説明

シャッター装置

【課題】上方を覆うカバーの貫通孔から検査装置側への開閉動作に伴う異物の落下を簡便な構成で防止できるシャッター装置を提供する。
【解決手段】シャッター装置20は、貫通孔31bが形成されたカバー31aにて上方が覆われ、貫通孔31bを通過可能な検査ヘッド16の少なくとも一部を貫通孔31bからカバー31aの上方に出没させて所定の検査を行う検査装置1に適用される。貫通孔31bを開く開位置と貫通孔31bを閉じる閉位置との間で移動するシャッター板21を備えるとともに、そのシャッター板21の上面には下方に窪む円形凹部21aが形成され、かつ円形凹部21aの底面に粘着シート23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔が形成されたカバーにて上方が覆われた検査装置に適用され、その貫通孔を開閉するシャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検査物の内周面を検査する装置として、軸状の検査ヘッドをその軸線の回りに回転させつつ軸線方向に送り出して被検査物の内部に検査ヘッドを挿入し、その検査ヘッドの外周から検査光を被検査物に照射してその被検査物の内周面をその軸線方向の一端から他端まで逐次走査し、その走査に対応した被検査物からの反射光を検査ヘッドを介して受光し、その受光した反射光の強度に基づいて被検査物の状態、例えば欠陥等の有無を判別する表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−281582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、検査装置は被検査物の検査ライン上に設置されて使用されることが多い。検査ライン上で検査装置を使用する場合には、検査ラインの構成や被検査物の特徴等の諸要因の制約を受けて検査装置を設置する向きが決められる。例えば、特許文献1の検査装置の場合、これを検査ライン上に置かれた被検査物の下方に設置し、下方から上方に向かって検査ヘッドを動かして検査を行うこともある。この向きに設置した場合には、上方から落下するゴミ等の異物から検査装置を保護することが要請される。特に、被検査物が切削加工等の機械加工で製作された金属製品の場合、機械加工に伴う切粉、切削油の残滓やその他の異物が被検査物に付着していることがある。そのため、これらの異物が検査開始前や検査中などに検査装置側へ落下することを極力避けることが望ましい。そこで、検査装置の上方の露出をできるだけ少なくするため、検査ヘッドを通過させる貫通孔を形成したカバーで上方を覆い、その貫通孔から検査ヘッドを出没させて検査を行い、かつ貫通孔を適宜に開閉するシャッター装置を設けることができる。
【0005】
しかしながら、検査ライン上に搬送される複数の検査物に対して繰り返し検査を行うような状況では、シャッター装置の上に落下して堆積した異物がシャッター装置の開閉動作に伴って貫通孔から検査装置側へ落下してしまうこともある。これを回避するために、エアブロー装置や吸引装置等の異物排除装置を利用してシャッター装置の上に落下した異物を逐次排除することもできる。しかし、そのためには異物排除装置を別途準備しなければならないのでコストが嵩む。また、エアブロー装置を採用した場合には、その風圧によって異物が舞い上がり、却って貫通孔からの異物の落下を助長するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上方を覆うカバーの貫通孔から検査装置側への開閉動作に伴う異物の落下を簡便な構成で防止できるシャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャッター装置は、貫通孔(31b)が形成されたカバー(31a)にて上方が覆われ、前記貫通孔を通過可能な検査ヘッド(16)の少なくとも一部を前記貫通孔から前記カバーの上方に出没させて所定の検査を行う検査装置(1)に適用されるシャッター装置(20)であって、前記カバーの前記貫通孔が開閉されるように前記貫通孔を開く開位置(図3の想像線の位置)と前記貫通孔を閉じる閉位置(図3の実線の位置)との間で移動する開閉部材(21)と、前記カバーの上方から前記開閉部材に向かって落下する異物を前記開閉部材の上で保持できる異物保持手段(21a、23)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0008】
このシャッター装置によれば、カバー上方から落下する異物を開閉部材の上で保持できる。従って、仮に開閉部材の上に異物が存在した状態で開閉動作した場合でも、その開閉動作に伴って開閉部材の上にある異物が検査装置側へ落下することを防止できる。なお本発明において、保持とは開閉部材の上に落下した異物が開閉部材の動作の勢いによって開閉部材から落下することを阻止できるという意味である。従って、その落下を阻止できれば十分であり、異物は開閉部材の上で静止しても動いても構わない。
【0009】
例えば、本発明に係る異物保持手段は、前記開閉部材の上面に形成されて下方に窪む凹部(21a)として構成されてもよい。凹部の深さ、広さ及び形状等の諸条件は異物が開閉部材の上から落下しない限度で適宜に設定される。例えば、開閉部材に形成された凹部によって開閉部材を皿状の形状を有するようにしてもよい。
【0010】
また、前記異物保持手段は、前記開閉部材の上面に設けられて前記異物を付着可能な異物捕捉部材(23)として構成されてもよい。この異物捕捉部材としては、例えば粘着力が付与された公知の粘着シート、微細な多数の孔が表面に形成されて吸着力を発揮する公知の吸着シート、又は磁力によって磁性体の異物を表面に付着できるマグネットシート、あるいはこれらを適宜組合わせたものを採用できる。なお異物捕捉部材はシート状でなくてもよい。
【0011】
また、凹部と異物捕捉部材とを組合わせて異物保持手段を構成してもよい。即ち、前記異物保持手段は、前記開閉部材の上面に形成されて下方に窪む凹部(21a)と、前記凹部の底面に設けられて前記異物を付着可能な異物捕捉部材(23)とを備えてもよい。この場合、仮に異物が異物捕捉部材から離れてしまっても凹部にて開閉部材からの落下が阻止されるので、異物の落下を防止する効果が向上する。また、凹部の深さが浅いと異物の落下防止効果が弱まるが、その分は異物捕捉部材で補うことができる。従って、凹部のみで異物保持手段を構成する場合よりも、凹部の深さを浅くすることができるので開閉部材の薄型化を容易に実現できる。
【0012】
本発明に係る異物捕捉部材は、接着等の固定手段を介在させて開閉部材に着脱不能に固定してもよいが、開閉部材に対して着脱可能に設けられてもよい。着脱可能に設ける場合には、異物捕捉部材に付着した異物の量が増えて汚れて来たら、その異物捕捉部材を開閉部材から取り外して異物のない新たな異物捕捉部材に交換することができる。従って、開閉部材に装着された状態で異物を取り除かねばならない着脱不能な場合と比べてメインテナンスに要する労力が格段に低減される。なお、異物捕捉部材を凹部と組合わせる場合には凹部の底面に異物捕捉部材を置くだけでもよい。異物捕捉部材を置くだけでは何らかの原因で開閉部材から異物捕捉部材が離れてしまうことも考えられる。そこで、着脱手段を介在させて異物捕捉部材を開閉部材に装着してもよい。この着脱手段としては、面ファスナー等の周知の手段を適用できる。
【0013】
また、本発明の一態様においては、前記開閉部材は、前記開位置と前記閉位置との間で水平方向に移動するように構成されていてもよい。この場合、開閉部材の開閉動作の際に、開閉部材の水準が一定に保持されるので、上述した異物の落下を防止する効果がさらに向上する。
【0014】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明によれば、カバー上方から落下する異物を開閉部材の上で保持できる異物保持手段を設けたので、仮に開閉部材の上に異物が存在した状態で開閉動作した場合でも、その開閉動作に伴って開閉部材の上にある異物が検査装置側へ落下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一形態に係るシャッター装置が適用された表面検査装置の概略構成を示している。表面検査装置1は、図示しない検査ラインに組み込まれ、その検査ラインにて搬送される被検査物100の円筒状の内周面100aの検査に供される。被検査物100は表面検査装置1の上方(図1の上方)に設置され、表面検査装置1にてその下方から所定の検査が実施される。表面検査装置1は、そのような検査を実行して被検査物100の内周面100aに関する情報を出力する検査機構2と、検査機構2の各部の動作を制御するとともに、検査機構2が出力した情報を処理する制御部3とを備えている。さらに、検査機構2は被検査物100に対して検査光を投光し、かつ被検査物100からの反射光を受光するための検出ユニット5と、その検出ユニット5に所定の動作を与えるための駆動ユニット6とを備えている。
【0017】
検出ユニット5は、検査光の光源としてのレーザダイオード(以下、LDと呼ぶ。)11と、被検査物100からの反射光を受光し、その反射光の単位時間当たりの光量(反射光強度)に応じた電流又は電圧の電気信号を出力するフォトディテクタ(以下、PDと呼ぶ。)12と、LD11から射出される検査光を被検査物100に向かって導く投光ファイバ13と、被検査物100からの反射光をPD12に導くための受光ファイバ14と、そららのファイバ13、14を束ねた状態で保持する保持筒15と、その保持筒15の外側に同軸的に設けられる中空軸状の検査ヘッド16とを備えている。保持筒15の先端には、投光ファイバ13を介して導かれた検査光を検査ヘッド16の軸線AX1の方向(以下、軸線方向と呼ぶ。)に沿ってビーム状に射出させ、かつ検査ヘッド16の軸線方向に沿って検査光とは逆向きに進む反射光を受光ファイバ14に集光するレンズ17が設けられている。検査ヘッド16の先端部(図1において上端部)には、光路変更手段としてのミラー18が固定され、検査ヘッド16の外周にはそのミラー18と対向するようにして透光窓16aが設けられている。ミラー18は、レンズ17から射出された検査光の光路を透光窓16aに向けて変更し、かつ透光窓16aから検査ヘッド16内に入射した反射光の光路をレンズ17に向かって進む方向に変更する。
【0018】
駆動ユニット6は、直線駆動機構30と、回転駆動機構40と、焦点調整機構50とを備えている。直線駆動機構30は検査ヘッド16をその軸線方向に移動させる移動手段として設けられている。このような機能を実現するため、直線駆動機構30は、ベース31と、そのベース31に固定された一対のレール32と、レール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動可能なスライダ33と、そのスライダ33の側方に検査ヘッド16の軸線AX1と平行に配置された送りねじ34と、その送りねじ34を回転駆動する電動モータ35とを備えている。スライダ33は検出ユニット5の全体を支持する手段として機能する。即ち、LD11及びPD12はスライダ33に固定され、検査ヘッド16は回転駆動機構40を介してスライダ33に取り付けられ、保持筒15は焦点調節機構50を介してスライダ33に取り付けられている。さらに、送りねじ34は、スライダ33に固定されたナット36にねじ込まれている。従って、電動モータ35にて送りねじ34を回転駆動することにより、スライダ33がレール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動し、それに伴ってスライダ33に支持された検出ユニット5の全体が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。直線駆動機構30を用いた検出ユニット5の駆動により、被検査物100の内周面100aに対する検査光の照射位置を検査ヘッド16の軸線方向に関して変化させることができる。この形態では軸線方向が鉛直方向と平行になるように表面検査装置1が設置される。
【0019】
ベース31の前端(図1において上端)には、カバー31aが設けられている。カバー31aはその上方から落下するゴミ等の異物から表面検査装置1を保護するために設けられている。被検査物100が切削加工等の機械加工にて製作された製品の場合、切粉、切削油の残滓等の異物が被検査物100に付着していることがあり、これらの異物が表面検査装置1側に落下する場合がある。但し、カバー31aで上方が完全に隠されてしまうと検査ヘッド16を被検査物100へアクセスさせることができないため、カバー31aには、検査ヘッド16と同軸でかつ検査ヘッド16が通過可能な内径を有した貫通孔31bが形成されている。検査ヘッド16は必要に応じてカバー31aの下方から貫通孔31bを通過して被検査物100の内部へと繰り出されるとともに、繰り出された検査ヘッド16は必要に応じてカバー31aの下方に収容される。この形態では検査ヘッド16の先端から所定位置までの一部がカバー31aの上方に出没する。
【0020】
表面検査装置1にはこのような検査ヘッド16の動作に連動して貫通孔31bを開閉できるシャッター機構20が設けられている。図2は表面検査装置1の上部を拡大した拡大図、図3は、図2のIII-III線に関する断面模式図である。これらの図に示すように、シャッター機構20は、カバー31aの貫通孔31bを開閉する板状のシャッター板21と、そのシャッター板21が図3の想像線で示した開位置と実線で示した閉位置との間で水平方向に回転移動するようにシャッター板21を軸線AX2の回りに回転駆動する電動モータ22とを備えている。シャッター板21の上面には、下方に窪んだ円形状の円形凹部21aが貫通孔31bに対応する位置に形成されている。円形凹部21aはプレス加工等の加工手段で形成される。円形凹部21aは貫通孔31bの内径よりも若干大きな内径を有しており、その底面には異物を付着できる円形状に成形された粘着シート23が粘着力が付与された粘着面を上方に向けて敷かれている。電動モータ22はシャッター板21の開閉位置に対応する回転角度θの範囲内で両方向に回転可能に構成されている。従って、電動モータ22の回転によりシャッター板21が開位置から閉位置に繰り出されると、円形凹部21aが貫通孔31bの直下に位置して貫通孔31bが閉じられる。これにより、カバー31aの上方から貫通孔31bを通じて落下する異物の侵入が防止される。そして、カバー31aの上方からシャッター板21へ向かって落下した異物は、円形凹部21bによって受け止められて粘着シート33に付着して捕捉される。粘着シート33は円形凹部21aの底面に単に置かれてもよいし、周知の面ファスナー等の着脱手段を介在させて装着されてもよい。
【0021】
回転駆動機構40は検査ヘッド16を軸線AX1の回りに回転させる回転駆動手段として設けられている。そのような機能を実現するため、回転駆動機構40は、検査ヘッド16を軸線AX1の回りに回転自在に支持する軸受(不図示)と、回転駆動源としての電動モータ41と、その電動モータ41の回転を検査ヘッド16に伝達する伝達機構42とを備えている。伝達機構42には、ベルト伝達装置、歯車列との公知の回転伝達機構を利用してよい。電動モータ41の回転を伝達機構42を介して検査ヘッド16に伝達することにより、検査ヘッド16がその内部に固定されたミラー18を伴って軸線AX1の回りに回転する。回転駆動機構40を用いた検査ヘッド16の回転により、被検査物100の内周面100aに対する検査光の照射位置を周方向に関して変化させることができる。そして、検査ヘッド16の軸線方向への移動と軸線AX1の回りの回転とを組合わせることにより、被検査物100の内周面100aをその全面に亘って検査光で走査することが可能となる。なお、検査ヘッド16の回転時において、保持筒15は回転しない。さらに、回転駆動機構40には、検査ヘッド16の回転位置に応じたパルス信号を出力するロータリーエンコーダ43が設けられている。ロータリーエンコーダ43は、検査ヘッド16に取り付けられて一体に回転し、かつ周方向に沿って所定間隔で並ぶ複数の検知孔(不図示)が形成された円板43aと、その円板43aの検知孔の位置に応じたパルスを生成するパルス生成部43bとを備える。ロータリーエンコーダ43からのパルス信号は制御部3にて利用される。
【0022】
焦点調節機構50は、検査光が被検査物100の内周面100aにて焦点を結ぶように保持筒15を軸線AX1の方向に駆動する焦点調節手段として設けられている。その機能を実現するため、焦点調節機構50は保持筒50の基端部に固定された支持板51と、直線駆動機構30のスライダ33と支持板51との間に配置されて支持板51を検査ヘッド16の軸線方向に案内するレール52と、検査ヘッド16の軸線AX1と平行に配置されて支持板51にねじ込まれた送りねじ53と、その送りねじ53を回転駆動する電動モータ54とを備えている。電動モータ54にて送りねじ53を回転駆動することにより、支持板51がレール52に沿って移動して保持筒15が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。これにより、検査光が被検査物100の内周面100a上で焦点を結ぶようにレンズ17からミラー18を経て内周面100aに至る光路の長さを調節することができる。
【0023】
次に制御部3について説明する。制御部3は、表面検査装置1による検査工程の管理、測定結果の処理等を実行するコンピュータユニットとしての演算処理部60と、その演算処理部60の指示に従って検査機構2の各部の動作を制御する動作制御部61と、PD12の出力信号に対して所定の処理を実行する信号処理部62と、演算処理部60に対してユーザが指示を入力するための入力部63と、演算処理部60における測定結果等をユーザに提示するための出力部64と、演算処理部60にて実行すべきコンピュータプログラム、及び測定されたデータ等を記憶する記憶部65とを備えている。演算処理部60、入力部63、出力部64及び記憶部65はパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータ機器を利用してこれらを構成することができる。この場合、入力部63にはキーボード、マウス等の入力機器が設けられ、出力部64にはモニタ装置が設けられる。プリンタ等の出力機器が出力部64に追加されてもよい。記憶部65には、ハードディスク記憶装置、あるいは記憶保持が可能な半導体記憶素子等の記憶装置が用いられる。動作制御部61及び信号処理部62A、62Bはハードウエア制御回路によって実現されてもよいし、コンピュータユニットによって実現されてもよい。
【0024】
被検査物100の内周面100aの表面を検査する場合、演算処理部60、動作制御部61及び信号処理部62のそれぞれは次の通り動作する。なお、この場合、被検査物100は検査ヘッド16と同軸上に配置される。検査の開始にあたって、演算処理部60は入力部63からの指示に従って動作制御部61に被検査物100の内周面100aを検査するために必要な動作の開始を指示する。その指示を受けた動作制御部61は、LD11を所定の強度で発光させるとともに、所定のタイミングでシャッター板21を閉位置から開位置へ移動させて貫通孔31bが開かれるように電動モータ22の動作を制御する。さらに、動作制御部61は検査ヘッド16が軸線方向に移動し、かつ軸線AX1の回りに一定速度で回転するようにモータ35及びモータ41の動作を制御する。このような動作制御により、内周面100aがその一端から他端まで検査光によって走査される。そして、その走査が終了した場合には、検査ヘッド16が軸線方向に沿って下方に移動するように電動モータ35の動作を制御する。検査ヘッド16の先端がシャッター板16に干渉しない位置まで下がったことを確認した上で、シャッター板21を開位置から閉位置へ移動させて貫通孔31bが閉じられるように電動モータ22の動作を制御する。演算処理部60から次回の検査に関する開始指示があり、かつ所定のタイミングに達するまでは、シャッター板21は閉位置に保持される。この所定タイミングは検査ヘッド16の動作に支障を来さない範囲内で可能な限り遅くなるように設定される。
【0025】
内周面100aの走査に連係して、信号処理部62にはPD12の出力信号が順次導かれる。信号処理部62は、PD12の出力信号を演算処理部60にて処理するために必要なアナログ信号処理を実施し、さらに、その処理後のアナログ信号を所定のビット数でA/D変換し、得られたデジタル信号を反射光信号として演算処理部60に出力する。信号処理部62が行うA/D変換は、ロータリーエンコーダ43から出力されるパルス列をサンプリングクロック信号として利用して行われる。これにより、検査ヘッド16が所定角度回転する間のPD12の受光量(強度)に相関した階調のデジタル信号が生成されて信号処理部62から出力される。
【0026】
信号処理部62から反射光信号を受け取った演算処理部60はその取り込んだ信号を記憶部65に記憶する。さらに、演算処理部60は、記憶部65が記憶する反射光信号を利用して被検査物100の内周面100aを平面的に展開した2次元画像を生成する。この場合、反射光信号から得られる原画像に対して、エッジ処理、二値化処理等を施すことにより、検査で検出すべき欠陥等を強調した2次元画像をさらに生成してもよい。そして、演算処理部60は、得られた画像を所定のアルゴリズムで処理することにより、内周面100aに許容限度を超える欠陥が存在するか否かを判定し、その判定結果を出力部65に出力する。
【0027】
以上説明したように、本形態の表面検査装置1によれば、検査ヘッド16の動作に連動してカバー31aの貫通孔31bを開閉するシャッター機構20を備えているので、円滑な検査の実行を確保しつつ上方から貫通孔31aを通じた異物の侵入を防止できる。さらに、シャッター板21の上面に円形凹部21aが形成されて、シャッター板21がいわば皿状の形状に構成されているので、円形凹部21aで受けた異物が開閉動作によって落下することが防止される。また、その開閉動作は水平方向への回転移動であるので、シャッター板21の動作中の水準が一定に保持され、しかも、円形凹部21aの底面に粘着シート23が設けられているので、異物の落下防止効果がさらに強化される。また、円形凹部21aと粘着シート23とを同時に設けたので、円形凹部21aの深さを浅くすることができ、シャッター板21が薄型化される。粘着シート23はシャッター板21から容易に取り外すことができる。そのため、粘着シート23に付着した異物が多くなって汚れて来た場合には新しい粘着シート23に交換すればよいので、メインテナンスの労力が低減する。
【0028】
以上の形態において、表面検査装置1が本発明に係る検査装置に、シャッター機構20が本発明に係るシャッター装置に、シャッター板21が本発明に係る開閉部材に、それぞれ相当する。シャッター板21に形成された円形凹部21aとその底面に設けられた粘着シート23とが組合わされて本発明に係る異物保持手段が構成される。
【0029】
但し、本発明は以上の形態に限定されず、種々の形態にて実施してよい。本発明のシャッター装置を適用する検査装置の検査内容に制限はなく、少なくともカバーにて上方が覆われ、かつそのカバーに形成された貫通孔から検査ヘッドを出没させる形態の検査装置に本発明のシャッター装置を適用できる。また、上記の形態では、表面検査装置1がその構成の一部としてカバー31aとシャッター機構20とを有している。しかし、検査装置とは明確に分離して、例えば検査ライン側にカバーとシャッター装置が設けられる形態で本発明が実施されてもよい。また、カバーに形成された貫通孔から異物が侵入し得る限度で、水平面に対して傾いて設置される検査装置にも本発明のシャッター装置を適用できる。さらに、上記の形態では、シャッター板16をカバー21の下面に沿って設けたが、これとは逆に、シャッター板16をカバー21の上面に沿って設ける形態で本発明を実施してもよい。
【0030】
また、上記の形態では、シャッター板21の上面に円形凹部21aを設け、かつ円形凹部21aの底面に粘着シート23を設けたが、これらを単独でシャッター板21に設けてもよい。つまり、シャッター板21の円形凹部21aに粘着シート23を設けない形態及びシャッター板21を円形凹部21aのない平坦なものとし、これに粘着シート23を装着した形態のいずれの形態で本発明を実施してもよい。これらの形態の場合、円形凹部21aが本発明に係る凹部に、粘着シート23が本発明に係る異物捕捉部材にそれぞれ相当し、これらが単独で本発明に係る異物保持手段としてそれぞれ機能する。
【0031】
凹部の深さ、広さ及び形状等の諸条件は異物が開閉部材の上から落下しない限度で適宜に設定されればよいので、凹部が円形である必要はなく他の形状でもよい。また、異物捕捉部材としては、例えば上述した粘着シート23の代りに、微細な多数の孔が表面に形成されて吸着力を発揮する公知の吸着シートや磁力によって磁性体の異物を表面に付着できるマグネットシート、あるいはこれらを適宜組合わせたもので実施してよい。また、異物捕捉部材はシート状でなくてもよい。また、シャッター板16を直線移動させるように実施してもよい。さらに、シャッター板21を駆動する電動モータ22の代りとして、検査ヘッド16の軸線方向の運動に連係してシャッター板21が開閉動作するように、検査ヘッド16の運動をシャッター板21の運動に変換して伝達するリンク機構やねじ機構等の周知の伝達機構を設け、これにより本発明を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一形態に係るシャッター装置が適用された表面検査装置の概略構成を示した図。
【図2】図1の表面検査装置の上部を拡大した拡大図。
【図3】図2のIII-III線に関する断面模式図。
【符号の説明】
【0033】
1 表面検査装置(検査装置)
16 検査ヘッド
20 シャッター機構(シャッター装置)
21 シャッター板(開閉部材)
21a 円形凹部(凹部、異物保持手段)
23 粘着シート(異物捕捉部材、異物保持手段)
31a カバー
31b 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたカバーにて上方が覆われ、前記貫通孔を通過可能な検査ヘッドの少なくとも一部を前記貫通孔から前記カバーの上方に出没させて所定の検査を行う検査装置に適用されるシャッター装置であって、
前記カバーの前記貫通孔が開閉されるように前記貫通孔を開く開位置と前記貫通孔を閉じる閉位置との間で移動する開閉部材と、前記カバーの上方から前記開閉部材に向かって落下する異物を前記開閉部材の上で保持できる異物保持手段と、を備えることを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記異物保持手段は、前記開閉部材の上面に形成されて下方に窪む凹部として構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記異物保持手段は、前記開閉部材の上面に設けられて前記異物を付着可能な異物捕捉部材として構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記異物保持手段は、前記開閉部材の上面に形成されて下方に窪む凹部と、前記凹部の底面に設けられて前記異物を付着可能な異物捕捉部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記異物捕捉部材は、前記開閉部材に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記開閉部材は、前記開位置と前記閉位置との間で水平方向に移動するように構成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のシャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−315822(P2007−315822A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143415(P2006−143415)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【出願人】(505216449)株式会社 KTSオプティクス (17)
【Fターム(参考)】