説明

サンドイッチパネル

【課題】軽量化を図りつつ、上記曲げ強さ、剥離強さ及び面内せん断強さを満たすことができ、例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルの提供。
【解決手段】中空柱状芯体1の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記中間材2を、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体4・5で構成し、これらの一方向繊維体4・5同士の間及び内方の一方向繊維体5と前記中空柱状芯体1との間に樹脂含有率50%以上の接着層6・7を夫々設け、接着層7を、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成したサンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交する織成繊維体7で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるような、中空柱状のセルの平面的集合体であるハニカムコアの上下両面(開口端面)に中間層としてのカーボン(炭素)繊維強化プラスチック体が積層され、更にこのカーボン(炭素)繊維強化プラスチック体に表面材を積層して成るハニカムサンドイッチパネルがある。
【0003】
【特許文献1】実公平6−17530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、例えば航空機は、軽量であることが燃費向上につながることから、構造材,内装材ともに軽量化が求められている。この軽量化を図ることができる材料として、上述のようなハニカムコアの上下に繊維強化プラスチック板を配したハニカムサンドイッチパネルが用いられている。
【0005】
特に、航空用の内装材の一つである内壁材は、軽量でありながら、サンドイッチパネルとしての曲げ強さ、面内せん断強さ及びハニカムコアと上下の繊維強化プラスチック層の剥離強さを満たす必要がある。しかしながら、単に繊維量の増減や中間層を構成する繊維体の層数の増減だけでは、これらを満たすことはできない。
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑み、種々検討を行った結果、複数の繊維体を積層して形成される中間材の各層間の密着性を改善することで、軽量化を図りつつ、上記曲げ強さ、剥離強さ及び面内せん断強さを満たすことができ、例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
中空柱状芯体1の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記中間材2は、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体4・5で構成され、一方の一方向繊維体4は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略平行な繊維方向を有し、他方の一方向繊維体5は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略直交する繊維方向を有し、これらの一方向繊維体4・5同士の間及び内方の一方向繊維体5と前記中空柱状芯体1との間には、樹脂含有率50%以上の接着層6・7が夫々設けられ、この内方の一方向繊維体5と前記中空柱状芯体1との間に設けられる接着層7は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体7から成り、この織成繊維体7は、このサンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0009】
また、中空柱状芯体1の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記中間材2は、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体4・5で構成され、一方の一方向繊維体4は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略平行な繊維方向を有し、他方の一方向繊維体5は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略直交する繊維方向を有し、これらの一方向繊維体4・5の樹脂含有率は30%以下に設定され、また、これらの一方向繊維体4・5同士の間には樹脂含有率50%以上の接着層6が設けられ、内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1との間には樹脂含有率70%以上の接着層7が設けられ、この接着層7は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体7から成り、この織成繊維体7は、サンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記接着層6は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体6から成り、この織成繊維体6は、サンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するか、若しくは前記経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0011】
また、請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体4・5の繊維にはカーボン繊維が採用され、前記織成繊維体6・7の繊維にはガラス繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0012】
また、請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体4・5の繊維にはカーボン繊維が採用され、前記織成繊維体6・7の繊維にはガラス繊維及びカーボン繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0013】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記表面材3として、ポリフッ化ビニリデン系のフィルム若しくはガラス繊維を含む不織布が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0014】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、このサンドイッチパネルは、単位面積当たりの重量が1.59kg/m以下で、最大曲げ荷重が510N以上、剥離強さが60N・in/3in以上、面内せん断強さが20kN以上に設定されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、軽量化を図りつつ、上記曲げ強さ、剥離強さ及び面内せん断強さを満たすことができ、例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
樹脂含有率が50%以上の接着層6・7により、一方向繊維体4・5同士及び内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1とが良好に接着し、例えば一方向繊維体4の樹脂含有率をある程度(例えば30%以下に)低下させても、各層間の密着性を向上させることができ、軽量化を図りつつ、曲げ強さ及び中空柱状芯体1と上下の中間材2の剥離強さを向上させることが可能となる。
【0018】
特に、内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1との間の接着層7として、織成繊維体7が採用されているため、繊維のない例えば接着フィルム等を採用した場合に比し、繊維により樹脂が良好に保持され、この織成繊維体7と中空柱状芯体1とを良好に密着させて各強度を向上させることが可能となる。
【0019】
更に、織成繊維体7の経糸及び緯糸は、いずれか一方がサンドイッチパネルの一辺に対して平行となり他方が直交するように構成されているため、一方向繊維体4・5の繊維方向と一致してそれだけ曲げ強度を向上させることが可能となる。
【0020】
また、一方向繊維体4・5同士の間には樹脂含有率50%以上の接着層6を設け、内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1との間には樹脂含有率70%以上の接着層7を設けた場合には、重量化を抑制しつつ異種材料である一方向繊維体5と中空柱状芯体1との接着を良好に行うことが可能となる。
【0021】
更に、例えば、接着層6を、サンドイッチパネルの一辺に対して経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜した織成繊維体6で構成した場合には、サンドイッチパネルの一辺に対し平行な一方向繊維体4,該一辺に対し直交する一方向繊維体5及び該一辺に対し経糸・緯糸が±45°傾斜する織成繊維体6により擬似等方性を付与することができ、面内せん断強さを向上させることが可能となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、図1に図示したように、中空柱状芯体1の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材2と表面材3とが積層せしめられて成る平面視方形状のサンドイッチパネルであって、前記中間材2は、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体4・5で構成され、一方の一方向繊維体4は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略平行な繊維方向を有し、他方の一方向繊維体5は、該一辺に対して略直交する繊維方向を有し、この一方向繊維体4・5の樹脂含有率は30%以下に設定され、該一方向繊維体4・5同士の間には樹脂含有率50%以上の接着層6が設けられ、内方の一方向繊維体5と前記中空柱状芯体1との間には樹脂含有率70%以上の接着層7が設けられ、この接着層7は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸として織成して成る織成繊維体7から成り、該織成繊維体7は、サンドイッチパネルの前記一辺に対して経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するように構成されたものであり、前記表面材3としてポリフッ化ビニリデン製の化粧フィルムが採用されているものである。
【0024】
各部を具体的に説明する。
【0025】
中空柱状芯体1としては、有機繊維(例えば、アラミド繊維やセルロース繊維)から成るペーパーに不燃性樹脂を含浸させたものやアルミニウムから成る多数の六角形状のセルの平面的集合体(ハニカムコア1)が採用されている。具体的には、本実施例においては、密度3lb/ft(ポンド/立方フィート)、厚さ10.5mm、単位面積当たりの重さ0.51kg/mのものが採用されている。また、六角形の大きさは、対向する二つの辺がなす長さが1/8インチとなるように設定されている。尚、六角形の対向する二つの辺がなす長さ上記1/8インチに限られるものではない。また、セルの形状は六角形状に限らず、四角形状等、中空柱状であれば他の形状としても良いし、内部に無数の孔を有するフォーム材等のスポンジ状の多孔質材を用いることも考えられる。
【0026】
このハニカムコア1の上下面(開口両端面)には、中間材2及び表面材3が積層されている。
【0027】
具体的には、中間材2は、図2に図示したように、一方向繊維体4・5と、接着層6・7としての繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸として織成して成る織成繊維体6・7とを交互に計4層積層して構成されている。本実施例においては、最外層が一方向繊維体4、最内層が織成繊維体7となる順序で積層されている。
【0028】
従って、一方向繊維体4・5に含まれる樹脂含有率を30%以下に設定しても、この一方向繊維体4・5間及び内方の一方向繊維体5とハニカムコア1との間に接着層6・7が存在することで、層間接着力が向上する。即ち、一方向繊維体4・5間及び内方の一方向繊維体5とハニカムコア1との間に、接着層6・7(としての織成繊維体6・7)を設けているため、この織成繊維体6・7により接着力が必要な部位にのみ樹脂層を配することが可能となり、一方向繊維体4・5の軽量化を図れることになる。
【0029】
ここで、例えば、接着層6・7を設けずに本実施例と同等の接着力を得ようとすると、一方向繊維体に必要な樹脂含有率は42%以上となり、軽量化の効果を充分に得ることができない(一般的に一方向繊維体(単層)に必要な樹脂含有率は30%程度である。)。
【0030】
また、一方向繊維体4・5の繊維としてはカーボン繊維が採用されている。尚、一方向繊維体4・5に用いる繊維は、カーボン繊維に限らず、例えば、軽量化の目的から密度が2g/cm以下のアラミド繊維を採用しても良い。
【0031】
ここで、最外に位置する一方向繊維体4は、平面視略長方形状のサンドイッチパネルの長手方向の一辺と略平行な方向(0°)に繊維方向を有し、他の一方向繊維体5はサンドイッチパネルの長手方向の一辺と略垂直な方向(90°)に繊維方向を有するように構成されている。尚、一方向繊維体4の繊維方向を90°、一方向繊維体5の繊維方向を0°に設定しても良い。
【0032】
織成繊維体6・7の繊維としては、ガラス繊維が採用されている。尚、織成繊維体6・7としてガラス繊維及びカーボン繊維から成る混織織成繊維体を採用しても良い。
【0033】
具体的には、一方向繊維体4・5同士を接着する織成繊維体6としては、サンドイッチパネルの一辺(長手方向)に対して経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜するように織成されたもの(±45°の繊維方向を有するもの)が採用されている。尚、織成繊維体6・7として、通常通り経糸及び緯糸を0°及び90°で交差せしめたものを使用し、サンドイッチパネルの一辺に対して経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜するように積層しても良い。
【0034】
また、最内に位置し一方向繊維体5及びハニカムコア1と密着する織成繊維体7としては、サンドイッチパネルの前記一辺に対して経糸が略平行(0°)となり緯糸が略直交(90°)するように織成されたもの(0°,90°の繊維方向を有するもの)が採用されている。尚、経糸の延設方向を90°、緯糸の延設方向を0°に設定しても良い。織成繊維体7の繊維方向を0°及び90°とすることで、曲げ強度を一層向上させることができる。
【0035】
従って、中間材2においては、0°及び90°方向に繊維方向を有する一組の一方向繊維体4・5と、これら一方向繊維体4・5の繊維方向の間の±45°方向に繊維方向を有する織成繊維体6とにより、全体として擬似等方性が発揮されることになる。特に、織成繊維体6の繊維配向が±45°となっているために、面内せん断の引張方向(後記面内せん断試験の鉛直方向)と圧縮方向(後記面内せん断試験の水平方向)に繊維が配されることで面内せん断強さが向上する。
【0036】
本実施例は、これらの一方向繊維体4,一方向繊維体5,織成繊維体6及び織成繊維体7を夫々、各繊維体毎に熱硬化性の樹脂組成物に含浸せしめ、80〜100℃×5〜20分加熱乾燥せしめて一方向繊維体4,一方向繊維体5,織成繊維体6及び織成繊維体7を夫々プリプレグ化せしめ、これらのプリプレグとハニカムコア1とを上記順序で積層せしめ、140〜160℃×1〜2時間、圧力0.2〜0.4MPaで加熱加圧することで硬化成形せしめて製造される。尚、上述のように各繊維体を夫々プリプレグ化した後、積層して加熱加圧する方法に限らず、各繊維体を積層した状態で各繊維体を一括して樹脂組成物に含浸させて加熱乾燥してプリプレグ化せしめた後、そのまま加熱加圧する方法を採用しても良い。
【0037】
また、本実施例においては接着層6として織成繊維体6を採用しているが、繊維体を有さない接着フィルムを採用した場合は、夫々プリプレグ化した各繊維体4・5・7と接着フィルムとを夫々積層した後、加熱加圧することで製造する。この場合、一方向繊維体4・5の樹脂含有率を30%以下にすることで発生する一方向繊維体4・5間の接着力の低下を、接着フィルムにより補うことができ、層間接着力を向上させることができる。
【0038】
プリプレグに用いる樹脂は、航空機内装用内壁材のプリプレグ用樹脂として、不燃性を考慮したレゾール系フェノール樹脂を用いている。具体的には、ヒートリリース試験(HRR)における5分間の熱量のピーク値が30kW/m以下で、2分間の熱量の積分値が30kW・min/m以下であり、且つ、燃焼時の発煙濃度(SMOKE DENSITY)が200以下のレゾール系フェノール樹脂を用いている。尚、上記数値は、HRR及び発煙濃度の測定を、航空機内装品に要求されるFAR25.853規格に準拠して行った際の値である。
【0039】
また、本実施例においては、内方の一方向繊維体5とハニカムコア1との間の接着層7として織成繊維体7を採用しているため、繊維が基材となることで樹脂が良好に保持され、加熱加圧によっても樹脂が流出しにくくなる。即ち、図3に図示したように、加熱加圧されると、樹脂が溶け出すが、ハニカムコア1の壁面を伝って流れ落ちにくく、ハニカムコア1の上側開口端部近傍に留まり、このやや溶け出した樹脂がハニカムコア1の上側開口端部近傍に留まることで、フィレットと呼ばれる幅広な三角形状の接着層Xを形成し、従って、織成繊維体7とハニカムコア1との接着面積が大きくなることで極めて良好な接着力が発現し、面内せん断強さが向上することになる。
【0040】
この点、例えば、図4に図示したように、上記接着層7として基材となる繊維のない接着フィルム7’を採用した場合には、接着フィルム7’の樹脂が基材に保持されないため、該樹脂がハニカムコア1’及び一方向繊維体5’間から流出し易くなる。即ち、加熱加圧されると溶け出した樹脂がハニカムコア1’の上側開口端部近傍に留まらず、ハニカムコア1’の壁面を伝って下側開口端部まで流れ落ちてしまい、上記フィレットに対応する接着層X’は非常に細長い三角形状となり、従って、接着フィルム7’とハニカムコア1’との接着面積は本実施例に比し非常に小さくなり、充分な接着力が発現せず、層間でズレが生じ易くなり、面内せん断強さが低下してしまう。
【0041】
また、織成繊維体の樹脂含有率が多い程接着力は向上するが、樹脂含有率を多くすると、航空機材料としては重くなってしまう。そこで、発明者等は最内に位置する織成繊維体7の繊維量は20〜40g/m、樹脂量(樹脂含有率)は70〜85wt%に設定し、他の織成繊維体6の繊維量は35〜55g/m.樹脂量は50〜65wt%に設定することで、異種材料であるハニカムコア1と一方向繊維体5との接着性を維持しつつ軽量化を図れることを見出した。本実施例においては、一方向繊維体4・5の樹脂含有率29%、織成繊維体6の樹脂含有率55%、織成繊維体7の樹脂含有率75%に設定している。また、一方向繊維体4・5の繊維量は100〜120g/mに設定している。
【0042】
即ち、本実施例は、一方向繊維体4・5の樹脂含有率を30%以下にすることで発生するハニカムコア1と一方向繊維体5との接着力の低下を、ハニカムコア1と内方の一方向繊維体5との間に、樹脂含有率の多いプリプレグ(織成繊維体7)を挟み込み、ハニカムコア1と内方の一方向繊維体5との間に樹脂層を形成させることで、ハニカムコアと内方の一方向繊維体5との接着力を向上させ、ハニカムサンドイッチパネルとしての曲げ強さ、ハニカムコア1と上下の中間層2との剥離強さ、面内せん断強さの向上を図るものである。
【0043】
ここで、例えば、接着層6・7を設けずに本実施例と同等の接着力・曲げ強さ・剥離強さ・面内せん断力を得ようとすると、一方向繊維体に必要な樹脂含有率は60%以上となり、軽量化の効果を充分に得ることができない。
【0044】
従って、本実施例は、単位面積当たりの重量が1.59kg/m以下と軽量で、且つ、最大曲げ荷重が530N以上、剥離強さが80N・in/3in以上、更に、面内せん断強さが24kN以上に設定可能となり、航空機用内装材として好適な内壁材となる。
【0045】
表面材3としては、ガラス繊維を含む不織布、即ち、ガラスペーパーやガラスクロス等を採用しても良い。表面材3に電気絶縁性を有する繊維体を用いると、航空機の組み立ての過程でアルミニウム材とサンドイッチパネルとが接した場合でも電気腐食が発生せず、耐食性に秀れたものとなる。
【0046】
本実施例は上述のように構成したから、樹脂含有率が50%以上の接着層6・7により、一方向繊維体4・5同士及び内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1とが良好に接着し、例えば一方向繊維体4の樹脂含有率をある程度(例えば30%以下に)低下させても、各層間の密着性を向上させることができ、軽量化を図りつつ、曲げ強さ及び中空柱状芯体1と上下の中間材2の剥離強さを向上させることが可能となる。
【0047】
特に、内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1との間の接着層7として、織成繊維体7が採用されているため、繊維のない例えば接着フィルム等を採用した場合に比し、繊維により樹脂が良好に保持され、この織成繊維体7と中空柱状芯体1とを良好に密着させて各強度を向上させることが可能となる。
【0048】
更に、織成繊維体7の経糸及び緯糸は、いずれか一方がサンドイッチパネルの一辺に対して平行となり他方が直交するように構成されているため、一方向繊維体4・5の繊維方向と一致してそれだけ曲げ強度を向上させることが可能となる。
【0049】
また、一方向繊維体4・5同士の間には樹脂含有率50%以上の接着層6を設け、内方の一方向繊維体5と中空柱状芯体1との間には樹脂含有率70%以上の接着層7を設けたから、重量化を抑制しつつ異種材料である一方向繊維体5と中空柱状芯体1との接着を良好に行うことが可能となる。
【0050】
更に、接着層6を、サンドイッチパネルの一辺に対して経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜した織成繊維体6で構成したから、サンドイッチパネルの一辺に対し平行な一方向繊維体4,該一辺に対し直交する一方向繊維体5及び該一辺に対し経糸・緯糸が±45°傾斜する織成繊維体6により擬似等方性を付与することができ、面内せん断強さを向上させることが可能となる。
【0051】
従って、本実施例は、軽量化を図りつつ、上記曲げ強さ、剥離強さ及び面内せん断強さを満たすことができ、例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルとなる。
【0052】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0053】
ハニカムコアの上下面にフェノール樹脂含有率約30%の0°,90°の一対の一方向繊維体を上記接着層6・7を介さず直接一層ずつ配した従来例、上記接着層6として接着フィルム(樹脂含有率100%)を採用した実施例1、上記接着層6として上記織成繊維体7と同様に0°,90°の繊維方向を有する織成繊維体6を採用した実施例2、上記±45°の繊維方向を有する織成繊維体6を採用した実施例2の夫々について、重量、剥離強さ、曲げ強度、面内せん断力、難燃性及び発煙濃度を測定した。測定結果を図5に示す。
【0054】
尚、剥離強さ(PEEL強度)は、図6に図示したような一般的なドラムピール試験装置を用いて行った。図中、符号Aはハニカムコア、Bは中間層、Cはドラム、Dは下部クランプ部、Eはローディングストラップ、Fは上部クランプ部、Gはフランジである。
【0055】
また、曲げ強度(曲げ荷重)は、曲げ試験規格MIL−STD401Bに基づき、図7に図示したような装置を用い、常温(23±2℃)、常湿(50±5%RH)で、スピードは試料を3〜5分で破壊するスピードに設定して行った。
【0056】
また、面内せん断力(IPS)は、ボーイング社で用いられる面内せん断試験(BMS4−17)を図8に図示したような装置を用いて行った(測定機器は島津製作所製オートグラフAG−10)。
【0057】
実験結果から、接着層6・7を有さない従来例は、それだけ軽量ではあるものの、PEEL強度、曲げ荷重、IPS及び難燃性の夫々について実施例1〜3に大きく劣ることがわかる。
【0058】
即ち、接着層6・7を設け、一方向繊維体4・5同士の密着性及び内方の一方向繊維体5とハニカムコア1との密着性を改善することで、重量化を抑制しつつ、剥離強さ、曲げ強度、面内せん断力及び難燃性を大きく向上させることが可能であることが確認できた。更に、発煙濃度も航空機用内装材における一般的な目安となる200を大幅に下回ることが確認できた。
【0059】
尚、従来例の一方向繊維体の樹脂含有率を増やすことで密着性の改善を図ることは可能ではあるが、上述したように重量の大幅な増加は避けられない。
【0060】
更に、実施例1と実施例2,3との比較から、接着層6として、織成繊維体6を採用することで、更に強度を向上させることが可能であることが確認できた。
【0061】
また、実施例2と実施例3との比較から、織成繊維体6の繊維方向を、一方向繊維体4・5の繊維方向と同方向に設定するか一方向繊維体4・5の繊維方向の中間に設定するかにより、曲げ強度及び面内せん断力のいずれかを選択的に強化できることが確認できた。
【0062】
以上から、一方向繊維体同士の間及び一方向繊維体とハニカムコアとの間に樹脂含有率の高い接着層を設けて各層間の密着性を向上させると共に、該接着層に織成繊維体を設けることで、軽量化を図りつつ、航空機用の内壁材として必要な、曲げ強さ、剥離強さ及び面内せん断強さを満たすことが可能なサンドイッチパネルとなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施例の一部を切り欠いた概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の要部の拡大概略説明分解斜視図である。
【図3】本実施例の断面構造を示す概略説明断面図である。
【図4】従来例の断面構造を示す概略説明断面図である。
【図5】本実施例の実験結果を示す表である。
【図6】実験装置の概略説明図である。
【図7】実験装置の概略説明図である。
【図8】実験装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 中空柱状芯体
2 中間材
3 表面材
4・5 一方向繊維体
6・7 接着層(織成繊維体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空柱状芯体の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材と表面材とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記中間材は、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体で構成され、一方の一方向繊維体は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略平行な繊維方向を有し、他方の一方向繊維体は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略直交する繊維方向を有し、これらの一方向繊維体同士の間及び内方の一方向繊維体と前記中空柱状芯体との間には、樹脂含有率50%以上の接着層が夫々設けられ、この内方の一方向繊維体と前記中空柱状芯体との間に設けられる接着層は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体から成り、この織成繊維体は、このサンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項2】
中空柱状芯体の上下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る中間材と表面材とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記中間材は、繊維が一方向に引き揃えられて成る一組の一方向繊維体で構成され、一方の一方向繊維体は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略平行な繊維方向を有し、他方の一方向繊維体は、このサンドイッチパネルの一辺に対して略直交する繊維方向を有し、これらの一方向繊維体の樹脂含有率は30%以下に設定され、また、これらの一方向繊維体同士の間には樹脂含有率50%以上の接着層が設けられ、内方の一方向繊維体と中空柱状芯体との間には樹脂含有率70%以上の接着層が設けられ、この接着層は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体から成り、この織成繊維体は、サンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記接着層は、繊維を経糸及び該経糸と直交する緯糸としこれらを織成した織成繊維体から成り、この織成繊維体は、サンドイッチパネルの前記一辺に対して前記経糸及び緯糸のいずれか一方が略平行となり他方が略直交するか、若しくは前記経糸及び緯糸が夫々約45°傾斜するように構成されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項4】
請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体の繊維にはカーボン繊維が採用され、前記織成繊維体の繊維にはガラス繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項5】
請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体の繊維にはカーボン繊維が採用され、前記織成繊維体の繊維にはガラス繊維及びカーボン繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記表面材として、ポリフッ化ビニリデン系のフィルム若しくはガラス繊維を含む不織布が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、このサンドイッチパネルは、単位面積当たりの重量が1.59kg/m以下で、最大曲げ荷重が510N以上、剥離強さが60N・in/3in以上、面内せん断強さが20kN以上に設定されていることを特徴とするサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−137204(P2008−137204A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323885(P2006−323885)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】