説明

サンプルホールド回路

【課題】S/N比を向上させたサンプルホールド回路を提供すること。
【解決手段】入力電圧を入力する入力端子と、入力電圧に基づいたサンプリング電圧をホールドする複数の容量と、入力端子と記複数の容量との間に夫々接続された複数の入力スイッチと、複数の容量のホールド電圧を出力する出力端子と、を備え、複数の容量は、複数の入力スイッチによって異なるタイミングで入力電圧をサンプリングし、複数の容量のホールド電圧の平均化処理を行って出力端子に出力する、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧をサンプリングし、そのサンプリング電圧に基づいた電圧をホールド出力するサンプルホールド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯通信機器などで、データ信号を保持する為に、サンプルホールド回路が使われている。この様なサンプルホールド回路としては、入力電圧に応じた電荷を、スイッチで充放電することによりサンプリングし、ホールド出力するものが、よく知られている。
(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のサンプルホールド回路を示す構成図である。従来のサンプルホールド回路は、スイッチ301と、容量302を備えている。サンプルホールド回路、スイッチ301がオン状態のときには、入力電圧Vsに応じた電荷を、容量302にサンプリングする。そして、スイッチ301がオフ状態のときに、そのサンプリング電圧Vsをホールド出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−224496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし入力電圧は、本来必要な信号成分のみならず、不要なノイズ成分、例えば熱雑音などが重畳されることが多い。この為、従来のサンプルホールド回路は、S/N比が悪くなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の様な問題点を解決するために考案されたものであり、S/N比を向上させたサンプルホールド回路を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンプルホールド回路は、入力電圧をサンプリングし、そのサンプリング電圧に基づいた電圧をホールド出力するサンプルホールド回路であって、前記サンプルホールド回路は、複数の容量と複数のスイッチを備え、前記複数のスイッチが互いに他と異なるタイミングにて、オンオフ制御される、ことを特徴とするサンプルホールド回路、とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明のサンプルホールド回路によれば、入力電圧に重畳される不要なノイズ成分の影響を少なくしホールド出力することが出来、S/N比を向上させたサンプルホールド回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のサンプルホールド回路を示す回路図である。
【図2】本実施形態のサンプルホールド回路の入力電圧のサンプリングの一例を示す図である。
【図3】従来のサンプルホールド回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態のサンプルホールド回路を示す回路図である。
本実施形態のサンプルホールド回路は、スイッチ101と、スイッチ102と、スイッチ103と、容量104と、容量105を備えている。入力端子INは、スイッチ101を介して容量104の一方の端子に接続され、スイッチ102を介して容量105の一方の端子に接続される。出力端子OUTは、容量104の一方の端子に接続され、スイッチ103を介して容量105の一方の端子に接続される。容量104と容量105の他方の端子は、接地端子に接続される。スイッチ101から103は、例えばMOSスイッチで構成される。
【0011】
以下に、本実施形態のサンプルホールド回路の動作について説明する。ここで、電圧Vsは信号成分、電圧V1及びV2はノイズ成分である。
【0012】
先ず、第一のタイミングでスイッチ101がオン、スイッチ102とスイッチ103がオフされる。入力端子INの入力電圧Vinは、電圧Vs+V1なる値として容量104に保持される。次に、第二のタイミングでスイッチ102がオン、スイッチ101とスイッチ103がオフされる。入力端子INの入力電圧Vinは、電圧Vs+V2なる値として容量105に保持される。即ち、スイッチ101とスイッチ102は、異なるタイミングで入力電圧Vinを容量104と容量105にサンプリングする。
【0013】
次に、スイッチ103がオン、スイッチ102とスイッチ103がオフされる。即ち、容量104と容量105がショートされ、即ち並列接続されるので、出力端子OUTには、容量104の電圧と容量105の電圧が平均された電圧Voutが出力される。
【0014】
ここで、容量104の容量値をC104、容量105の容量値をC105とすると、電圧Voutは以下の式(1)で求められる。
【0015】
Vout=
{C101×(Vs+V1)+C102×(Vs+V2)}/(C101+C102)=
Vs+{(C101)×V1+(C102)×V2}/(C101+C102)・・・(1)
C101=C102であるとすれば、式(1)は下記の通り表記できる。
【0016】
Vout=Vs+(V1+V2}/2・・・(2)
電圧V1及びV2は異なるタイミングでサンプリングされたノイズ成分であるから、これをサンプリング回数2で除算している第2項は、ノイズ成分を時間平均したものである。
【0017】
図2は、本実施形態のサンプルホールド回路の入力電圧のサンプリングの一例を示す図である。入力電圧Vinは、信号成分の電圧Vsに不要なノイズ成分の電圧Vnが重畳されている。電圧Vnは、様々な無秩序なノイズ成分、例えば熱雑音や外来ノイズなどに起因するものである。従って、充分に時間平均すれば値をゼロに近づけることが出来る。
【0018】
上述の本実施形態のサンプルホールド回路の動作説明において、第一のタイミングがt1であり、第二のタイミングがt2である。図から入力電圧Vinは、第一のタイミングt1で電圧Vs+V1であり、第二のタイミングt2で電圧Vs+V2ある。そして、これらのホールドした電圧を、図示しない第三のタイミングで、出力端子OUTに式(2)で示される電圧Voutで出力する。ここで、ノイズ成分である式(2)の第2項は、充分に時間平均すれば値がゼロになるので、電圧Voutは信号成分である電圧Vsに近い値となる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のサンプルホールド回路は、二つの容量104と105を備えて、入力電圧Vinを異なるタイミングでサンプルホールドし、平均して出力することにより、入力電圧Vinに重畳される不要なノイズ成分Vnの影響を少なくすることが出来る。即ち、S/N比を向上させたサンプルホールド回路を提供することが可能である。
【0020】
なお、本実施形態のサンプルホールド回路では、二つの容量103及び104と、それに対応したスイッチ102及び103を備えた構成として説明したが、三つ以上の容量とスイッチを備えても良い。また、スイッチ103で容量104と容量105をショートすることにより、ホールドした電圧を時間平均したが、この形態に限定されるものではない。例えば、スイッチ103を備えず、容量103と容量104の電圧をそれぞれマイコンに入力し、マイコンで平均化計算をしても良い。 また、各スイッチをMOSスイッチであるとして説明したが、この形態に限定されるものではない。
【0021】
また、複数のサンプルホールドのタイミングを発生する手段は、特に限定されるものではない。例えば、入力されたクロック信号を分周するカウンタ回路が発生してもよく、また例えば、複数の遅延回路を備え、入力されたパルス信号から複数の遅延回路が発生してもよい。
【符号の説明】
【0022】
101、102、103、301 スイッチ
104、105、302 容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を入力する入力端子と、
前記入力電圧に基づいたサンプリング電圧をホールドする複数の容量と、
前記入力端子と前記複数の容量との間に夫々接続された複数の入力スイッチと、
前記複数の容量のホールド電圧を出力する出力端子と、を備えたサンプルホールド回路であって、
前記複数の容量は、前記複数の入力スイッチによって異なるタイミングで入力電圧をサンプリングし、
前記複数の容量のホールド電圧の平均化処理を行って前記出力端子に出力する、ことを特徴とするサンプルホールド回路。
【請求項2】
更に、前記出力端子と前記複数の容量との間に夫々接続された複数の出力スイッチを備え、
前記複数の出力スイッチによって前記複数の容量を並列接続して、ホールド電圧の平均化処理をする、ことを特徴とする請求項1に記載のサンプルホールド回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−133853(P2012−133853A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286750(P2010−286750)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】