説明

シェル触媒、その製造方法、及びその使用

【課題】Ni及びCu及び/又はPd、さらにMn及び/又はMoが含まれるか、又は、Ni及びMnとMoとを含む、シェルを備えた開放孔触媒担体を有するシェル触媒、その製造方法、及び水素化への使用を提供する。
【解決手段】気体によって担体の流動床を生じさせ、楕円状経路又は環状経路で流動させ、該流動している担体に触媒金属化合物溶液を噴霧・乾燥し、焼成し、さらに噴霧された金属化合物の金属成分を酸化状態0に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族類、オレフィン類、アルキン類、及びオキソ化合物の水素化は、主にNi担持触媒を用いて化学工業において行われている。一般的に、この種の触媒は、Niが十分に付着した開放孔触媒担体を備える。
【0003】
現段階のNi触媒は、比較的低い活性を有する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の課題は、それゆえ比較的高い活性を有するNi触媒を提供することにある。
【0005】
本発明によれば、この課題は、NiとCu及び/又はPdとさらにMn及び/又はMoも含み、又は、NiとMn及びMoも含む、シェルを備えた開放孔触媒担体を有するシェル触媒によって達成される。
【0006】
意外にも、Ni,Cu及びMn;Ni,Cu及びMo;Ni,Pd及びMn;Ni,Pd及びMo;Ni,Cu,Pd及びMn;Ni,Cu,Pd及びMo;Ni,Cu,Pd,Mn及びMo;Ni,Cu,Mn及びMo;Ni,Pd,Mn及びMo;又は、Ni,Mn,Moを含む、シェルを備えた開放孔触媒担体を有するシェル触媒が、比較的高い活性を有することが見出された。
【0007】
さらに、本発明によるシェル触媒は特に水素化反応における比較的高い選択性により特徴付けられることが立証された。
【0008】
シェル触媒は、従来技術として知られている。シェル触媒については“卵殻”及び“卵白”シェル触媒の間で特徴が描写される。“卵殻”触媒は、触媒活性物質が触媒担体の外方側シェルにあり、担体の外表面のシェルが内側に広がり触媒担体の核に触媒活性物質がないシェル触媒である。一方、“卵白”シェル触媒では、シェル内方側が、表面に隣接した触媒担体の領域、おおよそ担体外表面の下側に触媒活性物質で担持されており、触媒活性物質によって占められていない外方側シェルが触媒毒を捕捉するためにありこのようにしてその下側の触媒活性物質を毒から保護する。“卵白”型のシェル触媒についても、触媒担体の核は、触媒活性物質がない。
【0009】
本発明のシェル触媒は、“卵殻”又は“卵白”型のシェル触媒であり、好ましくは、“卵殻”型のシェル触媒である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸化状態0でNiとCu及び/又はPdとが存在することが提供される。
本発明の触媒が活性型で存在する場合、Ni及びCu;Ni及びPd;Ni、Cu及びPd;又はNiのみ(Ni/Mn/Moシェル触媒の場合)は酸化状態0を有する。そうでなければ、指定された金属は、酸化状態で、また、金属成分が酸化状態0に変わり得る化合物の形態で存在し得る。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態では、Mn及び/又はMoが酸化物で存在することが提供される。
【0012】
本発明の触媒が活性型で存在する場合、Mn、Mo、又は、Mn及びMoは酸化物で存在する。非活性型では、金属は、酸化物へと変化し得る化合物の形態でシェル中に存在し得る。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態では、Ni、Cu及びMnが触媒担体のシェルに含まれている。
【0014】
Ni、Cu及びMnが触媒担体のシェルに含まれている場合、本発明のシェル触媒のさらに好ましい実施形態によって、シェル触媒のNi/Cu原子比が0.5〜30、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10であること、これとは独立して、Ni/Mn原子比が1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは2〜30、最も好ましくは3〜20であることが提供される。
【0015】
本発明のシェル触媒の別の実施形態によれば、触媒担体のシェルは、Ni、Pd及びMoを含む。
【0016】
Ni、Pd及びMoが触媒担体のシェルに含まれている場合、本発明のシェル触媒の好ましい実施形態によって、シェル触媒のNi/Pd原子比が10〜500、好ましくは20〜400、より好ましくは30〜300、これとは独立して、Ni/Mo原子比が1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30、最も好ましくは2〜20であることが提供される。
Ni、Mn及びMoが触媒担体のシェルに含まれている場合、本発明のシェル触媒の好ましい実施形態によって、Ni/Mn原子比が1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは2〜30、最も好ましくは3〜20、これとは独立して、Ni/Mo原子比が1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30、最も好ましくは2〜20であることが提供される。
【0017】
本発明のシェル触媒の別の好ましい実施形態によれば、シェル触媒におけるNi割合がシェル触媒の重量に対して5重量%〜15重量%であることが提供される。
【0018】
シェルの厚さが小さくなれば、本発明のシェル触媒の選択性が高まる。本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒のシェルは、2200μm未満、好ましくは1000μm未満、好ましくは500μm未満、さらに好ましくは30〜200μmの厚さを有する。触媒のシェルの厚さは、顕微鏡によって視覚的に測定することができる。
【0019】
触媒担体の比表面積が小さくなれば、本発明の触媒の選択性は高まる。さらに、触媒担体の比表面積が小さくなれば、選択性における相当な損失を受けることなくシェルの選択厚さが大きくなる。本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、触媒担体の比表面積が160m2/g以下、好ましくは140m2/g未満、好ましくは135m2/g未満、さらに好ましくは120m2/g未満、より好ましくは100m2/g未満、さらにより好ましくは80m2/g未満、そして特に好ましくは65m2/g未満であることが望ましい。触媒担体の“比表面積”は、DIN 66131及びDIN 66132に準じた窒素吸着によって決定される、触媒担体のBET表面積を意味する。BET法に関わる出版物は、J. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)に見受けられる。
【0020】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が160〜40m2/g、好ましくは140及び50m2/gの間、好ましくは135及び50m2/gの間、さらに好ましくは120及び50m2/gの間、より好ましくは100及び50m2/gの間、最も好ましくは100及び60m2/gの間の比表面積を有することが提供され得る。
【0021】
本発明の触媒の選択性が触媒担体の総細孔容積に影響されることが見出された。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が0.30ml/g以上、好ましくは0.35ml/gを超える、好ましくは0.40ml/gを超える、BJHに準じた総細孔容積を有する。触媒担体の総細孔容積は、DIN 66134に従って決定される(窒素吸着によるメソポーラス固体の細孔径分布及び比表面積の決定(Barrett,Joyner及びHalendaによる方法 BJH))。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が0.3ml/g〜1.2ml/g、好ましくは0.4ml/g〜1.1ml/g、より好ましくは0.5ml/g〜1.0ml/gの、BJHに準じた総細孔容積を有する。
【0023】
触媒担体の比表面積及び総細孔容積を決定すべく、試料は、好ましくは吸着及び脱離等温線が記録できるMikromeritics社ASAP 2010型の全自動窒素ポロシメータを用いて測定する。
【0024】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、できれば少なくとも90%がメソ細孔及びマクロ孔から形成されていることが望ましい。これは、本発明の触媒、特に比較的大きいシェル厚さを備えたシェルの、拡散限界によって影響される活性低下と反対に作用する。ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ孔は、この場合、それぞれ2nm未満の直径、2〜50nmの直径、及び50nmを超える直径を有することを意味する。総細孔容積におけるメソ細孔及びマクロ孔の割合は、DIN 66134に準じて決定される細孔径分布から得られる(窒素吸着によるメソポーラス固体の細孔径分布及び比表面積の決定(Barrett,Joyner及びHalendaによる方法 BJH))。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本発明の触媒の触媒担体は0.30g/mlを超える、好ましくは0.35g/mlを超えるかさ密度を有し、また、特に好ましくは0.35及び0.6g/mlの間のかさ密度を有する。
【0026】
細孔拡散限界をさらに減らすべく、本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が8nm〜50nm、好ましくは10nm〜35nm、また好ましくは11nm〜30nmの平均細孔直径を有することが提供され得る。平均細孔直径は、上記のごとく示され解明されたように触媒担体の細孔径分布から得られる。
【0027】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は、1及び150μval/gの間、好ましくは5及び130μval/gの間、好ましくは10及び100μval/gの間、特に好ましくは10及び60μval/gの間の酸性度を有する。担体の酸性度は、例えば、担体材料の選択によって、又は、触媒担体若しくは触媒を酸で含浸させることによって影響を受け得る。
【0028】
触媒担体の酸性度は、次のようにして決定される:
水100ml(pH空試験値)が細かく砕いた触媒担体1gに加えられ、そして撹拌を伴って15分間抽出が行われる。0.01nNaOH溶液を用いて少なくともpH7.0までの滴定が続き、滴定が徐々に行われる;1mlのNaOH溶液が抽出物に最初に滴下して加えられ(1滴/秒)、2分間待った後、pHを読み、さらに1mlのNaOHが滴下されて加えられる、など。用いた水の空試験値が決定され、そして酸性度計算値がそれに応じて補正される。滴定曲線(pHに対するml 0.01NaOH)が次にプロットされ、そしてpH7における滴定曲線の交点が決定される。pH7の交点でのNaOH消費に由来するモル当量が、触媒担体に対する10-6当量/gで計算される。
【数1】

【0029】
好ましい実施形態によれば、本発明の触媒の触媒担体は、有形体として形成されている。
【0030】
原則としては、本発明の触媒の触媒担体は、いかなる形でも有し得る。しかしながら、触媒活性が球状、円柱状(丸みのある末端表面のものでもよい)、孔のある円柱状(丸みのある末端表面のものでもよい)、三葉状、“被覆錠剤”、四葉、輪状、ドーナツ状、星状、車輪状、“逆”車輪状、又は、撚り糸状、好ましくはリブ付撚り糸状、星型撚り糸状に形成されている場合は、特に好ましくは球状であることが望ましい。
【0031】
触媒担体は、望ましくは、大きくても1mm〜50mm、好ましくは2mm〜15mmで測定される。
【0032】
触媒担体が球状で形成されている場合、触媒担体は、好ましくは1mm〜25mmの直径、好ましくは3mm〜10mmの直径を有する。
【0033】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は、少なくとも50重量%、好ましくは80重量%、そして特に好ましくは少なくとも90重量%のSiO2、Al23、ケイ酸アルミニウム、ZrO2、TiO2、HfO2、MgO、酸化ニオブ、若しくは天然層状ケイ酸塩、又は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、そして特に好ましくは少なくとも90重量%の、上記指定材料の1種又は2種以上の混合物でなる。
【0034】
本発明のシェル触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の天然層状ケイ酸塩でなることが提供される。
【0035】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が少なくとも80重量%のモンモリロナイトでなることが提供される。
【0036】
“フィロケイ酸塩”が文献上でも用いられている“天然層状ケイ酸塩”は、本発明の構成内で、天然資源を処理した又は処理しなかったケイ酸塩材料を意味し、全てのケイ酸塩の構造的な基礎単位を形成するSiO4四面体が層間で互いに架橋し一般式[Si252-になっている。これら四面体の層は、主にAl及びMgのカチオンがOH又はOによって八面体状に囲まれるいわゆる八面体の層と交互に生じる。特徴は、例えば2層フィロケイ酸塩及び3層フィロケイ酸塩の間で描写される。本発明の構成内の好ましい層状ケイ酸塩は、粘土鉱物であり、特にカオリナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、マイカ、バーミキュライト、スメクタイトであり、そしてスメクタイト、特にモンモリロナイトがとりわけ好ましい。“層状ケイ酸塩”という用語の定義は、例えば、“Lehrbuch der anorganischen Chemie”, Hollemann Wiberg, de Gruyter, 第102版, 2007 (ISBN 978-3-11-017770-1)、又は、“Rompp Lexikon Chemie”, 第10版, Georg Thieme Verlag under “Phyllosilikat”で見つけられる。天然層状ケイ酸塩が担体材料として使用前に受ける典型的な処理は、例えば、酸活性化層状ケイ酸塩又は漂白土が得られる酸を用いた処理を含み、及び/又は焼成を含む。本発明の構成内における特に好ましい天然層状ケイ酸塩は、ベントナイトである。確かに、ベントナイトは天然層状ケイ酸塩というよりも、むしろ層状ケイ酸塩を含む主に粘土鉱物の混合物であり、主にモンモリロナイトである。天然層状ケイ酸塩がベントナイトであるこの場合、天然層状ケイ酸塩は、触媒担体の中にベントナイトの形態で又はベントナイトの構成成分として存在する。
【0037】
本発明の触媒は、触媒担体が例えば撹拌又は混合機によって伝えられる比較的高い力学的荷重圧力を受ける個別処理工程の間に、複数の触媒担体に“バッチ”方法を受けさせることにより、通常、調製される。さらに、本発明の触媒は、反応器の充填の間に強い力学的荷重圧力を受け、意図しない粉塵の形成という結果になり、触媒担体を損傷し、特に金属を含有するそのシェルを損傷し得る。本発明の触媒は、それゆえ20N以上、好ましくは30N以上、さらに好ましくは40N以上、最も好ましくは50N以上の硬度を有することが望ましい。
【0038】
硬度は、Dr. Schleuniger Pharmatron AGの8M錠剤硬度試験機によって確定し、触媒を130℃で2時間乾燥させた後、99のシェル触媒の平均を決定し、装置の設定は次の通りである:
硬度 N
触媒担体からの距離 5.00mm
時間遅延 0.80 秒
フィードタイプ 6 D
速度 0.60mm/秒
【0039】
触媒の硬度は、例えば、原料の選択、相当する担体混合物から形成される未処理触媒担体の焼成持続時間、及び/又は焼成温度を通じて、例えば触媒担体の調製工程のあるパラメータを変えることにより、又は、特にメチルセルロースやマグネシウムステアレートのような填料により、影響を受け得る。
【0040】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体の水吸収率は、水吸収による重量増加として計算された40%〜75%、好ましくは50%〜70%であることが提供され得る。吸収率は、気体泡がもはや担体試料から抜けなくなるまで10gの担体試料を脱イオン水に30分間浸すことによって決定される。過剰な水が傾けて除かれ、浸された試料が綿タオルで拭かれて試料から付着水分が取り除かれる。水含有触媒担体は、次に秤量されそして吸水率が次のようにして計算される:
(取り出した重量(g)−そのものの重量(g))×10=吸水率(%)
【0041】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒がP、Na、K、Co、及びMgからなる群より選ばれた少なくとも1種のプロモータを有することが提供され得る。プロモータは、原則として、本発明の目的に適するように当業者に知られたいかなる化学形態でも存在する。しかしながら、本発明においては、プロモータが触媒中に元素形態又は酸化物形態で存在することが好ましい。
【0042】
本発明は、方法、特に本発明のシェル触媒の製造方法に関するものであり、該方法では、触媒担体は、Ni化合物並びにCu化合物をも、及び/又はPd化合物及びさらにMn化合物及び/又はMo化合物を含んで溶解され、又は、Ni化合物並びにMn化合物及びMo化合物をも含んで溶解されている溶液で噴霧される。
【0043】
本発明の方法で製造されたシェル触媒は、比較的均一な厚さを備えた比較的薄いシェルを有し、これが触媒の比較的高い選択性を導くということが見出された。
【0044】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、P、Na、K、Co、及びMgからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の少なくとも1種の化合物が溶液中に溶解されて含まれていることが提供される。
【0045】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、さらに、
−触媒担体が流動床において楕円状経路又は環状経路で動く、気体による触媒担体の流動床の生成;
−流動床において楕円状経路又は環状経路で溶液に伴って動く触媒担体の噴霧;
を有する方法が提供される。
【0046】
本発明の方法は、好ましくは、触媒担体が楕円状経路又は環状経路で動く、又は、換言すると触媒担体が楕円状経路又は環状に循環する流動床を生成することにより実施される。
従来、粒子が完全に自由に動く状態への床(流動床)の粒子の移行は、緩和点(初期流動化点)といわれ、また、それに対応する流動化速度は、緩和速度といわれている。本発明においては、発明の方法では、(気体の)流動化速度が緩和速度の4倍までであること、好ましくは緩和速度の3倍までであること、より好ましくは緩和速度の2倍までであることが望ましい。
【0047】
本発明の方法の別の実施形態によれば、流動化速度が緩和速度の常用対数の1.4倍までであること、好ましくは緩和速度の常用対数の1.3倍までであること、より好ましくは緩和速度の常用対数の1.2倍までであることが提供され得る。
【0048】
標準的な流動床で操作した場合と異なり、流動床における触媒担体の楕円状又は環状の流動床的な循環移動と噴霧とが組み合わされた作用の効果は、個々の触媒担体がほぼ等しい頻度で噴霧ノズルを通り抜けるというものである。さらに、循環方法は、個々の触媒担体がそれら自身の軸のまわりを回転するようにもすることによって、触媒担体を溶液にかなり均一に含浸する。
【0049】
本発明の方法においては、触媒担体は、好ましくは楕円状又は環状に流動床を循環する。しかしながら、触媒担体が流動床を環状経路で動くことが特に好ましい。
【0050】
触媒担体がどのように流動床内を動くかという概念を与えるために、“楕円状循環”の場合には、触媒担体が流動床中を楕円経路の垂直面において動き、長軸及び短軸の大きさがほとんど変化しないことがはっきりと示され得る。“環状循環”の場合には、触媒担体が流動床中を楕円経路の垂直面において動き、長軸及び短軸の大きさがほとんど変化せず、そして円経路の水平面において動き半径の大きさが変わる。概して、触媒担体は、“楕円状循環”の場合に楕円経路の垂直面において動き、環状経路の“環状循環”の場合には、即ち触媒担体は、垂直楕円断面を有する円環面の表面を螺旋状に覆う。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、さらに、
−溶液を噴霧された触媒担体の乾燥 を含む。
【0052】
本発明の方法の構成内では、溶液を噴霧された触媒担体が、好ましくは、流動床を生じさせるための気体によって引き続き乾燥される。しかしながら、別々の乾燥工程が、引き続く乾燥を伴って又は乾燥を伴わずに噴霧含浸のあとに実施されることも提供され得る。例えば、前者の場合、乾燥速度及びそれを伴った例えばシェルの厚さが、気体又は触媒担体の温度によって設計され、後者の場合、当業者によって知られている乾燥手段を採用して適宜乾燥が実施され得る。
【0053】
本発明にとって望ましくは、乾燥を20℃〜200℃で、好ましくは40及び150℃の間で、特に好ましくは70℃及び120℃の間で行い、乾燥は標準圧力下及び減圧下のいずれでも行い得る。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、さらに、
―触媒担体に噴霧された金属化合物の金属成分が酸化物の形態に変化する温度で溶液を噴霧した触媒担体を焼成すること を含む。
【0055】
焼成の結果、まず、金属成分が触媒担体に固定され、そして次に、Ni、Cu、及びPd金属が比較的容易に酸化物形態から金属状態へと変化する。
【0056】
本発明の方法の構成内では、焼成は、例えば200℃〜1000℃の温度範囲で、好ましくは300℃〜800℃の温度範囲で、さらに好ましくは350℃〜750℃の温度範囲で、特に好ましくは400℃〜500℃の温度範囲で実施され得る。
【0057】
焼成の持続時間は、標準的には、1分間から48時間の範囲内に、好ましくは30分から12時間の範囲内に、より好ましくは1時間から7時間の範囲内にあり、2時間から5時間の焼成持続時間が特に好ましい。
【0058】
本発明では、金属化合物で噴霧された触媒担体は、金属化合物が分解する場合に保護ガス存在下で例えば自動還元によって好ましくは焼成され、酸化状態0の金属になり得る。別々の還元工程がそれにより避けられ得る。
【0059】
本発明では、保護ガスが、希ガス、CO2、窒素、及び前記のものの2種以上の混合物からなる群より選ばれた気体であることが特に好ましい。保護ガスとは、例えば意図しない化学反応を避けるべく不活性保護空気として用いられ得る気体又は気体混合物を意味する。本発明の方法の構成内では、特にヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンの希ガス、又は前記希ガスの2種以上の混合物が、保護ガスとして用いられ、アルゴンが保護ガスとして特に好ましい。希ガスの他に、又はこれらに加えて、例えば窒素が保護ガスとして用いられ得る。本発明の方法で特に好ましい保護ガス雰囲気は、希ガスアルゴンと窒素も含む。
【0060】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、さらに、
―触媒担体へ噴霧された金属化合物の金属成分が酸化状態0へと変化すること を含む。
この場合、金属化合物は、Ni、Cu、及びPdの化合物を意味し、Mo又はMnの化合物を意味しない。
【0061】
本発明では、酸化状態0へと金属化合物の金属成分が変化することが還元剤によっておこなわれることが好ましい。
【0062】
例えば、H2、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール、及び炭化水素といった気体の又は揮発性の還元剤が好ましくは用いられ、気体の還元剤は、例えば二酸化炭素、窒素、又はアルゴンといった不活性ガスで希釈されもする。不活性ガスで希釈された還元剤が好ましくは用いられる。窒素又はアルゴンと水素との混合物、好ましくは水素含量が1体積%及び50体積%の間であることが、望ましい。
【0063】
還元剤の量は、処理期間中に金属の完全な変化に要される少なくとも当量が触媒を通り超すように好ましくは選択される。しかしながら、迅速且つ完全な変化を確実にするために、超過量の還元剤が触媒を通り超すことが好ましい。
【0064】
好ましくは、金属は、常圧で、即ち、約1バールの絶対圧力で酸化状態0へと変化する。本発明の触媒の工業的生産量のためには、回転チューブオーブン又は流動床反応器が、均一な還元を確実にするために好ましくは用いられる。
【0065】
本発明では、金属は、好ましくは100℃〜500℃で酸化状態0へと変化させられる。
【0066】
金属は、原則として、本発明の目的のために適宜当業者に知られているどの温度でも酸化状態0へと変化させられ得る。本発明の構成内では、金属は、100℃〜500℃の温度範囲で、好ましくは200℃〜500℃の温度範囲で、より好ましくは300℃〜450℃の温度範囲で酸化状態0へと変化させられ得る。
【0067】
Ni及びCuの、Ni及びPdの、又は、Ni、Cu及びPdの変化は、現場、即ち工程反応器内、あるいは、実験施設、即ち特別な還元反応器内でも実施され得る。実験施設での変化は、例えば5体積%水素含有窒素で、例えば気体を生成することで、好ましくは150℃〜500℃の範囲で5時間を超える時間で実施され得る。
【0068】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、Ni化合物、Cu化合物、及びMn化合物が溶解されて溶液中に含まれる。この溶液には、PdもMoもない。
【0069】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、Ni化合物、Pd化合物、及びMo化合物が溶解されて溶液中に含まれる。この溶液には、CuもMoもない。
【0070】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、溶液に含まれる金属化合物は、ハロゲンのない金属化合物であり、好ましくは硝酸塩化合物である。硝酸Moは、知られておらず、それゆえ溶液中で、硝酸又はリン酸又は水に予め溶解されたMo化合物として、好ましくは用いられる。
【0071】
本発明の方法で用いられる金属化合物は、ハロゲンが多くの触媒活性金属にとって触媒毒として作用し、調製される触媒の失活をもたらすことから、ハロゲンがないことが好ましい。
【0072】
本発明のさらに好ましい実施形態では、溶液は水溶液である。
【0073】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、気体によって微粒子材料の流動床を生じさせるために設置される装置を用いて実施され、この装置で材料の粒子は、流動床中を楕円状経路又は環状経路で動く。そのような装置は、引用されることで本発明に取り込まれる内容である、例えば、WO 2006/027009 A1, DE 102 48 116 B3, EP 0 370 167 A1, EP 0 436 787 B1, DE 199 04 147 A1, DE 20 2005 003 791 U1において記述されている。
【0074】
本発明に従った特に好ましい装置は、商品名「Innojet Ventilus」又は「Innojet AirCoater」という名でInnojet Technologies社によって販売されている。これら装置は、容器底部中心部に噴霧ノズルが備え付けられ固定されて不動に取り付けられた容器底部を有する円筒形状の容器を備えている。底部は、少しずつ互いに重なって配置された環状板でなる。処理空気は、偏心的に個々の板の間を水平に容器へと、円周流れ成分を伴って、容器壁へ向けて外側に流れる。いわゆる空気流床は、触媒担体がまず容器壁に向けて外側へ運ばれることを生み出す。触媒担体を上方へ偏向させる垂直に配向した処理空気流は、容器壁に沿って外側に偏向させられる。上端に達すると、触媒担体は、ノズルのミスト噴霧を通っている間に底部の中心に向かって戻りおおよそ接線経路で動く。ミスト噴霧を通った後、上述した動作過程が再び始まる。上述した処理空気誘導(旋回)は、触媒担体の、概して均一で環状の流動床のような循環動作の基盤を提供する。
【0075】
プロセス工学の点でいわば単純で、従って安価に、触媒担体が楕円状又は環状に循環する触媒担体流動床を生み出すために、本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、底部及び側壁を備えた処理室を有する装置が提供され、そこでは、触媒担体流動床を生じさせるべく、形成された環状スロットの間に互いに設置された環状誘導板がいくつか重なって好ましくは作られた処理室の底部を通して、放射状に外側へ配向した水平動作成分を伴って気体が処理室へ供給される。
【0076】
放射状に外側に配向された水平動作成分を伴う処理室に気体が供給されるがゆえに、流動床における触媒担体の楕円状循環が引き起こされる。流動床中で機構が楕円状に循環する場合、触媒担体は、担体を循環経路へと強いるさらなる円周動作成分の影響をも受けやすいに違いない。
【0077】
それゆえ、本発明の方法は、好ましい実施形態では、処理室に供給される気体が円周流れ成分の影響を受けるという特徴を有する。
【0078】
円周動作成分は、触媒担体を偏向させるべく例えば、適当に配向されたガイドレールを側壁に添付することによって、触媒担体に与えられ得る。しかしながら、本発明の方法の好ましい実施形態では、処理室に供給される気体に円周流れ成分が与えられる。触媒担体が環状に循環する流動床の発生は、プロセス工学の点において単純な方法でそれにより確保される。
【0079】
処理室へ供給される気体に円周流れ成分を受けさせるべく、本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、適当に成形及び配向された気体誘導要素が、環状誘導板の間に配置されることが提供され得る。これとは別に又はこれに加えて、好ましくは処理室の側壁の領域に、処理室の底部を通して処理室へ、斜め上向きに配向される動き成分を伴ってさらなる気体を供給することにより、処理室に供給される気体が円周流れ成分を受けることが提供され得る。
【0080】
提供され得ることは、流動床で循環する機構が、噴霧雲を噴霧する環状間隙ノズルによって溶液で噴霧されることであり、該ノズルでは、噴霧雲の対称板が装置底部に平行に又は実質的に平行に設置されている。噴霧雲の周辺360℃において、中央部で下側へ動く触媒担体は、溶液で特に均一に噴霧され得る。環状間隙ノズル、即ち、その口部は、好ましくは、流動床に完全に組み込まれている。
【0081】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、環状間隙ノズルは、容器の底部の中心部に配置され、環状間隙ノズルの口部は、流動床に組み込まれていることが提供され得る。
それにより、噴霧雲の液滴によって覆われる距離が、液滴が触媒担体に接触するまで比較的短くなり、従って、概して均一なシェル厚さの形成に不利となり得る、液滴が合体してより大きな液滴になる時間がほとんど残らない。
【0082】
本発明のさらに好ましい実施形態では、気体支持クッションが、噴霧雲の下側に生み出されることが提供され得る。底部クッションは、底部表面を概して噴霧溶液がなくなるように維持し、これは、ほとんど全ての噴霧溶液が流動床へ導かれ、結果として噴霧損失がほとんど起こらないことになる。
【0083】
本発明のさらに好ましい実施形態では、流動床の生成のための気体が、空気、酸素、窒素、及び希ガスからなる群より選ばれたもの、及び上記気体の混合物であることが提供される。
【0084】
本発明のさらに好ましい実施形態では、方法、即ち、溶液で触媒担体を噴霧することが、60℃以上の温度、好ましくは70℃以上の温度、好ましくは80℃以上の温度、そして最も好ましくは90℃以上120℃までの温度で実施されることが望ましい。
【0085】
乾燥初期での噴霧雲の液滴を防ぐために、装置に供給される前に、好ましくは10%〜50%の飽和蒸気圧(工程温度で)の、溶液の溶媒が用いられて、気体が濃縮されることが望ましい。気体に加えられた溶媒、及び触媒担体の乾燥からの溶媒は、適当な冷却凝集体、コンデンサ、及び分離器によって気体から分離され、ポンプによって溶媒濃縮装置へ戻される。
【0086】
本発明は、さらに、芳香族類、アルキン類、オレフィン類、アルデヒド類及びオキソ化合物の水素化、特に、2−エチルヘキセナール又はブチンジオールの水素化のための発明によるシェル触媒の使用に関する。
【0087】
本発明の方法を実施するための好ましい装置に関わる次の記述、及び、触媒担体の流動経路の記述も、図面と関連して、発明を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1A】本発明の方法を実施するための好ましい装置の垂直断面図。
【図1B】図1Aにおける1Bで囲まれた領域の拡大図。
【図2A】触媒担体の2つの楕円状循環の流動経路が図式的に示された、好ましい装置の斜視断面図。
【図2B】図2Aに沿った好ましい装置、及び流動経路の平面図。
【図3A】環状に循環する触媒担体の流動経路が図式的に示された、好ましい装置の斜視断面図。
【図3B】図3Aに沿った好ましい装置、及び流動経路の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明の方法を実施するための、まとめて10で番号付けられた装置が、図1Aに示されている。
【0090】
装置10は、処理室15を取り囲む直立の円筒状側壁18を備えた容器20を有する。
【0091】
処理室15は、下方側が噴出室30になっている底部16を有する。
【0092】
底部16は、一方が他方の上に配置された、誘導板としての、全部で7つの環状板からなる。7つの環状板は、最も外側の環状板25が最も下方側の環状板を形成し、該環状板には他の6つの内方側環状板がそれぞれ部分的に隣接する板に重なって設置されるように、重なり合って配置されている。
【0093】
明確化のために、全7つの環状板のうちのいくつかのみ、例えば重なっている2つの環状板26及び27が参照番号を有している。この重なり合い及び間隔によって、環状間隙28が都度2つの環状板の間に形成され、この間を通って処理空気40が、主として水平に配向した動き成分を伴って、底部16を通って気体として通過する。
【0094】
環状間隙ノズル50は、中央の最も上方側の内側環状板29の中央開口部において下側から取り付けられている。環状間隙ノズル50は、全部で3つのオリフィス間隙52、53及び54を有する口部55を備えている。3つのオリフィス間隙52、53及び54の全てが、底部16に対しておおよそ平行に噴霧できるように配置されており、それ故、ほぼ平行に360°の角度の範囲を対象とする。あるいは、噴霧ノズルは、噴霧円錐体が斜めで上方側を向くように設計され得る。噴霧空気は、上方側間隙52及び下方側間隙54を通る噴霧気体として送られ、噴霧される溶液は、中央間隙53を通して送られる。
【0095】
環状間隙ノズル50は、下方側へ延び、本質的にあるがそれゆえ図面に記載されていない付随管や供給管を有する棒状体56を備えている。環状間隙ノズル50は、例えば、いわゆる回転環状間隙を伴って形成され、該ノズルでは、ノズルの妨害を避けるために、溶液が噴霧される溝の壁面が互いに回転し、これにより間隙53からの均一な噴霧が全360°にわたって可能になる。
【0096】
環状間隙ノズル50は、オリフィス間隙52の上に円錐形頭部57を有する。
【0097】
オリフィス間隙54の下方側の領域は、多くの開口部59を有する、先端を切り落とした円錐形の壁部58がある。図1Bから認識されるように、先端を切り落とした円錐形の壁部58の下方部は、先端を切り落とした円錐形の壁部58の下方部とその下方側に位置し部分的に重なる環状板29との間で、処理空気40が通る間隙60が形成されるように、最も内側の環状板29の上にある。
【0098】
外方環25は、壁18から離れて存在し、その結果、参照番号61で示された矢印の方向に、主として垂直成分を伴って、処理空気40が処理室15に入り、それによって間隙28を通って処理室15に入る処理空気40に、比較的急速に上方へ向かう成分が与えられる。
【0099】
図1Aの右半分は、侵入後、装置10においてどのような関係が生じるかについて示している。
【0100】
溶液の噴霧雲70は、底部平面とほぼ平行にならぶ水平な鏡面、オリフィス間隙53から浮上する。例えば処理空気40となり得る、先端を切り落とした円錐形の壁部58における開口部59を通過する空気は、噴霧雲70の下方側で補助空気流72を作り出す。処理空気40を上方へ偏向させる壁18の方向への放射流は、参照番号74で示された矢印で表されるように、多くの間隙28を通過する処理空気40によって作り出される。触媒担体は、壁18の領域において偏向させられた処理空気40によって上方へと導かれる。処理空気40及び触媒担体が処理され、そして互いに分離され、処理空気40は、排出口を通って排出され、一方で触媒担体は、矢印75で示されるように半径方向に内側へ動き、環状間隙ノズル50の円錐頭部57の方向へ重力を受けて垂直に下側へ移動する。降りていく触媒担体は、そこで偏向し、噴霧雲70の上方側へ運ばれ、そしてそこで噴霧された媒体で処理される。噴霧雲70が離れた後では環状オリフィス間隙53でのより大きな空間が有効ではあるが、噴霧された触媒担体は、次に壁18に向かって再び動き、処理中に互いに離れる。噴霧雲70の領域では、処理される触媒担体は、噴霧溶液と衝突し、そして壁18に向けた動き方向に動き、互いに離れたままになり、そして処理される、即ち、加熱された処理空気40で非常に均一且つ調和的に乾燥される。
【0101】
2種の楕円状に循環する触媒担体における考えられる2つの流動経路は、参照番号210及び220で与えられた曲線によって図2Aに示されている。楕円状流動経路210は、理想的な楕円状経路と比較して長軸及び短軸の大きさにおける比較的大きな変化をみせる。これに対して、楕円状流動経路220は、図2Bから認識できるように、長軸及び短軸の大きさにおける比較的小さな変化をみせ、周方向(水平の)流動成分がなく理想的な楕円状経路に近いものを描く。
【0102】
楕円状に循環する触媒担体の考えられる流動経路は、参照暗号310で与えられた曲線によって図3Aにおいて示されている。楕円状に進む流動経路310は、実質的に均一な円環の一部表面を描き、その垂直断面は楕円状であり、その水平断面は環状である。図3Bは、平面図における流動経路310を示す。
【0103】
次の説明は、本発明を詳述するのに役立つ。
【実施例】
【0104】
(実施例1)
表1に特徴を示した、ベントナイトをベースとする触媒担体(ズード−ケミーAG、ミュンヘン、ドイツ、商品名“KA−160”)70gを流動床状態へ変化させ、そこでは触媒担体が、商品名“Innojet Aircoater 25”型(Innojet Technologies社,シュタイネン,ドイツ)という流動床反応器中で60℃に温度制御された空気によって環状に循環した。
【0105】
【表1】

【0106】
環状に循環する触媒担体は、10.63gNi(NO32、0.31gMn(NO32、及び3.59gCu(NO32が溶解されて含まれた250mlの水溶液で1時間噴霧された。
【0107】
溶液が沈着すると、付着された触媒担体は、500℃の温度で2時間焼成された。
【0108】
焼成後、シェル触媒は76.92gの総重量であった。触媒中のNi(金属Niとして)の割合は、4.3重量%であり、Mn(金属Mnとして)の割合は、0.13重量%であり、Cu(金属Cuとして)の割合は、1.6重量%であった。
【0109】
球状体50個が取り出され、半分に切断され、片方について90°間隔の4点において顕微鏡により層厚さが決定された。1つの球状体の層厚さは、4測定値の平均に相当する。シェル触媒は、2161μm(50の測定球状体の算術平均)の平均シェル厚さを有していた。
【0110】
(実施例2)
流動床を生じさせる空気が70℃に温度制御された点、及び、環状に循環する触媒担体が水溶液で1.5時間噴霧された点以外は、試験例1と同様にして試験が実施された。
【0111】
焼成後、シェル触媒は、76.69gの総重量であった。触媒におけるNi、Mn及びCuの比率(それぞれ金属として)は、それぞれ4.1重量%、0.13重量%、1.33重量%であった。触媒は、914μmの平均シェル厚さを有していた。
【0112】
(実施例3)
流動床を生じさせる空気が80℃に温度制御された点、環状に循環する触媒担体が水溶液で1.5時間噴霧された点、及び、溶液中の硝酸マンガンの濃度が3倍高かった点以外は、試験例1と同様にして試験が実施された。
【0113】
焼成後、シェル触媒は、75.08gの総重量であった。触媒におけるNi、Mn及びCuの比率(それぞれ金属として)は、それぞれ4.0重量%、0.37重量%、1.3重量%であった。触媒は、482μmの平均シェル厚さを有していた。
【0114】
得られた触媒のシェル厚さは、溶液で触媒担体を噴霧するときの処理温度を通じて広い範囲で設定され得ることが注目される。
【0115】
本発明の方法の結果得られるシェル触媒は、非常に均一なシェル厚さを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni及びCu及び/又はPd、さらにMn及び/又はMoが含まれるか、又は、Ni及びMnとMoとをも含む、シェルを備えた開放孔触媒担体を有するシェル触媒。
【請求項2】
Ni及びCu及び/又はPdが酸化状態0で存在していることを特徴とする請求項1記載のシェル触媒。
【請求項3】
Mn及び/又はMoが酸化物で存在していることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項4】
Ni、Cu及びMnがシェルに含まれていることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項5】
シェル触媒のNi/Cu原子比率が0.5〜30であり、これと独立して、Ni/Mn原子比率が1〜100であることを特徴とする請求項4記載のシェル触媒。
【請求項6】
Ni、Pd及びMoがシェルに含まれていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項7】
シェル触媒のNi/Pd原子比率が10〜500であり、これと独立して、Ni/Mo原子比率が1〜100であることを特徴とする請求項6記載のシェル触媒。
【請求項8】
シェル触媒でのNiの割合が5重量%〜15重量%であることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項9】
シェルの厚さが2200μm未満であることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項10】
触媒担体が40m2/g〜160m2/gの比表面積を有することを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項11】
触媒担体が、BJHによる0.30ml/g以上の総細孔容積を有することを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項12】
触媒担体が、BJHによる0.3ml/g〜1.2ml/gの総細孔容積を有することを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項13】
触媒担体の総細孔容積の少なくとも80%が、メソ細孔及びマクロ孔で形成されていることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項14】
触媒担体のかさ比重が0.30g/mlを超えていることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項15】
触媒担体が8nm〜50nmの平均細孔直径を有していることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項16】
触媒担体が1μval/g〜150μval/gの酸性度を有していることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項17】
触媒担体が有形体として形成されていることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項18】
触媒担体が1mm〜25mmの直径を備えた球状体として形成されていることを特徴とする請求項17記載のシェル触媒。
【請求項19】
触媒担体が、少なくとも50重量%のSiO2、Al23、ケイ酸アルミニウム、ZrO2、TiO2、HfO2、MgO、酸化ニオブ若しくは天然層状ケイ酸塩、又は、少なくとも50重量%の、前記材料の1種又は2種以上の混合物でなることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項20】
触媒担体が、少なくとも80重量%の天然層状ケイ酸塩でなることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項21】
触媒担体が、少なくとも80重量%のモンモリロナイトでなることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項22】
20N以上の硬度を有していることを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項23】
P、Na、K、Co及びMgからなる群より選ばれた少なくとも1種のプロモータを含むことを特徴とする前の請求項の何れか1項に記載のシェル触媒。
【請求項24】
Ni化合物並びにCu化合物及び/又はPd化合物及びさらにMn化合物及び/又はMo化合物が溶解されて含まれた、又は、Ni化合物並びにMn化合物及びMo化合物をも含溶解されて含まれた溶液で触媒担体を噴霧する方法。
【請求項25】
気体によって触媒担体の流動床を生じさせ、触媒担体が流動床中で楕円状経路又は環状経路で流動すること;
楕円状経路又は環状経路で流動床中を流動する触媒担体を溶液で噴霧すること、を含む請求項24記載の方法。
【請求項26】
触媒担体が流動床中を環状経路で流動することを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
溶液で噴霧された触媒担体を乾燥すること、をさらに含むことを特徴とする請求項24〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
触媒担体に噴霧された金属化合物の金属成分が酸化物に変化する温度で、溶液で噴霧された触媒担体を焼成すること、をさらに含むことを特徴とする請求項24〜27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
触媒担体に噴霧された1種以上の金属化合物の金属成分を酸化状態0に変化させることをさらに含むことを特徴とする請求項24〜28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
Ni化合物、Cu化合物及びMn化合物が溶液中に溶解されて含まれていることを特徴とする請求項24〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
Ni化合物、Pd化合物及びMo化合物が溶液中に溶解されて含まれていることを特徴とする請求項24〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
溶液に含まれている金属化合物がハロゲンを含まない金属化合物であることを特徴とする請求項24〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
溶液に含まれている金属化合物が各金属の硝酸化合物であることを特徴とする請求項24〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
溶液が水溶液であることを特徴とする請求項24〜33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
気体(40)によって粒子状材料の流動床を生じさせるために設置され、その材料の粒子が流動床中を楕円状経路又は環状経路で流動する装置(10)を用いて実施することを特徴とする請求項24〜34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
装置(10)が、底部(16)と側壁(18)とを備えた処理室(15)を有し、処理室(15)の底部(16)を通って放射状に上方へ偏向した水平な流動成分を伴って気体(40)が処理室(15)に供給され、触媒担体に流動床を生じさせるべく、間に環状間隙(28)が形成され重なって配置された(25,26,27,29)複数の重複した環状誘導板で底部(16)が好ましくは構築されていることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
処理室(15)に供給される気体(40)に円周流れ成分が与えられることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
環状誘導板(25,26,27,29)の間に配置された誘導要素によって、処理室(15)に供給される気体(40)に円周流れ成分が与えられることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
斜め上方に偏向された流動成分を伴い処理室(15)の底部(16)を通して処理室(15)にさらに気体(61)を入れることにより、処理室(15)に供給される気体(40)に円周流れ成分が与えられることを特徴とする請求項37又は38記載の方法。
【請求項40】
楕円状経路又は環状経路で流動床を動く触媒担体が、底部(16)の板と実質的に平行に向く噴霧雲(70)を噴霧する環状間隙ノズル(50)により、溶液で噴霧されることを特徴とする請求項36〜39の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
環状間隙ノズル(50)が底部(16)の中央に配置され、環状間隙ノズル(50)の口部(55)が流動床に組み込まれていることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
気体支持クッション(72)が噴霧雲(70)の下方側で生み出されることを特徴とする請求項40又は41記載の方法。
【請求項43】
気体(40)が空気、酸素、窒素及び希ガス、並びに前記ガスの混合物からなる群より選択されたことを特徴とする請求項25〜42の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
方法が、60℃以上の温度で実施されることを特徴とする請求項24〜43の何れか1項に記載の方法。
【請求項45】
気体(40)が処理室(15)に入れられる前に溶液の溶媒で濃縮されることを特徴とする請求項36〜44の何れか1項に記載の方法。
【請求項46】
芳香族類、アルキン類、オレフィン類、アルデヒド類及びオキソ化合物の水素化、特に、2−エチルヘキセナール又はブチンジオールの水素化のための請求項1〜23の何れか1項に記載のシェル触媒の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2010−155232(P2010−155232A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−267841(P2009−267841)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】