説明

シナカルセト及びその塩の製造方法、並びに該方法に使用する中間体

1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とマンデル酸又はその誘導体との塩の製造方法であって、ラセミの1-ナフチルエチルアミンをマンデル酸又はその誘導体と反応させて、1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体と酸との塩(III)を得ることを含む、前記方法を提供する。該塩はまた、本発明の一態様を形成する。また1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とマンデル酸又はその誘導体との塩を提供する。またシナカルセト(I)又はその塩の製造方法であって、エステル(II)を、(R)-1-ナフチルエチルアミン、又は(R)-1-ナフチルエチルアミンとマンデル酸若しくはその誘導体との塩と反応させて、シナカルセトを得ること、及び任意に該シナカルセトをその塩に変換することを含む、前記方法を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の技術分野)
本発明は、シナカルセト及びその塩の製造方法、並びに該方法に使用する中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
シナカルセト(I)は、カルシウム受容体を活性化することにより、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を低下させるカルシウム模倣薬のクラスに属する。
【化1】

【0003】
シナカルセトは、(R)-N-(3-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロピル)-1-(1-ナプチル)エチルアミンと命名することができる。
SENSIPAR(商標)として市販されるシナカルセト塩酸塩は、副甲状腺機能亢進症を治療するのに使用される。カルシウム模倣薬は、カルシウム受容体のカルシウムに対する感受性を増大させ、副甲状腺ホルモンの放出を阻害し、短時間で副甲状腺ホルモンレベルを低下させる。
【0004】
US6,011,068は、無機イオン受容体、特にカルシウム受容体を開示している。
US6,211,244は特に、シナカルセト、その医薬として許容し得る塩又は複合体、及びその製造方法を開示している。しかし、US6,211,244に開示される方法は、チタンイソプロポキシド、エタノール性又はメタノール性シアノボロヒドリド(ethanolic or methanolic cyanoborohydride)などの可燃性でかつ毒性の試薬の使用を含む。
【0005】
先行技術の方法によって得られるシナカルセトは、完全な純粋ではないことが認められる。それは、微量の出発材料、溶媒混入物、副反応物、及び反応の間に生成された副生成物を含み得る。そのような不純物は、最終生成物の純度の低下を招き、したがって、それらは望ましくない。
X. Wangらの文献、Tetrahedron Letters 45 (2004) 8355-8358は、2つの新規異性体 のジヒドロナフタレン不純物を同定したことを教示している。
【0006】
US20070060645の発明者らは、シナカルセトの合成の間に生成された不純物を同定し、それをカルバミン酸シナカルセト不純物であると指摘した。US20070060645には更に、カルバミン酸不純物を検出するためのHPLC法が記載されている。しかし、カルバミン酸不純物を最小化する方法は提供していない。
WO2008058236には、シナカルセトの合成の間に生成されるデスフルオロ不純物が記載され、これはHPLC分析の間に相対保持時間(RRT)0.9で検出することができる。
上記先行技術文献に記載される全ての不純物は、望ましくなく、かつより高純度の最終生成物を得るために除去する必要がある。したがって、単純で、不純物の生成を回避し、規模の拡大が容易で、かつ容易に入手可能で取り扱いが安全な試薬の使用を含むシナカルセトの製造方法を開発する必要がある。
【0007】
(R)-1-ナフチルエチルアミンは、シナカルセト及びその塩の合成において、鍵となる中間体である。それは、ラセミの1-ナフチルエチルアミンの分割によって得ることができる。US2,996,545には、メタノールの存在下でd-酒石酸を使用して対応する酒石酸塩を得る、1-ナフチルエチルアミンの分割法が記載されている。該酒石酸塩を、分別結晶によって精製し、結晶光学的に純粋な(R)-1-ナフチルエチルアミンが得られる。該結晶化工程は、一定の旋光度及び所望の光学純度が得られるまで、何度も繰り返す必要がある。結晶化の繰り返しは、工業的に実施するのが困難であり、かつ材料の喪失を招く。また(R)-1-ナフチルエチルアミンは、油状の残渣として得られ、蒸留による更なる単離が必要となる。これは、生成物の最終収率に影響する。
【0008】
更にUS2,996,545には、ラセミのアミンの分割にL-リンゴ酸及びD-ショウノウ酸を使用したことが記載されている。これらの光学的に活性な酸はどちらも高価である。それには更に、L-リンゴ酸は、高価であり、その再利用のための回収が困難であり、かつ材料の喪失が大きいため、特にナフチルエチルアミンの分割に不十分であると認められると記載されている。更に、アミンのリンゴ酸塩の精製は、退屈で、高価で、かつアミンの部分的な分割をもたらし、決して完全なものではない。
【0009】
JP58024545は、1-ナフチルエチルアミンの分割のための分割剤として、シス-2-ベンズアミドシクロヘキサンカルボン酸の使用を開示している。
単純で、工業的に適した、1-ナフチルエチルアミンの分割方法の開示はなされていない。本発明は、1-ナフチルエチルアミンの分割方法を提供し、かつシナカルセト及びその塩の新規合成方法も記載する。
【発明の概要】
【0010】
(発明の概要)
本発明の第1の態様により、1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とキラル酸との塩の製造方法であって、ラセミの1-ナフチルエチルアミンをキラル酸と反応させて、1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体の該酸との塩を得ることを含み、該キラル酸がマンデル酸又はその誘導体である、前記方法を提供する。したがって、本発明は、(R)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩又は(S)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩のいずれかの製造方法を提供する。別の態様において、該方法を使用して、1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とマンデル酸の誘導体との塩を製造することができる。
【0011】
一実施態様において、キラル酸はマンデル酸であり、好ましくは、D-(-)-マンデル酸である。
一実施態様において、溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール又はアセトンである。
一実施態様において、溶媒は、エタノールであり、かつ反応生成物は、(R)-異性体の塩である。別の実施態様において、溶媒は、イソプロピルアルコール又はアセトンであり、かつ反応生成物は、(S)-異性体の塩である。
一実施態様において、酸は、(D)-(-)-マンデル酸であり、かつ(D)-(-)-マンデル酸と(R)-又は(S)-1-ナフチルエチルアミンのモル比は、0.4〜1.2の範囲であり、好ましくは、0.7〜1.0モル当量であり、最も好ましくは、該比率は、1.0モル当量である。
【0012】
別の実施態様において、(R)-又は(S)-1-ナフチルエチルアミンの塩は、塩の製造に使用したものと同じ溶媒、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール又はアセトンを使用して精製され得る。一実施態様において、(R)-又は(S)-1-ナフチルエチルアミンの塩は、溶媒中に懸濁され、かつ透明な溶液が得られるまで、50〜60℃の範囲の温度に加熱される。次いで、該透明な溶液を、25〜30℃の範囲の温度まで冷却して、(R)-1-ナフチルエチルアミン塩を単離することができる。
【0013】
一実施態様において、得られる(R)-又は(S)-1-ナフチルエチルアミン塩は、実質的に純粋な異性体形態である。本発明の範囲内において、「実質的に純粋な異性体形態」とは、本質的に1-ナフチルエチルアミンの他の異性体形態を含まないことを意味する。「実質的に純粋な異性体形態」とは、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満の望ましくない異性体不純物を有することを意味し得る。
【0014】
一実施態様において、(R)-又は(S)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩は、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.5%のキラル純度を有する。本明細書中の文脈において、キラル純度は、下記のように算出される。
100×[(R-異性体)/(R-異性体+S-異性体)]
ここで、上記式の「(R-異性体)」とは、R-異性体のモル量を指し、かつ上記式の「(S-異性体)」とは、S-異性体のモル量を指す。キラル純度は、キラルカラムを使用して測定することができる。鏡像異性体の同定は、参照として使用される基準の標品(authentic standard)の保持時間に基づく。計算はピーク面積正規化法による。
【0015】
本発明の別の態様により、(R)-又は(S)-異性体の1-ナフチルエチルアミンとキラル酸との塩であって、該キラル酸が、マンデル酸又はその誘導体である、前記塩を提供する。
一実施態様において、該塩は、(R)-1-ナフチルエチルアミンとキラル酸との塩である。別の実施態様において、該塩は、(S)-1-ナフチルエチルアミンとキラル酸との塩である。
一実施態様において、該キラル酸は、マンデル酸であり、好ましくは、D-マンデル酸である。好ましくは、D-マンデル酸と(R)-1-ナフチルエチルアミンとの塩を提供する。
【0016】
本発明の別の態様により、1-ナフチルエチルアミンの(R)-及び(S)-異性体を相互変換するための方法を提供する。一実施態様において、(R)-又は(S)-異性体は、ラセミの1-ナフチルエチルアミンにラセミ化され、次いで、上記の方法に従い所望の異性体に変換される。一実施態様において、適当な相互変換方法は:(i) 上記のように(R)-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩を製造し、それによって(S)-ナフチルエチルアミンが濃縮された母液を得ること;(ii) 工程(i)から得られた(S)-ナフチルエチルアミンをラセミのナフチルエチルアミンに変換すること;及び(iii) 所望であれば、工程(ii)から得られたラセミの(S)-ナフチルエチルアミンを、上記方法に使用することを含む。
【0017】
シナカルセトは、R-鏡像異性体の形態の化合物である。一実施態様において、1-ナフチルエチルアミンの塩は、(R)-鏡像異性体の形態である。該(R)-鏡像異性体は、シナカルセトの製造方法に使用することができる。該方法は、下記のとおりである。あるいは、1-ナフチルエチルアミンの塩は、(S)-鏡像異性体の形態である。該(S)-鏡像異性体は、シナカルセトの逆の鏡像異性体である化合物の製造方法に使用することができ、該シナカルセトの逆の鏡像異性体の製造方法は、下記のプロセス工程及び条件に従って実施される。
【0018】
本発明の別の態様により、シナカルセト(I)又はその塩の製造方法であって、エステル(II)を、(R)-1-ナフチルエチルアミンと、又はキラル酸と(R)-1-ナフチルエチルアミンとの塩と反応させてシナカルセトを得ること、及び任意に該シナカルセトをその塩に変換することを含む、前記製造方法を提供する。
【化2】

【0019】
好ましくは、エステル(II)と(R)-1-ナフチルエチルアミン又はその塩との反応のための溶媒は、水である。
一実施態様において、該方法は、溶媒である水の存在下で、(R)-1-ナフチルエチルアミンをエステル(II)と反応させることを含む。好適には、反応塊(reaction mass)中に有機溶媒は存在しない。
【0020】
一実施態様において、該キラル酸は、マンデル酸、マンデル酸の誘導体、酒石酸、酒石酸の誘導体、リンゴ酸又はD-ショウノウ酸である。該酸はキラルであるので、該酸は異性体の形態であろう。したがって、該キラル酸は、D-若しくはL-マンデル酸、マンデル酸の誘導体のD-若しくはL-異性体、D-若しくはL-酒石酸、酒石酸の誘導体のD-若しくはL-異性体、D-若しくはL-リンゴ酸、又はD-若しくはL-ショウノウ酸であり得る。好適には、該キラル酸は、D-マンデル酸、L-リンゴ酸又はD-ショウノウ酸である。
好ましくは、該キラル酸は、マンデル酸又はマンデル酸の誘導体である。より好ましくは、該キラル酸は、マンデル酸の異性体である。(R)-1-ナフチルエチルアミンとD-マンデル酸との塩は、驚くほどに有利な特性を有するので、好ましくは、上記方法に使用するキラル酸は、D-(-)マンデル酸である。
【0021】
一実施態様において、シナカルセト又はその塩は、95%を超える、好ましくは、97%を超える、より好ましくは、99%を超える、更により好ましくは、99.5%を超えるHPLC純度を有する。好ましくは、シナカルセト塩酸塩の従来技術の合成中に生成される不純物は、本発明の生成物において検出されない。
一実施態様において、シナカルセトは、その塩に変換される。好適には、シナカルセトは、シナカルセト塩酸塩に変換される。シナカルセトは、該シナカルセトをHClと反応させることによってシナカルセト塩酸塩に変換することができる。該HClは、イソプロピルアルコールを有する溶液の形態であるか、又は乾燥HClガスであり得る。
【0022】
一実施態様において、シナカルセト又はその塩は、例えば、再結晶化によって単離され、かつ実質的に精製される。典型的に、シナカルセトは、シナカルセト塩酸塩に変換され、次いでこれは、適当な有機溶媒に該溶媒の還流温度で溶解すること、該溶液を例えば、20〜30℃の範囲の温度に、典型的には撹拌下で冷却すること、任意に該溶液を例えば、10℃未満の温度まで更に冷却すること、及び沈殿した固体を単離することによって再結晶化される。
有利には、HPLCにより精製されたシナカルセト又はその塩の純度は、99.0%を超える、好ましくは、99.5%を超える、より好ましくは、99.9%を超える。
【0023】
好適には、該反応は、塩基の存在下で実施される。塩基は、有機塩基又は無機塩基であってよい。有機塩基は、脂肪族又は芳香族アミンであってよい。好ましくは、脂肪族アミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジンである。好ましくは、無機塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属重炭酸塩である。好ましくは、アルカリ炭酸塩は、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである。より好ましくは、使用される塩基は、炭酸カリウムである。
【0024】
一実施態様において、エステル(II)と(R)-1-ナフチルエチルアミンの塩との反応は、有機溶媒の非存在下で実施される。
一実施態様において、エステル(II)は、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールをエステル化して、そのエステルを得ることによって製造される。該3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールは、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を還元して、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールを得ることによって得ることができる。該3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸は、3-トリフルオロメチルケイ皮酸を還元することによって得ることができる。
【0025】
したがって、好ましい実施態様において、エステル(II)は、3-トリフルオロメチルケイ皮酸を還元して、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を得ること、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を還元して、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールを得ること、及び3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールをエステル化することによって製造される。
【化3】

【0026】
3-トリフルオロメチルケイ皮酸の還元は、例えば、触媒として二酸化白金、ラネーニッケル又はPd/Cを使用する触媒水素化によって、又は還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化アルミニウムリチウムの存在下で実施することができる。好ましくは、該還元は触媒水素化によって実施される。好ましい触媒は、Pd/Cである。
3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸の還元は、適当な還元剤の存在下で実施することができる。還元剤は、ボランガス、ジボラン、ボランジメチルスルフィドから選択することができる。反応混合物は、典型的にHClで酸性化することができ、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールは、反応塊を適当な有機溶媒で抽出することによって単離することができる。
【0027】
本発明の別の態様により、エステル(II)の製造方法であって、ボランジメチルスルフィドの存在下で3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を還元して、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールを得ること、及び3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールをエステル化して、該エステルを得ることを含む、前記方法を提供する。
【化4】

【0028】
本発明の別の態様により、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト又はその塩を提供する。
本発明の別の態様により、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト又はその塩を提供する。
本発明の別の態様により、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト又はその塩を、1以上の薬として許容し得る賦形剤とともに含む医薬組成物を提供する。
本発明の別の態様により、医薬品に使用するための、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト若しくはその塩、又は上記医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明の別の態様により、副甲状腺機能亢進症の治療に使用するための、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト若しくはその塩、又は上記医薬組成物を提供する。
本発明の別の態様により、副甲状腺機能亢進症の治療用の薬剤の製造に使用するための、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト若しくはその塩、又は上記医薬組成物の使用を提供する。
本発明の別の態様により、副甲状腺機能亢進症の治療方法であって、それを必要とする対象に、上記方法のいずれか1つに従って製造されたシナカルセト又はその塩の治療上許容し得る量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
シナカルセトの合成の間に生成される様々な不純物が存在し得ることは、先行技術文献より明らかである。これらの不純物は、シナカルセトと近い構造的類似性のために、従来技術による分離が困難である。これらの不純物の構造は、以下のように表すことができる。
【化5】

【0031】
本発明は、上記不純物を生成しない、単純で、工業的に拡大可能なシナカルセトの製造方法を提供する。
好ましい実施態様において、本発明は、シナカルセト又はその塩の製造方法を提供する。該方法は、シナカルセトの活性エステル(II)を、(R)-1-ナフチルエチルアミン又はそのキラル酸塩と反応して、シナカルセト又はその塩を得ることを含む。
【0032】
式(II)及び式(III)の化合物の反応を、下記スキーム1に示す。
【化6】

【0033】
本発明の別の好ましい実施態様において、式(II)の化合物と、(R)-1-ナフチルエチルアミン又はそのキラル塩との反応に使用される溶媒は、水である。本発明の方法は、反応におけるいかなる有機溶媒の使用も回避し、このことは該方法を環境に優しいものへとさせる。溶媒としての水の使用は、先行技術の方法で生成される不純物の形成を排除するのに役立つ。
【0034】
上記反応は、塩基の存在下で実施することができる。該塩基は、有機塩基又は無機塩基とすることができる。好ましい有機塩基は、脂肪族及び芳香族アミンからなる群から選択される。好ましくは、脂肪族アミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジンである。好ましい無機塩基は、アルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ金属アルコキシド、又はアルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ金属重炭酸塩である。好ましくは、アルカリ炭酸塩は、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムのいずれかである。最も好ましくは、使用される塩基は、炭酸カリウムである。
【0035】
一実施態様において、水及び塩基は、撹拌下、20〜30℃の温度で、式(II)の化合物に添加される。該混合物は60〜70℃の温度で加熱されて、懸濁液が得られる。この懸濁液に、(R)-1-ナフチルエチルアミン又はそのキラル塩が、撹拌下で添加され、一方で反応が完了するまで、60〜70℃の温度を維持する。反応の完了後、該反応塊は、20〜30℃まで冷却され、適当な有機溶媒、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン、ヘプタン若しくはヘキサン、又はそれらの混合物を用いて抽出される。有機層を分離し、溶媒を真空下での蒸留により該有機層から完全に除去して、シナカルセト塩基(I)を得る。
【0036】
シナカルセト(I)は、例えば、シナカルセトをIPA/HCl又は乾燥HClガスとともに20〜30℃の温度で撹拌することによって、シンカルセト塩酸塩に変換することができる。溶媒を50〜60℃の温度での蒸留により該反応塊から完全に除去して、残渣を得る。該残渣を適当な溶媒又は溶媒混合物に更に懸濁させて、該溶媒又は溶媒混合物の還流温度に加熱して、透明溶液を得る。該透明溶液を撹拌し、10℃未満の温度に冷却する。好ましくは、該冷却温度は、0〜10℃の範囲であり、より好ましくは、0〜5℃の範囲である。これにより、シナカルセト塩酸塩が沈殿する。好適には、沈殿固体を濾過し、50〜65℃の温度で乾燥して、シナカルセト塩酸塩を得る。
【0037】
溶媒は、酢酸エチル、又は溶媒混合物、例えば、エタノールとジイソプロピルエーテルとの混合物、メタノールとヘプタンとの混合物、イソプロピルアルコールとヘプタンとの混合物、若しくはトルエンとヘキサンとの混合物であり得る。最も好ましくは、溶媒は酢酸エチルである。
シナカルセト塩酸塩は更に、適当な有機溶媒に該溶媒の還流温度で溶解させること、撹拌下で20〜30℃の温度に冷却することによって再結晶化することができる。該反応塊を更に10℃未満、好ましくは、0〜10℃の範囲、最も好ましくは、0〜5℃の範囲の温度に冷却して、固体を得ることができる。該固体を真空下で乾燥させて、純粋なシナカルセト塩酸塩(HPLC純度>99.9%)を得る。
【0038】
別の態様において、本発明は、1-ナフチルエチルアミン塩の(R)-異性体の形態の1-ナフチルエチルアミン分割方法を提供する。該方法は、ラセミの1-ナフチルエチルアミンをキラル酸と反応させて、対応する酸との(R)-1-ナフチルエチルアミン塩(III)を得ることを含む。該生成物は、上記のように、シナカルセトの合成における鍵となる中間体として使用される。
【0039】
(R)-1-ナフチルエチルアミン塩の製造は、下記スキーム2のように示すことができる。
【化7】

【0040】
一実施態様において、(R)-1-ナフチルエチルアミン(III)の分割に使用されるキラル酸は、マンデル酸の異性体若しくはその誘導体、又は酒石酸の異性体若しくはその誘導体から選択される。最も好ましくは、使用されるキラル酸は、D-(-)-マンデル酸である。該分割方法及びその生成物は、単純であり、かつ高純度な生成物を与えるため非常に有利である。マンデル酸は、最も好ましい酸である。
D-(-)-マンデル酸と(R)-1-ナフチルエチルアミンとのモル比は、0.4〜1.2、好ましくは、0.7〜1.0のモル当量の範囲であり得、最も好ましくは、該比率は、1.0モル当量である。
【0041】
更に別の実施態様において、1-ナフチルエチルアミンのキラル塩は、本明細書中上記と同じ溶媒を使用して精製することができる。(R)-1-ナフチルエチルアミン塩を溶媒に懸濁させ、透明溶液が得られるまで、50〜60℃の温度で加熱する。次いで、該透明溶液を25〜30℃まで徐々に冷却して、(R)-1-ナフチルエチルアミン塩を単離する。
【0042】
一実施態様において、(R)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩は、少なくとも99.5%のキラル純度を有する。
一実施態様において、1-ナフチルエチルアミン塩の(S)-異性体は、ラセミの1-ナフチルエチルアミンをキラル酸と、イソプロピルアルコール又はアセトンの存在下で反応させて、対応する(S)-1-ナフチルエチルアミンキラル塩(III)を得ることによって、得ることができる。この(S)-異性体は、(S)-シナカルセトの合成における中間体として使用され得る。
1-ナフチルエチルアミンの塩の(R)-及び(S)-異性体は、まずラセミの1-ナフチルエチルアミン塩を形成すること、次いで適当な溶媒を使用して所望の異性体に変換することによって、相互変換できる。
【0043】
下記表1に、1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩の分割における溶媒の効果を記載する。
【表1】

【0044】
本発明の方法に使用される別の重要な中間体は、式(II)の化合物である。それは、下記スキーム3に記載されるように製造することができる。
【化8】

【0045】
出発化合物、すなわち3-トリフルオロメチルケイ皮酸を還元して、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を得る。該還元は、例えば、触媒として二酸化白金、ラネーニッケル又はPd/Cを使用する触媒水素化によって、又は還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化アルミニウムリチウムの存在下で実施することができる。好ましくは、該還元は触媒水素化によって実施される。好ましい触媒は、Pd/Cである。
【0046】
典型的に該還元は、20〜30℃の温度で実施される。H2圧は典型的に1kg/cm2である。典型的に該還元は、5〜15時間の時間で実施される。
該還元に使用される溶媒は、C1-6アルコール、例えば、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールであり得る。好ましい溶媒は、メタノールである。
【0047】
3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸は、適当な還元剤を使用して3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールに更に還元することができる。還元剤は、ボランガス、ジボラン、ボランジメチルスルフィドから選択することができる。好ましい還元剤は、ボランジメチルスルフィドである。
還元に使用される溶媒は、テトラヒドロフラン又はエーテル溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル若しくはメチルtert-ブチルエーテルから選択することができる。好ましい溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0048】
還元は、10℃未満の温度で実施することができる。好ましくは、冷却温度は、0〜10℃、最も好ましくは、0〜5℃の範囲である。
反応混合物は、典型的にHClで酸性化され、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールは、適当な有機溶媒で反応塊を抽出することによって単離することができる。溶媒は、例えば、蒸留することによって除去され、残渣として3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールを得ることができる。
溶媒は、炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、酢酸エチル又はジクロロメタン、好ましくは、トルエンであり得る。
【0049】
3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールは、更に適当な溶媒に懸濁し、20〜30℃の範囲の温度まで冷却することができる。適当な塩基及びエステル化剤を撹拌下で該反応塊に添加し、一方で反応の温度を維持する。
反応の完了後、該反応混合物を濾過し、有機層を分離することができる。該有機層を典型的にはHClで酸性化することができる。式(II)の生成物は、例えば、該反応塊から溶媒を蒸留することによって残渣として単離することができる。
【0050】
エステル化のための溶媒は、炭化水素溶媒、例えば、酢酸エチル、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン又はヘプタンであり、好ましくは、トルエンであり得る。
エステル化に使用される塩基は、有機塩基又は無機塩基であり得る。好ましい有機塩基は、脂肪族及び芳香族アミンからなる群から選択される。好ましくは、脂肪族アミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンである。最も好ましい塩基は、トリエチルアミンである。
【0051】
エステル化剤は、酸ハロゲン化物、例えば、メタンスルホニルクロリド、p-トルイルスルホニルクロリドから選択され得る。
単離された式(II)の活性エステル化合物は、シナカルセトの合成の中間体として使用することができる。
この後に、本発明の非制限的説明のために、以下の実施例が続く。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸の製造)
3-トリフルオロメチルケイ皮酸(0.463mol、100g)を1.0Lのメタノールに溶解し、水素化容器に加えた。5% Pd/C(3g)を加えた。該反応塊を25℃の温度、1kg/cm2のH2圧で10時間水素化した。反応の完了後、容器の内容物を濾過し、メタノール(100ml)で洗浄した。メタノールを濾過物質から蒸発させて、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸の残渣を得た(100g、収率100%)。
【0053】
(実施例2)
(3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールの製造)
実施例1から得られた化合物(0.463mol、100g)を、撹拌下で500mlのテトラヒドロフランに懸濁させた。該反応塊を0〜5℃に冷却した。ボランジメチルスルフィド溶液の94%溶液(0.62mol、50ml)を、0〜5℃の温度を維持しながら滴加した。該反応塊を25〜30℃で約10時間撹拌した。10% HCl(100ml)を該反応塊に25〜30℃、約2時間で滴加し、次いでトルエン(2×250ml)で抽出した。有機層を分離し、水(5×500ml)で洗浄した。トルエンを真空下での蒸留によって該有機層から完全に除去して、表題化合物をオイルとして単離した(85g、収率90%)。
【0054】
(実施例3)
(3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-メタンスルホナート-エステル(II)の製造)
実施例2の表題化合物(0.416mol、85g)をトルエンに25〜30℃で懸濁させ、20℃まで冷却した。トリエチルアミン(0.75mol、105ml)を撹拌下20〜25℃で加えた。メタンスルホニルクロリドのトルエン溶液(90ml中、0.55mol、63g)を2時間以内に反応塊に滴加した。該反応塊を濾過し、トルエン(2×100ml)で洗浄した。有機層を分離し、1N HCl(2×100ml)次いで水で洗浄した。トルエンを真空下で該有機層から蒸留して、表題化合物をオイルとして得た(110g、収率93%)。
【0055】
(実施例4)
((R)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩の製造)
ラセミの1-ナフチルエチルアミン(2.63mol、450g)をエタノール(3.1L)に懸濁させた。D-マンデル酸(2.63mol、400g)を撹拌下で加えた。純粋な(R)-ナフチルエチルアミンマンデルマンデラート(3〜4g)を種として添加し、透明溶液が得られるまで55〜60℃で加熱した。該溶液を25〜30℃に徐々に冷却し、約12時間撹拌して固体を得た。該固体をエタノール(2.3L)に懸濁させ、55〜60℃の温度で約30分間加熱した。該懸濁液を25〜30℃に徐々に冷却し、固体が得られるまで撹拌した。該固体をエタノールで洗浄し、50〜55℃で乾燥させて、表題化合物を得た(250g、収率70%、キラル純度>99.0%)。
【0056】
(実施例5)
((S)-1-ナフチルエチルアミンマンデル酸塩の製造)
ラセミの1-ナフチルエチルアミン(2.63mol、450g)をイソプロピルアルコール(3.1L)に懸濁させた。D-マンデル酸(1.32mol、200g)を撹拌下で加えて、透明溶液が得られるまで55〜60℃で加熱した。該溶液を25〜30℃に徐々に冷却し、約12時間撹拌して固体を得た。該固体をイソプロピルアルコール(2.3L)に懸濁させ、55〜60℃の温度で約30分間加熱した。該懸濁液を25〜30℃に徐々に冷却し、固体が得られるまで撹拌した。該固体をイソプロピルアルコールで洗浄し、50〜55℃で乾燥させて、表題化合物を得た(225g、収率62%、キラル純度>99.0%)。
【0057】
(実施例6)
((R)-1-ナフチルエチルアミンの塩からのシナカルセト塩基の製造)
精製水(400ml)を反応容器に加えた。炭酸カリウム(0.77mol、107g)及び実施例3の生成物(0.39mol、110g)を撹拌下で加えた。該反応混合物を60〜65℃に加熱した。実施例4から得られた化合物(0.26mol、83g)を、撹拌下で20時間、該反応塊の温度を60〜65℃に維持しながら加えた。該反応塊を20〜25℃の温度に冷却後、酢酸エチル(850ml)を添加し、撹拌した。分離した有機層を、精製水(2×400ml)、次いで飽和ブライン溶液(2×400ml)で洗浄した。溶媒を真空下での蒸留によって該有機層から除去して、シナカルセト塩基を得た(91g、収率100%)。
【0058】
(実施例7)
((R)-1-ナフチルエチルアミン遊離塩基からのシナカルセト塩基の製造)
精製水(375ml)を反応容器に加えた。炭酸カリウム(0.88mol、121g)及び実施例3の生成物(0.53mol、150g)を撹拌下で加えた。該反応混合物を60〜65℃に加熱した。(R)-1-ナフチルエチルアミン(0.44mol、75g)を、撹拌下で約17時間、該反応塊の温度を60〜65℃に維持しながら加えた。該反応塊を20〜25℃に冷却後、酢酸エチル(2×250ml)を添加し、撹拌した。分離した有機層を、精製水(2×300ml)、次いで飽和ブライン溶液(2×300ml)で洗浄した。溶媒を真空下での蒸留によって該有機層から除去して、シナカルセト塩基を得た(97g)。
【0059】
(実施例8)
(シナカルセト塩酸塩の製造)
シナカルセト(0.25mol、91g)を反応容器に加え、IPA/HCl(85ml)を滴加し、約15分間撹拌した。溶媒を高真空下50〜55℃で蒸留して、残渣を得た。該残渣を酢酸エチル(516ml)に懸濁させ、透明溶液が得られるまで還流温度で加熱し、該溶液を約30分間撹拌した。該溶液を0〜5℃に冷却し、撹拌して、固体を得た。該固体を酢酸エチル(2×85ml)で洗浄し、55〜60℃で乾燥させて表題化合物を得た(70g、収率70%、HPLC純度=98.5%)。
【0060】
(実施例9)
(シナカルセト塩酸塩の製造)
精製水(200ml)を反応容器に加えた。炭酸カリウム(0.39mol、54g)及び実施例3の生成物(0.19mol、55g)を撹拌下で加えた。該反応混合物を60〜65℃に加熱した。実施例4から得られた化合物(0.13mol、42g)を、撹拌下で20時間、該反応塊の温度を60〜65℃に維持しながら加えた。該反応塊を20〜25℃の温度に冷却後、酢酸エチル(420ml)を加え、撹拌した。分離した有機層を精製水(2×200ml)、次いで飽和ブライン溶液(2×200ml)で洗浄した。該有機層にIPA/HCl(45ml)を滴加し、約30分間撹拌した。該溶液を高真空下50〜55℃で蒸留して、残渣を得た。該残渣を酢酸エチル(260ml)に懸濁させ、透明溶液が得られるまで還流温度に加熱し、該溶液を約30分間撹拌した。該溶液を0〜5℃まで冷却し、撹拌して固体を得た。該固体を冷酢酸エチル(2×45ml)で洗浄し、55〜60℃で乾燥させて、表題化合物を得た(36g)。
【0061】
(実施例10)
(シナカルセト塩酸塩の製造)
シナカルセト塩酸塩(70g)を酢酸エチル(700ml)に還流温度で溶解させた。該溶液を80℃で部分的に蒸留した。該懸濁液を冷却し、約2〜3時間撹拌した。該懸濁液を0〜5℃に更に冷却し、約2時間撹拌して、固体を得た。該固体を冷酢酸エチルで洗浄し、55〜60℃で乾燥させて、シナカルセト塩酸塩を得た(64g、HPLC純度=99.96%、キラル純度=99.0%)。
本発明は添付の特許請求の範囲内で修正され得ることが、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とマンデル酸との塩の製造方法であって、ラセミの1-ナフチルエチルアミンをマンデル酸と反応させて、1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体と該酸との塩を得ることを含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記反応用の溶媒が、エタノール、イソプロピルアルコール又はアセトンである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、エタノールであり、かつ前記反応の生成物が、(R)-異性体の塩である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、イソプロピルアルコール又はアセトンであり、かつ前記反応の生成物が、(S)-異性体の塩である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
1-ナフチルエチルアミンの(R)-又は(S)-異性体とマンデル酸との塩。
【請求項6】
(R)-1-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩である、請求項5記載の塩。
【請求項7】
(S)-1-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩である、請求項5記載の塩。
【請求項8】
前記マンデル酸が、D-マンデル酸である、請求項5、6又は7記載の塩。
【請求項9】
シナカルセト(I)又はその塩の製造方法であって、エステル(II)を、マンデル酸と(R)-1-ナフチルエチルアミンとの塩と反応させて、シナカルセトを得ること、及び任意に該シナカルセトをその塩に変換することを含む、前記製造方法:
【化1】


【請求項10】
前記エステル(II)と塩との反応用の溶媒が、水である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記キラル酸が、D-(-)-マンデル酸である、請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
前記シナカルセトが、その塩に変換される、請求項9、10又は11記載の製造方法。
【請求項13】
前記シナカルセトが、シナカルセト塩酸塩に変換される、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記シナカルセト又はその塩が、単離され、その後に再結晶化される、請求項9〜13のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項15】
前記反応が、有機塩基及び無機塩基から選択される塩基の存在下で行われる、請求項9〜14のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項16】
前記塩基が、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選択される、請求項15記載の製造方法。
【請求項17】
前記エステル(II)が、3-トリフルオロメチルケイ皮酸を還元して3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を得ること、該3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸を3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールに還元すること、及び該3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン-1-オールをエステル化することによって製造される、請求項9〜16のいずれか一項記載の製造方法:
【化2】


【請求項18】
前記エステル(II)と(R)-1-ナフチルエチルアミンの塩との反応が、有機溶媒の非存在下で行われる、請求項9〜17のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項19】
マンデル酸と(R)-1-ナフチルエチルアミンとの塩が、請求項1〜4のいずれか一項に従って製造される、請求項9〜18のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項20】
シナカルセト又はその塩の製造方法における、請求項5〜8のいずれか一項記載の塩の使用。
【請求項21】
(i) 請求項1、2又は3に記載の(R)-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩を製造し、かつ(S)-ナフチルエチルアミンが濃縮された母液を得ること;(ii) 工程(i)から得られた(S)-ナフチルエチルアミンをラセミのナフチルエチルアミンに変換すること;及び(iii) 所望であれば、請求項1、2又は4に記載の方法において工程(ii)から得られたラセミの(S)-ナフチルエチルアミンを使用することを含む、方法。
【請求項22】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される、方法。
【請求項23】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される、シナカルセト又はその塩。
【請求項24】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される、(R)-1-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩。
【請求項25】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される、(S)-1-ナフチルエチルアミンとマンデル酸との塩。

【公表番号】特表2012−519677(P2012−519677A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552506(P2011−552506)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000392
【国際公開番号】WO2010/100429
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511109180)シプラ・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】