説明

ショットキーダイオードおよびその製造方法

【課題】 強誘電体層を有し、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を低減させ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードを提供する。
【解決手段】 ショットキーダイオード1は、支持基板11を備え、さらに、支持基板11の表面上に形成された絶縁膜12と、絶縁膜12上に形成された密着層13と、密着層13上に形成されたショットキー金属層14と、ショットキー金属層14の表面上に、ショットキー金属層14とショットキー接触されるように形成され、Mnが添加された第一の誘電体層15と、第一の誘電体層15の表面上に形成され、Mnなどの添加物が添加されていない第二の誘電体層16と、第二の誘電体層16上に、第二の誘電体層16とオーミック接触するように形成されたオーミック金属層17を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーダイオードおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳細には、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を低減させ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイオードは、電荷キャリアの移動方向を制限する電子部品であり、本質的に、一方の方向に電流が流れることは許容するが、反対方向へ電流が流れることを阻止する機能を有している。
【0003】
ダイオードは、順方向に電流が流れている状態で、急に逆方向の電圧が印加されると、一瞬、逆方向の電流が流れる性質を有し、この逆方向の電流が流れ、止まるまでの時間、すなわち、逆回復時間の短いものがショットキーダイオードである。
【0004】
ショットキーダイオードは、順方向の電圧降下が小さく、逆回復時間の短い一方で、逆方向のリーク電流が多く、サージ耐力が低いという欠点を有している。ショットキーダイオードにおいて、逆方向のリーク電流を低減させると、順方向のバイアス電圧印加時の定常損失が増大し、順方向の電圧降下をさらに小さくするためには、回路上での工夫が必要になる。
【0005】
かかる課題を解決するため、特開2006−318956号公報(特許文献1)は、不純物濃度が異なる第一の半導体層と第二の半導体層を備え、不純物濃度が高い第二の半導体層を、逆方向バイアスとなるようにショットキー金属層とオーミック金属層との各々に電圧を印加する場合に、ショットキー金属層と第2の半導体層との界面で生じる空乏層が、第2の半導体層の厚み方向に延びて第1の半導体層に達する程度に薄い厚みを有するように形成することによって、逆方向バイアスとなるように電圧を印加する場合に、ショットキー金属層と第二の半導体層との界面で生じる空乏層が、第二の半導体層の厚み方向に延びて第一の半導体層に達し、不純物濃度が小さい第一の半導体層中をさらに延びて広がり、かかる空乏層の広がりにより、耐圧が向上し、逆方向のリーク電流を増加させないようにすることができ、したがって、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を増加させることなく、順方向バイアス電圧印加時の定常損失を低減することが可能なショットキーダイオードを有する半導体装置を提案している。
【0006】
一方、特開2006−253521号公報(特許文献2)は、n型SiC基板の表面上に、熱酸化法、熱CVD法、プラズマCVD法などにより、SiO膜を形成した後、NOガス雰囲気中で、1250℃の温度下で、1時間にわたって熱処理することによって、SiO膜を窒化して、SiO膜が形成される際に、SiC基板とSiO膜との界面に残留する炭素を除去するとともに、欠陥を不活性化し、界面準位密度を大きく低下させることによって、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を減少させるように構成された半導体ダイオード装置およびその製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−318956号公報
【特許文献2】特開2006−253521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2006−318956号公報(特許文献1)によって提案されたショットキーダイオードを有する半導体装置によれば、順方向バイアス電圧印加時の定常損失を低減することは可能になるが、0.5V以上の順方向電圧下で、電流が流れるため、電圧降下を十分に小さくすることができないという問題があった。
【0009】
一方、特開2006−253521号公報(特許文献2)によって提案された半導体ダイオード装置およびその製造方法によれば、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を減少させることは可能になるが、順方向バイアス電圧印加時の定常損失を低減し、電圧降下を小さくすることはできないという問題があった。
【0010】
したがって、本発明は、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を低減させ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、本発明のかかる目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、支持基板の表面上に、ショットキー金属層を形成し、ショットキー金属層の表面上に、ショットキー金属層とショットキー接触されるように、添加物濃度が高い第一の誘電体層を形成し、第一の誘電体層の表面上に、添加物濃度が低い第二の誘電体層を形成し、第二の誘電体層の表面上に、第二の誘電体層とオーミック接触するように、オーミック金属層を形成することによって、ショットキーダイオードを作製した場合には、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を減少させることができ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることが可能になり、さらに、ショットキー金属層、第一の誘電体層、第二の誘電体層およびオーミック金属層を成膜し、加工した後に、高温処理が必要ではなくなるから、ショットキーダイオードを製造するのに必要な時間を短縮し、エネルギーの消費量を低減できることを見出した。
【0012】
本発明はかかる知見に基づくものであり、本発明の前記目的は、支持基板を備え、さらに、前記支持基板の表面上に形成されたショットキー金属層と、前記ショットキー金属層の表面上に、前記ショットキー金属層とショットキー接触されるように形成された添加物濃度が高い第一の誘電体層と、前記第一の誘電体層の表面上に形成された添加物濃度が低い第二の誘電体層と、前記第二の誘電体層の表面上に、前記第二の誘電体層とオーミック接触するように形成されたオーミック金属層を備えたことを特徴とするショットキーダイオードによって達成される。
【0013】
本発明の前記目的はまた、支持基板の表面上に、ショットキー金属層を形成し、前記ショットキー金属層の表面上に、前記ショットキー金属層とショットキー接触されるように、添加物濃度が高い第一の誘電体層を形成し、前記第一の誘電体層の表面上に、添加物濃度が低い第二の誘電体層を形成し、前記第二の誘電体層の表面上に、前記第二の誘電体層とオーミック接触するように、オーミック金属層を形成することを特徴とするショットキーダイオードの製造方法によって達成される。
【0014】
本発明において、「添加物濃度が低い」とは、添加物濃度がゼロである場合も包含している。
【0015】
本発明において、第一の誘電体層に添加される添加物としては、複数の原子価を取り得る金属イオンが好ましい。第一の誘電体層に、添加物として、複数の原子価を取り得る金属イオンを添加した場合には、金属イオンが第一の誘電体層の電子を補償し、ショットキー金属層と第一の誘電体層との界面における空乏層が増大し、耐圧が向上するとともに、逆方向のリーク電流を減少させることが可能になる。
【0016】
本発明において、第一の誘電体層が、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)および(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)よりなる群から選ばれる誘電体によって形成されることが好ましい。これらの誘電体の中では、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)および(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)がより好ましい。
【0017】
(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)または(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)によって、第一の誘電体層を形成する場合には、第一の誘電体層に添加される金属イオンは、電子を補償する金属イオンが好ましく、Mn,Mg,ScおよびHoよりなる群から選ばれる金属イオンであることが好ましい。
【0018】
このように、Mn,Mg,ScおよびHoよりなる群から選ばれる金属イオンを、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)または(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)に添加することによって、第一の誘電体層の絶縁性が向上するから、第一の誘電体層と第二の誘電体層との総厚を薄くすることができ、その結果、SiCやGaAsを用いた従来のショットキーダイオードに比して、ショットキーダイオードの厚さを薄くすることができるから、モジュールをより集積化することが可能になる。ただし、金属イオンは、第一の誘電体層の電子を補償し、ショットキー金属層と第一の誘電体層との界面における空乏層を増大させるものであればよく、必ずしも、Mn,Mg,ScおよびHoよりなる群から選ばれる金属イオンに限定されるものではない。
【0019】
本発明において、金属イオンとして、第一の誘電体層に、Mnを添加する場合には、第一の誘電体層中のMnの含有量が0.3モル%以上、5モル%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明において、第一の誘電体層の厚さおよび第二の誘電体層の厚さはとくに限定されるものではないが、第二の誘電体層の厚さが第一の誘電体層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0021】
本発明において、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)または(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)によって、第二の誘電体層を形成することが好ましい。
【0022】
本発明において、オーミック金属層は、第二の誘電体層とのショットキーバリアが低い金属によって形成されることが好ましい。オーミック金属層を第二の誘電体層とのショットキーバリアが低い金属によって形成した場合には、順方向バイアス電圧印加時に、オーミック金属層内に電流が流れやすくなり、ショットキーダイオードの電圧降下を低減することが可能になる。
【0023】
オーミック金属層を形成するために好ましく使用することができる材料としては、Ta、Al、Tiなどが挙げられる。
【0024】
本発明において、ショットキー金属層を形成するために好ましく使用することができる材料としては、Pt、Ir、Auなどが挙げられる。
【0025】
本発明において、支持基板を形成するために使用することができる材料は、抵抗率が高く、ショットキー金属層、オーミック金属層、第一の誘電体層および第二の誘電体層を成膜する際の高温に耐えられる材料であれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、表面が酸化されたSi基板、Al基板などが支持基板を形成するために、好ましく使用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、逆方向バイアス電圧時のリーク電流を低減させ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードを提供することが可能になる。
【0027】
また、本発明によれば、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を低減させ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードの製造方法を提供することが可能になる。
【0028】
さらに、本発明においては、ショットキー金属層、第一の誘電体層、第二の誘電体層およびオーミック金属層を成膜し、加工した後に、高温処理が必要ではなくなるから、ショットキーダイオードを製造するのに必要な時間を短縮し、エネルギーの消費量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオードの略断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオードの略断面図である。
【図3】図3は、実施例1ならびに比較例1および2において、ショットキーダイオードサンプル#1ならびにショットキーダイオード比較サンプル#1およびショットキーダイオード比較サンプル#2に、バイアス電圧を印加したときのバイアス電圧と電流との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1において、ショットキーダイオードサンプル#1に順方向バイアス電圧を印加したときのバイアス電圧と電流との関係の詳細を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオードの略断面図である。
【0031】
図1に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオード1は、支持基板11を備え、支持基板11の表面上に、絶縁膜12、密着層13、ショットキー金属層14、第一の誘電体層15、第二の誘電体層16およびオーミック金属層17がこの順に積層されている。
【0032】
本実施態様において、支持基板11はシリコンによって形成されている。
【0033】
支持基板11の表面上には、絶縁膜12が形成され、本実施態様においては、シリコン酸化膜によって絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12は、支持基板11とショットキー金属層14とを絶縁する機能を有している。
【0034】
絶縁膜12の表面上には、絶縁膜12とショットキー金属層14とを密着させる機能を有する密着層13が形成されている。本実施態様においては、厚さ10nmの酸化チタン層によって、密着層13が構成されている。
【0035】
図1に示されるように、密着層13の表面上には、アノード電極として機能するショットキー金属層14が形成されている。本実施態様においては、白金によって、膜厚が250nmになるように、ショットキー金属層14が形成されている。
【0036】
ショットキー金属層14の表面上には、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、膜厚が20nmの第一の誘電体層15が形成され、第一の誘電体層15中には、添加物として、Mnが添加されている。
【0037】
第一の誘電体層15の表面上には、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、膜厚が130nmの第二の誘電体層16が形成されている。ここに、第二の誘電体層16中には、Mnなどの金属イオンは添加されていない。
【0038】
図1に示されるように、第二の誘電体層16の表面上には、カソード電極として機能するオーミック金属層17が形成されている。オーミック金属層17は250nmの膜厚を有し、Taによって形成されている。
【0039】
本発明者の研究によれば、以上のように構成されたショットキーダイオード1にあっては、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を減少させることができ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることが可能になることが見出されている。
【0040】
さらに、本実施態様によれば、支持基板11の表面に、絶縁膜12、密着層13、ショットキー金属層14、第一の誘電体層15、第二の誘電体層16およびオーミック金属層17を成膜し、必要な加工をするだけで、ショットキーダイオード1を作製することができ、高温処理は必要でないから、ショットキーダイオード1を製造するのに必要な時間を短縮し、エネルギーの消費量を低減することが可能になる。
【0041】
また、本実施態様においては、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、第一の誘電体層15が形成され、第一の誘電体層15中には、添加物として、電子を補償する金属イオンであるMnが添加されているため、第一の誘電体層15の絶縁性が向上し、したがって、第一の誘電体層15と第二の誘電体層16との総厚を薄くすることができるから、SiCやGaAsを用いた従来のショットキーダイオードに比して、ショットキーダイオード1の厚さを薄くすることが可能になる。
【0042】
図2は、本発明の他の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオードの略断面図である。
【0043】
図2に示されるように、本発明の他の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオード2は、支持基板21を備え、支持基板21の表面上に、絶縁膜22、密着層23、オーミック金属層27、第二の誘電体層26、第一の誘電体層25およびショットキー金属層24がこの順に積層されている。
【0044】
本実施態様においても、支持基板21の表面上には、支持基板21とオーミック金属層27とを絶縁する機能を有する絶縁膜22が形成され、本実施態様においては、シリコン酸化膜によって絶縁膜22が形成されている。
【0045】
図2に示されるように、絶縁膜22の表面上には、絶縁膜22とオーミック金属層27とを密着させる機能を有する密着層23が形成されている。本実施態様においては、厚さ10nmの酸化チタン層によって、密着層23が構成されている。
【0046】
オーミック金属層27は、カソード電極として機能するもので、Taによって、250nmの膜厚を有するように形成されている。
【0047】
図2に示されるように、オーミック金属層27の表面上には、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、膜厚が130nmの第二の誘電体層26が形成され、第二の誘電体層26の表面上には、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、膜厚が130nmの第一の誘電体層25が形成されている。本実施態様においても、第一の誘電体層25中には、添加物として、Mnが添加されているが、第二の誘電体層26中には、Mnなどの金属イオンは添加されていない。
【0048】
図2に示されるように、第一の誘電体層25の表面上には、アノード電極として機能するショットキー金属層24が形成されている。本実施態様においては、白金によって、膜厚が250nmになるように、ショットキー金属層24が形成されている。
【0049】
本発明者の研究によれば、以上のように構成されたショットキーダイオードにおいても、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を減少させることができ、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることが可能になることが見出されている。
【0050】
さらに、本実施態様においても、支持基板21の表面に、絶縁膜22、密着層23、オーミック金属層27、第二の誘電体層26、第一の誘電体層25およびショットキー金属層24を成膜し、必要な加工をするだけで、ショットキーダイオード2を作製することができ、高温処理は必要でないから、ショットキーダイオード2を製造するのに必要な時間を短縮し、エネルギーの消費量を低減することが可能になる。
【0051】
また、本実施態様においても、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって、第一の誘電体層25が形成され、第一の誘電体層25中には、添加物として、電子をキャリア補償する金属イオンであるMnが添加されているため、第一の誘電体層25の絶縁性が向上し、したがって、第一の誘電体層25と第二の誘電体層26との総厚を薄くすることができるから、SiCやGaAsを用いた従来のショットキーダイオードに比して、ショットキーダイオード2の厚さを薄くすることが可能になる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の効果をより一層明らかにするため、実施例および比較例を挙げる。
【0053】
実施例1
厚さ0.4mmのシリコン基板を用意し、シリコン基板の表面を酸化して、絶縁膜として、厚さ1000nmのシリコン酸化膜を形成した。
【0054】
次いで、スパッタリング法によって、シリコン酸化膜の表面上に、密着層として、厚さ10nmの酸化チタン層を形成した。
【0055】
さらに、スパッタリング法によって、酸化チタン層の表面上に、250nmの厚さを有する白金のショットキー金属層を形成した。
【0056】
次いで、スパッタリング法によって、白金のショットキー金属層の表面上に、3.2モル%のMnが添加された多結晶のBa0.5Sr0.5TiOよりなる第一の誘電体層を形成した。第一の誘電体層の膜厚は20nmであった。
【0057】
さらに、第一の誘電体層の表面上に、スパッタリング法により、多結晶のBa0.5Sr0.5TiOよりなる第二の誘電体層を形成した。第二の誘電体層の膜厚は130nmであった。
【0058】
次いで、第二の誘電体層の表面上に、スパッタリング法によって、250nmの膜厚を有するTaよりなるオーミック金属層を形成した。
【0059】
こうして、ショットキーダイオードサンプル#1を作製した。
【0060】
こうして作製されたショットキーダイオードサンプル#1のアノード電極として機能するショットキー金属層に相対的に負の電圧を印加し、カソード電極となるオーミック金属層に相対的に正の電圧を印加して、ショットキーダイオードサンプル#1に逆方向バイアス電圧を印加し、ショットキー金属層に印加される相対的に負の電圧を徐々に低くするとともに、オーミック金属層に印加される相対的に正の電圧を徐々に低くして、ショットキーダイオードサンプル#1に印加される逆方向バイアス電圧を徐々に低くし、ショットキーダイオードサンプル#1を流れる電流の変化を測定した。
【0061】
さらに、ショットキーダイオードサンプル#1のアノード電極として機能するショットキー金属層に相対的に正の電圧を印加し、カソード電極となるオーミック金属層に相対的に負の電圧を印加して、ショットキーダイオードサンプル#1に順方向バイアス電圧を印加し、ショットキー金属層に印加される相対的に正の電圧を徐々に高くするとともに、オーミック金属層に印加される相対的に負の電圧を徐々に高くして、ショットキーダイオードサンプル#1に印加される順方向バイアス電圧を徐々に高くし、ショットキーダイオードサンプル#1を流れる電流の変化を測定した。
【0062】
測定結果は、図3に*印で示されている。また、ショットキーダイオードサンプル#1に順方向バイアス電圧を印加したときの順方向バイアス電圧と順方向の電流の関係の詳細が、図4に示されている。
【0063】
比較例1
添加物濃度が高い第一の誘電体層を形成することなく、ショットキー金属層の表面に、添加物濃度が低い第二の誘電体層を形成した点を除き、実施例1と同様にして、ショットキーダイオード比較サンプル#1を作製した。
【0064】
こうして作製したショットキーダイオード比較サンプル#1に、実施例1と同様にして、逆方向バイアス電圧を印加し、ショットキーダイオード比較サンプル#1に印加する逆方向のバイアス電圧を徐々に低くして、ショットキーダイオード比較サンプル#1に流れる電流の変化を測定した。
【0065】
さらに、実施例1と同様にして、ショットキーダイオード比較サンプル#1に順方向のバイアス電圧を印加し、ショットキーダイオード比較サンプル#1に印加する順方向のバイアス電圧を徐々に高くして、ショットキーダイオード比較サンプル#1を流れる電流の変化を測定した。
【0066】
測定結果は、図3において、▲印で示されている。
【0067】
比較例2
オーミック金属層として、ショットキーバリアが高い白金層を形成した点を除き、実施例と同様にして、ショットキーダイオード比較サンプル#2を作製した。
【0068】
こうして作製したショットキーダイオード比較サンプル#2に、実施例1と同様にして、逆方向バイアスを印加し、ショットキーダイオード比較サンプル#2に印加する逆方向のバイアス電圧を徐々に低くして、ショットキーダイオード比較サンプル#2を流れる電流の変化を測定した。
【0069】
さらに、実施例1と同様にして、ショットキーダイオード比較サンプル#2に順方向のバイアス電圧を印加し、ショットキーダイオード比較サンプル#2に印加する順方向のバイアス電圧を徐々に高くして、ショットキーダイオード比較サンプル#2を流れる電流の変化を測定した。
【0070】
測定結果は、図3において▼印で示されている。
【0071】
図3に示されるように、ショットキーダイオード比較サンプル#1においては、逆方向バイアス電圧の印加時に、約−3ボルトよりも高くなると(印加電圧の絶対値が約3ボルトよりも大きくなると)と、リーク電流が急激に上昇することが認められたが、本発明にかかるショットキーダイオードサンプル#1においては、逆方向バイアス電圧の印加時に、リーク電流の上昇は認められなかった。また、ショットキーダイオード比較サンプル#1においては、順方向バイアス電圧が3ボルト以上にならないと、順方向の電流が上昇しなかったが、本発明にかかるショットキーダイオードサンプル#1においては、きわめて低い電圧で、順方向の電流の上昇が認められ、図4に示されるように、順方向バイアス電圧が0.1ボルトで、順方向の電流が上昇することがわかった。
【0072】
一方、図3に示されるように、ショットキーダイオード比較サンプル#2においては、逆方向バイアス電圧が低いとき(印加電圧の絶対値が小さいとき)のリーク電流は、本発明にかかるショットキーダイオードサンプル#1に比して、低いものの、本発明にかかるショットキーダイオードサンプル#1においては、逆方向バイアス電圧が高くなっても(印加電圧の絶対値が大きくなっても)、リーク電流はほとんど上昇しないのに対し、ショットキーダイオード比較サンプル#2においては、逆方向バイアス電圧が約−13ボルトよりも高くなると(印加電圧の絶対値が約13ボルトよりも大きくなると)、リーク電流が急激に上昇することが認められた。さらに、ショットキーダイオード比較サンプル#2においても、順方向バイアス電圧が3ボルト以上にならないと、順方向の電流が上昇しなかった。
【0073】
実施例1ならびに比較例1および2から、本発明にかかるショットキーダイオードサンプル#1においては、逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流が低く、順方向バイアス電圧印加時の電圧降下が低いことが判明した。
【0074】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0075】
たとえば、図1に示された実施態様および図2に示された実施態様においては、第一の誘電体層15、25は、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって形成され、前記実施例においては、第一の誘電体層15、25は、(Ba0.5Sr0.5)TiOによって形成されているが、第一の誘電体層15、25を、(Ba0.5Sr0.5)TiOによって形成することも、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって形成することも必ずしも必要でなく、第一の誘電体層15、25は、(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)によって形成されていてもよい。
【0076】
また、図1に示された実施態様および図2に示された実施態様においては、第二の誘電体層16、26は、多結晶の(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって形成され、前記実施例においては、第二の誘電体層16、26は、多結晶の(Ba0.5Sr0.5)TiOによって形成されているが、第二の誘電体層16、26を、(Ba0.5Sr0.5)TiOによって形成することも、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)によって形成することも必ずしも必要でなく、第二の誘電体層16、26は、(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)によって形成されていてもよい。
【0077】
さらに、図1に示された実施態様および実施例においては、ショットキーダイオード1は、支持基板11を備え、支持基板11の表面上に、絶縁膜12、密着層13、ショットキー金属層14、第一の誘電体層15、第二の誘電体層16およびオーミック金属層17がこの順に積層され、図2に示された実施態様においては、ショットキーダイオード2は、支持基板11を備え、支持基板11の表面上に、絶縁膜12、密着層13、オーミック金属層27、第二の誘電体層26、第一の誘電体層25およびショットキー金属層24がこの順に積層されているが、ショットキー金属層14を構成する金属と、絶縁膜12を構成する材料とが密着性が高い場合には、密着層13を設けることは必ずしも必要でなく、オーミック金属層27を構成する金属と、絶縁膜22を構成する材料とが密着性が高い場合には、密着層23を設けることは必ずしも必要でない。
【0078】
また、図1に示された実施態様および実施例においては、ショットキーダイオード1は、支持基板11を備え、支持基板11の表面上に、絶縁膜12、密着層13、ショットキー金属層14、第一の誘電体層15、第二の誘電体層16およびオーミック金属層17がこの順に積層され、図2に示された実施態様においては、ショットキーダイオード2は、支持基板11を備え、支持基板11の表面上に、絶縁膜12、密着層13、オーミック金属層27、第二の誘電体層26、第一の誘電体層25およびショットキー金属層24がこの順に積層されているが、支持基板11、21が抵抗率が高い材料で形成されているときは、絶縁膜12、22を設けることは必ずしも必要でない。
【符号の説明】
【0079】
1 ショットキーダイオード
2 ショットキーダイオード
11 支持基板
12 絶縁膜
13 密着層
14 ショットキー金属層
15 第一の誘電体層
16 第二の誘電体層
17 オーミック金属層
21 支持基板
22 絶縁膜
23 密着層
24 ショットキー金属層
25 第一の誘電体層
26 第二の誘電体層
27 オーミック金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板を備え、さらに、前記支持基板の表面上に形成されたショットキー金属層と、前記ショットキー金属層の表面上に、前記ショットキー金属層とショットキー接触されるように形成された添加物濃度が高い第一の誘電体層と、前記第一の誘電体層の表面上に形成された添加物濃度が低い第二の誘電体層と、前記第二の誘電体層の表面上に、前記第二の誘電体層とオーミック接触するように形成されたオーミック金属層を備えたことを特徴とするショットキーダイオード。
【請求項2】
前記第一の誘電体層に添加されている前記添加物が、複数の原子価を取り得る金属イオンであることを特徴とする請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項3】
前記第一の誘電体層が、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)および(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)よりなる群から選ばれる誘電体によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のショットキーダイオード。
【請求項4】
前記第一の誘電体層に添加されている前記添加物が、Mn,Mg,ScおよびHoよりなる群から選ばれる金属イオンであることを特徴とする請求項3に記載のショットキーダイオード。
【請求項5】
前記第一の誘電体層に添加されている前記添加物がMnであり、前記第一の誘電体層中のMnの含有量が0.3モル%以上、5モル%以下であることを特徴とする請求項4に記載のショットキーダイオード。
【請求項6】
前記オーミック金属層が、前記第二の誘電体層とのショットキーバリアが低い金属によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のショットキーダイオード。
【請求項7】
前記第二の誘電体層が、前記第一の誘電体層よりも膜厚が厚くなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のショットキーダイオード。
【請求項8】
支持基板の表面上に、ショットキー金属層を形成し、前記ショットキー金属層の表面上に、前記ショットキー金属層とショットキー接触されるように、添加物濃度が高い第一の誘電体層を形成し、前記第一の誘電体層の表面上に、添加物濃度が低い第二の誘電体層を形成し、前記第二の誘電体層の表面上に、前記第二の誘電体層とオーミック接触するように、オーミック金属層を形成することを特徴とするショットキーダイオードの製造方法。
【請求項9】
前記第一の誘電体層に、前記添加物として、複数の原子価を取り得る金属イオンを添加することを特徴とする請求項9に記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項10】
前記第一の誘電体層を、(Ba1−xSr)TiO(ここに、0≦x≦1.0である。)および(Ba,Sr)TiO (ここに、1.00≦y≦1.20である。)よりなる群から選ばれる誘電体によって形成することを特徴とする請求項8または9に記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項11】
前記第一の誘電体層に、前記添加物として、Mn,Mg,ScおよびHoよりなる群から選ばれる金属イオンを添加することを特徴とする請求項10に記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項12】
前記添加物として、Mnを、前記第一の誘電体層中のMnの含有量が0.3モル%以上、5モル%以下となるように、前記第一の誘電体層に添加することを特徴とする請求項10に記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項13】
前記オーミック金属層を、前記第二の誘電体層とのショットキーバリアが低い金属によって形成することを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項に記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記第二の誘電体層を、前記第一の誘電体層よりも膜厚が厚くなるように形成することを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1項に記載のショットキーダイオードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138552(P2012−138552A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291702(P2010−291702)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】