説明

シアノバクテリア毒素の存在または不存在を決定するための方法およびキット

本発明の実施形態は、シアノバクテリアが生成した毒素を検出するためのキットおよび方法を対象とする。この方法およびキットは、弱いカチオン性およびアニオン性交換樹脂を用いるサンプル調製工程および4,000から15,000psiにて操作する小粒子分析カラムを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月31日に出願されたU.S.Provisional Application No.61/110,021の利益を享受し、この継続である。この出願の内容は、この全体が参考として本明細書に明確に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本出願の発明は、連邦政府または政府基金または助成金を用いては行われなかった。
共同研究契約書に賛同するグループ名
本出願の発明は、共同研究契約書の下で行われなかった。
配列表の参照
本出願は、核酸、ペプチドまたはタンパク質配列を有していない。
【0002】
発明の背景
本発明の実施形態は、シアノバクテリアによって生成された毒素を検出するためのキットおよび方法を対象とする。シアノバクテリアは、一般に地表淡水に見出される。毒性シアノバクテリアの異常発生は、こうした異常発生が毒素を上水道に放出する可能性があるという問題を有する。主要なシアノバクテリア毒素は、環状ペプチド、アルカロイドおよびリポ多糖類を含む。
【背景技術】
【0003】
例として、限定ではないが、シアノバクテリア毒素を構成する主要な環状ペプチドは、ノデュリン、ミクロシスチン−LR、ミクロシスチンRRおよびミクロシスチンYRである。ノデュリンの式を以下に示す:
【0004】
【化1】

式1
ミクロシスチンLRの式を以下に示す:
【0005】
【化2】

式2
ミクロシスチンRRの式を以下に示す:
【0006】
【化3】

式3
ミクロシスチンYRの式を以下に示す:
【0007】
【化4】

式4
ミクロシスチンLAの式を以下に示す:
【0008】
【化5】

式5
ミクロシスチンLYの式を以下に示す:
【0009】
【化6】

式6
ミクロシスチンLWの式を以下に示す:
【0010】
【化7】

式7
ミクロシスチンLFの式を以下に示す:
【0011】
【化8】

式8
【0012】
アルカロイドシアノバクテリア毒素は、例として、限定ではないが、アナロキシン、およびサキシトキシンを含む。アナロキシンは、例として、限定ではないが、アナトキシンa、アナトキシンa(S)、ホモアナトキシン−a、シリンドロスペルモプシンを含む。
【0013】
アナトキシンaの式を以下に示す:
図.アナトキシン、アナトキシンa、ホモアナトキシン−aおよびアナトキシンa(S)の化学構造。
【0014】
【化9】

式9、10、11
【0015】
シリンドロスペルモプシンの式を以下に示す:
【0016】
【化10】

式12
【0017】
シアノバクテリアのリポ多糖類毒素は、同様には特徴付けられず、環状ペプチド、アルカロイドよりも毒性が低いことは明らかである。
【0018】
本明細書は、この存在または不存在を決定しようとする化合物を示すために「分析物」という用語を使用する。
【0019】
本明細書は、麦角アルカロイドの存在または不存在を試験しようとする物質を意味するために「サンプル」という用語を使用する。サンプルは、動物または植物からの組織または体液として得ることができる。例えば、限定ではないが、サンプルは、葉、種子またはその他の植物組織、または動物源から得られた血液、尿、唾液または組織を含んでいてもよい。
【0020】
「抽出物」は、サンプル中に保持される1つ以上の化合物が溶液中に溶解するように、サンプルを溶媒に供することによって得られる溶液である。
【0021】
「アリコート」は、サンプルのサブパートまたは画分を示すために使用される。
【0022】
クロマトグラフィは、溶液中の化合物を分離する方法である。クロマトグラフィは、異なるデバイス中で行うことができる。本明細書は、固相が置かれるカラムおよび/または漏斗を含む低圧デバイスを指すために「カートリッジ」という用語を使用する。サンプルは、この固相に適用され、低圧または重力下を通過する。これらのデバイスは、通常、粒子を除去し、所望の化合物を濃縮することによってサンプルを調製するために使用される。
【0023】
本明細書の目的のために、「カラム」という用語は、溶液が圧力下で強制的に固相マトリックスを通る高圧デバイスの意味で使用される。固相は、粒子状または多孔質モノリスであることができる。
【0024】
質量分析は、化合物によって形成されたイオンの質量電荷比を決定するために使用される。質量分析器は、より大きい分子のフラグメントを形成するために使用され、こうしたフラグメントおよび完全なイオンは、こうした化合物を同定するために使用される。
【0025】
標準は、既知の量の化合物を有する溶液であり、この溶液は、非標準サンプルから誘導されたデータとデータを比較するために使用される。標準は、重同位体を含む標識を有する化合物を使用でき、これにより質量分析器の操作者が標準と分析物とを区別できるようになる。
【0026】
シアノバクテリア毒素の信頼できる迅速な分析に対する関心が、上水道をモニターし、市民の健康および漁業を保護するために必要とされている。本発明に先行して、シアノバクテリア毒素を検出するために使用される方法は、環境中のこれらの化合物に関して特異的でもなく、または高感度でもなかった。本発明に先行して、これらの方法は、時間消費型であり、労働集約型であった。
【発明の概要】
【0027】
本発明の実施形態は、シアノバクテリア毒素の信頼できる迅速な分析を対象とする。本発明の実施形態は、上水道をモニターし、一般市民の健康および漁業を保護するために有用である。本発明の実施形態は、シアノバクテリア毒素の検出のための方法およびキットを対象とする。
【0028】
サンプル中のシアノバクテリア毒素の存在または不存在を検出するための方法を対象とする本発明の実施形態の1つは、シアノバクテリア毒素を潜在的に含む水サンプルを調製し、固相抽出デバイスに保持されたまたは濃縮された毒素サンプルを形成する工程を含む。次に、保持されたまたは濃縮された毒素サンプルは、移動相中に溶出され、サンプル抽出物を形成する。サンプル抽出物は、中間粒径が1から3ミクロンの粒子をパッキングしたクロマトグラフィカラムのヘッドに、6,000から15,000psiの圧力下で入れ、前記サンプル抽出物がこうしたシアノバクテリア毒素を含有していた場合に、シアノバクテリア毒素を潜在的に含む保持されたサンプルを形成する。シアノバクテリア毒素を潜在的に含む前記保持されたサンプルからの化合物は、有機溶媒の勾配の下で前記クロマトグラフィカラムから溶出され、少なくとも1つの溶出化合物を形成する。この溶出された化合物は、前記サンプル抽出物がシアノバクテリア毒素を含有していた場合に、こうしたシアノバクテリア毒素を含む。さらに、シアノバクテリア毒素を潜在的に含む溶出された化合物は、質量分析器に入れられ、マススペクトルを形成する。マススペクトルは、シアノバクテリア毒素の存在または不存在を決定するために使用される。
【0029】
本発明の方法の実施形態は、溶出のためのクロマトグラフィカラムのヘッドにサンプル抽出物を配置する工程、および前記シアノバクテリア毒素を質量分析器中に配置する工程から、15分未満、および好ましくは10分未満の時間で行うことができる。
【0030】
好ましくは、質量分析器は、1つ以上のシアノバクテリア毒素フラグメントを形成し、このフラグメントのスペクトルは、シアノバクテリア毒素の存在または不存在を同定および決定するために使用される。好ましくは、この方法は、親イオンおよびフラグメントからのスペクトルと標準を用いて得られたものとを比較する工程を含む。
【0031】
好ましくは、カラムは、架橋されたエチルハイブリッドおよび高強度シリカから成る群から選択される粒子を有する。好ましい粒子は、3ミクロン未満の中間平均直径を有する。
【0032】
好ましくは、サンプル抽出物は、弱いアニオン性交換樹脂上でアルカロイドシアノバクテリア毒素を抽出することによって形成される。好ましくは、サンプル抽出物は、弱いカチオン性交換樹脂上で環状ペプチドシアノバクテリア毒素を抽出することによって形成される。サンプル抽出物は、好ましくは弱いアニオン性交換樹脂または弱いカチオン性交換樹脂を有する抽出カートリッジまたは抽出デバイスを用いて形成される。最も好ましくは、方法は、弱いカチオン性交換樹脂および弱いアニオン性交換樹脂の両方を用いて、少なくとも1つのサンプル抽出物を形成する工程を含む。弱いアニオン性および弱いカチオン性官能基で機能化されることができる好適な樹脂は、ポリマー、ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)を含む。
【0033】
本発明のさらなる実施形態は、シアノバクテリア毒素の存在または不存在に関してサンプルの分析を行うためのキットを対象とする。本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、製造品、方法を行うための部品、試薬およびコンポーネントの組み立て品を指す。キットは、通常、こうしたラップ、箱、クラムシェルまたはバッグのような好適なパッキング中に使用説明書と共にパッキングされる。本発明の実施形態は、質量分析により1つ以上のシアノバクテリア毒素の同定を較正および促進するための1つ以上の標準を含む。キットは、好ましくはサンプル抽出物を形成するためのサンプル調製デバイス、存在する場合にはシアノバクテリア毒素が同定のための質量分析器に放出されるように、シアノバクテリア毒素を放出する勾配を適用する際にサンプル抽出物の化合物を分離するためのカラムを含む。
【0034】
好ましいカラムは、1から3ミクロンの平均サイズを有する粒子のパッキングを有する。好ましい粒子は、架橋エチルハイブリッドおよび高強度シリカから成る群から選択されるクロマトグラフィ面を有する。好ましいカラムは、6,000から15,000psiの操作圧力を有する。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、次の図面および詳細な説明を見る際に当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法を行うための機器を概略的に示す。
【図2】本発明の特徴を具現化するキットを示す。
【図3】シアノバクテリア毒素の分離およびマスクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な記述
本発明の実施形態は、シアノバクテリア毒素の検出のための方法およびキットとして詳細に記載される。本発明の実施形態は、上水道をモニターし、市民の健康および漁業、ならびに食味を保護するための有用性を有する。続く説明は、ここで本発明者らが本発明を実施するのに最良の形態であると考えたことを反映する好ましい実施形態である。こうした説明は、本発明の教示から逸脱することなく、当業者によって変更および代替できる。
【0038】
サンプル中のシアノバクテリア毒素の存在または不存在を検出するための方法を対象とする本発明の実施形態の1つを、番号11によって全体的に指定される機器に関して図1に概略的に示す。番号11によって全体的に指定される機器は、次の主要な要素:サンプル調製手段13、クロマトグラフィシステム15、カラム17および質量分析器19を有する。
【0039】
方法は、サンプル調製手段13に関して、潜在的にシアノバクテリア毒素を含む水サンプルを調製する工程を含む。示されるように、サンプル調製手段13は、少なくとも1つのサンプル抽出カートリッジ21a、および好ましくは2つのサンプル調製カートリッジ21aおよび21bを含む。
【0040】
サンプル抽出カートリッジ21aおよび21bは、断面で示される。各サンプル抽出カートリッジ21aおよび21bは、固相23aおよび23bを有する。固相は、粒子の床または多孔質モノリス樹脂を含んでいてもよい。好ましい固相は、粒子状であり、ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の表面化学を有する。即ち、粒子は、完全に、ポリマーを含んでいてもよく、またはこうしたポリマーは、異なる材料から選択される基材上の表層としてもたらされる。基材として使用できる共通の材料としては、例として、限定ではないが、シリカ、アルミニウムおよび酸化チタンならびに他のポリマー化合物が挙げられる。ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の表面化学は、サンプル抽出カラムの粒子が水湿潤性の表面上にシアノバクテリア毒素を保持できるようにする、またはより選択的にまたはより効率的にシアノバクテリア毒素を捕捉する様式で表面を機能化できる。
【0041】
ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の表面化学を有するサンプル抽出カートリッジは、Waters Corporation(Milford,Massachusetts,USA)によって、商標名OASIS(登録商標)として販売されている。ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の表面化学を有していないサンプル抽出カートリッジも使用できる。こうしたサンプル抽出カートリッジは、Waters Corporation(Milford,Massachusetts,USA)によって、商標名SEP−PAKとして販売されている。
【0042】
表面機能化された粒子は、シアノバクテリア毒素の優先的または効率的捕捉のために、好ましくは弱いカチオン性交換樹脂および/または弱いアニオン性交換樹脂として機能化される。例えば、限定ではないが、サンプル抽出物は、アルカロイドシアノバクテリア毒素に有利な弱いアニオン性交換樹脂上での抽出によって形成され、環状ペプチドシアノバクテリア毒素に有利な弱いカチオン性交換樹脂上で形成される。
【0043】
従って、示されるように、サンプルは、2以上の部分に分割され、1つの部分は、アルカロイドシアノバクテリア毒素に有利な弱いアニオン性交換樹脂を含む粒子床23aを有する第1のサンプル抽出カートリッジ21aに向かう。第2のサンプル抽出カートリッジ21bは、環状ペプチドシアノバクテリア毒素に有利な弱いカチオン性交換樹脂を含む粒子床23bを有する。弱いカチオン性または弱いアニオン性交換樹脂を有するこうしたサンプル抽出カートリッジ21aおよび21bは、Waters Corporation(Milford,MA)によって商標名OASIS(登録商標)WCXおよびOASIS(登録商標)WAXとして販売されているものを含む幾つかの供給元によって販売されている。
【0044】
サンプル調製手段は、こうしたデバイスが、例として、限定ではないが、単一カラム、カートリッジおよびウェルデバイス、ならびに複数のウェルデバイス、例えば、96ウェルプレートなどを含む多くの形態を有することができることを理解した上で、単一ウェルタイプのデバイスとしてサンプル抽出カートリッジ21aおよび21bとして示される。
【0045】
最も好ましくは、方法は、弱いカチオン性交換樹脂および弱いアニオン性交換樹脂の両方を用いて少なくとも1つのサンプル抽出物を形成する工程を含む。サンプル抽出カートリッジ21aからのサンプル抽出物は、溶出され、バイアル25aに入れられ、サンプル抽出カートリッジ21bからのサンプル抽出物は、溶出され、バイアル25bに入れられる。サンプル抽出カートリッジ21aおよび21bは、シアノバクテリア毒素を保持し、移動相を用いて抽出する際に、より濃縮された形態でシアノバクテリア毒素を放出する。このサンプル抽出物は、バイアル25aおよび25bに入れられ、保持される。
【0046】
バイアル25aおよび25bは、バイアル25’、25’’および25’’’を保持する円形トレイ27として概略的に示されるクロマトグラフィシステム15のオートサンプラーに入れられる。クロマトグラフィシステムは、当分野において周知である。好ましいクロマトグラフィシステム15は、6,000から15,000psiの操作圧力を有する。こうしたクロマトグラフィシステム15は、Waters Corporation(Milford,Massachusetts,USA)によって、商標名ACQUITY(登録商標)として販売されている。
【0047】
次に、図2に示されるように、方法は、クロマトグラフィカラム17のヘッドにサンプル抽出物を配置する工程を含む。クロマトグラフィカラム17は、1から3ミクロンの中間粒径を有する粒子を有するようにパッキングされている。クロマトグラフィカラム17は、6,000から15,000psiの操作圧力を有する。好ましいカラムは、架橋されたエチルハイブリッド組成物または高強度シリカのクロマトグラフィ面を有する粒子を有する。1.7ミクロンの粒径を有するカラム17は、架橋エチルハイブリッド化学に関してBEHと指定されるおよび高強度シリカ化学に関してHSSと指定されるWaters Corporation(Milford,Massachusetts,USA)によって商標名ACQUITY(登録商標)として販売される。バイアル25’、25’’および25’’’に保持されるサンプル抽出物が1つ以上のシアノバクテリア毒素を有する場合、保持されたシアノバクテリア毒素は、勾配条件下で溶出されるまで粒子に保持される。サンプルの化合物は、1つ以上の保持された化合物を形成するためにカラム上に保持される。
【0048】
次に、1つ以上の保持された化合物は、有機溶媒の勾配下で溶出され、溶出された化合物を形成する。さらに、前記サンプル抽出物がこうしたシアノバクテリア毒素を含有する場合、こうした溶出された化合物は毒素である。好ましい勾配は、0.1%のギ酸(HO)を含む第1の溶媒および0.1%のギ酸(アセトニトリル)を含む第2の溶媒を含む。勾配は、0.1から1.0ml/分の流速にて適用され、より好ましくは約6分の期間にわたって約0.45ml/分で適用され、第1の溶媒の2%から第2の溶媒の80%まで移動する。
【0049】
この溶出されたシアノバクテリア毒素は、存在する場合、質量分析器19に配置され、マススペクトルを形成する。シアノバクテリア毒素の存在または不存在は、マススペクトルから決定される。
【0050】
好ましくは、質量分析器19は、シアノバクテリア毒素の1つ以上のフラグメントを形成する。質量分析でのフラグメントの形成は、MS/MSとして記載される場合があり、当業者には既知である。フラグメントのスペクトルは、シアノバクテリア毒素の存在または不存在を同定および決定するために使用される。質量分析器は、Waters Corporation(Milford,Massachusetts,USA)の商標名MICROMASS(登録商標)TQDを含む、幾つかの供給元によって販売される。
【0051】
存在する場合、シアノバクテリア毒素の同定は、既知の標識されたシアノバクテリア毒素または密接に関連する化合物を含む1つ以上の標識を、サンプルシアノバクテリア毒素の様式で保持され、溶出されるべきカラムのヘッドに配置することによって促進される。溶出された標識シアノバクテリア毒素は、質量分析器19に置かれ、標準シアノバクテリア毒素の既知のスペクトルを形成し、これとサンプルのスペクトルとを比較する。こうした標識されたシアノバクテリア毒素または密接に関連する化合物は、当業者に既知の重水素で置換された形態で使用される。例はCyclo(Arg−Ala−Asp−D−Phe−Val)および[Leu5]−Enkephalinを特徴とする。
【0052】
クロマトグラフィシステムの小粒子カラムおよび高圧性能により、クロマトグラフィカラムのヘッドにサンプル抽出物を配置し、溶出し、質量分析器中にシアノバクテリア毒素を配置する方法工程を3から15分の期間、および慣用的には約8から9分の期間で行うことができる。
【0053】
好ましくは、質量分析器は、シアノバクテリア毒素の1つ以上のフラグメントを形成し、フラグメントのスペクトルは、シアノバクテリア毒素の存在または不存在を同定および決定するために使用される。好ましくは、方法は、親イオンおよびフラグメントからのスペクトルと、標準から得られたものとを比較する工程を含む。
【0054】
ここで図2を参照すると、番号51で全体的に指定される本発明の特徴を具現化するキットが例示される。キットは、上述の方法に使用するための好適なパッケージングで共に束ねられた部品および試薬ならびに説明書の集合体である。キット51は、1つ以上の標準バイアルを含み、このうち3つは55’、55’’、および55’’’と指定されて示され、質量分析により1つ以上のシアノバクテリア毒素の同定を較正および促進するための標準溶液を含有する。キット51はさらに、抽出カートリッジの形態の1つ以上のサンプル調製デバイスを含み、このうち3つはサンプル抽出物を形成するための21’、21’’および21’’’と指定される。キットはさらに、存在する場合は、シアノバクテリア毒素を同定のために質量分析器に放出するように、シアノバクテリア毒素を放出する勾配の適用に際して、サンプル抽出物の化合物を分離するためのカラム17を含む。キット51はさらに、先行して記載されたように方法におけるこれらの部品および試薬を使用するための説明書57を含む。キットは、当分野において既知の好適なパッケージングを有するように示され、プラスチックラップおよびバブルシェル、箱、ラッピングなどを含んでいてもよい。
【0055】
本発明のさらなる特徴は、次の実施例に関して記載される。
【実施例1】
【0056】
混合モードカートリッジを用いるマルチカラム固相抽出(SPE)
この議論は、湖またはプロセス水またはフィルターまたはその他の表面からの水抽出物からのシリンドロスペルモプシン、アナトキシン−aおよびミクロシスチンの分析に焦点をあてる。
【0057】
方法の要約:
カートリッジは、最初に調整され、平衡化され、直列にロードされる(OASIS(登録商標)WCXが上部にあり、OASIS(登録商標)WAXカートリッジが続き、2つを連結するユニオンを有する。)。一旦ロードされたら、これらは分離され、個々に処理され、2つの別個の実行として実行される。
【0058】
プロトコル:
WAX(6cc 150mg Waters部品番号186002493)−これは、シリンドロスペルモプシンが豊富なもののためである(これは底部にある。)。
条件:3mL MeOH
平衡:5mL H2O
ロード:500mLまでのサンプル水(水のpHをギ酸によりpH5.5にする。)
カラムを分けおよびそれぞれ別々に継続
洗浄:2mL DI H2O中1%ギ酸
洗浄2:2mL MeOH
溶出:3mL DI H2O中1%水酸化アンモニウム
「このまま」実行する、または乾燥するまでエバポレートして移動相にて再構成する
【0059】
WCX(6cc 150mg Waters部品番号186002498)−これはアナトキシン−aおよびミクロシスチンが豊富なもののためである(これは上部にある。)
条件:3mL MeOH
平衡:5mL H2O
ロード:500mLまでのサンプル水(水のpHをギ酸によりpH5.5にする。)
カラムを分けおよびそれぞれ別々に継続
洗浄:2mL DI H2O中pH9の水酸化アンモニウムまたは重炭酸アンモニウム
洗浄2:2mL MeOH
溶出:3mL DI H2O中1%ギ酸
これらのカートリッジは、「このまま」実行する、または乾燥するまでエバポレートして移動相にて再構成する。
【実施例2】
【0060】
極圧高速液体クロマトグラフィ/MS/MSによるアナトキシン−a、シリンドロスペルモプシン、およびミクロシスチン
この実施例は、高速液体クロマトグラフィおよび質量分析によるアナトキシン−a、シリンドロスペルモプシン、および幾つかのミクロシスチンの分離およびマススペクトル分析を特徴とする。
【0061】
使用されるカラム:HSS T3 2.1X100mm@35C
OR BEH C18 2.1X100mm@35C
溶媒A:HO中の0.1%ギ酸
溶媒B:アセトニトリル中の酸中0.1%ギ酸
[勾配表]
【0062】
【表1】

【0063】
これらの結果を図3に示す。これらの結果は、同定された化合物が、9分未満で分離され、同定され得ることを示唆している。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
【表10】

【0073】
【表11】

【0074】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のシアノバクテリア毒素の存在または不存在を決定する方法であって、
シアノバクテリア毒素を潜在的に含む水サンプルを調製し、固相抽出デバイス上に保持されたまたは濃縮された毒素サンプルを形成する工程
前記保持されたまたは濃縮された毒素サンプルを、移動相中に溶出または再構成し、サンプル抽出物を形成する工程;
前記サンプル抽出物は、中間粒径が1から3ミクロンの粒子をパッキングしたクロマトグラフィカラムのヘッドに、6,000から15,000psiの圧力下で入れ、前記サンプル抽出物がこうしたシアノバクテリア毒素を含有していた場合に、シアノバクテリア毒素を潜在的に含む保持されたサンプルを形成する工程;
シアノバクテリア毒素を潜在的に含む前記保持されたサンプルからの化合物を、有機溶媒の勾配の下で前記クロマトグラフィカラムから溶出し、前記サンプル抽出物がシアノバクテリア毒素を含有していた場合に、こうしたシアノバクテリア毒素を含む少なくとも1つの溶出化合物を形成する工程;および
シアノバクテリア毒素を潜在的に含む前記溶出された化合物を質量分析器に入れ、マススペクトルを形成し、前記マススペクトルから、前記シアノバクテリア毒素の存在または不存在を決定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記質量分析器が、シアノバクテリア毒素の1つ以上のフラグメントを形成し、ならびに前記フラグメントの前記スペクトルを、前記シアノバクテリア毒素の存在または不存在を同定および決定するために使用する、請求項1の方法。
【請求項3】
クロマトグラフィカラムのヘッドに前記サンプル抽出物を配置する前記工程、溶出する前記工程、および前記シアノバクテリア毒素を質量分析器中に配置する前記工程を、15分未満の時間で行う、請求項3の方法。
【請求項4】
前記粒子が、架橋されたエチルハイブリッドおよび高強度シリカから成る群から選択される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記粒子が、2ミクロン未満の中間平均直径を有する、請求項1の方法。
【請求項6】
前記サンプル抽出物が、弱いアニオン性交換樹脂上でアルカロイドシアノバクテリア毒素を抽出することによって形成される、請求項1の方法。
【請求項7】
前記サンプル抽出が、弱いカチオン性交換樹脂上で環状ペプチドシアノバクテリア毒素を抽出することによって形成される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記抽出カートリッジが、ポリマーポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)を含む粒子を有する、請求項1の方法。
【請求項9】
シアノバクテリア毒素の存在または不存在に関するサンプルの分析を行うキットであって:
質量分析により1つ以上のシアノバクテリア毒素の同定を較正および促進するための標準、
サンプル抽出物を形成するためのサンプル調製デバイス、
存在する場合には前記シアノバクテリア毒素が同定のための質量分析器に放出されるように、前記シアノバクテリア毒素を放出する勾配を適用する際にサンプル抽出物の化合物を分離するためのカラム
を含む、キット。
【請求項10】
前記カラムが、1から3ミクロンの粒径を有する、請求項9のキット。
【請求項11】
前記粒子が、架橋エチルハイブリッドおよび高強度シリカから成る群から選択されるクロマトグラフィ面を有する、請求項10のキット。
【請求項12】
前記カラムが、6,000から15,000psiの操作圧力を有する、請求項11のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−507720(P2012−507720A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534696(P2011−534696)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/062299
【国際公開番号】WO2010/051295
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】