説明

シリカゲル系触媒担体

本発明は、平均径が10〜120μmの範囲にあり、BET表面積が400〜800m/gの範囲にあり、気孔体積が0.3〜3.0cm/gの範囲にある、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物を含む球状ビーズであって、あるビーズのいずれの位置でのビーズ径も該ビーズの平均径から10%以上相違することがなく、該ビーズの表面が実質的に平滑であることを特徴とするビーズと、これらの球状ビーズ製造方法、該球状ビーズを含む粒子状触媒、および該球状ビーズの触媒または触媒担体としての利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均径が10〜120μmの範囲にあり、BET表面積が400〜800m2/gの範囲にあり、気孔体積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にある、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物を含む球状ビーズであって、あるビーズのいずれの位置でのビーズ径も該ビーズの平均径から10%以上相違することがなく、該ビーズの表面が実質的に平滑であることを特徴とするビーズと、これらの球状ビーズの製造方法、球状ビーズの触媒または触媒担体としての利用に関する。
【0002】
本発明は、特にSiO2(シリカ)からなる球状ビーズに関する。
【背景技術】
【0003】
シリカ粒子とその製造方法は、先行技術により公知である。
【0004】
US2,757,073には、シリカゲルゾルの分散物をまず水で飽和した有機溶媒、例えばブタノール中に投入し、激しい攪拌によりシリカゲルゾルの液滴を形成し、アンモニアを添加してシリカゲルに変換する粉末状シリカゲルの製造方法が開示されている。このようにして得られるゲルを、硬化後に微粒子にまで破砕し、この微粒子を水で洗浄し、さらにアセトンで洗浄して実質的にすべての水を除く。また、US2,757,073には、このような粉末状シリカが、ゴム等の材料の充填材として、あるいは被覆シリカ製品の製造のための中間体として使用できることが開示されている。このようにして得られるシリカビーズの直径は50nm未満である。
【0005】
US2,921,839には、沈澱化により微破砕されたシリカ粒子の製造方法が開示されている。このためには、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を有機溶媒と混合し、次いで酸と混合する。有機相を分離した後、得られるシリカゲルビーズを共沸蒸留で乾燥させる。US2,921,839に記載の方法は、直径が10〜1000μmの範囲にあるシリカゲル粒子を与える。US2,921,839には、表面が特に高平滑であるシリカゲル粒子についての開示はない。
【0006】
US3,489,516には、水性媒体中に分散している有機相中にあるxNa2O・ySiO2の酸添加重合によるシリカビーズの製造方法が開示されている。このように生産されるシリカビーズのBET表面積は、700〜1100m2/gの範囲であるか、300〜600m2/gの範囲である。これらのシリカビーズは触媒として利用できる。
【0007】
先行技術中には、本発明で特に好適であり、また重合反応触媒として、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンの重合反応の触媒として特に好適である直径やBET表面積、気孔体積、多分散性、表面平滑性の組み合わせを示すシリカ粒子やその製造方法について述べたものはない。また、上記の優れたいろいろな変数の組み合わせを示す球状ビーズの製造方法について述べた先行技術もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記変数の特に優れた組合せをもつ球状ビーズを提供することである。特に、これらの球状ビーズは、そのビーズ表面が高い平滑性を有しており、このためこれらが重合反応触媒としての利用に有利である必要がある。本発明のもう一つの目的はこのような球状ビーズの製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
われわれは、本目的が、平均径が10〜120μmの範囲にあり、BET表面積が400〜800m2/gの範囲にあり、気孔体積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にある、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物を含む球状ビーズであって、あるビーズのいずれの位置でのビーズ径も該ビーズの平均径から10%以上相違することがなく、該ビーズの表面が実質的に平滑であることを特徴とするビーズにより達成されることを見出した。
【0010】
われわれは、これらの目的がまた、
(A)少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物とを含む混合物を、混合物Aとして提供する工程と、
(B)少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の酸とを含む混合物を、混合物Bとして提供する工程と、
(C)該混合物AとBとを混合して、上記少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を上記少なくとも一種の酸と反応させて、球状ビーズを含む水相と有機相とを含む混合物Cを得る工程と、
(D)工程Cで得られる混合物Cから有機相を分離して球状ビーズを含む水相を得る工程と、
(E)必要に応じて、工程(D)で得られる球状ビーズを少なくとも一種の酸で処理する工程と、
(F)(F)工程(D)または(E)で得られる球状ビーズを乾燥する工程とからなる本発明の球状ビーズの製造方法により達成されることを見出した。
【0011】
われわれはまた、上記の目的が本発明の球状ビーズの触媒または触媒担体としての利用により達成されることを見出した。
【0012】
本発明の球状ビーズは、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物を含む。
【0013】
ある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物が、SiO2とAl23、TiO2、MgO、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる特に好ましい実施様態においては、本発明の球状ビーズがSiO2を含む。本発明の球状ビーズが、SiO2を少なくとも96重量%の量で含むことが、特に少なくとも98重量%の量で含むことが極めて好ましい。残りの重量百分率は、アルミニウムやナトリウム、鉄、およびこれらの混合物などの少量の他金属や、硫酸イオンや及び/又は塩素イオンなどのアニオンで説明できる。SiO2に加えて、これらの成分はそれぞれ0.1重量%未満の量で存在する。
【0014】
この少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物は、実質的に非晶質である。即ち、この少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物は、少なくとも80%が非晶質であり、より好ましくは少なくとも90%が非晶質である。非晶質領域の比率は、当業界の熟練者には既知の方法により、例えばX線回折(XRD)により決めることができる。
【0015】
本発明の球状ビーズのBET表面積は、一般的には400〜800m2/gの範囲であり、好ましくは500〜600m2/gの範囲、より好ましくは520〜580m2/gの範囲である。BET表面積は、当業界の熟練者には既知の方法により、例えばN2物理吸着測定により決めることができる。
【0016】
本発明の球状ビーズの平均径は、一般的には10〜12μmの範囲であり、好ましくは30〜10μmの範囲、最も好ましくは40〜90μmの範囲である。なお、「平均径」は、試料中のすべてのビーズの平均径を表すものとする。
【0017】
本発明の球状粒子のD10値は、一般的には5〜30μmの範囲であり、好ましくは10〜25μmの範囲、より好ましくは12〜20μmの範囲である。本発明の球状粒子のD50値は、一般的には30〜70μmの範囲であり、好ましくは40〜6μmの範囲、より好ましくは50〜6μmの範囲である。本発明の球状粒子のD90値は、一般的には50〜140μmの範囲であり、好ましくは75〜120μmの範囲、より好ましくは80〜100μmの範囲である。
【0018】
上記の値D10とD50とD90は、それぞれ測定される粒子の10%、50%および90%が上記の直径より小さな直径を持つことを示す。球状ビーズの平均径の測定方法は、本業界の熟練者には既知であり、例えばフラウンホーファーレーザ回折またはミーレーザ回折があげられる。
【0019】
本発明の球状ビーズの気孔体積は、一般的には0.3〜3.0cm3/gの範囲であり、好ましくは0.8〜2.5cm3/gの範囲、最も好ましくは1.5〜2.2cm3/gの範囲である。球状ビーズの気孔体積を決定する方法は、当業界の熟練者には既知であり、例えばN2物理吸着やHg多孔度測定があげられる。
【0020】
本発明の球状ビーズは、実質的に単分散である。即ち、この球状ビーズは、上記のD10やD50、D90値から明らかなように、好ましくは狭い粒度分布を持つ。
【0021】
本発明の球状ビーズは、一般に、特に明確で均一な形態に特徴がある。本発明の球状ビーズのいずれかの粒子のいずれの点で求めた直径の、このビーズの平均径から差異も、一般的には10%未満であり、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満である。なお、「平均径」は、ある特定のビーズのすべての直径の平均径を意味するものとされる。完全に均一な球である理想的な場合には、各ビーズに直径が一つしかない。本発明のビーズの球状形状は、走査型電子顕微鏡により決めることができる。
【0022】
本発明の球状ビーズはまた、これらの球状ビーズの表面が実質的に平滑であることに特徴がある。なお、「平滑」とは、本発明の球状ビーズの表面が、窪み、ひび、裂け、割れ、ふくれ、切欠きなどの凹凸のいずれをも有していないことを意味するものとする。本発明の粒子の平滑性は、例えば走査型電子顕微鏡で決めることができる。
【0023】
本発明はまた、工程(A)〜(F)からなる本発明の球状ビーズの製造方法を提供する。
【0024】
工程(A):
工程(A)は、少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の前駆化合物とからなる混合物を、混合物Aとして供給することからなる。
【0025】
ある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒が、水に完全に混和可能でない。
【0026】
この少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒は、ケトン、エーテル、アルコール(例えば、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのブタノール)、植物油、シリコーン油、鉱油、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。n−ブタノールが特に好ましい。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(A)は、少なくとも一種の水で飽和した少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒を用いることからなる。
【0027】
本発明によれば、本発明の方法の工程(A)で供給される混合物Aは水を含んでいる。この水は、水道水や飲用水、蒸留水、純水から選んでよい。
蒸留水の使用が好ましい。
【0028】
混合物A中の少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水との体積比は、一般的には5:1〜1:1の範囲であり、好ましくは4:1〜2:1の範囲である。ある特に好ましい実施様態では、まずこの少なくとも一種の有機溶媒を供給し、水溶液状の少なくとも一種の金属または半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を添加して、混合物Aを得る。
【0029】
本発明の方法の工程(A)で、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の前駆化合物として用いられるこの少なくとも一種の化合物は、少なくとも一種の酸との反応で該当する金属及び/又は半金属酸化物に変換可能な化合物ならいずれでもよい。半金属酸化物が二酸化ケイ素である好ましい場合においては、用いる前駆化合物が、好ましくはケイ酸ナトリウムxNa2O・ySiO2(水ガラス)である。本発明の方法の他の好ましい実施様態では、工程(A)においてSiO2:Na2Oモル比が一般的には1〜6の範囲にあるケイ酸ナトリウム溶液、好ましくは2〜5の範囲、より好ましくは3〜4の範囲、例えば3.4であるケイ酸ナトリウム溶液が用いられる。
【0030】
他の好適な前駆化合物は、ケイ酸カリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩やアルカリ土類金属ケイ酸塩、コロイダルシリカゾル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる
本発明の方法のある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物が、ケイ酸カリウム及び/又はケイ酸ナトリウムなどおのアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、コロイダルシリカ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0031】
ある特に好ましい実施様態では、密度が1.1〜1.35g/cm3の範囲にある、特に1.14〜1.32g/cm3の範囲にある水ガラスの水溶液、即ちxNa2O・ySiO2のH2O中の水溶液が本発明の方法の工程(A)で使用される。少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物は、混合物A中で1.5〜4.5mol・l-1の濃度で使用される。
【0032】
本発明の方法の工程(A)は、一般的には個々の成分が処理可能となるまたはより確実に溶解するいずれの温度で行ってもよい。工程(A)は二相混合物を与えることが好ましい。工程(A)の温度は、例えば10〜80℃の範囲であり、好ましくは15〜40℃の範囲、より好ましくは室温である。
【0033】
工程(B):
本発明の方法の工程(B)は、少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の酸を含む混合物を、混合物Bとして与えることからなる。
【0034】
本発明の方法の工程(B)は、工程(A)に関して上に述べた少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒のすべてを用いることができる。工程(B)ではn−ブタノールが好ましく用いられる。工程(B)において、少なくとも一種の水で飽和した少なくとも部分的に水混和性の溶媒を使用することがさらに好ましい。
【0035】
混合物Bは少なくとも一種の酸を含む。一般的には、少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水とを含む混合物中に可溶で、工程(A)で少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の前駆体として使われる少なくとも一種の化合物を該当する金属及び/又は半金属酸化物に変換可能ないずれの酸も使用可能である。ある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の酸が塩酸や硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸、またはギ酸や酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。ある特に好ましい実施様態では、硫酸を使用する。工程(A)と同様に、水道水、飲用水、蒸留水または純水が使用可能であり、蒸留水の使用が好ましい。
【0036】
ある好ましい実施様態では、工程(B)において少なくとも一種の酸の水溶液を少なくとも一種の有機溶媒と混合して混合物Bを調整する。この酸の水溶液の酸濃度は2〜20重量%の範囲であり、より好ましくは3〜15重量%の範囲、特に好ましくは4〜10重量%の範囲である。
【0037】
混合物B中の少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水の体積比は、一般的には5:1〜1:1の範囲であり、好ましくは4:1〜2:1の範囲である。
【0038】
工程(B)を実施する温度は、一般的には10〜80℃の範囲であり、好ましくは15〜40℃の範囲、より好ましくは室温である。
【0039】
工程(C):
工程(C)は、混合物AとBとを混合し、その少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物に少なくとも一種の酸を反応させて、球状ビーズを含む水相と有機相とからなる混合物Cを得ることからなる。
【0040】
本発明の方法の工程(C)における混合は、当業界の熟練者には既知のいずれの方法で行ってもよい。ある好ましい実施様態においては、混合物のAとBが、フラスコまたは反応管などの反応器に同時に導入されて混合される。
【0041】
少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物と少なくとも一種の酸との反応の結果、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物が形成される。
【0042】
SiO2がxNa2O・ySiO2とH2SO4(aq.)から形成される好ましい場合では、以下の反応が進行する。
xNa2O・ySiO2+H2SO4(aq.)→SiO2+Na2SO4+H2
【0043】
本発明の方法の工程(C)は、連続的に、例えば流動管中で行われることが好ましい。工程(C)を実施する温度は、一般的には10〜80℃の範囲であり、好ましくは15〜40℃の範囲、より好ましくは室温である。
【0044】
少なくとも一種の前駆化合物と少なくとも一種の酸の反応の後では、球状ビーズは混合物C中に分散した状態で存在する。
【0045】
工程(D):
工程(D)は、工程(C)で得られた混合物Cから有機相を分離し、球状ビーズを含む水相を得ることからなる。
【0046】
本発明の方法の工程(D)での混合物Cからの有機相の分離は、当業界の熟練者には既知のいずれの方法でも実施可能であり、例えばデカンテーション、吸収、底面バルブを経由する下層の排出などで実施可能である。最適方法の選択は、特に用いる有機溶媒の密度が1g/mlより大きいか小さいかにより、即ち有機相が水相の上になるか下になるかに依存する。
【0047】
ある好ましい実施様態においては、混合物Cは、上に有機相を持ち、下に本発明の球状ビーズが分散状態で存在する水相を持つ。ある好ましい実施様態においては、工程(D)で、上の有機相を吸引またはデカンテーションで除去して、球状粒子を含む水相を得る。工程(D)の後に得られる水相は、少なくとも一種の有機溶媒の残渣を、例えば最大で15重量%、好ましくは多くて10重量%の量で含んでいることがある。
【0048】
本発明の方法のある好ましい実施様態においては、工程(D)の後で、適当な試薬を添加して、球状ビーズを含む水相を中性pHに、即ちpH6〜8に調整する。ある好ましい実施様態においては、これを、酸、例えば硫酸などの鉱酸を添加して行う。この酸は、好ましくは20〜60重量%の範囲、好ましくは30〜50重量%の範囲の濃度の水溶液として用いられる。
【0049】
ある好ましい実施様態においては、中和の後に養生工程が続く。このため、水中に分散した球状ビーズを、40〜95℃の範囲の温度で、好ましくは50〜90℃で、一定時間、例えば1〜5時間、好ましくは2〜4時間加熱する。
【0050】
工程(E):
本発明の方法の任意の工程(E)は、工程(D)で得られる球状ビーズを少なくとも一種の酸で処理することからなる。
【0051】
本発明の方法の工程(E)は、特に、球状ビーズの製造の結果発生しビーズ上またはビーズ内に存在する塩、例えばNa2SO4を除去する目的を持つ。
【0052】
ある好ましい実施様態においては、この任意の工程(E)は、まず当業界の熟練者には既知の方法で、例えばデカンテーションや吸引などの方法で、球状の粒子の上にある水を除くことからなる。
【0053】
好ましくは、この球状粒子を、次いで酸の水溶液で処理する。好適な酸は、塩酸と硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選ばれ、特に硫酸が好ましい。任意の工程(E)のこの水溶液は、好ましくは低濃度であり、例えば0.1〜5重量%の範囲の濃度、好ましくは0.75〜2重量%の範囲の濃度である。この酸性溶液の添加後、得られる混合物を、例えば当業界の熟練者には既知の装置を用いて攪拌により均一となるまで混合することが好ましい。次いで、得られる混合物を、一定時間、例えば0.25〜2時間の範囲、好ましくは0.25〜1時間の範囲の期間静置する。次いで、この上澄の酸性溶液を、例えばデカンテーション及び/又は吸引によりもう一度除去することが好ましい。酸添加−攪拌−静置−酸除去の一連操作を2回以上、例えば2〜10回繰り返す。
【0054】
好ましくは、次いで、当業界の熟練者には既知の方法により、得られる球状粒子から、腐食性成分を、例えば酸、有機溶媒及び/又は少なくとも一種の金属または半金属酸化物の形成の際に生じる副生成物を除く。
【0055】
工程(F):
本発明の方法の工程(F)は、工程(D)または(E)で得られる球状ビーズを乾燥することからなる。
【0056】
この乾燥を、当業界の熟練者には既知の方法で実施してもよく、例えば乾燥キャビネット中で100〜300℃の範囲で、好ましくは150〜250℃の範囲の温度で実施してもよい。本発明の方法の工程(F)は、大気圧下で、あるいは低圧力下、例えば800mbar未満、好ましくは600mbar未満で行うことができる。
【0057】
工程(F)は、球状ビーズが、後での使用に十分な低水分率となるまで、例えば0.2〜0.8重量%の範囲となるまで行われる。この水分率は、200℃での乾燥減量として求めることができる。
【0058】
本発明により生産された球状ビーズは、直径、BET表面積、気孔体積、平滑性、単分散性などの特徴の好ましい組み合わせを特徴とする。このビーズは、特に明確な球状形状と平滑性とをもち、このため、この球状ビーズを重合における触媒担体として用いると、特に単分散で球状のポリマー粒子を形成させる。
【0059】
したがって、本発明の球状ビーズは、特に触媒や触媒担体として有用である。例えば、クロムやマグネシウム、チタン、白金、パラジウム、イリジウム、ニッケル、ジルコニウム、亜鉛、銅、モリブデン、スカンジウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる触媒活性金属がこの目的に使用され、適当なら、当業界の熟練者には既知の量で、例えば全体の粒子に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜5重量%の量で本発明の粒子に使用される。この触媒活性な金属の種類と量は、一般的には所望用途に依存するものであり、当業界の熟練者には既知である。
【0060】
したがって、本発明はまた、本発明の球状ビーズと少なくとも一種の触媒活性金属とを含む粒子状の触媒を提供する。存在する少なくとも一種の触媒活性金属の量は、好ましくは全体の粒子状触媒に対して0.1〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.4〜5重量%の範囲である。
【0061】
本発明はまた、本発明の球状ビーズの触媒または触媒担体としての、特に重合反応、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたは他のスペシャリティーポリマーの重合反応の触媒または触媒担体としての利用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の球状ビーズの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2には、比較のために先行技術による典型的な噴霧乾燥シリカゲルを示す。
【実施例】
【0063】
装置:
−二台のブッデベルグ社製のPLR−11T型の防爆型圧縮空気攪拌器
−二台のビスコジェット120mm攪拌装置
−二台の冷却水と保護ガス供給口とを持つ10リットルのジャケット付きガラス反応器
−上記の二台のジャケット付きガラス反応器に初めに投入される物質の混合用の二流路ぜん動ポンプ、
−数個の10リットル受器
−10リットルのガラス瓶
【0064】
化学物質:
1. 2リットルの5.2%硫酸
2. 2リットルの水ガラス溶液(密度:1.269g/cm3
3. 12リットルのn−ブタノール、工業グレード、水で飽和
4. 中和用の約40%の硫酸
5. 約10リットルの1%硫酸
【0065】
操作方法:
沈澱化:
ジャケット付き反応器をそれぞれ6リットルのn−ブタノールで満たした後、攪拌器を約500rpmに調整する。次いで、上記希硫酸を一つの容器に投入し、水ガラス溶液を他の容器に投入する。添加と乳化が終了後、両方共に攪拌器速度を約300rpmに低下させる。ポンプを用いて、これらの得られたエマルジョンを、受器からチューブ中に取り出し、可動型の受器に移す。
【0066】
沈澱化後、n−ブタノールとシリカゲルの混合物を分離する。40%の硫酸を添加して、直ちにシリカゲル塊のpHを6.5〜7.5の範囲に調整する。
【0067】
養生:
中和後のシリカゲルを10リットルのガラス瓶に入れ、80℃の温水浴に約2.5時間移す。
【0068】
イオン交換と洗浄:
シリカゲルの上の液体を吸引で除いた後、1%のH2SO4溶液(0.5〜15%を超える広い濃度範囲が可能)を添加する。1時間後、この上澄液をもう一度吸引除去し、シリカゲルをもう一度、1%のH2SO4溶液と混合する。この操作を5回繰り返し、最後にシリカゲルを水と混合する。この操作を繰り返す。
【0069】
上澄み液を吸引除去して、得られる球状のビーズを分離する。
【0070】
乾燥:
このシリカゲルを乾燥キャビネット中で170℃で乾燥させる。
【0071】
分析データ:
球状粒子の化学組成(XRFを用いDIN51418により測定):
SiO2>98%
微量のAl、Na、Fe、硫酸、塩化物(それぞれ<0.01%)
【0072】
一般的には:
色:白色
嵩密度:0.18kg/l(DIN8948/7.6により測定)
【0073】
粒度分布(ISO13320により測定):
すべてのデータは、ふるい分けしていない非分級材料のものである:
10=16μm
50=55μm
90=96μm
【0074】
BET表面積と気孔体積(DIN66134により測定):
BET表面積(乾燥ヒドロゲル):550m2/g
乾燥ヒドロゲルの気孔体積:1.7cm3/g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均径が10〜120μmの範囲にあり、BET表面積が400〜800m2/gの範囲にあり、気孔体積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にある、少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物を含む球状ビーズであって、あるビーズのいずれの位置でのビーズ径も該ビーズの平均径から10%以上相違することがなく、該ビーズの表面が実質的に平滑であることを特徴とするビーズ。
【請求項2】
上記少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物がSiO2やAl23、TiO2、MgO、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のビーズ。
【請求項3】
SiO2を少なくとも96重量%の量で含む請求項1または2に記載のビーズ。
【請求項4】
上記少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物が実質的に非晶質である請求項1〜3のいずれか一項に記載のビーズ。
【請求項5】
BET表面積が500〜600m2/gの範囲にある請求項1〜4のいずれか一項に記載のビーズ。
【請求項6】
気孔体積が1.5〜2.5cm3/gの範囲にある請求項1〜5のいずれか一項に記載のビーズ。
【請求項7】
(A)少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物とを含む混合物を、混合物Aとして提供する工程と、
(B)少なくとも一種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒と水と少なくとも一種の酸とを含む混合物を、混合物Bとして提供する工程と、
(C)該混合物AとBとを混合して、上記少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を上記少なくとも一種の酸と反応させて、球状ビーズを含む水相と有機相とを含む混合物Cを得る工程と、
(D)工程Cで得られる混合物Cから有機相を分離して球状ビーズを含む水相を得る工程と、
(E)必要に応じて、工程(D)で得られる球状ビーズを少なくとも一種の酸で処理する工程と、
(F)工程(D)または(E)で得られる球状ビーズを乾燥する工程とからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載のビーズの製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも一種の金属及び/又は半金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物が、ケイ酸カリウム及び/又はケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩とアルカリ土類金属ケイ酸塩、コロイダルシリカゾル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の球状ビーズと少なくとも一種の触媒的に活性な金属とを含むことを特徴とする粒子状触媒。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の球状ビーズの触媒または触媒担体としての利用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−520236(P2012−520236A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500183(P2012−500183)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052965
【国際公開番号】WO2010/105941
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】