説明

サーマルヘッドによる印字方法及び印字装置

【課題】
移動する印字対象物上の印字個所に対して、横移動しないサーマルヘッドにより明瞭な印字を行えるサーマルヘッドによる印字方法と印字装置を提供する。
【解決手段】
移動する印字対象物である包装用フィルム10上の印字個所を横移動しないサーマルヘッド8とプラテン9で挟んで印字を行うようにしたサーマルヘッド8による印字装置であって、プラテン9の両側に配置されプラテン9の側方における包装用フィルム10の溜り量を変化させる移動ロール15,16を有し、その移動ロール15,16の変位によって包装用フィルム10の印字個所の移動速度を、サーマルヘッドにより明瞭な印字を行うことができる範囲内に予め定めた所定速度に保って印字を行うようにしている。これによって所定速度以下及び所定速度以上で移動する包装用フィルムの印字個所に対しても明瞭な印字を行える構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する印字対象物上の印字個所を横移動しないサーマルヘッドとプラテンで挟んで印字を行うようにしたサーマルヘッドによる印字方法及び印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装装置などで、搬送供給されている包装用フィルムにおける所定間隔毎の印字個所に製造番号、製造日、賞味期限などを間欠的に印字することが行われる。包装装置に対する包装用フィルムは、包装工程の関係で変化する速度で供給される事が多いが、包装用フィルムのような搬送速度が変化する印字対象物に対してサーマルヘッドによって明瞭な印字を行わせるために従来種々の工夫がなされて来た。すなわち、サーマルヘッドによる印字は、印字対象物とサーマルヘッドとの間に相対的な移動を与えつつサーマルヘッドにパルス電流を与えて、そのパルスによる点の印字により所定の記号や文字を印字するものであり、その印字を形成する点の集合を所定の密度を有するものとする必要があり、印字対象物とサーマルヘッドとの間の相対速度が大きくなりすぎても小さすぎても所定の明瞭な印字がおこなわれないため、その相対速度を所定範囲内、好ましくは、一つの所定速度に収めるための工夫がなされて来た。
【0003】
その一例として、特許文献1や特許文献2によって提案されているのは、印字対象物の搬送速度を検出し、その印字対象物の速度がサーマルヘッドによる印字速度に同期するよう印字対象物の送り速度を制御するというものである。
また、特許文献3で提案したものは、移動中の印字対象物の移動速度を検出し、その検出移動速度に同期させてサーマルヘッドに通電することによって、速度が変化する印字対象物に印字するというものである。この特許文献3で提案した印字方式によれば、印字対象物の速度がどのように変わってもその速度に追随して所定の印字を明瞭に行えるという極めて有用な技術であるが、この印字方式のように印字速度を制御するには精密な印字制御システムを必要とし印字装置のコストを高めることとなる。
【0004】
一方、包装装置における包装速度は益々高速化されつつあり、そのため包装装置に供給される包装用フィルムの搬送速度も益々大きくなって、包装用フィルムに対する印字のために許容される時間も短縮されつつある。印字速度が大きくなって印字のための時間が短くなるとサーマルヘッドによる印字に要するエネルギーが増大しサーマルヘッドの規格を超えて使用する事態が生ずるばかりでなく、サーマルヘッドによるリボンテープの加熱に必要な時間が取れず明瞭な印字を行うことが出来なくなる。
包装速度からは毎秒1000mm程度でも明瞭な印字を行うことが求められて来ている。
【0005】
また、サーマルヘッドにより明瞭な印字を行うためには、サーマルヘッドと印字対象物の間に或る速度以上の相対移動が必要であるが、包装ラインで包装用フィルムに対して印字を行ってゆく場合、包装工程との関係で印字対象物がその限界速度以下となっている状態のときに印字を行うことが必要になることも起こり、そのような印字限界速度以下の状態のときも明瞭な印字を行えるようにすることが求められる。明瞭な印字を行える印字対象物の低速度は、例えば毎秒20mm程度である。
【特許文献1】特開昭60−067183号公報
【特許文献2】特開平02−153769号公報
【特許文献3】特開平08−217039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、移動する印字対象物上の印字個所に対して、サーマルヘッドを横移動させることなく、その印字対象物がサーマルヘッドによる印字限界を超える速度で移動している場合も、或いは、サーマルヘッドによる印字限界に達しない速度で移動、場合によっては、印字対象物が停止している状態でも明瞭な印字を行える範囲内の一定速度で印字対象物を移動させて明瞭な印字を行えるようにしたサーマルヘッドによる印字方法と、そのための印字装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するための印字方法として、移動する印字対象物上の印字個所を横移動しないサーマルヘッドとプラテンで挟んで印字を行うサーマルヘッドによる印字方法であって、前記印字個所が前記サーマルヘッドによる印字位置に来たときに前記印字対象物が所定速度に達していないときは前記印字対象物の前記印字個所を前記印字対象物の移動方向に強制変位させて前記所定速度以上の速度で移動する状態にし、前記印字個所が前記サーマルヘッドによる印字位置に来たときに前記印字対象物が前記所定速度を超えているときは前記印字対象物の前記印字個所を前記印字対象物の移動方向と反対方向に強制変位させて前記所定速度以下の速度で移動する状態にして、前記印字個所に対して印字を行うサーマルヘッドによる印字方法を提供する。
【0008】
また、本発明は前記課題を解決するための印字装置として、移動する印字対象物上の印字個所を横移動しないサーマルヘッドとプラテンで挟んで印字を行うサーマルヘッドによる印字装置であって、前記プラテンの両側に配置され前記プラテンの側方における印字対象物の溜り量を変化させる移動ロールを有し、同移動ロールの変位によって前記印字個所の移動速度を変えて、サーマルヘッドによる明瞭な印字が行える範囲内の所定速度を外れる速度で移動する印字対象物の印字個所に対して明瞭な印字を行える構成としたサーマルヘッドによる印字装置を提供する。
【0009】
本発明による印字方法及び印字装置において、印字個所の移動速度として保持される所定速度は予め定めた1つの一定速度であることが望ましいが、その所定速度は或る幅を持たせた値とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のサーマルヘッドによる印字方法においては、移動する印字対象物の移動速度がサーマルヘッドにより明瞭な印字を行える範囲内の所定速度を超えているときは印字対象物の移動方向と反対方向に強制変位させて、印字個所の移動速度を所定速度以下の状態にし、また、移動する印字対象物の移動速度が前記所定速度に達していないときは印字対象物の印字個所を印字対象物の移動方向に強制移動させて所定速度以上の状態にして印字個所に対して印字を行うことにより明瞭な印字を行うことができる。そして印字対象物がサーマルヘッドにより明瞭な印字ができる所定速度又は所定速度の範囲内で移動されている間は印字対象物を上記したように強制変位させない。このように本発明によれば、簡単な手段で、印字対象物の移動速度が大きく変化する状態にあってサーマルヘッドにより明瞭な印字を行える速度内の所定速度を超える高速の搬送状態や、その所定速度に達しない速度の搬送状態になる印字対象物に対しても明瞭な印字ができるようにしており、特に、本発明の印字方法によればリボンテープ全体の送り速度を高速にすることなく印字できるので、リボンテープの送り機構が楽になる。
【0011】
本発明による印字方法は、プラテンの両側に配置した移動ロールを変位させてプラテンの側方における印字対象物の溜り量を変化させることによって印字対象物を強制変位させてサーマルヘッドにより明瞭な印字を行える所定速度で移動されている状態にすることにより楽に印字を行うことができる。
【0012】
次に、本発明の印字装置によれば、前記した本発明の印字方法を容易に実施可能なサーマルヘッドによる印字装置が提供される。特に、本発明による印字装置は、プラテンの両側に移動ロールを設け、その移動ロールを変位させるだけで、サーマルヘッドによる明瞭な印字が行える範囲内の所定速度を超える速度、またはその所定速度以下の速度を含む広い範囲の速度で移動している印字対象物に対してサーマルヘッドにより明瞭な印字を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるサーマルヘッドによる印字方法及び印字装置を図示した実施の一形態に基づいて具体的に説明する。
全体構成を示す図1において、1はリボンテープ2を供給するリボンテープ原反で、そのリール4は、機枠3に設けられたスピンドル5に挿入されて回転自在に保持されている。
6は機枠3に設けられたスピンドルで、このスピンドル6に挿入されたリール7には、リボンテープ原反1から巻き戻されたリボンテープが巻き取られる。8はラインサーマルヘッドで、9はラインサーマルヘッド8の下方に配置されているプラテンを示している。10は印字がなされる印字対象物である包装用フィルムで、ガイドローラ11、プラテン9及びガイドローラ12の上を導かれて矢印方向に変化する速度で図示していない包装装置に供給されるように構成されている。13はリボンテープを案内するガイドローラである。
【0014】
リボンテープ原反1から巻き戻されたリボンテープ2は、複数個のガイドローラ13とラインサーマルヘッド8の下を通って、スピンドル6に挿入されたリール7に巻き取られるように構成されている。15,16は2つの移動ロールで、プラテン9の両側に位置する状態で、3角形状のフレーム14に回転可能に支持され、フレーム14がプラテン9と同軸な揺動軸(図示していない)回りに揺動されることによって移動ロール15、16はプラテン9と同軸な揺動軸の回りに一体となって揺動されるように構成されている。移動ロール15、16はプラテン9の上を移送される包装用フィルム10に対し上方からプラテン9の両側で接触するように配置されている。移動ロール15、16が揺動軸まわりに回動されると、プラテン9の上の包装用フィルム10を15’、16’の状態と15’’、16’’の状態の間でプラテン9のいずれか一方の側方に溜りを形成するように作用する。ラインサーマルヘッド8はプラテン9との間でリボンテープ2と包装用フィルム10を重ねて挟んで包装用フィルム10に対して所要の印字を行う構成となっている。
【0015】
図示した印字装置は以上説明した構成を有しており、以下その作用について説明する。
包装用フィルム10は、ガイドローラ11、プラテン9及びガイドローラ12の上を通過して図示していない包装装置に供給される。その包装用フィルム10には包装商品に対応した所定間隔毎の印字個所に製造番号、製造日、賞味期限などが間欠的に印字される。その印字は、包装用フィルム10の印字個所がプラテン9の上に来たことを検出したときに制御装置が働いて、リボンテープ原反1から所定速度で巻き戻されリール7に巻き取られるリボンテープ2をラインサーマルヘッド8がプラテン9上のフィルム10に当接させて行われる。
【0016】
フィルム10に対して印字を行うときに、フィルム10の搬送速度がラインサーマルヘッド8により明瞭な印字を行える速度の範囲内に予め定めた所定速度を超えていることが図示していないフィルム速度検知装置によって検知されると、プラテン9の両側に配設されている移動ロール15、16は、それぞれ15’、16’の位置に変位される。移動ロール15、16の変位は、検出されたフィルム10の速度が、ラインサーマルヘッドによる印字が前記した所定速度で行われるように制御される。このため、プラテン9の上に送られる包装用フィルム10は供給方向と反対方向(図1で右方向)に戻される状態となり、プラテン9上でのフィルム10の供給速度が低下され、その低下されて所定移動速度とされたフィルム10の印字個所に印字が行われる。
【0017】
逆に、フィルム10に対して印字を行うときにフィルム10の搬送速度がラインサーマルヘッド8による印字限界速度内に定めた所定速度に達していないことが図示していないフィルム速度検知装置によって検知されると、プラテン9の両側に配設されている移動ロール15、16は、それぞれ15’’、16’’の位置に変位される。移動ロール15、16の変位は、検出されたフィルム10の速度が、前記した所定速度に増加されるように制御される。このため、包装用フィルム10はプラテン9の上で供給方向(図1で左方向)に引き出される状態となり、プラテン9上でのフィルム10の供給速度が増大され、その増加されて所定移動速度とされたフィルム10の印字個所に印字が行われる。
このように図1に示した印字装置によれば、簡単な手段で、包装用フィルムの移動速度がサーマルヘッドにより明瞭な印字を行える範囲内に予め定めた所定速度を超える高速の搬送状態や、その所定速度に達しない速度の搬送状態になる包装用フィルムに対して印字を行うときに、印字対象フィルムを所定速度で移動される状態にすることによって明確な印字を行うことができる。
【0018】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内で種々の変形、変更を加えてよいことはいうまでもない。
例えば、前記した実施の形態における移動ロール15,16及びフレーム14による構成の強制変位機構に限らず、他の構成による機構を用いてよい。また、プラテンとしてローラを用いているが平板状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の一形態による印字装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1 リボンテープ原反
2 リボンテープ
3 機枠
4 リール
5 スピンドル
6 スピンドル
7 リール
8 ラインサーマルヘッド
9 プラテン
10 フィルム
11 ガイドローラ
12 ガイドローラ
13 ガイドローラ
14 フレーム
15 移動ロール
16 移動ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する印字対象物上の印字個所を横移動しないサーマルヘッドとプラテンで挟んで印字を行うサーマルヘッドによる印字方法であって、前記印字個所が前記サーマルヘッドによる印字位置に来たときに前記印字対象物が予め定めた所定速度に達していないときは前記印字対象物の前記印字個所を前記印字対象物の移動方向に強制変位させて前記所定速度以上の速度で移動する状態にし、前記印字個所が前記サーマルヘッドによる印字位置に来たときに前記印字対象物が前記所定速度を超えているときは前記印字対象物の前記印字個所を前記印字対象物の移動方向と反対方向に強制変位させて前記所定速度以下の速度で移動する状態にして、前記印字個所に対して印字を行うことを特徴とするサーマルヘッドによる印字方法。
【請求項2】
前記印字対象物の前記強制変位を、前記プラテンの両側に配置した移動ロールを変位させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッドによる印字方法。
【請求項3】
移動する印字対象物上の印字個所を横移動しないサーマルヘッドとプラテンで挟んで印字を行うサーマルヘッドによる印字装置であって、前記プラテンの両側に配置され前記プラテンの側方における前記印字対象物の溜り量を変化させる移動ロールを有し、同移動ロールの変位によって前記印字個所の移動速度を変えて、前記印字対象物の前記印字個所を予め定めた所定速度で移動する状態にして印字を行える構成としたことを特徴とするサーマルヘッドによる印字装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−230136(P2007−230136A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56468(P2006−56468)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000149273)株式会社大生機械 (35)
【Fターム(参考)】