説明

シュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置、及びシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収方法

【課題】インジウム含有被エッチング材を処理したシュウ酸エッチング廃液中に含まれるシュウ酸イオンを効果的に回収し、シュウ酸液の更新頻度を低減させることの可能なシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置を提供する。
【解決手段】シュウ酸イオンの回収装置は、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1と、電気透析装置2と、シュウ酸貯槽3とを備える。シュウ酸インジウム水溶液貯槽1は、送液ポンプ5と保護フィルタ6とが途中に設けられた第1の送液管4を介して電気透析装置2の脱塩室11に連通している。シュウ酸貯槽3は、送液ポンプ8を備えた第2の送液管7により電気透析装置2の濃縮室12に連通している。シュウ酸インジウム水溶液貯槽1には、pHセンサ9が設けられており、電気透析装置2には、該電気透析装置2に電気を供給する直流電源10が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジウム含有被エッチング材などを処理したシュウ酸インジウム廃液からシュウ酸イオンを回収して再生するための装置に関する。また、本発明は、インジウム含有被エッチング材などを処理したシュウ酸インジウム廃液からシュウ酸イオンを選択的に回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置などの透明電極としては、インジウム含有被エッチング材、例えば、酸化インジウム−酸化錫(Indium−Tin−Oxide、以下ITOとする)膜を所定のパターンにエッチング処理したものが使用されている。
【0003】
すなわち、ITO透明電極は、ガラス等の基板上にITO膜を形成し、レジストマスクを施し、ITO膜をエッチング処理して形成される。そして、ITO膜のエッチング液として、シュウ酸水溶液が使用されている。
【0004】
このようなシュウ酸水溶液をエッチング液として用いた場合には、エッチングの反応によってシュウ酸水溶液中にインジウムイオンが蓄積されることから、インジウムの濃度がある限界値を超えると廃棄されていた。このため、エッチング処理コストが高くなるとともに、その排出による環境の悪化が懸念されていた。
【0005】
そこで、シュウ酸エッチング廃液から溶解したシュウ酸水溶液(シュウ酸イオン)を回収する方法として、特許文献1には、シュウ酸エッチング廃液を陰イオン交換樹脂と接触処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−325082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたシュウ酸イオンの回収方法では、シュウ酸イオンをある程度回収することはできるが、回収効率が十分でなく、また、陰イオン交換樹脂にインジウムが吸着されるので、この陰イオン交換樹脂の処理が煩雑となるという問題点があった。さらに、陰イオン交換樹脂の交換が必要であるので連続的に処理を行うことができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インジウム含有被エッチング材などを処理したシュウ酸エッチング廃液中に含まれるシュウ酸イオンを効果的に回収し、シュウ酸液の更新頻度を低減させることの可能なシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置及び回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、陰極と陽極との間に陰イオン交換膜とバイポーラ膜とで区画された脱塩室と濃縮室とを有する電気透析装置と、前記電気透析装置の脱塩室に連通したシュウ酸インジウム循環機構と、前記電気透析装置の濃縮室に連通したシュウ酸イオン回収機構とを備えることを特徴とするシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置を提供する(発明1)。
【0010】
ここで、本明細書におけるシュウ酸イオンを含むシュウ酸インジウム水溶液は、透明電極エッチングを行うためのシュウ酸エッチング液などのことである。
【0011】
また、バイポーラ膜とは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが貼接された構造を有する複合膜の一種である。このバイポーラ膜は、水の電気分解に用いる隔膜として、又は酸とアルカリとの中和生成物である塩の水溶液から酸とアルカリとを再生する際の分離膜等として従来から広く使用されている公知のイオン交換膜である。
【0012】
本発明においては、このようなバイポーラ膜の陰イオン交換膜面が電気透析装置の陽極側に位置し、陽イオン交換膜面が陰極側に位置するようにして、陽極と陰極との間にバイポーラ膜が設置される。電気透析装置は、バイポーラ膜の陰イオン交換膜面と陰イオン交換膜とによって区画形成された脱塩室と、バイポーラ膜の陽イオン交換膜面と陰イオン交換膜とによって区画形成された濃縮室とを有する。このようなバイポーラ膜内では理論水電解電圧(0.83V)以上の電圧を印加することによって、水解離が発生するので電流は流れる。
【0013】
上記発明(発明1)によれば、電気透析装置の脱塩室にシュウ酸イオン及びインジウムイオンを含むシュウ酸インジウム水溶液を導入することにより、アニオンであるシュウ酸イオンが陰イオン交換膜から排出される。一方、カチオンであるインジウムイオンは、バイポーラ膜を透過できないのでそのまま残存することになる。このようにして、シュウ酸インジウム水溶液からシュウ酸イオンを選択的に回収することができる。しかも、バイポーラ膜内では水の解離が起こるため脱塩室内には水酸イオンが補充されるので、イオンバランスも保たれることになる。一方、濃縮室には、脱塩室からのシュウ酸イオンと、バイポーラ膜内での水解離により生じた水素イオンとによりシュウ酸が生じることになる。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記電気透析装置の脱塩室に、陰イオン交換体が充填されているのが好ましい(発明2)。
【0015】
上記発明(発明2)によれば、電気透析装置に印加される電圧が低くて済み、しかも脱塩室内のイオンの濃度分極が抑制されるので、水酸化インジウムなどの水酸化物の生成を抑制することができ、シュウ酸イオンをさらに効率的に回収することができる。なお、このように脱塩室にイオン交換体が充填された電気透析装置は、電気脱イオン装置をも含む概念として定義することができる。
【0016】
上記発明(発明1,2)においては、前記電気透析装置の濃縮室に、イオン交換体が充填されていてもよい(発明3)。
【0017】
上記発明(発明1〜3)においては、前記シュウ酸インジウム循環機構の前記電気透析装置の脱塩室より上流側には、保護フィルタが設けられているのが好ましい(発明4)。
【0018】
上記発明(発明4)によれば、インジウムイオンは、アルカリイオン条件になると水酸化物を形成して析出するので、シュウ酸イオンの回収装置の運転条件によりアルカリ条件になった場合でも電気透析装置への固形分の混入を防止することができる。
【0019】
第二に本発明は、シュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンを選択的に除去する方法であって、陰極と陽極との間に陰イオン交換膜とバイポーラ膜とで区画された脱塩室と濃縮室とを有する電気透析装置を用い、前記脱塩室に前記シュウ酸インジウム水溶液を流通させることを特徴とするシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収方法を提供する(発明5)。
【0020】
上記発明(発明5)によれば、電気透析装置の脱塩室にシュウ酸イオン及びインジウムイオンを含むシュウ酸インジウム水溶液を流通させることにより、アニオンであるシュウ酸イオンを陰イオン交換膜から排出することができる。これにより、シュウ酸インジウム水溶液からシュウ酸イオンを選択的に回収することができる。
【0021】
上記発明(発明5)においては、前記電気透析装置で処理したシュウ酸インジウム水溶液のpHが1.0以下となるように、該電気透析装置の電圧及び/又は電流を制御することが好ましい(発明6)。
【0022】
上記発明(発明6)によれば、シュウ酸インジウム水溶液のpHを調整することにより、効率良くシュウ酸を除去することができる。しかも、インジウムの水酸化物が生成するのを防止することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置又は回収方法によれば、シュウ酸イオン及びインジウムイオンを含む使用済みのシュウ酸インジウム水溶液中に含まれているシュウ酸イオンを効果的に回収し、エッチング液としてのシュウ酸水溶液の更新頻度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置を示す概略系統図である。
【図2】上記シュウ酸イオンの回収装置の電気透析装置を示す概略図である。
【図3】上記電気透析装置におけるイオンの流れを示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るシュウ酸イオンの回収装置を示す概略系統図であり、図2は、このシュウ酸イオンの回収装置における電気透析装置を示す概略図であり、図3は、この電気透析装置におけるイオンの流れを示す概略図である。
【0027】
図1に示すように本実施形態に係るシュウ酸イオンの回収装置は、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1と、電気透析装置2と、シュウ酸貯槽3とを備える。シュウ酸インジウム水溶液貯槽1は、送液ポンプ5と保護フィルタ6とが途中に設けられた第1の送液管4を介して電気透析装置2の脱塩室11に連通しており、これらのシュウ酸インジウム水溶液貯槽1、送液ポンプ5、保護フィルタ6及び第1の送液管4によりシュウ酸インジウム循環機構Aが構成されている。一方、シュウ酸貯槽3は、送液ポンプ8を備えた第2の送液管7により電気透析装置2の濃縮室12に連通しており、これらのシュウ酸貯槽3、送液ポンプ8及び第2の送液管7によりシュウ酸イオン回収機構Bが構成されている。
【0028】
シュウ酸インジウム水溶液貯槽1には、pHセンサ9が設けられており、電気透析装置2には、該電気透析装置2に電気を供給する直流電源10が備えられている。これらpHセンサ9及び直流電源10は、図示しないパーソナルコンピュータ等の制御装置(図示せず)に接続されていて、当該制御装置は、pHセンサ9から送信されるシュウ酸インジウム水溶液貯槽1中のシュウ酸水溶液MのpHのデータに基づき、電気透析装置2の陰極及び/又は電流を制御する。
【0029】
上述したようなシュウ酸イオンの回収装置において、電気透析装置2は、図2に示すように電極(陽極13,陰極14)の間に、陰イオン交換膜15とバイポーラ膜16とが交互に配設されており、これら陰イオン交換膜15とバイポーラ膜16とによって、脱塩室11と濃縮室12とが交互に形成されている。
【0030】
バイポーラ膜16は、陰イオン交換膜層16Aと陽イオン交換膜層16Bとが貼接された構成を有している。バイポーラ膜16の陰イオン交換膜層16Aは、陽極13側に位置しており、陽イオン交換膜層16Bは、陰極14側に位置している。すなわち、陰イオン交換膜層16Aは、脱塩室11に面しており、陽イオン交換膜層16Bは、濃縮室12に面している。なお、図2に示すように電気透析装置2は、その両端が陽極室17及び陰極室18となっている。
【0031】
本実施形態におけるシュウ酸イオンの回収装置の電気透析装置2に用いられる陰イオン交換膜15及びバイポーラ膜16としては、公知のものを適宜使用することができ、それぞれ塩の分離、水解離に有効な膜を選択すればよい。陰イオン交換膜15としては、陰イオンを透過可能なものであって、4級アンモニウム、3級アンモニウム又は2級アンモニウムを含むものであれば、特に限定されるものなく、従来のいかなる膜であっても用いることができる。また、バイポーラ膜16としては、陰イオン交換膜層16Aと陽イオン交換膜層16Bとを有し、水解離効率が高いものであればよい。
【0032】
上記脱塩室11及び濃縮室12には、メッシュスペーサーを挿入するか、イオン交換体を充填するのが好ましい。これらのうち、イオン交換体を充填した方が電圧が低くなり、また濃度分極が緩和され、水酸化インジウムの生成を防止することができるため好ましい。このイオン交換体としては、公知のものを用いることができ、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、又は任意の基材に放射線、電子線グラフト重合によりグラフト鎖を当該基材に導入した後、イオン交換基を付加することにより製造したイオン交換体等を用いることができる。これらの中では安価なコストで入手可能なイオン交換樹脂が好ましい。なお、図1〜図3においては、イオン交換体については省略している。
【0033】
具体的には、脱塩室11には、アニオン交換樹脂などのアニオン交換体が充填されているのが好ましい。これにより電気透析装置2の電圧が低くて済み、しかも濃度分極が抑制されるので、水酸化インジウム等の水酸化物の生成を抑制することができ、シュウ酸イオンをさらに効率的に除去することができる。また、濃縮室12には、カチオン交換体、又はアニオン交換体とカチオン交換体とを混合したものが充填されているのが好ましい。
【0034】
上記構成を有するシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置を用いた本実施形態のシュウ酸イオンの回収方法について説明する。
【0035】
エッチング反応に用いられた後の使用済みのシュウ酸インジウム水溶液(廃液)Mをシュウ酸インジウム水溶液貯槽1から送液ポンプ5により、第1の送液管4を通じて電気透析装置2の脱塩室11に循環通水する。シュウ酸インジウム水溶液M中には、エッチング処理への使用によりインジウムイオン(In)が蓄積されており、上記陽イオンの対陰イオンであるシュウ酸イオン((COO)2−)が含まれている。
【0036】
そして、電気透析装置2に直流電源10から直流電圧を印加し電流を流すと、脱塩室11内ではシュウ酸イオンが陽極13側に移動し、陰イオン交換膜15を通過して濃縮室12に排出される。また、バイポーラ膜16内では下記(1)式に示す水解離によって生じた水酸イオン(OH)が脱塩室11内に供給される。
O→OH + H ・・・(1)
【0037】
また、インジウムイオンは、陰極14側へ移動するが、脱塩室11の陰極14側の壁面は、バイポーラ膜16の陰イオン交換膜層16Aとなっているため、重金属の陽イオンであるインジウムイオンは、バイポーラ膜(陰イオン交換膜層16A)を通過することができない。したがって、インジウムイオンは、脱塩室11内に蓄積される。そして、電気透析装置2により処理されたシュウ酸インジウム水溶液Mは、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1に返送される。
【0038】
このシュウ酸インジウム水溶液貯槽1に貯留されたシュウ酸インジウム水溶液Mは、インジウムイオンが所定の濃度より高くなったら、後処理工程でインジウムの処理を行う。
【0039】
一方、濃縮室12には、シュウ酸貯槽3に貯留された濃縮水W(初期状態においては純水など)が、送液ポンプ8により第2の送液管7を通じてシュウ酸イオン回収機構Bを循環通水される。この濃縮室12には、脱塩室11から移動してきたシュウ酸イオン((COO)2−)が蓄積されるとともに、バイポーラ膜16内では上記式(1)の水解離によって生じた水素イオン(H)が濃縮室に供給される。この結果、濃縮水W中にはシュウ酸水溶液((COOH))が含まれることになる。この濃縮水Wのシュウ酸濃度が所定の濃度(例えば、1.0mol/L)以上となったら、濃縮水Wを取り替えて、再利用すればよい。このシュウ酸濃度は、pHセンサ9の出力に基づき算出すればよい。
【0040】
上述したようなシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収方法においては、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1のシュウ酸インジウム水溶液MのpHが1.0以下、好ましくは0.8〜1.0の範囲内となるように電気透析装置2の電圧及び/又は電流値を調整するのが好ましい。シュウ酸インジウム水溶液MのpH2.5を超えると、インジウムの水酸化物が析出してしまい、この析出物が電気透析装置2に混入すると電気透析装置2の運転に支障をきたすおそれがある。また、シュウ酸インジウム水溶液Mのインジウム濃度が500mg/L以上となると、エッチング処理におけるエッチングが良好でなくなる等により透明電極製品に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0041】
このようにシュウ酸インジウム水溶液MのpHを調整することで、効果的にシュウ酸イオンを回収することができる。シュウ酸インジウム水溶液MのpHの調整は、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1中に設けられたpHセンサ9から送信されるデータに基づき、図示しない制御装置により電気透析装置2の直流電源10を調整して電気透析装置2の陽極13及び陰極14にかかる電圧及び/又は電流を制御すればよい。
【0042】
本実施形態においては、シュウ酸イオンの回収装置の誤動作やシュウ酸インジウム水溶液Mの状態の急激な変化などにより、万一シュウ酸インジウム水溶液Mがアルカリ性になったときのことを考慮して、電気透析装置2の脱塩室11の上流側に保護フィルタ6を設置し、電気透析装置2にインジウムの水酸化物の析出物が混入しないようになっている。この保護フィルタ6の孔径は、0.05〜100μmであるのが好ましく、特に0.2μm〜50μmが好ましい。
【0043】
上述したような本実施形態に係るシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置、及びシュウ酸イオンの回収方法によれば、シュウ酸液の更新頻度を低減させることができ、また、シュウ酸イオンのみを選択的に回収して、効果的にシュウ酸液を再生することができる。
【0044】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであつて、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の各実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1
[1]電気透析装置
本実施例における電気透析装置2のイオン交換膜およびイオン交換体として下記のものを使用した。
(1)陰イオン交換膜…商品名:ネオセプタAHA,株式会社アストム製
(2)バイポーラ膜…商品名:BP1,株式会社アストム製
(3)脱塩室に充填したアニオン交換樹脂…商品名:SA10A,三菱化学株式会社製
(4)濃縮室に充填したイオン交換樹脂…「商品名:SA10A,三菱化学株式会社製」と「商品名:SK1B(カチオン交換樹脂),三菱化学株式会社製」との混合物(混合比6:4)
【0047】
[2]シュウ酸インジウム水溶液(模擬廃液)の調製
被処理液であるシュウ酸インジウム水溶液として、以下に示す模擬シュウ酸インジウム水溶液を調製した。
(1)インジウム濃度=595mg/L
(2)シュウ酸濃度=79200mg/L
(3)pH≒1.0
【0048】
[3]試験条件及び結果
図1及び図2に示す装置において、シュウ酸インジウム水溶液貯槽1にシュウ酸インジウム水溶液を貯留し、このシュウ酸インジウム水溶液M500mLをシュウ酸インジウム循環機構Aにより、電気透析装置2の脱塩室11に30L/hの流量で循環通水した。また、シュウ酸貯槽3に純水500mLを貯留し、シュウ酸イオン回収機構Bにより濃縮室12に30L/hの流量で循環通水して濃縮水Wとした。この電気透析装置2の陽極13と陰極14との間に3Aの電流で供給して、60分間循環しながら、シュウ酸インジウム水溶液Mを処理した。
【0049】
処理後のシュウ酸インジウム水溶液MのpHを測定したところ、pH2.5に上昇しており、シュウ酸イオンが57000mg/L移動したことが確認された。一方、インジウムイオンの濃度を測定したが大きな変化はなく、電気透析装置2内で水酸化物の析出も認められなかった。
【0050】
さらに、これらの結果から電流効率(%)を下記式により算出した。
電流効率(%)=シュウ酸イオン排出量(mol)/[電流(A)×通電時間(s)/196485(C/mol)×100
なお、上記式において、シユウ酸イオン排出量は、シュウ酸インジウム水溶液MのpHが1.0から2.5へ上昇したことによる水酸化物イオン濃度の増加分に基づき換算したものである。
【0051】
上記式により電流効率を算出した結果、電流効率は約80%に到達しており、効率よくシュウ酸イオンを回収でき、連続運転が可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置及び回収方法は、例えば、液品用の透明電極ラインで使用するシュウ酸液等の再生に好適である。
【符号の説明】
【0053】
1…シュウ酸インジウム水溶液貯槽
2…電気透析装置
3…シュウ酸貯槽
6…保護フィルタ
11…脱塩室
12…濃縮室
13…陽極
14…陰極
15…陰イオン交換膜
16…バイポーラ膜
16A…陰イオン交換膜層
16B…陽イオン交換膜層
A…シュウ酸インジウム循環機構
B…シュウ酸イオン回収機構
M…シュウ酸インジウム水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極との間に陰イオン交換膜とバイポーラ膜とで区画された脱塩室と濃縮室とを有する電気透析装置と、
前記電気透析装置の脱塩室に連通したシュウ酸インジウム循環機構と、
前記電気透析装置の濃縮室に連通したシュウ酸イオン回収機構と
を備えることを特徴とするシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置。
【請求項2】
前記電気透析装置の脱塩室に、陰イオン交換体が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置。
【請求項3】
前記電気透析装置の濃縮室に、イオン交換体が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置。
【請求項4】
前記シュウ酸インジウム循環機構の前記電気透析装置の脱塩室より上流側には、保護フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収装置。
【請求項5】
シュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンを選択的に除去する方法であって、
陰極と陽極との間に陰イオン交換膜とバイポーラ膜とで区画された脱塩室と濃縮室とを有する電気透析装置を用い、
前記脱塩室に前記シュウ酸インジウム水溶液を流通させることを特徴とするシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収方法。
【請求項6】
前記電気透析装置で処理したシュウ酸インジウム水溶液のpHが1.0以下となるように、該電気透析装置の電圧及び/又は電流を制御することを特徴とする請求項5に記載のシュウ酸インジウム水溶液からのシュウ酸イオンの回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−149001(P2012−149001A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8172(P2011−8172)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】