説明

シミュレーション装置

【課題】制御プログラムに基づく制御対象機器の挙動を具体的かつ全体的に確認することができるシミュレーション装置を提供する。
【解決手段】表示手段4に表示される仮想空間に制御対象機器の挙動を模擬可能な要素を仮想的に配置して仮想配置モデルを作成する仮想配置モデル作成手段542と、仮想配置モデル上の要素の属性を設定する要素属性設定手段543と、制御プログラムの実行に伴う出力信号と要素に入力される仮想配置モデル上の仮想入力信号とを関連付けると共に、要素の挙動により出力される仮想配置モデル上の仮想出力信号と制御プログラムが受ける入力信号とを関連付ける関連手段544と、を備え、関連手段544により制御プログラムと関連付けられた要素が制御プログラムの実行に伴い仮想配置モデル上を挙動する様子が表示手段4に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
制御プログラムによる制御対象機器の制御をシミュレーションするシミュレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産、物流等のシステムは、例えば特開平10−124110号公報(特許文献1)に記載されているように、シーケンス制御のプログラム(制御プログラム)によって制御される複数の制御対象機器で構成されている。
【0003】
ここで、制御プログラムのチェックは、一般に、仮想的に入力信号を与えて部分的に制御プログラムを実行するなどにより行っている。そして、正しく信号が出力されているかを専用のモニタツールやオシロスコープでチェックする方法が採用されている。
【特許文献1】特開平10−124110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、上記表示手段により、入出力信号のタイミングは目で見て確認することができるが、その信号によって制御対象機器がどのように挙動するかは目で見て確認することができない。そして当然、制御対象機器が制御プログラムに基づく信号を受けて移動した際の当該移動距離や、複数の制御対象機器を同時に制御して動かした際の干渉の有無などは確認することができない。
【0005】
このように従来の方法は、制御プログラムのテスト等(シミュレーション)において、制御対象機器の具体的かつ全体的な挙動の確認が困難であった。従って、具体的かつ全体的な挙動の確認を行うには、実際の制御対象機器でテストすることになり、誤作動によって機器が破損してしまう虞もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、制御プログラムに基づく制御対象機器の挙動を具体的かつ全体的に確認することができるシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシミュレーション装置は、入力手段と、表示手段と、外部の制御対象機器を制御するための制御プログラムを実行する制御プログラム実行手段とを備え、制御対象機器と接続可能なコンピュータからなる制御シミュレーション装置であって、さらに、表示手段に表示される仮想空間に制御対象機器の挙動を模擬可能な要素を仮想的に配置して仮想配置モデルを作成する仮想配置モデル作成手段と、仮想配置モデル上の要素の属性を設定する要素属性設定手段と、制御プログラムの実行に伴う出力信号と要素に入力される仮想配置モデル上の仮想入力信号とを関連付けると共に、要素の挙動により出力される仮想配置モデル上の仮想出力信号と制御プログラムが受ける入力信号とを関連付ける関連手段と、 を備え、関連手段により制御プログラムと関連付けられた要素が制御プログラムの実行に伴い仮想配置モデル上を挙動する様子が表示手段に表示されることを特徴とする。入力手段は、キーボード、および、マウス等のポインティングデバイスなどである。
【0008】
これにより、ユーザーは、実際に制御対象機器を動かすことなく、制御プログラムに基づいた制御対象機器の挙動を仮想空間上で確認することができる。つまり、誤動作があった場合でも、実際の制御対象機器を破損させることはない。ユーザーは、制御対象機器が移動した際の移動距離や、複数の制御対象機器を同時に動かした際の干渉の有無などを、表示手段上で確認することができる。つまり、ユーザーは、仮想配置モデルにより、設計図面全体の挙動が容易に確認できる。本発明によれば、制御対象機器の挙動を具体的かつ全体的に表現しシミュレーションすることができる。
【0009】
ここで、本発明のシミュレーション装置は、さらに、仮想配置モデル上で制御の対象でない制御対象機器以外を模擬表示した非制御要素を制御する非制御対象用プログラムを記憶する非制御対象用プログラム記憶手段を備え、仮想配置モデル作成手段は、仮想空間に非制御要素を仮想的に配置し、要素属性設定手段は、仮想配置モデル上の非制御要素の属性を設定し、制御プログラム実行手段は、制御プログラムと共に非制御対象用プログラムを実行することが好ましい。
【0010】
これによれば、制御対象でないもの(非制御要素)も表示画面に表される。この非制御要素は、制御プログラムと共に実行される非制御対象用プログラムによって、制御対象機器の挙動に合わせて挙動する。非制御要素は、例えば、ワーク、作業者、および、輸送車など、制御プログラムで制御されないものである。非制御要素の挙動が制御対象機器の挙動と共に表示されることで、より現実に即したリアルなシミュレーションが可能となる。
【0011】
ここで、本発明のシミュレーション装置は、さらに、制御プログラムおよび非制御対象用プログラムを作成または編集するプログラム設計手段を備えることが好ましい。これにより、シミュレーションの結果に応じて、プログラムを修正することが可能となる。
【0012】
また、制御プログラムおよび非制御対象用プログラムは、ペトリネットによるペトリネットモデルであってもよい。なお、ペトリネットは、1962年ドイツのCarl Adam Petriによって提案され、平行的、非同期的、並列的、分散的、非決定的、確立的な動作を特徴とする生産システムや、情報システム、物流システムなどを表現する有力な手段である。ペトリネットの定義自体は、オートマトンなどと同様に単純なものであり、その理解には特別な数学の知識を必要としない。特に、図としての表現が可能であることがペトリネットの大きな特徴である。
【0013】
ここで、本発明のシミュレーション装置は、制御プログラム実行手段により制御プログラムが実行されたとき、外部の制御対象機器が制御プログラムに基づき制御されると共に、制御プログラムに基づき仮想配置モデル上の要素の挙動が表示手段に表示されるようにしてもよい。これにより、ユーザーは、実際の稼働している制御の様子を、表示手段で擬似的に監視することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシミュレーション装置によれば、制御プログラムに基づく制御対象機器の挙動を具体的かつ全体的に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0016】
本実施形態について図1〜図9を参照して説明する。図1は、シミュレーション装置の構成図である。図2は、ペトリネット理論のモデルを示す図である。図3は、編集シートを示す図である。図4は、要素の配置例を示す図である。図5は、要素の配置例を示す図である。図6は、仮想配置モデルの例を示す図である。図7は、属性設定画面の例を示す図である。図8は、全体の処理フローを示す図である。図9は、シミュレーションの処理フローを示す図である。
【0017】
図1に示すように、シミュレーション装置1は、キーボード2(入力手段)と、マウス3(入力手段)と、ディスプレイ4(表示手段)と、コンピュータ本体5と、を備えている。コンピュータ本体5は、CPU51と、メインメモリ52と、コントローラ部53と、シミュレーション部54とを有している。
【0018】
コントローラ部53は、ペトリネットモデル記憶手段531と、ペトリネットモデル実行手段532と、ペトリネットモデル設計手段533とを有している。ここで、まず、ペトリネットについて簡単に説明する。
(ペトリネット)
ペトリネットは有向グラフの1つであり初期マーキングと呼ばれる初期状態をもつ。ペトリネットをつくる基本的なグラフは、重みつき有向2部グラフであって、プレースとトランジションの2種類のノードからなる。アークは、プレースからトランジションに接続するもの、または、トランジションからプレースに接続するもののいずれかである。
【0019】
条件と事象の概念を用いるモデル化においては、プレースが条件を表し、トランジションが事象を表す。トランジションはそれぞれの事象の前提条件と後提条件としているいくつかの入力プレースと出力プレースを持つ。
【0020】
ペトリネットモデルについて図2を参照して説明する。トランジション208の前提条件となる入力プレース201と入力プレース204、後提条件となる出力プレース209をそれぞれのアークで接続している。入力プレース201内のトークン202およびトークン203と、入力プレース204内のトークン205とは、初期マーキングを表す。
【0021】
トランジション208が発火可能となる条件は、入力プレース201からトランジション208に接続しているアーク206の重み211以上のトークンが入力プレース201にあり、かつ、入力プレース204からトランジション208に接続しているアーク207の重み以上のトークンが入力プレース204にある場合である。この場合、入力プレース201に接続しているアークの重み211は2で入力プレース201内のトークンも2つある。また、入力プレース204に接続しているアークの重みは、アークに数値が記述されていない場合は1であり、入力プレース204のトークン数は1である。よって、前提条件を満たしているため、トランジション208は発火する。
【0022】
トランジション208が発火した状態を図2(2)に示す。発火後の前提条件では、入力プレース301から接続するアークの重み309分のトークンを取り除く。入力プレース302も同様に接続するアーク304の重み分のトークンを取り除く。
【0023】
発火後の後提条件では、出力プレース307に接続するアーク306の重み分のトークンを出力プレース307内にマーキングする。この場合は、アークの重みが1であるため、出力プレース307には1つのトークンがマーキングされる。
【0024】
図2のトランジション208の発火遅れ212について説明する。上記のペトリネット理論に時間的概念を加えたものが時間ペトリネットである。この発火遅れ212は、発火可能な状態から5ステップ分の発火時間を遅らせる働きがある。1ステップ時間を1秒とした場合、発火可能なトランジション208が発火するのは、5秒後となる。このように、時間ペトリネットを用いれば、システムの挙動を時間的に表現することが可能となる。
【0025】
カラーペトリネットでは、トークンに属性を持たせることが可能である。トランジションでは、トークン属性を用いて発火規則(firing rule)を論理式などで表すことができる。
(コントローラ部)
ペトリネットモデル記憶手段531(本発明における「非制御対象プログラム記憶手段」を含む)は、ペトリネットにより作成されたペトリネットモデルである制御プログラムおよび後述する非制御対象用プログラムを記憶している。
【0026】
ペトリネットモデル実行手段532(本発明における「制御プログラム実行手段」に相当する)は、ペトリネットモデル記憶手段531に記憶されたペトリネットモデルを実行する。
【0027】
ペトリネットモデル設計手段533(本発明における「プログラム設計手段」に相当する)は、ユーザーの入力に従って、ペトリネットモデルを作成、あるいは、ペトリネットモデル記憶手段531に記憶されたペトリネットモデルを編集する。ペトリネットモデル設計手段533では、制御対象機器を制御するための制御プログラム以外に、シミュレーション上における制御対象機器以外のものを制御する非制御対象用プログラムを作成することができる。非制御対象用プログラムについては後述する。なお、本実施形態のコントローラ部53で用いられるペトリネットは、特開2007−58447号公報に開示されているような、拡張ペトリネットである。
(シミュレーション部)
シミュレーション部54は、編集シートE表示手段541と、仮想配置モデル作成手段542と、要素属性設定手段543と、関連手段544と、仮想モデル記憶手段545と、モード切替手段546と、を備えている。
【0028】
編集シートE表示手段541は、図2に示すように、ディスプレイ4に編集シートE(仮想空間)を表示させる。仮想配置モデル作成手段542は、ユーザーの入力に従って、編集シートEに要素を配置する。具体的な操作においては、ユーザーは、まず、図4に示すように、配置する要素を所定の選択画面から選択し、あるいは、画像を別の記憶手段から読み込んで作成して編集シートE上に要素を表示させる。
【0029】
選択できる要素は、例えば、移動線、移動物、センサ、近接センサ用対象物、押しボタン、セレクトスイッチ、ランプ、モニタ、作業エリア、直線、四角形、および、円などである。そして、ユーザーは、選択した要素(または作成した要素)を、マウスにより、編集シートE上の任意の位置に配置する。また、要素として、予め作成されたもの(例えば、コンベア、エアロボ等)が記憶されており、それを選択することもできる。
【0030】
移動線は、移動物の移動経路を示す。移動線の分岐等も設定により可能である。移動物は、設定した移動線上を移動する。センサは、感知エリア内の物体の検出や、移動物に付与した情報を読み取る機能を有する。感知エリアは、設定可能である。近接センサ用対象物は、センサの1種である近接センサにのみ検出されるものである。
【0031】
押しボタンは、制御対象機器の押しボタンを表す。セレクトスイッチは、制御対象機器のセレクトスイッチを表す。押しボタンおよびセレクトスイッチについては、例えば図5に示すように表される。ランプは、制御対象機器のランプを表す。モニタは、数値や文字情報を表示するモニタを表す。エリアは、視覚的に強調を行うエリアを表す。直線、四角形、および、円などの図形も編集シートE上に表すことができる。なお、テキストを選択して、機器の名前等を編集シートE上に表すことも可能である。
【0032】
これら各要素は、編集シートE上に自由に配置される。各要素を実際に配置される外部の制御対象機器の構成に合わせて配置することで、例えば図6に示すように、仮想配置モデルが作成される。
【0033】
要素属性設定手段543は、ユーザーの入力に応じて、仮想配置モデルを構成する各要素の属性を設定する。具体的な操作においては、ユーザーは、設定したい要素を選択してプロパティ画面を開く。ユーザーは、プロパティにおいて要素の属性を設定する。属性とは、例えば、移動線の場合、移動線上に配置される移動物の速度である。本実施形態において、移動線の属性として設定された速度は、その移動線上の移動物すべてに反映される。
【0034】
また、移動物の場合、属性は、例えば、図7に示すように、移動方向や移動速度などである。移動物は、移動線上に限らず、属性を設定することで編集シートE上を移動することができる。センサの場合、属性は、例えば、感知エリアの範囲、センサの種類などである。なお、センサの種類は、通常の対象物の有無を検出するエリアセンサと、近接センサ用対象物のみを検出する近接センサと、感知エリア内の要素の情報を読み取るリーダーとがある。押しボタンやセレクトスイッチの場合、属性として、自己保持回路の有無などがある。
【0035】
関連手段544は、ユーザーの入力に従い、制御プログラムと仮想配置モデルの入出力とを関連付ける。つまり、関連手段544は、「制御プログラムに基づく出力信号」と「要素に入力される仮想配置モデル上の仮想入力信号」とを関連付け、且つ、「要素の挙動により出力される仮想配置モデル上の仮想出力信号」と「制御プログラムが受ける入力信号」とを関連付ける。
【0036】
実際の制御においては、ペトリネットモデル実行手段532により制御プログラム(ペトリネットモデル)が実行されると、制御プログラムに基づく出力信号(命令)が対応する制御対象機器に対して出力される。シミュレーション装置1では、その出力信号を受ける対象を仮想配置モデル上の要素としている。従って、要素は、仮想配置モデルにおいて、仮想の仮想入力信号を入力する。関連手段544は、制御プログラムからの出力信号と要素が受ける仮想入力信号とを関連付ける。
【0037】
具体的に、例えば、制御プログラムの第一の出力信号が「信号線Aのコンベアを動かせ(信号線AにONまたはOFFを送信)」であり、当該コンベアを示す要素の接点番号が仮想配置モデル上で「01」であった場合、信号線Aと接点01とが関連付けられる。仮想モデルにおいて、コンベアは、制御プログラムからのON、OFF等の出力信号を受けて、それに従って駆動する。
【0038】
また、コンベアが駆動することで、コンベア上のワークが移動する。そして、ワークがセンサの感知エリア内に進入すると、センサが検出し、その情報(ON、OFF等)が制御プログラム実行手段に対して出力される。つまり、仮想の出力である仮想出力信号がセンサ(要素)により出力される。例えば、センサの接点番号が02で、制御プログラムの第二の出力信号が「信号線BからONを受信したらコンベアを停止する」であった場合、接点02と信号線Bとが関連付けられる。このように、制御プログラムは、受信した仮想出力信号に応じて実行される。
【0039】
仮想モデル記憶手段545は、作成された仮想配置モデルを記憶する。モード切替手段546は、ユーザーの選択した実行モードにモードを切り替える。本実施形態において、実行モードとしては、模擬モードと、監視モードと、検証モードとがある。
【0040】
模擬モードは、ペトリネットモデル実行手段532がペトリネットモデルを実行し、仮想配置モデル上の要素を挙動させるモードである。ディスプレイ4には、仮想配置モデルの各要素の挙動が表示される。つまり、制御対象機器が配置された物流等のシステムにおいて、機器を動かすことなく、挙動全体を目視でチェックすることができる。
【0041】
監視モードは、実際の制御中において、制御対象機器の状況を仮想配置モデル上で表現するモードである。つまり、ペトリネットモデル実行手段532は、ペトリネットモデルを実行して制御対象機器を制御すると共に、仮想配置モデルとも通信して要素を挙動させる。このモードでは、シミュレーション装置1が実際の制御とシミュレーションとを同時に行って、実際の制御対象機器を擬似的にモニタする。
【0042】
また、監視モードでは、仮想配置モデル上での操作を実際の制御対象機器の動作に反映させることも可能である。例えば、制御中、仮想配置モデル上の押しボタン(例えば停止ボタン)を押すと、それに反応して実際の制御対象機器が挙動(停止)する。本実施形態において、ペトリネットモデル実行手段532は、制御対象機器に加え、シミュレーション部54との通信が可能となっている。これにより、作業現場全体の挙動が監視でき、さらには、制御対象機器の遠隔操作も可能となる。
【0043】
検証モードは、コンピュータ本体5に外部接続したPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等のコントローラでシミュレーションするモードである。つまり、検証モードでは、外部のコントローラに記憶された制御プログラムを仮想配置モデル上で実行する。ここでの制御プログラムは、LD(ラダー)や、SFC(シーケンシャル・ファンクション・チャート)などで作成されていてもよい。つまり、シミュレーション装置1によれば、外部のコントローラであっても、コントローラ部53同様にシミュレーションできる。
【0044】
ユーザーは、上記モードでのシミュレーション状況をディスプレイ4で確認できる。そこで、制御プログラムの修正が必要であれば、制御プログラムがペトリネットモデルの場合ペトリネットモデル設計手段533で修正できる。PLCの場合、PLCの機能により制御プログラムは修正可能である。なお、監視モードでは、外部接続されたコントローラの制御プログラムに対しても実行可能である。例えば、PLCがシミュレーション装置1に接続された場合、PLC内の制御プログラムによって制御対象機器および仮想配置モデルの要素を制御する。
(非制御対象用プログラム)
上記したように、コントローラ部53において、ペトリネットモデル記憶手段531は、仮想配置モデル上で挙動させたい非制御要素(ワーク、作業者、輸送車など)用の制御プログラム(非制御対象用プログラム)を記憶している。つまり、ペトリネットモデル記憶手段531は、制御プログラムおよび非制御対象用プログラムを記憶している。この非制御対象用プログラムは、ペトリネットで作成されたペトリネットモデルである。
【0045】
ペトリネットモデル実行手段532は、制御プログラムを実行すると共に、非制御対象用プログラムをシミュレーション部54に対して実行する。これにより、仮想配置モデルにおいて、例えば、コンベア上に置かれたワークは、コンベアの駆動に合わせて移動する。また、例えば、ワークがコンベア等から落下する状況が表現される。同様に、作業者および輸送車の配置や動きも模擬的に表現される。これにより、よりリアリティのあるシミュレーションが可能となる。
【0046】
この非制御対象用プログラムは、ペトリネットモデル設計手段533で修正等が可能である。また、非制御対象用プログラムは、外部のコントローラを用いてシミュレーションする場合でも、上記同様に実行可能である。つまり、外部の制御プラグラムが実行されると、それに連動して非制御対象用プログラムが実行される。これにより、外部のコントローラで制御する場合であっても、ディスプレイ4にワーク等の挙動が表示される。本実施形態によれば、よりリアルなシミュレーションが可能となる。
(シミュレーションのフロー)
ここで、シミュレーション装置1の処理フローについてまとめて説明する。
【0047】
図8に示すように、まず、編集シートE上に仮想配置モデルを作成する(S101)。続いて、配置した要素の属性を設定する(S102)。続いて、制御プログラムと要素の入出力を関連させる(S103)。そして、制御プログラムを実行してシミュレーションを開始する(S104)。そして、シミュレーション結果が正しい場合(S105:Yes)、シミュレーションを終了する。一方、不具合の発見など、シミュレーション結果が正しくない場合(S105:No)、制御プログラムを修正し、再度シミュレーションを実行する(S104)。また、非制御対象用プログラムがある場合、シミュレーションの実行(S104)において同時に実行される。
【0048】
図9に示すように、シミュレーション処理のフローでは、まず、非制御対象用プログラムの有無が確認される(S201)。非制御対象用プログラムがある場合(S201:Yes)、非制御対象用プログラムが実行される(S202)。続いて、制御プログラムを記憶するコントローラが外部接続か否かを確認する(S203)。
【0049】
コントローラが外部接続の場合(S203:Yes)、仮想配置モデルにおいて、コントローラからの出力信号が仮想入力信号として対応する要素に入力される(S204)。そして、要素の挙動により出力される仮想出力信号がコントローラの入力信号としてコントローラに入力される(S205)。つまり、コントローラとシミュレーション部54とが通信する。
【0050】
一方、コントローラが外部接続でない場合(S203:No)、コントローラ部53のペトリネットモデルが実行される。つまり、ペトリネットモデル実行手段532の出力信号が仮想入力信号として対応する要素に入力される(S206)。そして、要素の挙動により出力される仮想出力信号がコントローラ部53の入力信号としてコントローラ部53に入力される(S205)。つまり、この場合、コンピュータ本体5内のコントローラ部53とシミュレーション部54とが通信する。
【0051】
そして、その後、実行が可能状態であるか否かが確認される(S208)。例えば、停止ボタンが押されていない場合、実行可能状態であり(S208:Yes)、繰り返しシミュレーションされる。停止ボタンが押されていれば、シミュレーションを終了する。
【0052】
以上、シミュレーション装置1によれば、制御プログラムに基づく制御対象機器の挙動を具体的かつ全体的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】シミュレーション装置の構成図である。
【図2】ペトリネット理論のモデルを示す図である。
【図3】編集シートを示す図である。
【図4】要素の配置例を示す図である。
【図5】要素の配置例を示す図である。
【図6】仮想配置モデルの例を示す図である。
【図7】属性設定画面の例を示す図である。
【図8】全体の処理フローを示す図である。
【図9】シミュレーションの処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1:シミュレーション装置、
2:キーボード、3:マウス、4:ディスプレイ、
5:コンピュータ本体、51:CPU、52:メインメモリ、
53:コントローラ部、
531:ペトリネットモデル記憶手段、
532:ペトリネットモデル実行手段(制御プログラム実行手段)、
533:ペトリネットモデル設計手段(プログラム設計手段)、
54:シミュレーション部、
541:編集シート表示手段、542:仮想配置モデル作成手段、
543:要素属性設定手段、544:関連手段、
545:仮想モデル記憶手段、546:モード切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力手段と、表示手段と、外部の制御対象機器を制御するための制御プログラムを実行する制御プログラム実行手段とを備え、前記制御対象機器と接続可能なコンピュータからなる制御シミュレーション装置であって、
さらに、
前記表示手段に表示される仮想空間に前記制御対象機器の挙動を模擬可能な要素を仮想的に配置して仮想配置モデルを作成する仮想配置モデル作成手段と、
前記仮想配置モデル上の前記要素の属性を設定する要素属性設定手段と、
前記制御プログラムの実行に伴う出力信号と前記要素に入力される前記仮想配置モデル上の仮想入力信号とを関連付けると共に、前記要素の挙動により出力される前記仮想配置モデル上の仮想出力信号と前記制御プログラムが受ける入力信号とを関連付ける関連手段と、
を備え、
前記関連手段により前記制御プログラムと関連付けられた前記要素が前記制御プログラムの実行に伴い前記仮想配置モデル上を挙動する様子が前記表示手段に表示されることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
さらに、前記仮想配置モデル上で制御の対象でない前記制御対象機器以外を模擬表示した非制御要素を制御する非制御対象用プログラムを記憶する非制御対象用プログラム記憶手段を備え、
前記仮想配置モデル作成手段は、前記仮想空間に前記非制御要素を仮想的に配置し、
前記要素属性設定手段は、前記仮想配置モデル上の前記非制御要素の属性を設定し、
前記制御プログラム実行手段は、前記制御プログラムと共に前記非制御対象用プログラムを実行する請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
さらに、前記制御プログラムおよび前記非制御対象用プログラムを作成または編集するプログラム設計手段を備える請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御プログラムおよび前記非制御対象用プログラムは、ペトリネットによるペトリネットモデルである請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御プログラム実行手段により前記制御プログラムが実行されたとき、外部の前記制御対象機器が前記制御プログラムに基づき制御されると共に、前記制御プログラムに基づき前記仮想配置モデル上の前記要素の挙動が前記表示手段に表示される請求項1〜4の何れか一項に記載のシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289156(P2009−289156A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142899(P2008−142899)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(392013305)キムラユニティー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】