説明

サポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品並びにその製造方法

【課題】底質汚泥や下水処理場等で発生する生汚泥や消化汚泥、或いは焼酎粕汚泥などの汚泥類を安価、安全且つ簡便な方法で処理技術を提供する。
【解決手段】処理が問題になっている来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いは廃瓦粉砕品とサポニン含有剤、更にはこれらに汚泥類を加えて、ミキシング装置で攪拌混合して含水率を低下させるとともに造粒し、次いでセメント粉を投入してコーティングして乾燥することにより、造粒品を得る。得られた造粒品は、湖底や池底などに投入・埋め戻して湖底や池底などのヘドロ層を置換或いは被覆するために用いたり、排水処理剤や土壌改良材や埋め立て材として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポニンの保持と除放性に優れた造粒品及びその製造方法に関する。また、本発明は、沼湖やダム湖から浚渫される底質汚泥や、下水処理場や屎尿処理場、農村集落排水処理施設等で大量に発生する生汚泥或いは更には焼酎粕汚泥などの汚泥類、或いはこれらの脱水汚泥や消化汚泥を、安全、簡便且つ低コストで処理することが可能な新規な処理方法及び該方法により得られるサポニン含有造粒品及びサポニン含有焼成造粒品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、宍道湖や中海ではヘドロが湖底に溜まり、湖底付近では貧酸素状態になっている。これは、近隣河川等からの汚濁物質の流入とともに、宍道湖が深いところで6.4m平均4.5m、中海でも深いところで17.1m平均8.4m程度と浅く冬季の冷え込みによる湖底水の循環もなく、また流れも穏やかなため湖底特に宍道湖中央部の汚泥が20〜40cmも溜まって流出せず、そのまま留まることが多いことによる。特に、中海干拓で堤防が築かれたため水の流れがより緩慢になった(干拓自体は廃止)。また、中海では、昭和40年代以前に夜見が浜の西側を浚渫して海岸線を埋め立てる工事が行われたが、水の流れが緩慢なため浚渫した窪地(深さ3〜5m位)が埋まらずにそのまま残り、その窪地にヘドロが20〜30cm以上も溜まって貧酸素化をもたらしている。
【0003】
この問題は宍道湖や中海に限らず、他の沼湖やダム湖の場合も同様である。これらの底質汚泥は、浄化材を投入して汚泥を減らす技術(特許文献1)や浚渫した汚泥に固定化剤を添加して増粘させ湖底に戻す技術(特許文献2)などがあるがコストがかかり、殆どがそのまま放置されている。或いは、一部底質汚泥を汲み上げることがあるが、汲み上げた底質汚泥の大部分は現場に積み上げて風乾し、埋め立て処分などが行われている。しかし、含まれている有機物が腐敗して悪臭を放つし乾燥微粉が風でとばされるなどの問題がある。但し、底質汚泥の場合は微粒な土粒子が殆どであるので、含まれる有機物は少ないし、脱水も下水汚泥などよりははやいものである。
【0004】
一方、下水や屎尿等の殆どは生物活性汚泥法により処理されており、その結果大量の生汚泥が発生する。これには、多くの有機物が含まれている。そして、古くは、生汚泥を単に堆積させて埋め立てたり乾燥床で脱水したり農地に施して土壌の肥沃化・改良化などに役立てられていた。小規模な施設では現在でも有効な方法であるが、大量な生汚泥はこのような小手先の技術では対応できない。特に、生汚泥には病原菌が多くその取り扱いには厳重な注意が必要となる。
【0005】
そこで、生汚泥の濃縮、薬品処理、機械的脱水、乾燥、焼却などが行われるが、衛生、作業、経済上の諸要求に最も適しているのは、嫌気的消化処理である。消化処理は、上記各処理と組み合わせて用いられることも多く、汚泥の悪臭や病原菌を減少させ肥料的価値を向上させるしコンポストの材料も提供するなど優れ物である。
【0006】
しかし、汚泥の嫌気的消化処理の欠点は、設備が非常に大がかりになり、下水処理場などの建設費の30〜40%も占めるほど高価なものであることである。また、嫌気的消化は2カ月程度の時間がかかり、その分だけ槽の容量も大きくなる。
【0007】
また、生産が増大の一途をたどっている焼酎粕汚泥、中でも芋焼酎の場合粕が非常に細かくて高価な特殊濃縮装置以外では濃縮しずらいものである。かっては、焼酎粕処理は海洋投棄が一般的であったが現在では禁止され、各メーカーはコストをかけて濃縮したり(特許文献3)デキストリンに吸着させたり(特許文献4)するなどしているが、大量で安価に焼酎粕を処理する方法が希求されている。
【0008】
そこで、本発明者は、これら処理に困っている底質汚泥や下水処理場等で発生する生汚泥等の汚泥類を、来待石や安山岩などの粉末と混ぜて含水率を低下させるとともに造粒し、次いでセメントを表面にまぶして乾燥する技術を開発した。そして、この造粒乾燥品は、湖などのヘドロ層と置換或いは被覆などに用いられるものである(特願2009−2231266)。
【0009】
ところが、本発明者がある時、この造粒品にサポニン含有剤を添加してセメントコーティングしたものをヘドロの中に入れて見たところ、ヘドロの量が減少していることに気がついた(3週間程度後)。また、このサポニン含有剤を含む造粒乾燥品を、水に油を垂らした容器に入れておいたところ、油の乳化現象が見られた。
【0010】
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0011】
まず、サポニン含有剤は、上記生物活性汚泥法による廃水の処理に以前から用いられている。これは、サポニン含有剤が微生物の生理活性を高めたり酸素移動効率の増大作用を呈することが判明し、また界面活性作用を有していることの結果である。そして、サポニン含有剤を排水に添加することにより、活性汚泥処理装置の処理能力の増大や処理水質の安定化、余剰汚泥の減少、ノルマルヘキサン抽出物の分解によるスカムの減少等、様々な優れた効果を奏するからである(特許文献5)。また、汚泥の嫌気的消化についても、サポニン含有剤を添加することにより、嫌気性細菌や微生物の活性を向上させて消化効率を向上させることに成功している(特許文献6)。
【0012】
上記サポニン含有剤の投与は、いずれも液状のサポニン含有剤をポンプ等で処理槽中に定量的に投入することにより行われている。これは、サポニンが効果を生じるためには或る程度以上の濃度が必要であり、且つ常時或いは間欠的に流入する排水に対応するためである。この濃度は、排水中に含まれる汚濁物質の量や質にもよるが、キラヤサポニン(トリテルペノイド系サポニンとして1.9%、天然サポニンとして約4%)を含むシャボンの木の抽出液の場合、0.1〜10ppm 、より好ましくは0.5〜4ppm (ノルマルヘキサン抽出物が多い場合は4〜10ppm )程度が必要である。汚泥の嫌気的消化の場合は、汚泥中のBOD成分の濃度により10ppm 〜20ppm 程度用いる。尚、濃縮によりサポニン濃度を上げたもの(トリテルペノイド系サポニンとして約4%、天然サポニンとして約8%)の場合には、投入量が約半分ですむ。尚、トリテルペノイド系サポニンとして1.9%を含む商品としては、田代興業株式会社製のイコニン(TM)が、またトリテルペノイド系サポニンを約4%含む商品として同じくイコニンG(TM)が提供されている。
【0013】
しかし、屎尿処理場や工場排水等大型の処理施設では管理者も常駐しており定量投入設備も完備しているが、小規模な施設、例えば浄化槽や合併槽或いはグリストラップなどでは、人手もないし知識もなく、液状物の定量投入を行う環境にはない。従って、従来このような小規模な排水処理施設、例えばグリストラップ等では、サポニン含有剤は全く使用されていなかった。この問題を解消するために、サポニンにロウ状物質と界面活性剤を加えて錠剤にしたり(特許文献7)、サポニンをセメントと混合して錠剤にして(特許文献8)、これをグリストラップ等に投入することが提案されている。しかし、いずれもサポニンの溶出がうまくいかず、商品化はなされていない。
【0014】
一方、サポニンを含浸・吸着させた木炭を被処理水と接触させて浄化する技術が特許文献9に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−021157号公報(底質汚泥浄化材)
【特許文献2】特開平09−085296号公報(底質汚泥固定化剤)
【特許文献3】特開2006−204107号公報(焼酎濃縮)
【特許文献4】特開2005−213157号公報(焼酎デキストリン)
【特許文献5】特開昭62−042795(サポニン)
【特許文献6】特開平11−192500(汚泥消化サポニン)
【特許文献7】特開平07−116644(ロウ錠剤)
【特許文献8】特開平08−206672(セメント錠剤)
【特許文献9】特開平07−275852号公報(炭)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来錠剤化が難しかったサポニン含有剤の造粒品を可能にするものである。また、本発明は、様々な問題がある汚泥類を、安価、安全且つ簡便な方法で処理するとともに、サポニンの錠剤化を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体に水とサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して造粒したり、或いは底質汚泥や下水処理場等で発生する生汚泥や消化汚泥、或いは焼酎粕汚泥などの汚泥類を、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いは廃瓦粉砕品、それにサポニン含有剤を加えて、ミキシング装置で攪拌混合して含水率を低下させるとともに造粒し、次いでセメントを表面にまぶして成形して造粒品に仕上げるものである。成形品は、自然乾燥(天日乾燥)やロータリーキルン等で低温乾燥すると強度が増す。
【0018】
或いは、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体に水を加えてミキシング装置で攪拌混合造粒して乾燥し焼成したり、底質汚泥や下水処理場等で発生する生汚泥や消化汚泥或いは焼酎粕汚泥などの汚泥類を、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体とともにミキシング装置で攪拌混合して含水率を低下させるとともに造粒し、次いで乾燥し焼成したりして得られる焼成品に、サポニン含有剤を含浸させて得られるものである。
【0019】
このようにして得られたサポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品は、排水処理剤や農業用培地(土壌改良材)、河川や沼湖における葦の培地や植栽土壌として使用される。また、これらのサポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品は、湖底や池底などに投入・埋め戻して湖底や池底などのヘドロ層と置換し或いはヘドロを被覆するための環境保全資材とするなど様々な分野で使用できる。また、グリストラップや小規模な廃水処理施設へのサポニン供給のための錠剤としても使用できる。
【0020】
宍道湖湖底の覆砂や置換砂としては、従来斐伊川の砂が用いられており、覆砂により暫くはシジミも繁殖するが、砂の比重が湖底泥の比重よりも大きいため経時的に砂が泥中に沈降して役目を果たさなくなる問題点があった。これは、シジミ採取時にじょれんでかきあげるので砂が底質汚泥の下に潜ってしまうことによる。これに対し、本発明のサポニン含有造粒品やはサポニン含有焼成造粒品は比重が1に近いため覆砂に用いても沈降の問題が少ないなど優れたものである。
【0021】
本発明で使用される来待石などの鉱物粉体は、それ自体が廃棄物、余剰物質である。そして、来待石粉体などの吸水性を利用して汚泥類の含水率を低下させ、同時にミキシング装置(攪拌型造粒機など)で造粒する。次いで、ミキシング装置にセメント粉を投入してミキシングを続け、造粒物の表面にセメントの薄い膜(皮膜)を形成させる。この薄いセメントの膜により、造粒物の機械的強度が増すと共に、水中に投入したりして水分を含んだ状態になっても、外力を加えてもすり減りはするが壊れなくなる。尚機械的強度はセメント被覆後時間をおくほど大きくなるが、天日で1日程度乾燥すれば、ほぼ十分な機械強度と耐水性を獲得する。或いは、ロータリーキルン等で100℃〜200℃程度の低温乾燥すれば、30分〜1時間程度で実用上十分な機械強度と耐水性が得られる。本発明の造粒品は、攪拌型造粒機などのミキシング装置を使用するため、簡単に得られるが大きさは直径2〜30mm程度とバラつくものである。
【0022】
即ち、セメントコ−ティグして乾燥することにより、焼成品と同程度の強度が得られる。焼成品(来待石粉末18重量部にベントナイト粉末2重量部を水で混合成形して1000℃程度で焼成したもの)の強度は2〜5mm位のもので10〜15Kg程度である。但し、コーティング直後は指で摘むと圧崩する。セメントコ−ティグの厚み(皮膜厚み)は、0.1〜3mm、より好ましくは0.5〜2mm程度である。尚、セメントが付着するのは、造粒物の水分が30%〜40%程度の場合である。30%未満だと付着が十分に行われず40%を越えると造粒物同志をセメントがくっつけて団子になるので、底質汚泥等と来待石粉末等の造粒物の含水率を調整する必要がある。
【0023】
生汚泥や引き上げてすぐの底質汚泥などの水分は90〜98%(重量%)程度であるが、消化汚泥や引き上げて時間がたった底質汚泥などの脱水汚泥の含水率は50〜85%程度である。一方、来待石や安山岩などの石粉の含水率は2〜3%、多くても5%以下である。未乾燥のマサ土では含水率が8%程度になることもある。そこで、この両者を重量比で1対1.5〜3の割合で混合して含水率30〜40%とする。底質汚泥の含水率が100%としても、3倍の来待石等の粉末を用いれば、造粒物の含水率は33%程度となる。
【0024】
本発明において最も好ましい鉱物粉体は、来待石粉体である。これは、特にその大きな吸水性と成形性(粘着性)にある。来待石(来待錆石)は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待石は、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0025】
この来待錆石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらの粒間を埋める基質(マトリックス)から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質(マトリックス)としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0026】
これらの鉱物の中には粘土鉱物と言われるものが多く含まれており、このことが、来待錆石の粉砕物が成形できる理由である。また、沸石(ゼオライト)を含んでいることから、アンモニアの吸着や湿気の吸排出に優れている。来待錆石以外に、来待白石といわれるものがある。これは、年代的に古くて流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多く、本発明では使用できないものである。尚、表1に分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)ように、来待錆石には鉄が多く(Fe23 として6.13%)含まれている。そのため、本発明の焼成品の場合は赤、茶〜黒系統色に呈色する。焼成しない場合は、内部の色は鼠色であり、またセメントコーディングするのでセメント色をしている。尚、来待石(錆石)は、表1からも明らかなように、7%程度の焼熱減量(Ig.loss)を含んでいる。これは、古代の植物残滓である。また、底質汚泥や活性汚泥中にも有機物が含まれており、これらが時間の経過とともにバクテリアに分解されて空隙となり、その分造粒品の比重が軽くなる。

【表1】

【0027】
来待石は、このように吸水材として優れた性質を有しているが、生産地が限られるため絶対量が少ない。また、その破砕屑も多くてこの粉砕に手間とコストがかかる。そこで、本発明者らは、安山岩や安山岩質凝灰岩に着目した。安山岩や安山岩質凝灰岩は、砕石として大量に使用されているが、それに伴って全国的に大量の砕石粉が発生する。この砕石粉も産業廃棄物であり、業界ではその処理が大きな問題となっている。砕石には、乾式と湿式があり、乾式の場合は非常に細かな粉体が得られる。そして、本発明ではそのまま汚泥類の吸水材として使用される。(湿式の場合は、乾燥して用いる。)
【0028】
更に、山砂も全国体に採掘使用されている。山砂は、花崗岩が自然に崩壊してできたものであり、礫や砂の他にマサ土(0.51mm程度、0.02mm以下のシルト分も含む)も多く含まれている。そして、商品とする山砂は採取したものを篩分けして砂以上のものとするため、マサ土が大量に排出される。このマサ土の処理が、砕石粉の場合と同様、業界は処理に困っているものである。
【0029】
本発明では、更に上記来待石や安山岩、花崗岩の粉末同様、廃瓦粉砕品も使用できる。廃瓦は、生産量の数%にも及び、破砕して土壌代替え品等に使用する研究がすすめられているが、吸水率が低いため有効な用途が無いなどの問題がある。そこで、本発明者は、この廃瓦の粉砕品を使用したところ、含水率が低いもの(粉砕した後、雨水等を吸収しないように囲っておいたもの、通常3〜5%)であれば吸水量がある程度あり(10〜15%程度まで吸水する)、汚泥類と混合した場合には来待石粉体よりは幾分劣るが、十分に利用可能であることが判明した。但し、粘着力はない。
【0030】
各粉体の粒度は、砂(2mm以下)やシルト(0.02mm以下)程度とする。粉体の含水率は来待石が5%程度以下、乾燥した安山岩や花崗岩、吸水していない廃瓦が2〜3%程度である。
【0031】
まず、造粒品について述べると、汚泥類を混合しない場合は、来待石等の粉体の含水率が30〜40%になるように水を加えて造粒する(加える水の量は、粉体20Lに対して、2〜5Lの割合)。サポニン含有剤はこの水に加えておく。加える量は、サポニンを4%含む原液をそのまま乃至は100倍までの各種濃度に希釈したものを造粒品に対して10〜100%である。
【0032】
汚泥類を混合する場合、各粉体と汚泥類の混合割合は、含水率90〜98%の汚泥類と50〜85%の脱水汚泥類とでは異なる。ミキシング装置(コンクリートミキサー類似の装置)に投入して攪拌混合て造粒できる程度の割合とする。通常、粉体と汚泥類の使用割合(重量比)は、造粒品の水分が30〜40%になるように重量比で1対1.5〜3の割合で使用する。加えるサポニン含有剤の量は、サポニンを4%含む原液をそのまま乃至は100倍までの各種濃度に希釈したものを造粒品に対し1〜20%混合する。
【0033】
上記何れの場合も、セメントをコーテイングする。コーテイングするセメントの量は、来待石粉体等の重量の5〜30%、或いは汚泥と来待石粉等の合計重量に対して5〜30%のセメントを用いる。そして、コーテイングしたら乾燥する。尚、コーテイングしたのち、セメント部分にサポニン含有剤を含浸させると、水に投入した場合、サポニン含有剤の溶出が当初から良好に行われる。
【0034】
このようにして得られたサポニン含有造粒品は、河川や湖沼、ダム、海等に設置或いは投入すると、数ケ月〜1年或いはそれ以上の長期にわたって徐々に崩壊してサポニン成分の溶出とSS分の補給を行うので、微生物の活性化やヘドロの凝集等に役立つものである。また、グリストラップの油水分離室や受水室、浄化槽や合併処理槽の調整槽部分等に適当量を投入しておくと、1〜数月程度にわたって徐々にサポニン含有剤を放出し、また幾分崩壊するので、液状のものに比べて管理の手間もかからず適切なサポニン濃度の保持が容易に行なえる利点がある。そしてこれらの水処理装置において、油分の分解や悪臭の除去、汚泥の減少等の効果をもたらすものである。また、土壌改良材や植栽土壌として使用した場合も、サポニンを徐々に放出するので、植物の生育や果実の旨味創出に大きな効果をもたらす。
【0035】
セメントは、汚泥と来待石粉等の合計重量に対して5〜30%程度使用する。この場合、セメントコ−ティグの厚み(皮膜厚み)は、0.1〜3mm程度となる。より好ましくは0.5〜2mm程度である。尚、セメントが付着するのは、造粒物の水分が30%〜40%程度の場合である。30%未満だと付着が十分に行われず40%を越えると造粒物同志をセメントがくっつけて団子になるので、底質汚泥等と来待石粉末等の造粒物の含水率を調製する必要がある。
【0036】
セメントにはカルシウムが含まれているが、更に、セメントや粉体にゼオライトや溶融スラグ、貝殻粉砕品あるいは消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウムなどのカルシウム含有資材を1〜10%程度混合したものを湖底に埋め戻しした場合、カルシウムが湖底汚泥中のリンと反応して不溶性のリン酸カルシウムとなり、脱リンが行われる。また、港湾工事でテトラポットを設置すると貝類が多く集まることが知られているが、こさは、貝類がカルシウムを必要としていることによるが、宍道湖でもカルシウム分が多いとシジミが増殖する可能性がある。特に、水酸化カルシウム(消石灰)は酸性化した河川や土壌の中和剤や凝集剤として広く用いられているが、粉末状であるためこのまま湖面に散布すれば流れてしまう。成形物に混ぜれば、このようなこともなく、徐々に溶解して水中に拡散する。
【0037】
次に、焼成造粒品の場合について述べる。まず、来待石等の粉体等に水を加えたり、或いはこれら石粉体と汚泥類を混合してミキシング装置(コンクリートミキサー類似の装置)に投入して攪拌混合して造粒する(水分や汚泥類の混合割合は上記の造粒品の場合と同じ)。次いで、素焼き(500〜900℃)や本焼き(1100〜1180℃)を行う。ここに言う温度は最高温度を意味する。即ち、常温から徐々に昇温して500〜900℃、或いは1100〜1180℃に至り、次いで降温する。この場合の焼成温度を500〜900℃、或いは1100〜1180℃と言う。昇温は、、常温から例えば8時間かけて徐々に行い、最高温度になった時点で電源を切る(電気窯の場合)。その後、10時間程度かけて自然放冷し、300℃になった時点で窯の蓋を開ける。以上はバッチ式の窯の場合であるが、トンネル窯で連続焼成する場合も、おおよそこの範囲で行う。
【0038】
そして、得られた焼成品にサポニン含有剤を含浸させる。焼成品は、水を約30重量%吸収するので、この水の代わりにサポニン含有剤を原液のまま(サポニン濃度が1.9%或いは約4%のもの)或いはこれを10倍、100倍等に薄めた液を用いる。
【0039】
かくして得られたサポニン含有焼成造粒品は、水に入れた場合に徐々にサポニンを放出して、上記サポニン含有造粒品と同様の効果をもたらす。尚、特許文献9に示す特開平7−275852号公報には、サポニンを木炭に含浸・吸着させることが記載されている。しかし、本願発明者が実験したところ、サポニン含有剤を吸着させた木炭は、水に入れると極短時間にサポニン含有剤を放出してしまい、長期に徐々に放出することは不可能であることが判明した。
【0040】
次に、液状のサポニン含有剤とは、サポニンを多く含む植物体の抽出液のことである。ここにサポニンとは、植物体に含有される配糖体の一種で、セッケンのように著しくアワ立つコロイド水溶液を作るものの総称であり、多くの植物から見出されている。本発明では用いるサポニンの種類は問わないが、コストや安定供給の点から、植物体中の含有量が多く且つその植物が大量に存在し安定して入手できるものが好ましい。この観点から、キラヤサポニンやユッカ、砂糖大根、なぎいかだ、大豆等から得られるサポニンが好ましい。サポニン含有剤は、植物体から抽出した抽出液(溶媒を含む)をそのまま用いてもよく、それを精製したもの自体でもよい。抽出の方法は通常の方法でよく、水やエタノール等の低級アルコール等で抽出できる。更に、この抽出液を精製したり濃縮したものも使用できるし、液状のものを真空乾燥等、従来公知の方法で粉末にしたものも使用できる。または、植物体の粉砕物を用いてももよい。
【0041】
この内特に、南米のチリー、ボリビア、ペルー等に自生するシャボンの木(学名:Quilaia saponaria Mol.バラ科)から抽出したキラヤサポニンが好適である。これは、化1の構造を有するキラヤ酸をアグリコン(配糖体の非糖質部分)とするトリテルペン系の配糖体であり化2で表わされたもので、構造及び分析技術が解明されている数少ないサポニンであるし、比較的サポニン含有濃度の高い抽出液が得られることによる。尚、現在市場に供給されているキラヤサポニンは、前述したトリテルペノイド系サポニン1.9%(天然サポニンとして約4%)含有のもの(水やエタノール等の溶媒約70%、糖類約20%を含有、イコニン:田代興業株式会社製)や、これを濃縮したトリテルペノイド系サポニンを約4%(天然サポニンとして8%含有、その他溶媒として水が約44%、エタノールが約10%、糖類約30%含有)含有するもの(商品名イコニンG:田代興業株式会社製)もある。また、シャボンの木の皮を粉砕したものもある。
【化1】


【化2】

【0042】
また、ユッカサポニンは、北アメリカ南部や西インド諸島に産するユッカ種の植物の茎から抽出したもので、ステロイド系サポニンの一種である。現在市場に提供されているものは、抽出液中に約1〜1.5%程度の活性ステロイドサポニンを含有(溶媒約80%、糖類約9%含有)しており、同様に排水処理に用いられている。ただ、キラヤサポニンに比べて、消臭力は優れるが生物活性能力は幾分劣る。その他砂糖大根から得られるビートサポニン(オレアノール酸の配糖体で、トリテルペノイド系サポニンの一種)も原材料が大量にあるので、安定供給される可能性がある。
【0043】
本発明で得られる造粒品は、焼成しなくても十分な硬度や耐水性があり、底質汚泥をくみ上げたあとの浚渫した窪みの覆砂や置換材或いは湖底のヘドロ層の覆砂や置換材として十分な使用に耐えるものである。さらに、含有されるサポニンがヘドロを分解するバクテリアの働きを助成するため、ヘドロが減少する効果が大きいのも特徴である。また発明のサポニン含有焼成造粒品も含有するサポニンでヘドロを分解するバクテリアの働きを助成するため、ヘドロが減少する効果が大きい特徴がある。更に、これらサポニン含有造粒品やサポニン含有焼成造粒品は、排水処理剤や水処理剤、土壌改良材、植栽土壌など多くの分野で使用できる優れたものである。特に、我が国は酸性土壌が多く、農地へのカルシウム分の供与が必要になるが、本発明のサポニン含有造粒品や含有焼成造粒品はその点からも優れたものである。
【0044】
本発明の汚泥造粒品は、地上の処理工場で製造できることは勿論であるが、汚泥が底質汚泥の場合、底質汚泥を船型の水上プラント上に汲み上げてそのまま或いは脱水し、次いで船上で来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いは廃瓦粉砕品を加えてミキシング装置で攪拌混合して汚泥類の含水率を低下させるとともに攪拌造粒し、次いでセメントを表面にまぶして乾燥するとともに、得られた乾燥物を湖底などに投入して埋め戻して湖底などのヘドロ層を置換或いは被覆することもできる。この場合、くみ上げた底質汚泥の地上での搬送や造粒した汚泥造粒品を船に乗せて埋め立てや覆砂場所まで運ぶ手間が不要になり、非常に効率的で安価な方法である。また、汲み上げた底質汚泥を来待石等の粉末と直ちに攪拌混合する場合は汚泥から排出する汚水が流出することもなく、湖水を汚さない。尚、成形物をロータリーキルン等で100℃〜200℃程度で30分〜1時間前後低温乾燥すると、成形物の強度を増すとともに天日乾燥に比べて成形から埋め戻しまでの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0045】
以上詳述したように、本発明は、来待石等の粉体に水とサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して造粒する、或いはこれらの粉体と底質汚泥などの汚泥類を混合し更にサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して汚泥類の含水率を低下させるとともに造粒し、次いでセメントを表面にまぶして乾燥したサポニン含有造粒品、或いはこれらの造粒品を乾燥焼成したものにサポニン含有剤を含浸させたサポニン含有焼成造粒品である。また、これらのサポニン含有造粒品やサポニン含有焼成造粒品の使用方法を提供するものである。
【0046】
従って、
(1)従来、用途がなくて廃棄されていた来待石の粉末や安山岩、花崗岩の砕石粉、廃瓦粉砕品、或いは更に同じく処理に手を焼いている汚泥類を一挙に処理することができる。
(2)しかも、両者に更にサポニン含有剤を加えてミキシング装置や攪拌造粒機で攪拌混合するだけで成形でき、しかもセメントコーティングで固めるので焼成する必要もなく、処理エネルギーを殆ど必要とせず安価な処理方法である。
(3)焼成する場合も、素焼きで低温度での焼成も可能であるうえ、これら焼成品にサポニン含有剤を含浸させるので、サポニンの保持と徐々の放出が可能になる。
(4)比重が1に近いので、湖底泥の覆砂や置換砂に用いると沈降も少なく安定した作用をもたらす。
(5)カルシウム分に富むので、底質汚泥に含まれているリンの除去に効果を発揮する。更に、酸性を示すヘドロの浄化にもなるし、また、シジミなどの貝類が好んで集積する効果もある。
(6)セメントコーティングで固めるので湖底に撒いた場合pHが上昇するが、アルカリ性を好むバクテリアが周囲に集まって底質汚泥の有機物の分解を促進させることもできる。尚、pHは次第に中性に低下する。
(7)サポニンを含有する造粒物や焼成品であるところから、排水処理処理剤や水処理剤、園芸や緑化資材、地下浸透材や透水性舗装の下の路盤材、地盤改良に使用するサンドパイル代替え品などの土木資材などに広く利用できる。特に、酸性土壌の処理にはうってつけである。
などの効果があり、幾分かの手間とコストを掛けるだけで廃棄物の商品化ができ、来待石関連業界や砕石業界、瓦業界にとってまさに救世主となる。とともに、湖底の汚泥処理ができて環境保護に素晴らしい効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】造粒品(a)とこれにセメントコーティングをして得たサポニン含有造粒品(b)を示す正面図である。(実施例2)
【図2】焼成品(a)にサポニン含有剤を含浸して得たサポニン含有焼成造粒品(b)を示す正面図である。(実施例4)
【図3】実施例3の造粒品と炭破砕品にサポニン含有剤を含浸させたものをガラスコップに入れて水を入れ攪拌した状態の正面図である。(実施例5)
【図4】水と油を入れた洗面器に実施例3の造粒品を入れた状態の断面図である。(実施例6)
【図5】ヘドロ減少実験を示す断面図である。(実施例7)
【図6】アオミドロ減少実験を示す断面図である。(実施例8)
【図7】汚水浄化装置を示す断面図である。(実施例9)
【図8】中海におけるを浚渫した窪地とそこに溜まったヘドロの処理状態を示すもので、(a)は窪地にヘドロが溜まった状態の模式図、(b)は窪地のヘドロHを吸い上げた状態の模式図、(c)は汚泥造粒品Oを戻した状態の模式図である。(実施例10)
【図9】本発明における底質汚泥の処理を水上で行う工程を示す説明図である。(実施例10)
【図10】宍道湖の湖底に溜まったヘドロの処理状態を示すもので、(a)は宍道湖の中央部湖底の状態を示す模式図、(b)は或る範囲のヘドロ吸い上げた状態の模式図、(c)は吸い上げ箇所及びその周辺に汚泥造粒品を投入した状態の模式図である。(実施例11)
【図11】洗面器に水道水と汚泥造粒品を入れ、汚泥造粒品の直上で計ったpHの経時変化を示すグラフである。(実施例12)
【図12】図8における汚泥造粒品の量の違いによるpHの変曲点を1つにまとめたグラフである。(実施例13)
【図13】水道水と汚泥造粒品を入れたガラス製金魚鉢の側面に白い析出が付着した状態の正面図である。(実施例14)
【発明を実施するための形態】
【0048】
含水率90〜98%の脱水湖底汚泥と含水率2〜5%の来待石或いは安山岩や安山岩質凝灰岩、或いは花崗岩の粉体を、水分が30〜40%になるように重量比で1対1.5〜3の割合でミキシング装置に投入して、更にサポニン含有剤を原液のまま或いは10〜100倍に希釈したものを全体量に対して5〜20%混合して攪拌混合して造粒したのち、汚泥と来待石粉等の合計重量に対して5〜30%のセメントを投入してセメントコーティングし、次いで乾燥すること。
【実施例1】
【0049】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、含水率5%の来待粉体の20Lに対し、サポニン含有剤Sapの原液(サポニン4%含有品)を水に2〜100倍に薄めたものを3〜5Lの割合で混合し(これで、水分30〜40%になる)てミキサーに入れ攪拌して直径2〜10mm程度の造粒品が得られる。次いで、セメント粉末7.8Kgを徐々に投入してコーティングする。すると、サポニン含有造粒品14が得られる。この場合のセメントコーティング層の厚みはほぼ1〜2.5mmであった。このサポニン含有造粒品は、サポニンを含有するため、排水処理剤や水処理剤に効果を発揮する。また、園芸や緑化資材、地下浸透材や透水性舗装の下の路盤材、地盤改良に使用するサンドパイル代替え品などの土木資材などにも広く用いることができる。
【実施例2】
【0050】
また、汚泥を使用する場合、図1(a)に示すように、含水率5%の来待粉体11の22.0Kgと、下水処理場等で発生する脱水生汚泥(含水率は70〜80%程度)10の16.0Kg、更にサポニン含有剤10Lをミキサーに投入して攪拌して直径2〜10mm程度の造粒品12を得る。この場合、含水率は35%程度である。次いで、これにセメント粉末13の7.8Kgを徐々に投入してコーティングする。すると、図1(b)のサポニン含有造粒品14が得られる。この場合のセメントコーティング層の厚みはほぼ1〜2.5mmであった。この汚泥造粒品の用途も上記同様である。
【実施例3】
【0051】
実施例1、又は実施例2で得られたサポニン含有造粒品を乾燥させた後、2倍に薄めたサポニン含有剤を重量で約20%含浸させる。
【実施例4】
【0052】
来待石等の粉体等に水を加えたり、或いはこれら石粉体と汚泥類を混合してミキシング装置(コンクリートミキサー類似の装置)に投入して攪拌混合して造粒する(水分や汚泥類の混合割合は実施例2の造粒品の場合と同じ)。次いで、素焼き(500〜900℃)や本焼き(1100〜1180℃)を行う。ここに言う温度は最高温度を意味する。即ち、常温から徐々に昇温して500〜900℃、或いは1100〜1180℃に至り、次いで降温する。この場合の焼成温度を500〜900℃、或いは1100〜1180℃と言う。昇温は、常温から例えば8時間かけて徐々に行い、最高温度になった時点で電源を切る(電気窯の場合)。その後、10時間程度かけて自然放冷し、300℃になった時点で窯の蓋を開ける。以上はバッチ式の窯の場合であるが、トンネル窯で連続焼成する場合も、おおよそこの範囲で行う。
【0053】
得られた焼成品(15)(図2(a))にサポニン含有剤Sapを含浸させて、サポニン含有焼成造粒品(16)(図2(b))を得る。焼成品は、水を約30重量%吸収するので、この水の代わりにサポニン含有剤を原液(サポニン濃度が1.9%或いは約4%のもの)を10倍に薄めた液を用いる。尚、サポニン含有造粒品の場合、コーティングするセメント層の厚みが厚いほどサポニンが溶出しにくい。これをカバーするために、セメント層にサポニン含有剤を含浸させるとよい。サポニンが一番出やすいのは、実施例4のサポニン含有焼成造粒品である。
【実施例5】
【0054】
(サポニン溶出試験)
実施例1で得られたサポニン含有造粒品の大粒(径が1cm位のもの)と小粒(径が2mm位のもの)のものと、実施例4(来待石粉のみを使用)で得られた径が5mm位のサポニン含有焼成造粒品16、それに炭17の破砕品(2〜10mm)に一昼夜サポニン液(原液を10倍希釈)を含浸・吸着させたものについて、溶出試験を行った。結果を、表2に示す。図3には、サポニン含有焼成造粒品(図3(a))と炭(図3(b))のみを示すが、何れも試料は20gとしカラスコップ18に水19を8分目程入れて、箸20で攪拌した。尚、炭は軽いためにプラスチックネット21に充填して使用した。

【表2】

【0055】
低濃度のサポニン量を測定することはできないが、箸などで攪拌して小さい泡が発生したら大体2〜5ppm 程度の濃度とされている。炭の場合、水に入れた直後から物凄い泡が発生して迅速にサポニンが溶出していることが分かる。そして、5日後には、殆ど泡が生じなくなっている。これでは、長期に渡って徐々にサポニンを溶出させる目的は達成できない。
【0056】
これに対し、実施例1や実施例4の場合24時間後に泡が4〜5個生じるが直ぐ消失し、5〜6日で1〜2個乃至4〜10個程度の泡が残る。即ち、4〜5日目位から水中に2〜3ppm 程度のサポニンが溶出してきたことを示す。1ケ月位すると、実施例1、4の造粒物では、攪拌により泡が多く出て、サポニン濃度としては2〜3ppm 程度が溶出しているものと思われる。炭は、途中で水洗して水換えしたため、泡は殆どでなくなった。サポニン成分は出尽くしたものと思われる。
【実施例6】
【0057】
(油の乳化試験)
次に、実施例4で得られた焼成品16(来待石粉100%)1Lにサポニン含有剤Sap原液を300g含浸させたものを、図4に示すように洗面器22に2Lの水19と500ccの油23を入れたものに、100g、200g、300gずつ入れて40日放置しておいた。その結果、100g入れたものは殆ど乳化が見られなかったが、200g入れたものは少し乳化し、300g入れたものはほぼ完全に乳化した。これは、焼成品からしみ出たサポニンが油を乳化させるに十分な量であることの査証である。
【実施例7】
【0058】
(ヘドロの減少試験)
図5(a)に示すように、プラスチック容器24に、ヘドロ(水分50〜65%)25を600cc入れ、サポニン含有剤(イコニンG)26の1%液50mLをその上に加え、約3ケ月間放置しておいたところ、ヘドロの量が約1/3に減少していた。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、同じくプラスチック容器24に、ヘドロ(水分50〜65%)25を600cc入れ、その上に、実施例4で得られたサポニン含有焼成造粒品16(イコニンG1%液を10.1%吸着させたもの)を500g置いておいたところ、約4ケ月でベドロの量が1/2に減少していた。これは、サポニン含有焼成造粒品16から溶出したサポニンが、ヘドロを分解したものと思われる。
【実施例8】
【0060】
(アオミドロの抑制実験)
図6は、アオミドロの抑制実験を行った結果を示す。まず、図6の(a)に示すように、容量10Lの容器27に水19を入れて葦28を植えておいたところ、数ケ月で大量のアオミドロ29の発生を見た。水も濁って来た。そこで、図6の(b)に示すように、葦28を植えていてアオミドロが発生している別の容器30に、実施例7と同じサポニン含有焼成造粒品16を2L投入して、3ケ月放置しておいたところ、アオミドロが減少し、水の透明度も抜群に良くなった。また、図(a)の容器27の底には底泥があったが、容器30の底の底泥は消化されて、砂質土が残っていた。
【実施例9】
【0061】
(汚水の浄化実験)
図7に示すように、浄化槽31に深さ1/4程度まで実施例7と同じサポニン含有焼成造粒品16を入れて汚水32をサポニン含有焼成造粒品16に接触通過させたところ、排水(処理水)33の透明度が非常に良くなり、浄化槽31の壁に藻の発生も見られなかった。
【実施例10】
【0062】
次に、底質汚泥の置換状態の一例を示す。図8は中海の浚渫した窪地Kとそこに溜まったヘドロHの処理状態を示すもので、(a)は窪地KにヘドロHがたまった状態を示す模式図、(b)はヘドロHを吸い上げた状態の模式図、(c)はサポニン含有汚泥造粒品Oを戻した状態の模式図である。尚、汚泥造粒品Oの量は、ヘドロHの量の2〜3倍になるので、窪地Kは浅くなる。
【0063】
次に、底質汚泥の処理の一例を示す。図9は湖上で底質汚泥を処理する船型の水上プラント40を示す。この水上プラント40には、来待石粉体や安山岩粉体等石粉の保管庫42、セメント粉体の保管庫43、ミキシング装置44とセメントコーティング用ミキシング装置45、造粒品乾燥用のロータリーキルン46、底質汚泥バキューム装置47、底質汚泥置き場48、乾燥した汚泥造粒品の置き場49がそれぞれ設けられている。Sapはサポニン含有剤を示す。
【0064】
まず、底質汚泥バキューム装置47で吸い上げられた底質汚泥50(図1のH)は、そのままミキシング装置44に投入される。或いは、底質汚泥を底質汚泥置き場48に置いて脱水して含水率を低減させるようにしてもよい。次いで、底質汚泥50と来待石等の粉末51を1対2〜3の割合で更にサポニン含有剤Sapをミキシング装置44に投入し、20〜30分間攪拌して2〜10mm程度の造粒品52を得る。ミキシング装置44にかえて、攪拌造粒機を用いれば、5〜10分間程度で造粒できる。続いて、この造粒品52をセメントコーティング用ミキシング装置45に投入し、底質汚泥と来待石分等の総重量の10〜25%セメント粉体53を徐々に投入し5分間かけてコーティングしてコーティング造粒品14を得る。次いで、ロータリーキルン46で乾燥して汚泥造粒品(人工砂礫)55(図8のO、実施例2の14)が得られる。この人工砂礫55を、底質汚泥50を吸い上げて窪んだ箇所(図8のK)に投入して、該箇所の被覆や置換を行う。
【0065】
これにより、底質汚泥(ヘドロ)の処理が連続して行なうことが可能となる。また、処理中、汚濁が防がれる。
【実施例11】
【0066】
図10(a)は宍道湖の中央部湖底の状態を示す模式図で、湖底(S)の上に20〜40cmもの厚みのヘドロHが堆積している。このヘドロHを或る範囲にわたって、実施例2に示す船型の水上プラント40により図10(b)のように吸い上げ(S)、得られた汚泥造粒品(人工砂礫)55(図8のO)を、図8(c)と同様に吸い上げ箇所(S)及びその周辺に投入してヘドロの覆砂或いはヘドロの置換を行う場合である。
【実施例12】
【0067】
実施例2において、底質汚泥50と来待石等の粉末51の総重量に対して、2%のシジミ殻粉末を混合して造粒した汚泥造粒品を、宍道湖中央部のヘドロ層上に散布したところ、シジミ貝が集積増殖するのが、見られた。
【実施例13】
【0068】
本発明のサポニン含有造粒品は、セメントでコーティングしているので、湖底に投入した場合、しじみの集積やヘドロのリン吸着には好影響を与えるが、湖水のpHを上昇させて環境に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、図11に示すような実験を行った。即ち、図11の右下に示すように、洗面器34に2000ccの水道水(pH7.6)19を入れ、その底に、実施例2で得られた汚泥造粒品14(セメント20%コーティング)を入れ、その直上でのpHを測定した。図11のPH変化曲線のグラフがその結果であるが、4〜20日位でpHは低下を始めた(各グラフの□の位置)。尚、ここで2.5%〜12.5%とは、水2000cに対する汚泥造粒品の容量比である。また、セメント造粒物とは、セメントのみを用いて造粒したものである(対水道水容量比2.5%)。そして、セメント造粒物の場合、pHの低下は見られない。この結果から分かるように、水道水の1/10もの量の汚泥造粒品14でも30日をすぎるとpHが10程度に低下しているので、湖底に少々の量の汚泥造粒品14を散布しても、湖水のpHが上昇することは殆ど考えられない。逆に、底質汚泥(ヘドロ)は腐敗していて酸性化しており、これの中和にもなる。尚、来待石粉末焼成品のpHは、同様にして測定したところ、当所pH9.0程度であったが、時間が経過しても、8.0〜8.5程度で変化は殆ど見られなかった。尚、キラヤサポニンのppm は6.5〜7.0程度である。
【0069】
図12は、図11のpHを示す各グラフが変曲する点(□)のpHと、水道水17に対する汚泥造粒品14の容量割合を示すグラフである。尚、底質汚泥はpHが7以下(酸性)であり、本発明品を投下することにより水質悪化を防止できるものである。
【実施例14】
【0070】
図13に示すように、ガラス製金魚鉢35に水道水19を2000cc入れ、実施例13と同様の容量で同様の汚泥造粒品14(セメント20%コーティング)を入れて観察したところ、10日程度を経過すると何れの金魚鉢にも、その側面に白い析出物36が付着するのが見られた。析出物の量は、汚泥造粒品14の量が多い程多かった。この白いものは、汚泥造粒品14から溶けだしたカルシウム分であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
処理が問題になっている来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩粉体更には底質汚泥や下水処理汚泥にサポニン含有剤を加えて造粒したものにセメントコーティングしたり、これらの焼成物にサポニン含有剤を含浸させることにより、サポニン徐放性の造粒品を得る。得られた造粒品は、水処理剤や湖底や池底などに投入・埋め戻して湖底や池底などのヘドロ層を置換或いは被覆するために用いたり、排水処理剤や土壌改良材や埋め立て材として使用できる。
【符号の説明】
【0072】
10 脱水生汚泥
11 来待粉体
12 造粒品
13 セメント粉末
14 サポニン含有造粒品
15 焼成品
16 サポニン含有焼成造粒品
17 炭
18 カラスコップ
19 水(水道水)
20 箸
21 プスチックネット
22 洗面器
23 油
24 プラスチック容器
25 ヘドロ
26 サポニン含有剤(イコニンG)
27 容器
28 葦
29 アオミドロ
30 別の容器
31 浄化槽
32 汚水
33 排水(処理水)
34 洗面器
35 ガラス製金魚鉢
36 白い析出物
40 船型の水上プラント
42 来待石粉体や安山岩粉体等石粉の保管庫
43 セメント粉体の保管庫
44 ミキシング装置
45 セメントコーティング用ミキシング装置
46 造粒品乾燥用のロータリーキルン
47 底質汚泥バキューム装置
48 底質汚泥置き場
49 乾燥した汚泥造粒品の置き場
50 底質汚泥
51 来待石等の粉末
52 造粒品
53 セメント粉体
55 汚泥造粒品(人工砂礫)
K 窪地
H ヘドロ
O サポニン含有汚泥造粒品
S 吸い上げ箇所
Sap サポニン含有剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体に水とサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して造粒し、次いでセメントを表面にまぶして成形したことを特徴とするサポニン含有造粒品。
【請求項2】
底質汚泥や下水処理場等で発生する生汚泥、消化汚泥、焼酎粕汚泥などの汚泥類と、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体を加え、更にサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して汚泥類の含水率を低下させるとともに造粒し、次いでセメントを表面にまぶして成形したことを特徴とするサポニン含有造粒品。
【請求項3】
成形したものを自然乾燥或いはロータリーキルン等で低温乾燥したものである、請求項1又は請求項2記載のサポニン含有造粒品。
【請求項4】
来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体に水を加えてミキシング装置で攪拌混合造粒し、次いで乾燥し焼成した焼成品にサポニン含有剤を含浸させたことを特徴とするサポニン含有焼成造粒品。
【請求項5】
下水処理場等で発生する生汚泥や消化汚泥、或いは底質汚泥、焼酎粕汚泥などの汚泥類を、来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いはこれらの混合粉体とともに、ミキシング装置で攪拌混合して含水率を低下させるとともに造粒し、次いで乾燥し焼成した焼成品にサポニン含有剤を含浸させたことを特徴とするサポニン含有焼成造粒品。
【請求項6】
来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩或いは花崗岩の粉体とともに、廃瓦粉砕品を用いるものである、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5記載のサポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品。
【請求項7】
ゼオライトや溶融スラグ、貝殻粉砕品あるいは消石灰(水酸化カルシウム)などのカルシウム含有材を、汚泥類と石粉の総重量に対して1〜10%混合して造粒するものである、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6記載のサポニン含有造粒品又はサポニン含有焼成造粒品。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7で得られたサポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品を、排水処理剤や水処理剤、土壌改良材、植栽土壌として使用するものであるサポニン含有造粒品又はサポニン含有焼成造粒品の使用方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7で得られたサポニン含有造粒品或いはサポニン含有焼成造粒品を、湖底や池底などに投入・埋め戻して湖底や池底などのヘドロ層と置換し或いはヘドロを被覆することを特徴とする湖底等のヘドロ層の置換或いは被覆方法。
【請求項10】
底質汚泥は、船型の水上プラント上に吸い上げてそのまま或いは脱水し、次いで船上で来待石や安山岩、安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体或いは廃瓦粉砕品、更にはサポニン含有剤を加えてミキシング装置で攪拌混合して汚泥類の含水率を低下させるとともに攪拌造粒し、次いでセメントを表面にまぶして成形するとともに、得られた成形物を湖底などに投入埋め戻して湖底などのヘドロ層と置換し或いはヘドロ層を被覆することを特徴とする請求項9記載の湖底等のヘドロ層の置換或いは被覆方法。
【請求項11】
成形したものを、ロータリーキルン等で低温乾燥したのち、湖底などに投入埋め戻すものである、請求項12記載の湖底等のヘドロ層の置換或いは被覆方法。
【請求項12】
含水率90〜98%の汚泥類や含水率50〜85%の脱水汚泥類と、含水率2〜5%の来待石或いは安山岩や安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体や廃瓦粉砕品、及びサポニン含有剤を、水分が30〜40%になるように重量比で1対1.5〜3の割合でミキシング装置や攪拌造粒機に投入して攪拌混合して造粒するか、或いは来待石粉などに水とサポニン含有剤を混合して同様にミキシング装置や攪拌造粒機に投入して攪拌混合して造粒したのち、汚泥と来待石粉等の合計重量或いは来待石粉等の合計重量に対して5〜30%のセメントを投入してセメントコーティングして成形することを特徴とするサポニン含有造粒品の製造方法。
【請求項13】
成形したのち、自然乾燥或いはロータリーキルン等で低温乾燥するものである、請求項12記載のサポニン含有造粒品の製造方法。
【請求項14】
サポニン含有剤は、サポニンを4%含む原液をそのまま乃至は100倍までの各種濃度に希釈したものを用いるものである、請求項12記載のサポニン含有造粒品の製造方法。
【請求項15】
セメントコーティングした後、サポニンを4%含む原液をそのまま乃至は100倍までの各種濃度に希釈したものを含浸させるものである、請求項12記載のサポニン含有造粒品の製造方法。
【請求項16】
含水率90〜98%の汚泥類や含水率50〜85%の脱水汚泥類と、含水率2〜5%の来待石或いは安山岩や安山岩質凝灰岩、花崗岩の粉体を、重量比で1対1.5〜3の割合でミキシング装置に投入して攪拌混合するか、或いは来待石粉等に水を加えて同様にミキシング装置に投入して攪拌混合して造粒し、乾燥後500℃〜1180℃の温度で焼成し、次いでサポニン含有剤を含浸させることを特徴とするサポニン含有焼成造粒品の製造方法。
【請求項17】
サポニン含有剤は、サポニンを4%含む原液をそのまま乃至は100倍までの各種濃度に希釈したものを焼成品に対して重量比で10〜30%含浸させたものである、請求項16記載のサポニン含有焼成造粒品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−137219(P2010−137219A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260121(P2009−260121)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】