説明

シリカガラス原料の評価方法及びこれを用いたシリカガラス製造方法

【課題】少量の試料を用い、原料に起因して発生した気泡が目視でよく確認でき、短時間で安価に、信頼性の高いシリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断できるシリカガラス原料の評価方法を提供する。
【解決手段】本シリカガラス原料の評価方法は、一端が閉塞され、他端が開放されたシリカガラス管にシリカガラス原料を入れて、一端側を下にしてほぼ垂直に立てた状態にし、他端側から吸気して減圧し、一端側から加熱し、シリカガラス原料が溶融しはじめた後、シリカガラス管を水平に対して傾けて回転させながら、一端側から他端側に向かって順次加熱しガラス化し、このガラスの気泡の発生状態を観察し、シリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカガラス原料の評価方法及びこれを用いたシリカガラス製造方法に係り、特に少量の試料を用いて評価可能なシリカガラス原料の評価方法及びこれを用いたシリカガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然原料を用い、酸水素炎溶融法(ベルヌイ法)による合成シリカガラス製造方法は、シリカガラスのインゴット製造工程で、このインゴットに気泡の発生が生じるが、この気泡は製造装置、製造方法、製造工程での各種設定条件の他に、特に、使用する天然原料(水晶)中の不純物や水分等様々な要因が考えられる。
【0003】
これらの要因は全て解明されておらず、また、知られている範囲で、事前にチェックしようとすると、膨大な費用、時間を要し、製造上現実的でなく、従来、新規天然原料の採用を検討する場合、実際には、生産時と同様にベルヌイ炉でバーナ火炎の間から水晶粉を落下させながら溶かしインゴットを作製し、先行評価していた。
【0004】
しかしながら、このインゴットを溶融する方法は、天然原料の評価として精度は高いが、多量の試料と長時間高温溶融を行うためコストがかかる。そこで、本発明者らは、少量の原料を一端が閉塞したシリカガラス管に充填して真空引きしながらガスバーナでシリカガラス管を溶融することで、気泡の発生状況を観察して原料の良否判断を試みたが、シリカガラス管の溶融は、低コストであるが、試験時の個人差により未溶融の粉が残るあるいは、閉じ込められた気泡が残るなど、インゴットを用いた方法に比べ正確な判断ができず、良品を不良品と判断することがあった。
【0005】
なお、合成シリカガラス粉末の品質評価方法として、特許文献1のような方法がある。
【特許文献1】特開平10−182139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、少量の試料を用い、原料に起因して発生した気泡が目視でよく確認でき、短時間で安価に、信頼性の高いシリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断できるシリカガラス原料の評価方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、気泡がなく高品質で安価なシリカガラスを製造できるシリカガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係るシリカガラス原料の評価方法は、一端が閉塞され、他端が開放されたシリカガラス管にシリカガラス原料を入れ、一端側を下にしてほぼ垂直に立てた状態にし、他端側から吸気して減圧し、一端側から加熱し、シリカガラス原料が溶融しはじめた後、シリカガラス管を水平に対して傾けて回転させながら、一端側から他端側に向かって順次加熱しガラス化し、このガラスの気泡の発生状態を観察し、シリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るシリカガラスの製造方法は、上記シリカガラス原料の評価方法を用いてシリカガラス原料の気泡発生要因の有無の判断を行い、気泡発生要因が無と判断されたシリカガラス原料を使用し、酸水素炎溶融を用いるベルヌイ法によりシリカガラスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシリカガラス原料の評価方法によれば、少量の試料を用い、原料に起因して発生した気泡が目視でよく確認でき、短時間で安価に、信頼性の高いシリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断できるシリカガラス原料の評価方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明に係るシリカガラスの製造方法によれば、気泡がなく高品質で安価なシリカガラスを製造できるシリカガラスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るシリカガラス原料の評価方法の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1(a)及び図1(b)は本発明に係るシリカガラス原料の評価方法に用いる試料の加熱方法を示す概念図である。
【0014】
図1(a)に示すように、一端1aが閉塞され、他端1bが開放されたシリカガラス管(例えばシリカガラス製試験管)1にシリカガラス原料(水晶粉)mを充填し、一端側を下にして垂直(垂直に対し、5°の傾斜は許容される)に立てた状態にする。他端1b側から吸気して減圧し、一端1a側から加熱し、シリカガラス原料mがシリカガラス管1に融着するまで正逆回転させながら加熱する。
【0015】
シリカガラス原料mが溶融しはじめた後、図1(b)に示すように、シリカガラス管1を水平に対して好ましくは30°〜60°傾け、回転させながら、一端1a側から他端1b側に向かって順次加熱しガラス化する。
【0016】
減圧下、水平に対して僅かに傾けかつ正逆回転させながら溶融することにより、充填されたシリカガラス原料が一端側の部分から順次加熱されて溶融されガラス化し、ガラス化された部分は熱伝導性が良くなりガラス化した部分に接したシリカガラス原料は気泡を巻き込まずガラス化される。
【0017】
このようにして作製されたシリカガラスを目視で観察し、シリカガラスに気泡が含まれていない場合は、シリカガラス原料の気泡発生要因が無い良品と判断し、シリカガラスの製造方法のための原料として採用する。
【0018】
上記試験過程において、従来の実際にインゴットを溶融させて気泡発生の有無を観察する方法と異なり、本発明の方法は少量のシリカガラス原料を用い、短時間で行うので、経済的で安価な方法であり、また、シリカガラス原料と同材質のシリカガラス管を用いるので、取り扱いが容易で、シリカガラス原料の汚染のおそれがなく、さらに、垂直状態及び水平に対して傾け水平状態で回転させながら加熱するので、試験時の個人差により未溶融の粉が残ることなく、信頼性の高い判断ができる。
【0019】
一方、気泡の発生が認められた場合には、シリカガラス原料を不良品と判断し、純化工程に回し、直ちにシリカガラスの製造方法のための原料として採用しない。
【0020】
なお、シリカガラス管加熱時、シリカガラス管は必ずしも垂直でなくてもよく、ほぼ垂直とは、垂直に対し5°までの傾斜は許容されるものであり、シリカガラス管内のシリカガラス原料粉が、その重量により一端側に自然に移動する程度に傾いていればよい。
【0021】
本実施形態に係るシリカガラス原料の評価方法によれば、少量の試料を用いて短時間に行い、原料に起因して発生した気泡が目視でよく確認でき、安価に信頼性の高いシリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断できるシリカガラス原料の評価方法が実現する。
【0022】
次に本発明のシリカガラスの製造方法について説明する。
【0023】
本発明のシリカガラスの製造方法は、シリカガラス原料の評価方法を用いてシリカガラス原料の気泡発生要因の有無の判断を行ない、気泡発生要因が無と判断されたシリカガラス原料を用い、酸水素炎溶融を用いるベルヌイ法によりシリカガラスを製造する。
【0024】
例えば、図2に示すように、本発明のシリカガラスの製造方法は、シリカガラス製造装置10を用い、本発明のシリカガラス原料の評価方法により気泡発生要因が無と判断されたシリカガラス原料mを採用し、炉体11の上方に設けた原料タンク12からシリカガラス原料(水晶粉)mを一定速度で落下、供給し、酸素及び水素が供給される酸水素バーナ13で溶融し、シリカガラス化し、この酸水素バーナ13の下方に設けたターゲット14に堆積させ、シリカガラスインゴットIgを製造する。
【0025】
本実施形態のシリカガラスの製造方法によれば、高品質で安価なシリカガラスを製造できるシリカガラスの製造方法が実現する。
【実施例】
【0026】
(実施例) シリカガラス管の一端を封じ、80〜200#のシリカガラス原料を入れ真空に引きながらガスバーナ(H:4L/min、O:2L/min)で、一端側を下にして垂直に立てた状態にし、他端側から真空引きして減圧しながら、一端側から加熱し、シリカガラス原料が溶融しはじめた後、シリカガラス管を水平に対して45°傾けて回転させながら、一端側から他端側に向かって順次加熱してガラス化し、気泡の発生状態を観察した。
【0027】
図3に示すように、シリカガラス原料がシリカガラス管の一端側から均一にガラス化され、熱伝導がよくなり未溶融粉を残さず、気泡を巻き込まずに溶融できる。これにより、シリカガラス管特に中央部に気泡の発生がない場合には、シリカガラス原料に気泡発生要因が無いと判断できる。
【0028】
(比較例) 上記実施例と同様のシリカガラス原料を用い、垂直に立てた状態での加熱を行わず、直接、水平に対して80°傾けて一側面から加熱してガラス化し、気泡の発生状態を観察した。
【0029】
図4に示すように、未溶融粉は断熱性がよく、反対側面まで熱が伝わりにくいため、未溶融粉が軸の中心部に残った。これにより、垂直状態での加熱、溶融後に傾けた状態で回転させながら加熱が必要であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は本発明に係るシリカガラス原料の評価方法に用いる試料の先工程、(b)は次工程の加熱方法を示す概念図。
【図2】本発明に係るシリカガラスの製造方法に用いるシリカガラス製造装置の概念図。
【図3】本発明に係るシリカガラス原料の評価方法を用いた評価結果図。
【図4】従来のシリカガラス原料の評価方法を用いた比較例の評価結果図。
【符号の説明】
【0031】
1 シリカガラス管
1a 一端
1b 他端
m シリカガラス原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞され、他端が開放されたシリカガラス管にシリカガラス原料を入れ、一端側を下にしてほぼ垂直に立てた状態にし、他端側から吸気して減圧し、一端側から加熱し、シリカガラス原料が溶融しはじめた後、シリカガラス管を水平に対して傾けて回転させながら、一端側から他端側に向かって順次加熱しガラス化し、このガラスの気泡の発生状態を観察し、シリカガラス原料の気泡発生要因の有無を判断することを特徴とするシリカガラス原料の評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリカガラス原料の評価方法を用いてシリカガラス原料の気泡発生要因の有無の判断を行い、気泡発生要因が無と判断されたシリカガラス原料を使用し、酸水素炎溶融を用いるベルヌイ法によりシリカガラスを製造することを特徴とするシリカガラス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−7211(P2009−7211A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171388(P2007−171388)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】