説明

シャッター付きコネクタ、及びコネクタ装置

【課題】向上した防塵及び遮蔽性能を有するシャッター付きコネクタを提供する。
【解決手段】レセプタクル30は、レセプタクル本体31と、ハウジング33と、シャッター330を備える。シャッター330は、ハウジング33内に設けられた一組の扉313、315を含む。扉313、315は、プラグ10の挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、プラグ10を挿入していないときに開口を閉状態とし、プラグ10を挿入したときに開口を開状態とする。扉113の縁部及び扉115の縁部は、それぞれ対向壁114、116を有している。対向壁114、116は、シャッター130が閉状態にあるときにプラグ本体11の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面123、127を有する。合わせ面123は、扉113の裏面122から下がる階段状の壁面であり、合わせ面127は、扉115の表面125から下がる階段状の壁面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャッター付きコネクタに関し、特に、向上した防塵及び遮蔽性能を有するシャッター付きコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の間の通信に用いられるケーブルは、各種のコネクタを介して電子機器に接続される。例えば、高速・大容量の通信を可能とする光ファイバケーブルを電子機器に接続するために、光ファイバケーブルの端部にプラグが設けられ、電子機器にはそのプラグが挿入される開口部が形成されたレセプタクル又はアダプタが設けられる。そして、プラグをレセプタクルに嵌合することによって、一方の電子機器から光ファイバケーブルを経て他方の電子機器に至る光路を確立する。
【0003】
ところで、プラグを挿入する開口が形成されたハウジング内に、一組の扉を含むシャッターが設けられ、一組の扉がプラグの挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングする、シャッター付きコネクタ(レセプタクル)が、提案されている。かかるコネクタは、例えば、特許文献1(特開2005−99345号公報)に開示されている。また、プラグの挿入及び引き抜きに応じて変形する板ばね片により、一組の扉を形成するシャッター付きコネクタも提案されている。かかるコネクタは、例えば、特許文献2(特開2006−3467号公報)、及び特許文献3(特開2010−8992号公報)に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているシャッター付きコネクタは、両側にスイングするよう構成された一組のシャッター扉が、開口の断面の略中心点を通る線で開裂し、また、開口の断面の略中心点を通る線で、シャッター扉の先端同士が当接するよう構成されている。
【0005】
特許文献2に開示されているシャッター付きコネクタは、一組の板ばね片の扉が、遮光状態時に互いにその先端が重なり合うとともに、ハウジングの奥方にセットバックされて構成されている。
【0006】
特許文献3に開示されているシャッター付きコネクタは、金属材料の略平板状に形成された一組の板ばね片の扉が、その先端縁を互いに付き合わせることで開口を閉塞するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−99345号公報
【特許文献2】特開2006−3467号公報
【特許文献3】特開2010−8992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1が開示するコネクタでは、閉状態においてシャッター扉同士が点接触であるため、扉のわずかな変位により簡単にシャッター扉が開裂し、隙間が生じる。したがって、塵や埃がその隙間から侵入し易いうえに、レーザー光がその隙間から漏れ易い。
【0009】
特許文献2及び3が開示するコネクタでは、プラグの挿入及び引き抜きにより変形する板ばね片により扉を構成している。板ばね片のそれぞれに適度の押圧力が加わることにより板ばね片が変形する場合は問題がないが、板ばね片の一方又は両方に対して不適切な外力(例えば、横方向の過度の押圧力)が加わると、曲げ応力により板ばね片が回復不能に変形する可能性がある。板ばね片にかかる不適切な変形があると、板ばね片の先端に隙間が生じ易く、防塵作用及び遮光作用が劣化する。
【0010】
したがって、本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、向上した防塵及び遮蔽性能を有するシャッター付きコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明は、コネクタ本体と、相手方コネクタを挿入する開口が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に設けられた一組の扉を含むシャッターとを備えた、シャッター付きコネクタを提供する。前記シャッターを構成する前記一組の扉は、相手方コネクタの挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、相手方コネクタを挿入していないときに前記開口を閉状態とし、相手方コネクタを挿入したときに前記開口を開状態とする。前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記シャッターが閉状態にあるときに前記コネクタ本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面である。
【0012】
本発明に係るシャッター付きコネクタの好ましい実施の形態において、前記一組の扉は、前記シャッターが閉状態にあるときに、前記他方の扉の表面の一部又は全部が前記一方の扉の表面よりも高くなるよう構成され、相手方コネクタが挿入されるとき、前記他方の扉が相手方コネクタの先端と最初に接触するよう構成して良い。
【0013】
また、本発明に係るシャッター付きコネクタの好ましい実施の形態によれば、相手方コネクタが前記ハウジングの開口に挿入され、前記コネクタと嵌合されるとき、開状態にある前記シャッターの前記一組の扉が、相手方コネクタの両側面を挟み、前記相手方コネクタの軸方向の移動を制限するよう構成しても良い。
【0014】
本発明はまた、コネクタ装置であって、レセプタクルと、前記レセプタクルに嵌合されるプラグとを含み、前記レセプタクルは、レセプタクル本体と、前記プラグを挿入する開口が形成された第1のハウジングと、前記第1のハウジング内に設けられた一組の扉を含む第1のシャッターであって、前記一組の扉は、前記プラグの挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、前記プラグを挿入していないときに前記開口を閉状態とし、前記プラグを挿入したときに前記開口を開状態とする第1のシャッターと、を備え、前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記第1のシャッターが閉状態にあるときに前記レセプタクル本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面であり、前記プラグは、プラグ本体と、前記レセプタクル内に設けられたスリーブ部材を挿入する開口が形成された第2のハウジングと、前記第2のハウジング内に設けられた一組の扉を含む第2のシャッターであって、前記一組の扉は、前記スリーブ部材の挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、前記スリーブ部材を挿入していないときに前記開口を閉状態とし、前記スリーブ部材を挿入したときに前記開口を開状態とする第2のシャッターと、を備え、前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記第2のシャッターが閉状態にあるときに前記プラグ本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面である、コネクタ装置を提供する。
【0015】
本発明に係るコネクタ装置の好ましい実施の形態では、前記一組の扉は、前記シャッターが閉状態にあるときに、前記他方の扉の表面の一部又は全部が前記一方の扉の表面よりも高くなるよう構成され、前記プラグ又は前記スリーブ部材が挿入されるとき、前記他方の扉が前記プラグ又は前記スリーブ部材の先端と最初に接触するよう構成して良い。
【0016】
また、本発明に係るコネクタ装置の好ましい実施の形態において、前記レセプタクルの第1のハウジングには、上下及び左右に対称の開口が形成され、前記プラグの第2のハウジングは、その断面形状が前記第1のハウジングの開口に適合するよう形成され、前記プラグ本体の上下及び左右側面に、前記第2のハウジングの側面よりも低い凹面が形成され、開状態にある前記第1のシャッターの前記一組の扉が、前記プラグ本体の上下の凹面又は左右の凹面を挟み、前記プラグの軸方向の移動を制限するよう構成して良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、シャッターが閉状態のとき、一組の扉の縁部の対向壁同士が、階段状の壁面を合わせ面として、互いに重なり合う。したがって、従来技術における扉の点接触の場合に比べて、塵や埃がシャッターを通り抜けるのに必要な距離(侵入距離)を長くすることができる。また、扉の縁部の対向壁が、階段状の壁面を合わせ面として有しているので、扉のわずかな変位によっては隙間が生じることがない。したがって、シャッターが提供する防塵作用及び遮蔽作用を、格段に向上させることができる。
【0018】
上記した本発明の目的及び利点並びに他の目的及び利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の一例の斜視図である。
【図2】本発明のシャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の一部拡大斜視図である。
【図3】本発明のシャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の、相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端及びプラグ)が開口に挿入されていない状態における一部拡大断面図である。
【図4】相手方コネクタ(プラグ)がコネクタ(レセプタクル)の開口に挿入され始めた状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)全体の拡大断面図である。
【図5】相手方コネクタ(プラグ)がコネクタ(レセプタクル)の開口に挿入され始めた状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の一部拡大断面図である。
【図6】相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端)がコネクタ(プラグ)の開口に挿入され始めた状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)全体の拡大断面図である。
【図7】相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端)がコネクタ(プラグ)の開口に挿入され始めた状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の一部拡大断面図である。
【図8】相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端)がコネクタ(プラグ)の開口に完全に挿入され、コネクタ同士が嵌合された状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)全体の拡大断面図である。
【図9】相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端)がコネクタ(プラグ)の開口に完全に挿入され、コネクタ同士が嵌合された状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るシャッター付きコネクタの好ましい実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本実施の形態に係るシャッター付きコネクタは、光信号を伝送する伝送路に光ファイバを利用した光コネクタ、具体的には光ファイバケーブルの端部に設けられるプラグ、及び電子機器に設けられるレセプタクル(「アダプタ」とも呼ばれる)に、本発明を適用した例である。このシャッター付きコネクタのうち、レセプタクルの各ポートには、相手方コネクタであるプラグが嵌合される。本実施の形態において、プラグは、レセプタクルに対し着脱式に構成されており、レセプタクルにはプラグの先端が挿入される開口が形成され、その開口がポートを構成している。本発明において、光コネクタは、SC(JIS C 5973,IEC 61754−4)、MU(JIS C 5983,IEC 61754−6)、LC(IEC 61754−20)等の現在の規格に適合又は準拠する光コネクタであって良く、又は将来制定される同様の又は類似の規格に適合又は準拠する光コネクタであって良い。
【0022】
図1は、本発明を適用したシャッター付きコネクタ(プラグ及び2心タイプのレセプタクル)の斜視図、図2はその一部拡大斜視図、そして図3は、相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端及びプラグに相当する)が開口に挿入されていない状態における一部拡大断面図である。本実施の形態では、2心タイプのレセプタクルと、これに適合するプラグの例を説明する。このため、以下の図面のいくつかでは、同一構造の2つのプラグが図示されている(但し、一方のプラグは、他方のプラグに対して、軸周りに90°回転させた状態で図示されている)ことに留意されたい。
【0023】
図1から図3を参照して、プラグ10は、プラグ本体11、上下及び左右に対称の開口が形成されたハウジング13、及びシャッター130を含む。シャッター130は、ハウジング13内に設けられた一組の扉113、115を含む。一組の扉113、115は、相手方コネクタ(レセプタクル内に設けられたキャッチャの先端)の挿入及び引き抜きに応じて、シャフト117を軸として両側にスイングする。なお、板ばね119は、一端がプラグ本体11及びハウジング13の内壁に接し、他端が一組の扉113、115の裏面122、126に接するように曲げ変形されて、取り付けられている。このため、板ばね119が変形から復元する力を利用して、扉113、115が両側にスイングし、これにより、シャッター130を、相手方コネクタを挿入していないときに開口を閉状態とし、相手方コネクタを挿入したときに開口を開状態とすることができる。
【0024】
シャッター130を構成している一組の扉113、115の一方の扉113の縁部及び他方の扉115の縁部は、それぞれ対向壁114、116を有している。これら対向壁114、116は、シャッター130が閉状態にあるときにプラグ本体11の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面123、127を有する。一方の扉113の縁部の合わせ面123は、一方の扉113の裏面122から下がる階段状の壁面であり、他方の扉115の縁部の合わせ面127は、他方の扉115の表面125から下がる階段状の壁面である。
【0025】
本実施の形態によると、一組の扉113、115の縁部の対向壁114、116同士が、階段状の壁面123、127を合わせ面として、互いに重なり合う。したがって、従来技術における扉の点接触の場合に比べて、塵や埃がシャッター130を通り抜けるのに必要な距離(侵入距離)を長くすることができる。また、扉113、115の縁部の対向壁114、116が、階段状の壁面123、127を合わせ面として有しているので、扉113、115のわずかな変位によっては隙間が生じることがない。したがって、シャッター130が提供する防塵作用及び遮光作用を、格段に向上させることができる。
【0026】
また、一組の扉113、115は、シャッター130が閉状態にあるときに、他方の扉115の表面125全部が一方の扉113の表面121よりも高くなるよう構成されている。なお、本実施の形態においては、一方の扉113の表面121が、一部(上下及び縁部)を除いて低くなっていることにより、他方の扉115の表面125全部が一方の扉113の表面121よりも高くなるよう構成されている。
【0027】
他方、レセプタクル30は、レセプタクル本体31、上下及び左右に対称の開口が形成されたハウジング33、及びシャッター330を含む。シャッター330は、ハウジング33内に設けられた一組の扉313、315を含む。一組の扉313、315は、相手方コネクタであるプラグ10の挿入及び引き抜きに応じて、シャフト317を軸として両側にスイングする。なお、板ばね319(図5参照)は、一端がレセプタクル本体31及びハウジング33の内壁に接し、他端が一組の扉313、315の裏面322、326に接するように曲げ変形されて、取り付けられている。このため、板ばね319が変形から復元する力を利用して、扉313、315が両側にスイングし、これにより、シャッター330を、プラグ10を挿入していないときに開口を閉状態とし、プラグ10を挿入したときに開口を開状態とすることができる。
【0028】
シャッター330を構成している一組の扉313、315の一方の扉313の縁部及び他方の扉315の縁部は、それぞれ対向壁314、316を有している。これら対向壁314、316は、シャッター330が閉状態にあるときにレセプタクル本体31の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面323、327を有する。一方の扉313の縁部の合わせ面323は、一方の扉313の裏面322から下がる階段状の壁面であり、他方の扉315の縁部の合わせ面327は、他方の扉315の表面325から下がる階段状の壁面である。
【0029】
本実施の形態によると、一組の扉313、315の縁部の対向壁314、316同士が、階段状の壁面323、327を合わせ面として、互いに重なり合う。したがって、従来技術における扉の点接触の場合に比べて、塵や埃がシャッター330を通り抜けるのに必要な距離(侵入距離)を長くすることができる。また、扉313、315の縁部の対向壁314、316が、階段状の壁面323、327を合わせ面として有しているので、扉313、315のわずかな変位によっては隙間が生じることがない。したがって、シャッター330が提供する防塵作用及び遮光作用を、格段に向上させることができる。
【0030】
さらに、一組の扉313、315は、シャッター330が閉状態にあるときに、他方の扉315の表面の一部328が一方の扉313の表面321よりも高くなるよう構成されている。
【0031】
図4は、シャッター付きコネクタ(プラグ及びレセプタクル)全体の拡大断面図である。
図1及び図4を参照して、プラグ10では、プラグ本体11の一端には、ハウジング13が設けられ、他端にはブーツ14が取り付けられている。ハウジング13は、上下及び左右に対称な断面形状(正方形の断面形状)を有し、この形状はレセプタクル30のハウジング33に形成された開口に適合する。プラグ本体11の内部には、プッシャー15、及びプッシャー15に支持されたフェルール16が収容されている。そして、光ファイバコード21は、ブーツ14を貫通し、プラグ本体11の他端において圧着スリーブ17、18により固定されている。なお、光ファイバコード21の先端がフェルール16に挿入されることにより、光ファイバがフェルール16によって機械的に保護され、また光ファイバの先端が位置合わせされた状態で、プラグ本体11内に支持されている。さらに、プラグ本体11の軸方向中間には、ロックカバー12が設けられている。そして、ロックカバー12が設けられている上下及び左右側面は、ハウジング13の側面よりも低い凹面に形成されている。すなわち、プラグ本体11の上下及び左右側面では、ロックカバー12によって、ハウジング13の側面よりも低い凹面421(図9参照)が形成されている。また、このロックカバー12の一端は、ブーツ14に結合され、ブーツ14をプラグ10の引き抜き方向に引っ張ると、ロックカバー12がプラグ本体11上を所要距離だけスライド可能に構成されている。
【0032】
他方、レセプタクル30では、2心タイプのレセプタクル本体31の一端には、ハウジング33が設けられ、他端からは、キャッチャ32が挿入されている。キャッチャ32は、プラグ10の挿入及び引き抜きに応じて、レセプタクル本体31に対して軸方向に所要距離だけスライド可能に構成されている。キャッチャ32の先端(2心タイプのレセプタクルの例であるため、2つの先端が図示されている)は、上下及び左右に対称な断面形状(正方形の断面形状)を有し、この形状はプラグ10のハウジング13に形成された開口に適合する。割スリーブ34、スペーサーリング35、フェルール36、及びフェルールホルダー37が、スリーブホルダー38の一端から挿入され、フェルール36がキャッチャ32の内部に固定支持されている。なお、光ファイバ41の先端がフェルール36に挿入されることにより、光ファイバがフェルール36によって機械的に保護され、また光ファイバの先端が位置合わせされた状態で、キャッチャ32内、すなわちレセプタクル本体31内に支持されている。
【0033】
次に、図4及び図5を参照して、レセプタクル30のハウジング33に設けられた一組の扉313、315を含む、シャッター330の開き動作について説明する。図5は、相手方コネクタであるプラグ10がレセプタクル30の開口に挿入され始めた状態における、シャッター付きコネクタ(プラグ10及びレセプタクル30)の一部拡大断面図である。
【0034】
プラグ10の一端に設けられたハウジング13が、レセプタクル30の一端に設けられたハウジング33の開口に挿入され始めると、シャッター330を構成している一組の扉313、315のうち他方の扉315の表面の一部328が、ハウジング13の先端と最初に接触する。これは、前述の通り、一組の扉313、315は、シャッター330が閉状態にあるときに、他方の扉315の表面の一部328が一方の扉313の表面321よりも高くなるよう構成されているからである。これにより、プラグ10が挿入されるとき、必ず他方の扉315が先にスイングを開始し、それからほんのわずか遅れて一方の扉313がスイングを開始する。このように、扉313と扉315の表面を非対称にして、扉313、315のスイングの開始時間を異ならせること、さらには、プラグ10が引き抜かれるときに、スイングした状態から元に戻る時間を異ならせることは、シャッター330の円滑な開閉を確保するために特に有効である。扉313の表面と扉315の表面が同一面とされている場合、対向壁314、316の寸法や形状次第では、スイング状態から元に戻るときに、対向壁314の先端と対向壁316の先端が互いにぶつかり合い、シャッター330が正しく閉状態に戻らない等、円滑な開閉が阻害されることがあるからである。
【0035】
次に、図6及び図7を参照して、プラグ10のハウジング13に設けられたシャッター130の開き動作について説明する。図6は、プラグ10がさらに挿入され、相手方コネクタである、レセプタクル30内に設けられたキャッチャ32の先端が、プラグ10の開口に挿入され始めた状態における、プラグ10及びレセプタクル30全体の拡大断面図、図7は一部拡大断面図である。この状態では、レセプタクル30のハウジング33に設けられた扉313、315は完全に開状態となっている。
【0036】
レセプタクル30内に設けられたキャッチャ32の先端が、プラグ10の一端に設けられたハウジング13の開口に挿入され始めると、シャッター130を構成している一組の扉113、115のうち他方の扉115の表面125が、キャッチャ32の先端と最初に接触する。これは、前述の通り、一組の扉113、115は、シャッター130が閉状態にあるときに、他方の扉115の全部の表面125が一方の扉113の表面121よりも高くなるよう構成されているからである。これにより、キャッチャ32が挿入されるとき、必ず他方の扉115が先にスイングを開始し、それからほんのわずか遅れて一方の扉113がスイングを開始する。このように、扉113と扉115の表面を非対称にして、扉113、115のスイングの開始時間を異ならせること、さらには、キャッチャ32が引き抜かれるときに、スイングした状態から元に戻る時間を異ならせることの利点は、既に説明したシャッター330における利点と同様であるので、詳しい説明を省略する。なお、図6及び図7に示された状態において、レセプタクル30内に設けられたキャッチャ32は、プラグ10の先端と完全に嵌合しておらず、レセプタクル30の他端側へのスライドをまだ開始していない。
【0037】
次に、図8及び図9を参照して、プラグ10のハウジング13に設けられたシャッター130の開き動作について説明する。図8は、プラグ10が完全に挿入され、相手方コネクタである、レセプタクル30内に設けられたキャッチャ32の先端が、プラグ10内のプッシャー15に嵌合され、プラグ10側のフェルール16の端面と、レセプタクル30側のフェルール36の端面の突き合わせ接続が構成された状態における、プラグ10及びレセプタクル30全体の拡大断面図、図9は一部拡大断面図である。この状態では、プラグ10のハウジング13に設けられた扉113、115は完全に開状態となっている。また、レセプタクル30内に設けられたキャッチャ32は、プラグ10の先端と完全に嵌合後に押圧力によって押し込まれ、レセプタクル30の他端側へのスライドも完了している。
【0038】
上述の通り、プラグ本体11の軸方向中間には、ロックカバー12が設けられている。そして、ロックカバー12が設けられている上下及び左右側面は、ハウジング13の側面よりも低い凹面に形成されている。すなわち、プラグ本体11の上下及び左右側面では、ロックカバー12によって、ハウジング13の側面よりも低い凹面421が形成されている。プラグ10が完全に挿入されているとき、開状態にあるシャッター330の一組の扉313、315は、板ばね319の復元力によって、プラグ本体11の上下の凹面421又は左右の凹面421を両側から強く挟み、プラグ10の軸方向の移動を制限する。このとき、対向壁314、316の先端が、ロックカバー12の上下の凹面421又は左右の凹面421の肩に当たる。このようにして、プラグ10とレセプタクル30の嵌合がロックされる。
【0039】
上述の通り、ロックカバー12の一端は、ブーツ14に結合され、ブーツ14をプラグ10の引き抜き方向に引っ張ると、ロックカバー12がプラグ本体11上を所要距離だけスライド可能に構成されている。したがって、ブーツ14を指で掴んで後方に引っ張ると、ロックカバー12も後方にスライドし、ロックカバー12の上下の凹面421又は左右の凹面421の肩が、一組の扉313、315を押し開く。これにより、プラグ10とレセプタクル30の嵌合がアンロックされる。
【0040】
本実施の形態によると、プラグ10に設けられたロックカバー12と、レセプタクル30に設けられたシャッター330の扉313、315との組み合わせにより、プラグ10とレセプタクル30の嵌合をロックするロック機構が構成されている。また、ロックカバー12とブーツ14の組み合わせにより、そのような嵌合をアンロックするアンロック機構が構成されている。したがって、従来は、ロック及びアンロックのための部品を別途設ける必要があったが、本実施の形態によればそのような部品は不要であり、部品点数を削減することができる。
【0041】
さらに、本実施の形態によると、また、レセプタクル30のハウジング33には、上下及び左右に対称の開口が形成され、この開口に適合するように、プラグ10のハウジング13も、上下及び左右に対称な断面形状(正方形の断面形状)を有するよう構成することができる。したがって、従来は、キー溝等の挿入ガイドを、レセプタクル側又はプラグ側に設けて、プラグの上下の向きを、レセプタクルの一方向に合わせて嵌合させる必要があったが、本実施の形態によれば、キー溝等の挿入ガイドが不要であり、プラグの上下の向きが、横向きの状態であっても、レセプタクルに嵌合させることができる。したがって、プラグの上下の向きをレセプタクルの二方向のいずれかに合わせるだけで嵌合させることができるので、プラグの上下の方向性を気にすることなく瞬時にケーブルを接続したいという要求にも応えることができる。
【0042】
以上、図4から図9を参照して、プラグ10がレセプタクル30の開口に挿入されるときのシャッター330の開き動作、及びレセプタクル30内に設けられたキャッチャ32がプラグ10の開口に挿入されるときのシャッター130の開き動作について詳細に説明したが、キャッチャ32がプラグ10の開口から引き抜かれるときのシャッター130の閉じ動作、及びプラグ10がレセプタクル30の開口から引き抜かれるときのシャッター330の閉じ動作は、図9から図4に示された各部の動きを逆に辿ることによって、当業者は容易に理解できるので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0043】
以上要するに、本実施の形態によるシャッター付きコネクタは、(1)シャッターが提供する防塵作用及び遮光作用を、格段に向上させることができる、(2)シャッターの円滑な開閉を確保することができる、(3)ロック及びアンロックの機構のための部品が不要であり、部品点数を削減することができる、(4)プラグの上下の方向性を気にすることなく接続ができる等の多くの利点を有している。
【0044】
なお、本実施の形態において、レセプタクル10側のポート数は2つである必要はなく、1以上で良い。
【0045】
本実施の形態において、光ファイバを利用した光コネクタに本発明を適用した例を説明したが、本発明は、電線を利用した電気コネクタにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のシャッター付きコネクタは、放送機器、音響機器、ビデオ機器、光通信機器等の相互接続におけるプラグ及びレセプタクルに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 プラグ
11 プラグ本体
12 ロックカバー
13 ハウジング
14 ブーツ
15 プッシャー
16 フェルール
17、18 圧着スリーブ
21 光ファイバコード
30 レセプタクル
31 レセプタクル本体
32 キャッチャ
33 ハウジング
34 割スリーブ
35 スペーサーリング
36 フェルール
37 フェルールホルダー
38 スリーブホルダー
113、115、313、315 扉
114、116、314、316 対向壁
123、127、323、327 合わせ面
130、330 シャッター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ本体と、
相手方コネクタを挿入する開口が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた一組の扉を含むシャッターであって、前記一組の扉は、相手方コネクタの挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、相手方コネクタを挿入していないときに前記開口を閉状態とし、相手方コネクタを挿入したときに前記開口を開状態とするシャッターと、
を備え、
前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記シャッターが閉状態にあるときに前記コネクタ本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、
前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面である、
シャッター付きコネクタ。
【請求項2】
前記一組の扉は、前記シャッターが閉状態にあるときに、前記他方の扉の表面の一部又は全部が前記一方の扉の表面よりも高くなるよう構成され、相手方コネクタが挿入されるとき、前記他方の扉が相手方コネクタの先端と最初に接触する、
請求項1に記載のシャッター付きコネクタ。
【請求項3】
相手方コネクタが前記ハウジングの開口に挿入され、前記コネクタと嵌合されるとき、開状態にある前記シャッターの前記一組の扉が、相手方コネクタの両側面を挟み、前記相手方コネクタの軸方向の移動を制限する、
請求項1又は2に記載のシャッター付きコネクタ。
【請求項4】
コネクタ装置であって、
レセプタクルと、
前記レセプタクルに嵌合されるプラグとを含み、
前記レセプタクルは、
レセプタクル本体と、
前記プラグを挿入する開口が形成された第1のハウジングと、
前記第1のハウジング内に設けられた一組の扉を含む第1のシャッターであって、前記一組の扉は、前記プラグの挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、前記プラグを挿入していないときに前記開口を閉状態とし、前記プラグを挿入したときに前記開口を開状態とする第1のシャッターと、
を備え、
前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記第1のシャッターが閉状態にあるときに前記レセプタクル本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、
前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面であり、
前記プラグは、
プラグ本体と、
前記レセプタクル内に設けられたスリーブ部材を挿入する開口が形成された第2のハウジングと、
前記第2のハウジング内に設けられた一組の扉を含む第2のシャッターであって、前記一組の扉は、前記スリーブ部材の挿入及び引き抜きに応じて両側にスイングし、前記スリーブ部材を挿入していないときに前記開口を閉状態とし、前記スリーブ部材を挿入したときに前記開口を開状態とする第2のシャッターと、
を備え、
前記一組の扉の一方の扉の縁部及び他方の扉の縁部は、それぞれ対向壁を有し、これら対向壁は、前記第2のシャッターが閉状態にあるときに前記プラグ本体の軸を横切りかつ互いに重なり合う合わせ面を有し、
前記一方の扉の縁部の合わせ面は、前記一方の扉の裏面から下がる階段状の壁面であり、前記他方の扉の縁部の合わせ面は、前記他方の扉の表面から下がる階段状の壁面である、
コネクタ装置。
【請求項5】
前記一組の扉は、前記シャッターが閉状態にあるときに、前記他方の扉の表面の一部又は全部が前記一方の扉の表面よりも高くなるよう構成され、前記プラグ又は前記スリーブ部材が挿入されるとき、前記他方の扉が前記プラグ又は前記スリーブ部材の先端と最初に接触する、
請求項4に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記レセプタクルの第1のハウジングには、上下及び左右に対称の開口が形成され、前記プラグの第2のハウジングは、その断面形状が前記第1のハウジングの開口に適合するよう形成され、
前記プラグ本体の上下及び左右側面に、前記第2のハウジングの側面よりも低い凹面が形成され、開状態にある前記第1のシャッターの前記一組の扉が、前記プラグ本体の上下の凹面又は左右の凹面を挟み、前記プラグの軸方向の移動を制限する、
請求項5に記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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