説明

サンドイッチ構造体を有する熱放射検出用デバイス、このデバイスの製造方法および使用方法

本発明は、熱放射検出用デバイス(1)に関し、このデバイスは、熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの熱検出器要素(111)を有する少なくとも1つの検出器支持体(11)と、電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出し回路(121,122)付きの少なくとも1つの回路支持体(12)と、検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバー(13)とを有するスタック(10)を備え、検出器支持体およびカバーが、検出器支持体の検出器要素とカバーの間に検出器支持体およびカバーと境界を接する第1のスタック空洞(14)が設けられるように互いに配置され、回路支持体および検出器支持体が、検出器支持体と回路支持体の間に回路支持体および検出器支持体と境界を接する少なくとも1つの第2のスタック空洞(15)が設けられるように互いに配置され、第1の中空スタック支持体、および/または第2のスタック空洞が排気され、または排気することができる。さらに、このデバイスを製造する方法が提供される。検出器支持体、回路支持体およびカバーは、シリコンでできていることが好ましい。製造作業はウェハ・レベルで行われる。機能化されたシリコン基板が互いに積み重ねられ、一緒になるように堅固に接合され、その後細分される。検出器要素は、集電検出器要素であることが好ましい。このデバイスには動き検出器、存在検出器および熱画像カメラでの応用が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの熱検出要素を含む熱放射検出用デバイスに関する。このデバイスに加えて、このデバイスの製造方法、およびこのデバイスの使用方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
熱放射用検出デバイスが、例えばドイツ特許出願公開第10004216A1号により知られている。このデバイスはパイロ検出器と記載されている。この検出器要素は、集電検出器要素である。これは、2つの電極層を含む層構造体を有し、集電感応材料を有する集電層がその電極層の間に配置されている。この材料は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。この電極は、例えば白金を含み、あるいは熱吸収クロム/ニッケル合金である。熱検出器要素は、シリコンでできた検出器支持体(シリコン・ウェハ)に接続される。検出器要素と検出器支持体の間の電気的および熱的絶縁を行うために、検出器要素と検出器支持体の間に絶縁層が配置される。この絶縁層は、排気された空洞を有し、検出器要素の領域、空洞の支持体層、ならびにこの支持体層および空洞の上のカバーを覆って延びる。支持体層はポリシリコンを含む。カバーは、ボロンリン・シリケート・ガラス(BPSG)でできている。検出器要素によって生成された電気信号を読み出し、処理し、かつ/またはさらに転送するために、読出し回路が検出器支持体に組み込まれる。この読出し回路は、CMOS(相補形金属酸化膜半導体)技術の応用によって生成される。
【0003】
熱放射検出用の比較可能なデバイスが、ドイツ特許出願公開第19525071A1号により知られている。その熱検出器要素もまた、上記のような集電検出器要素である。この検出器要素は、多層検出器支持体上に配置される。検出器要素は、その電極層の一方で、検出器支持体のシリコン層に付けられる。このシリコン層は、検出器支持体の電気絶縁膜上に配置される。この膜は、例えば三重の層、すなわちSi34/SiO2/Si34を含む。再び、この膜が検出器基板のシリコン基板に付けられる。このシリコン基板は、すべての実際的な用途のために集電検出器要素の面積と一致する面積がある放射窓(検出窓)を有する。この放射窓は、シリコン基板の開口である。そのために、基板の支持体材料(シリコン)は膜に至るまで除去される。熱放射は、放射窓を通って検出器要素に達し、評価できる電気信号をそこで生成する。その点に関し、膜は、熱放射を伝達する適切な手段を提供することが顕著である。検出器要素に対して横にずれたシリコン層内に、電気信号の読出し回路が集積化される。検出器支持体はまた、読出し回路の回路支持体としても機能する。
【0004】
既知の検出器の場合では、いくつかの検出器要素が設けられることがある(検出器アレイ)。そうした状況では、検出器要素のそれぞれからの電気信号が別々に読み出されることになる。通常、検出器要素それぞれの電極層との電気的接触は、ボンディング・ワイヤによって行われる。しかし、このことは、検出器要素の配線にかなりのスペースが必要とされ、その結果、検出器要素の集積密度(検出器支持体の単位面積当たりの検出器要素の数)が限定され相対的に低くなることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10004216A1号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第19525071A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術と比較してスペース要求が少ない熱放射検出用小型デバイスを明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するための熱放射検出用デバイスを説明する。このデバイスは、熱放射を電気信号に変換する少なくとも1つの熱検出器要素付きの少なくとも1つの検出器支持体を有するスタックと、電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出し回路を有する少なくとも1つの回路支持体と、検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバーとを、検出器支持体およびカバーが、検出器支持体の検出器要素とカバーの間に検出器支持体およびカバーと境界を接する少なくとも1つの第1のスタック空洞が設けられるように互いに配置され、回路支持体および検出器支持体が、検出器支持体と回路支持体の間に回路支持体および検出器支持体と境界を接する少なくとも1つの第2のスタック空洞が設けられるように互いに配置され、第1のスタック空洞および/または第2のスタック空洞が排気され、または排気することができるように、備える。
【0008】
さらに、この課題を解決するための、以下の手順ステップを用いて熱放射検出用デバイスを製造する方法を説明する。a)熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの熱検出器要素付きの少なくとも1つの検出器支持体を用意し、電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出し回路を有する回路支持体を用意し、検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバーを用意し、b)検出器支持体と回路支持体とカバーとを、検出器支持体が回路支持体とカバーの間に配置され、検出器支持体の検出器要素とカバーの間に検出器支持体およびカバーと境界を接する少なくとも1つの第1の中空スタック場所が設けられ、回路支持体および検出器支持体が、検出器支持体と回路支持体の間に回路支持体および検出器支持体と境界を接する少なくとも1つの第2の中空スタック場所を設けるように互いに配置され、かつ第1のスタック空洞および/または第2のスタック空洞が排気され、または排気することができるように、一緒に堅固に結び付けてスタックを形成する。
【0009】
本発明によれば、検出器支持体、回路支持体およびカバーを含む小型で省スペースの「サンドイッチ」構造体を実現することができる。検出器要素は、有害な環境の影響からカバーによって保護される。このような環境の影響には、例えばほこり、湿潤空気、または腐食性化学物質があり、これらは検出器要素の構成要素を腐食し、あるいは検出器要素の機能に悪影響を及ぼす。その評価回路は、例えばCMOS技術によって、回路支持体内に直接集積することができる。回路支持体が、検出器要素と接続するリード線を1本だけしか提供しないことも考えられる。このワイヤは検出器要素を、内部ASIC(Applied Specific Integrated Circuit、またはapplication−specific integrated circuit(特定用途向け集積回路))、または外部ASICと電気的に接続する。外部ASICはボンディングすることができる。外部ASICとの接触が「フリップチップ」技術(下記参照)を用いて行われるならば有利である。スタック空洞は、検出器要素が極めて確実に回路支持体およびカバーから熱的に分離されるようにする。
【0010】
検出されるべき熱放射は、1μmよりも長い波長を有する。この波長は、5〜15μmの範囲から選択されることが好ましい。熱検出器要素は、例えばゼーベック効果に基づく。熱検出器要素は集電検出器要素が好ましい。最初に説明したように、集電検出器要素は、集電感応材料を備えた集電層を、どちらかの面に電極材料を付けて含む。集電感応材料は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはジルコン酸鉛などのセラミックである。考えられる代替物として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの強誘電性ポリマーがある。電極層の電極材料は、例えば白金または白金合金とすることができる。クロム−ニッケル電極もまた、それが導電性酸化物の電極であるので考えられる。一般に、検出器要素は、縁部の長さが25μm〜200μmである長方形の領域を有する。
【0011】
熱放射を検出するのに用いられる作用とは関係なく、すべての場合で熱放射が、関連した作用を取り除く検出器要素を形成している熱感応材料によって、吸収される必要がある。この吸収は、熱感応材料によって直接行われる。しかし、熱放射が検出器要素の電極または電極層によって吸収されることも考えられる。さらに、熱放射が検出器要素に直近の吸収物によって吸収され、その後、このようにして捕捉された熱量が対流または伝導によって熱感応材料まで移されることもまたありうる。この吸収物はエネルギー伝達器として働く。
【0012】
例えば、吸収物は、コーティングの形で検出器要素に直接塗布される。
【0013】
熱放射検出用デバイス内のスタックは、熱放射が検出器要素に直接当たるように設計されることが好ましい。それを考慮して、特定の一実施形態では、検出器支持体、回路支持体および/またはカバーは、熱放射が検出器要素に照射することができるように、熱放射に対し適切な伝達性能を備えた少なくとも1つの放射窓を有する。この放射窓は、カバー、検出器支持体、および/または回路支持体に組み込まれる。検出器要素と放射窓は、検出器要素の照射が、検出器支持体に対し後ろ向きにされた検出器要素の前面で行われ(前面放射)、かつ/または検出器要素の方に向けられた検出器要素の後面から行われるように(後面照射)、互いに配置される。放射窓は、検出器要素の方向に特別な伝達能力を有する。その伝達率は可能な限り高く、例えば、少なくとも50%、具体的には70%からほぼ95%に達する。好ましい任意の材料を検出器支持体、回路支持体またはカバー用に使用することができる。半導体材料で、例えば元素のゲルマニウム、または異なる半導体化合物は、電気回路または構成要素の集積化の可能性があるので特に適している。特定の一実施形態によれば、回路支持体および/またはカバーはシリコンを含む。それぞれの場合で、シリコン基板がカバー、回路支持体、および検出器支持体として使用される。CMOS技術を使用して、選択された構造および機能を基板に組み込むことができる。シリコンは熱放射に対する吸収係数が低いので、さらに放射窓も非常に容易にシリコン基板に組み込むことができる。すなわちシリコン基板自体が放射窓を形成する。対応する機能をシリコン基板内に適切に配置することによって、熱放射が検出器要素に当たることが、妨げられないで、すなわち影がない状態で可能になる。
【0014】
伝達性能は、放射窓がつくられる材料の吸収係数だけでは決まらない。別の決定要因は、放射窓の厚さである。放射窓が、検出器支持体または回路支持体の薄くした領域を形成するならば有利である。特定の一実施形態では、検出器要素は、回路支持体の開口またはカバーの開口に対向するように配置される。回路支持体の開口もカバーの開口も、回路支持体またはカバーの厚さが相対的に薄い領域内にある。これらの領域では、回路支持体およびカバーは、例えば材料の除去により厚さが低減している。これらの開口は、回路支持体またはカバーに組み込まれた放射窓を形成し、この窓を通って熱放射が検出器要素に当たる。検出器要素は、それぞれの開口からいくらか遠ざけることが好ましい。カバーの開口は、検出器要素とカバーの間の第1のスタック空洞の構成要素部である。回路支持体の開口は、検出器支持体と回路支持体の間の第2のスタック空洞の構成要素部である。
【0015】
特定の一実施形態では、検出器支持体と回路支持体、および/または検出器支持体とカバーは、恒久材接合部、特に密閉形恒久材接合部によって一緒になるように堅固に結合される。検出器支持体と回路支持体の堅固な接合、および/または検出器支持体とカバーの堅固な接合を実現するために、恒久材接合部が製作される。この恒久材接合部は、排気することができるスタック空洞が形成されるように設計される。スタック空洞内に見出されるスタックの構成要素、例えば検出器要素は、密閉恒久材接合部によって環境から保護される。周囲の環境との物質の交換が起こる可能性はない。これによりデバイスは、侵略的な環境中で使用できるようになる。密閉恒久材接合部の故に、スタック空洞は排気することができる。これにより、検出される熱放射に対する感度が高まる。
【0016】
検出器支持体とカバーの間、および検出器支持体と回路支持体の間の各恒久材接合部は、連続して、または同時に作製することができる。それぞれの恒久材接合部は、任意の好ましい材料、例えば接着剤で形成することができる。恒久材接合部を所定の場所に入れるのと同時に、検出器要素の電極層と読出し回路の間に導電接続部を挿入することが特に有利である。そのために、特定の一実施形態では、恒久材接合部は導電材料を有する。これは、特に、回路支持体と検出器支持体と回路支持体の間の恒久材接合部に関連する。しかし、導電機能を有する恒久材接合部は、それがカバーと検出器要素の間に配置された場合、検出器要素の配線構成要素がカバー内に組み込まれるならば、有利なことがある。
【0017】
恒久材接合部の製作のためにあるのが、いわゆる「フリップチップ」技術である。これによって、構築および接続の技術に関連するアセンブリ方法(AVT)が理解され、何にもましてエレクトロニクスの分野で、ハウジングのない形態の半導体マイクロチップまたは集積回路とで接点を製作するのに効果的であることが実証されている。フリップチップ技術を用いて、接続ワイヤが全くないチップが、活性接触面を下方(回路支持体)に向けて基板上に直接実装される。恒久的な固定は、導電材料でできたいわゆる「バンプ」を用いて行われる。このため、リード長が非常に短かくなる。これは本発明で使用され、小型アセンブリということになる。さらに、リード長が非常に短かい結果、読み出されるべき電気信号に干渉する、望ましくない分散誘導および分散容量の影響が最小限まで低減される。この影響が、相対的に少数の検出器要素が接続されるべき場合に特に有利に作用する。さらに、フリップチップ技術の助けにより、いくつかの電気接続を同時に行うことができ、その結果、コストおよび時間が極めて大幅に節減されることになる。
【0018】
「フリップチップ」技術を実施し、結果として恒久材接合部の製作を実施するのに別の技法を用いることもできる。特定の一実施形態では、接着、ハンダおよび/またはボンディングの各方法を含む群のうちの1つを選択して使用することができる。その場合、接着接合または共晶接合の両方が考えられる。ハンダ付けの場合では、ハンダ・バンプ(ハンダ球)が、支持体フィーチャの一方または両方、あるいは一緒に結合されるべきデバイスの構成要素に付けられる。列記したこれらの方法は、接着と比べて好ましい。というのは、接着が使用された場合には有機物質(溶剤、接着材料など)のガス放出が起こりうるからである。特に空洞の排気に関連して、これは念頭においておくべき要素である。それでもやはり、接着剤の使用に頼ることが必要、あるいは有利なこともある。
【0019】
接着剤を使用する場合は、いくつかの異なるオプションが利用可能である。すなわち接着は、導電性ではない接着剤を使用することによって行うことができる。その場合、バンプは、適切な支持体フィーチャの接触領域に付けられる。バンプは、例えばアルミニウムまたは金を含む。接着剤の層が支持体に付けられた後、適切な要素が接着剤層の上に配置される。それが乾燥すると、接着剤が収縮して電気接点を形成する。
【0020】
別法として、異方性導電接着剤を使用することもできる。異方性導電接着剤は、導電性粒子の含有量が少ない非導電接着剤を含む接合材料である。この異方性導電接着剤は、支持体フィーチャの接触領域の上に配置される。導電性粒子は、その含有量が少ないために、接着剤が塗布された後では互いに接触しない。導電接触は行われない。対象物が所定の場所に配置されると、その非導電接着剤が、支持体フィーチャの接触領域と塗布物の接触領域との間の粒子が一緒になるまで圧縮され、それによって、これらの接触領域の間に導電結合部が生成される。
【0021】
この方法の特定の一実施形態によれば、堅固な付着が行われる間、かつ/または行われた後に第1のスタック空洞および/または第2のスタック空洞が排気される。例えば、スタックの各構成要素部の間の恒久材接合部の製作が、真空のもとで行われる。恒久材接合部が形成されるときに、関連するスタック空洞が排気される。空洞スタックがまず形成され、次いで引き続き排気されることもまた考えられる。ここで、各スタック空洞は1つずつ、または同時に排気できることにも注意されたい。同時排気の場合では、各スタック空洞は、等圧の状態のもとで接続することができる。これは、両スタック空洞内に同じ圧力が存在することを意味する。
【0022】
デバイスは、単一の検出器要素を有することができる。しかし、デバイスが、存在記録装置として、または特に熱感応カメラとして使用されることを考慮すると、複数の検出器要素が設けられることが望ましく、また必要でさえある。したがって、特定の一実施形態では、複数の検出器要素を備えた少なくとも1つのアレイが用意される。これは、1つの検出器要素がアレイ内の1つのピクセルであることを意味する。この検出器アレイは、例えば、検出器要素の縦の段になった配列および/または直線的な配列によって特徴付けられる。直線的なまたは縦の段になった配列の場合では、検出器要素は、特定の方向に1次元で分布する。縦の段になった配列と直線的な配列の場合では、その分布は2次元的なものになる。その検出器アレイは、例えば240×320の個別要素を含む。これは、比較的低い解像度規格のQVGAに対応する。検出器要素の領域型分布を選択することもまた考えられる。放射窓は、各検出器要素ごとに設けることができる。しかし、デバイスがいくつかの検出器要素またはすべての検出器要素に対して単一の放射窓を有すれば有利である。こうすると、デバイスの製造を簡単にすることができる。
【0023】
別の実施形態によれば、このデバイスはケーシング・フィーチャを有する。スタックは、ケーシング内に配置される。このケーシングは、有害な環境の影響、例えば湿気から、また機械的損傷からもスタックおよびその構成要素部品を保護する。ここで保証されるべき1つの要点は、検出器要素の上にくる放射にケーシングが悪影響を及ぼさないことである。そのために、熱放射の高い伝達率を可能にする放射窓がケーシングに組み込まれる。
【0024】
ケーシングは、任意の選択された材料でできたハウジングを含むことができる。このハウジングは、キャスティング・コンパウンドであることが好ましい。このケーシングを得るために、射出成形法または成形法の群のうちの1つを用いることができる。これらの方法は、コストの理由で特に有利である。この方法は、架橋していない、または部分的に架橋した合成材料をスタックに加えることを含む。次に、この合成材料は熱誘導され、あるいは紫外光に露光することによって硬化される。放射窓を組み込むために、例えばマスクが使用され、これは、合成材料が所定の場所に置かれてから、またはその材料が硬化された後に除去される。これは、例えば、ばね留め挿入物を装着した移動金型を使用して実施される。熱放射に対し高い伝達率を有し、合成材料が所定の場所に置かれて硬化された後にケーシング内に残る材料から製作された放射窓を使用することもまた考えられる。
【0025】
説明した方法は、熱放射検出用の単一デバイスを製造するのに用いることができる。しかし、複数のデバイスが同時に並行して製造されるならば有利である。こうした製造は有効である。したがって、特定の一実施形態では、熱放射検出用のいくつかのデバイスがウェハ・レベルで製造される。製造が完了したときに、デバイス、またはデバイスのスタックが分離される。3つの支持体フィーチャ、すなわち検出器支持体、回路支持体、およびカバーは、適切な構成要素および機能をそれぞれが有するウェハとして、特にシリコン・ウェハとして、サンドイッチ構造の形で上記のように一緒にされる。各スタックは、ケーシングを付けた後、または好ましくは付ける前に、互いに分離される。この分離または分割は、例えば鋸引き、腐食、または同様な方法によって行われる。分離が完了すると、ケーシングがデバイスの各スタックに付けられる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、このデバイスは、動き報知器、存在報知器として、かつ/または熱画像カメラとして使用される。動き報知器では、単一の検出器要素を備えたデバイスが適切なことがある。存在報知器では、デバイスに複数の検出器要素が装着されることがある。熱画像カメラでは、デバイスは、多数の検出器要素、例えば(QVGA規格に適合するのに)240×320の検出器要素を必要とする。これは、簡単で省スペースの配線技法を検出器要素に用いることによって実現することができる。
【0027】
要約すると、本発明について以下の利点を特定することができる。
・熱放射検出用デバイスが小型である。
・サンドイッチ構造により、いくつかの検出器要素を省スペースで接続することができる。
・検出器要素の電極と、その割り当てられた読取り回路または読取り要素との間の電気リード線が短かい。検出器要素の検出能力に影響を及ぼす干渉を招く誘導性および容量性効果が、ボンディングされたワイヤと比べて明らかに低減される。
・接触を行う方法によって、高度の並行化を製造作業に導入することが可能である。
・密閉恒久材接合部により、排気することができてデバイスの感度を改善し検出器要素を保護することになる空洞へのアクセスが簡単である。
【0028】
例示的な実施形態および添付の図を参照して、熱放射検出用デバイスを提示する。図は概略的なものであり、原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】熱放射検出用デバイスの断面図である。
【図2A】図1に示された熱放射検出用デバイスの、断面B−Bに沿ってカバーの方を見た図である。
【図2B】図1の熱放射検出用デバイスの、断面A−Aに沿って検出器支持体の方を見た図である。
【図2C】図1の熱放射検出用デバイスの、断面A−Aに沿って回路支持体の方を見た図である。
【図3】検出器支持体上の検出器要素を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
熱放射の検出用デバイス1は、熱放射を電気信号に変換するための検出器要素111からなる検出器アレイ110付きの検出器支持体11を備えたスタック10と、電気信号を読み出すための読出し回路121付きの回路支持体12と、検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバー13とを、検出器支持体およびカバーが、検出器支持体の検出器要素とカバーの間に検出器支持体およびカバーと境界を接する第1のスタック空洞14がスタック内で検出器支持体の検出器要素とカバーの間にあるように互いに配置され、回路支持体および検出器支持体が、検出器支持体と回路支持体の間に検出器支持体および回路支持体と境界を接する少なくとも1つの第2のスタック空洞15があり、第1のスタック空洞および/または第2のスタック空洞が排気されるように、有する。
【0031】
検出器要素は、2つの電極層112と、電極層の間に配置された集電層113とを有する薄い層構造体の集電検出器要素である(図3)。集電層は、集電感応性の約1μm厚のPZTの層である。電極層は、白金および約20nm厚のクロムニッケル合金でできている。
【0032】
読出し回路は、ASICの形態で回路支持体上に配置される読出し要素122を有する。図示していない実施形態によれば、読出し要素は、回路支持体に組み込まれる。
【0033】
検出器支持体、回路支持体およびカバーはシリコン基板である。検出器要素は、回路支持体の開口124に対向する第2のスタック空洞内に配置される。回路支持体の開口の領域内に共通放射窓17が配置され、この窓を通して放射が検出器要素に当たる。放射は前面から通過する。図示していない一代替実施形態によれば、放射は後面から現れる。そのため、適切な放射窓がカバーにも検出器支持体にも設けられる。
【0034】
カバー14の開口131が設けられる。しかし、このカバー開口は、図1に見える点線で示したように、必ずしも必要ではない。
【0035】
検出器支持体とカバーも、検出器支持体と回路支持体も、すべて密閉恒久材接合部16によって一緒になるように堅固に接合される。第1の実施形態によれば、恒久材接合部はハンダ材料を含む。別法として、恒久材接合部はボンディングによって生成される。各支持体(シリコン基板)は、接着剤によって一緒になるように結合される。
【0036】
電気接続部123が恒久材接合部によって、回路支持体と検出器支持体の間に作製されるべき検出器要素に用意される。検出器要素からの電気信号は、配線または読出し回路から読み出される。別法として、配線はフリップチップによって生成される。
【0037】
恒久材接合部の製作中に、生成される空洞中に負圧が発生するように真空が加えられる。スタック内の空洞は、それらが形成される間に排気される。別法として、スタック内の空洞は、恒久材接合部が生成された後に排気される。
【0038】
スタックが生成されると、それにケーシング20が設けられる。非架橋合成材料が、射出成形技法によってスタックに塗布され、その後それが架橋する。別法として、成形技法を用いることができる。その場合、カバー内の放射窓が空いたままであること、すなわち窓が覆い尽くされていないことを保証するように注意しなければならない。
【0039】
このデバイスを製造するために、検出器アレイを有する検出器支持体、読出し回路を有する回路支持体、およびカバーが準備され、一緒になるように上記と同様に堅固に接続される。製造の次の段階がウェハ・レベルで実施される。シリコン・ウェハには、いくつかの適切な機能(検出器アレイ、読出し回路、カバー開口)が設けられる。検出器支持体、回路支持体、およびカバーは、ウェハ・レベルで準備される。これら機能化された各シリコン・ウェハは、一緒になるように上記と同様に堅固に接続される。いくつかの個別スタックを含むウェハ・スタックが生成される。接続作業が終了した後、各個別スタックは、ウェハ・スタックを鋸引きすることによって分離され、次に、それらのそれぞれにケーシングが設けられる。
【0040】
このデバイスには、動き検出器または存在検出器での応用が見出される。熱画像カメラに応用する場合には、複数のスタックが用意され、あるいはそれぞれのデバイスが1つのスタックを有する複数のデバイスが用意される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱放射を検出するデバイス(1)であって、
前記熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの検出器要素(11)と、
前記電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出し回路(121、122)付きの少なくとも1つの回路支持体(12)と、
前記検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバー(13)とを有するスタック(10)を備え、
前記検出器支持体が前記回路支持体と前記カバーの間に配置され、
前記検出器支持体および前記カバーが、前記検出器支持体の前記検出器要素と前記カバーの間に前記検出器支持体および前記カバーと境界を接する少なくとも1つの第1のスタック空洞(14)が設けられるように互いに配置され、
前記回路支持体および前記検出器支持体が、前記検出器支持体と前記回路支持体の間に前記回路支持体および前記検出器支持体と境界を接する少なくとも1つの第2のスタック空洞(15)が設けられるように互いに配置され、
前記第1のスタック空洞および/または前記第2のスタック空洞が排気され、または排気することができる、デバイス。
【請求項2】
前記検出器支持体、前記回路支持体、および/または前記カバーが、前記熱放射を前記検出器要素に照射するための前記熱放射の特定の伝達機能がある少なくとも1つの輻射窓(17)を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記検出器支持体、前記回路支持体および/またはカバーがシリコンを有する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記検出器要素が、前記回路支持体の開口(124)に対向して、または前記カバーの開口(131)に対向して配置される、請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記検出器支持体と前記回路支持体、および/または前記検出器支持体と前記カバーが恒久材接合部(16)によって、特に密閉形恒久材接合部によって接続される、請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記恒久材接合部が導電材料を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
複数の検出器要素を有する少なくとも1つの検出器アレイ(110)が設けられる、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記スタックがケーシング(20)を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記ケーシングが鋳造塊を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
熱放射検出用デバイスを製造する方法であって、以下の
a)熱放射を電気信号に変換するための少なくとも1つの熱検出器要素(111)付きの少なくとも1つの検出器支持体(11)を用意し、
前記電気信号を読み出すための少なくとも1つの読出し回路(121)付きの少なくとも1つの回路支持体(12)を用意し、かつ
前記検出器要素を遮蔽するための少なくとも1つのカバー(13)を用意する手順ステップと、
b)前記検出器支持体と前記回路支持体と前記カバーとを堅固に接合してスタック(10)を形成する手順ステップとを含み、
前記検出器支持体が前記回路支持体と前記カバーの間に配置され、
前記検出器支持体および前記カバーが、前記検出器支持体の前記検出器要素と前記カバーの間に前記検出器支持体および前記カバーと境界を接する第1のスタック空洞(14)が設けられるように互いに配置され、
前記回路支持体および前記検出器支持体が、前記回路支持体と前記検出器支持体の間に前記回路支持体および前記検出器支持体と境界を接する少なくとも1つの第2のスタック空洞(15)が設けられるように互いに配置され、
前記第1のスタック空洞および/または前記第2のスタック空洞が排気され、または排気することができる、方法。
【請求項11】
恒久材接合部が、前記検出器支持体と前記回路支持体の堅固な接合を確保するために、かつ/または前記検出器支持体と前記カバーの堅固な接合を確保するために生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
恒久材接合部を製作するための方法が、接着、ハンダ付けおよび/または接合の技術を含む群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記堅固な接合の作業の間、および/または後に前記第1のスタック空洞および/または前記第2のスタック空洞が排気される、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ケーシング(20)が前記スタックの周りに配置される、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記恒久材接合部を所定の場所に配置するための方法が、射出成形または成形を含む群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
いくつかの熱放射検出用デバイスがウェハ・レベルで製造され、その製造が完了したときに個別デバイスが互いに分離される、請求項10から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項1から9の一項によるデバイスの動き検出器、存在検出器および/または熱画像カメラとしての使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528301(P2010−528301A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509729(P2010−509729)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004247
【国際公開番号】WO2008/145354
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509328283)
【氏名又は名称原語表記】PYREOS LTD.
【住所又は居所原語表記】West Mains Road EH9 3JF,Edinburgh United Kingdom
【Fターム(参考)】