説明

サーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙及び該孔版原紙を用いた製版方法

【課題】サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱により所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を溶融・穿孔することができるサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙及び該孔版原紙を用いた製版方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂フィルムが厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムであり、接着剤がポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部配合した二液型接着剤であり、接着剤の浴にスクリーン印刷用紗体を浸漬して該紗体の孔を含んで両面に塗布した後にスクリーン印刷用紗体の片面に前記ポリエステルフィルムを貼り合わせたスクリーン印刷用孔版原紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱により所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を溶融・穿孔することができると共に、水性インキ及び油性インキのいずれをも使用できる熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを張り合わせてなるサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙及び該孔版原紙を用いた製版方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、厚さ1.5〜2μmのポリエステルフィルムとスクリーン印刷用紗体とをアミンを有する不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤としてポリイソシアネート樹脂を配合した接着剤で張り合わせたサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙(特許文献1)を商品化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2946030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記サーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙は、厚さ1.5〜2μmのポリエステルフィルムを使用しているので、効率良く安価にシルクスクリーン印刷用孔版原紙を製作することができるが、耐印刷性が枚数で100枚程度と印刷耐久性に限界があり、また、シルクスクリーン印刷用孔版原紙を強く張って印刷した場合には印刷枚数が極端に少なくなるという問題点があった。
【0005】
本発明者は、前記問題点に鑑み、厚さ2μm以上のポリエステルフィルムを使用した場合でも、簡易に感熱性スクリーン印刷用孔版原紙に画像を形成することができるサーマル方式によって穿孔像を形成して油性インキを用いて印刷することができ、しかも、印刷耐久性に優れ、繰り返し使用できるサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙(以下、単に「孔版原紙」ともいう。)を提供することを技術的課題として研究、実験を重ねた。
【0006】
その結果、熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを貼り合わせる接着剤を、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネートとウレタン樹脂とを含有する硬化剤とから構成し、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤を使用し、当該接着剤の浴にスクリーン印刷用紗体を浸漬して該紗体の孔を含んで両面に塗布した後にスクリーン印刷用紗体の片面に前記ポリエステルフィルムを貼り合わせれば、熱可塑性合成樹脂フィルムとして厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムを使用しても、前記サーマル方式によって容易に穿孔像が形成でき、印刷耐久性に優れ、かつ、引っ張り強度に優れるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0008】
即ち、本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙は、熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを接着剤にて張り合わせてなり、サーマルヘッドの熱により熱可塑性合成樹脂フィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成させるスクリーン印刷用孔版原紙であって、前記熱可塑性合成樹脂フィルムが厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムであり、前記接着剤層がポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合してなるものである。
【0009】
また、本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙は、熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを接着剤にて張り合わせて熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体との間に接着剤層を形成してなり、サーマルヘッドの熱により熱可塑性合成樹脂フィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成させるスクリーン印刷用孔版原紙であって、前記熱可塑性合成樹脂フィルムが厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムであり、前記接着剤がポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤であり、前記接着剤の浴にスクリーン印刷用紗体を浸漬して該紗体の孔を含んで両面に塗布した後にスクリーン印刷用紗体の片面に前記ポリエステルフィルムを貼り合わせてなるものである。
【0010】
また、本発明は、前記サーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙において、接着剤の浴が主剤1に対して20〜30倍の希釈剤を配合してなるものである。
【0011】
また、本発明は、前記いずれかのサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙において、厚さ3〜5μmのポリエステルフィルム表面にシリコンの薄膜が形成されているものである。
【0012】
また、本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を用いた製版方法は、厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムとポリエステル製紗体とを、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤にて張り合わせたサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙の該ポリエステルフィルム面に、サーマルヘッドを当接させ、該サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱によりポリエステルフィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成した後、ポリエステル製紗体に付着している溶融滓をアノン、MEK、アノンと酢酸エチルとの混合液にて拭き取って除去するようにしたものである。
【0013】
さらに、本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を用いた製版方法は、厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムとナイロン製紗体とを、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤にて張り合わせたサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙の該ポリエステルフィルム面に、サーマルヘッドを当接させ、該サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱によりポリエステルフィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成した後、溶融してナイロン製紗体に付着している溶融滓をアセトン又は酢酸エチルにて拭き取って除去するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、膜厚3〜5μmのポリエステルフィルムを使用した感熱性スクリーン印刷用孔版原紙に容易に穿孔像を形成することができるから、印刷耐久性に優れ、繰り返し使用することができ、さらに、穿孔像の形成が容易であっても引っ張り強度に優れるという相反する効果を奏するサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を模型的に示した縦断面図である。
【図2】本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を模型的に示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0017】
実施の形態1.
【0018】
図1は本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を模型的に示した縦断面図であり、同図において、1はサーマルヘッドに発熱させた熱によりポリエステルフィルムと接着剤とを溶融・穿孔して所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成させるサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙であり、該孔版原紙1は、厚さ3〜5μmのポリエステルフィルム2とスクリーン印刷用紗体3とを、ポリウレタンを含有する主剤にトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤を主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤4を用いて接着したものである。
【0019】
本発明に係る孔版原紙1の構成を詳しく説明すれば次の通りである。
【0020】
ポリエステルフィルム2は、厚さ3〜5μm が適しており、2.5μm以下では孔版原紙の多数刷りによる印刷耐久性に限界があり、孔版原紙を強く張った際にピンホールが発生する確率が高くなる。6μm以上ではサーマルヘッドによる発熱では溶融・穿孔が難しい。
【0021】
ポリエステルフィルム2は、熱変形・溶融温度が40〜90℃のものを使用すればサーマルヘッドの発熱温度を90〜200℃以下とすることができるから市販サーマルヘッドを用いることができる。
【0022】
スクリーン印刷用紗体3は、スクリーン印刷用紗体として市販されている厚さ50〜80μmのポリエステル製紗体やナイロン製紗体やシルク製紗体を使用すればよい。
【0023】
接着剤4は、ポリウレタンを主剤とし、トリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含んでなる樹脂を硬化剤とする二液型のものである。市販品では、三井化学ポリウレタン株式会社製の二液型接着剤:タケラックA-310(主剤・溶剤含有水酸基末端ウレタン樹脂:ウレタン樹脂48%、エタノール0.2%、酢酸エチル51.8%:固形分48%)とタケネートA-3(硬化剤・溶剤含有イソシアネート基末端ウレタン樹脂:ウレタン樹脂76%、トリレンジイソシアネートC0.2%、酢酸エチル23.8%:固形分76.2%)が最適である。
【0024】
主剤と硬化剤との配合割合を主剤:硬化剤=1:0.7〜1(固形分換算;100重量部:110〜160重量部)とすれば、表1及び表2に示すように接着強度と耐溶剤性と製版性とにおいて好適な結果が得られる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1及び表2(厚さ3μm及び4μmの各ポリエステルフィルムにおいて同じ結果であった。)の接着強度と耐溶剤性と製版性はポリエステルフィルム2として厚さ3μmと4μmの三菱ダイヤホイルヘキスト株式会社製ポリエステルフィルムを、それぞれスクリーン印刷用紗体3として厚さ58μmのポリエステル紗体を使用し、接着強度と耐溶剤性とは得られた孔版原紙を油性インキ用溶剤(ビニエイトソルベント:商品名:株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製)に7日間漬けて各ポリエステルフィルムの剥離状態と耐溶剤性とを調べた。評価「×」は液中にて完全剥離、「△」は引っ張れば剥離、「○」は油性インキを用いてスクリーン印刷に200回使用して変化なし、「◎」は同じく500回使用しても変化なし。製版性はサーマルヘッドプリンタ(ECOPROOYO株式会社製:発熱温度140℃)にて溶融・穿孔状態を調べた。評価「×」は変化なし(製版性が悪い)、「△」は細字が溶融・穿孔、「○」は細字に加えて太字も溶融・穿孔、「◎」は太字に加えてべた面も溶融・穿孔(製版性が最も良い)。
【0028】
表1及び表2に示す試験結果より、主剤:硬化剤が1:0.6より耐溶剤性が増し、1:0.7以上とすることにより油性印刷インキの溶剤に耐える耐溶剤性を有する接着剤層を形成することができることを確認した。また、硬化剤の配合割合を増すことによって水分不足による接着不良が発生したので、ラミネート機での貼り合わせの際に、乾燥ドラムで希釈剤を取り除いた後の巻き取り装置に巻き込む直前に強力な噴霧装置を設置して多量の水分を与えることによって接着不良を無くすことができることを確認した。
【0029】
次に、本発明に係る孔版原紙の製造・製版方法について説明する。
【0030】
先ず、ポリウレタンを含有する主剤(タケラックA-310)とトリレンジイソシアネートとウレタン樹脂とを含有する硬化剤(タケネートA-3)と希釈剤(酢酸エチル)とを1:0.7〜1:20〜30の割合で配合して接着剤4の浴を調製する。主剤1に対して20〜30倍の希釈剤を配合することにより、接着剤の濃度が薄くなってポリエステルフィルム2とスクリーン印刷用紗体3との間に薄い接着剤の層が形成され、これにより、穿孔像を容易に形成することができる。30倍を超える希釈剤では、接着力が弱く、引っ張り強度が低下するので好ましくない。
【0031】
次に、スクリーン印刷用紗体3を前記接着剤4浴に漬け込んでスクリーン印刷用紗体3を接着剤4で満たした後にポリエステルフィルム2上に置いて重ね、シリンダー付きの圧着ロールに通して張り合わせる。この方法により、従来の常法によるスクリーン印刷用紗体3の片面に接着剤4を塗布したポリエステルフィルム2とスクリーン印刷用紗体3との貼り合わせで接着面積が少ないことによる引っ張り耐性の弱さが解消され、スクリーン印刷用紗体3のメッシュ内にも接着剤4が浸透してスクリーン印刷用紗体3の両面に接着剤4が塗布された状態となって層が形成され、ポリエステルフィルム2が接着されるために一層引っ張り強度に優れる孔版原紙を得ることができる。
【0032】
続いて、スクリーン印刷用紗体3と接着剤4とポリエステルフィルム2との積層体を、表面温度をポリエステルフィルム2が萎縮・変形しない温度に設定した乾燥ローラに通して接着剤4を乾燥させて希釈剤を取り除いた後、接着不良が起こることを防ぐために当該積層体を巻き取り装置で巻き込む直前に強力な噴霧装置を用いて多量の水分を与え、その後、40℃〜50℃の乾燥室にて約2週間乾燥させて孔版原紙1を得る。
【0033】
なお、補助的に乾燥ローラの終点部において大型扇風機にて強風を吹き付け、再度約3気圧に設定された圧着ロールに通せば希釈剤を充分蒸発させることができる。
【0034】
製版工程では、前記孔版原紙1をサーマルプリンターにセットし、前もって描画用アプリケーションソフトで作成した画像データに基づきサーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱によりポリエステルフィルム2と接着剤4とを溶融・穿孔して穿孔像を形成する。
【0035】
その後、スクリーン印刷用紗体3に付着している溶融滓を酢酸エチル、アノン、トルエン、アセトン、MEK、ガンマーブチルラクトン又はキシロール等で拭き取って除去し、製版用原紙とする。
【0036】
スクリーン印刷用紗体3とポリエステルフィルム2とを接着剤4にて張り合わせる際の押圧力は3気圧前後に設定するのが好ましい。2気圧以下ではスクリーン印刷用紗体3に対して接着剤4の層が厚く形成され、4気圧以上ではポリエステルフィルム2にシワが入ってしまうので好ましくない。また、乾燥ローラの表面温度は約45℃に設定すればよい。
【0037】
なお、ポリエステルフィルム2と接着剤4とが溶融した溶融滓が付着したままの穿孔像であっても、油性インキは浸透するので、印刷画像を得ることはできるが、スクリーン印刷用紗体3としてポリエステル製紗体を使用した場合にはアノン、MEK又はアノンとMEKとの混合液で、スクリーン印刷用紗体3としてナイロン製紗体を使用した場合にはアセトン又は酢酸エチルで拭き取ると溶融滓を完全に除去することができるので、より綺麗な印刷画像を得ることができる。
【0038】
また、熱可塑性合成樹脂フィルムとして、膜厚3〜5μmのポリエステルフィルム2を使用し、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネートとウレタン樹脂とを含有する硬化剤とを用いる接着剤4を使用して、当該接着剤4の浴にスクリーン印刷用紗体3を浸漬して該紗体3の孔を含んで両面に塗布した後にスクリーン印刷用紗体3の片面に前記ポリエステルフィルム2を貼り合わせると共に、張り合わせる際は、搬送速度を従来より減速して温度約50℃以下の環境下で乾燥しているので、サーマルヘッドに発熱される90〜200℃の熱でも溶融・穿孔することができると共に、油性インキ用としての充分な強度が得られる。
【0039】
また、本発明に係る孔版原紙は、温度40〜200℃で変形・溶融できる厚さ3〜5μmのポリエステルフィルム2とスクリーン印刷用紗体3とを、油性インキ用溶剤には実質的に溶融しない接着剤4で張り合わせているので、サーマルヘッドの耐久性が保証されている使用温度である200℃以下でもポリエステルフィルム2と二液型接着剤4とが溶融・穿孔され、所望の文字、図形又は模様等の穿孔画像を形成することができる。
【0040】
また、本発明に係る孔版原紙の製版では、描画用アプリケーションソフトで所望の文字、図形又は模様等を描き、パーソナルコンピュータからサーマルプリンターに描画信号を送くることにより、孔版原紙1に容易に穿孔像を形成することができるので、従来の写真製版方式を採る必要もなく、簡易に業務用スクリーン印刷原板を得ることができる。
【0041】
実施の形態2.
【0042】
図2は本発明に係るサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を模型的に示した縦断面図であり、図1と同一符号は同一又は相当部分を示し、本実施の形態では、前記実施の形態1における孔版原紙1のポリエステルフィルム2面に、サーマルヘッドとポリエステルフィルム2との摩擦を解消して滑りよくするためと静電防止のためにシリコン薄膜5を形成したものである。
【実施例1】
【0043】
ポリエステルフィルム2は、変形・溶融温度40〜200℃、厚さ4μm の三菱化学ポリエステル株式会社製のポリエステルフィルムを使用した。スクリーン印刷用紗体3は、厚さ71μm、幅1,130mm、1200メッシュの日本特殊織物株式会社製ポリエステル紗を使用した。接着剤4には、三井化学ポリウレタン株式会社製の二液型接着剤(タケラックA-310、タケネートA-3)を使用し、その主剤(タケラックA-310:ウレタン樹脂48%、エタノール0.2%、酢酸エチル51.8%:固形分48%)と硬化剤(タケネートA-3:ウレタン樹脂76%、トリレンジイソシアネートC0.2%、酢酸エチル23.8%:固形分76.2%)と希釈剤(酢酸エチル)とを1:0.75:20の割合で混合・希釈して用いた。シリコン薄膜5は、都化成株式会社製の滑り剤シリコーン(シリコン10%、トルエン90%溶液)を使用した。また、ポリエステルフィルムとポリエステル紗との張り合わせにはウエットラミネータ機を使用した。
【0044】
先ず、ウエットラミネータ機の接着剤槽にポリエステル紗を漬け込んで紗体の孔を含んで両面に1m当たり1.2〜1.3gの前記接着剤4を塗布し、続いて、ポリエステル紗の接着剤塗布面の片面に前記ポリエステルフィルムを重ねて置き、常法により3気圧に設定されたシリンダー付きの圧着ロールに通してポリエステル紗とポリエステルフィルムとを張り合わせた。
【0045】
その後、接着剤4により張り合わされたポリエステル紗とポリエステルフィルムとの積層体を表面温度約45℃の乾燥ローラに通し、該乾燥ローラの終点部にて大型扇風機により強風を吹き付けてさらに乾燥させ、続いて、3気圧に設定された圧着ロールに再び通し、約98%の希釈剤を蒸発させた。
【0046】
続いて、当該積層体を巻き取り装置で巻き込む直前に接着不良を防ぐために強力な噴霧装置を用いて多量の水分を与えて巻き取り、その後、40℃〜50℃の乾燥室にて約2週間乾燥させ、最後に、ポリエステルフィルム面に滑り剤シリコン液を約10g/mの割合で塗布し、乾燥させて厚さ90μmの孔版原紙を得た。
【0047】
前記孔版原紙をサーマルプリンター(感熱製版機:SLK250/300:商品名:グラフテック株式会社製)にセットしてサーマルヘッドに当接させ、前もって描画用アプタケーションソフトで作成した画像データに基づきサーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して温度200℃に発熱させて、ポリエステルフィルムと接着剤層とを溶融・穿孔して穿孔像を形成した。その後、穿孔像のポリエステル紗に付着している溶融滓をアノンにて拭き取って除去して印刷用原紙を得た。
【0048】
前記印刷用原紙をアルミスクリーン枠に空気シリンダを用いたスクリーンテンションナー機を使用して引っ張り強度1,2(測定機:トープラスクリーンテンショナーゲージ)で当該印刷用原紙を張った製版とした後にTシャツ用油性インク(プラチナゾール:商品名:WILFLEX BLAK:POLYONE CORPORATION製)でTシャツ用回転式自動印刷機にて500枚印刷したが異常は見られなかった。また、水性インク(プリントカラー:株式会社色素オオタ・オータス製)を使用した場合も異常は見られなかった。
【0049】
また、ここに得た前記印刷用原紙を用いて、ガラス用油性インキ(株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製)でガラス板100枚にスクリーン印刷した後、印刷用原紙に残ったガラス用油性インキを溶剤(エイトソルベント:商品名:株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製)で拭き取ったが、印刷用原紙に異常は見られなかった。さらに、印刷を複数回繰り返し、その都度、エイトソルベント溶剤でガラス用油性インキを拭き取ったがやはり異常は見られなかった。
【0050】
また、ここに得た前記印刷用原紙を用いて、ビニール用油性インキ(ビニエイト:商品名:株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製)でビニールシート300 枚にスクリーン印刷した後、印刷用原紙に残ったビニール用油性インキを溶剤(エイトソルベント:商品名:株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製)で拭き取ったが、印刷用原紙に異常は見られなかった。さらに、印刷を複数回繰り返し、その都度、エイトソルベント溶剤でガラス用油性インキを拭き取ったがやはり異常は見られなかった。
【0051】
前記三井化学ポリウレタン株式会社製の二液型接着剤(タケラックA-310、タケネートA-3)を主剤(タケラックA-310):硬化剤(タケネートA-3)=1:0.7〜1(固形分換算:48g:53.34〜76.20g;100重量部:111〜159重量部)とすれば、前記表1及び表2に示すように接着強度と耐溶剤性と製版性とにおいて好適な結果が得られる。なお、111は53.34/48より算出し、159は76.20/48より算出したものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムを使用したスクリーン印刷用孔版原紙を提供できるから、印刷耐久性に優れており、多岐に渡る用途、特に油性インキによる印刷を必要とする用途に利用できる。
【0053】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【符号の説明】
【0054】
1 孔版原紙
2 ポリエステルフィルム
3 紗体
4 接着剤
5 シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを接着剤にて張り合わせてなり、サーマルヘッドの熱により熱可塑性合成樹脂フィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成させるスクリーン印刷用孔版原紙であって、前記熱可塑性合成樹脂フィルムが厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムであり、前記接着剤層がポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合してなるものであることを特徴とするサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙。
【請求項2】
熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを接着剤にて張り合わせて熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体との間に接着剤層を形成してなり、サーマルヘッドの熱により熱可塑性合成樹脂フィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成させるスクリーン印刷用孔版原紙であって、前記熱可塑性合成樹脂フィルムが厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムであり、前記接着剤がポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤であり、前記接着剤の浴にスクリーン印刷用紗体を浸漬して該紗体の孔を含んで両面に該接着剤を塗布した後にスクリーン印刷用紗体の片面に前記ポリエステルフィルムを貼り合わせてなることを特徴とするサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙。
【請求項3】
接着剤の浴が主剤1に対して20〜30倍の希釈剤を配合してなる請求項2記載のサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙。
【請求項4】
厚さ3〜5μmのポリエステルフィルム表面にシリコンの薄膜が形成されている請求項1乃至3記載のサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙。
【請求項5】
厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムとポリエステル製紗体とを、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤にて張り合わせたサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙の該ポリエステルフィルム面に、サーマルヘッドを当接させ、該サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱によりポリエステルフィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成した後、ポリエステル製紗体に付着している溶融滓をアノン、MEK、アノンと酢酸エチルとの混合液にて拭き取って除去することを特徴とするサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を用いた製版方法。
【請求項6】
厚さ3〜5μmのポリエステルフィルムとナイロン製紗体とを、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤とからなり、主剤の固形分100重量部に対して硬化剤を固形分換算で110〜160重量部の割合で配合した二液型接着剤にて張り合わせたサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙の該ポリエステルフィルム面に、サーマルヘッドを当接させ、該サーマルヘッドをドットマトリックスに加熱して発熱させた熱によりポリエステルフィルムと接着剤層とを溶融・穿孔させて所望の文字、図形又は模様等の穿孔像を形成した後、ナイロン製紗体に付着している溶融滓をアセトン又は酢酸エチルにて拭き取って除去することを特徴とするサーマルヘッド感熱性スクリーン印刷用孔版原紙を用いた製版方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−214635(P2010−214635A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61299(P2009−61299)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(596144355)株式会社色素オオタ・オータス (1)
【Fターム(参考)】