説明

シクロペプチドおよび化学治療剤または血管新生阻害剤を含有する医薬製剤

【課題】シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤の提供。
【解決手段】シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩、および/または生理学的に許容されるその塩少なくとも一つの化学治療剤および/または生理学的に安全なその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に安全なその塩の一つを含む医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの治療薬剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む新規な薬理製剤に関する。
【0002】
当該新規製剤は、病的血管新生障害(pathologically angiogenic disorders)、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症の制御に用いることができる。
本発明は、同一の目的に対して用いられる既知の医薬製品を上回る性能を有する薬理製剤の形態の、新規医薬製品を提供する目的に基づくものであった。
この目的は新規な製剤を発見することによって達成された。
【0003】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)はEP0770622に開示されていて、特にインテグリン阻害剤として作用し、例えばフィブリノーゲンのαβインテグリン阻害剤への結合のような、α、βまたはβインテグリンレセプターのリガンドとの相互作用を特に阻害する。
この作用は、例えばJ. Biol. Chem. 265, 12267-12271 (1990) に記載のJ.W.Smith et al. の方法によって検出することができる。
【0004】
本発明は、EP0770622に関連する選択発明と見なすことができる。
WO/98/14192は、非ペプチドビトロネクチンレセプターアンタゴニストと化学治療剤との組み合わせを含む薬理製品について記載している。
化学治療を組み合わせた抗血管新生治療の効果は、J. FolkmanのNature Medicine 1, 27-30 (1995)に記載されている。
【0005】
化学治療剤と組み合わせたシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)の効果は、ルイス肺癌系において示すことができる。ルイス肺癌に対する従来の化学治療剤の効果は不十分なものでしかない。(Y. Kakeji and B.A. Teicher, Invest. New Drugs 15: 39-48 (1997))。
腫瘍増殖の遅延化の方法は、Kakejiに倣って実行することができる(F. Mitjans et al., J. Cell Sci. 108: 2825-2838 (1995))。
【0006】
本発明はさらに、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの化学治療薬剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む薬理製剤に関する。
【0007】
本発明は、特に、記載の通り、
a)アルキル化剤、
b)抗生物質、
c)代謝拮抗剤、
d)生物学的製剤および免疫調節物質、
e)ホルモンおよびそのアンタゴニスト、
f)マスタードガス誘導体、
g)アルカロイド、
h)マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMP阻害剤)、
i)プロテインキナーゼ阻害剤、
k)その他
からなる群からの化学治療製剤を用いることを特徴とする医薬製剤に関する。
【0008】
好ましいアルキル化剤の例は、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミドまたはロムスチンである。
好ましい抗生物質の例は、ブレオマイシン、ドクソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシンまたはピリカマイシンである。
好ましい代謝阻害剤の例は、スルホンアミド、または、例えば前述の5−フルオロウラシル(5−FU)、メルカプトプリン、メトトレキサートまたは葉酸カルシウム(ロイコボリン)を伴うチオグアニンもしくは5−FUのような葉酸アンタゴニストである。
【0009】
好ましい生物学的製剤および免疫調節物質の例は、インターフェロンa2A、インターロイキン2またはレバミソールである。
好ましいホルモンおよびそのアンタゴニストの例は、フルタミド、ゴセレリン、ミトタンまたはタモキシフェンである。
好ましいマスタードガス誘導体の例は、メルファラン、カルムスチンまたは窒素マスタードである。
【0010】
好ましいアルカロイドの例は、ドセタクセルまたはパクリタクセルのようなタキサン、前記エトポシド、ビンブラスチンまたはビノベルビンである。
他の化学治療剤とは、例えばアルトレタミン、クラドリビン、ゲムシタビン、ロイコボリン、レバミソール、ペントスタチンまたはイリノテカンのような、上記グループに分類できないものを意味する。
【0011】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMP阻害剤)は、例えばM. Wittaker et al. in Current Opinion in Drug Discovery & Development 1, 157-164 (1998)にも記載されているが、例えば以下の化合物、バルチマスタート(BB−94)、マリマスタート(BB−2516)、BB−3644、イロマスタート、メタスタート、AG−3340、BAY−12−9566、AE−941/ネオバスタート、CGS−27023A、RS−113456、RS−130830、Ro−32−3555、Ro−31−9790、CT−1746、CT−1418、D−1927、D−2163が好ましい。
【0012】
プロテインキナーゼ阻害剤は、例えばG. McMahon et al. in Current Opinion in Drug Discovery & Development 1, 131-146 (1998)およびL.M. Strawn et al. in Exp. Opin. Invest. Drugs 7, 553-573(1998)に記載されている。本発明による製剤おいては、以下のレセプターチロシンキナーゼ阻害剤が特に好ましい:CGP 79787、SU−5271(PD−153035)、PD−173074、SU−6668、ZD−1839、CP−358774。
【0013】
本発明による製剤は、血管新生阻害剤および/または化学治療剤のいわゆるプロドラッグ誘導体、すなわち、例えばアルキルまたはアシル基、糖もしくはオリゴペプチドによって修飾されていて、体内で速やかに解離して本発明による活性化合物を与える化合物も含む。プロドラッグには、例えば化学治療剤でもあるカペシタビンを含むが、これは例えばInpharma No. 1142, 13-14 (1998)に記載のように、5−FUのプロドラッグである。
【0014】
記載のように、ドセタクセル、パクリタクセル、カルボプラチン、シスプラチン、5−FUおよび葉酸カルシウム、イリノテカン、シクロホスファミド、カルムスチン、ドクソルビシン、ビノレルビン、ゴセレリンまたはゲムシタビンからなる群からの化学治療剤を用いることを特徴とする医薬製剤が特に好ましい。
【0015】
腫瘍治療におけるゲミシタビンの使用は、例えばB.J. Braakhuis et al.のSemin-Oncol. 1995 Aug; 22(4 suppl. 11): 42-6またはR.M. Mohammed et al. のPancreas 1998 Jan; 16(1): 19-25に記載されている。
【0016】
本発明はさらに、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、およびゲムシタビンおよび/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤に関する。
本発明はまた、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤に関する。
好ましい血管新生阻害剤は、例えばWO9741844のTable1に記載されている。
特に好ましいのはαβおよびαβインテグリン阻害剤であり、例えばEP0770622に記載されている化合物である。
【0017】
前記新規化合物は、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)をおよび/または生理学的に許容されるその塩の一つおよび、少なくとも一つの化学治療薬剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、少なくとも一つの固体、液体または半液体の賦形剤もしくは補助物質とともに、適切な日投与量の形態に変換することによって製造できる。
【0018】
このようにして得られた製剤は、人間用医薬製品または動物薬であって、特に腫瘍治療のためのものに用いることができる。適切な担体物質は、経腸(例えば経口、舌下または経直腸)、非経口または局所(例えば経皮)投与に適した、例えば水、植物油、ベンジルアルコール類、ポリエチレングリコール類、酢酸グリセロールおよび他の脂肪酸グリセリド類、ゼラチン、大豆レシチン、ラクトースまたはデンプンのような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロースのような化合物と反応しない有機または無機の物質である。
【0019】
経口投与には錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ、懸濁剤またはドロップが、経腸投与には座剤が、非経腸投与には溶液、好ましくは油溶液または水溶液、前記懸濁剤、エマルジョンまたは埋め込み剤が、そして局所投与には軟膏、クリームまたは膏薬が特に用いられる。活性成分は凍結乾燥し、該凍結乾燥物を用いて、例えば注射用製品を作ることもできる。
【0020】
製剤は滅菌し、および/または保存剤、安定剤のような補助剤、および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を改変する塩類、緩衝剤、色素および/または香料を含んでもよい。製剤は更なる活性成分、例えば血圧を降下させたり、または利尿活性を有する物質のみならず、ビタミンおよび/または無機塩、特に代謝プロセスにおいて有利なものを含んでもよい。
【0021】
本発明による製剤は、病的血管新生障害、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症の制御に用いられる。基本的に、それらは腫瘍の制御、すなわち、腫瘍の増殖または腫瘍の転移の阻害に用いられる。
【0022】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)は、
αインテグリン、特にαβおよびαβが関与し、その阻害が治療の部分を形成する疾病の制御に用いられる製品と組み合わせて用いることができる。非腫瘍性疾病(non−oncological disorder)の場合には、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)を該疾病のための典型的な治療剤と組み合わせて用いることができる。
【0023】
該病理には、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、炎症、脳卒中、狭心症、腫瘍症、骨粗鬆症のような溶骨性疾患、炎症のような病的血管新生障害、眼科的疾病、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、近視、眼球ヒストプラスマ症、関節リュウマチ、変形性関節症、血管新生緑内障、潰瘍性大腸炎、クローン病、動脈硬化、乾癬、血管形成術後再狭窄、ウィルス感染、細菌感染、菌感染、炎症性内臓疾患および急性腎不全が含まれる。
【0024】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)を腫瘍治療に用いることは可能であり、例えばの血管新生阻害剤と組み合わせれば、
a)腫瘍の外科的除去、
b)放射線治療、
c)光力学治療、
d)腫瘍選択性エピトープに対するモノクローナル抗体の併用、
e)融合蛋白質との併用、
f)ペプチドワクチンとの併用および
g)遺伝子治療
に用いることも可能である。
【0025】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)またはその塩および化学治療薬剤および/または血管新生阻害剤の用量は、好ましくは用量単位あたり0.1および100mgの範囲であり、特に0.2および20mgの範囲であり、特に好ましくは0.1および10mgの範囲である。日用量は、好ましくは約0.001および1の範囲、特に0.002および0.2mg/体重kgの範囲である。
化学治療の最中にはペプチドを、例えば同様に1〜10mg/kgを週に2回の用量で与えることができる。化学治療剤は、例えば同様に1〜10mg/kgを週に1回から3〜4週に1回の用量で投与することができる。
【0026】
しかし、患者それぞれに対する固有の用量は、種々の要素、例えば用いられる特定の化合物の効力、年令、体重、通常の健康状態、性別、食事、投与の時間および経路、排泄頻度、薬剤の組み合わせおよび治療が施される各疾病の重篤度に依存する。好ましいのは経口投与である。
【0027】
したがって本発明は、病的血管新生障害、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症を制御するための医薬製品製造への、記載の医薬製剤の使用にも関する。
本発明は、さらに病的血管新生障害、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症を制御するための、記載の医薬製剤の使用にも関する。
【0028】
本発明は特に、化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御用医薬製品の製造のための使用に関する。
【0029】
本発明はまた、化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御用医薬製品の製造のための使用に関する。
【0030】
本発明はさらにまた、化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御のための使用に関する。
【0031】
本新規医薬製剤の成分は、好ましくは組み合わせて投与される。しかし、単独で、同時に、または引き続いて投与することも可能である。
本発明は、別個のパック;
(a)有効量のシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および
(b)有効量の化学治療剤
からなるキットにも関する。
【0032】
該キットは、箱などの適当な容器、個別の瓶、袋、またはアンプルを含む。キットは、例えばそれぞれにシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および化学治療剤が溶解されて、または凍結乾燥されて存在している別個のアンプルを含んでもよい。
【0033】
WO9814192には、医薬効果を有する化合物の濃度を決定するための、適切な種々の生物的試験が開示されている。
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)、化学治療剤または血管新生阻害剤は、酸官能性がある場合には、塩基を用いて関連する酸付加塩に、例えばエタノールのような不活性溶媒中で当量の酸および塩基と反応させ、続いて蒸留することによって変換することができる。
【0034】
該反応に特に好適な塩基は、生理学的に許容される塩を生成するものである。したがって、酸は塩基(例えば水酸化または炭酸ナトリウムまたはカリウム)を用いて、対応する金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属に変換することができ、当量のアンモニア塩に変換することもできる。
【0035】
一方、塩基官能性は、例えばエタノールのような不活性溶媒中で当量の塩基および酸と反応させ、続いて蒸留することによって、関連する酸付加塩に変換することができる。該反応に特に好適な酸は、生理学的に許容される塩を生成するものである。
【0036】
したがって、硫酸、硝酸、塩化水素酸または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、オルトリン酸のようなリン酸、スルファミン酸のような無機酸を用いることができ、また、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族、または単塩基ヘテロ環式または多塩基のカルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えばスルホン酸ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメル酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−またはエタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−およびジスルホン酸、ラウリル硫酸のような有機酸も用いることができる。生理学的に許容される塩、例えばピクリン酸塩は、式Iの化合物の単離および/または生成に用いることができる。
【0037】
本発明はさらに、αβおよび/またはαβインテグリン阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つのMMP阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤、およびαβおよび/またはαβインテグリン阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つのチロシンキナーゼ阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤に関する。
【0038】
好ましいαβおよびαβインテグリン阻害剤 は、例えばEP0770622、EP0710657、EP0820988、EP0820991、WO94/12181、WO94/08577、EP0518586、WO95/32710、WO96/00574、WO96/00730またはDE19850131に記載されている。
MMP阻害剤およびチロシンキナーゼ阻害剤の中では、上記のものが好ましい。
【0039】
組み合わせ治療の試験例
Kakeji(F.Mitjans et al., J. Cell Sci. 108: 2825-2838 (1995))に類似の腫瘍増殖の遅延
ルイス肺癌細胞(2×10E6)を8〜10週令のC57BLマウスに注射する。4日目にシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)(30mg/kg)を腹腔内投与する。腫瘍の増殖を毎日測定する(B.A.Teicher et al., Int. J. Cancer 57: 920-925 (1994))。腫瘍がある一定の、約100mmの一定の大きさに達したら、腫瘍接種後7日目に、経腹膜注射による種々の細胞毒性組み合わせ治療を開始する。
【0040】
例:5−フルオロウラシル(30mg/kg)またはアドリアマイシン(1.8mg/kg)を、7日目から11日目まで毎日投与する。シクロホスファミド(150mg/kg)、カルムスチン(15mg/kg)またはゲムシタビン(2.5mg/kg)を、7、9および11日目に投与する。シスプラチン(10mg/kg)を、7日目に投与する。
腫瘍の測定は週に3回、体積が約500mmに達するまで行う。腫瘍の増殖遅延を、個々の腫瘍が500mmに達するまでに要した時間を無処理対照区と比較して計算する。
【0041】
以下の例は医薬製剤に関するものである:
例A:バイアル
100gのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、100gの化学治療剤および5gのリン酸水素二ナトリウムの、蒸留を2回行った水による水溶液のpHを2N塩酸によって6.5に調整し、濾過によって滅菌し、バイアルに分注し、滅菌化で凍結乾燥し、そして滅菌状態に密封する。各バイアルは活性成分5mgを含む。
【0042】
例B:座剤
20gのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、20gの化学治療剤を100gの大豆レシチンおよび1400gのココアバターとともに融解し、型に流し込んだ後冷ます。各座剤には活性成分20mgを含む。
【0043】
例C:溶液
1gのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、1gの化学治療剤、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gのベンズアルコニウムクロライドから、蒸留を2回行った水による水溶液940mlを作製する。pHを6.8に調整し、体積を1lに増量し、そして該溶液を放射線照射によって滅菌する。該溶液は点眼剤の形態で使用することができる。
【0044】
例D:軟膏
500mgのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、500m1gの化学治療剤を99.5gのワセリンと共に無菌状態下で混合する。
【0045】
例E:錠剤
1kgのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、1kgの化学治療剤、4kgの乳酸、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、常法によって錠剤に圧縮成型し、各錠剤が活性成分を10mg含むようにする。
【0046】
例F:被覆錠剤
例Eと同様な方法で錠剤を圧縮成型し、続いて常法によってショ糖、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントゴムおよび色素のコーティングによって被覆する。
【0047】
例G:カプセル
2kgのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、2kgの化学治療剤を、常法によって固いゼラチンカプセルに詰め、各カプセルが活性成分を20mg含むようにする。
【0048】
例H:アンプル
1kgのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、1kgの化学治療剤の、蒸留を2回行った水による水溶液を濾過によって滅菌し、アンプルに分注し、滅菌化で凍結乾燥し、そして滅菌状態に密封する。各アンプルは各活性成分を10mgずつ含む。
【0049】
例I:キット
非経腸投与用製剤(キット)
該製剤は500mgのシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つおよび500mgの塩酸ゲムシタビンを含むもので、以下のように製造される:
500mgずつの各化合物を40mlの蒸留水に溶解する。該溶液を濾過によって滅菌し、10mlのアンプルに分注し、凍結乾燥する。
静脈注射または筋肉注射用には、5%デキストロース水溶液10mlを添加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤。
【請求項2】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つの血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
a)アルキル化剤、
b)抗生物質、
c)代謝拮抗剤、
d)生物学的製剤および免疫調節物質、
e)ホルモンおよびそのアンタゴニスト、
f)マスタードガス誘導体、
g)アルカロイド、
h)マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMP阻害剤)、
i)プロテインキナーゼ阻害剤、
k)その他
からなる群からの化学治療剤を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項5】
ドセタクセル、パクリタクセル、カルボプラチン、シスプラチン、5−FUおよび葉酸カルシウム、イリノテカン、シクロホスファミド、カルムスチン、ドクソルビシン、ビノレルビン、ゴセレリンまたはゲムシタビンからなる群からの化学治療剤を用いることを特徴とする、請求項1、2または4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、およびゲムシタビンおよび/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む、請求項1、2、4または5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
αβおよびαβインテグリン阻害剤からなる群からの血管新生阻害剤を用いることを特徴とする、請求項1または3に記載の医薬製剤。
【請求項8】
病的血管新生障害、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症の制御に用いる医薬製品を製造するための、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤の使用。
【請求項9】
病的血管新生障害、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化、腫瘍、骨粗鬆症、炎症および感染症の制御のための、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤の使用。
【請求項10】
化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および/または血管新生阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御用医薬製品の製造のための使用。
【請求項11】
化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを、引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御用医薬製品の製造のための使用。
【請求項12】
化学治療剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを引き続いてまたは物理的に組み合わせて用いる、シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および/または生理学的に許容されるその塩の一つの、腫瘍制御のための使用。
【請求項13】
(a)有効量のシクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−NMe−Val)および
(b)有効量の化学治療剤
の別個のパックからなるキット。
【請求項14】
αβおよび/またはαβインテグリン阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つのMMP阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤。
【請求項15】
αβおよび/またはαβインテグリン阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つ、および少なくとも一つのチロシンキナーゼ阻害剤および/または生理学的に許容されるその塩の一つを含む医薬製剤。

【公開番号】特開2011−252012(P2011−252012A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176480(P2011−176480)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2000−569828(P2000−569828)の分割
【原出願日】平成11年9月9日(1999.9.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】