説明

シグナリングアッセイ及び株化細胞

本発明は、生細胞中のp38−MAPK経路を通して、ストレスシグナルの伝達及び阻害を示唆するセンサーに関する。このセンサーは、レポーター遺伝子産物と、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のアイソフォームとを含んでいる。本発明は、生細胞をトランスフェクションするための、センサーをコードする核酸を含むプラスミド及びウイルスベクターも提供する。センサーを発現する安定細胞株は、生細胞又は固定化細胞で、この経路の活性化又は調節を測定するアッセイに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細胞でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路によるストレスシグナルの伝達及び阻害を示すセンサーに関する。本センサーを発現する安定細胞株もを提供するが、かかる細胞株は、上記経路の活性化又は調節を測定するための生細胞又は固定化細胞アッセイに使用できる。
【背景技術】
【0002】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)はセリン/スレオニンキナーゼであり、細胞表面の受容体を細胞内の標的制御因子に接続し、細胞外からのシグナルを各種の細胞アウトプットに変換する。p38MAPKカスケードはストレス又はサイトカインによって活性化され、プロテインキナーゼの逐次活性化の複雑な経路を経て遺伝子発現をもたらす。p38MAPK経路の主要な活性化キナーゼはMKK3及びMKK6であり、これらはカスケードのハブを通してシグナルを伝達する(例えば、NCBIウェブサイト;非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4参照)。
【0003】
ストレス活性化プロテインキナーゼp38のアイソフォームには、p38α(MAPK14;非特許文献5)、p38β(非特許文献6)、ストレス活性化プロテインキナーゼ3/p38γ(ERK6,SAPK3;非特許文献7)、ストレス活性化プロテインキナーゼ4/p38δ(SAPK4;非特許文献8)がある。各p38アイソフォームは生物学的機能及び生物学的基質が異なっているかも知れないが、いずれも、最小コンセンサス配列Ser/Thr−Proを有する基質をリン酸化する(非特許文献9)。
【0004】
p38MAPKの他の3種類のアイソフォームとは異なり、αアイソフォーム(MAPK14)は詳しく調べられており、全哺乳類に存在し、生体組織全体で普遍的発現を示す(非特許文献10)。重要な点として、p38MAPKは、ストレスシグナルの伝達のための一次ハブとして作用し、上流ストレス関連シグナルはp38MAPKを通して下流へと伝達され、下流シグナルの多様化を制御できる。p38MAPKは、インビボで、MAPKAPKファミリー、STAT1、p53、SAP1、C/EBPファミリー、USF−1、NFAT、PPAG活性化補助因子、CDC25Bなどの広範な調節タンパク質をリン酸化する(例えば、Biocartaウェブサイト参照)。このような多様なシグナル伝達タンパク質のリン酸化のため、p38は、細胞周期、増殖、分化、アポトーシス、遊走、細胞骨格のリモデリングなどに影響を及ぼす。
【0005】
新規治療用化合物の発見と性質決定の要望並びに上述のような多様な細胞応答におけるp38MAPKの重要性から、医薬品及びバイオ産業では上記経路の阻害剤及び活性化因子の探索が進められている。細胞アッセイにおいて、p38α(MAPK14)の活性化は、リン酸化型特異的免疫蛍光アッセイ(例えば、Zymed Laboratories社(米国サンフランシスコ)から市販のウサギ抗リン酸化型p38MAPKポリクローナル抗体、Cellomics社(米国ピッツバーグ)から市販のp38 Activation Kit)で直接検出することもできるし、或いはMAPKAPK2(GE Healthcare Bio−sciences社(英国アマーシャム))のようなシグナル伝達プロセスの下流の標的分子に対する酵素の影響を測定することによって間接的に検出することもできる。
【0006】
p38は、上流シグナルが通過して下流シグナルの多様化を制御する主要な制御タンパク質であると認められており、直接アッセイでは、ストレスシグナルの伝達に関する正確なデータが得られる。間接アッセイは、p38MAPKを通して伝達されるストレスシグナルが伝達されなかったり、ストレスシグナルが特定の下流タンパク質で希釈されるおそれがあるので、精度に劣る。また、間接アッセイでは、シグナル伝達経路の複雑さ、多様性及び相互伝達に起因する非特異的効果のため擬陽性の結果を生じることがある。
【0007】
しかし、直接的免疫蛍光アッセイは均質でなく、生細胞でリアルタイムに実施することができない。また、固定化プロセスには数多くの洗浄及び抗体処理ステップが必要とされ、アッセイにアーチファクト及び誤差が導入されて得られる画像データの解釈が困難となるおそれがある。多数の化合物のスクリーニングには、かなりの量の特異的抗体も必要とされ、資源及びコストがかかる。さらに、リン酸化型特異的免疫検出システムは、特異的リン酸化(例えば、Thr180/Tyr182のリン酸化)のみによる活性化の検出手段を与え、p38に関してかなりの量の情報が入手できるにもかかわらず、他の活性化部位は未だ発見されていない。
【0008】
特許文献1には、細胞増殖を制御する抗癌化合物としての可能性をもつ新規セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)修飾因子を特定する方法が記載されている。この特許文献に開示された方法の幾つかでは、p38キナーゼ活性を刺激する作用因子を特定する。かかる化合物がSHMT酵素活性を阻害する可能性があるからである。この特許文献では、p38レポーター遺伝子細胞アッセイを被験作用因子のスクリーニングに使用することについてほのめかされているが、試験結果はすべてインビボ標識及び抗体実験に基づくものであり、かかるアッセイが実際に開発されていた証拠はない。
【0009】
特許文献2には、所望の真核生物のMAPK経路のメンバーの構成的活性化変異体をスクリーニングする方法、並びにかかる変異体をドラッグデザインにおけるMAPK経路の阻害剤のスクリーニングに使用することが記載されている。かかる活性化変異体をレポーター遺伝子アッセイに使用することは示唆されているが、かかるアッセイがなされたことを裏付けるデータはない。
【0010】
哺乳類細胞におけるp38MAPKの過剰発現は細胞傷害性であって、アポトーシス及び老化を生じることが示されており、生細胞での均一で安定なp38MAPKレポーター遺伝子アッセイは難しいことが判明している(非特許文献11; 非特許文献12; 非特許文献10)。そのため、パブリックドメインには、かかるアッセイについて確証的な実験データで実証された報告はない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0118663号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0214186号明細書
【非特許文献1】Shi and Gaestel 2002, Biol. Chem. 282, 1519-36
【非特許文献2】Herlaar, E. and Brown, Z. (1999), Mol. Med. Today 5, 439-447
【非特許文献3】Ichijo, H. (1999) Oncogene 18, 6087-6093
【非特許文献4】Tibbles, L.A. and Woodgett, J.R. (1999) Cell. Mol. Life Sci. 55, 1230-1254
【非特許文献5】Han et al., 1993, J. Biol. Chem., 1993, 268, 25009-25014
【非特許文献6】Jiang et al., 1996, J. Biol. Chem., 271, 17920-17926
【非特許文献7】Li et al., 1996, Biochem. Biophys. Res. Comm., 228, 334-340
【非特許文献8】Jiang et al., 1997, J. Biol. Chem., 272, 30122-30128
【非特許文献9】Kuma et al., 2005, J. Biol. Chem., 280, 19472-19479
【非特許文献10】Zarubin, T and Han, J., 2005, Cell Res., 15, 11-18
【非特許文献11】Chen et al., 2003, Cell Death and Differentiation, 10, 516-527
【非特許文献12】Cong, F. and Goff, S., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 13819-13824
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的の一つは、上述の従来技術のアッセイに付随した問題がなく、簡単で均質で経済的なp38α(MAPK14)のアッセイ法を提供することである。かかるアッセイは、医薬品及びバイオ産業における、抗癌化合物、炎症誘発性化合物及び抗炎症剤化合物のような治療用化合物のスクリーニングに特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様では、レポーター遺伝子産物とp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のアイソフォームとを含む融合タンパク質を提供する。
【0013】
好ましくは、融合タンパク質は、レポーター遺伝子産物とp38MAPKとを連結するリンカー基をさらに含む。好ましくは、リンカー基は、20ペプチド未満、好ましくは15ペプチド未満、さらに好ましくは10ペプチド未満のペプチドを含むペプチドからなる。さらに好ましくは、リンカー基は、アミノ酸配列GNGGNASからなるヘプタペプチドである。
【0014】
好適には、p38MAPKのアイソフォームは、p38α(MAPK14)、p38β、p38δ(SAPK4)及びp38γ(ERK6、SAPK3)からなる群から選択される。好ましくは、p38MAPKのアイソフォームはp38α(MAPK14)である。
【0015】
好適には、レポーター遺伝子産物は、検出可能な発光性、蛍光性又は放射性部分によって局在化される。
【0016】
好適には、レポーター遺伝子産物は、Aequoria Victoria(オワンクラゲ)、Renilla Reniformis(ウミシイタケ)その他の花虫綱に属するものに由来する緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質である(Labas et al., Proc.Natl.Acad.Sci, (2002), 99, 4256-4261)。
【0017】
米国特許第6172188号には、発色団の1個上流のアミノ酸を変異させて蛍光強度を増大させた変異GFPが記載されている。これらの変異体では、励起及び発光最大をシフトさせずにGFPの蛍光強度が実質的に増大している。F64L−GFPは、発色団の成熟時間が短いため37℃での蛍光が約6倍増大することが示されている。
【0018】
好ましくは、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)及びEmeraldからなる群から選択される。
【0019】
最も好ましくは、蛍光タンパク質は、高感度緑色蛍光タンパク質(Cormack, B.P. et al., Gene, (1996), 173, 33-38)又はEmeraldである。EGFPは哺乳類優先コドンで構築され、哺乳類での発現に最適化されている。
【0020】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は、例えば配列番号3(C末端EGFP−p38α)又は配列番号4(N末端p38α−EGFP)のように、高感度緑色蛍光タンパク質とp38α(MAPK14)とを含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、例えば配列番号5(C末端Emerald−p38α)又は配列番号6(N末端p38α−Emerald)のように、Emeraldとp38α(MAPK14)とを含む。
【0022】
好ましくは、融合タンパク質は、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される。
【0023】
なお、レポーター遺伝子産物は酵素であってもよい。適当な酵素としては、ニトロ還元酵素(NTR)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ(LUC)が挙げられる。
【0024】
本発明の第2の態様では、上述の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。例えば、配列番号3は配列番号7でコードされ、配列番号4は配列番号8でコードされ、配列番号5は配列番号9でコードされ、配列番号6は配列番号10でコードされている。
【0025】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択される。
【0026】
好適には、ヌクレオチド配列はプロモーターと機能的に連結しており、該プロモーターの調節下にある。
【0027】
好ましくは、プロモーターは、哺乳類の構成的プロモーター、哺乳類の調節プロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター、ウイルスプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター、酵母プロモーター、糸状菌プロモーター及び細菌プロモーターからなる群から選択される。プロモーターがウイルスプロモーターの場合、プロモーターは好ましくはCMVプロモーター又はSV40プロモーターである。最も好ましくは、プロモーターはヒトユビキチンCプロモーターである。
【0028】
本発明の第3の態様では、上述のヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。好ましくは、ベクターはプラスミドベクターである。
【0029】
ベクターがウイルスベクターの場合、ベクターは、好ましくは、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サルウイルス40、ウシパピローマウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス及びバキュロウイルスベクターからなる群から選択される。
【0030】
本発明の第4の態様では、上述のヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を提供する。好ましくは、宿主細胞は、上述のヌクレオチド配列で安定に形質転換されている。
【0031】
好適には、宿主細胞は、植物、昆虫、線虫、鳥類、魚類及び哺乳類の細胞から選択される。宿主細胞は好ましくは哺乳類の細胞であり、最も好ましくはヒトの細胞である。一実施形態では、第四の態様の宿主細胞はヒト軟骨肉腫細胞株SW1353である。
【0032】
好適には、宿主細胞は上述の融合タンパク質を発現することができる。
【0033】
本発明の第5の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化を検出する方法であって、
i)上述の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞内での融合タンパク質の局在化を経時的に測定するステップと
を含み、細胞内での融合タンパク質の局在化の変化が活性化の指標となる方法を提供する。
【0034】
本発明の第6の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合ペプチドを過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと、
iii)上記細胞を上記作用因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと
を含み、上記作用因子で処理していない対照細胞と比較したときの細胞内での上記ペプチドの局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0035】
本発明の第7の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した第一及び第二の細胞を培養するステップと、
ii)第一の細胞を上記作用因子で処理して、第一の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと、
iii)上記作用因子で処理していない第二の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと
を含み、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0036】
本発明の第8の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理して、細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと、
iii)上記作用因子の存在下での上記タンパク質の局在化を、上記作用因子の非存在下でのタンパク質の局在化についての既知の値と比較するステップと
を含み、上記作用因子の存在下でのタンパク質の局在化と上記作用因子の非存在下での既知の値との差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0037】
本発明の第9の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合ペプチドを過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)上記細胞をp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと
を含み、上記作用因子で処理せずに上記既知の活性化因子で処理した対照細胞と比較したときの細胞内での上記ペプチドの局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0038】
本発明の第10の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した第一及び第二の細胞を培養するステップと、
ii) 第一の細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)第一の細胞と第二の細胞を、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと
を含み、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0039】
本発明の第11の態様では、生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)上述の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)上記細胞をp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと、
iv)上記作用因子及び活性化因子の存在下でのタンパク質の局在化を、活性化因子は存在するが上記作用因子の非存在下でのタンパク質の局在化についての既知の値と比較するステップと
を含み、上記作用因子の存在下でのタンパク質の局在化と上記作用因子の非存在下での既知の値との差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる方法を提供する。
【0040】
好適には、第8及び第11の態様の方法における既知の値はデータベースに保存されている。
【0041】
好適には、融合タンパク質の局在化は、その発光、蛍光及び放射能特性によって測定する。
【0042】
好適には、作用因子は、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化を誘導する。或いは、作用因子は、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化を阻害するものであってもよい。
【0043】
好適には、作用因子は化学物質又は物理的実体である。好ましくは、作用因子は薬剤候補物質であるような化学物質である。好ましくは、薬剤候補物質は炎症誘発性又は抗炎症性化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
定義
本明細書で用いる「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、鎖長にはかかわりなく、アミノ酸モノマー(残基)の天然又は合成ポリマーを表すものとして互換的に用いられ、ここでいうアミノ酸モノマーには、この場合、天然アミノ酸、天然アミノ酸の構造変異体、ペプチド結合に関与できる合成非天然類似体が包含される。
【0045】
なお、「タンパク質」は、天然アミノ酸と呼ばれるアミノ酸以外のものを含んでいることも多く、所与のタンパク質において末端アミノ酸を始めとする多くのアミノ酸が、プロセシングその他の翻訳後修飾のような自然過程又は当業界で周知の化学修飾法で修飾されていることもある。糖鎖付加、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のγカルボキシル化、水酸化及びADPリボシル化のような一般的修飾については、例えば‘Proteins - Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993及びRattan et al., "Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging", Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 663: 48-62のような基本書に記載されている。
【0046】
タンパク質で起こる修飾は、タンパク質がどのように作られるかによって左右される。例えば、宿主中でのクローン化遺伝子の発現で作られたタンパク質では、修飾の種類及び程度は、宿主細胞の翻訳後修飾能力及びタンパク質のアミノ酸配列に存在する修飾シグナルによって大きく左右される。例えば、周知の通り、大腸菌のような細菌宿主では糖鎖付加は起こらないことが多い。そのため、糖鎖付加が望まれる場合、糖鎖付加が起こる宿主(概して真核細胞)でポリペプチドを発現させるべきである。なお、所与のポリペプチドにおける幾つかの部位での同じ種類の修飾の程度が同一又は異なることもある。また、所与のタンパク質が多くの種類の修飾を含むこともある。「タンパク質」という用語は、このようなあらゆる修飾、特に宿主細胞中でのポリヌクレオチドの発現に起因する修飾を包含する。
【0047】
本明細書で用いる「融合タンパク質」(「キメラタンパク質」ともいう。)という用語は、2種以上の異なるタンパク質配列からなる非天然タンパク質をいう。例えば、国際公開第03/087394号には、基質とセリン/スレオニンキナーゼとを含む融合タンパク質が記載されている。これらの異なる配列の起源は同一の種又は属に由来するものでも、異なる種又は属に由来するものでもよく、合成された非天然配列に由来するものでもよい。融合タンパク質は、異なる配列に由来する別々の機能を備えていてもよいし、異なる配列が単一の機能に寄与するものでもよい。本発明の融合タンパク質は適当な方法で製造することができ、かかる手段は当業者に周知であって、以下で詳しく説明する。
【0048】
本明細書で用いる「レポーター遺伝子産物」という用語は、レポーター遺伝子でコードされる検出可能なポリペプチドをいう。かかるレポーター遺伝子は当業界で周知であり、プロモーターの強さ、遺伝子送達系の効率、遺伝子産物の細胞内運命、分子クローニング作業の成功などの様々な特性や事象の「レポート(報告)」に用いられている。レポーター遺伝子の例としては、ニトロ還元酵素(NTR)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)及び蛍光タンパク質(FP)が挙げられる。
【0049】
本明細書で用いる「アイソフォーム」という用語は、一次構造は異なるが同じ機能を保持している同一タンパク質の複数の形態をいう。
【0050】
「機能的に連結」という用語は、2以上のポリヌクレオチド(例えばDNA配列など)の間の機能的関係をいう。通例、この用語は転写調節配列と転写配列との機能的関係をいう。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列が適当な宿主細胞中でのコード配列の転写を刺激又は調節する場合には、プロモーター又はエンハンサー配列はコード配列と機能的に連結している。
【0051】
「ヌクレオチド配列」は、核酸であって、ヌクレオチド(例えばA、C、T、U、Gなど、又は天然又は人工ヌクレオチド類似体)のポリマーである。所与の核酸又は相補的な核酸は、いずれかの特定されたポリヌクレオチド配列から決定することができる。
【0052】
「核酸」という用語は、一本鎖又は二本鎖形のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのポリマーをいい、特記しない限り、核酸に対して天然ヌクレオチドと同様にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知の類似体も包含する。
【0053】
「ベクター」は、細胞に所定の核酸を導入し、その複製及び/又は発現を促進する組成物である。ベクターとしては、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、YAC、細菌、ポリリジンなどが挙げられる。ベクターは、好ましくは、1以上の複製開始点と組換えDNAを挿入できる1以上の部位とを有する。ベクターは、ベクターを含む細胞を含まないそうでないものから選別することのできる簡便な手段(例えば薬剤耐性遺伝子をコードする部分)を含むことが多い。一般的なベクターとしては、プラスミド、ウイルスゲノム及び(主に酵母及び細菌での)「人工染色体」などがある。「発現ベクター」は、ベクターにクローニングした核酸の転写機能を付与又は促進する要素を含むベクターである。かかる要素としては、例えば、核酸と機能的に連結したプロモーター及び/又はエンハンサーが挙げられる。
【0054】
本明細書では、「プラスミド」は、当業者に周知の命名法に従って、小文字のpの前及び/又は後に大文字及び/又は数字で表記する。本明細書で開示するプラスミドは、市販され、制限なく公衆に利用可能なものであるか、入手可能なプラスミドを周知の慣用法で構築することができる。本発明で使用できるプラスミドその他のクローニング用又は発現用ベクターの多くは周知であり、当業者が容易に入手できる。また、本発明での使用に適した他のプラスミドを構築することも当業者には容易であろう。さらに、本発明におけるかかるプラスミドその他のベクターの性質、構成及び使用法は、本明細書の開示内容から当業者には自明であろう。
【0055】
本明細書で用いる「宿主細胞」という用語は、原核細胞又は真核細胞であって、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、形質転換、プラスミドトランスフェクション、ウイルス感染などの手段によって異種DNAを細胞に導入したものをいう。
【0056】
「ヌクレオチド配列で安定に形質転換された宿主細胞」(「安定細胞株」という用語と互換的に用いられる。)は、細胞のゲノムDNAにヌクレオチド配列が安定に組み込まれた宿主細胞をいい、ヌクレオチド配列でコードされたタンパク質を発現するという細胞の特性は、細胞分裂で受け継がれる。
【0057】
「調節」という用語は、対象分子の細胞レベルその他の生物活性の変化をいう。調節は、上方制御(すなわち、活性化又は刺激)でも、下方制御(すなわち、阻害又は抑制)でもよい。発現レベルの調節については、かかる変化は、対象遺伝子(例えばレポーター遺伝子)の発現量の増減、対象タンパク質をコードするmRNAの安定性の増減、翻訳効率の増減、或いはタンパク質の翻訳後修飾又は安定性の変化などに起因する。その作用形態は直接的なもの、例えば対象タンパク質との結合又は対象タンパク質をコードする遺伝子との結合などであってもよい。かかる変化は間接的なもの、例えば対象タンパク質を調節する他の分子との結合及び/又は修飾(例えば酵素によるもの)であってもよい。
【0058】
「処理」という用語は通常の意味で用いられ、第一の実体を第二の実体と(例えば、細胞を作用因子と)組み合わせたり接触させることをいう。
【0059】
「作用因子(agent)」という用語には、あらゆる物理的実体又は化学物質が包含される。物理的実体の例としては、電磁波(例えば紫外線や赤外線)が挙げられる。作用因子が化学物質である場合、作用因子は物質、分子、元素、化合物又はそれらの組合せとし得る。これらには、特に限定されないが、タンパク質、ポリペプチド、低分子量有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドなどが挙げられる。作用因子は、天然物、合成化合物、化学品又は2種以上の物質の組合せでもよい。治療に潜在的有用性をもつ薬剤候補物質であってもよい。特記しない限り、「作用因子」、「物質」及び「化合物」という用語は互換的に用いられる。
【0060】
図面の簡単な説明
図1Aは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14(MAPK14)のDNA配列を示す。
【0061】
図1B は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14(MAPK14)のタンパク質配列を示す。
【0062】
図2Aは、pCORON1002−EGFP−N1のベクターマップを示す。
【0063】
図2Bは、pCORON1002−EGFP−C1のベクターマップを示す。
【0064】
図3Aは、アデノウイルスベクターpDC515−UBC−Emerald−N1のベクターマップを示す。
【0065】
図3Bは、アデノウイルスベクターpDC515−UBC−Emerald−C1のベクターマップを示す。
【0066】
図4は、C末端EGFP−p38αのタンパク質配列(配列番号3)を示す。
【0067】
図5は、N末端p38α−EGFPのタンパク質配列(配列番号4)を示す。
【0068】
図6は、C末端Emerald−p38αのタンパク質配列(配列番号5)を示す。
【0069】
図7は、N末端p38α−Emeraldのタンパク質配列(配列番号6)を示す。
【0070】
図8は、C末端EGFP−p38αのDNA配列(配列番号7)を示す。
【0071】
図9は、N末端38α−EGFPのDNA配列(配列番号8)を示す。
【0072】
図10は、C末端Emerald−p38αのDNA配列(配列番号9)を示す。
【0073】
図11は、N末端p38α−EmeraldのDNA配列(配列番号10)を示す。
【0074】
図12は、活性化後のEGFP−MAPK14の核中への転位置の模式図である。
【0075】
図13Aは、SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【0076】
図13Bは、SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示すとともに15分間の0.4Mソルビトール処理に対する応答を示す。
【0077】
図13Cは、SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示すとともに15分間の300nMアニソマイシン処理に対する応答を示す。
【0078】
図14は、SW1353生細胞におけるEGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の核から細胞質への経時的再配置(N:C比)を示すグラフである。経時的分析はIN Cell Analyzer 3000装置で取得した画像データに基づいて行った。グラフでは、35分間の300nMアニソマイシン処理に対する生細胞の応答(■及び実線)を未処理の対照細胞(▲及び点線)と対比して示す。
【0079】
図15Aは、SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、0分間の12pM IL−1β処理に応答したEGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【0080】
図15Bは、SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、20分間の12pM IL−1β処理に応答したEGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【0081】
図16は、SW1353生細胞におけるEGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の核から細胞質への経時的再配置(N:C比)を示すグラフである。経時的分析はIN Cell Analyzer 3000装置で取得した画像データに基づいて行った。グラフでは、90分間のIL−1β(12pM)処理に対する生細胞の応答(■及び実線)を未処理の対照細胞(▲及び点線)と対比して示す。この実験ではヘキスト33342は使用せず、対照細胞におけるベースライン応答は視認できない(図14と対比されたい。)。
【0082】
図17は、EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもので得られた活性化因子用量反応曲線である。分析はEGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。安定細胞を8代及び15代継代し、グラフは長期間の培養での応答の安定性(MOR及びEC50)を示す。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で実施した。
【0083】
図18は、EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもののN:C比とウェル当たりの細胞数のプロットである。分析は、「サイトカイン応答アッセイの再現性」(n=144)のデータで得られたEGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。水平からのベストフィット直線のずれは処理群及び未処理群で顕著であった(それぞれF=19及び70、両曲線ともP<0.0001)。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で行った。×及び点線は対照細胞を、●及び実線はIL−1β処理細胞を表す。
【0084】
図19は、EGFP−MAPK14の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間316pM IL−1β又は対照培地で処理したときの応答を示す固定化細胞アッセイで得られた画像である。IN Cell Analyzer 1000で3色画像(ヘキスト、図示せず)を取得し、EGFP−MAPK14の応答(最上段)、リン酸化型p38に対するAlexa 647標識抗体による染色(中段)、シグナルの共局在(最下段)を示す。
【0085】
図20は、EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質(緑色)の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもので得られた活性化因子用量反応曲線である。固定後、細胞を抗リン酸化型(Thr180/Tyr182)−p38(MAPK14)抗体で処理して、Alexa 647標識二次抗体(赤色)で可視化した。分析はEGFP−MAPK14シグナル(右側の縦軸、○印及び実線)の核/細胞質比に基づく。分析は、Alexa 647標識抗リン酸化型p38の核/細胞質シグナル強度に基づく。EGFP−MAPK14アッセイ及び免疫蛍光アッセイでそれぞれ7.16pM及び7.82pM(n=8)のEC50値が得られた。
【0086】
図21は、EGFP−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を、SB203580(10μM、n=8)で30分間インキュベートしてからアニソマイシン(100nM)で30分間活性化して固定化したもので得られた阻害剤応答である。棒は、EGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で実施した。
【0087】
図22は、EGFP−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を阻害剤A(0.005〜300nM;n=8)で30分間インキュベートしてから30分間IL−1β(12pM=EC80)で活性化して固定化したもので得られた阻害剤用量反応曲線である。曲線はEGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。
【0088】
MAPK14レポーター遺伝子のベクターの生成
p38αMAPK14変異体2に対応する遺伝子は、Mammalian Gene Collection(クローン5181064; GenBank BC031574、配列番号1、図1)から入手した。配列番号2は、配列番号1でコードされたタンパク質の配列を示す。PCRプライマーは、MAPK14遺伝子全体が増幅され、その生成物をプラスミドベクターpCORON1002−EGFP−N1及びpCORON1002−EGFP−C1(GE Healthcare社(英国アマーシャム)、図2a及び2b)或いはアデノウイルスベクターpDC515−UBC−Emerald−N1及びpDC515−UBC−Emerald−C1(Microbix Biosystems Inc.、Toronto、カナダ、図3a及び3b)のN末端又はC末端融合タンパク質としてサブクローニングできるように設計した。MAPK14断片の5′末端でのNheI制限酵素部位の導入及び3′末端でのXhoI制限酵素部位の導入によって、ベクターのNheI及びSalI制限部位のサブクローニングが可能となった。pCORON1002ベクターは安定細胞株の生産ができるように細菌アンピシリン耐性遺伝子と哺乳類ネオマイシン耐性遺伝子を含んでおり、融合タンパク質はヒトユビキチンCプロモーターによって発現される。ヒトユビキチンCプロモーターを選択したのは、宿主細胞系の動揺を最小限に抑制して安定で頑強な細胞株及びアッセイを得るのに望まれる均質で一定レベルの融合タンパク質発現をもたらすためである。
【0089】
EGFP−MAPK14融合タンパク質を安定に発現する細胞株の生成
ヒト軟骨肉腫細胞株SW1353(ATCC)を、FuGENE6トランスフェクション剤(Roche社(英国))を用いて、プラスミドベクターpCORON1002EGFP−C1−MAPK14及びpCORON1002EGFP−N1−MAPK14でトランスフェクションした。細胞は、10%(v/v)FBS、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン、1%(v/v)グルタミン添加RPMI1640培地(Sigma−Aldrich社(英国))で維持した。組換え融合タンパク質を発現する安定クローンを、ジェネテシン(500μg/ml)での選択によって、4週間かけて選別した。継代数の少ない段階での一次クローンの特性決定には、均質性及び発現レベルを測定するとともに親細胞株との形態的関連性及び生物学的反応の生理学的関連性を比較するためフローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences社製)を用いた。これらの特性をさらに継代を重ねた細胞についても分析し、細胞株の経時的安定性を評価した。適宜二次クローンを単離して同様に分析した。EGFP−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈し、望ましい規準を満たす細胞株を、200μg/mlのジェネテシンを含有する増殖培地で維持した。選択したクローンでは、30代目まで融合タンパク質が安定に発現されることが実証された。
【0090】
EGFP−MAPK14を安定に発現する細胞株を用いた融合タンパク質の転位置測定によるMAPK14の活性化アッセイ
EGFP−MAPK14融合タンパク質集団は主に休止細胞の細胞質に存在するか、或いは休止細胞全体に均一に分布している。しかし、浸透圧ショック、タンパク質翻訳阻害又はサイトカイン処理のような外部ストレスによって細胞が刺激されると、標識MAPK14集団の一部は核に再局在化する(図12)。
【0091】
アッセイの準備及びアッセイ全体で、バックグラウンドストレス応答は最小限に維持し、マイクロプレート、細胞及び溶液は37℃、5%CO及び相対湿度95%に維持した。阻害剤及び活性化因子はすべて完全培地中で細胞に添加した。
【0092】
EGFP−MAPK14融合タンパク質を安定に発現する細胞を、100μlの維持培地に懸濁し、Packard社製ブラック96ウェルViewPlateにウェル当たり8×10の細胞数で播種した。完全培地中で予め調製しておいた試験活性化因子及び対照化合物50μlを加えて、37℃、5%CO及び相対湿度95%でインキュベートした。固定化細胞アッセイでは、150μlの10%(v/v)ホルマリン(4%ホルムアルデヒド)を室温で20分間加えた。細胞はPBSで2回洗浄し、PBS中のヘキスト溶液(10μM)で核を染色してから、画像を取得した。プレートはIN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社(英国アマーシャム))又はIN Cell Analyzer 3000(GE Healthcare社(英国アマーシャム))で画像化し、画像は製造業者の指示に従ってIN Cell Analyzer 1000のNuclear Translocation Analysis Module(GE Healthcare社(英国アマーシャム))又はIN Cell Analyzer 1000のMorphology Analysis Module(GE Healthcare社(英国アマーシャム))で分析した。
【0093】
浸透圧ショックに対する応答
EGFP−C1−MAPK14を安定に発現するSW1353生細胞を、0.4Mソルビトール又は300nMアニソマイシンで15分間処理し、その応答を、同じ構築物を発現する未処理の対照細胞と対比した。
【0094】
EGFP−C1−MAPK14を安定に発現するSW1353生細胞の画像を、IN Cell Analyzer 3000装置を用いて取得した(図13)。左側の図(図13A)は、活性化因子も阻害剤を含まない培地中で15分間処理した細胞(「対照細胞」)の画像であり、レポータータンパク質の緑色の蛍光が各細胞の全体に分布している。15分間の0.4Mソルビトール処理(中央の図、図13B)又は15分間の300nMアニソマイシン処理(右側の図、図13C)に対する応答としてのEGFP−MAPK14の核への転位置が図13B及び図13Cで認められる。
【0095】
15分間0.4Mソルビトール処理した細胞では、EGFP−MAPK14融合タンパク質の核への蓄積が明らかに認められ、この刺激は刺激開始から90分以上認められた。
【0096】
タンパク質翻訳阻害に対する応答
IN Cell Analyzer 3000のデータから得た生細胞の経時的画像の分析(図14)から、35分間のアニソマイシン(300nM)処理に応答して、SW1353細胞においてEGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の核から細胞質への顕著な再配置(N:C比)が認められる。この実験では、ヘキスト33342を使用したが、これによって対照細胞でのベースラインストレス応答が起きた。
【0097】
15分間300nMアニソマイシン処理した細胞では、GFP−MAPK14融合タンパク質の核への蓄積が明らかに認められた(図13C及び14)。しかし、経時的分析では、この種のストレス応答で予測されるように、20〜35分の間にシグナルのゆっくりとした平衡化が起こった(図14)。
【0098】
サイトカインに対するSW1353細胞の応答
12pMのIL−1βで処理した生細胞では、細胞質から核へのEGFP−MAPK14シグナルの明瞭な転位置が認められ(図15A及び15B)、20〜40分で核におけるシグナルの蓄積が最大となった(図16)。炎症反応で予想されるように、40〜90分の間にシグナルのゆっくりとした平衡化が起こった(図16)。
【0099】
サイトカイン用量反応
SEGFP−C1−MAPK14を安定に発現するW1353細胞に、IL−1βを0.017〜333pMの最終濃度で加えた。単一クローン由来の安定細胞集団の8代目及び15代目の細胞の用量反応曲線から、この細胞株の応答が、経時的に安定していることが分かる(図17)。EC50値はそれぞれ2.5及びpMであった(N=8、S:Nはそれぞれ6.5及び4)。
【0100】
サイトカイン応答アッセイの再現性
安定な発現を示すSW1353細胞におけるGFP−MAPK14融合タンパク質の転位置に関するアッセイの再現性について検討した。アッセイあ3枚の別個の96ウェルプレート上で実施した。各プレートのウェルに、対照培地で処理した細胞(n=48)とIL−1β(12pM)で処理した細胞を交互に入れた。全体のシグナル/ノイズ比は3.61:1(n=144)であった。
【0101】
細胞の播種密度及び成長速度によるサイトカイン応答アッセイのばらつき
処理細胞及び未処理細胞での核/細胞質比の平均の標準偏差に寄与するばらつきを分離できれば、p38MAPKシグナル伝達を活性化/阻害する化合物のスクリーニングのための改良アッセイの作成に役立つはずである。
【0102】
IL−1β又は対照培地で処理した細胞のN:C比(上述の「サイトカイン応答アッセイの再現性」からのデータ)を細胞数に関して分析すると、「ベストフィット直線」が水平でないことから、細胞播種密度及び細胞数がアッセイのばらつきに有意な影響をもつことが明らかである(図18)。スクリーニングの際にすべてのウェルに正確に同じ数の細胞を入れることやプレート全域で成長速度を制御するのは、周縁効果などのため、極めて困難である。そこで、薬剤スクリーニングアッセイにおいて、N:C比と細胞数とのプロットを用いると、細胞数のばらつき、化合物に起因する細胞傷害性及び細胞周期の停止などによる影響が明らかとなるので、正確な「ヒット」の識別に役立つ。
【0103】
EGFP−MAPK14融合タンパク質の生物学的活性化と、抗リン酸化型p38免疫蛍光アッセイとの相関
EGFP−MAPK14アッセイの経時的及び生物学的応答を、p38(MAPK14)活性化の広く認められたアッセイであるリン酸化型(Thr180/Tyr182)−p38(MAPK14)に対する免疫蛍光アッセイとの同時分析によって評価した。EGFP−MAPK14融合タンパク質を安定に発現するSW1353細胞を、IL−1βで処理し、固定化し、上述の通りヘキスト染色した。次いで、細胞を洗浄し(PBS中1%ヤギ血清、0.1%Tween)、室温で15分間透過処理し(洗浄緩衝液中0.5%Triton X)、再度洗浄した。50μlのウサギ抗リン酸化型p38抗体(1:200)(Zymed Laboratories社(米国サンフランシスコ))を添加して室温で1時間インキュベートしてから、2回洗浄し、50μlのヤギ抗ウサギAlexa 647抗体(Molecular Probes社製)を1:200で加え、室温で1時間インキュベートした。2回洗浄した後、IN Cell Analyzer 1000装置でPBS中の細胞の画像を取得して、ヘキスト、EGFP−MAPK14及びAlexa 647を検出した。
【0104】
IL−1β処理細胞では、細胞質から核への緑色EGFP−MAPK14シグナルの明瞭な転位置が認められた(図19)。IL−1β処理細胞では、免疫蛍光アッセイ(赤色シグナル)で検出されるリン酸化型p38シグナルと、EGFP−MAPK14シグナルとが共局在を示し、これらの方法が相関していて、MAPK14の活性化の検出にこれらの方法のいずれか又は両方を使用できることが実証された(図19)。また、これらの方法を併用すると、転位置を起こさないがリン酸化を活性化/阻害する化合物を識別することができる。2つの方法を用いて得た用量反応曲線は、2つの方法の良好な相関を示している(図20)。EGFP−MAPK14アッセイ及び免疫蛍光アッセイでのEC50値はそれぞれ7.16pM及び7.82pMであった。
【0105】
EGFPの発現を示す安定細胞株を用いた融合タンパク質の転位置測定によるMAPK14の活性化の阻害剤のアッセイ
EGFP−MAPK14融合タンパク質を安定に発現する細胞を、(100μl維持培地に懸濁して)Packard社製ブラック96ウェルViewPlatesにウェル当たり0.8×10の細胞数で播種した。次いで、培地中の阻害剤2μlを加えて細胞を30分間予めインキュベートしておいてから、培地中で予め調製しておいた試験活性化因子及び対照25μlを加えてさらに30分間インキュベートした。細胞を上述の通り、固定化、画像化し、分析した。
【0106】
アニソマイシン(100nM)によるSW1353細胞でのMAPK14の活性化及び融合タンパク質の転位置は、p38α(MAPK14)阻害剤SB203580(10μM、図21)で予めインキュベートしておくことによって、顕著に阻害された。
【0107】
IL−1βによるMAPK14活性化の阻害剤で予めインキュベートしておいた細胞は、活性化に応答せず、EC50は3.6nMであった(図22)。
【0108】
本明細書で引用した特許文献その他の刊行物の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。本発明の好ましい例示的な実施形態について説明してきたが、単なる例示のために記載した実施形態以外の形態でも本発明を実施することができることは当業者には自明であり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14(MAPK14)のDNA配列を示す。
【図1B】マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14(MAPK14)のタンパク質配列を示す。
【図2A】pCORON1002−EGFP−N1のベクターマップを示す。
【図2B】pCORON1002−EGFP−C1のベクターマップを示す。
【図3A】アデノウイルスベクターpDC515−UBC−Emerald−N1のベクターマップを示す。
【図3B】アデノウイルスベクターpDC515−UBC−Emerald−C1のベクターマップを示す。
【図4】C末端EGFP−p38αのタンパク質配列(配列番号3)を示す。
【図5】N末端p38α−EGFPのタンパク質配列(配列番号4)を示す。
【図6】C末端Emerald−p38αのタンパク質配列(配列番号5)を示す。
【図7】N末端p38α−Emeraldのタンパク質配列(配列番号6)を示す。
【図8】C末端EGFP−p38αのDNA配列(配列番号7)を示す。
【図9】N末端38α−EGFPのDNA配列(配列番号8)を示す。
【図10】C末端Emerald−p38αのDNA配列(配列番号9)を示す。
【図11】N末端p38α−EmeraldのDNA配列(配列番号10)を示す。
【図12】活性化後のEGFP−MAPK14の核中への転位置の模式図である。
【図13A】SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【図13B】SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示すとともに15分間の0.4Mソルビトール処理に対する応答を示す。
【図13C】SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、EGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示すとともに15分間の300nMアニソマイシン処理に対する応答を示す。
【図14】SW1353生細胞におけるEGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の核から細胞質への経時的再配置(N:C比)を示すグラフである。経時的分析はIN Cell Analyzer 3000装置で取得した画像データに基づいて行った。グラフでは、35分間の300nMアニソマイシン処理に対する生細胞の応答(■及び実線)を未処理の対照細胞(▲及び点線)と対比して示す。
【図15A】SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、0分間の12pM IL−1β処理に応答したEGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【図15B】SW1353生細胞のIN Cell Analyzer 3000画像であり、20分間の12pM IL−1β処理に応答したEGFP−C1−MAPK14の安定な発現を示す。
【図16】SW1353生細胞におけるEGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の核から細胞質への経時的再配置(N:C比)を示すグラフである。経時的分析はIN Cell Analyzer 3000装置で取得した画像データに基づいて行った。グラフでは、90分間のIL−1β(12pM)処理に対する生細胞の応答(■及び実線)を未処理の対照細胞(▲及び点線)と対比して示す。この実験ではヘキスト33342は使用せず、対照細胞におけるベースライン応答は視認できない(図14と対比されたい。)。
【図17】EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもので得られた活性化因子用量反応曲線である。分析はEGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。安定細胞を8代及び15代継代し、グラフは長期間の培養での応答の安定性(MOR及びEC50)を示す。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で実施した。
【図18】EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもののN:C比とウェル当たりの細胞数のプロットである。分析は、上記の「サイトカイン応答アッセイの再現性」(n=144)のデータで得られたEGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。水平からのベストフィット直線のずれは処理群及び未処理群で顕著であった(それぞれF=19及び70、両曲線ともP<0.0001)。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で行った。×及び点線は対照細胞を、●及び実線はIL−1β処理細胞を表す。
【図19】EGFP−MAPK14の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間316pM IL−1β又は対照培地で処理したときの応答を示す固定化細胞アッセイで得られた画像である。IN Cell Analyzer 1000で3色画像(ヘキスト、図示せず)を取得し、EGFP−MAPK14の応答(最上段)、リン酸化型p38に対するAlexa 647標識抗体による染色(中段)、シグナルの共局在(最下段)を示す。
【図20】EGFP−C1−MAPK14融合タンパク質(緑色)の安定な発現を呈するSW1353細胞を30分間IL−1βで処理してから固定化したもので得られた活性化因子用量反応曲線である。固定後、細胞を抗リン酸化型(Thr180/Tyr182)−p38(MAPK14)抗体で処理して、Alexa 647標識二次抗体(赤色)で可視化した。分析はEGFP−MAPK14シグナル(右側の縦軸、○印及び実線)の核/細胞質比に基づく。分析は、Alexa 647標識抗リン酸化型p38の核/細胞質シグナル強度に基づく。EGFP−MAPK14アッセイ及び免疫蛍光アッセイでそれぞれ7.16pM及び7.82pM(n=8)のEC50値が得られた。
【図21】EGFP−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を、SB203580(10μM、n=8)で30分間インキュベートしてからアニソマイシン(100nM)で30分間活性化して固定化したもので得られた阻害剤応答である。棒は、EGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。画像の取得及び分析はIN Cell Analyzer 1000装置で実施した。
【図22】EGFP−MAPK14融合タンパク質の安定な発現を呈するSW1353細胞を阻害剤A(0.005〜300nM;n=8)で30分間インキュベートしてから30分間IL−1β(12pM=EC80)で活性化して固定化したもので得られた阻害剤用量反応曲線である。曲線は、EGFPシグナルの核/細胞質比に基づく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レポーター遺伝子産物とp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のアイソフォームとを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記レポーター遺伝子産物とp38MAPKとを連結するリンカー基をさらに含む、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記リンカー基が10ペプチド未満のペプチドからなる、請求項2記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記リンカー基がアミノ酸配列GNGGNASからなる、請求項3記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記p38MAPKのアイソフォームが、p38α(MAPK14)、p38β、p38δ(SAPK4)及びp38γ(ERK6、SAPK3)からなる群から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記p38MAPKのアイソフォームがp38α(MAPK14)である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記レポーター遺伝子産物が、検出可能な発光性、蛍光性又は放射性基によって局在化できる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記レポーター遺伝子産物が蛍光タンパク質である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emeraldからなる群から選択される、請求項8記載の融合タンパク質。
【請求項10】
高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)とp38α(MAPK14)とを含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項11】
Emeraldとp38α(MAPK14)とを含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項11記載の融合タンパク質をコードする請求項13記載のヌクレオチド配列であって、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択されるヌクレオチド配列。
【請求項15】
当該配列がプロモーターと機能的に連結し該プロモーターの調節下にある、請求項13又は請求項14記載のヌクレオチド配列。
【請求項16】
前記プロモーターが、哺乳類の構成的プロモーター、哺乳類の調節プロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター、ウイルスプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター、酵母プロモーター、糸状菌プロモーター及び細菌プロモーターからなる群から選択される、請求項15記載のヌクレオチド配列。
【請求項17】
前記ウイルスプロモーターがCMV又はSV40プロモーターである、請求項16記載のヌクレオチド。
【請求項18】
前記プロモーターがヒトユビキチンCプロモーターである、請求項15又は請求項16記載のヌクレオチド。
【請求項19】
請求項13乃至請求項18のいずれか1項記載のヌクレオチド配列を含む複製可能なベクター。
【請求項20】
前記ベクターがプラスミドベクターである、請求項19記載の複製可能なベクター。
【請求項21】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項19記載の複製可能なベクター。
【請求項22】
前記ウイルスベクターが、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サルウイルス40、ウシパピローマウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス及びバキュロウイルスベクターからなる群から選択される、請求項22記載の複製可能なベクター。
【請求項23】
請求項13乃至請求項18のいずれか1項記載のヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞。
【請求項24】
請求項13乃至請求項18のいずれか1項記載のヌクレオチド配列で安定に形質転換された請求項23記載の宿主細胞。
【請求項25】
植物、昆虫、線虫、鳥類、魚類及び哺乳類細胞から選択される、請求項23又は請求項24記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項25記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記ヒト細胞がヒト軟骨肉腫細胞株SW1353である、請求項26記載の宿主細胞。
【請求項28】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を発現することのできる、請求項23乃至請求項27のいずれか1項記載の宿主細胞。
【請求項29】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化を検出する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞内での融合タンパク質の局在化を経時的に測定するステップと
を含み、細胞内での融合タンパク質の局在化の変化が活性化の指標となる、方法。
【請求項30】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合ペプチドを過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと、
iii)上記細胞を上記作用因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと
を含み、上記作用因子で処理していない対照細胞と比較したときの細胞内での上記ペプチドの局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項31】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した第一及び第二の細胞を培養するステップと、
ii)第一の細胞を上記作用因子で処理して、第一の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと、
iii)上記作用因子で処理していない第二の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと
を含み、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項32】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理して、細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと、
iii)上記作用因子の存在下での上記タンパク質の局在化を、上記作用因子の非存在下でのタンパク質の局在化についての既知の値と比較するステップと
を含み、上記作用因子の存在下でのタンパク質の局在化と上記作用因子の非存在下での既知の値との差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項33】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合ペプチドを過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)上記細胞をp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと
を含み、上記作用因子で処理せずに上記既知の活性化因子で処理した対照細胞と比較したときの細胞内での上記ペプチドの局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項34】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した第一及び第二の細胞を培養するステップと、
ii) 第一の細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)第一の細胞と第二の細胞を、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化を測定するステップと
を含み、第一の細胞と第二の細胞内での上記タンパク質の局在化の差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項35】
生細胞中でのp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して作用因子の有する効果を測定する方法であって、
i)請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の融合タンパク質を過剰発現するように形質転換した細胞を培養するステップと、
ii)上記細胞を上記作用因子で処理するステップと、
iii)上記細胞をp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の既知の活性化因子で処理して、細胞内での上記ペプチドの局在化を測定するステップと、
iv)上記作用因子及び活性化因子の存在下でのタンパク質の局在化を、活性化因子は存在するが上記作用因子の非存在下でのタンパク質の局在化についての既知の値と比較するステップと
を含み、上記作用因子の存在下でのタンパク質の局在化と上記作用因子の非存在下での既知の値との差が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化の調節に際して上記作用因子の有する効果の指標となる、方法。
【請求項36】
前記既知の値がデータベースに保存されている、請求項23又は請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記融合タンパク質の局在化をその発光、蛍光及び放射能特性によって測定する、請求項29乃至請求項36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記作用因子が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化を誘導する、請求項30乃至請求項37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記作用因子が、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化を阻害する、請求項30乃至請求項37のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記作用因子が化学物質又は物理的実体である、請求項30乃至請求項39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記化学物質が薬剤候補物質である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記薬剤候補物質が炎症誘発性又は抗炎症性化合物である、請求項41記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−513150(P2009−513150A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538163(P2008−538163)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/060251
【国際公開番号】WO2007/094867
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】