説明

シグナルペプチド、核酸分子及び治療方法

本発明は、S.ミュータンスの遺伝的受容能及びS.ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害することができる、単離されたポリペプチドを提供する。本発明はさらに、S.ミュータンス受容能刺激ペプチドのペプチド類似体、前記の組成物、並びにストレプトコッカスのバイオフィルム形成の阻害及び歯垢付随ストレプトコッカスによって引き起こされる症状の治療及び予防を目的とする前記の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、人間及び動物の感染、並びに細菌の蓄積を受けやすい表面の生物性汚染に中心的に関与する細菌バイオフィルムを抑制又は破壊する化合物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌はしばしば表面に付着し蓄積して、機械的及び化学的手段による除去又は殺菌に対して自身を耐性にする。これによって、持続感染及び慢性感染、並びに集落形成細菌を含む液体と接触する装置の汚れがもたらされ得る。細菌は、近隣の微生物の近さ、密度及び細菌の実体から生じるシグナルに応答する。集団感知(QS)(quorum sensing)過程を介して、細菌は、分泌されたシグナル分子の濃度を感知することにより間接的に集団密度を決定する(Bassler, 2002)。QSにより互いに情報を伝達し、一群として集合的に行動する細菌の能力は、より効率的な増殖、より良好な資源及び適所への接近、並びに競合者に対するより強力な防御を含む際立った利点を付与する(Jefferson, 2004)。細菌細胞の生理に対して多様な影響を有する多くのQS系が研究されてきた。前記の例には、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)のバイオフィルムの分化(Davies et al. 1998)、セラチア・リケファシエンス(Serratia Liquefaciens)のスウォーミング運動性(Eberl et al. 1999)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(Lee & Morrison, 1999)及びストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(Li et al. 2001)の受容能の発達、並びに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の病原性因子の誘導(Ji et al. 1995)が含まれる。
細菌のバイオフィルムの制御は、固体表面が非無菌的水性環境に導入されるほとんど全ての人間の事業にとって望ましい。米国特許6,024,958号には、細菌の歯への付着を防ぐことによってバイオフィルム形成の制御を試みるペプチドが記載されている。う食における出現の他に、バイオフィルム成長の医療例には、内在医療装置、関節インプラント、前立腺炎、心内膜炎及び呼吸器感染を伴う事例が含まれる。実際、CDC(Centers for Diseases Control and Prevention; Atlanta, GA)は、ヒトの細菌感染の65%がバイオフィルムを必要とすると概算している。バイオフィルム集落形成の非医療例は、水及び飲料ライン、冷却塔、ラジエーター、養殖汚染、水中ポンプ及び羽根車、民間、漁業及び軍用船の船体、並びに生物性汚染が発生する文字通り全ての状況である。表面媒介細菌増殖を制御するという最終目標をもつ、バイオフィルムの生理学及び遺伝学に焦点を当てた基礎研究の潜在的利点は無限である。
【0003】
バイオフィルム増殖細胞の研究の興味は、部分的には、バイオフィルムの成長は、抗菌化合物及び機械的な力に対する細胞の抵抗力を高めることができる物理的及び生理的状態に細胞が存在し得るミクロの環境を提供するという理由から高まっている(Costerton & Lewandowski(Adv Dent Res, 11:192-195)で概説されている)。バイオフィルムの成長はまた、異なる種の間で遺伝情報の伝達を促進することができる(Christensen et al. Appl Environ Microbiol, 64:2247-2255)。最近得られた証拠は、バイオフィルム増殖細胞は、液体培地で増殖させた前記細胞の同胞と比較したとき劇的に異なる表現型を提示し得ることを示唆している。いくつかのものでは、この変化した生理的状態は、表面との接触によって開始した遺伝子の活性化(Finlay & Falkow, Microbiol Molec Rev, 61:136-169)、又は、それら細胞に細胞密度を認知(クオラムセンシング)させる細菌によって産生されるシグナル分子からからもたらされることが示された(Davies et al. Appl Environ Microbiol, 61:860-867)。バイオフィルムはまた、抗菌化合物に対する抵抗性を付与する遺伝的エレメントの存続、伝達及び選別を可能にする“遺伝型貯蔵所”として機能することができる。
う食及び歯周疾患は、人類が罹患するもっとも一般的な慢性感染性疾患であり、歯の表面にバイオフィルムとして形成される歯垢を常に伴う。したがって、う食及び歯周疾患の予防の目標は歯垢の制御である。
【0004】
歯垢は多様な細菌の連続的な付着によって生じ、関与する種及び表面組成物の両方に左右される(Kawashima et al. 2003, Oral Microbiol Immunol, 18:220-225)。口腔連鎖球菌及び放線菌は歯の表面に出現する最初の菌である。連鎖球菌(ストレプトコッカス属)は唾液の細菌のほぼ20%を占め、前記には、連鎖球菌種(ストレプトコッカス種)、例えばストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サングイス(St. sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(St. gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(St. oralis)及びストレプトコッカス・ミチス(St. mitis)が含まれる。ストレプトコッカスの2つの“ミュータンス群”、S.ミュータンス及びS.ソブリヌスはう食の開始に直接関与する(Devulapalle et al. 2004, Carbohydr Res 339:029-1034)。S.ミュータンスは、その日和見病原体としての役割と一緒になって、口腔での生存及び持続性のためにバイオフィルムというライフスタイルに依存するように進化したために、バイオフィルムを形成する病原性ストレプトコッカスのもっともよく研究された例となった(R.A. Burne, J Dent Res, 1998, 77:445-452)。
多くの連鎖球菌が集団感知系を利用していくつかの生理過程を調節する。前記には、外来DNA取り込み能、酸耐性能、バイオフィルム形成能、及び病原性になる能力が含まれる。これらの集団感知系は主として、ヒスチジンキナーゼ/応答調節物質対を介して近隣の細胞によって検出される小さな受容能刺激ペプチド(CSP)で構成される。集団感知ペプチドの類似体(CSPの類似体)は、S.ミュータンスのバイオフィルム形成を競合的に阻害し得ることが示された(Cvitkovitch et al. 米国特許出願20020081302, 2002)。
S.ミュータンスに対する抗生物質のいずれの公知タイプもう食を満足に制御することができない。S.ミュータンス誘発う食を制御する新規な方法を同定することが希求されている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明のある種の実施態様にしたがえば、CSP(配列番号:30)のS.ミュータンスヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)への結合を競合的に阻害する化合物が提供される。ある種の実施態様では、前記化合物はペプチド又は抗体である。いくつかの実施態様では、前記化合物は配列番号:2の誘導体、配列番号:2の断片、又は配列番号:2の断片の誘導体である。
本発明のある種の実施態様にしたがえば、上記に記載の化合物を製造する方法が提供される。本発明の他の実施態様では、上記に記載の化合物をS.ミュータンスの増殖阻害に、う食の抑制に、又は歯の健康の改善に用いる方法が提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:2又は配列番号:30の断片を含み、S.ミュータンスの遺伝的受容能を阻害することができる単離されたポリペプチドが提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:2又は配列番号:30と少なくとも95%同一であり、S.ミュータンスの遺伝的受容能を阻害することができる単離されたポリペプチドが提供される。
本発明のある実施態様では、配列番号:2又は配列番号:30のCOOH末端から1−5アミノ酸が除去されている。
本発明のある特徴では、配列番号:2又は配列番号:30の断片を含み、S.ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害することができる単離されたポリペプチドが提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:2又は配列番号:30と少なくとも95%同一であり、S.ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害することができる単離されたポリペプチドが提供される。
本発明のある実施態様では、配列番号:2又は配列番号:30のアミノ酸配列の1−5アミノ酸が、それぞれ10アミノ酸につき1つまでのアミノ酸置換を含むように改変されている。
【0006】
本発明のある特徴では、CSPのペプチド誘導体を含む、S.ミュータンスのバイオフィルム形成を低下させるための組成物が提供される。
本発明のある特徴では、CSPのペプチド誘導体を含む、S.ミュータンスの形質転換効率を低下させるための組成物が提供される。
本発明のある実施態様では、前記ペプチド類似体は、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである。
本発明のある実施態様では、前記ペプチド類似体は配列番号:44のアミノ酸配列を有するペプチドである。
本発明のある特徴では、上記に示した本発明の組成物のいずれかを産生するように遺伝的に操作された細胞が提供される。
本発明のある実施態様では、前記細胞は細菌である。
本発明のある実施態様では、前記細胞はS.ミュータンスである。
本発明のある特徴では、上記に示した本発明の組成物のいずれかを製造することを目的とする本発明の細胞の使用が提供される。
本発明のある特徴では、本発明の細胞及び医薬的に許容できるアジュバントを含む組成物が提供される。
本発明のある特徴では、請求項9から12、又は17のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、S.ミュータンスの増殖を阻害する方法が提供される。
本発明のある特徴では、上記に示す本発明の組成物のいずれかを投与することを含む、う食を抑制する方法が提供される。
本発明のある特徴では、上記に示す本発明の組成物のいずれかを投与することを含む、歯の健康を改善する方法が提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドが提供される。
【0007】
本発明のある特徴では、バイオフィルムの形成を阻害する、S.ミュータンス受容能刺激ペプチド(CSP)のペプチド類似体が提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド及び口腔で許容される賦形剤を含む、バイオフィルム形成を阻害する組成物が提供される。
本発明のある特徴では、少なくとも1つのCSP阻害因子及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
本発明のある特徴では、治療的に有効な量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、バイオフィルム形成細菌によって引き起こされる細菌感染を治療又は予防する方法が提供される。
本発明のある特徴では、治療的に有効な量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、歯垢形成を予防する方法が提供される。
本発明のある特徴では、治療的に有効な量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、歯垢に付随する細菌によって引き起こされる症状を治療又は予防する方法が提供される。
本発明のある特徴では、バイオフィルム形成細菌によって引き起こされる感染を治療又は予防する医薬の製造を目的とするCSP阻害因子の使用が提供される。
本発明のある実施態様では、前記CSP阻害因子は、バイオフィルム形成を阻害する、S.ミュータンス受容能刺激ペプチド(CSP)のペプチド類似体である。
本発明の別の実施態様では、前記CSP阻害因子は、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
本発明のある実施態様では、前記CSP阻害因子は、配列番号:44のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0008】
本発明のある実施態様では、前記CSP阻害因子は、CSPに特異的な抗体又はその断片である。
本発明のある実施態様では、前記CSP阻害因子は、CSP発現又は転写を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
本発明のある実施態様では、前記CSP阻害因子は、CSPペプチドの搬出を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
本発明のある特徴では、ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を阻害する組成物が提供され、前記組成物は、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。
本発明のある実施態様では、前記組成物はさらに、表面活性剤、防腐剤及び抗生物質から成る群から選択される1つ以上の成分を含む。
本発明のある実施態様では、前記組成物は1μg/mLから100μg/mLの前記ペプチドを含む。
本発明のある特徴では、ストレプトコッカス種にのバイオフィルム形成を阻害する医薬の製造を目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用が提供される。
本発明のある特徴では、ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を予防又は阻害することを目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用が提供される。
本発明のある特徴では、歯垢に付随するストレプトコッカス種によって引き起こされる症状を治療又は予防することを目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用が提供される。
【0009】
本発明のある特徴では、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的有効量を投与することを含む、その必要がある患者において、ストレプトコッカス種感染を治療又は予防する方法が提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的有効量を投与することを含む、その必要がある患者において、ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を阻害又は予防する方法が提供される。
本発明のある特徴では、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的有効量を投与することを含む、その必要がある患者において、歯垢付随ストレプトコッカス種によって引き起こされる症状を治療又は予防する方法が提供される。
本発明のある実施態様では、歯垢に付随するストレプトコッカス種によって引き起こされる症状は、う食、歯肉炎及び心内膜炎から成る群から選択される。
本発明のある実施態様では、前記ペプチドは配列番号:44のアミノ酸配列を有する。
本発明のある実施態様では、前記ストレプトコッカス種は、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・クリスタトゥス(Streptococcus cristatus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、S.ピオゲネス(S. pyogenes)、及びストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)から成る群から選択される。
本発明のある実施態様では、前記ストレプトコッカス種は肺炎連鎖球菌である。
本発明の前記実施態様並びに他の実施態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明並びに図面を参照しつつ明白となるであろう。
【0010】
発明の詳細な説明
いくつかのグラム陽性細菌(ストレプトコッカス・ミュータンスを含む)では、細胞膜に存在する特定のヒスチジンキナーゼレセプターが破壊されると、前記細胞はバイオフィルムを成長させることができなくなる。このバイオフィルム環境内で増殖する細胞は、小ペプチドシグナル分子を用いて周辺細胞のレセプターを活性化し、それによってバイオフィルム形成のために情報を交換する。この同じシグナルペプチド及びヒスチジンキナーゼはまた、遺伝的受容能(細胞外環境からDNAを取りこむ細胞の能力)とともに酸耐性の能力(pH3.0という低いpHレベルで生存する細胞の能力)の誘発に必要である。前記シグナル分子のヒスチジンキナーゼレセプターの活性化を阻止するメカニズムは、微生物のバイオフィルムを単独で又は化学的若しくは物理的手段と組み合わせて制御する新規な方法を提供する。
我々は、以下をコードする3つの遺伝子からなるS.ミュータンスの遺伝子座を同定した:1)搬出中に21アミノ酸分泌ペプチド(CSP)(配列番号:30)にプロセッシングされるペプチド前駆体(配列番号:2);2)前記ペプチドによって活性化される、細胞表面レセプターとして機能するヒスチジンキナーゼ(配列番号:4);3)S.ミュータンスの遺伝的受容能、バイオフィルム形成及び酸耐性に中心的に関与する多数の他の遺伝子を活性化する応答調節因子(配列番号:6)。前記の特性はう食を引き起こす細菌の能力の結果であると考えられている。これら3つの遺伝子のいずれかの不活化、又はそれらコードタンパク質のいずれかの相互作用又は活性が損なわれると、前記細菌の外来DNA取りこみ能、バイオフィルム形成能及び酸性pH耐性能が破壊されるであろう。
【0011】
ストレプトコッカス・ミュータンスは、歯垢(歯の表面に付着する細菌マトリックスと細胞外物質である)のバイオフィルム環境の定住菌である。適切な環境条件下では、S.ミュータンスの集団及び周辺の歯垢のpHは低下するであろう。S.ミュータンス(歯垢中に定住するもっとも酸耐性の微生物である)はこの酸性環境で数を増し、最終的には前記歯垢群落の支配的メンバーになる。この状況は最終的に歯のエナメル質の溶解をもたらし、う食を進行させる。我々は、この細菌の蓄積及び酸耐性を制御して、前記細菌がう食を引き起こしにくくする。我々は、前記目的を、S.ミュータンスバイオフィルム形成及び酸耐性に必要な遺伝子の発現を促進する細胞外シグナルペプチドの阻害因子を用いることによって達成する。前記ペプチドの作用を阻害する化合物が開示される。これらの阻害因子には、ヒスチジンキナーゼの活性化及び前記シグナル分子によるヒスチジンキナーゼの活性化の結果として活性化される遺伝子ファミリーを特異的に阻害する、ペプチド、抗体、又は他の物質が含まれ得る。阻害因子には、N-及び/又はCOOH末端からアミノ酸が除去されるか、及び/又は内部アミノ酸残基が置換された野生型成熟CSPペプチドの改変構造物が含まれる。我々は、1つ、2から5、6から10、及び10から15のアミノ酸を野生型成熟CSPペプチドから(例えばいずれかの末端から)欠失させ、シグナルペプチドとヒスチジンキナーゼとの結合の競合的阻害を測定する(1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれより多いアミノ酸を欠失させ、阻害を測定する)。阻害因子にはまた、前記21-アミノ酸CSP(配列番号:30)だけで又はより大きな分子と結合させて免疫原性を増加させたものに対して作成した抗体が含まれる。我々はまた文献(Barrett et al. Proc Natl Acad Sci USA, 95:5317-5322)に記載された阻害因子を試験し、シグナルペプチドとヒスチジンキナーゼとの結合の競合的阻害を測定する。
【0012】
このシグナリング/感知系をコードする遺伝子の同定に加えて、我々は、S.ミュータンスのバイオフィルム形成及び酸耐性を促進する21-アミノ酸ペプチド(配列番号:14)を同定し化学的に合成した。文献及びデータベースの検索によって、このシグナル-レセプター系に類似する遺伝子がほとんどのグラム陽性細菌に存在し、したがって、1つの阻害因子又は関連阻害因子ファミリーが大きな細菌群のバイオフィルム形成阻害に有効であり得ることが明らかになった。
う食の治療又は予防は、S.ミュータンスのバイオフィルム形成及び酸耐性における21-アミノ酸ペプチド(配列番号:30)の促進作用を阻害する化合物の添加を含む。これは、バイオフィルムにこれらの化合物を添加するか、及び/又は表面での増殖を制御する材料にこれらの阻害因子を取り込ませることによって達成される。前記には、単独又は他の化合物(練り歯磨き、口内洗浄液、食品又は食品添加物を含む)との局所適用によってデリバリーすることが含まれる。
ストレプトコッカス・ミュータンスはまた心内膜炎の発症にも関係する。バイオフィルム形成、したがって凝集の阻害因子はこれら細菌感染治療にも同様に有用である。
我々はまた、他の歯垢細菌種、例えばアクチノミセス属(放線菌)種(Actinomyces spp.)及び他のストレプトコッカス(例えばストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス及びストレプトコッカス・ミチス)に対しバイオフィルム形成を阻害する化合物を同定した。ストレプトコッカスは唾液細菌のおよそ20%にあたる。この化合物は、S.ミュータンス野生型成熟CSPペプチドのN-及び/又はC-末端からアミノ酸が除去された、及び/又は内部アミノ酸残基の置換を有する、前記S.ミュータンス野生型成熟CSPペプチドの改変構造を含む。
【0013】
受容能刺激ペプチド(CSP)、ヒスチジンキナーゼ(HK)及び応答調節因子(RR)の同定及び特性決定
受容能刺激ペプチド:S.ミュータンスから単離されたCSPが本発明のある種の実施態様にしたがって提供される。さらにまた、本発明のある種の実施態様にしたがって提供されるものは、プロモーターに機能的に連結されたCSPをコードする核酸分子(配列番号:1)を含む細胞によって産生される組換え単離CSP(配列番号:2)である。本発明のある種の実施態様にしたがってさらに提供されるものは、CSPをコードする単離された核酸分子(配列番号:1)である。我々が実験に用いるペプチドは好ましくは化学的に合成したもの(配列番号:14)である。
CSPコード核酸分子(配列番号:1)及び、前記CSPコード配列と配列同一性を有するか又は前記とハイブリダイズし、さらにCSP活性を有するペプチドをコードする分子(配列同一性の好ましいパーセンテージは下記に記載される)、および、前記分子を含むベクターが本発明の種々の実施態様にしたがって提供される。本発明のある種の実施態様では、CSP(配列番号:2)、又は配列同一性(好ましいパーセンテージは下記に記載される)を有するか、若しくはCSP活性を有するペプチドが提供される。本明細書で開示される核酸分子及びペプチドはS.ミュータンスから得ることができ、さらに、それらは天然の供給源から単離されても、合成又は組換え体であってもよい。CSP(配列番号:2)又は配列同一性をもちCSP活性を有するペプチド(本出願に記載した方法によって調製される)もまた、本発明にしたがって提供される。
【0014】
ヒスチジンキナーゼ:本発明のある種の実施態様にしたがえば、S.ミュータンスから単離されたHK(配列番号:4)が開示される。さらにまた開示されるものは、プロモーターに機能的に連結されたHKをコードする核酸分子(配列番号:3)を含む細胞によって産生される組換え単離HKポリペプチドである。本発明のまた別の実施態様では、HKポリペプチド(配列番号:4)をコードする単離核酸分子が開示される。
HKコード核酸分子、及びHKコード配列(配列番号:3)と配列同一性を有するか又は前記とハイブリダイズし、さらにHK活性を有するタンパク質をコードする分子(配列同一性の好ましいパーセンテージは下記に記載される)、および、前記分子を含むベクターが本発明の部分として開示される。本発明のいくつかの実施態様にしたがえば、HK(配列番号:4)又は配列同一性(好ましいパーセンテージは以下に記載される)若しくはHK活性を有するポリペプチドが開示される。本明細書で開示される核酸分子及びペプチドはS.ミュータンスから得ることができ、さらにそれらは天然の供給源から単離されても、合成又は組換え体であってもよい。さらにまた、本発明のある種の実施態様にしたがって提供されるものは、HK(配列番号:4)又は配列同一性をもちHK活性を有するペプチド(本出願に記載した方法によって調製される)である。
【0015】
応答調節因子:本発明のある種の実施態様にしたがえば、S.ミュータンスから単離されたRR(配列番号:6)が開示される。プロモーターに機能的に連結されたRRをコードする核酸分子(配列番号:5)を含む細胞によって産生される組換え単離RRポリペプチド(配列番号:6)が、本発明の他のある種の実施態様にしたがって提供される。本発明のさらに別の実施態様には、RRポリペプチドをコードする単離核酸分子が含まれる。
本発明のある種の実施態様には、RRコード核酸分子、及び前記RRコード配列(配列番号:5)と配列同一性を有するか又は前記とハイブリダイズし、さらにRR活性を有するポリペプチドをコードする分子、および、これら分子を含むベクターが含まれる(配列同一性の好ましいパーセンテージは下記に記載される)。本発明のいくつかの実施態様にはまた、RR(配列番号:6)又は配列同一性(好ましいパーセンテージは以下に記載される)を有するか若しくはRR活性を有するポリペプチドが含まれる。本発明の核酸分子及びポリペプチドはS.ミュータンスから得ることができ、さらにそれらは天然の供給源から単離されても、合成又は組換え体であってもよい。本発明のある種の実施態様には、RR(配列番号:6)又は配列同一性を有し、RR活性を有するペプチド(本出願に記載した方法によって調製される)が含まれる。
comA及びcomBヌクレオチド配列(配列番号:25及び配列番号:27)並びにアミノ酸配列(配列番号:26及び配列番号:28)もまた、本発明のある種の実施態様の特徴である。comA及びcomBはCSPエキスポーターの構成要素である。CSP、HK、RRに対する変種、配列同一性などに関する考察は、図に示されている完全な配列及びそれら配列の括弧でくくられた部分(コード領域)の両方に適用される。前記ペプチド及びポリペプチドは天然であっても、組換えによって生成されても、又は合成であってもよい。
【0016】
機能的に等価な核酸分子
本発明のある種の実施態様には、配列番号:1のCSP配列の全部又は部分の機能的等価物である核酸分子が含まれる。(本出願では、核酸分子はまたDNA配列又はヌクレオチド配列とも称されることがある。これら用語は全て核酸分子と同じ意味を有する)。機能的に等価な核酸分子は、配列番号:2に示されるCSPペプチドと同じ又は類似のCSP活性を有するペプチドをコードするDNA及びRNAである(例えばゲノムDNA、相補的DNA、合成DNA、及びメッセンジャーRNA分子)。機能的に等価な核酸分子は、CSPペプチド(配列番号:2)のある領域と、又はより好ましくは完全なCSPペプチドと配列同一性を有する領域を含むペプチドをコードすることができる。同一性は当分野で公知の方法にしたがって算出される。下記で述べるClustalWプログラム(好ましくは規定値パラメーターを用いる)(JD Thompson et al. Nucleic Acid Res 22:4673-4680)がもっとも好ましい。例えば、ある核酸分子(“配列A”と仮定する)が配列番号:1の核酸分子のある部分と90%同一性を有するならば、配列Aは好ましくは配列番号:1の核酸分子の言及部分と同一であろう(ただし、配列Aは、配列番号:1の核酸分子の言及部分の各100ヌクレオチドにつき10個までの点変異(例えば他のヌクレオチドによる置換)を含むことができる)。本出願で述べる変異は、好ましくはコード配列の読み枠を破壊しない。CSP配列と機能的に等価の核酸分子は、下記で述べるように多様な形態で生じえる。
核酸分子は、CSPペプチド(配列番号:2)の保存的アミノ酸変化をコードすることができる。本発明のある種の実施態様には、CSPアミノ酸配列内で保存的なアミノ酸変化をコードしサイレントアミノ酸変化を生じる機能的に等価な核酸分子が含まれる。
【0017】
核酸分子は、CSPペプチドにおいて非保存的アミノ酸置換、付加又は欠失をコードすることができる。本発明のいくつかの実施態様には、配列番号:2のCSPアミノ酸配列内に非保存的アミノ酸変化を生じる機能的に等価な核酸が含まれる。機能的に等価な核酸分子には、非保存的アミノ酸置換(好ましくは化学的に類似のアミノ酸の置換)、付加又は欠失を有するが、配列番号:2に示すCSPペプチドと同じ又は類似のCSP活性もまた保持するペプチド、ペプチド及びタンパク質をコードするDNA及びRNAが含まれる。前記DNA又はRNAはCSPの断片又は変種をコードすることができる。断片は、免疫原として及び免疫原性組成物において有用である(米国特許5,837,472号)。そのような断片及び変種のCSP又はCSP様活性は下記に記載するアッセイによって同定される。本発明に包含されるCSPの断片及び変種は、配列番号:1の配列と同一でなく、好ましくは、天然に存在するCSP核酸分子、又は前記配列のある領域(例えばコード配列)、又は前記核酸分子の保存ドメインの1つと少なくとも約40%、60%、80%又は95%の配列同一性を有するべきである。配列同一性は、好ましくはClustalWプログラム(好ましくは規定値パラメーターを用いる)で測定される(JD Thompson et al. Nucleic Acid Res 22:4673-4680)。
配列番号:1のCSP核酸分子と機能的に等価の核酸分子は以下の記述から明白であろう。例えば、配列番号:1に示す配列は、天然又は人工的変異(例えば部分的なヌクレオチド挿入又は欠失)によってその全長が変化し得るものであり、したがって配列番号:1内のコード配列の全長を100%とすると、機能的に等価な核酸分子は好ましくは、前記コード配列の約60−120%、より好ましくは約80−110%の長さを有する。断片は60%未満であり得る。
核酸分子の配列内でいくつかのコドンが異なるアミノ酸をコードするが得られたペプチドが天然に存在するCSPペプチド(配列番号:2)の活性と同じか又は類似するCSP活性を保持するように部分的な(通常は全長の80%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは40%未満)天然又は人工的変異を含む核酸分子は、機能的に等価の核酸分子である。このような態様で生成した変異DNAは、配列番号:2のCSPペプチドのアミノ酸配列と、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約60%、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%又は95%の配列同一性を有するペプチドをコードするはずである。好ましくはClustalWプログラムにより配列同一性を評価する。
【0018】
遺伝暗号は縮退しているので、配列番号:1の核酸配列は、CSP活性を有するペプチドをコードすることができる唯一の配列ではない。本発明には、配列番号:1に示される核酸分子と本質的に同じ遺伝情報を有する核酸分子が含まれる。本出願に記載の配列と比較して1つ以上の核酸の変異を含み、さらに配列番号:2に示すペプチドの生成をもたらす核酸分子(RNAを含む)は本発明の種々の実施態様の範囲内に含まれる。
CSPコード核酸の他の機能的に等価な形態は、DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーション技術を用いて単離することができる。したがって、本発明のある種の実施態様はまた、配列番号:1の配列の1つ以上とハイブリダイズする核酸分子又はその相補的配列、並びに配列番号:1の配列又はその変種によって生成されるCSPペプチドの活性と同じ又は類似の活性を示すペプチド、ペプチド及びタンパク質の発現をコードする核酸分子を含む。そのような核酸分子は、好ましくは、中等度から高度なストリンジェンシーの条件下で配列番号:1の配列とハイブリダイズする(以下を参照されたい:Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual,(最新版)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。高ストリンジェンシー洗浄は低塩濃度(好ましくは約0.2%SSC)を含み、低ストリンジェンシー洗浄は高塩濃度(好ましくは約2%SSC)を含む。約37℃から約42℃の温度が低ストリンジェンシーと考えられ、約50−65℃の温度が高ストリンジェンシーである。本発明のいくつかの実施態様はまた、CSPアクチベーターペプチド(好ましくは哺乳動物ペプチド)をコードする核酸分子を同定する方法を含む。前記方法は、配列番号:1の全部又は部分(好ましくは配列番号:1の少なくとも約15又は20ヌクレオチドを含む)を含む核酸分子を含むサンプルを、中等度又は高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で接触させ、配列番号:1の全部または部分を含む核酸分子とハイブリダイズする核酸分子を同定することを含む。同様な方法が米国特許5,851,788号に記載されてあり、前記文献は引用によりその全体が本明細書に含まれる。
【0019】
本発明のある種の実施態様はまた、配列番号:1の全部又は部分とハイブリダイズする核酸分子の全部又は部分を、例えばプローブとして、又は前記核酸によって精製されるペプチドのアンタゴニスト若しくは阻害因子の同定のためのアッセイで用いる方法を含む(下記に記載される)。本発明のいくつかの実施態様は、CSP核酸分子と配列同一性を有する核酸分子を(下記に記載するように)同様な方法で用いる方法を含む。
本発明のある種の実施態様はまた核酸分子検出キットを含む。前記キットは、好ましくは適切な容器の手段中に又は表面に付着されている、CSP(配列番号:2)又はCSP活性を有するペプチドをコードする本明細書に開示の核酸分子及び検出試薬(例えば検出可能な標識)を含む。キットの他の変型は、本明細書の記載及び特許(例えば米国特許5,837,472号及び5,801,233号(前記文献は参照により本明細書に含まれる))の教示から明白であろう。
上記に記載の核酸分子は、前記核酸分子によって生成されるペプチド(配列番号:2)がCSP活性を有するならば、本発明のCSP核酸分子(配列番号:1)と実質的に等価の機能を有すると考えられる。あるペプチドは、もしそれがS.ミュータンスの遺伝的受容能及び酸耐性を刺激することができるならば、CSP活性を有する。HK(配列番号:4)/RR(配列番号:6)の活性化は、あるペプチドが外来DNAの取込みおよび組込みを刺激することができる場合に示される。我々は、どのようにして、プラスミド取込み効率(前記は遺伝的受容能の尺度である)を決定することによってこれらペプチド仲介過程の活性を測定することができるかを下記に記載する。外来DNAを輸送し取り込む能力は、HK(配列番号:4)/RR(配列番号:6)の活性化及び前記シグナルペプチドにより開始されるシグナルカスケードによって活性化される後続の遺伝子を必要とするので、前記ペプチド及びエリスロマイシン耐性付与プラスミドDNAに暴露された細胞によるエリスロマイシン耐性付与の測定値は、その機能レベルの指標となる。逆に、ある阻害因子が前記ペプチドの作用に干渉し得るならば、受容能アッセイにより、下記のアッセイ(遺伝的受容能のアッセイ及びバイオフィルムの形質転換アッセイ)で記載するように、エリスロマイシン耐性を獲得した細胞数の対応する低下によってそのことが示されるであろう。HK(配列番号:4)/RR(配列番号:6)の活性化はまた、あるペプチドが酸耐性応答を刺激することができる場合に示されるであろう。我々は、どのようにして、酸性pH条件下で細胞の生存率を決定することによってこれらペプチド仲介過程の活性を測定できるかを下記で述べる。酸性pHへの暴露に耐える能力は、HK/RRの活性化及びシグナルペプチドによって活性化される後続の遺伝子に左右されるので、低pH条件下でのS.ミュータンスの生存の測定値は、シグナルペプチドの機能レベルの指標である。逆に、ある阻害因子が、前記シグナルペプチド感知系に干渉することができるならば、下記のアッセイ(酸順応アッセイ)で記載するように、酸順応アッセイにより、酸性pH条件下で増殖させた細胞の生存率の対応する低下によってそのことが示されるであろう。
【0020】
真核細胞及び原核細胞でのCSPの産生
本明細書で開示する核酸分子はcDNAライブラリーから得ることができる。前記ヌクレオチド分子はまた、当分野で公知の他の供給源(例えば発現配列のタグ分析又はin vitro合成)から得ることができる。本出願に記載のDNA(機能的等価物である変種を含む)は、多様な真核細胞及び原核細胞に導入し発現させることができる。CSPの組換え核酸分子は、機能的に連結された適切な転写又は翻訳調節エレメントを含む。適切な調節エレメントは、多様な供給源に由来し、当業者はそれらを容易に選択できよう(J. Sambrook, E.E. Fritsch & T. Maniatis, (最新版), Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press. New York; Ausubel et al. (最新版), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.)。例えば、核酸分子の発現をアップレギュレートしたい場合は、センス配列及び適切なプロモーターをベクターに挿入することができよう。プロモーターは、誘導性でも、又は構成的、環境性若しくは発生調節性でも、又は細胞特異的若しくは組織特異的でも良い。転写は、発現のために当分野で公知のプロモーターを用いて強化される。CMV及びSV40プロモーターが、細胞で所望のペプチドを発現させるために一般的に用いられる。当分野で公知の他のプロモーターもまた用いることができる(多くの適切なプロモーター及びベクターが、本出願に引用した特許出願及び特許に記載されている)。
前記核酸の発現をダウンレギュレートしたい場合は、アンチセンス配列及び適切なプロモーターをビヒクルに挿入することができよう。核酸分子は、天然の供給源から(センス又はアンチセンス方向で)単離するか、合成するか、又は天然若しくは合成配列を変異させるか、又は前記を組み合わせることができる。
【0021】
調節エレメントの例には、転写プロモーター及びエンハンサー又はRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列(翻訳開始シグナルを含む)が含まれる。さらにまた、使用するベクターに応じて、他の遺伝エレメント(例えば選別可能マーカー)を組換え分子に取り込むことができる。使用することができる他の調節領域には、エンハンサードメイン及び終結領域が含まれる。前記調節エレメントは、細菌、真菌、ウイルス、又は鳥類由来であり得る。同様に、前記調節エレメントは、動物、植物、酵母、昆虫又は他の供給源(合成により生成されるエレメント及び変異エレメントを含む)から得ることができる。
上記に記載の発現ベクターの使用に加えて、ペプチドは、細菌、ウイルス、酵母、哺乳動物、昆虫、真菌又は鳥類に由来する公知の発現系に組換え核酸分子を挿入することによって発現させることができる。組換え分子は、細胞タイプに応じて、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)仲介形質転換、粒子衝撃仲介形質転換、直接摂取、マイクロインジェクション、同時沈殿、トランスフェクション及びエレクトロポレーションのような技術によって細胞に導入することができる。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、DNAウイルスベクター及びリポソームを用いることができる。適切な構築物が発現ベクターに挿入される。前記ベクターはまた、形質転換細胞の選別のためにマーカーを含むことができる。前記構築物は制限酵素によって作出された部位に挿入することができる。
本発明のある実施態様では、発現ベクターに挿入した本発明の核酸分子が細胞にトランスフェクトされ、前記核酸分子によってコードされるペプチドを発現する細胞が生成される。
本発明の別の実施態様は、発現ベクターに挿入した本明細書開示の核酸分子を細胞にトランスフェクトし、CSPペプチド(配列番号:2)又は本発明の他のペプチドを発現する細胞を生成する方法に関する。本発明のある種の実施態様にしたがえば、開示のペプチドを細胞で発現させる方法が提供される。好ましい方法は、前記ペプチドが発現されるようにCSP(配列番号:1)をコードする核酸分子(又は本発明の別の核酸分子)を含む組換えDNAベクターを含む細胞を培養液中で培養することを含むであろう。好ましくは、前記方法はさらに、前記細胞又は細胞培養液からペプチドを回収することを含む。
【0022】
プローブ
本発明のある種の実施態様は、本出願に記載のクローニングしたCSP核酸分子又は本明細書に開示した他の核酸分子(材料と方法の項を参照されたい)から調製したオリゴヌクレオチドプローブを含む。前記プローブは長さが15から20ヌクレオチドであろう。好ましいプローブは、配列番号:1のCSPの少なくとも15ヌクレオチドである。本発明のある種の実施態様はまた、配列番号:1の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含む。前記プローブは、CSPペプチドと同様にCSPと機能的に等価なペプチドをコードする核酸の同定に有用である。前記オリゴヌクレオチドプローブは、配列番号:1に示す配列とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができる。本明細書に開示のペプチドをコードする核酸分子は、中等度から高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標識プローブを用いてライブラリーをスクリーニングすることによって他の生物から単離することができる。前記核酸分子によってコードされるペプチドの活性は、前記DNAのクローニング及び発現によって評価することができる。発現生成物を単離した後、本出願に記載するように前記ペプチドをCSP活性についてアッセイする。
他の細胞由来の機能的に等価のCSP核酸分子又は等価のCSPコードcDNA若しくは合成DNAもまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて増幅により単離することができる。配列番号:1を土台にしたオリゴヌクレオチドプライマー(例えば縮退プライマー)を調製し、PCR及び逆転写酵素を用い(E.S. Kawasaki, 1990, In Innis et al., Eds., PCR Protocols, Academic Press, San Diego, Chapter 3, p.21)、他の生物のゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから機能的に等価のDNAを増幅することができる。前記オリゴヌクレオチドをまたプローブとして用いてcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0023】
機能的に等価なペプチド、ペプチド及びタンパク質
本発明は、本明細書に開示する配列によってコードされるペプチドだけでなく、同じ又は類似のCSPペプチド活性を示す機能的に等価のペプチド、ペプチド及びタンパク質も含む。
我々は、S.ミュータンスCSPの天然の配列を土台にした類似体を設計及び合成し、さらに受容能の発達、酸耐性応答及びバイオフィルム形成を妨げるそれらの能力をアッセイした。
S.ミュータンスの天然のCSPアミノ酸配列を土台にしてペプチド類似体が改変された
長さと疎水性を改変した17のペプチド類似体パネルを設計及び合成した。ペプチド類似体の第一のセットは、成熟S.ミュータンスCSP配列(配列番号:30)のN-及びC-末端から1番目、2番目、3番目、4番目又は5番目の残基を欠失させることによって生成した。第二のセットは、荷電を持つ内部の残基を中性(バリン)又は疎水性(アラニン)残基で置換したペプチド類似体を含んでいた。この実験で合成し試験したペプチド類似体を表1に列挙した。
【0024】
ペプチド類似体H1は遺伝的受容能を阻害することができる
天然のS.ミュータンスCSPの配列を土台にして設計及び合成した17のペプチドの全てを、S.ミュータンス野生型UA159株で形質転換を妨害するそれらの能力について先ず初めにスクリーニングした。それらの中で、類似体H1(配列番号:39)は、S.ミュータンスUA159株の天然の(外因性CSPが添加されない)形質転換効率と比較して、形質転換効率を顕著に(18倍)低下させた(表2及び図2)。これらの結果は、H1は、S.ミュータンスの天然の遺伝的形質転換を阻害することを示している。我々の研究室で同定し性状を調べた受容能レギュロンは、S.ミュータンスの形質転換はcomD依存過程であることを示した。ペプチド類似体H1が、ComDヒスチジンキナーゼレセプターの占有についてS.ミュータンスによって産生される天然のCSPと競合することができるという仮説を調べるために、我々は、S.ミュータンスcomDヌル変異体で遺伝的受容能を誘発するH1の能力を試験した。予想したように、結果は、ペプチド類似体H1の作用はcomDレセプターを介して達成され、したがってComD依存過程であることが示された(図3)。
対照的に、ペプチド類似体IH-1(配列番号:31)、IH-2(配列番号:32)、B1(配列番号:33)、及びC1(配列番号:34)は、野生型S.ミュータンスCSPと比較して形質転換効率に対して顕著な影響を示さなかった(表2)。これらの結果は、これらペプチド類似体は、配列の改変にもかかわらず、天然のCSP活性を保持していることを示唆した。しかしながら、ペプチド類似体D1(配列番号:35)、E1(配列番号:36)、F1(配列番号:37)、G1(配列番号:38)、A2(配列番号:40)、B2(配列番号:41)、C2(配列番号:42)、D2(配列番号:43)、E2(配列番号:44)、F2(配列番号:45)、G2(配列番号:46)、又はB3(配列番号:47)の存在下でのS.ミュータンスUA159の形質転換効率は、野生型S.ミュータンスCSP(5μgのCSP)と比較して低下する。このことは、これらのペプチド類似体は、受容能刺激に関してはCSPと同様な態様を示すが、comDレセプターに対しては天然の野生型S.ミュータンスCSPと同じアフィニティーをもたない可能性があることを示唆している。
【0025】
表1:成熟CSPペプチドの改変型

【0026】
表2:S.ミュータンス野生型UA159の受容能に対する5μg/mLのペプチド類似体の影響

a効果なし:CSPとの比較で顕著な相違なし
【0027】
表3:S.ミュータンス野生型UA159のpH7.5における増殖、酸耐性、及びバイオフィルム形成に対する5μg/mLのペプチド類似体の影響

【0028】
複数のペプチド類似体が酸性培地でのS.ミュータンスの細胞増殖に影響を及ぼす
前記ペプチド類似体がS.ミュータンスの酸耐性メカニズム(歯垢中で典型的に遭遇する酸性攻撃に耐える細胞の能力)を阻害することができるか否かを決定するために、S.ミュータンスUA159細胞を、種々の濃度のペプチド類似体の存在下でpH7.5及びpH5.5のTHYE培地で増殖させた。表3に提示した結果は、ペプチド類似体F1、F2、及びG2はpH7.5及びpH5.5において細胞の増殖を低下させることを示した。ペプチド類似体H1、A2、B2、C2、D2、E2、及びB3は、pH7.5でのS.ミュータンス細胞の増殖に影響を与えない。さらにまた、同じペプチド類似体をpH5.5にて調べると、結果は、細胞増殖に顕著な低下が存在することを示した。興味深いことに、遺伝的受容能の阻害に中心的に関与するペプチド類似体H1はまた、酸性培地中でのS.ミュータンス細胞の増殖を阻害することができ(図4)、一方、中性pHにおける増殖には影響を与えなかった(図5)。
【0029】
S.ミュータンスペプチド類似体はストレプトコッカス属のバイオフィルム形成を阻害する
CSPシグナルペプチドを産生することができないS.ミュータンスcomCヌル変異体は、野生型構造を欠くバイオフィルムを形成する。さらにまた、合成CSPの外因性添加は、comC欠損変異体に野生型表現型を回復させる(Li et al. 2002)。したがって、CSPは、S.ミュータンスのバイオフィルム形成において必須の部分を担当するように思われる。そこで、S.ミュータンスペプチド類似体のS.ミュータンスバイオフィルム形成阻害能について前記類似体を試験した。最初の実験では(その結果は表3に提示されている)、S.ミュータンスペプチド類似体F1(配列番号:37)、G1(配列番号:38)、E2(配列番号:44)、F2(配列番号:45)、G2(配列番号:46)、及びB3(配列番号:47)は、野生型CSPの存在下で成長したS.ミュータンスバイオフィルムと比較して、24.4%から38.9%の範囲でバイオマスを顕著に減少させ、これらペプチド類似体はS.ミュータンスによるバイオフィルムの形成を調節するシグナル経路を妨害し得ることを示唆した。
第二の実験では、B2(配列番号:41)、B3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)、F1(配列番号:37)、及びH1(配列番号:39)の抗バイオフィルム活性を調べた。百分率阻害に換算した前記ペプチド類似体のS.ミュータンスに対する抗バイオフィルム活性は、0から80%の間で変動した(図18)。ペプチド類似体E2(配列番号:44)は、試験した6つの合成CSP類似体で最高の抗バイオフィルム活性(80%阻害)を示した。ペプチド類似体E2は強力なS.ミュータンスQS阻害因子であり得よう。なぜならば、このペプチド類似体は、バイオフィルム形成の顕著な低下を引き起こし、中性pHでの細胞増殖に影響を及ぼすことなくpH5.5で細胞増殖を阻害するからである。
さらに別の実験で、S.ミュータンスペプチド類似体を、他のタイプの細菌、特に他の歯垢付随細菌によるバイオフィルムの形成を阻害するそれらの能力についてさらに試験した。ペプチド類似体B3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びF1(配列番号:37)は、歯垢付随ストレプトコッカス(S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス、S.ミチスを含む)及び非歯垢付随ストレプトコッカス(例えば肺炎連鎖球菌)のバイオフィルム形成を顕著に低下させることが見出された。
【0030】
S.ミュータンス由来E2(配列番号:44)ペプチドは、5μg/mLという低い濃度で、S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス、S.ミチス及び肺炎連鎖球菌の増殖及びバイオフィルム形成の両方に対し阻害作用を示した。これらの微生物におけるバイオフィルム形成のパーセント阻害は40から75%で変動した(図19、20、21、22、23、24及び25)。さらにまた、E2(配列番号:44)ペプチドの抗バイオフィルム活性を上記のストレプトコッカス種の混合培養に対して試験した。前記ペプチドはまた、混合培養のバイオフィルム形成に対して顕著な阻害作用を示した(データ示さず)。
あるペプチドがCSP活性を有する場合、当該ペプチドはCSPペプチド(配列番号:2)の機能と実質的に等価な機能を保有すると考えられる。CSP活性とは、ペプチドがS.ミュータンスに遺伝的受容能を付与することができることを意味し、下記の遺伝的受容能アッセイで述べるように、外来遺伝物質が細胞に添加されたときに前記物質を取り込み発現する能力の増加によって測定される。CSP活性はまた、ペプチドがS.ミュータンスに酸耐性を付与することができることを意味し、下記の酸順応アッセイで述べるように、細胞に添加されたとき酸性pH条件下における細胞の生存増加によって測定される。機能的に等価なペプチド、ペプチド及びタンパク質には、アッセイしたときにCSPと同じ又は類似のタンパク質活性を有するペプチド、ペプチド及びタンパク質が含まれる。すなわちそれらペプチドは、S.ミュータンスについて遺伝的受容能及び低pH耐性(pH3.5−pH3.0の酸攻撃に3時間まで耐える能力)を刺激することができる。あるペプチドが、以下の遺伝的受容能についてのアッセイで述べるように、外来DNAの取り込み及び発現の頻度を増加させることができるならば、さらに酸順応についてのアッセイで述べるように、前記ペプチドが酸耐性応答を促進することができるならば、当該ペプチドはCSP活性を有する。
同一性は、もっとも高度なマッチングが得られるようにアラインメントを実施した2つのペプチド又はタンパク質の類似性を指す。同一性は、当分野で公知の方法、例えばClustalWプログラムにしたがって計算される。例えば、あるペプチド(“配列A”と仮定する)が、配列番号:30のペプチドの一部分と90%同一性を有するならば、配列Aは配列番号:30のペプチドの言及部分と同一であるが、ただし配列Aは、配列番号:30のペプチドの言及部分の各10アミノ酸につき1つまでの点変異(例えば他のアミノ酸による置換)を含むことができる。CSPペプチドと機能的に等価なペプチド、ペプチド及びタンパク質は、下記に記載するように多様な形態で存在することができる。
【0031】
CSPペプチドに対し機能の上で生物学的に等価なペプチドには、CSP配列(配列番号:2)中にアミノ酸の変化を含むアミノ酸配列が含まれる。機能的に等価なペプチドは、天然のCSPペプチド(配列番号:2)又は対応する領域に対して、少なくとも約40%の配列同一性、好ましくは少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の配列同一性を有する。好ましくはClustalWプログラムにより配列同一性が決定される。もっとも好ましくは1、2、3、4、5、5−10、10−15アミノ酸が改変される。
CSPペプチドの変種はまたスプライシングによって創出することができる。当分野で公知の技術の組み合わせを用いて、アミノ酸を置換、欠失又は付加することができる。例えば、疎水性残基(例えばメチオニン)は別の疎水性残基(例えばアラニン)で置換することができる。アラニン残基は、より疎水性の残基、例えばロイシン、バリン又はイソロイシンで置換することができる。芳香族残基(例えばフェニルアラニン)でチロシンを置換することができる。酸性、陰性荷電アミノ酸(例えばアスパラギン酸)でグルタミン酸を置き換えることができる。陽性荷電アミノ酸(例えばリジン)はまた別の陽性荷電アミノ酸(例えばアルギニン)に置き換えることができる。本明細書で開示するペプチドの改変はまた、側鎖基を化学的に改変する薬剤でそのようなペプチドを処理することによって、例えば水素基を別の基(例えばヒドロキシ又はアミノ基)に変換することによって達成することができる。
1つ以上のD-アミノ酸を有するペプチドは本発明のある種の実施態様に含まれる。さらにまた包含されるものは、1つ以上のアミノ酸がN-末端でアセチル化されたペプチドである。本明細書開示の対応するペプチドと同じ又は類似する生物学的活性を有するが、例えば可溶性、安定性及び/又は加水分解とタンパク質分解に対する感受性のような特性に関しては前記ペプチドより好ましい活性を有するペプチド模倣体(すなわち改変ペプチド又はペプチド又はタンパク質)の構築に多様な技術を利用し得ることは、当業者には認識されていよう。たとえば以下を参照されたい:Morgan & Gainor, Ann Rep Med Chem, 1989, 24:243-252。
【0032】
本発明のある種の実施態様はまた、ハイブリッド核酸分子及びペプチドを含む。例えば、本明細書に開示した核酸分子に由来する核酸分子が別の核酸分子と一緒になって、融合ペプチドを発現する核酸分子が生成される。本出願に記載したCSPの1つ以上の他のドメインもまた融合ペプチドの生成に用いることができる。例えば、問題の分子に由来するヌクレオチドドメインを、本出願に記載したCSPペプチドをコードする核酸分子(又は配列同一性を有する分子)の全部又は部分に連結することができる。融合核酸分子及びペプチドはまた、他の公知の技術を用いて化学的に合成するか又は生成することができる。本発明のある種の実施態様は、融合ペプチドをコードする核酸分子、又は前記核酸分子を含む組換えベクターを含む。
変種は、好ましくは天然に存在するCSP(配列番号:2)と同じ又は類似のCSP活性を保持する。そのような変種のCSP活性は、本出願に記載の技術又は当分野で公知の技術によってアッセイすることができる。
上記に記載の技術の組み合わせによって生成されるが、天然に存在するCSP(配列番号:2)と同じ又は類似のCSP活性を保持する変種もまた、本発明のある種の実施態様に含まれる(例えばアミノ酸付加及び置換の組み合わせ)。
上記に記載の技術によって生成された、CSP活性を競合的に阻害するCSPの変種もまた、本発明のある種の実施態様に含まれる(例えばアミノ酸付加及び置換の組み合わせ)。
上記に記載の技術によって生成された、細菌の形質転換効率を低下させるCSPの変種もまた本発明に含まれる(例えばアミノ酸付加及び置換の組み合わせ)。
上記に記載の技術によって生成された、バイオフィルム形成を低下させるCSPの変種もまた、本発明のある種の実施態様に含まれる(例えばアミノ酸付加及び置換の組み合わせ)。
本発明に包含されるCSPの変種は、好ましくは、天然に存在するペプチド、又は前記ペプチドの対応する領域もしくは部分、または対応する領域に対して、少なくとも約60%、75%、80%、90%、又は95%の配列同一性を有する。配列同一性は、好ましくはClustalWにより測定される。
【0033】
ヒスチジンキナーゼ及び応答調節因子
本発明のある種の実施態様はまた、本発明のヒスチジンキナーゼ、応答調節因子、並びにcomA及びcomBと同一性を有する配列を含む。同一性(核酸分子及びポリペプチド)の好ましい百分率は、CSPについて記載した百分率と同じである。
同様に、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3及び配列番号:4)、応答調節因子(配列番号:5及び配列番号:6)、comA(配列番号:25及び配列番号:26)、又はcomB(配列番号:27及び配列番号:28)に対するプローブ及び抗体も、本出願の記述及び当分野で公知の技術を用いて調製することができる。CSP変種及び変異体の調製についての記述はまたヒスチジンキナーゼ(配列番号:3及び配列番号:4)、応答調節因子(配列番号:5及び配列番号:6)、又はcomA(配列番号:25及び配列番号:26)及びcomB(配列番号:27及び配列番号:28)にも応用できる。本発明のある種の実施態様はまた、HK活性を有するHKの断片、RR活性を有するRR(配列番号:5及び配列番号:6)の断片、及び活性を有するcomA(配列番号:25及び配列番号:26)又はcomB(配列番号:27及び配列番号:28)を含む。
【0034】
CSPペプチドの競合的阻害因子の設計
CSPペプチド(配列番号:2)の活性は、位置特異的変異導入を実施することによって変化させることができる。我々は、変異、挿入及び/又は欠失のための候補であるペプチドの結合ドメイン及び他の重要なアミノ酸残基の特徴を調べた。配列変種は合成することができる。CSP核酸分子(配列番号:1)又は配列同一性を有する核酸分子を含むDNAプラスミド又は発現ベクターを、U.S.E.(固有位置排除(Unique site elimination))変異導入キット(Pharmacia Biotech)若しくは市販の他の変異導入キット又はPCRを用いるこれら実験で用いることができる。S.ミュータンスCSPペプチドのペプチド類似体は、当分野で公知の変異導入方法を用いて、CSPペプチドのC'又はN'末端のアミノ酸を欠失及び/又は置換させることによって調製することができる。いったん変異を作出し、DNA配列分析によって確認したら、発現系を用いて変異体ペプチドを発現させ、その活性をモニターする。このアプローチは、CSP阻害因子の同定に有用である。本出願に提示したCSP DNA配列(配列番号:1)のこれら改変の全て及びこれら改変配列によって生成されるペプチドが、本発明に包含される。
前記CSPペプチドのアミノ酸を欠失及び/又は置換させることによって調製したS.ミュータンスCSPペプチドのペプチド類似体をバイオフィルム形成阻害についてスクリーニングすることができる。スクリーニングアッセイは下記に記載する。
【0035】
医薬組成物
CSP阻害因子はまた、医薬組成物中で担体と組み合わされるとき有用である。前記組成物は、S.ミュータンスによって引き起こされる疾患、異常又は正常でない身体状態の医療的処置又は予防の方法で投与されるときに有用である。本発明のある種の実施態様はまた、過剰なS.ミュータンス又はCSPペプチド(配列番号:2)の過剰なレベル若しくは活性を特徴とする疾患、異常又は正常でない身体状態において、例えば担体及びCSP阻害因子を含む医薬組成物を投与することによる医療的処置方法を含む。う食は疾患の一例であり、アンタゴニストとして作用するCSP(配列番号:2)によって治療又は予防することができる。本組成物はまた、歯垢を発生させる他の細菌(アクチノミセス種(Actinomyces spp)及び他のストレプトコッカス種(Streptococci spp)を含むが、ただしこれらに限定されない)によって引き起こされる疾患、異常又は正常でない身体状態の医療的処置又は予防方法で投与されるときに有用である。
本医薬組成物は、医療的処置方法において、例えば食品、食品添加物、歯磨きゲル、練り歯磨き、口内洗浄液、デンタルフロス、入れ歯洗浄液、入れ歯接着剤、チューインガム、キャンディー、ビスケット、ソフトドリンク又はスポーツドリンクのような方法によって人間又は動物に投与することができる。本発明のCSP阻害因子は、脂質又は炭水化物と結合させることができる。これによって、歯に付着する前記阻害因子の能力は、付着時間の延長若しくはそのアフィニティーの強化、又はその両者により強化される。前記はまた、例えば歯科用細工物(例えば歯冠、歯列矯正器、充填材)のポリマー又はデンタルフロスと結合させることができる。前記医薬組成物は人間又は動物に投与することができる。投与されるべき用量は、個体の状態、薬剤適応、薬剤の物理的及び化学的安定性、所望される作用の毒性、及び選択される投与経路に左右される(Robert Rakel, ed., Conn's Current Therapy (1995, W.B. Saunders Company, USA))。前記医薬組成物を用いて、連鎖球菌類(ストレプトコッカス)感染により引き起こされる疾患(例えばう食、歯周疾患及び心内膜炎)が治療される。好ましい実施態様では、前記医薬組成物を用いて、アクチノミセス種及びストレプトコッカス種によって引き起こされる疾患が治療される。さらに好ましい実施態様では、前記医薬組成物を用いて、S.ミュータンス、S.ソブリヌス、S.オラリス、S.サングイス、S.ミチスS.ゴルドニイ、肺炎連鎖球菌、S.ピオゲネス、およびS.アガラクチエ(ただしこれらに限定されない)によって引き起こされる連鎖球菌属(ストレプトコッカス属)による感染が治療される。
【0036】
本発明の医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるCSP阻害因子を用いて製造することができる。例えば、CSP活性は、CSP発現又は転写を阻害するアンチセンスmRNA阻止することができよう。また別には、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CSPを細胞から分泌するエキスポーターの活性を阻害するものでもよい。我々は、これらのエキスポーターの配列を有する。搬出に必要とされる遺伝子(comAB)の2つのコピー(配列番号:25及び配列番号:27)が存在する。アンチセンス調製技術は当分野では周知である。
ある実施態様では、CSP阻害因子は、CSPの発現又は転写を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好ましくは、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CSPをコードするオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドに対して相補的なオリゴヌクレオチドである(CSPをコードするオリゴヌクレオチドは配列番号:1の核酸配列を有する)。
別の実施態様では、前記CSP阻害因子は、CSPペプチドの搬出を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好ましくは、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CSPエキスポーターをコードするオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドに対して相補的なオリゴヌクレオチドである(前記CSPエキスポーターをコードするオリゴヌクレオチドは配列番号:25又は27の核酸配列を有する)。
核酸分子(配列番号:1)(CSPのアンチセンス阻害因子)及びCSP(配列番号:2)の競合的阻害因子、又はS.ミュータンスCSPのペプチド類似体は、in vivoデリバリービヒクル(例えばリポソーム)を用いて細胞に導入することができる。それらはまた、物理的な技術(例えばマイクロインジェクション及びエレクトロポレーション)若しくは化学的方法(例えば同時沈殿)を用いて、又はリポソームを用いてこれら細胞に導入することができる。いくつかの事例では、問題の細菌に誘導されるリポソームを利用することが所望される。
【0037】
本発明の医薬組成物は、CSP活性を選択的に阻害する抗体又はその断片を用いて製造することができる。CSP特異的抗体の調製についてさらに詳細な考察は下記に示す。
好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、歯垢付随細菌のバイオフィルム形成を阻害することができる1つ以上のCSPペプチド類似体を用いて製造することができる。前記阻害性CSPペプチド類似体は、バイオフィルム形成能が阻害された連鎖球菌属の細菌から得られる天然に存在する変異CSPペプチドであってもよい。前記阻害性CSPペプチド類似体は当分野で公知の方法を用いて調製した合成ペプチドであってもよい。より好ましい実施態様では、前記阻害性ペプチド類似体は、以下の改変された1つ以上のS.ミュータンスCSPペプチドである:B3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)、及びF1(配列番号:37)。さらに好ましい実施態様では、前記医薬組成物はE2(配列番号:44)ペプチドを用いて製造される。
CSPペプチド類似体又はその医薬的に許容できる塩、特にB3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びF1(配列番号:37)を含む医薬組成物は特に、連鎖球菌属の感染によって引き起こされる疾患、異常又は正常でない身体状態の治療方法又は予防方法として有用である。そのような医薬組成物は、口腔の連鎖球菌属細菌、例えばS.ミュータンス、S.ソブリヌス、S. オラリス、S.サングイス、S.ミチス、S.ゴルドニイの1つ以上によって引き起こされる感染の治療に特に有用である。前記医薬組成物はまた、他のタイプの連鎖球菌属の感染、例えば肺炎連鎖球菌、S.ピオゲネスおよびS.アガラクチエの治療及び予防に有用である。
【0038】
例えば“医薬的に許容できる担体”又は“医薬的に許容できる塩”のような記述における“医薬的に許容できる”とは、本明細書では、生物学的に又はその他の点で望ましくない物質ではないことを意味する。すなわち、そのような物質は、望ましくないいかなる生物学的作用も引き起こすことなく、又は前記物質が含まれている組成物中の他の成分のいずれとも有害な態様で相互作用することなく、患者に投与される医薬組成物中に取り込まれ得る。
本明細書で用いられる“担体”又は“ビヒクル”は、薬剤の投与のために適切な医薬的に許容できる一般的な担体材料を指し、当分野で公知の非毒性であって、医薬組成物又はドラッグデリバリー系の他の成分と有害な態様で相互反応しない任意の物質が含まれる。
本医薬組成物は、患者に投与することができる医薬的に許容できる組成物の調製のために知られた方法により調製することができ、有効量の核酸分子又はペプチドが医薬的に許容できるビヒクルと混合物として一緒にされる。適切な担体は例えば以下に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences (Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa, USA)。担体には、生理食塩水及びD5W(5%デキストロース及び水)が含まれる。賦形剤には、添加剤、例えば緩衝液、可溶化剤、分散剤、乳化剤、粘度調節剤、香料、ラクトース充填剤、抗酸化剤、保存料又は色素が含まれる。非経口的及び他の投与のためにペプチドを安定化させる好ましい賦形剤が存在する。前記賦形剤には、血清アルブミン、グルタミン酸又はアスパラギン酸、リン脂質及び脂肪酸が含まれる。
これを基礎として、本医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容できるビヒクル又は希釈剤と一緒にされ、適切なpHを有し生理的液体と等張な緩衝溶液に含まれる、活性な化合物又は物質(例えばCSP阻害因子)を含むことができよう。前記医薬担体は用いられる投与経路に左右されるであろう。活性分子をビヒクルと合わせる方法、又はそれら分子を希釈剤と合わせる方法は当業者には周知である。前記組成物はまた、添加剤、例えば抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、殺菌性抗生物質、及び対象のレシピエント中で前記処方物を等張にさせる溶質;分散剤及び膨張剤を含んでもよい水性及び非水性の無菌的懸濁液を含むことができる。前記組成物は、前記活性化合物を特定の部位に輸送するための標的化物質を含むことができよう。
【0039】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の態様で、例えば通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、均質化、乳化、被包化、エントラップ又は凍結乾燥処理によって製造することができる。
本発明にしたがって使用するための医薬組成物は、したがって、賦形剤及び補助剤(医薬として使用し得る調製物への活性化合物の加工を促進する)を含む医薬的に許容できる1つ以上の担体を用いて通常の態様で処方することができる。適切な処方物は選択される投与経路に左右される。
本発明の医薬組成物は、当分野で公知の任意の適切な経路によって投与することができる。感染が局所的である場合は、前記医薬組成物は感染領域に局所的に投与することができる。感染が全身的である場合は、前記医薬組成物は経口的、静脈内、又は非経口的に投与することができる。
注射の場合は、本発明の物質は水溶液で、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル液又は生理的緩衝食塩水中に処方することができる。
経口投与の場合は、本化合物は、活性化合物を当分野で周知の医薬的に許容できる担体と一緒にすることによって容易に処方することができる。そのような担体は、本発明の化合物は、錠剤、ピル、糖衣丸、カプセル、リキッド、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、治療されるべき患者による経口摂取のために処方することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤により、場合によって得られた混合物を磨り潰し、所望の場合は、錠剤又は糖衣丸を得るために適切な補助剤を添加した後で顆粒混合物を加工することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に充填剤、例えば糖類(ラクトース、シュクロース、マンニトール又はソルビトールを含む)、又はセルロース調製物、例えばトウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドンである。所望の場合は、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を添加してもよい。
【0040】
本発明の別の特徴にしたがえば、形質転換効率を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変した細胞を製造する方法が提供される。別の特徴は、形質転換効率を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変したS.ミュータンスを患者に投与することを含む。遺伝的に操作した細胞の製造方法及び投与方法は当分野では公知である。例えばWO02/44230を参照されたい。
本発明のさらに別の特徴では、う食の軽減を目的として哺乳動物の患者に投与される医薬の製造における、形質転換効率を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変したトランスフェクトされた生きたS.ミュータンスの使用が提供される。
本発明のまた別の特徴にしたがえば、バイオフィルムの形成を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変した細胞を製造する方法が提供される。別の特徴は、バイオフィルムの形成を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変した細胞を患者に投与することを含む。
本発明のさらに別の特徴では、口内の健康改善のため又はう食の軽減のために哺乳動物の患者に投与される医薬の製造における、バイオフィルム形成を阻害するCSP誘導体を産生するように遺伝的に改変した生きたトランスフェクトされた細胞の使用が提供される。
本発明の医薬組成物は、当分野で公知の任意の適切な経路で投与することができる。感染が局所的である場合は、前記医薬組成物は感染領域に局所的に投与することができる。感染が全身的である場合は、前記医薬組成物は経口的、静脈内、又は非経口的に投与することができる。
いくつかの事例では、2つ以上のタイプの細菌によって引き起こされる感染の治療のために、本発明の1つ以上の医薬組成物を投与することできる。例えば、CSPペプチド類似体を含む医薬組成物とともに、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を投与することができる。別の事例では、CSPペプチド類似体を含む組成物とともに、抗体を含む医薬組成物を投与することができる。また別には、前記医薬組成物を1つ以上のタイプのCSP阻害因子を用いて調製し、ユニット投薬形を得ることができる。
【0041】
いくつかの事例では、公知の抗菌剤(例えば抗生物質)とともに本発明の医薬組成物を投与することができる。いくつかの事例では、バイオフィルム形成を抑制する医薬組成物もまた、細菌細胞を抗生物質に対しより感受性にするために有用である。
本明細書で用いられる“抗生物質”という用語は、細菌の増殖を阻害するか又は細菌を殺す、当業者に公知の任意の化合物を指す。“抗生物質”という用語には以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:ベータ-ラクタム(ペニシリン及びセファロスポリン)、バンコマイシン、バシトラシン、マクロライド(エリスロマイシン)、リンコサミド(クリンドマイシン)、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、アミノグリコシド(ゲンタマイシン)、アンホテリシン、セファゾリン、クリンダマイシン、ムピロシン、スルホンアミド及びトリメトプリム、リファンピシン、メトロニダゾール、キノロン、ノボビオシン、ポリミキシン、グラミシジン、又はこれらの任意の塩若しくは変種。使用される抗生物質は細菌感染のタイプに左右される。
本発明の医薬組成物の治療的に有効な投与量は、CSP阻害因子、感染のタイプ及び重篤度、並びに医薬組成物がさらに別の成分(例えば抗生物質)を含むか否かに左右される。一般的には、治療的に有効な投与量は、バイオフィルム形成の制御に十分な最低量であり、治療される人間及び動物に有毒でない。有効投与量及び毒性を決定する方法は当分野では公知である。
【0042】
抗バイオフィルム組成物及びその使用
更なる特徴では、本発明は、ストレプトコッカス種のバイオフィルムの阻害及び破壊に有用な組成物を提供する。前記組成物は、ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を阻害又は破壊するS.ミュータンスCSPの少なくとも1つのペプチド類似体を含む。本発明の実施に有用なペプチド類似体には以下が含まれる:F1(配列番号:37)、H1(配列番号:39)、B2(配列番号:41)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びB3(配列番号:47)。本発明の好ましい実施態様では、前記組成物はE2(配列番号:44)ペプチドを用いて製造される。
本発明の組成物は、集団感知(quorum sensing)系を利用するストレプトコッカスのバイオフィルムの阻害及び破壊に有効である。前記組成物は、口腔及び非口腔ストレプトコッカス種の双方に有効である。本発明の組成物を用いて調節することができる口腔ストレプトコッカスの感染例には、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、及びストレプトコッカス・ミチスが含まれる(ただしこれらに限定されない)。本発明の組成物を用いて調節することができる非口腔ストレプトコッカス種の感染例には、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、及びストレプトコッカス・アガラクチエが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
本発明のある実施態様では、前記組成物は、1つ以上のストレプトコッカス種に感染した人間又は動物の患者に投与するために適した医薬組成物として処方することができる。前記医薬組成物は、1つ以上のF1(配列番号:37)、H1(配列番号:39)、B2(配列番号:41)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びB3(配列番号:47)ペプチド類似体、又は前記の医薬的に許容できる塩、及び医薬的に許容できる担体を含むことができる。本発明の好ましい実施態様では、前記医薬組成物はE2(配列番号:44)ペプチド類似体を含む。
前記ペプチド類似体は脂質又は炭水化物と結合させることができる。それによって、前記ペプチド類似体の感染表面(例えば歯)への付着能力が、付着時間の延長又はアフィニティーの増加によって、又はその両方によって高められる。
【0043】
いくつかの事例では、公知の抗菌剤(例えば抗生物質、その例は上記に列挙されている)とともに本発明の医薬組成物を投与することができる。使用される抗生物質は細菌感染のタイプに左右される。例えば、いくつかの事例では、本発明のバイオフィルム阻害医薬組成物はまた、細菌細胞を抗生物質に対しより感受性にするために有用である。また別には、前記医薬組成物は、CSPペプチド類似体に加えて、1つ以上の活性な成分(例えば抗生物質)と一緒に調製し、ユニット投薬形を得ることができる。
例えば錠剤、カプセル及びシロップのような通常の口腔医薬処方物に加えて、本発明の組成物は、食品、食品添加物、歯磨きゲル、練り歯磨き、口内洗浄液、デンタルフロス、入れ歯洗浄液、入れ歯接着剤、チューインガム、キャンディー、ビスケット、ソフトドリンク又はスポーツドリンクの形態で人間及び動物に投与することができる。
さらに前記抗菌組成物は、界面活性剤、キレート剤、抗体、防腐剤及び抗生物質(上記に列挙した例を参照されたい)(ただしこれらに限定されない)を含む追加の成分を含むことができる。
更なる特徴では、本発明は、その必要がある患者においてストレプトコッカス種感染を治療又は予防する方法を提供する。前記方法は、F1(配列番号:37)、H1(配列番号:39)、B2(配列番号:41)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びB3(配列番号:47)から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的に有効な量を投与することを含む。好ましい実施態様では、前記方法は、治療的に有効な量のE2(配列番号:44)ペプチドを投与することを含む。前記ペプチド類似体は、本発明に包含される医薬組成物のいずれの形態でも投与することができる。いくつかの事例では、前記ストレプトコッカス種感染の治療又は予防方法は、さらに治療的に有効な量の別の活性物質、例えば抗生物質(上記の例を参照されたい)の投与を含む。前記抗生物質は前記ペプチド類似体と同時に投与することができる。前記抗生物質のバイオフィルム内への進入を強化したい場合には、前記ペプチド類似体を最初に投与してバイオフィルムを破壊することが好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物の“治療的に有効な量”又は“治療的に有効な投与量”は、ペプチド類似体、感染のタイプ及び重篤度、並びに医薬組成物がさらに別の活性成分(例えば抗生物質)を含むか否かに左右されるであろう。一般的には、治療的に有効な投与量は、バイオフィルム形成の制御及び/又は感染の排除に十分な最低量であり、治療される人間又は動物に有毒でない。有効投与量及び毒性を決定する方法は当分野では公知である。
本方法は、口腔及び非口腔ストレプトコッカス種の双方によって引き起こされる感染の治療を含む。口腔ストレプトコッカス種(例えばストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、及びストレプトコッカス・ミチスを含む)の事例では、前記医薬組成物は、歯垢の減少及び制御に有用である。前記組成物はまた、歯垢によって引き起こされる症状(例えばう食、歯周疾患(例えば歯肉炎)及び心内膜炎を含む)の治療および予防に有用である。そのような事例では、一般的には前記医薬組成物を感染領域に局所的に投与することが所望される。例えば、前記医薬組成物は、食品、食品添加物、歯磨きゲル、練り歯磨き、口内洗浄液、デンタルフロス、入れ歯洗浄液、入れ歯接着剤、チューインガム、キャンディー、ビスケット、ソフトドリンク又はスポーツドリンクの形態で投与することができる。
非口腔ストレプトコッカス種、例えば肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、及びストレプトコッカス・アガラクチエ(ただしこれらに限定されない)によって引き起こされる感染の場合には、前記医薬組成物は、感染の性質及び重篤度に応じて局所的又は全身的に投与することができる。
【0045】
本発明の任意の医薬組成物の正確な投与量は、当業者にとって、さらに本明細書の記載を考慮すれば明白な多数の因子に左右されるであろう。それらの因子には特に以下が含まれる:投与されるべき化合物の実体、処方物、用いられる投与経路、患者の性別、年齢及び体重、並びに治療される症状の重篤度。投与量及び毒性を決定する方法は当分野では周知であり、検査は一般的には動物で開始され、動物で顕著な毒性が認められなければ続いて人間で実施される。例えば、医薬組成物が感染に用いられる事例では、投与量の適切性は、当分野で公知の通常の方法を用いて感染の重篤度をモニターすることによって評価することができる。少なくとも治療の3日から14日後に、提供された投与量が細菌レベルを正常又は容認できるレベルに減少させない場合は、投与量を増加させることができる。患者は薬剤の副反応及び毒性の徴候についてモニターされねばならない。
本発明の好ましい実施態様では、前記ペプチド類似体の治療的に有効な量は、1日当たり1μg/mLから1mg/mLであろう。さらに好ましい実施態様では、前記ペプチド類似体の治療的に有効な量は、1μg/mLから100μg/mLであろう。さらに好ましい実施態様では、投与されるペプチド類似体は、1μg/mLから100μg/mLの量のE2(配列番号:44)ペプチドである。さらに別の活性成分(例えば抗生物質)の同時投与を含む事例では、前記ペプチド類似体の量を減少させることができる。また別には、前記抗生物質の通常の投与量を減少させることは適切といえよう。
【0046】
抗菌組成物
医薬組成物の製造に使用される上記に記載のCSP阻害因子はまた、種々の表面でバイオフィルム形成を阻害するために有用な抗微生物組成物、例えば消毒剤の製造に用いることができる。
バイオフィルム形成を阻害する抗微生物組成物は、上記記載のペプチド、アンチセンス及び抗体CSP阻害因子のいずれかを含むことができる。本発明の好ましい実施態様では、抗微生物組成物の製造に用いられる前記CSP阻害因子は、バイオフィルム形成を阻害するS.ミュータンスCSPのペプチド類似体である。より好ましくは、前記CSP阻害因子は、以下のS.ミュータンスCSPペプチド類似体の1つ以上である:B3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びF1(配列番号:37)。さらに好ましい実施態様では、前記抗微生物組成物はE2(配列番号:44)ペプチドを用いて製造される。
前記抗微生物組成物はさらに、界面活性剤、防腐剤及び抗生物質(上記に列挙した例を参照されたい)(ただしこれらに限定されない)を含む、追加の成分を含むことができる。
前記CSP阻害因子が1つ以上のS.ミュータンスCSPペプチド類似体B3(配列番号:47)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びF1(配列番号:37)である場合は、前記CSP阻害因子の量は好ましくは1μg/mLから1mg/mLである。好ましい実施態様では、前記CSP阻害因子はE2(配列番号:44)ペプチドであり、前記E2(配列番号:44)ペプチドの量は好ましくは1μg/mLから100μg/mLである。
【0047】
ワクチン
CSP(配列番号:2又は配列番号:30)に対して作成される抗体はう食に対する防御を提供しよう。抗体は下記に記載するように製造することができる。また別には、開示のペプチド(配列番号:2又は配列番号:30)又はその断片を担体とともに用いて、ワクチンを製造することができる。前記ペプチド又は断片はまた別の分子と結合させて、その抗原性を増加させることができる。抗体はまたペプチドと結合させることができる(L.J. Brady et al. “Monoclonal Antibody-Mediated Modulation of the Humoral Immune Response against Mucosally Applied Streptococcus mutans”(印刷中))。免疫応答を高めるために、ペプチドはKLH、卵白アルブミン、又はタイログロブリンと免疫前に結合させることができる。ワクチンは哺乳動物の免疫系の引き金となり抗体を産生させるであろう。本発明のある種の実施態様は、ワクチン組成物及び哺乳動物(好ましくは人間)をう食に対してワクチン免疫する方法を含み、前記方法はワクチン組成物の有効量を哺乳動物に投与することによって達成される。ワクチンの製造技術及び使用技術は当分野で公知である。ワクチンを製造するために、前記ペプチド、前記ペプチドの断片を他の抗原(異なる免疫原性を有する)、ビヒクル、又は賦形剤と混合することができる。ペプチドワクチンの例は、米国特許5,679,352号、5,194,254号、及び4,950,480号で見出される。位置特異的変異導入を含むワクチンを製造する技術は、米国特許5,714,372号、5,543,302号、5,433,945号、5,358,868号、5,332,583号、5,244,657号、5,221,618号、5,147,643号、5,085,862号及び5,073,494号に記載されている。ワクチンは、公知の技術、例えば局所的又は非経口的投与によって投与することができる。新規な技術の導入に伴って、大きな変化がワクチン免疫学で生じた。副作用のない無細胞精製画分、非病原性であるが免疫原性を有する変異体、組換え技術、複合ワクチン、組み合わせワクチン(注射の回数を制限するため)である。ワクチンデリバリー系は、ただ1つの接触点で複数用量のワクチンをデリバーすることができる。遺伝的に操作した経口ワクチンはより良好で長期間持続する免疫を付与するために有用である。経口ワクチンは有用である。免疫のための経路として鼻もまた有用である。DNAだけでワクチンを構成することができ、液性及び細胞性免疫応答を誘導することができる。組換え生ワクチンもまた有用である。ワクチンの有効性のために強力なアジュバントが添加される。さらに、マウスのモノクローナル抗体を遺伝的操作によって“ヒト化”し、さらに植物で効率的に発現させることもできる。これら組換え抗体は、高度に特異的で安全な治療的介入の時代をひらいた。ワクチンと比較して、特定の標的に対して誘導される適切な量で投与される予め作成された抗体の利点は、個々の受容者における有効性の確実性であるが、免疫応答の質及び量は個体間で変動する。例えば、鼻腔免疫は、C. Jespersgaadら(“Protective Immunity against Streptococcus mutans Infection in Mice after Intranasal Immunization with the Glucan-Binding Region of S. mutans Glucosyltransferase”, Infection and Immunity, December 1999, p.6543-6549, vol. 67, No. 12)が記載したように実施することができる。ワクチン組成物は固体又は液体処方物、例えばゲル、シロップ、吸入剤、錠剤、練り歯磨き、口内洗浄液又はチューインガムを含むことができる。
ワクチンの適用のためには、コレラ毒素をペプチドと前記毒素のB-サブユニットとを結合(すなわちCTBと結合)させることによって利用して、分泌抗体の生成を刺激することができる。
【0048】
CSPの阻害因子のスクリーニング
阻害因子は、S.ミュータンス受容能、低pH耐性及びバイオフィルム形成を阻止するために、好ましくはCSP(配列番号:2又は配列番号:30)に向けられる。
CSP(配列番号:2又は配列番号:30)とHK(配列番号:4)との相互作用を低下させる化合物を同定する方法は以下を含むことができる:(i)CSP(配列番号:2又は配列番号:30)を(ii)HK(配列番号:4)、HK(配列番号:4)のCSP結合断片又は前述のどちらかの誘導体と前記化合物の存在下で接触させ;さらに(b)(i)と(ii)との間の相互作用が低下したか否かを決定し、それによって、前記化合物がCSP(配列番号:2又は配列番号:30)とHK(配列番号:4)との相互作用を低下させることを示す。CSP阻害因子(う食の治療又は予防化合物)は、(i)と(ii)との間の相互作用を阻害する。例示すれば、合成ペプチドライブラリーをスクリーニングすることができる。さらにまた非ペプチド小有機分子もスクリーニングすることができよう。
ある実施態様では、本発明は、テスト化合物がCSP(配列番号:2)又はCSPの機能活性を有するペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストとして作用することができるか否かを判定するアッセイを含み、前記アッセイは、CSP(配列番号:1)を発現することができるDNA又はCSP活性を有するペプチドを含む細胞を培養し、前記培養はCSP活性の調節能を決定しようとしている少なくとも1つの化合物の存在下で実施され、その後、CSP(配列番号:2又は配列番号:30)のレベル又はCSP活性の増減について細胞をモニターすることを含む。他のアッセイは(上記のアッセイの変種同様に)、本発明の記述及び以下の特許文献に開示された技術から明白であろう:米国特許5,851,788号、5,736,337号及び5,767,075号(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる))。例えば、テスト化合物のレベルは固定又は変動させることができる。
【0049】
抗体の調製
CSP(配列番号:2又は配列番号:30)ペプチドはまた、他のCSP様ペプチドの精製又は検出に用いることができる抗体調製のための抗原として有用である。抗体はまた、CSP(配列番号:2)とHK(配列番号:4)との結合を阻止することができる。抗体は、好ましくは全CSP(配列番号:2)配列を標的とする。CSP(配列番号:2又は配列番号:30)ペプチドは、免疫原性を高めるために他の化合物と結合させることができる。
我々は、固有の配列であるCSP(配列番号:2又は配列番号:30)に対するポリクローナル抗体を作成した。モノクローナル及びポリクローナル抗体は、本出願の記載及び当分野で公知の技術にしたがって調製される。モノクローナル抗体の調製及び使用方法については、米国特許5,688,681号、5,688,657号、5,683,693号、5,667,781号、5,665,356号、5,591,628号、5,510,241号、5,503,987号、5,501,988号、5,500,345号、及び5,496,705号を参照されたい(前記文献は引用によりその全体が本明細書に含まれる)。ポリクローナル抗体の調製の例は、米国特許5,512,282号、4,828,985号、5,225,331号および5,124,147号に開示されている(前記文献は引用によりその全体が本明細書に含まれる)。CSP(配列番号:2及び配列番号:30)を認識する抗体は、CSPペプチド(配列番号:2)又はCSP様ペプチドを含む生物又は組織のスクリーニングに利用することができる。前記抗体はまた、CSP又はCSP様ペプチドを粗抽出物から免疫精製するために有用である。
抗体(好ましくは上記記載の抗体)を用いて、CSP(配列番号:2)又は類似のペプチドを、例えば、前記抗体によって認識されるペプチドと前記抗体との免疫複合体の形成を許容する条件下で生物学的サンプルを前記抗体と接触させ、免疫学的複合体の有無を検出し、それによって前記サンプル中のCSP(配列番号:2)又は類似のペプチドの存在を検出することにより検出することができる。本発明のある種の実施態様はまた好ましくは以下を含む組成物を含む:抗体、前記抗体と前記抗体により認識されるペプチドとの免疫学的複合体の形成に適した媒体、及び免疫学的複合体を検出してCSP(配列番号:2)又は類似のペプチドの存在を確認することができる試薬。本発明のある種の実施態様はまた、生物学的サンプル中のCSP(配列番号:2)又は類似のペプチドの有無をin vitroで検出するためのキットを含み、前記キットは、好ましくは抗体、前記抗体と前記抗体により認識されるペプチドとの免疫学的複合体の形成に適した媒体、及び免疫学的複合体を検出して生物学的サンプル中のCSP(配列番号:2)又は類似のペプチドの存在を確認することができる試薬を含む。抗体の使用に関する更なる情報は、例えば米国特許5,695,931号及び5,837,472号で提供される(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
【0050】
遺伝的受容能アッセイ
HK(配列番号:4)及びRR(配列番号:6)並びにその後の遺伝的受容能、酸耐性及びバイオフィルム形成についての特性の付与に必要とされる遺伝子を活性化するペプチドの能力は、シグナルペプチド及び/又は阻害因子に暴露されたときのS.ミュータンスのDNA(好ましくはプラスミドDNA)の取り込み及び発現効率を測定することによって決定することができる。Perryら(Infect Immun, 41:722-727)及びLindler & Macrina(J Bacteriol, 166:658-665)が記載したプロトコルを土台にして改変した2つの方法を用いて、遺伝的受容能をアッセイする。前記方法は、DNA及びCSP(配列番号:1)(好ましくはプラスミドDNA)をS.ミュータンス培養物(又はCSP(配列番号:1)を発現する細菌又はその変種の培養物)に添加することを必要とする。続いて、形質転換率を決定する。S.ミュータンスは、好ましくはTHYE+5%馬血清(THYE-HS)中で増殖させる。2時間のインキュベーション後に、1μg/mLのプラスミドDNA又は10μg/mLの染色体DNAを前記培養物に添加する。受容能の誘導をアッセイするために、続いて、合成受容能刺激ペプチド(SCSP)(配列番号:14)を前記培養物に添加し、各サンプルにSCSPを最終濃度500ng/mLで添加した状態で30分インキュベーションを続ける。30分のインキュベーションの後で、等量のDNAを各ウェルに添加し(1μg/mLのプラスミド又は10μg/mLの染色体DNA)、さらに2時間インキュベーションを続ける。直ちに細胞希釈物を適切な抗生物質を含むTHYE寒天プレートに広げた。形質転換頻度を、生存レシピエント数当たりの形質転換体(抗生物質耐性細胞)数として表した。この頻度は、抗生物質の存在下で増殖できる細胞数を存在細胞総数(すなわち抗生物質の非存在下で増殖する細胞数)に対して比較することによって決定される。より大きな値はより高率の形質転換を示し、したがって前記ペプチドによる促進作用を反映している。結果として、阻害因子として作用することができる分子の添加は、形質転換体/レシピエント比の低下をもたらし、前記阻害因子がCSP(配列番号:2)の活性の阻止に有効であることを示す。CSP(配列番号:1又は配列番号:2)欠損細胞もまたこれらアッセイの変型で用いることができる。テスト化合物を前記混合物に添加し、形質転換率が前記テスト化合物の添加によって低下するか否かを決定することによってCSP(配列番号:2)又はその変種を阻害する化合物を同定することができる。
系の活性はまた、CSP(配列番号:2)/HK(配列番号:4)/RR(配列番号:6)により開始するシグナルカスケードによって制御されるプロモーターとの融合物から発現されるマーカータンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))の発現の測定を基準にするin vitroアッセイによって測定することができる。そのようなプロモーターのあるものは、S.ミュータンスcomX遺伝子のすぐ5'隣接部に存在する。マイクロタイターウェルで増殖させたS.ミュータンスは、CSP(配列番号:2)及び/又は阻害因子に暴露され、comX::GFP株の蛍光レベルを測定し、CSP(配列番号:2)刺激(および逆に阻害因子活性)の定量的測定が提供される。テスト化合物を混合物に添加し、CSP(配列番号:2)刺激の定量的測定が前記テスト化合物の添加により低下するか否かを決定することによって、CSP(配列番号:2)又はその変種を阻害する化合物を同定することができる。
【0051】
酸耐性アッセイ
酸耐性認容を促進するCSP(配列番号:2)の能力は、酸性pHに暴露されたときにS.ミュータンスの細胞生存率を測定することによって決定される。ある例では、S.ミュータンスを先ず初めにバッチ培養で増殖させ、いわゆる標準的な対数期及び定常期細胞で以前に記載された(Svensaeter et al. Oral Microbiol Immunol, 12:266-73)方法の改変方法を用いることにより酸耐性応答をアッセイする。1容の一晩培養物を9容の新しいTYG培地(pH7.5)に移し(1:10)、37℃にて5%CO2で2時間インキュベートすることによって対数中期細胞を得る。続いてこれらの細胞を8,000gで10分遠心して採集し、O.D600の決定により種々の細胞濃度で新しいTYG(pH5.5)の2mLに再懸濁する。5%CO2により37℃にて2時間、pH5.5でインキュベートすることによって細胞を酸順応誘導する。続いて、前記順応対数期細胞を死滅作用pHに暴露する。死滅作用pHは、6.0から2.0のpH値のTYG培地中で非順応対数中期細胞をインキュベートすることによって予め決定される。グルコースを含まないTY(トリプトン-酵母エキストラクト液)培地に対数後期細胞を懸濁することによって定常期細胞を調製する。前記培養物を37℃で2時間インキュベートして細胞を完全に定常期に進入させる。定常期細胞の酸順応の誘発は、対数期細胞の酸順応誘導と同様な手順にしたがう。対数期細胞及び定常期細胞の酸性pHへの順応は、死滅作用pHに3時間生存する細菌細胞の能力を測定することによって決定される。酸死滅作用は同じ体積の新しいTYG(pH3.5)に細胞を懸濁させることにより開始させ、細胞懸濁液の少量を各サンプルから直ちに採取して0時間の生細胞総数を決定する。続いて5%CO2で3時間37℃にて細胞をインキュベートし、サンプルの少量を採取し生存細胞の計測によって生存率を決定する。阻害因子として作用することができる分子の添加によって、S.ミュータンスの酸耐性認容の低下がもたらされ、それに対応して細胞の生存が低下し、前記阻害因子がCSP(配列番号:2)の阻止活性において有効であることを示す。CSP(配列番号:1又は配列番号:2)欠損細胞もまた、シグナルペプチドの添加によってcomC(配列番号:1又は配列番号:2)欠損細胞の酸順応欠損表現型が相補され得るこれらのアッセイの変型に用いることができる。テスト化合物を前記混合物に添加し、細胞の生存率が前記テスト化合物の添加によって低下するか否かを決定することによって、CSP(配列番号:1又は配列番号:2)又はその変種を阻害する化合物を同定することができる。
【0052】
本明細書で開示した核酸分子(ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)で形質転換した細胞は、研究用ツールとして有用である。例えば、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)を発現しない細胞(又は細胞株、例えば不死化された細胞培養又は初代細胞培養)を入手し、前記細胞にヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)核酸分子を挿入し、発現レベル及び活性を判定することができる。また別には、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)核酸分子を発現する細胞中で、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)核酸分子を過剰に発現させることができる。別の例では、種々のタイプのヒスチジンキナーゼ(配列番号:3)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)核酸分子を含むベクターで複数の実験群の細胞を形質転換して、生成されたポリペプチド及びペプチドレベル、その機能、並びに細胞の表現型を判定することができる。前記ポリペプチド及びペプチドはまた、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)、CSP(配列番号:2)又は応答調節因子(配列番号:6)の活性又は構造のin vitro分析のために有用である。例えば、生成された前記ポリペプチド及びペプチドは、顕微鏡又はX-線結晶学研究のために用いることができる。
ヒスチジンキナーゼ(配列番号:3及び配列番号:4)、CSP(配列番号:1及び配列番号:2)又は応答調節因子(配列番号:5及び配列番号:6)の核酸分子並びにポリペプチドはまた、ポリペプチド又はペプチドの機能を直接阻害及び/又は強化する化合物の同定及び開発のためのアッセイにおいて有用である。例えばこれらは、テスト化合物が、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)、CSP(配列番号:2)又は応答調節因子(配列番号:6)に対するアンタゴニストとして作用し得るか否かを判定する、以下によって実施されるアッセイで有用である:(a)ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)、CSP(配列番号:1)又は応答調節因子(配列番号:5)(又はヒスチジンキナーゼ、CSP若しくは調節応答因子活性を有する前記の断片又は変種)を発現する核酸分子を含む細胞を培養し、ここで前記培養は、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)、CSP(配列番号:2)又は応答調節因子(配列番号:6)を阻害するその能力を決定しようとする少なくとも1つのテスト化合物が濃度を増加させながら存在する状態で実施され、さらに(b)前記テスト化合物の濃度の関数として阻害レベルを細胞でモニターし、それによってヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)、CSP(配列番号:2)又は応答調節因子(配列番号:6)の活性を阻害する前記テスト化合物の能力を示す。
適切なアッセイは、例えば米国特許5,851,788号から応用することができる。
【0053】
実施例
材料と方法
細胞の増殖条件
細胞は、5%ウマ血清並びに0.01%ブタ胃ムチンを添加及び添加しない、種々の希釈のトッド・ヒューウィット(Todd Hewitt)酵母エキストラクト培地で増殖させる。
バイオフィルム成長細胞の形質転換プロトコル
バイオフィルム形成、したがってペプチド(配列番号:2)/レセプター(配列番号:6)/キナーゼ(配列番号:4)系の活性をアッセイする迅速簡便な方法を提供するため、バイオフィルムはポリスチレンマイクロタイタープレート上で成長させる。バイオフィルムの形成は、2mLのバイオフィルム培地(4倍希釈トッド-ヒューウィット酵母エキストラクト培地に最終濃度0.01%のブタ胃ムチン補充)を含む各ウェルに20μLの細胞懸濁液を接種し、嫌気性条件下で37℃で一晩インキュベートすることによって開始する。20時間のインキュベーションの後で、液体培地を取り出し、2mLの予め加温した新しいTHYW+5%ウマ血清を添加する。前記培養物を30分インキュベートし、各ウェルに最終濃度200ng/mLで合成受容能刺激ペプチド(SCSP)及び種々の濃度の阻害因子を補充し、インキュベーションを継続する。30分後に、プラスミドDNA(1mg/mL)又は染色体DNA(10mg/mL)を各ウェルに添加し、培養をさらに2時間インキュベートする。続いて浮遊細胞を取り出し、ウェルをPBS緩衝液で1回洗浄する。穏やかな超音波処理及びピペットを用いてウェルを洗浄することによって、バイオフィルム細胞を2mLの新しい培養液に採集する。サンプルを12,000xgで5分遠心する。バイオフィルム及び浮遊細胞の双方を200μLの新しい培養液に再懸濁し、直ちにTHYE寒天+適切な抗生物質上に広げる。形質転換頻度は48時間のインキュベーション後に決定する。
【0054】
ゲノムデータベース解析
ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)/応答調節因子(配列番号:6)系をコードする肺炎連鎖球菌comD(配列番号:3)/E(配列番号:5)遺伝子の同族体を同定した。この配列を用いてプライマーを設計し、多数のS.ミュータンス単離株由来の領域を増幅した。138ヌクレオチドから成るオープンリーディングフレームは、comD同族体の末端から148ヌクレオチド5'近位に反対方向で存在していた(図1)。このORFは、長さが46アミノ酸のペプチド(配列番号:2)をコードし、21アミノ酸CSP(配列番号:30)の前駆体であることが判明した。
PCR増幅及びヌクレオチド配列決定
ゲノムデータベース配列を基にして設計したプライマーを用いて、いくつかのS.ミュータンス単離株のゲノムからcomCDE遺伝子(配列番号:21)をPCRによって増幅し、それらのヌクレオチド配列を決定した。推定されるアミノ酸配列を単離株間で配列アラインメントによって比較し、同一性を確認する。
遺伝子の不活化
遺伝子は内部の相同な断片を自殺ベクターpVA8912に組み込むことによって不活化する。個々の遺伝子(comC(配列番号:1)、comD(配列番号:3)、comE(配列番号:5))の各々で欠損を有する変異体を不活化し、バイオフィルム形成能、酸性pH(pH2−4)耐性能及びDNA輸送及び取り込み能についてそれらの表現型を親株NG8と比較する。comD(配列番号:3)及びcomE(配列番号:5)のノックアウト変異体を、挿入-重複変異導入によって構築し、一方、comC(配列番号:1)ノックアウト変異体は、comC(配列番号:1)遺伝子座へのエリスロマイシン耐性決定基の挿入を介する対立遺伝子座交換によって作出した(Li et al. 2001)。全ての変異株はしたがってエリスロマイシン耐性であった。野生型株は、トッド・ヒューウィット・酵母エキストラクト(THYE)寒天プレート(BBL(商標);Becton Dickinson, Cockeysville, MD)上で日常的に継代培養し、一方、変異体はTHYE寒天+10μg/mLのエリスロマイシン上で維持した。最小培地(DMM)を調製し、以前に記載された方法(Loo et al. 2000)を改変してバイオフィルムを成長させた。前記培地は58mMのK2HPO4、15mMのKH2PO4、10mMの(NH4)2SO4、35mMのNaCl、2mMのMgSO4・7H2O、0.2%(wt/vol)カザミノ酸を含み、さらにフィルター滅菌ビタミン(0.04mMニコチン酸、0.1mMピリドキシンHCl、0.01mMパントテン酸、1μMリボフラビン、0.3μMチアミンHCl及び0.05μMのD-ビオチン)、アミノ酸(4mMのL-グルタミン酸、1mMのL-アルギニンHCl、1.3mMのL-システインHCl及び0.1mMのL-トリプトファン)及び20mMグルコースを補充した。
【0055】
comD欠失変異体の創出
S.ミュータンスUA159 comDヌル変異体を、以前に記載されたように(Lau et al. 2002)制限-連結及び対立遺伝子座交換を含むPCR系欠失手法によって構築した。S.ミュータンスcomD欠失変異体の構築及び確認に用いたプライマーは、P1-HK13(5’-CACAACAACTTATTGACGCTATCCC-3’)、P2-HK13(5’-GGCGCGCCAACTGGCAACAGGCAGCAGACC-3’)、P3-HK13(5’-GGCCGGCCTCAAAACGATGCTGTCAAGGG-3’)、P4-HK13(5’-AGATTATCATTGGCGGAAGCG-3’)、Erm-19(5’-GGCGCGCCCCGGGCCCAAAATTTGTTTGAT-3’)及びErm-20(5’-GGCCGGCCAGTCGGCAGCGACTCATAGAAT-3’)である。
合成ペプチドの合成
gly-glyアミノ酸残基(24位及び25位)の傍らに存在するべき切断部位を決定することによって、プロセッシングを受けたペプチドの配列を推定した(図4)。残基26−46(両端を含む)のアミノ酸配列に対応するペプチドを合成した。
ペプチド類似体の合成
本実験で用いたペプチド類似体の配列を表4に列挙する。このペプチドは当分野で公知の方法によって合成した。
【0056】
表4:合成CSP類似体

【0057】
受容能刺激ペプチド(CSP)類似体は成熟21アミノ酸CSP(SGSLSTFFRLFNRSFTQALGK)の配列を基にして合成した。CSPペプチド類似体(F1(配列番号:37)、H1(配列番号:39)、B2(配列番号:41)、C2(配列番号:42)、E2(配列番号:44)及びB3(配列番号:47))は、下記施設で合成した:Advanced Protein Technology Centre, Peptide Synthesis Facility of Hospital for Sick Children(Toronto, ON)及びMimotopes(San Diego)。F1及びH1類似体は、C'末端から2番目及び4番目の残基をそれぞれ欠失させることによって作出したが、B2及びC2では荷電残基が中性(アラニン)又は疎水性(バリン)残基で置換した。E2類似体では、(C'末端から)2番目のアルギニンが中性のアラニンで置換した。B3類似体は、N'から3番目の残基をスレオニンで置換し、さらにC'末端から1、2及び3番目の残基を欠失させることによって作出した。
前記ペプチドを、滅菌脱イオン蒸留水に1mg/mLで溶解した。不溶性ペプチドに対してはいずれも、10%(vol/vol)酢酸、20%(vol/vol)アセトニトリル又は100%(vol/vol)ジメチルホルムアミド(DMF)を続いて添加した。ペプチドは-20℃で使用まで保存した。
【0058】
CSPの添加による欠損表現型の回復
合成ペプチド(配列番号:14)がcomC(配列番号:2)変異体の欠損表現型を回復させることができるか否かを決定するために、化学的に合成した21アミノ酸受容能刺激ペプチド(CSP)(配列番号:14)(Li et al. 2001)を相補性実験で用いた。前記ペプチドを滅菌蒸留水に1mg/mLの濃度で新しく溶解させた。続いてこのCSP溶液を、細菌細胞を接種してから2時間後に最終濃度2μg/mLで培養に添加した。
増殖速度
マルチウェル使い捨てマイクロタイタープレート(Biscreen C, Helsinki, Finland)を組み入れたバイオスクリーン・マイクロバイオロジー・リーダーを用い、親株及び変異株の増殖曲線をアッセイするためにそれら株をTHYE培地で増殖させた。前記バイオスクリーン・リーダーにはBiolinkソフトウェアプログラムが搭載されてあり、前記プログラムは、増殖曲線及び増殖速度計算の自動記録及び表示を可能にする。前記の株の増殖は、200μLの新しいTHYE培地を含む各ウェルに5μLの細胞懸濁液を接種することによって開始させた。前記細胞懸濁液は、接種前にOD600において同じ光学密度に予め調整した。続いてプレートをバイオスクリーン・システムに置いた。前記システムは、振盪しながら15分毎に自動的に光学密度を読み取るように設定しておいた。光学密度の読みは自動的に記録され、増殖曲線に変換される。各アッセイを4重に実施した。
【0059】
細菌株及び増殖状態
S.ミュータンスの7つの株をこの実験に用いた(株には以下が含まれる:BM71、GB14、H7、JH1005、LT11、NG8及びUAB159)。全ての株は凍結乾燥アンプルから培養され、日常的にトッド-ヒューウィット酵母エキストラクト(THYE)プレート上で維持した。形質転換後の抗生物質耐性コロニーの選別のために、培地にはエリスロマイシン(Em)(10μg/mL)又はカナマイシン(Km)(500μg/mL)のどちらかを補充した。
S.ミュータンス株野生型UA159及びそのcomDヌル変異体を、0.3%(wt/vol)酵母エキストラクト補充トッド-ヒューウィット(THYE)寒天プレート上で37℃、5%CO2含有大気で日常的に増殖させた。バイオフィルム実験のために、S.ミュータンス株を以前に記載されたように(Li et al. 2002)5mMグルコース補充半限定最小培地(SDM)中で増殖させた。複製可能プラスミドpDL289(Buckley et al. 1995)を遺伝的形質転換実験のためのドナーDNAとして用いた。プラスミドDNAは、市販のプラスミド調製キット(Qiagen)を用いることによって大腸菌から調製した。必要なときには、抗生物質を以下のように添加した:S.ミュータンスのために10μg/mLのエリスロマイシン又は500μg/mLのカナマイシン、及び大腸菌のために50μg/mLのカナマイシン。
ストレプトコッカス種(S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス、S.ミチス、肺炎連鎖球菌を含む)もまた、合成ペプチド類似体の阻害性作用の実験に用いた。それらを0.3%酵母エキストラクト含有トッド-ヒューウィットブロス(THYE)中でpH5.5又は7.5で増殖させた。それらをTHYE寒天プレート上で日常的に継代し、37℃の嫌気性チャンバー(5%CO2)でインキュベートした。液体培地では、培養は37℃の嫌気性チャンバー(5%CO2)で攪拌せずに密閉スクリューキャップチューブでインキュベートした。
【0060】
ポリスチレンマイクロタイタープレートで形成されたS.ミュータンスバイオフィルムのアッセイ(a)
バイオフィルムをポリスチレンマイクロタイタープレート上で成長させ、遺伝的形質転換をアッセイする迅速簡便な方法を提供する。0.01%の最終濃度のブタ胃ムチンを補充した4倍希釈のTHYE培地をバイオフィルム培地(BM)として用いた。2mLのBMを含む各ウェルに20μLの細胞懸濁液を接種することによってバイオフィルムの形成を開始し、4つのウェル(2つは形質転換アッセイ用、2つはバイオフィルム定量用)を設けた。嫌気性条件下で培養物を37℃にて20時間インキュベートした後、生存細胞計測のために液体培地を取り出した。ウェルを10mMのPBS緩衝液(pH7.2)で1回洗浄し、穏やかに5秒超音波処理することによって、2mLのPBS中にバイオフィルム細胞を採集した。バイオフィルム及び浮遊細胞の双方を直ちにTHYEプレートにスパイラルシステム(Spiral Plater, Model D, Cincinnati, OH)を用いて広げ、37℃で嫌気性条件下でインキュベートした。バイオフィルムの形成は、48時間のインキュベーション後の生存細胞計測によって定量した。
ポリスチレンマイクロタイタープレート上に形成されたS.ミュータンスバイオフィルムのアッセイ(b)
バイオフィルムは96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレートで成長させた。バイオフィルムの成長は、96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェルに種々の濃度(0、0.1、0.5、2及び5μg/mL)のペプチド類似体を含むSDM-グルコース300μLに一晩培養S.ミュータンスUA159の10μLを接種することによって開始させた。細胞を含まないウェルをブランクコントロールとして用いた。続いて、マイクロタイタープレートを5%CO2下で37℃、16時間攪拌しないでインキュベートした。インキュベーション後に、浮遊細胞を注意深く取り出し、プレートを一晩風乾した。続いて前記プレートを0.01%(wt/vol)サフラニンで10分染色し、滅菌蒸留水で洗浄し風乾した。バイオフィルムは、マイクロプレートリーダー(モデル3550;Bio-Rad Laboratories, Richmond, CA)を用いて、染色バイオフィルムの吸収を490nmで測定することによって定量した。
【0061】
ポリスチレンマイクロタイタープレート上に形成されたS.ミュータンス、S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス、S.ミチス及び肺炎連鎖球菌バイオフィルムのアッセイ
ストレプトコッカス種(S.ミュータンス、S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス及びS.ミチスを含む)に対する合成E2ペプチドの抗バイオフィルム活性を決定するために、96ウェルマイクロタイタープレート上のバイオフィルムの成長を、一晩培養ストレプトコッカス種の10μLを、96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェルのE2ペプチド(0及び5μg/mL)を含む300μLの半限定最小培地(58mMのK2HPO4、15mMのKH2PO4、10mMの(NH4)2SO4、35mMのNaCl及び2mMのMgSO4・7H2O)に接種することによって開始させた。前記半限定最小培地は、フィルター滅菌ビタミン(0.04mMニコチン酸、0.1mMピリドキシンHCl、0.1mMパントテン酸、1μMリボフラグメントビン、0.3μMチアミンHCl及び0.05μMのD-ビオチン)、アミノ酸(4mMのL-グルタミン酸、1mMのL-アルギニンHCl、1.3mMのL-システインHCl、0.1mMのL-トリプトファン)、0.2%(wt/wt)カザミノ酸及び20mMグルコースが補充されていた。細胞を含まないウェルをブランクコントロールとして用いた。続いて、マイクロタイタープレートを37℃で24時間攪拌しないで嫌気性チャンバー(5%CO2)でインキュベートした。インキュベーション後に、前記増殖をマイクロプレートリーダーにより600nmで測定した。浮遊細胞を注意深く取り出し、プレートを一晩風乾した。続いて前記プレートを0.4%クリスタルバイオレットで10分染色し、滅菌蒸留水で洗浄し15分風乾した。バイオフィルムは、マイクロプレートリーダーを用いて、染色バイオフィルムの吸収を630nmで測定することによって定量した。
【0062】
S.ミュータンス受容能アッセイ
ペプチド類似体が遺伝的受容能の発達に何らかの影響を有するか否かを決定するために、S.ミュータンスUA159野生型細胞を遺伝的形質転換についてアッセイした。S.ミュータンスUA159の一晩培養物を予め加温したTHEYブロスで希釈し(1:20)、600nmにおける光学密度(OD)がほぼ0.1に達するまで5%CO2含有大気下で37℃にてインキュベートした。前記培養物を、1μg/mLのプラスミドpDL289及び種々の濃度(0、0.1、0.5、2及び5μg/mL)のペプチド類似体を含む6つの小分け量に分割した。この培養物を5%CO2含有空気下で2.5時間37℃でインキュベートし、10秒間穏やかに超音波処理してストレプトコッカス鎖を分散させ、カナマイシン含有THYEプレートに広げた。プレートを5%CO2含有空気下で48時間37℃でインキュベートした。全レシピエント細胞は、抗生物質を含まないTHYEプレートに段階希釈物を広げて計測した。形質転換効率は、レシピエント細胞総数に対しカナマイシン耐性形質転換体の百分率として表した。
S.ミュータンス酸耐性アッセイ
酸耐性に対するペプチドの影響をpH7.5及びpH5.5のTHYE中の増殖を判定することによって評価した。S.ミュータンス野生型UA159細胞の一晩培養物を予め加温したTHEYブロスで希釈し(1:20)、OD600がほぼ0.4に達するまで5%CO2含有空気下で37℃にてインキュベートした。種々の濃度(0、0.1、0.5、2及び5μg/mL)のペプチド類似体を含む400μLのpH7.5のTHYE又はpH5.5のTHYEブロスで20倍希釈を作成し、100ウェルのBioscreen Cプレートの個々のウェルに3組ずつ添加した。細胞を含まないウェルをブランクコントロールとして用いた。Bioscreenマイクロバイオロジーリーダー(Labsystems, Helsinki, Finland)を用い、持続的に細胞を増殖させ、細胞の増殖を37℃で16時間測定した。測定は、細胞の凝集を防ぐために振盪しながら20分毎に実施した。
【0063】
“定常状態”のバイオフィルムのアッセイ
バイオフィルムはまた、バイオフィルム成長細胞の遺伝的受容能のための条件を特定し最適化するために、ケモスタット系バイオフィルムファーメンターで成長させた。前記バイオフィルムファーメンターは、以前に記載された(Li and Bowden, 1994)同様なシステムを土台にして、Mechanical Engineering and Glass Bloeing Shops, University of Trontoで改変されたものである。容器は400mLの稼動容積を有するガラス製であった。容器の蓋は、ガラス棒の無菌的挿入及び回収を可能にする、10個のサンプリング口(直径が0.5cmで、液体培地に沈む面積がほぼ4.0cm2)を有するステンレススチールで構築されてあり、バイオフィルムの蓄積に対して非生物的表面を提供する。前記ケモスタット容器内の温度は、温度制御装置(Model R-600F, Cole Parmer Instrument Corp. Vernon Hill, IL)によって37℃±0.1で維持した。培養pHは、pH制御ユニット(Digital pHMeter/Controller, Model 501-3400, Barnant Corp. Barrington, IL)によって1MのKOH又は1MのHClの添加を介して制御した。前記容器は磁石攪拌装置(Fisher Scientific)上に置かれ、培養液は、ポリプロピレン被覆磁石攪拌棒(長さが3cm)によって200rpmで攪拌した。新しい4倍希釈THYE培養液(最終濃度0.01%のブタ胃ムチン(III型、Sigma)補充)を、所望の希釈率で容器(400mL)にポンプで送り込むことによって連続培養を実施した。ケモスタットの日々のメンテナンスには、光学密度の読み取り、生存細胞の計測及び液体培地のpH測定が含まれていた。培養物が“定常状態”に達したとき(少なくとも10平均世代時間)、バイオフィルム形成の開始のためにガラス棒を無菌的にケモスタットに挿入した。続いて、遺伝的形質転換及び生存細胞計測を用いたバイオフィルムの定量のために、種々の時期のバイオフィルムを培養から取り出した。
【0064】
走査電子顕微鏡検査(SEM)
走査電子顕微鏡検査によって空間的分布及びバイオフィルムの厚さを調べるために、種々の時期のバイオフィルムをマイクロタイターウェルの底を削り取って取り出し、前記を続いて10mMのKPO4で1回洗浄し、10mMのKPO4緩衝液中の3.7%ホルムアルデヒド(2mL)で一晩固定した。続いて、サンプルを一連のアルコール浴(30%、50%、70%、95%及び100%)で脱水し、液体CO2で臨界点乾燥させ、マウントし、金でスパッター被覆した。続いて、走査電子顕微鏡(Model S-2500, Hitachi Instruments, San Jose, CA)を用いてサンプルを調べた。
【0065】
形質転換プロトコル
文献に記載されたプロトコル(Perry et al. Infect Immun, 41:722-727;及びLinder amd Macrina, J Bacteriol, 166:658-665)を基にして改変した2つの方法を用いて、バイオフィルム細胞の天然の形質転換をアッセイした。ポリスチレンマイクロタイタープレート上に形成されたバイオフィルムに、BM培地を除去した直後に予め加温した2mLの新しいTHYE+5%ウマ血清(THYE-HS)を添加し、37℃でインキュベーションを継続した。2時間のインキュベーション後に、最終濃度1μg/mLのプラスミドDNA又は10μg/mLの染色体DNAを各ウェルに添加した。前記培養物をさらに2時間インキュベートし、プレーティングのために細胞を採集した。合成受容能刺激ペプチド(SCSP)(配列番号:14)による受容能の誘導をアッセイするために、前記培養物を30分インキュベートし、SCSP(配列番号:14)を最終濃度500ng/mLで各ウェルに添加した。30分インキュベートした後で、等量のDNAを各ウェルに添加し(1μg/mLのプラスミドDNA又は10μg/mLの染色体DNA)、さらに2時間インキュベーションを継続した。続いて、液体培地を個々のウェルから取り出し、ウェルをPBS緩衝液で1回洗浄した。穏やかな超音波処理によって、又はピペットを用いてウェルを洗浄することによってバイオフィルム細胞を2mLのPBS緩衝液に採集した。前記サンプルを12,000Xgで5分遠心した。バイオフィルム及び浮遊細胞の双方を200μLの新しい培養液に再懸濁し、THYE寒天プレート+適切な抗生物質上に直ちに広げた。ケモスタットで成長させたバイオフィルムについては、バイオフィルム細胞を含むガラス棒を取り出し、予め加温した2mLの新しいTHYE-HS培養液に入れ30分インキュベートした。続いて、上記に記載した方法と同じ方法を用いて形質転換を開始した。浮遊細胞も取り出し、形質転換頻度を比較した。形質転換工程の完了後に、バイオフィルム及び浮遊細胞の双方をTHYE寒天+適切な抗生物質上に広げた。形質転換頻度は48時間のインキュベーション後に判定した。形質転換頻度は、形質転換細胞数/μgDNA/DNA添加時の生存レシピエント細胞として表した。
【0066】
ドナーDNA
本実験では、プラスミドDNA及び染色体DNAの両方をドナーDNAとして用いて、遺伝的形質転換をアッセイした。プラスミドDNAは、組み込みプラスミド、pVAGTFA(エリスロマイシン耐性(Emr)決定基を保持する)及びS.ミュータンスのgtfA遺伝子の断片を含んでいた。複製可能プラスミド、pDL289(カナマイシン耐性遺伝子(Kmr)を保持する)もまた用いた。Emr遺伝子を保持する染色体DNAを、染色体に組み込まれたpVAGTFAのコピーを保持する組換えS.ミュータンス株から調製した。
【0067】
本発明は、好ましい実施態様に具体的に言及しながらこれまで詳細に述べてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく変更を為し得ることは当業者には理解されよう。例えば、本出願がペプチドについて言及している場合、ポリペプチドもしばしば用いることができることは明白である。同様に、本出願で遺伝子が記載されている場合、核酸分子又は遺伝子断片もしばしば用いることができることは明白である。
全ての刊行物(GenBank登録を含む)、特許及び特許出願は、その全体を参照することによって、あたかも個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的及び個々に表示されているかのように本明細書に含まれる。
【0068】
実施例1:CSPペプチド類似体はストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害する
材料と方法の項に記載したように、in vitroアッセイを実施してストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの形成に対する6つの合成CSP類似体(F1、H1、B2、C2、E2及びB3;表4)の影響を決定した。前記類似体は、材料と方法の項に記載したように合成した。S.ミュータンスに対する類似体の抗バイオフィルム活性は、阻害百分率で換算して0から80%で変動した(図18)。E2ペプチドが、試験した6つの合成CSP類似体の間で最高の抗バイオフィルム活性(80%阻害)を示したので、前記ペプチドを更なるin vitro実験のために選択した。
実施例2:E2 CSPペプチド類似体は、S.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス及びS.ミチスでバイオフィルム形成を阻害する
材料と方法の項で述べたようにin vitroアッセイを実施して、CSPのE2類似体がストレプトコッカス種、例えばS.ソブリヌス、S.サングイス、S.ゴルドニイ、S.オラリス及びS.ミチスでバイオフィルム形成を阻害することができるか否かを決定した。E2ペプチドは5μg/mLという低い濃度で、試験した5つの細菌の全てにおいて増殖及びバイオフィルム形成の両方に対して阻害作用を示した。これらの細菌におけるバイオフィルム形成のパーセント阻害は40から75%の間で変動した(図19、20、21、22及び23)。さらにまた、E2ペプチドの抗バイオフィルム活性を上記ストレプトコッカス種の混合培養物に対して試験した。E2ペプチドはまた、混合培養物のバイオフィルム形成に対しても顕著な阻害作用を示した(データ示さず)。
実施例3:E2 CSPペプチド類似体は肺炎連鎖球菌のバイオフィルム形成を阻害する
本実施例は、非口腔ストレプトコッカス病原体のCSP仲介集団感知シグナリング系に対するS.ミュータンスCSP類似体の影響を示す。材料と方法の項で述べたようにin vitroアッセイを実施して、CSPのE2類似体が肺炎連鎖球菌のバイオフィルム形成を阻害することができるか否かを決定した。5μg/mLという低い濃度でE2ペプチドは、肺炎連鎖球菌に対して顕著な抗バイオフィルム活性を示した(25%阻害、図24)。
【0069】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】シグナルペプチド前駆体(ComC)(配列番号:1)、ヒスチジンキナーゼ(ComD)(配列番号:3)、及び応答調節因子(ComE)(配列番号:5)をコードする遺伝子座の配置を示す模式図である。この配置は、関連する他のストレプトコッカスとは異なっている。なぜならば、単一のプロモーターから転写されるcomC/DE遺伝子とともにオペロン様クラスターとして配置されるこれまでに記載された他の遺伝子と異なり、comC遺伝子(配列番号:1)は、それ自身の固有のプロモーターから転写され、さらにcomC遺伝子(配列番号:1)はcomD遺伝子(配列番号:3)から148ヌクレオチド分離しているからである。
【図2】核酸分子配列番号:1、3、5及び29を示す。図2A:S.ミュータンスcomC遺伝子(配列番号:1)。シグナルペプチド(配列番号:2)の前駆体をコードする。図2B:S.ミュータンスCSPコード配列(配列番号:29)。受容能刺激ペプチド(配列番号:30)をコードする。図2C:S.ミュータンスcomD遺伝子(配列番号:3)。図2D:S.ミュータンスcomE遺伝子(配列番号:5)。多数の遺伝子の転写を活性化する応答調節因子(配列番号:6)をコードする。
【図3】シグナルペプチド(配列番号:2)、ヒスチジンキナーゼ(配列番号:4)及び応答調節因子(配列番号:6)の推定されるアミノ酸配列の配列を示す。図3A:S.ミュータンスComCタンパク質(CSP前駆体)(配列番号:2)。図3B:S.ミュータンスComDタンパク質(ヒスチジンキナーゼ)(配列番号:4)。図3C:S.ミュータンスComEタンパク質(応答調節因子)(配列番号:6)。
【図4】種々の株のシグナルペプチド前駆体の推定されるアミノ酸配列及びその予想される切断部位を示す。元のペプチドは46アミノ酸ペプチドとして発現され、グリシン-グリシン残基の後ろで切断されて活性なシグナルペプチドを生成する。
【図5】ストレプトコッカス・ミュータンスにおける受容能、バイオフィルム形成及び酸耐性の誘導に有効である合成シグナルペプチド(配列番号:14)を示す。
【図6】エリスロマイシン耐性を付与するドナープラスミドDNAを受容する種々のS.ミュータンス株の能力によって決定される、モデルバイオフィルムにおいてin vitroで機能するシグナル/レセプター系の天然の活性を示す。
【図7】S.ミュータンス細胞の遺伝的受容能に対する合成ペプチドの影響を示す表である。合成受容能刺激ペプチド(SCSP)によるストレプトコッカス・ミュータンスの遺伝的形質転換の誘発を示す。
【図8】後続の配列決定又は不活化のために、標的遺伝子又は標的遺伝子の内部領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅で用いられるプライマーのリストである。
【図9】ComCDE座領域(配列番号:21)を示す。ComC(最初の強調領域;ヌクレオチド101から241)、ComD(第二番目の強調領域;ヌクレオチド383から1708)及びComE(第三番目の強調領域;ヌクレオチド1705から2457)タンパク質が強調されている。
【図10】comX DNA配列(配列番号:22)、タンパク質配列(配列番号:23)、並びに上流及び下流の100bpを含む(プロモーターは上流)comX 遺伝子座領域(配列番号:24)を示す。図10A:S.ミュータンスcomX遺伝子(配列番号:22)。図10B:S.ミュータンスComXタンパク質(配列番号:23)。図10C:S.ミュータンスcomX遺伝子座領域(配列番号:24)。
【図11】comA及びcomBヌクレオチド配列(配列番号:25)及び(配列番号:27)、並びにアミノ酸配列(配列番号:26)及び(配列番号:28)を示す。ComA及びComBはCSPエキスポーターの構成要素である。図11A:S.ミュータンスcomA遺伝子(配列番号:25)。図11B:S.ミュータンスComAタンパク質(配列番号:26)。図11C:S.ミュータンスcomB遺伝子(配列番号:27)。図11D:S.ミュータンスComBタンパク質(配列番号:28)。
【図12】S.ミュータンスcomC欠損細胞における酸耐性認容に対する合成ペプチドの影響を示す。合成シグナルペプチド(CSP)(配列番号:14)のcomC変異体培養への添加は、親株NG8と比較したとき、低pH攻撃で生存する変異体の能力を回復させた。
【図13】S.ミュータンスの集団感知回路の模式図である。
【図14】S.ミュータンス野生型UA159の遺伝的形質転換に対する種々の濃度のH1の影響を示す。結果は別個の3実験の平均±SEとして表されている。
【図15】S.ミュータンスcomDヌル変異体の遺伝的形質転換に対する種々の濃度のH1の影響を示す。
【図16】S.ミュータンス野生型UA159のTHYE(pH5.5)中の細胞増殖に対する種々の濃度(μg/mL)のCSP及びH1の影響を示す。平均OD600値±SE。結果は別個の3実験の平均を表している。
【図17】S.ミュータンス野生型UA159のTHYE(pH7.5)中の細胞増殖に対する種々の濃度(μg/mL)のCSP及びH1の影響を示す。平均OD600値±SE。結果は別個の3実験の平均を表している。
【図18】ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム形成に対する、合成CSP類似体(B2、B3、C2、E2、F1及びH1ペプチド)の影響を示す。
【図19】ストレプトコッカス・ソブリヌスのバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。
【図20】ストレプトコッカス・オラリスのバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。
【図21】ストレプトコッカス・サングイスのバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。
【図22】ストレプトコッカス・ミチスのバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。
【図23】ストレプトコッカス・ゴルドニイのバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。
【図24】肺炎連鎖球菌のバイオフィルム形成に対するE2ペプチドの影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2又は配列番号:30の断片を含み、さらにストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)の遺伝的受容能を阻害することができる、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:2又は配列番号:30と少なくとも95%同一であり、さらにS.ミュータンスの遺伝的受容能を阻害することができる単離されたポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:2又は配列番号:30のCOOH末端から1−5アミノ酸が除去されている、請求項1又は2記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
配列番号:2又は配列番号:30の断片を含み、さらにS.ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害することができる単離されたポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:2又は配列番号:30と少なくとも95%同一であり、さらにS.ミュータンスのバイオフィルム形成を阻害することができる単離されたポリペプチド。
【請求項6】
配列番号:2又は配列番号:30のアミノ酸配列の1−5アミノ酸が、1つまでを含むように改変されている、請求項5又は6の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
CSPのペプチド誘導体を含む、S.ミュータンスのバイオフィルム形成を低下させる組成物。
【請求項8】
CSPのペプチド誘導体を含む、S.ミュータンスの形質転換効率を低下させる組成物。
【請求項9】
ペプチド類似体が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
ペプチド類似体が、配列番号:44のアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の組成物を産生するように遺伝的に操作された細胞。
【請求項12】
細胞が細菌である、請求項11記載の細胞。
【請求項13】
S.ミュータンス細胞である、請求項12記載の細胞。
【請求項14】
請求項7から10のいずれか1項記載の組成物を製造することを目的とする、請求項11から13のいずれか1項記載の細胞の使用。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか1項に記載の細胞及び医薬的に許容できるアジュバントを含む組成物。
【請求項16】
請求項7から10又は15のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、S.ミュータンスの増殖を阻害する方法。
【請求項17】
請求項7から10又は15のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、う食を抑制する方法。
【請求項18】
請求項7から10又は15のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、歯の健康を改善する方法。
【請求項19】
配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項20】
バイオフィルムの形成を阻害する、S.ミュータンス受容能刺激ペプチド(CSP)のペプチド類似体。
【請求項21】
天然に存在する、請求項20記載のペプチド類似体。
【請求項22】
合成物である、請求項20記載のペプチド類似体。
【請求項23】
合成ペプチドが、S.ミュータンスCSPのC’又はN’末端のアミノ酸の欠失及び/又は置換によって製造される、請求項22のペプチド類似体。
【請求項24】
S.ミュータンスCSPが配列番号:30のアミノ酸配列を有する、請求項21記載のペプチド。
【請求項25】
ペプチド類似体が、歯垢付随細菌によって形成されるバイオフィルムを阻害する、請求項20記載のペプチド。
【請求項26】
歯垢付随細菌がストレプトコッカス属(Streptococci)又は放線菌属(Actinomyces)である、請求項20記載のペプチド。
【請求項27】
ストレプトコッカス属細菌が、S.ミュータンス、S.ソルビヌス(sorbinus)、S.サングイス(sanguis)、S.ゴルドンニ(gordonni)、S.オラリス(oralis)及びS.ミチス(mitis)から成る群から選択される、請求項26記載のペプチド類似体。
【請求項28】
ペプチド類似体が、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、S.ピオゲネス(S. pyogenes)、及びS.アガラクチエ(S. agalactiae)から成る群から選択されるストレプトコッカス属細菌によって形成されるバイオフィルムを阻害する、請求項20記載のペプチド。
【請求項29】
少なくとも1つのCSP阻害因子及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項30】
前記CSP阻害因子が、バイオフィルム形成を阻害するS.ミュータンス受容能刺激ペプチド(CSP)のペプチド類似体である、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
CSP阻害因子が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47のポリペプチドから成る群から選択されるアミノ酸を有するポリペプチド配列である、請求項29又は30記載の医薬組成物。
【請求項32】
アミノ酸配列が配列番号:44である、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
CSP阻害因子がCSPに特異的な抗体又はその断片である、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項34】
抗体がS.ミュータンスCSPに特異的である、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
CSP阻害因子が、CSPの発現及び転写を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項36】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CSPコードオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドであり、前記CSPコードオリゴヌクレオチドが配列番号:1の核酸配列を有する、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
CSP阻害因子が、CSPペプチドの搬出を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項38】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CSPエキスポーターコードオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドであり、前記CSPエキスポーターコードオリゴヌクレオチドが配列番号:25又は27の核酸配列を有する、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
請求項29から38のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、バイオフィルム形成細菌によって引き起こされる細菌感染を治療又は予防する方法。
【請求項40】
請求項29から38のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、歯垢形成を予防する方法。
【請求項41】
請求項29から38のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、歯垢付随細菌によって引き起こされる症状を治療又は予防する方法。
【請求項42】
症状が、う食、歯周病、歯肉炎及び心内膜炎から成る群から選択される、請求項41の方法。
【請求項43】
バイオフィルム形成細菌によって引き起こされる感染の治療用医薬又は感染阻害剤の製造を目的とするCSP阻害因子の使用。
【請求項44】
CSP阻害因子が、バイオフィルム形成を阻害する、S.ミュータンス受容能刺激ペプチド(CSP)のペプチド類似体である、請求項43記載の使用。
【請求項45】
CSP阻害因子が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項43又は44記載の使用。
【請求項46】
ポリペプチドが、配列番号:44のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項45記載の使用。
【請求項47】
CSP阻害因子がCSPに特異的な抗体又はその断片である、請求項43記載の使用。
【請求項48】
抗体がS.ミュータンスCSPに特異的である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
CSP阻害因子が、CSPの発現又は転写を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項43記載の使用。
【請求項50】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CSPコードオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドであり、前記CSPコードオリゴヌクレオチドが配列番号:1の核酸配列を有する、請求項49記載の使用。
【請求項51】
CSP阻害因子が、CSPペプチドの搬出を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項43記載の使用。
【請求項52】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CSPエキスポーターオリゴヌクレオチドの少なくとも10の連続するヌクレオチドと相補的なオリゴヌクレオチドであり、前記オリゴヌクレオチドが配列番号:25又は27の核酸配列を有する、請求項51記載の使用。
【請求項53】
ストレプトコッカス種(Streptococcus spp)のバイオフィルム形成を阻害する組成物であって、前記組成物が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含み、さらに前記ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・サングイス(S. sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(S. gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)、ストレプトコッカス・ミチス(S. mitis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(S. salivarius)、ストレプトコッカス・クリスタトゥス(S. cristatus)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、S.ピオゲネス(S. pyogenes)、及びストレプトコッカス・アガラクチエ(S. agalactiae)から成る群から選択される、前記組成物。
【請求項54】
ペプチドが配列番号:44のアミノ酸配列を有する、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
さらに、表面活性剤、防腐剤及び抗生物質から成る群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項53又は54記載の組成物。
【請求項56】
1μg/mLから100μg/mLの前記ペプチドを含む、請求項53から55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
1μg/mLから10μg/mLのペプチドを含む、請求項53から56のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
1μg/mLから5μg/mLのペプチドを含む、請求項53から57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を阻害する医薬の製造を目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用であって、前記ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・クリスタトゥス、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、及びストレプトコッカス・アガラクチエから成る群から選択される、前記使用。
【請求項60】
ストレプトコッカス種のバイオフィルム形成を予防又は阻害することを目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用であって、前記ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・クリスタトゥス、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、及びストレプトコッカス・アガラクチエから成る群から選択される、前記使用。
【請求項61】
歯垢に付随するストレプトコッカス種によって引き起こされる症状を治療又は予防することを目的とする、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの使用であって、前記ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・クリスタトゥスから成る群から選択される、前記使用。
【請求項62】
症状が、う食、歯肉炎及び心内膜炎から成る群から選択される、請求項61の使用。
【請求項63】
ストレプトコッカス種が肺炎連鎖球菌である、請求項59〜61のいずれか1項に記載の使用。
【請求項64】
ペプチドが配列番号:44のアミノ酸配列を有する、請求項59〜63のいずれか1項に記載の使用。
【請求項65】
その必要がある患者において、ストレプトコッカス種感染を治療又は予防する方法であって、前記方法が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的に有効な量を投与することを含む、前記方法。
【請求項66】
その必要がある患者において、ストレプトコッカス種のバイオフィルムの形成を阻害又は予防する方法であって、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的に有効な量を投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・クリスタトゥス、肺炎連鎖球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、及びストレプトコッカス・アガラクチエから成る群から選択される、請求項65又は66記載の方法。
【請求項68】
その必要がある患者において、歯垢に付随するストレプトコッカス種によって引き起こされる症状を治療又は予防する方法であって、前記方法が、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:44、及び配列番号:47から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドの治療的に有効な量を投与することを含む、前記方法。
【請求項69】
症状が、う食、歯周病、歯肉炎及び心内膜炎から成る群から選択される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
ストレプトコッカス種が、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、ストレプトコッカス・ゴルドニイ、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・サリバリウス、及びストレプトコッカス・クリスタトゥスから成る群から選択される、請求項68又は69記載の方法。
【請求項71】
ペプチドが配列番号:44のアミノ酸配列を有する、請求項65から70のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2−1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図10】
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【図11】
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【図11−1】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2008−522985(P2008−522985A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544708(P2007−544708)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001845
【国際公開番号】WO2006/060903
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507186285)ケイン バイオテック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】