説明

シフト操作用スイッチ装置

【課題】車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供する。
【解決手段】プッシュボタンにより車両10のシフト装置50のシフト位置を選択するスイッチ部200と、スイッチ部200のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出するリニアエンコーダ260と、シフト位置に応じてスイッチ部200のプッシュ操作に対する反力の呈示を定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態で制御を行なう制御部300、を有してシフト操作用スイッチ装置100を構成する。例えば、車両がシフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、スイッチ部200のシフト位置のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を増大させる制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト操作用のスイッチ装置に関し、特に、押しボタン式のシフト操作用スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の自動変速機であるシフト装置は、一般にシフトレバーを操作することにより自動変速機の操作を行なっているが、近年、この自動変速機の操作を電気的に行なうことでシフト操作を行なう、いわゆる、バイワイヤ方式のシフト装置が提案されている。
【0003】
例えば、パームレストとその周辺にプッシュボタンスイッチが配置されて設けられたシフト操作用スイッチ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。このシフト操作用スイッチ装置は、プッシュボタンスイッチとして、親指位置に対応するRボタンスイッチ、人指し指位置に対応するPボタンスイッチ、中指位置に対応するNボタンスイッチ、薬指位置に対応するDボタンスイッチが設けられている。
【0004】
このシフト操作用スイッチ装置によれば、誤操作防止用のSボタンスイッチが小指位置と対応する位置に設けられ、R、P、N、Dの各ボタンスイッチのいずれかと誤操作防止用のSボタンスイッチとの2つの信号により、制御部により変速機の接続状態を切換えるので、操作ミスや落下物による誤操作を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−254950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のシフト操作用スイッチ装置は、例えば、Dレンジで走行中に、他のボタンスイッチ、例えば、Pボタンスイッチを押すことが可能である。上記のSボタンスイッチが同時に押された状態でない場合は有効なシフト操作とされないので、安全上は問題ないが、シフト操作時の安心感を得られない場合があった。また、誤操作を抑制するプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置が要望されていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、プッシュボタンにより車両のシフト装置のシフト位置を選択するスイッチ部と、前記スイッチ部のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出する操作状態検出部と、前記シフト位置に応じてスイッチ部のプッシュ操作に対する反力の呈示を定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態で制御を行なう反力制御部と、を有することを特徴とするシフト操作用スイッチ装置を提供する。
【0009】
[2]前記反力制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を増大させる制御を行なうことを特徴とする上記[1]に記載のシフト操作用スイッチ装置であってもよい。
【0010】
[3]また、前記反力制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を節度感の変化または振動感の呈示により制御を行なうことを特徴とする上記[1]に記載のシフト操作用スイッチ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の車両内での配置例を示す配置図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の外観を示す図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のブロック構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の縦断面(図2のAA断面)図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の横断面(図4のBB断面)図である。
【図6】図6(a)は、コイルが非通電状態においてボタン及びスライド軸に作用する力を示す力関係図であり、図6(b)は、コイルが非通電状態における磁束の状態を説明する図5に示した断面における磁気回路説明図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のボタンの押込み量xと操作荷重fとの関係を示す図である。
【図8】図8(a)は、コイルが通電状態においてボタン及びスライド軸に作用する力を示す力関係図であり、図8(b)は、コイルが通電状態における磁束の状態を説明する図5に示した断面における磁気回路説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100の車両内での配置例を示す配置図である。本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100は、プッシュボタンにより車両10のシフト装置50のシフト位置を選択するスイッチ部200と、スイッチ部200のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出する操作状態検出部であるリニアエンコーダ260と、シフト位置に応じてスイッチ部200のプッシュ操作に対する反力の呈示を定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態で制御を行なう反力制御部300と、を有して概略構成されている。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のスイッチ部200の外観を示す図1の部分拡大図である。このスイッチ部200は、図1に示すように、例えば、車両10のインスツルメントパネル20やセンタークラスタ30に備えられる。また、ステアリング40又はその周囲に配置される構成でもよい。
【0015】
シフト操作用スイッチ装置100は、例えば、車両がシフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、スイッチ部200のシフト位置のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を増大させる制御を行なう。すなわち、プッシュボタンのプッシュ操作時の操作荷重f(反力呈示)を大きく(重く)することにより、車両走行中にプッシュ操作が禁止される操作を操作者に呈示し、誤操作しないという安心感を付与することができる。
【0016】
シフト装置50のシフト位置は、車両10の走行モードを選択(セレクト)する位置であって、図2で示すスイッチ部200の各プッシュボタンであるPボタン210A、Rボタン210B、Nボタン210C、Dボタン210Dに対応した、例えば、Pレンジ(パーキングレンジ)、Rレンジ(リバースレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)Dレンジ(ドライブレンジ)等のレンジからなる。また、プッシュ操作が禁止される操作は、例えば、車両10が所定の速度以上(例えば、一定速度である時速11km/h以上)で走行している場合に、DレンジからPレンジまたはRレンジへシフト位置を選択する(レンジを切り替える)操作である。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のブロック構成図である。スイッチ部200は、シフトECU(Electronic Control Unit)400に接続されて、後述するボタンの押込み量Xに対応してリニアエンコーダ260の出力VPX、VRX、VNX、VDXを出力し、また、シフトECU400からコイルへの通電制御電流I、I、I、Iが供給される。
【0018】
シフトECU400は、シフト操作用スイッチ装置100の各プッシュボタン210A〜210Dの操作荷重を制御して操作者に呈示する操作反力を制御する反力制御部300を備える。また、シフトECU400は、シフト装置50及びエンジンECU(Electronic Control Unit)60と接続されている。
【0019】
シフト装置50は、車両10のオートマチックトランスミッションであり、シフトレンジの切替えを行なうシフト切替えアクチュエータ52、シフト位置を検出するシフト位置検出部54等を備えている。シフト切替えアクチュエータ52は、シフトECU400から送出されるシフト切替え信号Vcに基づいて動作し、ギヤトレーンの接続状態を切替えることにより、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ等のレンジ切替え、すなわち、車両10のシフトチェンジを行なう。また、シフト位置検出部54は、切替えられたシフト位置を検出して、そのシフト位置をシフト位置信号VshとしてシフトECU400に送出する。
【0020】
エンジンECU60は、図示省略するエンジン装置に接続されて種々のエンジン制御を行なうが、シフトECU400に対して、エンジンの回転数等から車速を検出して車速信号Vsを送出する。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のスイッチ部200の縦断面(図2のAA断面)図である。また、図5は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のスイッチ部200の横断面(図4のBB断面)図である。以下、図4及び図5に基づいて、図2で示すスイッチ部200のRボタン210Bの部分の構成と動作を説明するが、他のボタン210A、210C、210Dについても同様の構成である。
【0022】
操作者がプッシュ操作するRボタン210Bは、上部がパネル220の外部に突出した状態で設けられている。Rボタン210Bには、非磁性材料で形成されたスライド軸212Bが取り付けられており、このスライド軸212Bは、ベース230に取り付けられた非磁性材料で形成されたスライドガイドポール240Bのガイド穴241Bに沿ってスライド移動可能に支持されている。Rボタン210Bの下面211Bとスライドガイドポール240Bの上面242Bの間にはスプリング216Bが設けられている。これにより、操作者がRボタン210Bをプッシュ操作するとスプリング力により反力を受け、図4(a)に示す初期位置に復帰する構成とされている。
【0023】
スライド軸212Bの中央付近には、その軸方向と直交する方向、すなわち、円筒面を貫通するようにマグネット(永久磁石)214Bが埋設され固定されている。マグネット214Bは、例えば、ネオジウム磁石が使用でき、図5に示すように、その貫通方向に着磁されている。N極、S極の磁石端面は、スライド軸212Bの円筒面と略面一とされている。尚、マグネット214BのN極、S極が一定の方向を維持するように、スライド軸212Bの回転方向には、図示省略する回転規制部が設けられている。
【0024】
図4に示すように、マグネット214Bと同じ高さの位置(初期位置)に電磁アクチュエータ250Bが設けられている。この電磁アクチュエータ250Bは、ヨーク252Bと電磁コイル254Bとから構成されている。この電磁アクチュエータ250Bは、図4、5に示すように、同じ構成のものが向かい合わせで組み合せられてそれぞれ一対として使用される。
【0025】
ヨーク252Bは、ケイ素鋼板等の高透磁率材料で形成されている。マグネット214BのN極(S極)に対向する部分にはセンターポール部252Baが形成され、一対の電磁アクチュエータのもう一方に磁路が通じるように周囲にヨークが曲設されて、図5に示すように、略E字形状に形成されている。すなわち、図5に示すように、センターポール部252Baおよび側部252Bbは、それぞれ基部252Bcに一体的に接続されて、略E字形状に形成されている。センターポール部252Baから基部252Bcを通って両側の側部252Bbへは磁路を形成し、一対のヨーク252Bおよびマグネット214Bにより、ギャップ部Gpを介して略閉じた磁路が形成される。
【0026】
センターポール部252Baには、電磁コイル254Bがその周囲を巻回するように設けられている。電磁コイル254Bは、銅線あるいはアルミ線等が多数回だけ巻回されてコイル形状に形成され、センターポール部252Baを取り巻くように装着されている。この電磁コイル254Bに通電すると、右ねじの法則に従って、コイルを貫通する方向にヨーク252B内に磁束が発生する。
【0027】
プッシュ操作によるRボタン210Bの押込み量Xを検出するために、スライド軸212Bに設けられたリニアスケール261Bとスライドガイドポール240Bに設けられた光学部262Bによりリニアエンコーダ260Bが形成されている。光学部262Bから発光された光をリニアスケール261Bで反射し、この反射光を光学部262Bで受光することで、スライド軸212Bの移動量、すなわち、Rボタン210Bの押込み量Xを検出する。この押込み量Xは、例えば初期位置をゼロとして出力される。
【0028】
(定常時におけるプッシュ操作に対する反力呈示)
図6(a)は、コイルが非通電状態においてボタン及びスライド軸に作用する力を示す力関係図であり、図6(b)は、コイルが非通電状態における磁束の状態を説明する図5に示した断面における磁気回路説明図である。定常時においては、Rボタン210Bをプッシュ操作すると、図6(a)に示すように、押込み量XだけRボタン210Bおよびスライド軸212Bが下方向に移動する。このときプッシュ操作に要する操作荷重fは、スプリング216Bによる復帰力fsとマグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I=0〕との和である。
【0029】
定常時においては、コイルが非通電状態であるので、図6(b)に示すように、ヨーク252Bの中の磁束は、マグネット214BのN極から図に示す矢印に沿ってS極に還流する永久磁石による磁束だけである。
【0030】
図7は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のボタンの押込み量Xと操作荷重fとの関係を示す図である。上記説明したように、操作荷重fは、操作荷重f=fs+f〔I=0〕である。スプリング216Bによる復帰力fsの初期値(X=0での復帰力)をf0とすると、電磁アクチュエータ250Bによる復帰力がf〔I=0〕の場合で図示したような操作荷重曲線を描く。すなわち、定常時のプッシュ操作では、略リニアなスプリング216Bによる復帰力fsにマグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I=0〕が重畳された操作荷重曲線に基づいて、操作荷重に対する反力呈示を操作者が受ける。
【0031】
(非定常時におけるプッシュ操作に対する反力呈示)
図8(a)は、コイルが通電状態においてボタン及びスライド軸に作用する力を示す力関係図であり、図8(b)は、コイルが通電状態における磁束の状態を説明する図5に示した断面における磁気回路説明図である。非定常時においては、コイルが図7に示すようなf−X特性となるような通電制御がされるので、図8(b)に示すように、ヨーク252Bの中の磁束は、マグネット214BのN極から図に示す矢印に沿ってS極に還流する永久磁石による磁束と電磁コイル254Bにより発生する磁束との和となる。電磁コイル254Bにより発生する磁束をマグネット214Bによる磁束と同じ方向に発生させると復帰力fを増加させることができ、また、逆の方向に発生させることにより復帰力fを減少させることができる。
【0032】
これにより非定常時においては、シフト位置に応じてコイルを通電制御することで、プッシュボタンのプッシュ操作時の操作荷重f(反力呈示)を大きく(重く)等することができ、車両走行中にプッシュ操作が禁止される操作を操作者に呈示し、誤操作しないという安心感を付与することができる。定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態は、例えば、以下に示すような、操作荷重の増大を伴う反力呈示、節度感の変化を伴う反力呈示、振動の付与を伴う反力呈示等の場合である。
【0033】
(操作荷重の増大を伴う反力呈示)
操作荷重fは、操作荷重f=fs+f〔I1(x)〕である。非定常時のプッシュ操作では、略リニアなスプリング216Bによる復帰力fsにマグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I1(x)〕が重畳された操作荷重曲線に基づいて、操作荷重に対する反力呈示を操作者が受ける。ここで、マグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I1(x)〕は、電磁コイル254Bへの通電制御により、押込み量Xの増加に伴い増加し、図7に示すf〔I1(x)〕の場合のような操作荷重を増大させる操作荷重曲線とされる。これにより、車両走行中にプッシュ操作が禁止される場合には、プッシュ操作において操作荷重が大きくなり、スイッチ部200のプッシュ操作に対する反力の呈示が定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態となる。
【0034】
(節度感の変化を伴う反力呈示)
操作荷重fは、操作荷重f=fs+f〔I2(x)〕である。非定常時のプッシュ操作では、略リニアなスプリング216Bによる復帰力fsにマグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I2(x)〕が重畳された操作荷重曲線に基づいて、操作荷重に対する反力呈示を操作者が受ける。ここで、マグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I2(x)〕は、電磁コイル254Bへの通電制御により、押込み量Xの増加に伴い一旦増加した後にボタン操作ONの位置X1付近で減少し、図7に示すf〔I2(x)〕の場合のような操作荷重が節度感を有する操作荷重曲線とされる。これにより、車両走行中にプッシュ操作が禁止される場合には、プッシュ操作において節度感が付与され、スイッチ部200のプッシュ操作に対する反力の呈示が定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態となる。
【0035】
(振動の付与を伴う反力呈示)
操作荷重fは、操作荷重f=fs+f〔I3(x)〕である。非定常時のプッシュ操作では、略リニアなスプリング216Bによる復帰力fsにマグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I3(x)〕が重畳された操作荷重曲線に基づいて、操作荷重に対する反力呈示を操作者が受ける。ここで、マグネット214Bの初期位置への復帰力f〔I3(x)〕は、電磁コイル254Bへの通電制御により、押込み量Xの増加に伴いボタン操作ONの位置X1の手前において、図7に示すf〔I3(x)〕の場合のような操作荷重が上下に振れて振動感を有する操作荷重曲線とされる。これにより、車両走行中にプッシュ操作が禁止される場合には、プッシュ操作において振動感が付与され、スイッチ部200のプッシュ操作に対する反力の呈示が定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態となる。
【0036】
図9は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の動作フローを示すフローチャートである。これに基づいて反力制御部300によるスイッチ部200の反力制御動作を説明する。
【0037】
(Step1)
スイッチ部200の反力制御動作がスタートすると、まず、反力制御部300は、Dボタン(「D」SW)210Dが選択されているかどうかを判断する。選択されているかどうかは、例えば、リニアエンコーダ260の出力VDXから図7で示した押込み量がX1に達してボタン操作ONの状態となっているかどうか、または、シフト装置50から入力されるシフト位置信号Vshに基づいて判断できる。Dボタン210Dが選択されていると判断された場合はStep2へ進み、Dボタン210Dが選択されていると判断されない場合は反力制御動作を終了する。
【0038】
(Step2)
Dボタン210Dが選択されている場合は、シフトECU400は、エンジンECU60から入力される車速信号Vsに基づいて、車両10が一定速度以上(例えば、時速11km/h以上)で走行しているかどうかを判断する。一定速度以上で走行していると判断された場合はStep4へ進み、一定速度以上で走行していると判断されない場合はStep3へ進む。
【0039】
(Step3)
シフトECU400は、Dボタン(「D」SW)210D以外が選択されていると判断された場合は反力制御動作を終了し、選択されていると判断されない場合はStep2へ戻る。
【0040】
(Step4)
シフトECU400の反力制御部300は、Pボタン(「P」SW)210A、Rボタン(「R」SW)210Bの操作荷重をUPする。すなわち、図3で示すコイルへの通電制御電流IまたはIを制御することにより、図7で示した操作荷重f=fs+f〔I1(x)〕を呈示する。これにより、車両10が所定の速度(時速11km/h)で走行している場合に、DレンジからPレンジまたはRレンジへシフト位置を選択する(レンジを切り替える)操作を禁止するよう反力提示し、誤操作しないという安心感を付与することができる。尚、定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態は、上記示した操作荷重の増大以外に、図7で示した操作荷重f=fs+f〔I2(x)〕による節度感の変化を伴う反力呈示、f=fs+f〔I3(x)〕による振動の付与を伴う反力呈示等がある。
【0041】
(Step5)
シフトECU400は、Nボタン(「N」SW)210Cが選択されたかどうかを判断する。選択されたと判断された場合は反力制御動作を終了し、選択されたと判断されない場合はStep2へ戻る。
【0042】
上記のシフトECU400(反力制御部300)による一連の反力制御動作は、車両10の走行中は、繰返して実行される。
【0043】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100によれば、次のような効果を有する。
(1)シフトECU400の反力制御部300が、シフト位置に応じてレンジ切り替え操作を禁止するよう反力提示する。これにより、ユーザは、シフト位置の変更を禁止されているボタン操作を認識し、適切なシフト操作を行なうことが可能となる。
(2)レンジ切り替え操作を禁止する反力提示は、電磁アクチュエータ250を種々の制御パターンで制御することにより行なうことができる。これにより、スイッチ部200のプッシュ操作において、定常時の反力呈示と異なる種々の反力呈示状態で制御を行なうことが可能である。この反力呈示状態は、ユーザが予め設定しておくこおとも可能であり、車両走行中の禁止操作を確実に認識することが可能となる。
(3)車両の走行中に操作しにくい構造にすることにより、ユーザに誤操作できない安心感を与えることができる。
(4)また、ユーザが誤ってボタンを押した場合に、突然パニック状態になることを防ぐ効果も期待できる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本実施の形態では、車両10がエンジンECU60を備えたものとして説明したが、HV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)への適用も可能である。HV(ハイブリッド車)の場合は、エンジンECU60がハイブリッド制御用のモータECUに置き換わるが、エンジンおよびモータのレンジ切り替え操作を行なうためのシフト操作用スイッチ装置として本発明が適用可能である。また、EV(電気自動車)の場合は、シフト装置50、エンジンECU60が電気制御のためのモータ、モータECUにそれぞれ置き換わるが、モータのレンジ切り替え操作を行なうためのシフト操作用スイッチ装置として本発明が適用可能である。
【0045】
これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10…車両
20…インスツルメントパネル
30…センタークラスタ
40…ステアリング
50…シフト装置
52…シフト切替えアクチュエータ
54…シフト位置検出部
60…エンジンECU
100…シフト操作用スイッチ装置
200…スイッチ部
210…ボタン
210A、210B、210C、210D…Pボタン、Rボタン、Nボタン、Dボタン
211、211A、B、C、D…下面
212、212A、B、C、D…スライド軸
214、214A、B、C、D…マグネット
216、216A、B、C、D…スプリング
220…パネル
230…ベース
240、240A、B、C、D…スライドガイドポール
241、241A、B、C、D…ガイド穴
242、242A、B、C、D…上面
250、250A、B、C、D…電磁アクチュエータ
252、252A、B、C、D…ヨーク
252Aa、252Ba、252Ca、252Da…センターポール部
252Ab、252Bb、252Cb、252Db…側部
252Ac、252Bc、252Cc、252Dc…基部
254、254A、B、C、D…電磁コイル
260、260A、B、C、D…リニアエンコーダ
261、261A、B、C、D…リニアスケール
262、262A、B、C、D…光学部
300…反力制御部
400…シフトECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュボタンにより車両のシフト装置のシフト位置を選択するスイッチ部と、
前記スイッチ部のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出する操作状態検出部と、
前記シフト位置に応じてスイッチ部のプッシュ操作に対する反力の呈示を定常時の反力呈示と異なる反力呈示状態で制御を行なう反力制御部と、
を有することを特徴とするシフト操作用スイッチ装置。
【請求項2】
前記反力制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を増大させる制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のシフト操作用スイッチ装置。
【請求項3】
前記反力制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作に対する反力の呈示を節度感の変化または振動感の呈示により制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のシフト操作用スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216113(P2012−216113A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81622(P2011−81622)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】