の機能を果たすには、サプレッションチェンバの通常時の水位を所定範囲に保持し、非常時にも所定の水位を確保する必要があるので、サプレッションチェンバに差圧式水位計を設置し、水位を常時監視している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、従来の原子炉格納容器内サプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の系統構成を示す模式図である。
【0005】
従来の原子炉格納容器内サプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20においては、気相に開放端21を有する計装配管22と、計装配管25と、液相に開放端28を有する計装配管27とが設置されている。計装配管22と計装配管25との間には凝縮槽23が配置されており、計装配管25と計装配管27との間には水位検出手段26が配置されている。
【0006】
凝縮槽23内には、水位計測の基準水位レベル24が形成されている。水位検出手段26は、基準水位レベル24と液相の開放端28との差圧を検出し、サプレッションチェンバ10の水位を計測する。水位検出手段26で検出した差圧は、電気信号に変換して図示しない中央水位検出手段に送信され、水位として表示される。
【0007】
計装配管27の開放端28は、原子炉格納容器貫通部の構造および設計上の制約により、サプレッションチェンバ10内に突出させなければならない。すなわち、配管が原子炉格納容器を貫通する部分は、溶接により原子炉格納容器に接続されるので,貫通部の強度を確保するには、配管を所定長さ突出させて原子炉格納容器壁面と溶接により接続しなければならない。
【0008】
通常時に、水位が所定範囲を逸脱した場合は、水位信号に応じて警報を出力する。非常時には、水位信号をECCS系の水源切換えの基礎信号としても用いる。
【0009】
非常時にECCS系を運転したとき、または、通常時にECCS系をテスト運転したとき、サプレッションチェンバ10のプール水には、水流が生じる。この水流は、ECCS系ポンプがサプレッションチェンバ10のプール水を吸い込む際に、または、ECCS系ポンプがサプレッションチェンバ10に吐出水を戻す際に生じる。
【0010】
計装配管27を突出させると、その開放端28は、サプレッションチェンバ10内の水流の影響を受けやすい。水流の中に突出した計装配管27は、水流にとって障害物であり、計装配管27の周囲で回り込むことを水流に強いる。このとき回り込む流線上では、移動距離が長くなるので、流速が局所的に増加する。流速が増加したところでは、ベルヌーイの式に従い、圧力が低下する。サプレッションチェンバ10内の平均的な主流の部分と比較して、水流の中に突出した計装配管27の開放端28では、局所的に高流速で低圧力となる。
【0011】
沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバ上部に設置されている原子炉圧力容器の水位計測装置については、ジェットポンプの影響を防ぐ手段(例えば、特許文献2参照)や、水中圧力計装ノズル(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0012】
【特許文献1】特開昭63−186188号公報(第1〜2頁,第2図)
【特許文献2】実開昭59−066118号公報(第1頁,第2図)
【特許文献2】特開昭61−274295号公報(第2〜3頁,第1図,第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の差圧式水位計では、上記現象により、水流があるときとないときとで、実水位に変化がないにもかかわらず、計測した水位が変化してしまう。この水位の変化を少なくするには、ECCS系配管の配置に制約があった。
【0014】
特許文献2の差圧式水位計では、水流の中に突出した計装配管を対象としていないので、原子炉圧力容器の水位計測手段をサプレッションチェンバの水位計測手段に転用することはできない。
【0015】
特許文献2の差圧式水位計では、冷却材の炉内循環流(下降流)に対向するような圧力測定口を備えて、下降流に伴う圧力を積極的に取り込んでおり、水流による動圧の影響を避けようとする本発明とは対処方針が異なり、参考にならない。
【0016】
本発明の課題は、サプレッションチェンバ内で水流による動圧の影響を抑制し、水位を正確に測定できる差圧式水位計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバの気相内に突出した開放端を有する計装配管と、気相側計装配管の他端に接続され基準水位レベルを保持する凝縮槽と、サプレッションチェンバの液相内に突出した開放端を有する計装配管と、液相側計装配管の他端に接続されかつ凝縮槽にも連結され基準水位レベルと液相内開放端との差圧を検出しサプレッションチェンバの水位を計測する水位検出手段とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、サプレッションチェンバの内壁面近傍にサプレッションチェンバの水位に基づく圧力を伝達する孔を有し、液相側計装配管の開放端を覆うカバーをサプレッションチェンバの内壁面に取り付けたサプレッションチェンバの水位計測装置を提案する。
【0018】
前記カバーは、液相側計装配管の突出軸に交差し孔をサプレッションチェンバの内側から隔てるフランジを周囲に備えることができる。
【0019】
前記カバーは、また、液相側計装配管の突出軸に交差し孔をサプレッションチェンバの内側から隔てるフランジと、当該フランジおよびサプレッションチェンバの内壁面間の空間を分割するバッフルとを周囲に備えてもよい。
【0020】
前記カバーは、さらに、液相側計装配管の突出軸に交差し孔をサプレッションチェンバの内側から隔てるフランジと、当該フランジおよびサプレッションチェンバの内壁面間の空間を分割するバッフルと、フランジからサプレッションチェンバの内壁面に向かってフランジの外周から突出したスカートを周囲に備えることも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、計装配管にカバーを設置し、水流を配管の開放端に直接触れさせないようにして、サプレッションチェンバの水流の影響を抑制するので、水位をより正確に計測し、ECCS系の水源となるサプレッションチェンバの水位を適切に管理できる。また、ECCS系配管の配置への制約を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図1〜図6を参照して、本発明によるサプレッションチェンバの水位計測装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の系統構成を示す模式図である。
【0024】
本発明による原子炉格納容器内サプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20においては、気相に開放端21を有する計装配管22と、計装配管25と、液相に開放端28を有する計装配管27とが設置されている。計装配管22および計装配管25の間には凝縮槽23が配置されており、計装配管25および計装配管27の間には水位検出手段26が配置されている。
【0025】
凝縮槽23内には、水位計測の基準水位レベル24が形成されている。水位検出手段26は、基準水位レベル24と液相の開放端28との差圧を検出し、サプレッションチェンバ10の水位を計測する。水位検出手段26で差圧に基づき検出した水位は、電気信号に変換して図示しない中央制御装置に送信し表示される。
【0026】
本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20においては、サプレッションチェンバ10内の水流の影響を抑制するカバー31を計装配管27の開放端28を覆うように設置してある。
【0027】
図2は、本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例1における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す拡大断面図である。図3は、本発明の実施例1における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【0028】
液相内に没している計装配管27の開放端28は、カバー31で覆われている。カバー31には、サプレッションチェンバ10の水位に基づく圧力を伝達するための孔32を複数個形成してある。これらの孔32により、計装配管27の開放端28には、カバー31外の水位に対応した圧力が生じる。
【0029】
複数個の孔32は、できる限りサプレッションチェンバ内壁面11に近いところに形成する。サプレッションチェンバ10内の水流12は、サプレッションチェンバ内壁面11に近い方が遅くなるので、孔32をプール内壁13に接近して形成すると、サプレッションチェンバ10内の水流12の影響を抑制し、水位をより正確に計測できる。
【実施例2】
【0030】
図4は、本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例2における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【0031】
本実施例2における差圧式水位計測装置20の全体の系統構成は、図1とほとんど変わらないので、全体の系統構成の図示および説明を省略する。
【0032】
本実施例2においては、実施例1のカバー31に加えて、水流12の影響を更に抑制するフランジ33を設ける。フランジ33が、サプレッションチェンバ10内の水流12への抵抗となるので、孔32付近の水流12を妨げ、計装配管27の開放端28への水流12の影響を更に抑制できる。
【実施例3】
【0033】
図5は、本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例4における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【0034】
本実施例3における差圧式水位計測装置20の全体の系統構成は、図1とほとんど変わらないので、全体の系統構成の図示および説明を省略する。
【0035】
本実施例3においては、実施例2のカバー31およびフランジ33に加えて、バッフル34およびスカート35を設ける。フランジ33,バッフル34,スカート35が、サプレッションチェンバ10内の水流12への抵抗となり、孔32付近の水流12を妨げ、計装配管27の開放端28への水流12の影響をより一層低減できる。
【実施例4】
【0036】
本実施例4における差圧式水位計測装置20の全体の系統構成は、図1とほとんど変わらないので、全体の系統構成の図示および説明を省略する。
【0037】
本実施例4は、図4の実施例2における計装配管27の開放端28近傍の構造に図5の実施例3におけるバッフル34のみを追加した構造であるから、図示を省略する。
【0038】
本実施例4においては、実施例2のカバー31およびフランジ33に加えて、バッフル34を設けたので、フランジ33,バッフル34が、サプレッションチェンバ10内の水流12への抵抗となり、孔32付近の水流12を妨げ、計装配管27の開放端28への水流12の影響を一層低減できる。
【0039】
したがって、本発明の各実施例によれば、サプレッションチェンバ10内の水流12の影響を極力抑えながら、カバー31に形成された孔32から計装配管27の開放端28にサプレッションチェンバ10の水位に基づく圧力を導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の系統構成を示す模式図である。
【図2】本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例1における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例1における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例2における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【図5】本発明によるサプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の実施例3における計装配管27の開放端28近傍の構造を示す斜視図である。
【図6】従来の原子炉格納容器内サプレッションチェンバ10の差圧式水位計測装置20の系統構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0041】
10 サプレッションチェンバ
11 サプレッションチェンバ内壁面
12 サプレッションチェンバ内の水流
20 差圧式水位計測装置
21 気相の計装配管開放端
22 計装配管
23 凝縮槽
24 基準水位レベル
25 計装配管
26 水位検出手段
27 計装配管
28 液相の計装配管開放端
31 カバー
32 孔
33 フランジ
34 バッフル
35 スカート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバの気相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記気相側計装配管の他端に接続され基準水位レベルを保持する凝縮槽と、前記サプレッションチェンバの液相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記液相側計装配管の他端に接続されかつ前記凝縮槽にも連結され前記基準水位レベルと前記液相内開放端との差圧を検出し前記サプレッションチェンバの水位を計測する水位検出手段とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、
前記サプレッションチェンバの内壁面近傍にサプレッションチェンバの水位に基づく圧力を伝達する孔を有し、前記液相側計装配管の開放端を覆うカバーを前記サプレッションチェンバの内壁面に取り付けたことを特徴とするサプレッションチェンバの水位計測装置。
【請求項2】
沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバの気相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記気相側計装配管の他端に接続され基準水位レベルを保持する凝縮槽と、前記サプレッションチェンバの液相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記液相側計装配管の他端に接続されかつ前記凝縮槽にも連結され前記基準水位レベルと前記液相内開放端との差圧を検出し前記サプレッションチェンバの水位を計測する水位検出手段とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、
前記サプレッションチェンバの内壁面近傍にサプレッションチェンバの水位に基づく圧力を伝達する孔を有し、前記液相側計装配管の突出軸に交差し前記孔を前記サプレッションチェンバの内側から隔てるフランジを周囲に備え、前記液相側計装配管の開放端を覆うカバーを前記サプレッションチェンバの内壁面に取り付けたことを特徴とするサプレッションチェンバの水位計測装置。
【請求項3】
沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバの気相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記気相側計装配管の他端に接続され基準水位レベルを保持する凝縮槽と、前記サプレッションチェンバの液相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記液相側計装配管の他端に接続されかつ前記凝縮槽にも連結され前記基準水位レベルと前記液相内開放端との差圧を検出し前記サプレッションチェンバの水位を計測する水位検出手段とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、
前記サプレッションチェンバの内壁面近傍にサプレッションチェンバの水位に基づく圧力を伝達する孔を有し、前記液相側計装配管の突出軸に交差し前記孔を前記サプレッションチェンバの内側から隔てるフランジと当該フランジおよび前記サプレッションチェンバの内壁面間の空間を分割するバッフルとを周囲に備え、前記液相側計装配管の開放端を覆うカバーを前記サプレッションチェンバの内壁面に取り付けたことを特徴とするサプレッションチェンバの水位計測装置。
【請求項4】
沸騰水型原子力プラントのサプレッションチェンバの気相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記気相側計装配管の他端に接続され基準水位レベルを保持する凝縮槽と、前記サプレッションチェンバの液相内に突出した開放端を有する計装配管と、前記液相側計装配管の他端に接続されかつ前記凝縮槽にも連結され前記基準水位レベルと前記液相内開放端との差圧を検出し前記サプレッションチェンバの水位を計測する水位検出手段とからなるサプレッションチェンバの水位計測装置において、
前記サプレッションチェンバの内壁面近傍にサプレッションチェンバの水位に基づく圧力を伝達する孔を有し、前記液相側計装配管の突出軸に交差し前記孔を前記サプレッションチェンバの内側から隔てるフランジと当該フランジおよび前記サプレッションチェンバの内壁面間の空間を分割するバッフルと前記フランジから前記サプレッションチェンバの内壁面に向かって前記フランジの外周から突出したスカートを周囲に備え、前記液相側計装配管の開放端を覆うカバーを前記サプレッションチェンバの内壁面に取り付けたことを特徴とするサプレッションチェンバの水位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−232698(P2008−232698A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70075(P2007−70075)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】