説明

シャワーヘッド

【課題】 給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にして吐水することができるシャワーヘッドを提供する。
【解決手段】 本発明のシャワーヘッド1は、複数の散水孔10に水を供給する複数の通水孔24を備えた通水板26と、この通水板の隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水の水流によって負圧を発生させこの負圧により周囲から空気を引き込む空気取入通路33と、隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を互いに衝突させるように水流の方向を決定する通水方向決定部34と、この通水方向決定部により方向が決定された水を互いに衝突させると共に上記空気取入部により引き込まれた空気を混入して泡沫状とする通水衝突部36と、この通水衝突部で衝突して泡沫状となった水を整流して散水孔から吐水する整流部38と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッドに係り、特に、空気を混入させた泡沫状の水を吐水するシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キッチン用の湯水混合栓等に使用されるシャワーヘッドにおいて、使用者がシャワーヘッドから吐水された水を利用してシンク内で食器洗い等の作業を行っている際に、シャワーヘッドから吐水された水が食器やシンクの表面に当たって飛散してしまう、いわゆる「水はね現象」を低減させる目的として、給水された水を空気が混入された泡沫状の水の状態にして吐水するシャワーヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような従来のシャワーヘッドでは、シャワーヘッドの内部に複数の通水孔が形成され、これら各1つの通水孔につき1つの吐水孔(散水孔)が対応するように形成されており、シャワーヘッドの内部に給水された水は、各通水孔を通過し、それぞれに対応する吐水孔から吐水されるようになっている。また、通水孔と吐水孔との間には複数枚の網が重ねて設けられており、各通水孔から流出した水がこれらの網を通過して各吐水孔に流入する際、その水流によって生じた負圧によって、シャワーヘッドの外部から隙間を通って空気が引き込まれるようになっている。この引き込まれた空気と水流が共に網を通過することによって攪拌されることにより、空気が混入された泡沫状の水が生成されて各吐水孔から吐水されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−181328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のシャワーヘッドにおいては、通水孔から吐水孔へ流れる水流は、網を通過することによる圧力損失の影響を大きく受けることになるため、吐水孔からの吐水の勢いが低下してしまうという問題がある。特に、比較的低い給水圧の水がシャワーヘッドに給水された場合には、吐水孔からの吐水の勢いが著しく低下してしまい、十分な吐水が得られないという問題がある。
また、従来のシャワーヘッドの通水孔と吐水孔との間に取り付けられている網は、ごみ噛み等の目詰まりのために定期的に取り出して交換したりしなければならないため、メンテナンスが面倒であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術の課題を解決するためになされたものであり、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にして吐水することができるシャワーヘッドを提供することを目的としている。
また、本発明は、部品点数を減らしてメンテナンスの負担を軽減することができるシャワーヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、給水された水を複数の吐水孔から吐水するシャワーヘッドであって、上記複数の吐水孔に水を供給する複数の通水孔を備えた通水部と、この通水部の隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水の水流によって負圧を発生させこの負圧により周囲から空気を引き込む空気取入部と、上記隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を互いに衝突させるように水流の方向を決定する通水方向決定部と、この通水方向決定部により方向が決定された水を互いに衝突させると共に上記空気取入部により引き込まれた空気を混入して泡沫状とする通水衝突部と、この通水衝突部で衝突して泡沫状となった水を整流して上記吐水孔から吐水する整流部と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、給水された水は通水部の複数の通水孔を通過すると、通水方向決定部が、複数の通水孔のうちの隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を互いに衝突させるように差し向けると共に、その水流によって生ずる負圧を利用して周囲から空気取入部を経て空気が引き込まれる。また、この通水方向決定部で差し向けられた水は、通水衝突部で互いに衝突し、空気取入部から引き込まれた空気が混入されて泡沫状となる。さらに、通水衝突部で衝突して泡沫状となった水は整流部で整流されて吐水孔から吐水される。この結果、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にして吐水することができる。また、通水方向決定部により、シャワーヘッドの部品点数を減らすことができるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0007】
本発明において、通水方向決定部は、隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を受け入れてその断面がすり鉢状に下流側に向かって小さくなるように形成された流路であることが好ましい。
このような構成により、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にすることができる。また、通水方向決定部により、シャワーヘッドの部品点数を減らすことができるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0008】
本発明において、通水方向決定部は、隣接する少なくとも2つの通水孔から流出する水が互いに衝突するように上記通水孔自体の方向を設定する通水孔設定手段であってもよい。
このような構成により、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にすることができる。また、通水方向決定部により、シャワーヘッドの部品点数を減らすことができるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0009】
本発明において、通水方向決定部は、隣接する少なくとも2つの通水孔の出口近傍に設けられ負圧を発生させて上記通水孔からの流出する水を上記通水衝突部の方向に向ける負圧発生手段であってもよい。
このような構成により、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にすることができる。通水方向決定部により、シャワーヘッドの部品点数を減らすことができるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0010】
本発明において、整流部は、ほぼ円筒状に形成された流路を含み、この流路の長さは、4〜20mmであることが好ましい。
このように構成により、通水衝突部で衝突して泡沫状となった水が整流部のほぼ円筒状の流路を流れることにより、泡沫状の水を水流の勢いを著しく低下させることなく整流して吐水孔から吐水することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシャワーヘッドによれば、給水された水を水流の勢いを著しく低下させることなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にして吐水することができる。また、部品点数を減らしてメンテナンスの負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明のシャワーヘッドの実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドが組み込まれている水栓装置を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態のシャワーヘッド1は、特にキッチン等で使用される、いわゆる「シングルレバー湯水混合栓」と呼ばれる水栓装置2の吐水側に組み込まれたものである。
また、水栓装置2は操作レバー4を備え、この操作レバー4を操作することにより、シャワーヘッド1の吐水部6から吐水される湯水の温度や吐水量を調整することができるように構成されている。
さらに、シャワーヘッド1の吐水部6には、その中央に開口する単一の吐水孔8が形成され、吐水孔8の周囲には、吐水孔8の直径よりも小さい直径を有する複数の吐水孔である散水孔10が形成されている。また、シャワーヘッド1の吐水部6には、吐水部6における吐水状態をシャワー状態または非シャワー状態に切り替える切替ハンドル12が回動可能に設けられている。切替ハンドル12を回動操作することにより、複数の散水孔10のみからシャワー状の吐水を行う設定(以下「シャワー設定」と呼ぶ)と、単一の吐水孔8のみから太くて一本状となる非シャワー状の吐水を行う設定(以下「非シャワー設定」と呼ぶ)に切り替えることができるように構成されている。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドを示す拡大側面断面図である。ここで、図2に示すシャワーヘッド1は、切替ハンドル12をシャワー設定にした状態を示している。また、図2では、シャワーヘッド内部の水の流れを実線の矢印で示し、空気の流れを破線の矢印で示している。
図2に示すように、シャワーヘッド1の内部には、シャワーヘッド1の流入部14より流入した水が流れる通水路16が形成されている。シャワーヘッド1の吐水部6は、切替ハンドル12に一体的に設けられた流路切替ユニット18を備えている。
流路切替ユニット18には、最終的には各散水孔10へと連通するシャワー用通水路20と、単一の吐水孔8に連通する非シャワー用通水路22が形成されている。シャワーヘッド1がシャワー設定の状態では、流路切替ユニット18の上流側に位置する通水路16aと流路切替ユニット18のシャワー用通水路20のみが連通し、通水路16aと非シャワー用通水路22は連通しないようになっている(図2参照)。これとは逆に、シャワーヘッド1が非シャワー設定の状態では、流路切替ユニット18の上流側に位置する通水路16aと非シャワー用通水路22のみが連通し、通水路16aとシャワー用通水路20は連通しないようになっている。
【0014】
また、流路切替ユニット18のシャワー用通水路20は、複数の通水孔24が形成された通水板26によって仕切られており、シャワー用通水路20の水は、通水板26の各通水孔24のみを通過し、詳細は後述する吐水ユニット28の通水路30へ流れるようになっている。
さらに、吐水ユニット28は、通水板26の下流側に隣接して配置されている。吐水ユニット28は、その下流側端部に複数の散水孔10を含み、吐水ユニット28内には、各散水孔10毎に1つの通水路30が形成されている。
また、詳細は後述するが、通水板26の複数の通水孔24については、隣接する3つの通水孔24を一組とする通水孔群Gごとに区別されており、各通水路30の上流端である詳細は後述する通水方向決定部34の入口部32は、各通水孔群Gと隙間を置いて対向して配置されている。すなわち、吐水ユニット28の1つの通水路30(または1つの散水孔10)は、対応する1つの通水孔群Gに属する3つ通水孔24と連通するようになっている。
さらに、通水板26と吐水ユニット28との間には、一部が大気に開放されている空気取入通路33が形成されている。
また、各通水孔群Gの各通水孔24から流出した水は、各通水孔群Gに対応する吐水ユニット28の各通水路30を通過することにより、空気取入通路33から各通水路30内に引き込まれた空気が混入して泡沫状の状態のままを維持して各散水孔10から吐水されるようになっている。
【0015】
つぎに、通水板26の通水孔24と吐水ユニット28の通水路30の詳細について説明する。
図3は、本実施形態のシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する3つの通水孔と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の構成部分のみを拡大して模式的に示す部分拡大斜視図である。
図3に示すように、通水板26の1つの通水孔群Gに属する3つの通水孔24は、互いに各通水孔24の中心を結ぶ形状がほぼ正三角形となるように配置され、通水板24をその法線方向に貫くように延びている。
また、吐水ユニット28の通水路30は、上流側から下流側に向かう方向順に、通水方向決定部34の入口部32、通水方向決定部34、通水方向決定部34の出口部40、通水衝突部36、通水整流部38によって構成されている。
【0016】
通水方向決定部34の入口部32は、シャワー用通水路20から通水板26の各通水孔群Gの各3つの通水孔24を経て流出した水が流入する部分であり、1つの入口部32は、対応する3つの通水孔24のすべてを含むような大きさにほぼ形成されている。具体的には、入口部32は、対応する3つの通水孔24のすべてを含む外接円よりもわずかに大きい円形形状となっている。
【0017】
通水方向決定部34は、その上流側端部となる入口部32と、この入口部32の下流側に位置し、かつ入口部32の直径よりも小さい直径を有する出口部40を含む。
また、通水方向決定部34の入口部32から出口部40にかけて、ほぼすり鉢状に窄まるように壁面42が形成されている。通水板26の各通水孔群Gの各3つの通水孔24から高い流速で流出した各水流がそれぞれ通水方向決定部34の入口部32で受け入れられると、各水流方向が決定され、各水流が通水方向決定部34の壁面42に沿うように流れて、互いが出口部40に向けて差し向けられるようになっている。
さらに、シャワー用通水路20から通水板26の各通水孔群Gの3つの通水孔24から流出した水が、対応する各通水路30の通水方向決定部34へ高い流速で流れると、この水流によって空気取入通路33内の気圧が下がり、シャワーヘッド1の外部から空気取入通路33を経て、通水方向決定部34の水流の方向に空気を引き込もうとする負圧が発生するようになっている。
【0018】
通水衝突部36の入口部36aは、通水方向決定部34の出口部40に相当している。通水衝突部36では、出口部40に到達した各水流が互いに衝突して合流し始めると共に、空気取入通路33から通水方向決定部34に引き込まれた空気が出口部40で衝突した水流に巻き込まれ、大量の空気が混入された泡沫状の水が生成されるようになっている。
【0019】
通水整流部38は、その下流側端部が散水孔10を含み、通水衝突部36で衝突させて空気を混入させて泡沫状にさせた水流は、通水整流部38を通過することにより整流化されて、散水孔10から吐水されるようになっている。また、整流部38は、その上流側端部から下流側にわずかに拡張するようにほぼ円錐台状に形成された上流側流路38aと、この上流側流路38aの下流側端部から散水孔10にかけてほぼ円筒状に形成された下流側流路38bを備えている。
【0020】
また、各散水孔10から泡沫状の吐水を実現するために望ましい通水板26の通水孔24と吐水ユニット28の通水路30に関する代表的な部分の諸寸法を以下に示す。
上水道の一般生活用水を用いて給水圧0.05〜0.75MPaの湯水をシャワーヘッド1の通水路16に給水して、シャワーヘッド1をシャワー設定にして使用する場合、各散水孔10の直径d1は、1〜2mmが好ましく、1.5mmが最も好ましい。
一例として、各通水孔群Gの3つの通水孔24に対応する各散水孔10の直径d1を1.5mmに設定した場合、各通水孔24の直径d2は、0.3〜0.5mmが好ましく、0.4mmが最も好ましい。
また、各通水孔群Gの3つの通水孔24のすべてを含む外接円の直径d3は、2.8〜4.0mmが好ましく、3.0mmが最も好ましい。
さらに、通水方向決定部34の入口部32の直径d4は、d3よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、3.1mmが最も好ましい。また、通水路30の通水方向決定部34の出口部40の直径d5は、1.5〜2.0mmが好ましく、2.0mmが最も好ましい。
また、通水路30の整流部38のほぼ円筒状に形成された下流側流路38b部分の長さ(整流区間の長さ)Lは、4.0〜20mmが好ましく、5.0mmが最も好ましい。
さらに、各通水孔群Gの総流路断面積S1とし、1つの通水孔24の流路断面積をsとし、各散水孔10の流路断面積をS2とすると、1つの散水孔10の流路断面積S2に対する1つの通水孔群Gの総流路断面積S2(または3つの通水孔24の総流路断面積3s)の比、すなわち、面積比S1/S2(又は3s/S2)は、0.10〜0.40が好ましく、0.16〜0.27が最も好ましい。
【0021】
なお、本実施形態のシャワーヘッド1においては、一例として、1つの通水孔群Gに属する通水孔24の個数を3つに設定した形態について説明しているが、このような形態に限定されず、1つの通水孔群Gに属する通水孔24の個数については、3つ以外にも、2つに設定したり、4つ以上の個数に設定してもよく、要するに、1つの通水孔群Gに属する通水孔が複数個に設定された形態であればよい。また、このように通水孔24を3つ以外の複数個に変更する場合には、上述した面積比S1/S2(=0.10〜0.40)に基づいて各直径d1,d2を決定することができる。
【0022】
つぎに、本実施形態のシャワーヘッド1の作用について説明する。
シャワー設定にされたシャワーヘッド1の流入部14から通水路16に流入した湯水は、流路切替ユニット18の上流側に位置する通水路16aを経て、流路切替ユニット18のシャワー用通水路20に流れる。
シャワー用通水路20内の水は、通水板26の各通水孔群Gの3つの通水孔24を通過するように分流される。各通水孔24を通過した各水流は、対応する各通水方向決定部34の入口部32から通水方向決定部34に高い流速で流入し、通水方向決定部34の壁面42に沿って流れて通水方向決定部34の出口部40へ差し向けられる。このとき、各通水孔24から通水方向決定部34へ流れる高い流速の水流によって、水流の周囲の気圧が下がり、空気取入通路33内の気圧も下がるため、シャワーヘッド1の外部から空気取入通路33を経て、通水方向決定部34の水流の方向に空気を引き込む負圧も発生している。
通水方向決定部34の出口部40へ差し向けられた各水流は、通水路30の通水衝突部36内で互いに衝突し、通水方向決定部34の水流と共に空気取入通路33から引き込んだ大量の空気を水中に巻き込む。このことにより、通水衝突部36で大量の空気が混入された泡沫状の水が生成される。
通水衝突部36で泡沫状に生成された水は、通水整流部38のほぼ円錐台状の上流側流路38aから、ほぼ円筒状の下流側流路38bを流れることにより整流化される。この整流化された状態の水流には気泡がほぼ均等に分布しており、泡沫状を維持した状態の整流水が散水孔10から吐水される。
【0023】
また、本実施形態のシャワーヘッド1を用いて、1つの通水孔群Gに属する通水孔の個数が2個と3個の場合について、各散水孔から流出する泡沫状の吐水効果を調べる実験(実験1)を行った。この実験1では、各散水孔の直径d1を1.5mmに固定し、通水孔の直径d2については、1つの通水孔群Gに属する通水孔の個数が2個と3個のいずれの場合についてもd2を0.2〜1.0mmまで0.05mmずつ変化させて、各散水孔10から流出する吐水の状態を確認した。
1つの通水孔群Gに属する通水孔の個数を2個に設定した場合、d2=0.3mm(面積比S1/S2=0.08)に設定すると、吐水はスラグ流となり泡沫化していないことを確認したが、d2=0.35〜0.60mm(面積比S1/S2=0.10〜0.32)に設定すると、泡沫状の良好な吐水を確認した。また、d2=0.70mm(面積比S1/S2=0.44)では、通水方向決定部34に流入した水があふれてしまい、空気取入通路33へ逆流するような現象を確認した。
一方、1つの通水孔群Gに属する通水孔の個数を3個に設定した場合、d2=0.3mm〜0.45mm(面積比S1/S2=0.12〜0.27)に設定すると、泡沫状の良好な吐水を確認した。
以上の通水孔の個数を2個と3個に設定した場合の実験1の結果から、各散水孔から満足な泡沫状の吐水を得るには、面積比S1/S2は、0.10〜0.40に設定するのが好ましいことがわかった。
【0024】
また、図4は、本実施形態のシャワーヘッドを用いて整流部の整流区間の長さを変えて散水孔から吐水させたときの吐水の整流状態と非整流状態の境界を調べた実験(実験2)の結果を示すグラフである。ここで、図4の横軸はシャワーヘッドに給水される水の圧力を示し、縦軸はシャワーヘッドの整流部の整流区間長さLを示している。
図4の各プロットは、散水孔10からの吐水がスラグ流になる等の非整流状態となる整流区間長さの上限値を示している。図示されているプロット以外にも、なお、整流区間長さLが2〜20mmの範囲で多数の実験値を調べたが、実験値が図4のプロット値よりも下回った場合には、吐水がスラグ流になって非整流状態となり、図4のプロット値を上回った場合には、泡沫状の吐水が良好な整流状態であることが確認できた。すなわち、水圧が0.05〜0.4MPaの範囲では、整流区間長さLを少なくとも4mmに設定することにより、泡沫状の吐水が良好な整流状態になることがわかった。
なお、整流区間長さLの上限については、値が大きすぎるとシャワーヘッドの大きさ自体も大きくなり過ぎるため、本実施形態のシャワーヘッド1では、現実的な値としては、整流区間長さLの上限値は20mm程度が好ましい。
【0025】
上述した本実施形態のシャワーヘッド1によれば、吐水ユニット28の通水路30の通水方向決定部34と通水衝突部36により、従来のシャワーヘッドの通水路に取り付けていた水流を泡沫状にするための網を使用することなく、効率よく空気を混入させて泡沫状にした水を各散水孔10より吐水することができる。
また、本実施形態のシャワーヘッド1によれば、水流を泡沫状にするための網が不要となるため、通水がこの網を通過することによる圧力損失の影響を取り除くことができ、水流の勢いを著しく低下させることなく各散水孔10から吐水することができる。このことにより、シャワーヘッド1に対して比較的低い給水圧の水が給水された場合でも、水流の勢いを著しく低下させることなく各散水孔10から十分な吐水を行うことができる。
さらに、本実施形態のシャワーヘッド1によれば、水流を泡沫状にするための網が不要となるため、シャワーヘッド1のメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0026】
また、本実施形態のシャワーヘッド1の吐水部6は、単一の吐水孔8と複数の散水孔10を備え、切替ハンドル12によって、吐水部6における吐水状態を複数の散水孔10のみから吐水するシャワー状態と単一の吐水孔8のみから吐水する非シャワー状態に切り替えるような形態について説明したが、このような形態に限定されず、吐水部6に単一の吐水孔8を設けずに、吐水部6の全体にわたって複数の散水孔10のみを配置した形態にしてもよい。
さらに、本実施形態のシャワーヘッド1は、シングルレバー湯水混合栓タイプの水栓装置2に適用した形態について説明したが、このような形態に限定されず、他のタイプのシャワー水栓装置についても適用可能である。
また、単一の吐水孔から非シャワー状(一本状)の吐水を行う他の吐水装置においても、本実施形態のシャワーヘッド1の散水孔10から泡沫状の吐水を行う原理を適用することにより、非シャワー状の吐水においても泡沫状の吐水を行うことができる。
【0027】
つぎに、本発明の第2実施形態のシャワーヘッドについて説明する。
図5は、本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する各通水孔の部分と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の一部分を拡大して模式的に示す、図3と同様な部分拡大斜視図である。ここで、図5において、第1実施形態のシャワーヘッドの部分と同一の部分については、同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図5に示すように、本実施形態のシャワーヘッドは、第1実施形態のシャワーヘッド1の通水路30に通水方向決定部34に代わる手段として、通水板50を貫く各通水孔群G’に属する各通水孔52の流路54が吐水ユニット56の通水衝突部36の中央部58に差し向けられるように斜めに形成され、各通水孔52の流路54から流出した水流を通水衝突部36の中央部58で衝突させるような構成となっている。
また、各通水孔群G’には、2つの通水孔54が配置されているが、通水孔54の個数については3つ以上に設定してもよい。
【0028】
このように構成された本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドおいては、各通水孔群G’に属する各通水孔52の流路54を通過した各水流は、通水路30の通水衝突部36の中央部58に向けて高い流速で流出し、第1実施形態と同様に、通水路30の通水衝突部36の中央部58で衝突する。同時に、各通水孔52の流路54から流出した各水流によって空気取入通路33から引き込んだ空気を衝突した水流に巻き込み、通水路30の通水衝突部36で大量の空気が混入された泡沫状の水が生成される。通水衝突部36で泡沫状に生成された水は、第1実施形態と同様に、通水整流部38で整流化され、泡沫状を維持した状態の整流水が散水孔10から吐水される。
本実施形態のシャワーヘッドによれば、通水板50の各通水孔52の流路54を吐水ユニット56の通水衝突部36の中央部58に差し向けるように斜めに形成したことにより、第1実施形態と同様に、効率よく空気を混入させて泡沫状にした水を水流の勢いを低下させずに各散水孔10より吐水することができる。また、従来のシャワーヘッドに設けられた水流を泡沫状にするための網が不要となるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0029】
つぎに、本発明の第3実施形態によるシャワーヘッドについて説明する。
図6は、本発明の第3実施形態によるシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する各通水孔の部分と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の一部分を拡大して模式的に示す、図3及び図5と同様な部分拡大斜視図である。ここで、図6において、第1及び第2実施形態のシャワーヘッドの部分と同一の部分については、同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態のシャワーヘッドは、第1実施形態のシャワーヘッド1の通水路30に通水方向決定部34に代わる手段として、通水板60のほぼ法線方向を貫く各通水孔群G’’に属する各通水孔62から流出した各水流を吐水ユニット56の通水衝突部36の中央部58に差し向けるような負圧を発生させる負圧発生部材66を備えている。
この負圧発生部材66は、通水板60の底面60aに位置する各通水孔群G’’における各通水孔62の流路64の3つの出口64aのほぼ中央に配置され、負圧発生部材66の下流側端部66aは、上流側端部66bに比べてわずかに絞られた形状となっている。
各通水孔62の流路64から流出した各水流が高い流速で負圧発生部材66の側壁面66cの近傍をこの側壁面66cに沿って下流側へ流れることにより、各水流が負圧発生部材66の側壁面66cに近づく方向に差し向けられるような負圧が発生し、各水流は、第1及び第2実施形態と同様に、吐水ユニット56の通水路30における通水衝突部36の中央部58で衝突するようになっている。同時に、各通水孔62の流路64から流出した各水流によって空気取入通路33から引き込んだ空気が、通水衝突部36の中央部58で衝突した水流に巻き込まれて、通水衝突部36の中央部58で大量の空気が混入された泡沫状の水が生成されるようになっている。
【0030】
本実施形態のシャワーヘッドによれば、通水板60の底面60aに位置する各通水孔群G’’における各通水孔62の流路64の3つの出口64aのほぼ中央に負圧発生部材66を配置したことにより、第1及び第2実施形態と同様に、効率よく空気を混入させて泡沫状にした水を水流の勢いを低下させずに各散水孔10より吐水することができる。また、従来のシャワーヘッドに設けられた水流を泡沫状にするための網が不要となるため、シャワーヘッドのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドが組み込まれている水栓装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドを示す拡大側面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する3つの通水孔と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の構成部分のみを拡大して模式的に示す部分拡大斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるシャワーヘッドを用いて整流部の整流区間の長さを変えて散水孔から吐水させたときの吐水の整流状態と非整流状態の境界を調べた実験(実験2)の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態によるシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する各通水孔の部分と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の一部分を拡大して模式的に示す、図3と同様な部分拡大斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態によるシャワーヘッドの通水板の1つの通水孔群に属する各通水孔の部分と、これらに対応する吐水ユニットの1つの通水路の一部分を拡大して模式的に示す、図3及び図5と同様な部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 シャワーヘッド
2 水栓装置
4 操作レバー
6 シャワーヘッドの吐水部
8 吐水孔
10 散水孔
12 切替ハンドル
14 シャワーヘッド1の流入部
16,16a,30 通水路
18 流路切替ユニット
20 シャワー用通水路
22 非シャワー用通水路
24,52,62 通水孔
26,50,60 通水板
28,56 吐水ユニット
32 通水方向決定部の入口部
33 空気取入通路
34 通水方向決定部
36 通水衝突部
38 通水整流部
40 通水方向決定部の出口部
42 壁面
58 通水衝突部の中央部
66 負圧発生部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水された水を複数の吐水孔から吐水するシャワーヘッドであって、
上記複数の吐水孔に水を供給する複数の通水孔を備えた通水部と、
この通水部の隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水の水流によって負圧を発生させこの負圧により周囲から空気を引き込む空気取入部と、
上記隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を互いに衝突させるように水流の方向を決定する通水方向決定部と、
この通水方向決定部により方向が決定された水を互いに衝突させると共に上記空気取入部により引き込まれた空気を混入して泡沫状とする通水衝突部と、
この通水衝突部で衝突して泡沫状となった水を整流して上記吐水孔から吐水する整流部と、
を有することを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項2】
上記通水方向決定部は、上記隣接する少なくとも2つの通水孔から流出した水を受け入れてその断面がすり鉢状に下流側に向かって小さくなるように形成された流路である請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
上記通水方向決定部は、上記隣接する少なくとも2つの通水孔から流出する水が互いに衝突するように上記通水孔自体の方向を設定する通水孔設定手段である請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
上記通水方向決定部は、上記隣接する少なくとも2つの通水孔の出口近傍に設けられ負圧を発生させて上記通水孔からの流出する水を上記通水衝突部の方向に向ける負圧発生手段である請求項1記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
上記整流部は、ほぼ円筒状に形成された流路を含み、この流路の長さは、4〜20mmである請求項1乃至4の何れか1項に記載のシャワーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−56559(P2007−56559A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243813(P2005−243813)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【特許番号】特許第3837744号(P3837744)
【特許公報発行日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】