サーマルプリンタ
【課題】サーマルプリンタにおいて、全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くする。
【解決手段】サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路上であって、サーマルプリントヘッド41の一部を覆うヘッドカバー部51に、用紙経路を送られる感熱紙200に押し当てられるダンパー部52が、一体的に設けられている。
【解決手段】サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路上であって、サーマルプリントヘッド41の一部を覆うヘッドカバー部51に、用紙経路を送られる感熱紙200に押し当てられるダンパー部52が、一体的に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンタに関し、詳細には、サーマルプリントヘッドに至る用紙(感熱紙)に張力を付与するダンパーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、用紙収容室に収容された用紙(感熱紙)を、サーマルプリントヘッドの位置まで送り、このサーマルプリントヘッドによって用紙に感熱印刷を行うものであるが、印刷時には、用紙に適切な張力を作用させて用紙を適度に張った状態とする必要がある。
【0003】
このため、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとの間の用紙の搬送経路上にダンパーが設けられて、サーマルプリントヘッドに送られる用紙の表面に、このダンパーを押し当てることで、用紙に適切な張力を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−052613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この先行技術文献に開示された技術は、本体側にプラテンローラと用紙収容室とが設けられ、この本体に対して開閉する蓋体側に、サーマルプリントヘッドとダンパーとが設けられて、蓋体を閉じたときに、用紙収容室からサーマルプリントヘッドおよびプラテンローラに至る経路上の用紙に、ダンパーが押し付けられるが、ダンパーは単独で蓋体に配設されているため、用紙収容室からもサーマルプリントヘッドからも離れた位置となり、この結果、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとの間にある程度の長さの間隔を確保する必要がある。
【0006】
すると、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとが並ぶ前後方向(用紙の送り方向)に沿った装置(サーマルプリンタ)全体の長さを短くすることができず、装置を小型化するのは困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサーマルプリンタは、ダンパーを、サーマルプリントヘッドの直近に配設されたヘッドカバーと一体的に設けて、ダンパーとサーマルプリントヘッドとの距離を短くするとともに、用紙収容室をサーマルプリントヘッドに近付けた構成とし、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向(用紙紙の送り方向)の長さを短くしたものである。
【0009】
すなわち、本発明に係るサーマルプリンタは、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路上であって、前記サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーに、前記用紙経路を送られる用紙に押し当てられるダンパーが、一体的に設けられたことを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーは、このサーマルプリントヘッドの直近に配置されたものとなり、このため、ヘッドカバーはサーマルプリントヘッドの直近に配置されている。
【0011】
そして、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路を送られる用紙に押し当てられて、この用紙に所定の張力(テンション)を付与するダンパーは、このヘッドカバーと一体的に設けられているため、ダンパーをサーマルプリントヘッドの直近に配置することができる。
【0012】
したがって、用紙収容室をダンパーに近付けてサーマルプリントヘッドと用紙収容室とを近くに配置した構成を採用することができ、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができる。
【0013】
また、ダンパーはサーマルプリントヘッドに近接した構成となるため、サーマルプリントヘッドとの間での寸法精度を向上させやすい。
【0014】
さらに、ヘッドカバー自体が本体や蓋体から着脱自在の構成であるときは、ダンパーもヘッドカバーとともに着脱可能となるため、ダンパーの機能を発揮するバネ等の弾性部材が疲労等によりヘタリが生じた場合にも、バネの交換作業を行い易い。
【0015】
なお、ヘッドカバーは、サーマルプリントヘッドの一部を覆うとともに用紙をサーマルプリントヘッドに向けて円滑に案内するガイド機能を発揮するものであってもよい。
【0016】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記用紙収容室は、ロール状に巻回されたロール紙を前記用紙として収容するものであり、前記ダンパーは、前記ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、前記ヘッドカバーに対して回動可能に軸支されたダンパー板と、前記回動可能の範囲の一方の回転方向に向けて前記ダンパー板を付勢する回動付勢部材とを備え、前記ダンパー板の、前記回動付勢部材の付勢方向に向いた面に前記用紙が接するように、前記ダンパーは前記用紙経路に配置されることが好ましい。
【0017】
サーマルプリンタに用いる用紙としてのロール紙は、その最外周の部分から引き出されて使用されるものであるが、使用開始直においてはそのロール径は大きいが、残り少なくなった状態ではそのロール径が小さくなる。
【0018】
そして、本発明のサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドと用紙収容室とを近くに配置した構成を採用することができるため、このような構成を採用した場合、ロール紙の径が最も大きい未使用状態において、そのロール紙の最外周の直近にダンパーが配置されることとなる。
【0019】
その結果、ロール紙の用紙がロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバーとを結ぶ線分(ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分であって、ダンパーによって押圧される部分)と、ヘッドカバーの用紙案内面(略平面)との間の角度は、ロール紙の用紙の残量に応じて大きく変化する。
【0020】
このように、ロール紙を用いて、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間にダンパーが配置され、かつ、サーマルプリントヘッドと用紙収容室とが近接して配置されたものでは、ロール紙の用紙の残量に応じた上記角度の変化量は、角度90[deg]程度まで生じることもある。
【0021】
このようなものでは、ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分の向きが大きく変化するため、直線上の一方向に沿って押圧する構成のダンパーでは、その押圧力を用紙に適切に負荷させることができない。
【0022】
しかし、本発明に係る好ましい構成のサーマルプリンタによれば、用紙に押圧力を負荷させるダンパー板が、ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、ヘッドカバーに対して回動可能であるため、ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分の向きが角度90[deg]程度変化しても、回動することで、その向きの変化に追従するため、回動付勢部材による付勢力(押圧力)を、用紙の残量の多少に拘わらず、用紙に対して適切に押圧力を作用させ続けることができる。
【0023】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記ヘッドカバーは、前記用紙経路を通過する前記用紙を検出する用紙検出機構を備えていることが好ましい。
【0024】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、用紙検出機構をヘッドカバーに設けた構成であるため、用紙検出機構を独立して他の部位に設ける必要がなく、したがって、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路に、用紙検出機構を独立して設けた構成のサーマルプリントヘッドよりも、全体の大きさをさらに小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向(用紙の送り方向)の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタを示す外観図(通常の使用時の状態)である。
【図2】図1に示したサーマルプリンタの蓋体を開位置に移動した状態を示す図である。
【図3】図2の状態から感熱紙を除去した状態を示す図である。
【図4】蓋体のカバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットおよびヘッドカバーダンパーユニットが取り付けられている状態を示す図である。
【図5】(a)はカバーフレームからヘッドカバーダンパーユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたヘッドカバーダンパーユニットを示す図である。
【図6】ヘッドカバーダンパーユニットの詳細構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は矢視Aによる側面図であってバネが伸びた状態を示す図、(c)は矢視Aによる側面図であってバネが縮んだ状態を示す図である。
【図6A】感熱紙の送り方向に沿った、サーマルプリントヘッドと用紙収容部とダンパー部との位置関係を表す図である。
【図7】(a)はカバーフレームからさらサーマルプリントヘッドユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたサーマルプリントヘッドユニットを示す図である。
【図8】図7のB−B線に沿った要部断面を示す図であり、(a),(b),(c),(d)の順に、カバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットを取り付ける過程を示す。
【図9】カバーフレームに取り付けられたサーマルプリントヘッドユニットの幅方向について上下に傾く様子を示す図であり、(a)は図5(a)相当の図、(b)は(a)の矢視Cによる図であって上下に傾いていない状態、(c)および(d)は(a)の矢視Cによる図であって幅方向のいずれか一方が上下した状態をそれぞれ示す。
【図10】図1において蓋体の外装(樹脂製)が取り外された状態を示す斜視図である。
【図11】段付きピン調整部を示す図であり、(a)は図10に示したカバーフレームよりも外方から臨んだ図であり、(b)は蓋体を開位置に移動した状態でカバーフレームよりも内方から臨んだ図である。
【図12】段付きピン調整部の位置(厚さの薄い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図13】段付きピン調整部の位置(厚さの厚い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図14】プラテンローラユニットが取り付けられる本体フレームを示す斜視図である。
【図15】本体フレームから取り外されたプラテンローラユニットを示す斜視図である。
【図16】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Dによる図、(b)は図15の矢視Eによる図である。
【図17】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Fによる図、(b)は(a)のG部詳細を示す図である。
【図18】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その1)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図19】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その2)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図20】プラテンローラユニットの位置決め切欠きにサーマルプリントヘッドユニットの突起が係合した状態を示す要部透視図である。
【図21】サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとが互いに係合して位置決めされている状態におけるサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図である。
【図22】発熱素子列とプラテンローラとの接点の間に感熱紙が進入してくる状態を示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【図23】感熱紙とサーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列との接点を示す詳細図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るサーマルプリンタの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタ100を示す外観図であり、通常の使用時の状態を示すものである。このサーマルプリンタ100は、図2に示すように、本体11の後端部を回転中心として上方から後方に回動して開放される蓋体12を備えている。
【0029】
この蓋体12は、図示を略したコイルバネにより図2に示す開位置に付勢されており、図示を略した本体11のフックが蓋体12に引っ掛けられることによって、蓋体12はコイルバネによる付勢力に抗して、図1に示した閉位置に保持される。
【0030】
この本体11のフックは、蓋体に設けられたレバー13を図1の矢印方向(図1において上方向)に押すことにより、蓋体12から外れ、これにより蓋体12はコイルバネの付勢力で図2の開位置に変位する。
【0031】
蓋体12が開位置に移動した図2に示すように、このサーマルプリンタ100の用紙収容部14(用紙収容室)には、このサーマルプリンタ100によって印刷される媒体である、ロール状に巻回された感熱紙200(用紙、ロール紙)が収容されている。図3は、この感熱紙200を取り除いた状態を示す図である。
【0032】
用紙収容部14の幅方向の所定位置には、着脱可能の略半円板状の仕切り板16(図3において二点鎖線で表示)を配設保持する仕切り板保持溝15が形成されている。
【0033】
この仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させた状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から仕切り板16の面までの狭い幅W2(図3参照)となって、この狭い幅W2の感熱紙200を用いることができ、一方、仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させない状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から他方の側壁面までの広い幅W1(図3参照)となって、この広い幅W1の感熱紙200を用いることができる。
【0034】
すなわち、仕切り板16の着脱に応じて、使用する感熱紙200の幅を選択することができる。
【0035】
また、本体11には、プラテンローラユニット20とカッターユニット30とが、それぞれ本体11に対して着脱可能に設けられている。
【0036】
これらプラテンローラユニット20およびカッターユニット30は、いずれも矢印方向(図3において上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向))に引き上げられることにより、本体11から取り外される。なお、プラテンローラユニット20の詳細な取り付け状態については後述する。
【0037】
一方、蓋体12には、サーマルプリントヘッドユニット40とヘッドカバーダンパーユニット50とが、蓋体12に対して着脱可能に設けられている。
【0038】
そして、蓋体12を閉位置に移動させた状態において、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42(後述)がプラテンローラユニット20のプラテンローラ21(後述)に接し、蓋体12を閉位置から開位置方向に移動させた状態において発熱素子列42とプラテンローラ21とが離れるように構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態のサーマルプリンタ100は、その外装が樹脂によって形成されているが、その骨格部は金属のフレームで形成されており、サーマルプリントヘッドユニット40およびヘッドカバーダンパーユニット50は、蓋体12の骨格部であるカバーフレーム17に、工具無しの手作業で着脱可能に取り付けられている。
【0040】
すなわち、図4に示すように、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられて、そのサーマルプリントヘッドユニット40の一部を覆うように、ヘッドカバーダンパーユニット50がカバーフレーム17に取り付けられている。
【0041】
ヘッドカバーダンパーユニット50は、サーマルプリントヘッドユニット40のサーマルプリントヘッド41の一部(例えば、ICカバー部42a:図4、図5(a)参照)を覆って保護するヘッドカバー部51(ヘッドカバー)と、感熱紙200に押圧力(付勢力)を作用してテンションを与えるダンパー部52(ダンパー)とが一体的に構成されたものである。
【0042】
ここで、ヘッドカバー部51の両側部には、それぞれ弾性腕部51a,51aが形成され、これら弾性腕部51a,51aにはそれぞれ突起51b,51bが形成されていて、これらの突起51b,51bが、カバーフレーム17の所定位置にそれぞれ形成された係止孔17a,17aにそれぞれ嵌ることにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17に取り付けられている。
【0043】
そして、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形されると、各係止孔17a,17aから各突起51b,51bが離脱し、これにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17から取り外され(図5参照)、工具無しの手作業だけでの取り外しが可能となっている。
【0044】
カバーフレーム17から取り外されたヘッドカバーダンパーユニット50のヘッドカバー部51は、図6に示すように、サーマルプリントヘッド41とプラテンローラ21との間に感熱紙200を円滑に送るための、略平面の用紙案内面51eを備えている。
【0045】
また、ヘッドカバー部51には、その用紙案内面51eにおいて光を検出するフォトセンサ51cと用紙検出レバー逃がし孔51d (図5(b)参照)とが設けられている。
【0046】
ここで、本体11には、蓋体12が閉じられた状態のとき、フォトセンサ51cに対向する部分に光源11aが設けられ、用紙検出レバー逃がし孔51d(用紙の有無を検出する用紙検出機構の一部)に対向する部分に用紙検出レバー11b(用紙検出機構の一部)が設けられている。
【0047】
用紙検出レバー11bは、図3に示すように突出した状態に付勢されているが、その付勢力に抗した、上方から下方に向けた荷重が作用すると、下方に回動変位し、この回動変位の有無に応じて感熱紙200の有無を判定するものである。
【0048】
すなわち、蓋体12が閉じられた状態のとき、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在するときは、用紙検出レバー11bが、その感熱紙200によって下方に向け押圧され、この押圧による荷重が付勢力に抗して用紙検出レバー11bを下方に回動変位させ、これにより、感熱紙200が存在することを検出することができる。
【0049】
一方、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在しないときは、用紙検出レバー11bは、これに対向して形成された用紙検出レバー逃がし孔51dに突入した状態となっていて、付勢力に抗する荷重を受けないため、下方に回動変位されず、これにより、感熱紙200が存在しないことを検出することができる。
【0050】
そしてこのような用紙検出機構をヘッドカバー部51に設けた構成は、用紙検出機構を独立して他の部位に設ける必要がなく、したがって、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路に用紙検出機構を独立して設けた構成のサーマルプリントヘッドよりも、全体の大きさを小型化することができる。
【0051】
また、光源11aとフォトセンサ51cとは、両者(光源11a、フォトセンサ51c)の間を進行する用紙が、台紙の一部に印刷対象となるラベル(感熱紙)が貼り付けられたような用紙である場合に、その両者の間に位置している用紙の部分が、台紙の部分であるのか、またはラベルの部分であるのか、を識別するための機能部である。
【0052】
すなわち、光源11aから出射された光の一部は用紙を透過してフォトセンサ51cに達し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値(台紙を透過したときの光強度とラベルを透過したときの光強度とを峻別しうる値)以上であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、台紙の部分であると判定し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値未満であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、ラベルの部分であると判定することができる。
【0053】
したがって、台紙にラベルが貼り付けられている用紙を用いて、ラベルの部分に感熱印刷を行う場合に、これら光源11bとフォトセンサ51cとによって得られた情報に基づいて、台紙の部分ではなくラベルの部分に確実に印刷をおこなうことができる。
【0054】
なお、上述したようにカバーフレーム17から取り外されるヘッドカバーダンパーユニット50は、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形させ、各突起51b,51bをカバーフレーム17の各係止孔17a,17aに嵌め合わせることにより、カバーフレーム17に取り付けられ(図4参照)、工具無しの手作業だけでの取り付けが可能となっている。
【0055】
一方、ダンパー部52は、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路上を送られる感熱紙200に押し当てられるものであり、図6に示すように、ダンパー板52aと、支持板52cと、これらダンパー板52aと支持板52cとの間に介装されたバネ52b(回動付勢部材)と、ダンパー板52eの回動側先端に回転自在に設けられたアイドルローラ52eとを備えている。
【0056】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100においては、支持板52cはヘッドカバー部51と一体成形されているが、機能的にはダンパー部52の一部を構成するものであるため、物理的にもダンパー部52の一部として構成されているものであってもよい。
【0057】
ダンパー板52aは、ヘッドカバー部51の、感熱紙200送り方向の上流側端51fを軸として、ヘッドカバー部51に対して角度0[deg](図6(b)参照)から角度50[deg](図6(c)参照)程度まで角度θ[deg]だけ回動可能に軸支されている。
【0058】
バネ52bは、ダンパー板52aと支持板52cとの間に、意図しない方向に屈曲するのを防止するガイド棒としての円弧状の芯柱52dを芯にして介装されているが、ダンパー板52aが角度0[deg]の状態(図6(b))は、所定のプレロードが付与されつつ伸びている状態であり、ダンパー板52aが角度約50[deg]の状態(図6(c))は、縮められた状態であり、所定のプレロードと縮められた長さに応じた弾性復元力との合力が付勢力(押圧力)として、ダンパー板52aを図示時計回り方向に付勢している。
【0059】
そして、図6(b),(c)に示すように、ダンパー板52aの、バネ52bの付勢方向に向いた面(図示下面)に感熱紙200(二点鎖線で示す)が接するように、ダンパー部52は感熱紙200の搬送経路に配置されて、ダンパー板52aの下面に接した感熱紙200を押圧して感熱紙200に張力(テンション)を与えている。
【0060】
すなわち、感熱紙200の残量が多いため感熱紙200のロール径が大きい状態では、図6Aの実線(符号Iの状態)で示したように、感熱紙200がロールから離れ(ほどかれ)始める点は、ヘッドカバー部51よりも上方の位置となる。
【0061】
このとき、この感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分(ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分)に、ダンパー部52(バネ52bで付勢されたダンパー板52a)が乗り上げた状態となり、この感熱紙200の部分は、このダンパー部52による付勢力を受けて適切な張力が付与された状態となる。
【0062】
そして、感熱紙200が使用されるにしたがってロール径も小さくなり、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分と、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eとのなす角度θは、少しずつ小さくなり、そのように角度θが小さくなっていく期間中も、ダンパー板52aは、その角度θに正確に追従して、その角度θをなす感熱紙200の部分に、付勢力を作用し続ける。
【0063】
感熱紙200の残量が減り、ロールから離れ(ほどかれ)始める点が、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eと同一面上まで達すると(図6(b))、用紙案内面51eとダンパー板52aの下面とが同一面上となる角度θ=0[deg]となり、ダンパー板52aは図示しないストッパーにより、それ以上、時計回りに回動することがない。
【0064】
そして、この状態、すなわち図6Aの二点鎖線で示す状態(符号IIの状態)では、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分に、ダンパー部52から作用する付勢力は最も小さくなる。ただし、この小さい付勢力によっても、感熱紙200に張力が付与されている。
【0065】
感熱紙200の使用がさらに進んで残量がさらに減ると、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点は、図6Aの破線で示すように、ヘッドカバー部51よりも下方の位置となる。
【0066】
一方、ダンパー板52aは、角度θとして負の値を採らない(ストッパーにより水平面以下に回動しない)ため、感熱紙200はダンパー板52aから離れた状態(符号IIIの状態)となり、ダンパー部52による付勢力を受けることがない。
【0067】
しかし、図6Aの破線で示すように、感熱紙200のロール部分は、用紙収容部14の底部に沈み、このロールの部分は、ロールから離れた(ほどかれた)感熱紙200の部分によって支えられている状態となるため、このロールから離れた(ほどかれた)感熱紙200の部分には、ロールの部分による重量に対応した張力が与えられる。
【0068】
したがって、このサーマルプリンタ100に用いられる感熱紙200は、ダンパー部52による付勢力が作用しなくなった状態に至っても、適切な張力を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14とを近くに配置した構成であるため、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分(ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分)と、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eとの間の角度θは、ロール状の感熱紙200の残量に応じて大きく変化する。
【0070】
このようなものでは、ロールとヘッドカバー部41との間に架け渡された感熱紙200の部分の向きが大きく変化するため、直線上の一方向に沿って押圧する構成のダンパー部52によっては、その押圧力を感熱紙200に適切に負荷させることができない。
【0071】
しかし、本実施形態のサーマルプリンタ100によれば、感熱紙200に押圧力を負荷させるダンパー板52aが、ヘッドカバー部51の、感熱紙200の送り方向の上流側端51fを軸として、ヘッドカバー部51に対して角度θ[deg]だけ回動可能であるため、ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分(図6(b),(c)において二点鎖線で示す)の向きが角度50[deg]程度変化しても、ダンパー板52aが回動することで、その感熱紙200の部分の向きの変化に追従する。
【0072】
すなわち、感熱紙200の残量が多いときは、ロールの径が大きいため、図6(c)に示すように、ダンパー板52aは大きく回動した状態(θ≒50[deg])で、感熱紙200に張力を作用させることができ、一方、感熱紙200の残量が少ないときは、ロールの径が小さいため、図6(b)に示すように、ダンパー板52aはほとんど回動しない状態(θ≒0[deg])で、感熱紙200に張力を作用させることができ、これらの間の残量であるときも、その残量に応じた角度θ[deg]でダンパー板52aが回動した状態で感熱紙200を押圧し、これにより、感熱紙200の残量に拘わらず、適切に張力を与え続けることができる。
【0073】
また、ダンパー板52aに接しながら送られる感熱紙200がダンパー板52aと最初に接触する部分、すなわち、ダンパー板52aの先端縁には、回動自在のアイドルローラ52eが設けられているため、感熱紙200はどのよう角度でアイドルローラ52eに接してもアイドルローラ52eは回転するため、感熱紙200がアイドルローラ52eとの間で大きな摩擦力を生じることがない。
【0074】
すなわち、アイドルローラ52eが設けられていない構成においては、ダンパー板52aの先端縁は動かないため、様々な角度で進入してくる感熱紙200とダンパー板52aの先端縁との間で大きな摩擦力が発生し易く、この大きな摩擦力は、感熱紙200が詰まるペーパージャムの大きな発生要因となる。
【0075】
この点、本実施形態のサーマルプリンタ100は、ダンパー板52aの先端縁にアイドルローラ52eを備えているため、大きな摩擦力が発生せず、ペーパージャムの発生を抑制することができる。
【0076】
なお、図6では省略しているが、ヘッドカバー部51の、感熱紙200の送り方向の上流側端51fにも、図4および図5(a)に示すように、アイドルローラ52eと同様に、摩擦低減用のアイドルローラ51g,51gが設けられていて、ヘッドカバー部51とダンパー板52aとの境界部分での、感熱紙200との摩擦力を軽減している。
【0077】
以上のように、サーマルプリントヘッド41の一部を覆うヘッドカバー部51は、このサーマルプリントヘッド41の直近に配置されたものとなり、このため、ヘッドカバー部51はサーマルプリントヘッド41の直近に配置されている。
【0078】
そして、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の用紙経路を送られる感熱紙200に押し当てられて、この感熱紙200に所定の張力(テンション)を付与するダンパー部52は、このヘッドカバー部51と一体的に設けられているため、ダンパー部52をサーマルプリントヘッド41の直近に配置することができる。
【0079】
したがって、用紙収容部14をダンパー部52に近付けてサーマルプリントヘッド41と用紙収容部14とを近くに配置した構成を採用することができ、サーマルプリンタ100全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができる。
【0080】
また、ダンパー部52はサーマルプリントヘッド41に近接した構成となるため、サーマルプリントヘッド41から遠く離れた位置で感熱紙200にテンションを付与するものに比べて、サーマルプリントヘッド41との間での寸法精度を向上させやすい。
【0081】
さらに、ヘッドカバー部51自体が蓋体12から着脱自在の構成であるため、ダンパー部52もヘッドカバー部51とともに着脱可能となるため、ダンパー部52の機能を発揮するバネ52bが疲労等によりヘタリが生じた場合にも、バネ52bの交換作業を行い易い。
【0082】
また、図5に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40は、発熱素子列42よりも前方に位置する前端に、カバーフレーム17に形成された、後方に突出する3つの爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44が形成され、発熱素子列42よりも後方の部分のうち幅方向の略中央に、カバーフレーム17から下方(蓋体12が閉位置にあるとき)に延びた段付きピン60の下端部に形成された段付き部61に引っ掛けられるピン係合切欠き部45が形成されている。
【0083】
すなわち、サーマルプリントヘッドユニット40は、図7に示すように、その引掛け部44が各爪17b,17c,17dから取り外され、そのピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61から取り外される、という工具無しの手作業だけで、カバーフレーム17から取り外される。なお、サーマルプリントヘッドユニット40の左右2箇所に設けられた端子47a,47b(同図(b))には、電気信号等を供給する電気コネクタ48a,48b(同図(a))がそれぞれ接続されているが、これら端子47a,47bと電気コネクタ48a,48bとの接続も、手作業だけで取り外すことができる。
【0084】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、詳しくは図7(b)に示すように、サーマルプリントヘッド41に、支持するヘッドフレーム43が取り付けられたものであり、引掛け部44およびピン係合切欠き部45は、いずれもヘッドフレーム43に形成されている。
【0085】
このヘッドフレーム43に形成されているピン係合切欠き部45は、その切欠きの幅W3が、段付きピン60のピン部62の直径よりもわずかに大きく、かつ段付きピン60の段付き部61の直径よりも小さい。したがって、段付きピン60のピン部62はピン係合切欠き部45を通過するが、段付き部61は通過しないため、ピン係合切欠き部45の周囲の部分が段付き部61に乗り上げた状態で引っ掛けられる。
【0086】
また、爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44も、これらの爪17b,17c,17d乗り上げた状態で引っ掛けられており、ヘッドフレーム43とカバーフレーム17との間には、引掛け部44を爪17b,17c,17dに押し付け、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に押し付ける方向に付勢力を作用させる4つのバネ19a,19b,19c,19dが介装されている。
【0087】
これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられている状態において、発熱素子列42の背部に位置するように配設されていて、発熱素子列42を、後述するプラテンローラ21に適切に密着させている。
【0088】
しかも、これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、感熱紙200の幅方向に沿って等間隔L1に配置されている。そして、この間隔L1は、前述した幅の異なる感熱紙200を用いた場合にも、発熱素子列42が幅方向に沿って略均一な密着力を実現するような間隔として設定されている。
【0089】
すなわち、広い幅W1の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着し、狭い幅W2の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dのうち、図示右端のバネ19dを取り外すことで、3つの均等配置された3つのバネ19a,19b,19cによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着する。
【0090】
なお、上述した2つの幅W1,W2に対応する場合の間隔L1としては、W1とW2との略最大公約数となる値を設定すればよい。具体的には、広い幅W1として3[インチ](約80[mm])、狭い幅W2として2[インチ](約60[mm])の感熱紙200を利用できるものでは、最大公約数である1[インチ](約20[mm])を間隔L1として設定し、両端のバネ19a,19d乃至19a,19cの位置を、感熱紙200の両側端縁から略等距離となるように調整しておけばよい。
【0091】
また、ヘッドフレーム43の両側面であって発熱素子列42の略延長線上には、後述するプラテンローラユニット20と係合する位置決め部としての突起46,46がそれぞれ形成されている。
【0092】
次に、カバーフレーム17へのサーマルプリントヘッドユニット40の着脱の構造について図8を用いて説明する。
【0093】
図7(b)に示したサーマルプリントヘッドユニット40を同図(b)に示したカバーフレーム17に取り付ける構造は、図8(a),(b)に示すように、ピン係合切欠き部45を段付きピン60のピン部62に通して、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に引っ掛け、この状態から同図(b),(c)に示すように、ヘッドフレーム43の背面(発熱素子列42の背部)に接するバネ19a,19b,19c,19dを押し縮めつつ、引掛け部44を爪17b,17c,17dの背面側まで移動させ、その後、同図(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の全体を爪17b,17c,17dの付け根側まで移動させて、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛ける。
【0094】
これにより、サーマルプリントヘッドユニット40は、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛けられ、ピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61に引っ掛けられて、カバーフレーム17に取り付けられる。
【0095】
一方、カバーフレーム17からサーマルプリントヘッドユニット40を取り外す場合は、上記取り付けの手順と反対の手順を行えばよい。
【0096】
このように、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具無しの手作業でカバーフレーム17に着脱することができる。
【0097】
また、カバーフレーム17に取り付けられているサーマルプリントヘッドユニット40は、バネ19a,19b,19c,19dにより、図8において図示左方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21に近づく方向)に付勢されているが、発熱素子列42よりも上方の部分(前端の部分)も下方の部分(後端の部分)も、図示右方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21から離れる方向)には移動可能であるため、蓋体12が閉位置にあって通常の使用状態にあるとき、サーマルプリントヘッドユニット40は感熱紙200の進行方向に沿って上下に傾き可能である。
【0098】
なお、ピン係合切欠き部45は、 ヘッドフレーム43の後端縁から前方に向けて、爪17b,17c,17dと引掛け部44との前後方向(図8においては上下方向)に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているため、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に取り付ける際は、まず、ピン係合切欠き部45を段付きピン60の段付き部61に乗り上げさせて引っ掛け、ピン係合切欠き部45に段付きピン60を通した(引っ掛けた)ままの状態で、段付きピン60がピン係合切欠き部45の切り欠かれた根本に位置するようにサーマルプリントヘッドユニット40を後方(図8において下方)に移動させ、その後にサーマルプリントヘッドユニット40の前端(図8において上端)を、カバーフレーム17の爪17b,17c,17dの背面側(図8において右側)に移動させ、サーマルプリントヘッドユニット40を、爪17b,17c,17dとの引掛かり代分だけ前方(図8において上方)に移動させることで、サーマルプリントヘッドユニット40を、前端で爪17b,17c,17dに引っ掛け、後部を段付きピン60に引っ掛けた状態で、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17に取り付けることができる。
【0099】
また、上記操作と反対の操作により、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17から取り外すことができる。
【0100】
さらに、このサーマルプリントヘッドユニット40は、図9(a),(b)に示すように、その後方の部分が幅方向の略中央1箇所(ピン係合切欠き部45)のみで引っ掛けられて支持されているため、この支持されている部分(段付き部に乗り上げている幅方向の略中央部)を中心として、同図(c),(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の幅方向に関して上下に揺動する自由度を有している。
【0101】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42が接触するプラテンローラ21が幅方向において、その摩耗程度に差が生じる等して例えば円錐台状に摩耗しても、サーマルプリントヘッドユニット40が幅方向に関して傾くことで、その幅方向の不均一な摩耗による差を吸収し、発熱素子列42とプラテンローラ21との幅方向における接触を略均一なものとすることができる。
【0102】
図10は、蓋体12が閉位置にある状態で、蓋体12の外装カバーをカバーフレーム17から除去した状態を示す図である。
【0103】
このカバーフレーム17には、サーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が引っ掛けられている段付きピン60を、その軸方向に変位させて段付き部61の位置を上下に変位させる段付きピン調整部70が設けられている。
【0104】
この段付きピン調整部70は、図11に示すように、概略五角形の形状を呈し、ピン72により軸支された一頂部回りに回動可能に設けられた可動板71(可動調整部材)であって、この可動板71には、その回動方向に沿って延びた、段付きピン60が通過する長孔73が形成されており、段付きピン60が通過した状態で長孔73の延びた方向に沿って変位可能とされている。
【0105】
そして、この長孔73の縁部には、長孔73の中央から一方の可動範囲の部分(図11(a)において右側の範囲)において、可動板71の厚さよりも厚い縁取り73aが形成され、長孔73の中央を含む他方の可動範囲の部分(図11(a)において左側の範囲)において、可動板71の厚さのままとされており、この厚さの違いによるカムを構成している。
【0106】
なお、説明の便宜のために、長孔73の縁部のうち可動板71の厚さのままとされている部分を薄い縁取り73bと称するものとする。
【0107】
また、可動板71の長孔73の近傍には、裏面(カバーフレーム17に向いた面)に突起75が形成された舌片が形成されており、長孔73を段付きピン60が通った状態で可動板71を可動範囲(回動範囲)で変位させたとき、可動範囲の両端において、カバーフレーム17に形成された凹部17f,17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの、両端に達した感触(操作の節度感)を与えるとともに、突起75がいずれかの凹部17f,17gに嵌った状態から、可動板71が不用意に動くのを防止している。
【0108】
さらに、図7および図11(a)の裏面からの図である同図(b)に示すように、カバーフレーム17の可動板71の外周部分に相当する部分には、この可動板71の外周部分の裏面をカバーフレーム17の内側に露出させる、可動板71の回動範囲に沿って延びた操作窓17eが開口されていて、この操作窓17eから露出した可動板71の外周部分の裏面には、この操作窓17eを介して露出した可動板71をピン72回りに回動させる操作の際に指が掛けられる操作突起74が形成されている。
【0109】
一方、段付きピン60の、長孔73から突出した上端部には、段付きピン60の外径よりも大きな径の、長孔73の縁取り73a,73b(縁部)すなわちカムに乗り上がる平ワッシャ63(大径部)が設けられていて、可動板71が回動して平ワッシャ63が薄い縁取り73bに乗り上げたときは変化がないのに対して、平ワッシャ63が厚い縁取り73aに乗り上げたときは、その厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(a)の紙面手前側に引き上げられ、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も紙面手前側すなわち段付きピン60の軸方向に沿って変位する。
【0110】
この作用を図12,13を参照して説明すると、まず、図12(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示右端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示左側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の厚い縁取り73aに乗り上げる。
【0111】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17fに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0112】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の上方向に移動され、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も上方向に移動される。
【0113】
すると、段付きピン60の下端部(図12(c)において下端部)に形成された段付き部61も上方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が上方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が上方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の反時計回り方向に傾斜する。
【0114】
一方、図13(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示左端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示右側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の薄い縁取り73bに乗り上げる。
【0115】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0116】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図13(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の下方向に移動され(図12(c)を基準としたとき)、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も下方向に移動される。
【0117】
すると、段付きピン60の下端部(図13(c)において下端部)に形成された段付き部61も下方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が下方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が下方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の時計回り方向に傾斜する。
【0118】
この後のサーマルプリントヘッドユニット40の姿勢の変化については、次に説明するプラテンローラユニット20と連携したものとなるため、プラテンローラユニット20の説明の後に詳述する。
【0119】
プラテンローラユニット20は、図3に示したように本体11に配設されているが、図14に示す本体11の骨格部である本体フレーム18に取り付けられている。
【0120】
そして、本体フレーム18から取り外された状態のプラテンローラユニット20は、図15に示すように、プラテンローラ21と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aをそれぞれ回転自在に支持する支持部材22,23と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aと支持部材22,23に取り付けられ、このプラテンローラ21の、感熱紙200の送り方向上流側および下流側に、回転軸と平行に延びた用紙分離枠24とを備えた構成である。
【0121】
用紙分離枠24は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41との間を上流側から送られた感熱紙200が、プラテンローラ21の周面に巻き付いたまま予期しない方向に送られないように、感熱紙200をプラテンローラ21から引き剥がして下流側に送るガイドの機能を果たす。
【0122】
2つの支持部材22,23は互いに同じものであり、それぞれ樹脂部材22a,23aと金属板22h,23hとから構成されている。
【0123】
ここで、各支持部材22,23の樹脂部材22a,23aには、図16に示すように、プラテンローラ21よりも上方の部分に、本体フレーム18に組み付けられている状態(図3参照)からプラテンローラユニット20の全体を上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向)に引き上げて本体11からプラテンローラユニット20を取り外す際の手がかりとなる指掛け部22b,23bが形成されている。
【0124】
また、樹脂部材22a,23aは、その指掛け部22b,23bの下方がプラテンローラ21の幅方向について二股に分岐して形成されている。
【0125】
そして、図16(b)に示すように、これら二股に分岐して形成された2つの脚部23c(22c),23d(22d)のうち幅方向の内側に位置する脚部23d(22d)は、幅方向の外側に位置する脚部23c(22c)よりも長く形成されているとともに、さらに図16(a)に示すように、二股に分岐して2つの脚23e(22e),23f(22f)を形成している。
【0126】
プラテンローラ21の回転軸21aは、プラテンローラ21の両端から突出して、その突出した部分は、それぞれ幅方向の外内2つの脚部23c(22c),23d(22d)を貫通しており、その回転軸21aの、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の空間を通過する範囲の部分には、プラテンローラ21の回転軸21aを回転自在に支持する軸受26(25)が配設されている。
【0127】
一方、本体フレーム18の幅方向の両側壁には、図14,16(a)に示すように、切欠き幅D1の切欠き18b(18a)(ローラ係合切欠き)が形成されており、この切欠き幅D1は、軸受26(25)の直径(外径)D2(図17(b)参照)と同じか、またはわずかに大きい(D2≦D1)。
【0128】
また、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の幅は、本体フレーム18の厚さよりもわずかに広く、しかも、一方の脚部23c,23dの間の空間から他方の脚部22c,22dの間の長さM2(図17(a)参照)は、図14に示した本体フレーム18の幅方向の両側壁間の距離M1と略等しく、これにより、プラテンローラユニット20は、一方の脚部23c,23d間の空間に本体フレーム18の幅方向の一方の側壁が、他方の脚部22c,22d間の空間に本体フレーム18の幅方向の他方の側壁が、それぞれ挿通されて、プラテンローラユニット20は本体フレーム18に取り付けられている。
【0129】
このとき、脚部23c,23d間の空間を通過する回転軸21aの軸受26が、本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合し、脚部22c,22d間の空間を通過する回転軸21aの軸受25が、本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合することで、本体フレーム18に対するプラテンローラユニット20の前後方向の位置および上下方向の位置が固定される。
【0130】
また、幅方向内側に位置する脚部23d(22d)の、二股に分岐した2つの脚23e(22e),23f(22f)は、図16(a)に示すように、その間に、最下部において幅d3の隙間を有し、最下部よりも上方の部分において幅d3よりも広い幅d4(d3<d4)の隙間を有している。
【0131】
さらに、支持部材22,23の各金属板22h,23hは、図16(b)に示すように、内側の脚部23d(22d)の、幅方向内側の面に密着して設けられていて、この各金属板22h,23hは、回転軸21aが貫通した部分よりも下方の部分において、脚部23d(22d)と同様に二股に分岐されており、この二股の間の隙間の幅d2は、幅d3より大きく、かつ幅d4より小さい(d3<d2<d4)。
【0132】
なお、金属板23h(22h)の二股間の隙間の中心と脚23e(22e),23f(22f)間の隙間の中心とは一致し、これらの中心の上方への延長線上に、回転軸21a(あるいは軸受26(25))の中心が位置するように構成されている。
【0133】
一方、本体フレーム18の両側壁の、各切欠き18a,18bの下方であって、各切欠き18a,18bの下縁から、プラテンローラユニット20の軸受25,26の下面から脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が幅d4となる位置までの距離に相当する部分には、これら本体フレームの各側壁から幅方向内側に向けて突出した、直径d1のボス18c,18dが形成されている。
【0134】
そして、これらボス18c,18dの直径d1は、支持部材22,23の金属板22h,23hの二股の間の幅d2と同じか、わずかに小さく設定されており、また、これらボス18c,18dの中心の鉛直線上に切欠き18a,18bの中心が位置するように形成されている。
【0135】
このように構成されている支持部材22,23と本体フレーム18とによると、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合するように、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合するように、プラテンローラユニット20を本体フレーム18に対して鉛直下方に移動させて、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられるが、この下方への移動の際に、図18に示すように、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間にボス18d(18c)が割り込む。
【0136】
ここで、ボス18d(18c)の直径d1は、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)間の最下部における隙間の幅d2より大きいため、この隙間へのボス18d(18c)の進入が進むにしたがって、両脚23e(22e),23f(22f)は、これら両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が拡げられるように、それぞれ外側に弾性変形する。これは、脚23e(22e),23f(22f)が弾性変形しやすい樹脂製であることによるが、本発明においては樹脂製に限定されるものではなく、厚さの薄い金属製であってもよい。
【0137】
一方、支持部材23(22)のうち金属板23h(22h)が二股に分岐した間の隙間の幅d2は、ボス18d(18c)の直径d1と等しいか、わずかに大きいため、ボス18d(18c)は金属板23h(22h)間の隙間を拡げることなく、この隙間に案内されるように進行する。
【0138】
プラテンローラユニット20がさらに下方に移動されると、図19に示すように、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに嵌合し、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合して、下方への移動は停止する。
【0139】
このとき、本体フレーム18の側壁の切欠き18bはプラテンローラユニット20の軸受26の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであり、また、本体フレーム18の側壁の切欠き18aはプラテンローラユニット20の軸受25の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであるため、本体フレーム18に取り付けられた状態での本体フレーム18に対するプラテンローラ21のがたつきを抑制することができる。
【0140】
さらに、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間を進んだボス18d(18c)は、両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間のうち、幅d2(≒d1)の金属板23h(22h)間の隙間よりも広い幅d4に形成された部分に到達する。
【0141】
そして、この幅d4の隙間部分は、ボス18d(18c)の直径d1よりも大きいため、両脚23e(22e),23f(22f)が外側に拡げられた弾性変形は解消する。この結果、ボス18d(18c)の下方は、ボス18d(18c)の直径d1よりも狭い幅d2の隙間(両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間)で閉じられた状態となり、プラテンローラユニット20を上方に移動させる際には、ボス18d(18c)によって、この狭い幅d2の隙間を押し拡げる必要があり、この押し拡げるのに必要な荷重が、プラテンローラユニット20を上方に移動させるのに対向する抵抗力となり、プラテンローラユニット20が本体フレーム18から不用意に脱落するのを防止する。
【0142】
しかも、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられている状態(軸受25,26がそれぞれ本体フレーム18の切欠き18a,18に係合している状態)で、支持部材22,23が軸受25,26を中心にして回動するのを防止することもできる。
【0143】
もちろん、使用者が、プラテンローラユニット20の指掛け部22b,23bに指を掛けて、この抵抗力に逆らって上方に引き上げることにより、プラテンローラユニット20を本体フレーム18から取り外すことは可能であり、このプラテンローラユニット20着脱操作にも、工具を必要とせずに、手作業だけで行うことができる。
【0144】
なお、ボス18d(18c)が配置される金属板23h(22h)間の隙間(ボス係合切欠き部)は、剛性の高い金属部材である金属板23h(22h)によってその両縁部が規定されて形成されているため、この隙間とボス18d(18c)の外径との間の隙間を精度良く管理することができ、一方、ボス18d(18c)を挟持する両脚23e(22e),23f(22f)(脚部)については弾性力を有する樹脂部材23aによって形成されていることにより、ボス18d(18c)を挟持した状態と弾性力に抗しての挟持状態からの離脱とを容易に切り替えることができる。
【0145】
また、このプラテンローラユニット20には、上述した本体フレーム18との係合を実現する構造の他、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40との位置関係を規定する位置決め部も形成されている。
【0146】
すなわち、図15に示すように、プラテンローラユニット20の支持部材22の金属板22hの上部に位置決め切欠き22i(位置決め部)が形成されている。他方の金属板23hにも、金属板22hと同様の位置決め切欠き23i(位置決め部)が、その上部に形成されている。
【0147】
これらの位置決め切欠き22i,23iは、蓋体12を閉位置に移動させた状態(図1、図10参照)において、図4および図7(b)に示すサーマルプリントヘッドユニット40のヘッドフレーム43の両側面に形成された突起46,46とそれぞれ係合して、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42とプラテンローラ21との相対的な動きを規制している。
【0148】
ここで、各金属板22h,23hに形成された位置決め切欠き22i,23iは、図20の要部透視図に示すように、回転軸21aの中心と金属板22h,23hの二股に分岐した間の隙間の中心とを結んだ直線上に、その中心が位置するように形成されている。
【0149】
したがって、蓋体12が閉位置にあるとき、本体フレーム18の一方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18cとが一直線上に並び(図20)、本体フレーム18の他方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18dとが一直線上に並ぶ。
【0150】
プラテンローラユニット20は、蓋体12の閉位置から移動方向に一致する方向(図示上方)に沿って引き上げることで、本体11から取り外すことができるが、蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iには、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46が上方から下方に向けて係合しているため、蓋体12が閉じている状態では、プラテンローラユニット20が誤って外れることがなく、プラテンローラユニット20を本体11に強固に固定しておくことができる。
【0151】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、図12,13に示したように、段付きピン調整部70の可動板71を操作して段付きピン60の段付き部61の位置を変化させることにより、サーマルプリントヘッド41の傾き(前後方向(感熱紙200の送り方向)に対する姿勢)を変更することができる。
【0152】
ただし、図12,13における説明では、サーマルプリントヘッドユニット40の動きは、カバーフレーム17による拘束(爪17b,17c,17dと段付きピン60とバネ19a,19b,19c,19dとによる拘束)条件下での動きであったが、蓋体12が閉位置にある状態においては、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46がプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iに係合して拘束されるとともに、発熱素子列42とプラテンローラ21とが接触することで、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42がバネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して上方(バネ19a,19b,19c,19dを縮める方向)に変位する。
【0153】
このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位の中心は、段付き部61に乗り上がっているピン係合切欠き部45の周囲の部分であるが、さらに、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46とプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iとの係合により、サーマルプリントヘッドユニット40は、この突起46,46回りの回転と位置決め切欠き22i,23iの延びた上方への動きに規制された動きとなる。
【0154】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40全体としては、後部の上下方向の位置(ピン係合切欠き部45の周囲の部分の位置)が段付きピン調整部70による段付き部61の位置により規定されつつ、突起46,46回りでの回転変位として規定された姿勢(傾き)となる。
【0155】
図21は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッドユニット40と爪17b,17c,17dと段付きピン60と段付きピン調整部70との関係を示す要部透視図であり、同図(a)は図13相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が下げられた傾きとなった状態を示す図であり、同図(b)は図12相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が引き上げられた傾きとなった状態を示す図である。
【0156】
ここで、図21(a)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(a)に示し、図21(b)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(b)に示す。
【0157】
前述したように、サーマルプリントヘッドユニットの突起46,46は発熱素子列42の略延長線上に設けられていて、この突起46,46に係合する位置決め切欠き22i,23iは、プラテンローラ21の中心を通る鉛直線K上に形成されているため、プラテンローラ21と発熱素子列42とが接触する点Pは、サーマルプリントヘッド41の傾きの如何に拘わらず、常に前述した鉛直線K上に位置する。
【0158】
ここで、図22(a)の状態は、厚さの厚い感熱紙200(例えば、厚さN1)に対応した状態であり、この厚さN1の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN1分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位は、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0159】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(a)に示す点P2となる。
【0160】
一方、図22(b)の状態は、厚さの薄い感熱紙200(例えば、厚さN2(<N1))に対応した状態であり、この厚さN2の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN2分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位も、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0161】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(b)に示す点P1となる。
【0162】
つまり、厚さの厚い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P2は、厚さの薄い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P1よりも、感熱紙200の送り方向に沿った上流側となる。
【0163】
ここで、厚さの厚い感熱紙200は厚さの薄い感熱紙200よりも剛性(腰)が強い。そして、図23(a)に示すように、感熱紙200は一見、点Pの直上である点P2において発熱素子列42と密着するはずであるが、実際は、上述した剛性の強さの影響で、接しているプラテンローラ21の周表面(弾性を有する)を、本来の円弧状から直線状に変形させるため、点P2における密着性は弱いか、あるいは密着せず、点P2よりも下流側の点P1において、より適正な強さの密着が得られている。
【0164】
一方、厚さの薄い感熱紙200は厚さの厚い感熱紙200よりも剛性(腰)が弱く、図23(b)に示すように、感熱紙200は、点P2よりも下流側である点P1において、その見た目通り、発熱素子列42と適正な密着が得られている。
【0165】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ100によれば、感熱紙200の厚さが厚いものであっても薄いものであっても、発熱素子列42の同一の部分(点P1)で良好な密着を得ることができ、感熱紙200の厚さの如何に関わらず高品位な印刷を実現することができる。
【0166】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッド41とプラテンローラ21とが分離された構造を有しているため、蓋体12を閉じる(閉位置に移動させる)だけの簡単な操作によって、感熱紙200のセッティングを完了することができる。
【0167】
また、このサーマルプリンタ100は、工具無しの簡単な手作業により、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に着脱することができ、サーマルプリントヘッドユニット40の簡単な交換作業を実現している。
【0168】
一方、プラテンローラユニット20も、工具無しの簡単な手作業により、本体フレーム18に着脱することができ、プラテンローラユニット20の簡単な交換作業を実現している。
【符号の説明】
【0169】
11 本体
12 蓋体
14 用紙収容部(用紙収容室)
41 サーマルプリントヘッド
51 ヘッドカバー部(ヘッドカバー)
52 ダンパー部(ダンパー)
100 サーマルプリンタ
200 感熱紙
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンタに関し、詳細には、サーマルプリントヘッドに至る用紙(感熱紙)に張力を付与するダンパーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、用紙収容室に収容された用紙(感熱紙)を、サーマルプリントヘッドの位置まで送り、このサーマルプリントヘッドによって用紙に感熱印刷を行うものであるが、印刷時には、用紙に適切な張力を作用させて用紙を適度に張った状態とする必要がある。
【0003】
このため、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとの間の用紙の搬送経路上にダンパーが設けられて、サーマルプリントヘッドに送られる用紙の表面に、このダンパーを押し当てることで、用紙に適切な張力を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−052613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この先行技術文献に開示された技術は、本体側にプラテンローラと用紙収容室とが設けられ、この本体に対して開閉する蓋体側に、サーマルプリントヘッドとダンパーとが設けられて、蓋体を閉じたときに、用紙収容室からサーマルプリントヘッドおよびプラテンローラに至る経路上の用紙に、ダンパーが押し付けられるが、ダンパーは単独で蓋体に配設されているため、用紙収容室からもサーマルプリントヘッドからも離れた位置となり、この結果、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとの間にある程度の長さの間隔を確保する必要がある。
【0006】
すると、用紙収容室とサーマルプリントヘッドとが並ぶ前後方向(用紙の送り方向)に沿った装置(サーマルプリンタ)全体の長さを短くすることができず、装置を小型化するのは困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサーマルプリンタは、ダンパーを、サーマルプリントヘッドの直近に配設されたヘッドカバーと一体的に設けて、ダンパーとサーマルプリントヘッドとの距離を短くするとともに、用紙収容室をサーマルプリントヘッドに近付けた構成とし、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向(用紙紙の送り方向)の長さを短くしたものである。
【0009】
すなわち、本発明に係るサーマルプリンタは、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路上であって、前記サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーに、前記用紙経路を送られる用紙に押し当てられるダンパーが、一体的に設けられたことを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーは、このサーマルプリントヘッドの直近に配置されたものとなり、このため、ヘッドカバーはサーマルプリントヘッドの直近に配置されている。
【0011】
そして、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路を送られる用紙に押し当てられて、この用紙に所定の張力(テンション)を付与するダンパーは、このヘッドカバーと一体的に設けられているため、ダンパーをサーマルプリントヘッドの直近に配置することができる。
【0012】
したがって、用紙収容室をダンパーに近付けてサーマルプリントヘッドと用紙収容室とを近くに配置した構成を採用することができ、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができる。
【0013】
また、ダンパーはサーマルプリントヘッドに近接した構成となるため、サーマルプリントヘッドとの間での寸法精度を向上させやすい。
【0014】
さらに、ヘッドカバー自体が本体や蓋体から着脱自在の構成であるときは、ダンパーもヘッドカバーとともに着脱可能となるため、ダンパーの機能を発揮するバネ等の弾性部材が疲労等によりヘタリが生じた場合にも、バネの交換作業を行い易い。
【0015】
なお、ヘッドカバーは、サーマルプリントヘッドの一部を覆うとともに用紙をサーマルプリントヘッドに向けて円滑に案内するガイド機能を発揮するものであってもよい。
【0016】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記用紙収容室は、ロール状に巻回されたロール紙を前記用紙として収容するものであり、前記ダンパーは、前記ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、前記ヘッドカバーに対して回動可能に軸支されたダンパー板と、前記回動可能の範囲の一方の回転方向に向けて前記ダンパー板を付勢する回動付勢部材とを備え、前記ダンパー板の、前記回動付勢部材の付勢方向に向いた面に前記用紙が接するように、前記ダンパーは前記用紙経路に配置されることが好ましい。
【0017】
サーマルプリンタに用いる用紙としてのロール紙は、その最外周の部分から引き出されて使用されるものであるが、使用開始直においてはそのロール径は大きいが、残り少なくなった状態ではそのロール径が小さくなる。
【0018】
そして、本発明のサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドと用紙収容室とを近くに配置した構成を採用することができるため、このような構成を採用した場合、ロール紙の径が最も大きい未使用状態において、そのロール紙の最外周の直近にダンパーが配置されることとなる。
【0019】
その結果、ロール紙の用紙がロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバーとを結ぶ線分(ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分であって、ダンパーによって押圧される部分)と、ヘッドカバーの用紙案内面(略平面)との間の角度は、ロール紙の用紙の残量に応じて大きく変化する。
【0020】
このように、ロール紙を用いて、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間にダンパーが配置され、かつ、サーマルプリントヘッドと用紙収容室とが近接して配置されたものでは、ロール紙の用紙の残量に応じた上記角度の変化量は、角度90[deg]程度まで生じることもある。
【0021】
このようなものでは、ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分の向きが大きく変化するため、直線上の一方向に沿って押圧する構成のダンパーでは、その押圧力を用紙に適切に負荷させることができない。
【0022】
しかし、本発明に係る好ましい構成のサーマルプリンタによれば、用紙に押圧力を負荷させるダンパー板が、ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、ヘッドカバーに対して回動可能であるため、ロールとヘッドカバーとの間に架け渡された用紙の部分の向きが角度90[deg]程度変化しても、回動することで、その向きの変化に追従するため、回動付勢部材による付勢力(押圧力)を、用紙の残量の多少に拘わらず、用紙に対して適切に押圧力を作用させ続けることができる。
【0023】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記ヘッドカバーは、前記用紙経路を通過する前記用紙を検出する用紙検出機構を備えていることが好ましい。
【0024】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、用紙検出機構をヘッドカバーに設けた構成であるため、用紙検出機構を独立して他の部位に設ける必要がなく、したがって、サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路に、用紙検出機構を独立して設けた構成のサーマルプリントヘッドよりも、全体の大きさをさらに小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリンタ全体の大きさ、特に前後方向(用紙の送り方向)の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタを示す外観図(通常の使用時の状態)である。
【図2】図1に示したサーマルプリンタの蓋体を開位置に移動した状態を示す図である。
【図3】図2の状態から感熱紙を除去した状態を示す図である。
【図4】蓋体のカバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットおよびヘッドカバーダンパーユニットが取り付けられている状態を示す図である。
【図5】(a)はカバーフレームからヘッドカバーダンパーユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたヘッドカバーダンパーユニットを示す図である。
【図6】ヘッドカバーダンパーユニットの詳細構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は矢視Aによる側面図であってバネが伸びた状態を示す図、(c)は矢視Aによる側面図であってバネが縮んだ状態を示す図である。
【図6A】感熱紙の送り方向に沿った、サーマルプリントヘッドと用紙収容部とダンパー部との位置関係を表す図である。
【図7】(a)はカバーフレームからさらサーマルプリントヘッドユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたサーマルプリントヘッドユニットを示す図である。
【図8】図7のB−B線に沿った要部断面を示す図であり、(a),(b),(c),(d)の順に、カバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットを取り付ける過程を示す。
【図9】カバーフレームに取り付けられたサーマルプリントヘッドユニットの幅方向について上下に傾く様子を示す図であり、(a)は図5(a)相当の図、(b)は(a)の矢視Cによる図であって上下に傾いていない状態、(c)および(d)は(a)の矢視Cによる図であって幅方向のいずれか一方が上下した状態をそれぞれ示す。
【図10】図1において蓋体の外装(樹脂製)が取り外された状態を示す斜視図である。
【図11】段付きピン調整部を示す図であり、(a)は図10に示したカバーフレームよりも外方から臨んだ図であり、(b)は蓋体を開位置に移動した状態でカバーフレームよりも内方から臨んだ図である。
【図12】段付きピン調整部の位置(厚さの薄い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図13】段付きピン調整部の位置(厚さの厚い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図14】プラテンローラユニットが取り付けられる本体フレームを示す斜視図である。
【図15】本体フレームから取り外されたプラテンローラユニットを示す斜視図である。
【図16】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Dによる図、(b)は図15の矢視Eによる図である。
【図17】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Fによる図、(b)は(a)のG部詳細を示す図である。
【図18】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その1)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図19】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その2)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図20】プラテンローラユニットの位置決め切欠きにサーマルプリントヘッドユニットの突起が係合した状態を示す要部透視図である。
【図21】サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとが互いに係合して位置決めされている状態におけるサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図である。
【図22】発熱素子列とプラテンローラとの接点の間に感熱紙が進入してくる状態を示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【図23】感熱紙とサーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列との接点を示す詳細図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るサーマルプリンタの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタ100を示す外観図であり、通常の使用時の状態を示すものである。このサーマルプリンタ100は、図2に示すように、本体11の後端部を回転中心として上方から後方に回動して開放される蓋体12を備えている。
【0029】
この蓋体12は、図示を略したコイルバネにより図2に示す開位置に付勢されており、図示を略した本体11のフックが蓋体12に引っ掛けられることによって、蓋体12はコイルバネによる付勢力に抗して、図1に示した閉位置に保持される。
【0030】
この本体11のフックは、蓋体に設けられたレバー13を図1の矢印方向(図1において上方向)に押すことにより、蓋体12から外れ、これにより蓋体12はコイルバネの付勢力で図2の開位置に変位する。
【0031】
蓋体12が開位置に移動した図2に示すように、このサーマルプリンタ100の用紙収容部14(用紙収容室)には、このサーマルプリンタ100によって印刷される媒体である、ロール状に巻回された感熱紙200(用紙、ロール紙)が収容されている。図3は、この感熱紙200を取り除いた状態を示す図である。
【0032】
用紙収容部14の幅方向の所定位置には、着脱可能の略半円板状の仕切り板16(図3において二点鎖線で表示)を配設保持する仕切り板保持溝15が形成されている。
【0033】
この仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させた状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から仕切り板16の面までの狭い幅W2(図3参照)となって、この狭い幅W2の感熱紙200を用いることができ、一方、仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させない状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から他方の側壁面までの広い幅W1(図3参照)となって、この広い幅W1の感熱紙200を用いることができる。
【0034】
すなわち、仕切り板16の着脱に応じて、使用する感熱紙200の幅を選択することができる。
【0035】
また、本体11には、プラテンローラユニット20とカッターユニット30とが、それぞれ本体11に対して着脱可能に設けられている。
【0036】
これらプラテンローラユニット20およびカッターユニット30は、いずれも矢印方向(図3において上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向))に引き上げられることにより、本体11から取り外される。なお、プラテンローラユニット20の詳細な取り付け状態については後述する。
【0037】
一方、蓋体12には、サーマルプリントヘッドユニット40とヘッドカバーダンパーユニット50とが、蓋体12に対して着脱可能に設けられている。
【0038】
そして、蓋体12を閉位置に移動させた状態において、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42(後述)がプラテンローラユニット20のプラテンローラ21(後述)に接し、蓋体12を閉位置から開位置方向に移動させた状態において発熱素子列42とプラテンローラ21とが離れるように構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態のサーマルプリンタ100は、その外装が樹脂によって形成されているが、その骨格部は金属のフレームで形成されており、サーマルプリントヘッドユニット40およびヘッドカバーダンパーユニット50は、蓋体12の骨格部であるカバーフレーム17に、工具無しの手作業で着脱可能に取り付けられている。
【0040】
すなわち、図4に示すように、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられて、そのサーマルプリントヘッドユニット40の一部を覆うように、ヘッドカバーダンパーユニット50がカバーフレーム17に取り付けられている。
【0041】
ヘッドカバーダンパーユニット50は、サーマルプリントヘッドユニット40のサーマルプリントヘッド41の一部(例えば、ICカバー部42a:図4、図5(a)参照)を覆って保護するヘッドカバー部51(ヘッドカバー)と、感熱紙200に押圧力(付勢力)を作用してテンションを与えるダンパー部52(ダンパー)とが一体的に構成されたものである。
【0042】
ここで、ヘッドカバー部51の両側部には、それぞれ弾性腕部51a,51aが形成され、これら弾性腕部51a,51aにはそれぞれ突起51b,51bが形成されていて、これらの突起51b,51bが、カバーフレーム17の所定位置にそれぞれ形成された係止孔17a,17aにそれぞれ嵌ることにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17に取り付けられている。
【0043】
そして、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形されると、各係止孔17a,17aから各突起51b,51bが離脱し、これにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17から取り外され(図5参照)、工具無しの手作業だけでの取り外しが可能となっている。
【0044】
カバーフレーム17から取り外されたヘッドカバーダンパーユニット50のヘッドカバー部51は、図6に示すように、サーマルプリントヘッド41とプラテンローラ21との間に感熱紙200を円滑に送るための、略平面の用紙案内面51eを備えている。
【0045】
また、ヘッドカバー部51には、その用紙案内面51eにおいて光を検出するフォトセンサ51cと用紙検出レバー逃がし孔51d (図5(b)参照)とが設けられている。
【0046】
ここで、本体11には、蓋体12が閉じられた状態のとき、フォトセンサ51cに対向する部分に光源11aが設けられ、用紙検出レバー逃がし孔51d(用紙の有無を検出する用紙検出機構の一部)に対向する部分に用紙検出レバー11b(用紙検出機構の一部)が設けられている。
【0047】
用紙検出レバー11bは、図3に示すように突出した状態に付勢されているが、その付勢力に抗した、上方から下方に向けた荷重が作用すると、下方に回動変位し、この回動変位の有無に応じて感熱紙200の有無を判定するものである。
【0048】
すなわち、蓋体12が閉じられた状態のとき、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在するときは、用紙検出レバー11bが、その感熱紙200によって下方に向け押圧され、この押圧による荷重が付勢力に抗して用紙検出レバー11bを下方に回動変位させ、これにより、感熱紙200が存在することを検出することができる。
【0049】
一方、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在しないときは、用紙検出レバー11bは、これに対向して形成された用紙検出レバー逃がし孔51dに突入した状態となっていて、付勢力に抗する荷重を受けないため、下方に回動変位されず、これにより、感熱紙200が存在しないことを検出することができる。
【0050】
そしてこのような用紙検出機構をヘッドカバー部51に設けた構成は、用紙検出機構を独立して他の部位に設ける必要がなく、したがって、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路に用紙検出機構を独立して設けた構成のサーマルプリントヘッドよりも、全体の大きさを小型化することができる。
【0051】
また、光源11aとフォトセンサ51cとは、両者(光源11a、フォトセンサ51c)の間を進行する用紙が、台紙の一部に印刷対象となるラベル(感熱紙)が貼り付けられたような用紙である場合に、その両者の間に位置している用紙の部分が、台紙の部分であるのか、またはラベルの部分であるのか、を識別するための機能部である。
【0052】
すなわち、光源11aから出射された光の一部は用紙を透過してフォトセンサ51cに達し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値(台紙を透過したときの光強度とラベルを透過したときの光強度とを峻別しうる値)以上であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、台紙の部分であると判定し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値未満であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、ラベルの部分であると判定することができる。
【0053】
したがって、台紙にラベルが貼り付けられている用紙を用いて、ラベルの部分に感熱印刷を行う場合に、これら光源11bとフォトセンサ51cとによって得られた情報に基づいて、台紙の部分ではなくラベルの部分に確実に印刷をおこなうことができる。
【0054】
なお、上述したようにカバーフレーム17から取り外されるヘッドカバーダンパーユニット50は、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形させ、各突起51b,51bをカバーフレーム17の各係止孔17a,17aに嵌め合わせることにより、カバーフレーム17に取り付けられ(図4参照)、工具無しの手作業だけでの取り付けが可能となっている。
【0055】
一方、ダンパー部52は、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の感熱紙200の経路上を送られる感熱紙200に押し当てられるものであり、図6に示すように、ダンパー板52aと、支持板52cと、これらダンパー板52aと支持板52cとの間に介装されたバネ52b(回動付勢部材)と、ダンパー板52eの回動側先端に回転自在に設けられたアイドルローラ52eとを備えている。
【0056】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100においては、支持板52cはヘッドカバー部51と一体成形されているが、機能的にはダンパー部52の一部を構成するものであるため、物理的にもダンパー部52の一部として構成されているものであってもよい。
【0057】
ダンパー板52aは、ヘッドカバー部51の、感熱紙200送り方向の上流側端51fを軸として、ヘッドカバー部51に対して角度0[deg](図6(b)参照)から角度50[deg](図6(c)参照)程度まで角度θ[deg]だけ回動可能に軸支されている。
【0058】
バネ52bは、ダンパー板52aと支持板52cとの間に、意図しない方向に屈曲するのを防止するガイド棒としての円弧状の芯柱52dを芯にして介装されているが、ダンパー板52aが角度0[deg]の状態(図6(b))は、所定のプレロードが付与されつつ伸びている状態であり、ダンパー板52aが角度約50[deg]の状態(図6(c))は、縮められた状態であり、所定のプレロードと縮められた長さに応じた弾性復元力との合力が付勢力(押圧力)として、ダンパー板52aを図示時計回り方向に付勢している。
【0059】
そして、図6(b),(c)に示すように、ダンパー板52aの、バネ52bの付勢方向に向いた面(図示下面)に感熱紙200(二点鎖線で示す)が接するように、ダンパー部52は感熱紙200の搬送経路に配置されて、ダンパー板52aの下面に接した感熱紙200を押圧して感熱紙200に張力(テンション)を与えている。
【0060】
すなわち、感熱紙200の残量が多いため感熱紙200のロール径が大きい状態では、図6Aの実線(符号Iの状態)で示したように、感熱紙200がロールから離れ(ほどかれ)始める点は、ヘッドカバー部51よりも上方の位置となる。
【0061】
このとき、この感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分(ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分)に、ダンパー部52(バネ52bで付勢されたダンパー板52a)が乗り上げた状態となり、この感熱紙200の部分は、このダンパー部52による付勢力を受けて適切な張力が付与された状態となる。
【0062】
そして、感熱紙200が使用されるにしたがってロール径も小さくなり、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分と、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eとのなす角度θは、少しずつ小さくなり、そのように角度θが小さくなっていく期間中も、ダンパー板52aは、その角度θに正確に追従して、その角度θをなす感熱紙200の部分に、付勢力を作用し続ける。
【0063】
感熱紙200の残量が減り、ロールから離れ(ほどかれ)始める点が、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eと同一面上まで達すると(図6(b))、用紙案内面51eとダンパー板52aの下面とが同一面上となる角度θ=0[deg]となり、ダンパー板52aは図示しないストッパーにより、それ以上、時計回りに回動することがない。
【0064】
そして、この状態、すなわち図6Aの二点鎖線で示す状態(符号IIの状態)では、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分に、ダンパー部52から作用する付勢力は最も小さくなる。ただし、この小さい付勢力によっても、感熱紙200に張力が付与されている。
【0065】
感熱紙200の使用がさらに進んで残量がさらに減ると、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点は、図6Aの破線で示すように、ヘッドカバー部51よりも下方の位置となる。
【0066】
一方、ダンパー板52aは、角度θとして負の値を採らない(ストッパーにより水平面以下に回動しない)ため、感熱紙200はダンパー板52aから離れた状態(符号IIIの状態)となり、ダンパー部52による付勢力を受けることがない。
【0067】
しかし、図6Aの破線で示すように、感熱紙200のロール部分は、用紙収容部14の底部に沈み、このロールの部分は、ロールから離れた(ほどかれた)感熱紙200の部分によって支えられている状態となるため、このロールから離れた(ほどかれた)感熱紙200の部分には、ロールの部分による重量に対応した張力が与えられる。
【0068】
したがって、このサーマルプリンタ100に用いられる感熱紙200は、ダンパー部52による付勢力が作用しなくなった状態に至っても、適切な張力を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14とを近くに配置した構成であるため、感熱紙200の、ロールから離れ(ほどかれ)始める点とヘッドカバー部51とを結ぶ線分に対応した部分(ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分)と、ヘッドカバー部51の用紙案内面51eとの間の角度θは、ロール状の感熱紙200の残量に応じて大きく変化する。
【0070】
このようなものでは、ロールとヘッドカバー部41との間に架け渡された感熱紙200の部分の向きが大きく変化するため、直線上の一方向に沿って押圧する構成のダンパー部52によっては、その押圧力を感熱紙200に適切に負荷させることができない。
【0071】
しかし、本実施形態のサーマルプリンタ100によれば、感熱紙200に押圧力を負荷させるダンパー板52aが、ヘッドカバー部51の、感熱紙200の送り方向の上流側端51fを軸として、ヘッドカバー部51に対して角度θ[deg]だけ回動可能であるため、ロールとヘッドカバー部51との間に架け渡された感熱紙200の部分(図6(b),(c)において二点鎖線で示す)の向きが角度50[deg]程度変化しても、ダンパー板52aが回動することで、その感熱紙200の部分の向きの変化に追従する。
【0072】
すなわち、感熱紙200の残量が多いときは、ロールの径が大きいため、図6(c)に示すように、ダンパー板52aは大きく回動した状態(θ≒50[deg])で、感熱紙200に張力を作用させることができ、一方、感熱紙200の残量が少ないときは、ロールの径が小さいため、図6(b)に示すように、ダンパー板52aはほとんど回動しない状態(θ≒0[deg])で、感熱紙200に張力を作用させることができ、これらの間の残量であるときも、その残量に応じた角度θ[deg]でダンパー板52aが回動した状態で感熱紙200を押圧し、これにより、感熱紙200の残量に拘わらず、適切に張力を与え続けることができる。
【0073】
また、ダンパー板52aに接しながら送られる感熱紙200がダンパー板52aと最初に接触する部分、すなわち、ダンパー板52aの先端縁には、回動自在のアイドルローラ52eが設けられているため、感熱紙200はどのよう角度でアイドルローラ52eに接してもアイドルローラ52eは回転するため、感熱紙200がアイドルローラ52eとの間で大きな摩擦力を生じることがない。
【0074】
すなわち、アイドルローラ52eが設けられていない構成においては、ダンパー板52aの先端縁は動かないため、様々な角度で進入してくる感熱紙200とダンパー板52aの先端縁との間で大きな摩擦力が発生し易く、この大きな摩擦力は、感熱紙200が詰まるペーパージャムの大きな発生要因となる。
【0075】
この点、本実施形態のサーマルプリンタ100は、ダンパー板52aの先端縁にアイドルローラ52eを備えているため、大きな摩擦力が発生せず、ペーパージャムの発生を抑制することができる。
【0076】
なお、図6では省略しているが、ヘッドカバー部51の、感熱紙200の送り方向の上流側端51fにも、図4および図5(a)に示すように、アイドルローラ52eと同様に、摩擦低減用のアイドルローラ51g,51gが設けられていて、ヘッドカバー部51とダンパー板52aとの境界部分での、感熱紙200との摩擦力を軽減している。
【0077】
以上のように、サーマルプリントヘッド41の一部を覆うヘッドカバー部51は、このサーマルプリントヘッド41の直近に配置されたものとなり、このため、ヘッドカバー部51はサーマルプリントヘッド41の直近に配置されている。
【0078】
そして、サーマルプリントヘッド41と用紙収容部14との間の用紙経路を送られる感熱紙200に押し当てられて、この感熱紙200に所定の張力(テンション)を付与するダンパー部52は、このヘッドカバー部51と一体的に設けられているため、ダンパー部52をサーマルプリントヘッド41の直近に配置することができる。
【0079】
したがって、用紙収容部14をダンパー部52に近付けてサーマルプリントヘッド41と用紙収容部14とを近くに配置した構成を採用することができ、サーマルプリンタ100全体の大きさ、特に前後方向の長さを短くすることができる。
【0080】
また、ダンパー部52はサーマルプリントヘッド41に近接した構成となるため、サーマルプリントヘッド41から遠く離れた位置で感熱紙200にテンションを付与するものに比べて、サーマルプリントヘッド41との間での寸法精度を向上させやすい。
【0081】
さらに、ヘッドカバー部51自体が蓋体12から着脱自在の構成であるため、ダンパー部52もヘッドカバー部51とともに着脱可能となるため、ダンパー部52の機能を発揮するバネ52bが疲労等によりヘタリが生じた場合にも、バネ52bの交換作業を行い易い。
【0082】
また、図5に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40は、発熱素子列42よりも前方に位置する前端に、カバーフレーム17に形成された、後方に突出する3つの爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44が形成され、発熱素子列42よりも後方の部分のうち幅方向の略中央に、カバーフレーム17から下方(蓋体12が閉位置にあるとき)に延びた段付きピン60の下端部に形成された段付き部61に引っ掛けられるピン係合切欠き部45が形成されている。
【0083】
すなわち、サーマルプリントヘッドユニット40は、図7に示すように、その引掛け部44が各爪17b,17c,17dから取り外され、そのピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61から取り外される、という工具無しの手作業だけで、カバーフレーム17から取り外される。なお、サーマルプリントヘッドユニット40の左右2箇所に設けられた端子47a,47b(同図(b))には、電気信号等を供給する電気コネクタ48a,48b(同図(a))がそれぞれ接続されているが、これら端子47a,47bと電気コネクタ48a,48bとの接続も、手作業だけで取り外すことができる。
【0084】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、詳しくは図7(b)に示すように、サーマルプリントヘッド41に、支持するヘッドフレーム43が取り付けられたものであり、引掛け部44およびピン係合切欠き部45は、いずれもヘッドフレーム43に形成されている。
【0085】
このヘッドフレーム43に形成されているピン係合切欠き部45は、その切欠きの幅W3が、段付きピン60のピン部62の直径よりもわずかに大きく、かつ段付きピン60の段付き部61の直径よりも小さい。したがって、段付きピン60のピン部62はピン係合切欠き部45を通過するが、段付き部61は通過しないため、ピン係合切欠き部45の周囲の部分が段付き部61に乗り上げた状態で引っ掛けられる。
【0086】
また、爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44も、これらの爪17b,17c,17d乗り上げた状態で引っ掛けられており、ヘッドフレーム43とカバーフレーム17との間には、引掛け部44を爪17b,17c,17dに押し付け、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に押し付ける方向に付勢力を作用させる4つのバネ19a,19b,19c,19dが介装されている。
【0087】
これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられている状態において、発熱素子列42の背部に位置するように配設されていて、発熱素子列42を、後述するプラテンローラ21に適切に密着させている。
【0088】
しかも、これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、感熱紙200の幅方向に沿って等間隔L1に配置されている。そして、この間隔L1は、前述した幅の異なる感熱紙200を用いた場合にも、発熱素子列42が幅方向に沿って略均一な密着力を実現するような間隔として設定されている。
【0089】
すなわち、広い幅W1の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着し、狭い幅W2の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dのうち、図示右端のバネ19dを取り外すことで、3つの均等配置された3つのバネ19a,19b,19cによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着する。
【0090】
なお、上述した2つの幅W1,W2に対応する場合の間隔L1としては、W1とW2との略最大公約数となる値を設定すればよい。具体的には、広い幅W1として3[インチ](約80[mm])、狭い幅W2として2[インチ](約60[mm])の感熱紙200を利用できるものでは、最大公約数である1[インチ](約20[mm])を間隔L1として設定し、両端のバネ19a,19d乃至19a,19cの位置を、感熱紙200の両側端縁から略等距離となるように調整しておけばよい。
【0091】
また、ヘッドフレーム43の両側面であって発熱素子列42の略延長線上には、後述するプラテンローラユニット20と係合する位置決め部としての突起46,46がそれぞれ形成されている。
【0092】
次に、カバーフレーム17へのサーマルプリントヘッドユニット40の着脱の構造について図8を用いて説明する。
【0093】
図7(b)に示したサーマルプリントヘッドユニット40を同図(b)に示したカバーフレーム17に取り付ける構造は、図8(a),(b)に示すように、ピン係合切欠き部45を段付きピン60のピン部62に通して、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に引っ掛け、この状態から同図(b),(c)に示すように、ヘッドフレーム43の背面(発熱素子列42の背部)に接するバネ19a,19b,19c,19dを押し縮めつつ、引掛け部44を爪17b,17c,17dの背面側まで移動させ、その後、同図(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の全体を爪17b,17c,17dの付け根側まで移動させて、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛ける。
【0094】
これにより、サーマルプリントヘッドユニット40は、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛けられ、ピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61に引っ掛けられて、カバーフレーム17に取り付けられる。
【0095】
一方、カバーフレーム17からサーマルプリントヘッドユニット40を取り外す場合は、上記取り付けの手順と反対の手順を行えばよい。
【0096】
このように、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具無しの手作業でカバーフレーム17に着脱することができる。
【0097】
また、カバーフレーム17に取り付けられているサーマルプリントヘッドユニット40は、バネ19a,19b,19c,19dにより、図8において図示左方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21に近づく方向)に付勢されているが、発熱素子列42よりも上方の部分(前端の部分)も下方の部分(後端の部分)も、図示右方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21から離れる方向)には移動可能であるため、蓋体12が閉位置にあって通常の使用状態にあるとき、サーマルプリントヘッドユニット40は感熱紙200の進行方向に沿って上下に傾き可能である。
【0098】
なお、ピン係合切欠き部45は、 ヘッドフレーム43の後端縁から前方に向けて、爪17b,17c,17dと引掛け部44との前後方向(図8においては上下方向)に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているため、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に取り付ける際は、まず、ピン係合切欠き部45を段付きピン60の段付き部61に乗り上げさせて引っ掛け、ピン係合切欠き部45に段付きピン60を通した(引っ掛けた)ままの状態で、段付きピン60がピン係合切欠き部45の切り欠かれた根本に位置するようにサーマルプリントヘッドユニット40を後方(図8において下方)に移動させ、その後にサーマルプリントヘッドユニット40の前端(図8において上端)を、カバーフレーム17の爪17b,17c,17dの背面側(図8において右側)に移動させ、サーマルプリントヘッドユニット40を、爪17b,17c,17dとの引掛かり代分だけ前方(図8において上方)に移動させることで、サーマルプリントヘッドユニット40を、前端で爪17b,17c,17dに引っ掛け、後部を段付きピン60に引っ掛けた状態で、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17に取り付けることができる。
【0099】
また、上記操作と反対の操作により、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17から取り外すことができる。
【0100】
さらに、このサーマルプリントヘッドユニット40は、図9(a),(b)に示すように、その後方の部分が幅方向の略中央1箇所(ピン係合切欠き部45)のみで引っ掛けられて支持されているため、この支持されている部分(段付き部に乗り上げている幅方向の略中央部)を中心として、同図(c),(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の幅方向に関して上下に揺動する自由度を有している。
【0101】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42が接触するプラテンローラ21が幅方向において、その摩耗程度に差が生じる等して例えば円錐台状に摩耗しても、サーマルプリントヘッドユニット40が幅方向に関して傾くことで、その幅方向の不均一な摩耗による差を吸収し、発熱素子列42とプラテンローラ21との幅方向における接触を略均一なものとすることができる。
【0102】
図10は、蓋体12が閉位置にある状態で、蓋体12の外装カバーをカバーフレーム17から除去した状態を示す図である。
【0103】
このカバーフレーム17には、サーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が引っ掛けられている段付きピン60を、その軸方向に変位させて段付き部61の位置を上下に変位させる段付きピン調整部70が設けられている。
【0104】
この段付きピン調整部70は、図11に示すように、概略五角形の形状を呈し、ピン72により軸支された一頂部回りに回動可能に設けられた可動板71(可動調整部材)であって、この可動板71には、その回動方向に沿って延びた、段付きピン60が通過する長孔73が形成されており、段付きピン60が通過した状態で長孔73の延びた方向に沿って変位可能とされている。
【0105】
そして、この長孔73の縁部には、長孔73の中央から一方の可動範囲の部分(図11(a)において右側の範囲)において、可動板71の厚さよりも厚い縁取り73aが形成され、長孔73の中央を含む他方の可動範囲の部分(図11(a)において左側の範囲)において、可動板71の厚さのままとされており、この厚さの違いによるカムを構成している。
【0106】
なお、説明の便宜のために、長孔73の縁部のうち可動板71の厚さのままとされている部分を薄い縁取り73bと称するものとする。
【0107】
また、可動板71の長孔73の近傍には、裏面(カバーフレーム17に向いた面)に突起75が形成された舌片が形成されており、長孔73を段付きピン60が通った状態で可動板71を可動範囲(回動範囲)で変位させたとき、可動範囲の両端において、カバーフレーム17に形成された凹部17f,17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの、両端に達した感触(操作の節度感)を与えるとともに、突起75がいずれかの凹部17f,17gに嵌った状態から、可動板71が不用意に動くのを防止している。
【0108】
さらに、図7および図11(a)の裏面からの図である同図(b)に示すように、カバーフレーム17の可動板71の外周部分に相当する部分には、この可動板71の外周部分の裏面をカバーフレーム17の内側に露出させる、可動板71の回動範囲に沿って延びた操作窓17eが開口されていて、この操作窓17eから露出した可動板71の外周部分の裏面には、この操作窓17eを介して露出した可動板71をピン72回りに回動させる操作の際に指が掛けられる操作突起74が形成されている。
【0109】
一方、段付きピン60の、長孔73から突出した上端部には、段付きピン60の外径よりも大きな径の、長孔73の縁取り73a,73b(縁部)すなわちカムに乗り上がる平ワッシャ63(大径部)が設けられていて、可動板71が回動して平ワッシャ63が薄い縁取り73bに乗り上げたときは変化がないのに対して、平ワッシャ63が厚い縁取り73aに乗り上げたときは、その厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(a)の紙面手前側に引き上げられ、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も紙面手前側すなわち段付きピン60の軸方向に沿って変位する。
【0110】
この作用を図12,13を参照して説明すると、まず、図12(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示右端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示左側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の厚い縁取り73aに乗り上げる。
【0111】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17fに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0112】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の上方向に移動され、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も上方向に移動される。
【0113】
すると、段付きピン60の下端部(図12(c)において下端部)に形成された段付き部61も上方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が上方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が上方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の反時計回り方向に傾斜する。
【0114】
一方、図13(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示左端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示右側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の薄い縁取り73bに乗り上げる。
【0115】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0116】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図13(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の下方向に移動され(図12(c)を基準としたとき)、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も下方向に移動される。
【0117】
すると、段付きピン60の下端部(図13(c)において下端部)に形成された段付き部61も下方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が下方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が下方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の時計回り方向に傾斜する。
【0118】
この後のサーマルプリントヘッドユニット40の姿勢の変化については、次に説明するプラテンローラユニット20と連携したものとなるため、プラテンローラユニット20の説明の後に詳述する。
【0119】
プラテンローラユニット20は、図3に示したように本体11に配設されているが、図14に示す本体11の骨格部である本体フレーム18に取り付けられている。
【0120】
そして、本体フレーム18から取り外された状態のプラテンローラユニット20は、図15に示すように、プラテンローラ21と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aをそれぞれ回転自在に支持する支持部材22,23と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aと支持部材22,23に取り付けられ、このプラテンローラ21の、感熱紙200の送り方向上流側および下流側に、回転軸と平行に延びた用紙分離枠24とを備えた構成である。
【0121】
用紙分離枠24は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41との間を上流側から送られた感熱紙200が、プラテンローラ21の周面に巻き付いたまま予期しない方向に送られないように、感熱紙200をプラテンローラ21から引き剥がして下流側に送るガイドの機能を果たす。
【0122】
2つの支持部材22,23は互いに同じものであり、それぞれ樹脂部材22a,23aと金属板22h,23hとから構成されている。
【0123】
ここで、各支持部材22,23の樹脂部材22a,23aには、図16に示すように、プラテンローラ21よりも上方の部分に、本体フレーム18に組み付けられている状態(図3参照)からプラテンローラユニット20の全体を上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向)に引き上げて本体11からプラテンローラユニット20を取り外す際の手がかりとなる指掛け部22b,23bが形成されている。
【0124】
また、樹脂部材22a,23aは、その指掛け部22b,23bの下方がプラテンローラ21の幅方向について二股に分岐して形成されている。
【0125】
そして、図16(b)に示すように、これら二股に分岐して形成された2つの脚部23c(22c),23d(22d)のうち幅方向の内側に位置する脚部23d(22d)は、幅方向の外側に位置する脚部23c(22c)よりも長く形成されているとともに、さらに図16(a)に示すように、二股に分岐して2つの脚23e(22e),23f(22f)を形成している。
【0126】
プラテンローラ21の回転軸21aは、プラテンローラ21の両端から突出して、その突出した部分は、それぞれ幅方向の外内2つの脚部23c(22c),23d(22d)を貫通しており、その回転軸21aの、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の空間を通過する範囲の部分には、プラテンローラ21の回転軸21aを回転自在に支持する軸受26(25)が配設されている。
【0127】
一方、本体フレーム18の幅方向の両側壁には、図14,16(a)に示すように、切欠き幅D1の切欠き18b(18a)(ローラ係合切欠き)が形成されており、この切欠き幅D1は、軸受26(25)の直径(外径)D2(図17(b)参照)と同じか、またはわずかに大きい(D2≦D1)。
【0128】
また、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の幅は、本体フレーム18の厚さよりもわずかに広く、しかも、一方の脚部23c,23dの間の空間から他方の脚部22c,22dの間の長さM2(図17(a)参照)は、図14に示した本体フレーム18の幅方向の両側壁間の距離M1と略等しく、これにより、プラテンローラユニット20は、一方の脚部23c,23d間の空間に本体フレーム18の幅方向の一方の側壁が、他方の脚部22c,22d間の空間に本体フレーム18の幅方向の他方の側壁が、それぞれ挿通されて、プラテンローラユニット20は本体フレーム18に取り付けられている。
【0129】
このとき、脚部23c,23d間の空間を通過する回転軸21aの軸受26が、本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合し、脚部22c,22d間の空間を通過する回転軸21aの軸受25が、本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合することで、本体フレーム18に対するプラテンローラユニット20の前後方向の位置および上下方向の位置が固定される。
【0130】
また、幅方向内側に位置する脚部23d(22d)の、二股に分岐した2つの脚23e(22e),23f(22f)は、図16(a)に示すように、その間に、最下部において幅d3の隙間を有し、最下部よりも上方の部分において幅d3よりも広い幅d4(d3<d4)の隙間を有している。
【0131】
さらに、支持部材22,23の各金属板22h,23hは、図16(b)に示すように、内側の脚部23d(22d)の、幅方向内側の面に密着して設けられていて、この各金属板22h,23hは、回転軸21aが貫通した部分よりも下方の部分において、脚部23d(22d)と同様に二股に分岐されており、この二股の間の隙間の幅d2は、幅d3より大きく、かつ幅d4より小さい(d3<d2<d4)。
【0132】
なお、金属板23h(22h)の二股間の隙間の中心と脚23e(22e),23f(22f)間の隙間の中心とは一致し、これらの中心の上方への延長線上に、回転軸21a(あるいは軸受26(25))の中心が位置するように構成されている。
【0133】
一方、本体フレーム18の両側壁の、各切欠き18a,18bの下方であって、各切欠き18a,18bの下縁から、プラテンローラユニット20の軸受25,26の下面から脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が幅d4となる位置までの距離に相当する部分には、これら本体フレームの各側壁から幅方向内側に向けて突出した、直径d1のボス18c,18dが形成されている。
【0134】
そして、これらボス18c,18dの直径d1は、支持部材22,23の金属板22h,23hの二股の間の幅d2と同じか、わずかに小さく設定されており、また、これらボス18c,18dの中心の鉛直線上に切欠き18a,18bの中心が位置するように形成されている。
【0135】
このように構成されている支持部材22,23と本体フレーム18とによると、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合するように、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合するように、プラテンローラユニット20を本体フレーム18に対して鉛直下方に移動させて、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられるが、この下方への移動の際に、図18に示すように、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間にボス18d(18c)が割り込む。
【0136】
ここで、ボス18d(18c)の直径d1は、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)間の最下部における隙間の幅d2より大きいため、この隙間へのボス18d(18c)の進入が進むにしたがって、両脚23e(22e),23f(22f)は、これら両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が拡げられるように、それぞれ外側に弾性変形する。これは、脚23e(22e),23f(22f)が弾性変形しやすい樹脂製であることによるが、本発明においては樹脂製に限定されるものではなく、厚さの薄い金属製であってもよい。
【0137】
一方、支持部材23(22)のうち金属板23h(22h)が二股に分岐した間の隙間の幅d2は、ボス18d(18c)の直径d1と等しいか、わずかに大きいため、ボス18d(18c)は金属板23h(22h)間の隙間を拡げることなく、この隙間に案内されるように進行する。
【0138】
プラテンローラユニット20がさらに下方に移動されると、図19に示すように、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに嵌合し、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合して、下方への移動は停止する。
【0139】
このとき、本体フレーム18の側壁の切欠き18bはプラテンローラユニット20の軸受26の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであり、また、本体フレーム18の側壁の切欠き18aはプラテンローラユニット20の軸受25の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであるため、本体フレーム18に取り付けられた状態での本体フレーム18に対するプラテンローラ21のがたつきを抑制することができる。
【0140】
さらに、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間を進んだボス18d(18c)は、両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間のうち、幅d2(≒d1)の金属板23h(22h)間の隙間よりも広い幅d4に形成された部分に到達する。
【0141】
そして、この幅d4の隙間部分は、ボス18d(18c)の直径d1よりも大きいため、両脚23e(22e),23f(22f)が外側に拡げられた弾性変形は解消する。この結果、ボス18d(18c)の下方は、ボス18d(18c)の直径d1よりも狭い幅d2の隙間(両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間)で閉じられた状態となり、プラテンローラユニット20を上方に移動させる際には、ボス18d(18c)によって、この狭い幅d2の隙間を押し拡げる必要があり、この押し拡げるのに必要な荷重が、プラテンローラユニット20を上方に移動させるのに対向する抵抗力となり、プラテンローラユニット20が本体フレーム18から不用意に脱落するのを防止する。
【0142】
しかも、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられている状態(軸受25,26がそれぞれ本体フレーム18の切欠き18a,18に係合している状態)で、支持部材22,23が軸受25,26を中心にして回動するのを防止することもできる。
【0143】
もちろん、使用者が、プラテンローラユニット20の指掛け部22b,23bに指を掛けて、この抵抗力に逆らって上方に引き上げることにより、プラテンローラユニット20を本体フレーム18から取り外すことは可能であり、このプラテンローラユニット20着脱操作にも、工具を必要とせずに、手作業だけで行うことができる。
【0144】
なお、ボス18d(18c)が配置される金属板23h(22h)間の隙間(ボス係合切欠き部)は、剛性の高い金属部材である金属板23h(22h)によってその両縁部が規定されて形成されているため、この隙間とボス18d(18c)の外径との間の隙間を精度良く管理することができ、一方、ボス18d(18c)を挟持する両脚23e(22e),23f(22f)(脚部)については弾性力を有する樹脂部材23aによって形成されていることにより、ボス18d(18c)を挟持した状態と弾性力に抗しての挟持状態からの離脱とを容易に切り替えることができる。
【0145】
また、このプラテンローラユニット20には、上述した本体フレーム18との係合を実現する構造の他、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40との位置関係を規定する位置決め部も形成されている。
【0146】
すなわち、図15に示すように、プラテンローラユニット20の支持部材22の金属板22hの上部に位置決め切欠き22i(位置決め部)が形成されている。他方の金属板23hにも、金属板22hと同様の位置決め切欠き23i(位置決め部)が、その上部に形成されている。
【0147】
これらの位置決め切欠き22i,23iは、蓋体12を閉位置に移動させた状態(図1、図10参照)において、図4および図7(b)に示すサーマルプリントヘッドユニット40のヘッドフレーム43の両側面に形成された突起46,46とそれぞれ係合して、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42とプラテンローラ21との相対的な動きを規制している。
【0148】
ここで、各金属板22h,23hに形成された位置決め切欠き22i,23iは、図20の要部透視図に示すように、回転軸21aの中心と金属板22h,23hの二股に分岐した間の隙間の中心とを結んだ直線上に、その中心が位置するように形成されている。
【0149】
したがって、蓋体12が閉位置にあるとき、本体フレーム18の一方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18cとが一直線上に並び(図20)、本体フレーム18の他方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18dとが一直線上に並ぶ。
【0150】
プラテンローラユニット20は、蓋体12の閉位置から移動方向に一致する方向(図示上方)に沿って引き上げることで、本体11から取り外すことができるが、蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iには、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46が上方から下方に向けて係合しているため、蓋体12が閉じている状態では、プラテンローラユニット20が誤って外れることがなく、プラテンローラユニット20を本体11に強固に固定しておくことができる。
【0151】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、図12,13に示したように、段付きピン調整部70の可動板71を操作して段付きピン60の段付き部61の位置を変化させることにより、サーマルプリントヘッド41の傾き(前後方向(感熱紙200の送り方向)に対する姿勢)を変更することができる。
【0152】
ただし、図12,13における説明では、サーマルプリントヘッドユニット40の動きは、カバーフレーム17による拘束(爪17b,17c,17dと段付きピン60とバネ19a,19b,19c,19dとによる拘束)条件下での動きであったが、蓋体12が閉位置にある状態においては、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46がプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iに係合して拘束されるとともに、発熱素子列42とプラテンローラ21とが接触することで、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42がバネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して上方(バネ19a,19b,19c,19dを縮める方向)に変位する。
【0153】
このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位の中心は、段付き部61に乗り上がっているピン係合切欠き部45の周囲の部分であるが、さらに、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46とプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iとの係合により、サーマルプリントヘッドユニット40は、この突起46,46回りの回転と位置決め切欠き22i,23iの延びた上方への動きに規制された動きとなる。
【0154】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40全体としては、後部の上下方向の位置(ピン係合切欠き部45の周囲の部分の位置)が段付きピン調整部70による段付き部61の位置により規定されつつ、突起46,46回りでの回転変位として規定された姿勢(傾き)となる。
【0155】
図21は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッドユニット40と爪17b,17c,17dと段付きピン60と段付きピン調整部70との関係を示す要部透視図であり、同図(a)は図13相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が下げられた傾きとなった状態を示す図であり、同図(b)は図12相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が引き上げられた傾きとなった状態を示す図である。
【0156】
ここで、図21(a)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(a)に示し、図21(b)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(b)に示す。
【0157】
前述したように、サーマルプリントヘッドユニットの突起46,46は発熱素子列42の略延長線上に設けられていて、この突起46,46に係合する位置決め切欠き22i,23iは、プラテンローラ21の中心を通る鉛直線K上に形成されているため、プラテンローラ21と発熱素子列42とが接触する点Pは、サーマルプリントヘッド41の傾きの如何に拘わらず、常に前述した鉛直線K上に位置する。
【0158】
ここで、図22(a)の状態は、厚さの厚い感熱紙200(例えば、厚さN1)に対応した状態であり、この厚さN1の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN1分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位は、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0159】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(a)に示す点P2となる。
【0160】
一方、図22(b)の状態は、厚さの薄い感熱紙200(例えば、厚さN2(<N1))に対応した状態であり、この厚さN2の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN2分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位も、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0161】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(b)に示す点P1となる。
【0162】
つまり、厚さの厚い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P2は、厚さの薄い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P1よりも、感熱紙200の送り方向に沿った上流側となる。
【0163】
ここで、厚さの厚い感熱紙200は厚さの薄い感熱紙200よりも剛性(腰)が強い。そして、図23(a)に示すように、感熱紙200は一見、点Pの直上である点P2において発熱素子列42と密着するはずであるが、実際は、上述した剛性の強さの影響で、接しているプラテンローラ21の周表面(弾性を有する)を、本来の円弧状から直線状に変形させるため、点P2における密着性は弱いか、あるいは密着せず、点P2よりも下流側の点P1において、より適正な強さの密着が得られている。
【0164】
一方、厚さの薄い感熱紙200は厚さの厚い感熱紙200よりも剛性(腰)が弱く、図23(b)に示すように、感熱紙200は、点P2よりも下流側である点P1において、その見た目通り、発熱素子列42と適正な密着が得られている。
【0165】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ100によれば、感熱紙200の厚さが厚いものであっても薄いものであっても、発熱素子列42の同一の部分(点P1)で良好な密着を得ることができ、感熱紙200の厚さの如何に関わらず高品位な印刷を実現することができる。
【0166】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッド41とプラテンローラ21とが分離された構造を有しているため、蓋体12を閉じる(閉位置に移動させる)だけの簡単な操作によって、感熱紙200のセッティングを完了することができる。
【0167】
また、このサーマルプリンタ100は、工具無しの簡単な手作業により、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に着脱することができ、サーマルプリントヘッドユニット40の簡単な交換作業を実現している。
【0168】
一方、プラテンローラユニット20も、工具無しの簡単な手作業により、本体フレーム18に着脱することができ、プラテンローラユニット20の簡単な交換作業を実現している。
【符号の説明】
【0169】
11 本体
12 蓋体
14 用紙収容部(用紙収容室)
41 サーマルプリントヘッド
51 ヘッドカバー部(ヘッドカバー)
52 ダンパー部(ダンパー)
100 サーマルプリンタ
200 感熱紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路上であって、前記サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーに、前記用紙経路を送られる用紙に押し当てられるダンパーが、一体的に設けられたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記用紙収容室は、ロール状に巻回されたロール紙を前記用紙として収容するものであり、
前記ダンパーは、前記ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、前記ヘッドカバーに対して回動可能に軸支されたダンパー板と、前記回動可能の範囲の一方の回転方向に向けて前記ダンパー板を付勢する回動付勢部材とを備え、
前記ダンパー板の、前記回動付勢部材の付勢方向に向いた面に前記用紙が接するように、前記ダンパーは前記用紙経路に配置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記ヘッドカバーは、前記用紙経路を通過する前記用紙を検出する用紙検出機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項1】
サーマルプリントヘッドと用紙収容室との間の用紙経路上であって、前記サーマルプリントヘッドの一部を覆うヘッドカバーに、前記用紙経路を送られる用紙に押し当てられるダンパーが、一体的に設けられたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記用紙収容室は、ロール状に巻回されたロール紙を前記用紙として収容するものであり、
前記ダンパーは、前記ヘッドカバーの、用紙送り方向の上流側端を軸として、前記ヘッドカバーに対して回動可能に軸支されたダンパー板と、前記回動可能の範囲の一方の回転方向に向けて前記ダンパー板を付勢する回動付勢部材とを備え、
前記ダンパー板の、前記回動付勢部材の付勢方向に向いた面に前記用紙が接するように、前記ダンパーは前記用紙経路に配置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記ヘッドカバーは、前記用紙経路を通過する前記用紙を検出する用紙検出機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−161817(P2011−161817A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27830(P2010−27830)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】
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