シリケート系緑色蛍光体
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+X:Eu2+を有し、ここで、A1がMg、Ca、BaもしくはZnを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)または1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせであり;A2がB、Al、Ga、C、Ge、NおよびPの少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンであり;A3がF、Cl、BrおよびSを含む1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(両方を含める)の任意の値である、シリケート系化合物を有する新規な緑色蛍光体を開示する。式の記述から、A1カチオンがSrに取って代わり、A2カチオンがSiに取って代わり、A3アニオンがOに取って代わることが表される。これらの緑色蛍光体は、約480nmを超えるピーク放出波長を有する可視光を放出するように構成される。これらは、緑色照明システム,赤色−緑色−青色バックライティングシステム、白色LEDおよびプラズマディスプレイパネル(PDP)での用途を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2004年8月4日に出願され、「Novel phosphor systems for a white light emitting diode(LED)」という名称を付された米国特許出願連続番号第10/912,741号の一部継続出願である、2005年4月5日に出願され、「Novel silicate-based yellow-green phosphors」という名称を付された米国特許出願連続番号第11/100,103号の一部継続出願である。本出願は、2005年10月25日に出願された米国特許出願連続番号第11/258,679号の一部継続出願でもある。関連する出願は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、電磁スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートおよびこのようなシリケート系蛍光体を含む照明システムに関する。本緑色蛍光体は、他の用途のなかでも、緑色照明システム、プラズマディスプレイパネル(PDP)、白色照明システム(白色LED)および赤色−緑色−青色(RGB)照明システムで使用することができる。
【0003】
背景
白色LEDは、当技術分野において公知であり、比較的最近の革新である。LEDに基づく白色光照明源を製造することが可能になったのは、電磁スペクトルの青色/紫外領域で放出するLEDが開発された以降である。経済的には、白色LEDは、特に生産コストが下がり、技術がさらに開発されるにつれ、白熱光源(光電球)に取って代わる潜在性を有する。とりわけ、白色光LEDの潜在性は、寿命、堅牢性および効率において白熱電球のそれよりも優れていると考えられる。例として、LEDに基づく白色光照明源は、運転寿命では100,000時間、効率では80〜90パーセントという産業標準に適合するものと予想される。高い明度のLEDは、すでに交通用光信号といった社会部門に実質的な影響を及ぼし、白熱電球に取って代わっており、近い将来、家庭および企業での一般化されたライティング要件だけでなく、他の日常的な用途を提供したとしても驚くべきことではない。
【0004】
光放出蛍光体に基づく白色光照明システムを作るためのいくつかの一般的な手法がある。これまでのところ、大半の白色LED市販製品は、図1に示す手法に基づいており、放射源からの光が(蛍光体に励起エネルギーを提供することに加えて)白色光照明の色出力に直接的に寄与する。図1のシステム10を参照すると、放射源11(LEDであることができる)が電磁スペクトルの可視部分において光12、15を放出する。光12および15は同じ光であるが、例証的な目的のため、二つの個別のビームとして示す。放射源11から放出される光の一部分である光12が、放射源11からのエネルギーを吸収したのちに光14を放出する能力を持つフォトルミネッセント材料である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域で実質的に単色性の色であるか、または緑色と赤色、緑色と黄色もしくは黄色と赤色等の組み合わせであることができる。放射源11は、可視において、蛍光体13に吸収されない青色光も放出する。これは、図1に示す可視青色光15である。可視青色光15が黄色光14と混合し、図に示す所望の白色照明16を提供する。
【0005】
あるいは、白色光照明システムを作るためのより新しい手法では、スペクトルの紫外(UV)部分において光を放出する不可視放射源を使用する。この概念を例示する図2では、不可視において放出する放射源を含み、放射源から出る光が照明システムによって生成される光に実質的に寄与しない照明システムを例示する。図2を参照すると、実質的に不可視である光が放射源21から光22、23として放出される。光22は、光23と同じ性質を有するが、二つの異なる符番を使用して以下の点を例示する。光22を使用することにより、蛍光体、たとえば蛍光体24または25を励起することができるが、放射源21から放出される光23は、蛍光体に衝突せず、人間の視覚にとって実質的に非可視であるため、蛍光体からの白色光出力28に寄与しない。
【0006】
赤色−緑色−青色(RBG)バックライティングシステムは、図1Aに概略的に例示するように、当技術分野において公知である。これらの従来のシステムでは、バックライティングシステムに必要な三つの色である赤色、緑色および青色のそれぞれに個別のLEDチップを使用する。図1Aの従来のRBGシステムでは、赤色LED10を用いて赤色光10Lを提供し、緑色LED11を用いて緑色光11Lを提供し、青色LED12を用いて青色光12Lを提供する。このようなシステムの不都合として、それぞれのLEDに電気的電流制御器が要求され、図1Aのシステムでは三つの電流制御器が必要となる。
【0007】
当技術分野において必要とされるのは、青色LEDおよび/またはUV LEDチップの組み合わせと;本緑色蛍光体とUVチップおよび青色放出チップとの組み合わせと;プラズマディスプレイパネルにおける改良された緑色蛍光体と、RGBバックライティングシステムにおける新規な緑色蛍光体とを含むことができ、LEDチップへの電流を制御する電流制御器の数が低減される、本緑色蛍光体に基づく白色光照明システム、単色緑色照明システムおよび照明システムで使用するための改良された緑色蛍光体である。
【0008】
発明の概要
端的には、本発明の好ましい実施態様は、白色光照明システム(白色LEDなど)、単色光放出システム(緑色および/またはシアン色など)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムで使用するための、スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートを含む。
【0009】
とりわけ、実施態様は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで:
A1がMg、Ca、Ba、Znを含む少なくとも一つの二価2+カチオンまたはNa、K、Liを含む1+カチオンとY、Ce、Laを含む3+カチオンとの組み合わせであり;
A2がB、Al、Ga、C、GeおよびPの少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンであり;
A3がF、Cl、Br、C、NおよびSを含む1−、2−または3−アニオンであり;
xが1.5〜2.5の間(両方を含める)の任意の値である、
シリケート系緑色蛍光体を含む。
【0010】
式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。A1が実質的に等しい数の1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせである場合、この全体的な電荷を平均化すると、同じ数の2+カチオンによって達成される電荷に実質的に等しい。本実施態様のシリケート系緑色蛍光体では、xは、約1.5を超えるもしくはそれに等しく、かつ約2.0未満である任意の値を有するか、または約2.0を超え、かつ約2.5未満である任意の値であることができる。いくつかの実施態様では、xは2ではない。
【0011】
代替実施態様では、本発明の照明システムは、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と;式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが2.5〜3.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系橙色蛍光体と;緑色蛍光体および橙色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、を含む。
【0012】
本シリケート系緑色蛍光体の用途としては、白色光照明システム(いわゆる「白色LED)、実質的に単一に色付けられた光放出システム、たとえば緑色またはシアン色照明システム、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムおよびプラズマディスプレイパネル(PDP)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
発明の詳細な記載
本発明のさまざまな実施態様を本明細書に記載する。これらの実施態様としては、緑色照明システム、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステム、白色光照明システムおよびプラズマディスプレイパネル(PDP)における本シリケート系緑色蛍光体の使用が含まれる。本開示は、蛍光体の一般的な記載を含み、例示的な放出および励起スペクトルを供し、具体的なアルカリ土類元素を含める効果を論じる。A3がフッ素である場合の効果に具体的な重点を置き、A3アニオンを含める効果を論じる。そののち、主に緑色照明システムの場合について、シリケート系緑色蛍光体の濃度を変える効果を論じるが、これがRBGバックライティングシステム、白色光照明システムおよびプラズマディスプレイパネルにも適用されることが理解される。CIE図における緑色蛍光体の位置に対する濃度の効果も論じる。最後に、蛍光体放出強度に対する温度の効果を供する。
【0014】
本緑色蛍光体の例示的な有用性
従来のRBGバックライティングシステムについては、すでに図2Aを参照しつつ論じた。ここでもまた、このシステムが半導体集積回路(または「チップ」)である三つの光放出ダイオード(LED)を用いることに留意する。図2Aでは、赤色、緑色および青色光源のそれぞれに一つのLEDがある。このような先行技術によるシステムの一つの不都合として、電気的電流制御器がそれぞれのLEDに必要であるが、電流制御器が少ないほどよいことは当技術分野において公知である。図2Aの先行技術によるシステムは、三つの回路制御器を要する。
【0015】
対照的に、図2Bの新規なRBGシステムでは、(まさしく従来の場合のように)赤色LED20を用いて赤色光20Lを生成し、青色LED22を用いて青色光22Lを提供する。しかし、図2Aの緑色LED21は、青色LED22によって励起される緑色蛍光体23Pに取って代わっている。換言すると、青色LED22によって放出される放射のうち、一部分がRGBシステムの全体的な出力(青色光22L)に寄与し、残りが緑色蛍光体23Pを励起して緑色光23Lを作る。図2BのRGBシステムは、赤色LED20のための一つおよび青色LED22のための一つとして、二つのみの電気的電流制御器を要する。
【0016】
一つの電流制御器のみを要する代替RGBシステムを図2Cに示す。青色LED22は、図2Bのシステムのように、なおも青色光22Lを提供し、緑色蛍光体23Pを励起するために使用されるが、この場合は赤色蛍光体24Pも励起する。赤色蛍光体24Pは、赤色光24Lを生成する。図2Cのシステムは、LEDが一つのみ(青色LED22)であるため、一つのみの電気的電流制御器を必要とする。
【0017】
一つの電流制御器のみを要するRBGシステムのもう一つの構成を図2Dに示す。このシステムでは、紫外(UV)で放出する放射源を使用し、したがってUV LED25から出る放射は、実質的に不可視である。RBGシステムの青色部分を提供するため、青色蛍光体を使用する。図2Dを参照すると、UV LED25は、赤色蛍光体26Pに励起放射を提供し、赤色光26Lを生成する。また、緑色蛍光体28Pにも励起放射を提供し、緑色光を生成する。
【0018】
例示的な緑色照明システムを図3Aおよび3Bに示す。緑色照明システムの一部として、本シリケート系緑色蛍光体は、可視青色光を放出する青色LEDチップまたは実質的に不可視である励起放射を放出するUV LEDチップのいずれかによって励起することができる。
【0019】
図3Aの緑色照明システムでは、青色チップ30を利用し、励起放射32(可視青色光など)でシリケート系緑色蛍光体31を励起する。緑色蛍光体は、緑色光33を発する。図3Aの緑色照明システムからの光は、青色光32および緑色光33の両方を含む。緑色蛍光体31による青色光32から緑色光33への転換は、一部には、緑色蛍光体31によって吸収される励起光32の量に依存する。
【0020】
あるいは、緑色照明は、図3Bに例示するように、UV LED34を含むことができる。ここでは、実質的に不可視である放射35を使用し、緑色蛍光体31を励起する。ここでもまた、転換の効率は、緑色蛍光体31によるUV光35の吸収の割合によって決定される。しかしながら、この場合、図3Bの緑色照明システムから放出される緑色光36は、励起照明35が実質的に不可視であるにつれ、もっぱら緑色蛍光体31から放出される光からなる。
【0021】
本シリケート系緑色蛍光体は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に使用することができ、その一つの画素40を図4に概略的に例示する。図4を参照すると、通常のプラズマディスプレイパネルの画素は、支持背面ガラス42上に配置される構造用リブ41を含み、リブ41および背面ガラス42で形成されるくぼみ内に堆積させた新規なシリケート系緑色蛍光体43を有する。構造の上部には、前面ガラス45内に埋め込まれた透明電極44がある。任意の瞬時緑色蛍光体43の励起源として、透明電極44でプラズマ46を発生させる。励起時、緑色蛍光体43は可視光48を放出する。
【0022】
本実施態様の新規なシリケート系緑色蛍光体
本発明の実施態様は、概して、実質的に単一に色付けられた照明システム、RBGバックライティングシステム、プラズマディスプレイパネル(PDP)および白色光照明システム(白色光放出ダイオードなど)での使用のため、スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートの蛍光に関する。
【0023】
とりわけ、本発明の緑色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)または1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせであり、1+カチオンがK、NaおよびLiを含むことができ、3+カチオンがCs、Y、Ce、BiおよびLiを含むことができる、シリケート系化合物を含む。A1カチオン成分は、いくらかの2+カチオンと、実質的に等しい数の1+カチオンおよび3+カチオンとの組み合わせを含むことができる。
【0024】
A2は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)およびリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンである。
【0025】
A3は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、窒素(N)および硫黄(S)を含む1−、2−または3−アニオンである。
【0026】
xの値は、2.5〜3.5の間(両方を含める)の任意の整数または非整数である。本発明の一つの実施態様では、xは2ではない。式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。本発明の一つの実施態様では、A3が硫黄(S)であることができ、化合物に酸素がほとんどない、またはまったくないことができ、蛍光体は、実質的に酸化物ではなく硫化物である。
【0027】
G.BlasseらによってPhilips Research Reports第23巻第1号1〜120ページで教示されているように、β−Ca2SiO4:Eu、Sr2SiO4:EuまたはBa2SiO4:Eu組成の結晶構造は、Eu2+濃度を2原子パーセントとすると、K2SO4様である。したがって、本シリケート系緑色蛍光体は、類似のホスト格子を有すると考察される。
【0028】
アルカリ土類成分の効果
独創的な緑色蛍光体の光学的特性は、他の方式のなかでも、ストロンチウムに対するA1カチオンの比率を調節することによって制御することができ、A1がアルカリ土類元素、たとえばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは遷移金属元素、たとえば亜鉛(Zn)またはこれらの任意の組み合わせであることができる。独創的な概念のこの実施態様を定位置に配する例示的なデータセットを図5に例示する。
【0029】
図5は、式(Sr1−yBay)2SiO4:Eu2+Fを有する例示的な組成系統の放出スペクトルの集合であり、一般的な式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+においてA1がBaであり、A3がF(この一連の試験においてA2カチオンがなかったことに留意する)である。具体的には、三つの緑色蛍光体として、式(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+Fを有し、約522nmで放出するものと、式(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+Fを有し、約525nmで放出するものと、式(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fを有し、約532nmで放出するものとの放出スペクトルを、式(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+Fを有し、スペクトルの黄色領域でより放出する黄色シリケート系蛍光体の放出スペクトルと比較した。黄色蛍光体は、約540nnmで放出する。約450nmで放出する青色LEDで蛍光体を励起し、そのピークも図5の放出スペクトルに示す。
【0030】
図5を参照すると、当業者は、三つの緑色蛍光体が黄色蛍光体よりも約20パーセント強い強度で放出することに留意する。本発明者らは、先の研究において、(Sr1−xBax)2SiO4蛍光体システムでピーク放出が起こる波長位置が、x=1では(換言すると、アルカリ金属含有量が100パーセントBaであるとき)500nmでの緑色から、x=0のときには(100パーセントSr)580nmでの黄色に変化することを発見した。450nmでの同じ光源からの転換効率は、Baが0から約90%まで増加するとき、連続的な増加を示す。Srに対するBaの比率が0.3〜0.7である場合に得られる545nmのピーク放出波長は、YAG:Ceピーク放出波長に近い。
【0031】
同じ四つの蛍光体(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+Fの励起スペクトルの系統を図6に示す。当業者は、「励起スペクトル」が実際には放出スペクトルであり、放出される光の強度が励起放射の波長の関数として測定されることを理解する。換言すると、具体的な波長を抽出して蛍光体から放出される光を測定し、蛍光体に進入する放射の波長をスキャンする。この一連の実験で選定した波長は、蛍光体を450nmで励起したときにもっとも強い放出が起きた波長である。
【0032】
図6の具体的な例では、実験に使用した検出器は、(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F蛍光体によって放出される522nm光の強度を測定するように設定したが、これは、(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F蛍光体を450nmで励起したときにもっとも強い放出が起こる波長であったためである(図5を参照されたい)。検出器を522nmに設定すると、励起放射の波長が約300〜約560nmでスキャンされ、522nmでの放出が記録された。同様に、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+F蛍光体について、それぞれ525nm、532nmおよび540nm光の強度ならびに各サンプルについて約300〜約560nmでスキャンした励起放射の波長を測定するように検出器を設定した。
【0033】
図6のデータは、励起放射が約420nm未満の波長を有するとき、(522nm、525nmおよび532nmで放出する)三つの緑色蛍光体が励起放射に対してより応答性があることを示す。約420〜460nmの間では、522および525nm緑色蛍光体の曲線は、532緑色蛍光体および540黄色蛍光体の両方よりも低下する。四つの蛍光体のいずれも、約500〜520nmを越える波長を有する励起放射には応答しない。
【0034】
Ba以外の元素を使用し、蛍光体のSrを置換することができる。これらの代替元素としては、CaおよびMgが含まれる。Sr−Ba系シリケート蛍光体システムにおけるバリウムまたはストロンチウムのカルシウム置換では、概して、蛍光体の放出強度が低減され、カルシウム置換が40パーセント未満であるときには放出がより長い波長に移動する。Sr−Ba系シリケート蛍光体におけるバリウムまたはストロンチウムのいずれかに対する大量のマグネシウム置換では、概して、放出強度が低減され、放出がより短い波長に移動する。しかしながら、バリウムまたはストロンチウムに対する少量のマグネシウム置換(例として10パーセント未満)では、放出強度が高まり、放出がより長い波長に移動する。
【0035】
本シリケート系緑色蛍光体に少量のMgを添加することの効果を図7に示す。図7では、450nm励起下での蛍光体(Sr0.057Ba0.4Mg0.025)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.057Ba0.4Mg0.025)2SiO4:Eu2+Fの放出を測定し、実質的にMgを含有しない蛍光体の放出と比較した。Mgを有さない「対照」蛍光体は、式(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+Fで表示される。この一連の組成を選定した目的は、第一にSrをMgで置換してBa濃度を一定に保持し、その後、BaをMgで置換してSr濃度を一定に保持する効果を示すことであった。
【0036】
図7を参照すると、Mg添加により、放出の強度が増加することが見てとれる。三つの蛍光体のすべてについて、約540nmでの放出強度のピークに注目すると、三つのうちでもっとも低い放出強度を実証する蛍光体は、対照蛍光体(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+Fであった。BaをMgで置換した蛍光体は、対照蛍光体に対して相対的に約6〜7パーセントの放出強度の増加を実証し、SrをMgで置換した蛍光体は、対照蛍光体に対して相対的に約10パーセントの放出強度の増加を実証した。Mg包含により、ピーク放出が起こる波長がより長い波長(すなわち、わずかに黄色に向かい、緑色から離れる)に移行することも観察することができ、この効果は、SrをMgで置換する場合よりもBaをMgで置換する場合により顕著である。
【0037】
450nmでの励起放射のピーク高さにおける相違は、それらのピーク高さの相違が化学的効果よりも三つの蛍光体の粒度分布に関係しているので、この議論の目的にとって重要ではない。
【0038】
シリケート系緑色蛍光体にA2カチオンおよびA3アニオンを含める効果
本発明者らは、実験を実施し、特にA2カチオンがリンである場合およびA3アニオンが一価ハロゲンである場合について、このシリケート系緑色蛍光体にA2カチオンおよびA3アニオン包含を含める効果を描出した。いくつかの方法により、例示的な蛍光体の特性を光学的に特徴付けた。第一に、おそらくもっとも意義深いこととして、蛍光体から放出される光の強度を波長の関数として評価するため、A2またはA3イオンのいずれかの濃度を変えた一連の蛍光体組成について試験を実施した。このデータから、A2および/またはA3イオン濃度の関数としてピーク放出強度のグラフを構築することは有効である。ここでもまた、A2および/またはA3イオン濃度の関数としてピーク放出波長のグラフを構築することも有効である。
【0039】
例証的なデータを図8〜12に示す。独創的な概念を例示するために選定した蛍光体は、式[(Sr1−xBax)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yにおいてA3がF、ClおよびPからなる群より選択される場合の黄色−緑色蛍光体であった。このような組成について、リンの包含の結果を塩素およびフッ素で得られた結果と比較した結果を示す。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、化合物中のケイ素がリンで置換される一方、酸素がフッ素または塩素ドーパントで置換されると考えられる。
【0040】
図8を参照すると、組成[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yについて、フッ素のモルパーセント(mol%)がそれぞれ0、3.2、13.5、9.0、16.8および19.0である一連の六つの組成の放出スペクトルをとった。この実験における励起放射の波長は450nmであり、この青色LEDからの光は、後に生成される白色光照明に寄与するものと考慮することができる。図8の結果は、約10mol%までの濃度のフッ素で組成をドーピングすることにより、この蛍光体からの放出強度が有意に増加し、フッ素濃度をさらに増加させるにつれ、強度が下がりはじめることを示す。
【0041】
図8からのデータをわずかに異なる方法でプロットすることができる。図9でFについて三角形の記号を使用して示すように、各ピークの最大時における放出強度の値をフッ素含有量の関数としてプロットすることができる。例として、図8で最高強度を呈する曲線は、9mol%のフッ素含有量を有する組成で起こることから、図9でのFイオン曲線の最高点も9mol%のx軸上の場所で起こる。図9を興味深くしていること(およびこの様式でデータをプロットする理由)として、このようなプロットにより、異なるイオンを比較することができる。図9を参照すると、正規化ピーク放出強度をハロゲンフッ素(三角形)および塩素(円形)対リン(四角形)のドーピング濃度の関数としてプロットしており、ここでもまた、ホスト蛍光体は、SrおよびBaアルカリ土類成分のモル比率がそれぞれ0.7および0.3であるシリケートを含んでいた。
【0042】
図9のデータは、研究中であるこの具体的な蛍光体システムにおいて、フッ素アニオンがPおよびClに対して相対的に放出強度を増加させる能力を持つことを示す。興味深いこととして、Cl放出強度が9〜17mol%の範囲で比較的一定であり、9〜17mol%の範囲でもわずかな増加を示すことができた一方、FおよびP組成の両方が約9mol%でピークとなることに留意する。また、ClおよびP組成によってもたらされる増加が有意であり、最適化濃度での正規化強度において約40〜50%である一方、F組成が呈示した100%という膨大な増加のみを理由として、利点を有意と見なすことができないことにも留意すべきである。さらにまた、Cl組成の比較的平坦な曲線によって利点がもたらされることもでき、この事例では、組成の範囲(9〜17mol%にわたるCl含有量など)での放出の比較的一定な性質のため、製造の困難および/または含有量許容誤差の不一致を無視することができる。
【0043】
まさしく正規化ピーク放出強度を一連のA2およびA3イオン(この場合はA2イオンとしてのPおよびA3イオンとしてのF、Cl)のドーピング濃度の関数としてプロットすることができるように、ピーク放出が起こる波長を波長の関数としてプロットすることもできる。このデータを図10に示すが、ここでもまた、組成[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yの系統を対象とし、yの範囲は0〜19mol%である。前のように、励起放射の波長は約450nmであった。図10の結果は、ピーク放出波長がPの濃度に応じて有意に変わることはないが、FおよびClのドーパント濃度を約2〜4mol%の値に増加させると減少し、その後は徐々に増加することを示す。図11は、約450nmの励起波長で試験され、独創的なシリケート系蛍光体のフッ素含有量によって影響を受ける例示的な蛍光体からの励起スペクトルの例である。励起曲線を前に記載したように生成し、540nmで放出される光を励起波長の関数として測定した。このデータは、フッ素により、これらのシリケート系蛍光体の励起スペクトルが劇的に変化したことをあらためて明確に示す。これは、フッ素濃度の約10パーセントの増加(モルパーセント)のみで、430〜490nmの励起波長範囲(青色LEDの範囲内)における放出強度の100パーセントの増加が達成されたことから、「単色」(たとえば緑色)および白色照明システムの両方に多大な影響を有する。
【0044】
本シリケート系緑色蛍光体にA3イオンを含める多様な方法がある。一つの実施態様では、フッ素をNH4Fドーパントの形態で蛍光体組成に添加する。本発明者らは、NH4Fドーパント量が非常に小さい(約1%)場合、ピーク放出の位置がより短い波長に位置付けられ、NH4Fをより添加するにつれ、ドーパント量に応じて波長が増加することを見出した。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、Euでドーピングされた蛍光体のルミネッセンスは、化合物中にEu2+が存在し、4f65dlから4f7への電子遷移が生じることによるものと考えられる。放出バンドの波長位置は、ホストの材料または結晶構造に非常に大幅に依存し、スペクトルの近UV領域から赤色領域に変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと判断される。結晶場の強さが増加するとともに、放出バンドは、より長い波長に移行する。5d−4f遷移のルミネッセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言すると、Eu2+カチオンと周囲のアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオンおよびアニオンまでの平均距離にもっとも影響される。
【0045】
少量のNH4Fの存在下では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤として機能する。一般的に、融剤は、二つの方法のうちの一つで焼結処理を改良する。第一の方法では、液体焼結機構で結晶成長を促進し、第二の方法では、結晶粒から不純物を吸収および回収し、焼結材料の相純度を改良する。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体が(Sr1−xBax)2SiO4である。SrおよびBaの両方が非常に大きいカチオンである。不純物として考慮することができるより小さいカチオン、たとえばMgおよびCaが存在することができる。そのため、ホスト格子がさらに純化されることにより、対称性の結晶格子がより完全となり、カチオンとアニオンとの間の距離がより大きくなり、結果的に結晶場の強さが弱まる。こうした理由から、少量のNH4Fドーピングによって放出ピークがより短い波長に移動する。この少量のFドーピングによる放出強度の増加は、欠陥が少ない、より高い品質の結晶に起因するものである。
【0046】
NH4Fの量がなおもさらに増加すると、F−アニオンのいくらかがO2−アニオンに取って代わり、格子に組み入れられるようになる。電気的電荷の中性を維持するため、カチオン空位が生じる。カチオン位置の空位により、カチオンとアニオンとの間の平均距離が低減し、結晶場の強さが増加する。そのため、NH4F含有量がカチオン空位数の増加によって増加するにつれ、放出曲線のピークがより長い波長に移動する。放出波長は、結晶場の強さのみで決定される、基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップに直接的に関連する。フッ素および塩素による放出波長増加の結果は、もっとも可能性が高いのは酸素サイトの置換として、フッ素または塩素がホスト格子に組み入れられることの強い証拠である。他方、予想されるように、リン酸イオンの添加で放出波長が実質的に変化することはない。これは、ここでもまた、リン酸がカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって格子に容易に組み入れられてホスト材料の結晶場の強さを変化させることはないという証拠である。これは、特に、本質的に酸素サイトからなるEu2+イオンの周囲の結晶場に当てはまる。NH4H2PO4を添加することによって取得される放出強度の改良は、先に論じたように融剤薬剤として働くことを表す。
【0047】
フッ素含有シリケートと非フッ素含有シリケートとを比較する励起スペクトルは、図11に示すように、シリケート蛍光体を含有する本ハロゲン化物の本実施態様においてフッ素が担う重大な役割をさらに裏付けるものであった。図11に示す励起スペクトルは、励起波長に対し、540nmの波長における放出強度をプロットすることによって得られる。励起強度は、吸収に直接的に関連し、励起および励起レベルと基底レベルとの間の透過の確率で決定される。シリケート蛍光体へのフッ素の導入により、400nmより上で励起強度が劇的に増加することは、ここでもまた、フッ素がシリケート格子に組み入れられ、Eu+2の対称周囲を非対称構造に劇的に変化させ、放出および放出状態と基底状態との間の透過の確率を直接的に増加させることを強く表す。図11から、当業者は、シリケート蛍光体中の約10mol%のフッ素により、RGBバックライティングおよび白色LED用途にとってもっとも重要である450nm〜480nmの励起波長において非フッ素含有シリケート蛍光体の放出強度を約100%増加させることができることを見てとれる。
【0048】
これまでに図8に示したように、ハロゲン化物濃度が約10mol%よりも増加すると、放出強度は減少するか、または横ばいになる。これは、格子へのフッ素の組み入れに伴って導入される欠陥が多いほど、非放射中心がより多く生じ、Eu2+有効放出中心に移される吸収されたエネルギーが低減するという事実によるEu放出消光で説明することができる。図8の結果は、Eu放出消光が起こらない、フッ素による最大強度増加が約10mol%であることを表している。
【0049】
例示的な緑色照明システムと先行技術による緑色LEDとの比較
本実施態様による例示的な緑色照明システムは、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有するシリケート系緑色蛍光体と組み合わせる励起放射源を含み、A1、A2、A3およびxは先のとおりに定義される。緑色照明システムにおける例示的な緑色蛍光体の性能は、従来の緑色LED集積回路「チップ」のそれと比較することができる。このようなデータを図13に示す。
【0050】
式(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+Fを有し、約520nmで放出するものと、式(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+Fを有し、約525nmで放出するものとの二つの例示的な緑色蛍光体の放出スペクトルを、約400nmで放出する実質的に不可視であるUV LEDによってそれぞれ励起して測定した。これらの蛍光体は、それぞれ「Gl」および「G2」蛍光体と呼ぶことができる。この実験の文脈では、「明度」は、単にピーク高さではなく、図13の曲線下の積分面積として定義される。
【0051】
Gl蛍光体に基づく緑色照明システムは、約1527mcd(63lm/W)の明度を呈し、CIE座標が(0.206、0.603)であった。G2蛍光体に基づき、約400nmで励起放射を提供するUVチップ上にパッケージされた緑色照明システムは、約1855mcd(76lm/W)の明度を呈し、CIE座標が(0.280、0.620)であった。このデータを、約1119mcd(51lm/W)の明度を呈示した先行技術による緑色LEDと比較する。従来の緑色LEDのCIE座標は、(0.170、0.710)であった。したがって、図13は、従来の緑色LEDチップに対して相対的に、本蛍光体含有システムで実現することができる高められた明度を実証する。
【0052】
照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度を変える効果
照明システムにおいて本緑色蛍光体の濃度を変える効果を図14に示す。図14は、緑色光放出システムにおける二つの異なる濃度の例示的な蛍光体の放出スペクトルであり、緑色蛍光体は、不可視UV LED放射源を使用して励起される。この例示的な緑色蛍光体は、式(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fを有し、表記「G3」を与えられることができる。G3蛍光体は、450nm放射で励起されると、約532nmの波長でその最高強度光を放出する。図14Aと標識付けされた放出スペクトルでは、G3蛍光体の濃度は20%であり、12Bと標識付けされた放出スペクトルでは、この同じG3蛍光体の濃度は25%である。
【0053】
図14Aおよび14Bの比較は、緑色放出システムの全体的な放出(色の観点から)が緑色蛍光体の濃度を変えることによって制御できることを示す。図14Aでは、緑色蛍光体G3の20%濃度は、励起源からの450nm不可視青色光のすべてを吸収するうえで十分ではなく、この青色光のいくらかが検出器に向かう(主なピークの小さい肩部によって見てとれる)。しかしながら、濃度が25%に増加すると、図14Bに示すように、緑色照明システムに十分な緑色蛍光体が存在し、450nm青色チップLEDからの青色光の大半が吸収され、532nmでの主な緑色ピークの左側の小さい肩部がほぼ消失した。
【0054】
緑色照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度の増加がシステムの全体的な色出力に対して効果を有することは、図14Aおよび14Bで例証される二つのシステムのそれぞれのCIE座標を調べることによって見てとれる。図14AのCIE座標は、20%の緑色蛍光体G3で(0.328、0.580)であった。図14BのCIE座標は、25%の緑色蛍光体で(9.291、0.473)であった。これらの二つの照明のそれぞれの明度は類似していたが、まったく同じではなく、図14Aおよび14Bでそれぞれ1378mcdおよび1494mcdであった。これは、前のように、従来の緑色LEDの(0.170、0.710)のCIE座標での明度1119mcdと比較される。
【0055】
緑色照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度が光学的特性に効果をもたらすことを例示する第二の用途は、CIE図である図13に見てとれる。白色光照明は、電磁スペクトルの可視部分からのさまざまな、またはいくつかの単色性の色を混合することによって構築され、スペクトルの可視部分はおよそ400〜700nmを含む。人間の視覚は、約475〜650nmの間の領域に対してもっとも敏感である。LEDのシステムまたは短い波長のLEDによってポンピングされる蛍光体のシステムのいずれかから白色光を生じさせるには、少なくとも二つの相補的な源からの光を妥当な強度比率で混合する必要がある。色混合の結果は、広くCIE「色度図」に呈示され、単色性の色が図の周辺部に、白色が中心に位置付けられる。したがって、目標は、結果として得られる光を図の中心の座標にマッピングすることができるように色を調合することである。
【0056】
もう一つの技術用語は、白色光照明のスペクトル特性を記載するために使用される「色温度」である。この用語は、「白色光」LEDについて何も物理的な意味を有さないが、当技術分野では、白色光の色座標を黒体源によって達成される色座標に関連付けるために使用される。高色温度LED対低色温度LEDがwww.korry.comに示されている。
【0057】
色度(CIE色度図上の色座標)がSrivastavaらによって米国特許第6,621,211号に記載されている。先に記載した先行技術による青色LED−YAG:Ce蛍光体白色光照明システムの色度は、いわゆる「黒体軌跡」またはBBLに隣接して6000〜8000Kの温度の間に位置する。BBLに隣接する色度座標を呈示する白色光照明システムは、プランクの放射式(同特許の第1段60〜65行に記載)に従い、このようなシステムは人間の観察者にとって心地良い白色光をもたらすために望ましい。
【0058】
演色評価数(CRI)は、照明システムを黒体放射体と比較する相対的な測定である。白色光照明システムによって照射される試験色のセットの色座標が、黒体放射体による放射を受ける同じ試験色のセットによって発生する座標と同じである場合、CRIは100に等しい。
【0059】
本開示で使用する図15のデータを得るために使用した緑色照明システムは、約450nmで励起放射を提供する青色LEDを被覆する本実施態様による例示的なシリケート系緑色蛍光体を使用し、結果をCIE図に概略的に示す。これらのシステムにおける緑色蛍光体の量は、青色LED上の蛍光体含有層の厚さを増加させることによって変え、これは、図15のCIE図上に位置付けられる緑色光照明システムの四つの図表示によって概略的に示すとおりであり、青色LED上の蛍光体量の四つの表示は、符番15A、15B、15Cおよび15Dで指定する。
【0060】
15Aの図で描かれる照明システムは、青色LED励起源単独でなり、この素子から放出される放射をCIE図上の約(0.20、0.15)のx−y座標にプロットすることができる。緑色蛍光体のいくらかによって青色LEDが被覆されるにつれ、したがって、いくらかの緑色光が450nm LEDからのいくらかの青色光と混合されるにつれ、全体的な色出力が図上の上方に移行し、座標(0.20、0.25)によっておよそ指示される位置に達する。この状況は、符番15Bに位置付けられる素子によって概略的に描かれ、青色−緑色の色を「シアン色」として記載することができる。
【0061】
青色LEDを被覆する緑色蛍光体の量がなおもさらに増加すると、符番15Cに示すように、色出力が(0.25、0.45)のCIE色座標まで増加する。蛍光体の量が増加し、四つの被覆のうちでもっとも厚くなると、15Dに概略的に示すように、色は約(0.30、0.50)となる。当業者は、蛍光体の量を変える様式が重要ではないことに留意する。例として、実質的に一定な濃度を有する蛍光体層の厚さを変化させることにより、または実質的に一定な厚さの層内で蛍光体の濃度を変化させることにより、蛍光体の量を変化(増加または減少のいずれか)させることができる。
【0062】
温度効果
新規なシリケート系緑色蛍光体について、温度に対する放出強度の依存性を図16に示す。図16は、それぞれ450nmで励起され、約20℃〜約180℃にわたる温度で測定された、「G2」および「G3」と標識付けされた二つの例示的な緑色蛍光体の最大強度のグラフである。グラフ中には、「A」と標識付けされたシリケート系黄色−緑色蛍光体からのデータも含まれる。
【0063】
図16から、この温度範囲、少なくとも120℃までは本緑色蛍光体の性能が本質的に一定であり、この範囲では蛍光体の放出強度が約10パーセントのみ減少することが見てとれる。約180℃に加熱すると、三つのこれらの新規なシリケート系蛍光体の強度は、すべて約70パーセントを上回ったままである。
【0064】
UVおよび青色LED放射源
特定の実施態様では、青色光放出LEDは、約400nm以上、かつ約520nm以下の波長範囲で主な放出ピークを有する光を放出する。この光は、1)蛍光体システムに励起放射を提供し、2)蛍光体システムから放出される光と組み合わされ、白色光照明の白色光をなす青色光を提供する、という二つの目的を果たす。
【0065】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上、かつ約500nm以下の光を放出する。別のもう一つの実施態様では、青色LEDは、約430以上、かつ約480nm以下の光を放出する。青色LED波長は、450nmであることができる。
【0066】
本明細書においては、本実施態様の青色光放出素子を総称的に「青色LED」として記載するが、当業者は、青色光放出素子が、青色光放出ダイオード、レーザダイオード、面放出レーザダイオード、共振空洞光放出ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス素子の少なくとも一つ(いくつかを同時に作動させることも考察される)であることができることを理解する。青色光放出素子が無機素子である場合、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体および酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0067】
代替実施態様では、新規な緑色蛍光体は、約400nm未満の波長で放出する放射源によって励起される。実質的に不可視である光を放出するこのような放射源は、UV LEDまたは青色LEDについて先に列挙した任意の他の種類の放射源であることができる。
【0068】
本発明の一つの実施態様では、緑色照明システムは、本明細書に記載する任意のシリケート系緑色蛍光体を、約430nm〜480nmにわたる放出ピーク波長を有するGaN系青色LEDと組み合わせることによって構築することができる。しかし、当業者は、本緑色蛍光体から放出される光を青色LEDと組み合わせることに加え、緑色光を他の可視青色放射源、たとえばアルミネート系青色蛍光体、アルミネート系緑色蛍光体ならびにシリケート系黄色および橙色蛍光体からの光と組み合わせることができることを理解する。これらのシステムを次に記載する。
【0069】
独創的な緑色蛍光体と他の蛍光体との組み合わせ
先の概念に沿って使用することができる青色蛍光体の例は、2005年7月1日に出願され、「Aluminate-based blue phosphors」という名称を付された、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとする米国特許出願(代理人整理番号第034172−013号、カリフォルニア州フレモント(Fremont)のIntematix Corporationに付与された出願)に記載されている。当然のことながら、市販のBAM蛍光体を含め、事実上、任意の青色蛍光体がこの用途に適切であることができるが、Intematix蛍光体が特に良好に働く。これらの蛍光体は、一般化された式(M1−xEux)2−zMgzAlyO[1+(3/2)y]によって記載することができ、ここで、MがBaまたはSrの少なくとも一つである。これらの青色蛍光体は、約420〜560nmにわたる波長で放出することができる。
【0070】
あるいは、本緑色蛍光体は、黄色蛍光体と組み合わせて使用することができ(青色LED励起源からの青色光の有無および青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体等の有無は問わない)、たとえば市販されている入手可能な黄色蛍光体(YAG:Ce蛍光体など)または2004年9月22日に出願され、「Novel silicate based yellow-green phosphors」という名称を付された、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとする特許出願(米国特許出願連続番号第10/948,764号)に記載されている概念に沿った黄色蛍光体と組み合わせて使用することができる。当然のことながら、事実上、任意の黄色蛍光体がこの用途に適切であることができる。これらの蛍光体は、一般化された式A2SiO4:Eu2+Dによって記載することができ、ここで、AがSr、Ca、Ba、Mg、ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、DがF、Cl、Br、I、P、SおよびNからなる群より選択されるドーパントである。あるいは、これらの蛍光体をA2Si(O,D)4:Eu2+として記述することができ、これは、Dドーパントがホスト結晶の酸素格子サイト上にあり、ケイ素格子サイト上には配置されないことを示す。これらは、約280〜490nmにわたる波長を有する光を放出するように構成される。
【0071】
あるいは、本シリケート系緑色蛍光体は、従来の市販されている入手可能な緑色蛍光体または「Novel aluminate-based green phosphors」という名称を付された米国特許出願に記載されている、本発明者らによって開発された新規なアルミネート系緑色蛍光体と組み合わせて使用することができる。この出願は、2005年1月14日に提出され、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとし、一般化された式M1−xEuxAlyO[1+(3/2)y]によって記載することができる化合物を開示している。この式では、Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Mn、Zn、Cu、Sm、TmおよびCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属である。これらのアルミネート系緑色蛍光体は、約500〜550nmにわたる波長を有する光を放出するように構成される。
【0072】
本緑色蛍光体と組み合わせて使用することができるシリケート系橙色蛍光体は、2005年10月25日に提出され、Shifan Chen、Tejei Tao、Yi DongおよびYi-qun Liを発明者らとする「Silicate-based orange phosphors」という名称を付された優先権主張出願(代理人整理番号第034172−054号)に記載されているように、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有する。式では、A1がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)、または1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)であり、A2がホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、caron(C)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)およびリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンであり、A3がフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)および硫黄(S)を含む1−、2−または3−アニオンであり、xが2.5〜3.5の間(両方を含める)の任意の値である。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。
【0073】
当然のことながら、本シリケート系緑色蛍光体は、公知の黄色、橙色または赤色蛍光体とともに使用することができる。例として、Bognerらに対する米国特許第6,649,946号では、450nmで放出する青色LEDによって励起することができる、ホスト格子としてのアルカリ土類窒化ケイ素材料に基づく黄色〜赤色蛍光体を開示している。赤色〜黄色放出蛍光体は、ニトリドシリケート(nitridosilicate)タイプMxSiyNz:Euのホスト格子を使用し、ここで、MがCa、SrおよびBaの群より選定されるアルカリ土類金属の少なくとも一つであり、z=2/3x+4/3yである。材料組成の一つの例は、Sr2Si5N8:Eu2+である。このような赤色〜黄色蛍光体の使用は、一つ以上の赤色および緑色蛍光体とともに、青色光放出一次源について開示されている。このような材料の目的は、赤色の演色性R9を改良する(演色を赤色移行に調節する)だけでなく、全体的な演色性Raが改良された光源を提供することであった。
【0074】
本シリケート系緑色蛍光体とともに使用することができる赤色蛍光体を含む補足的蛍光体の開示のもう一つの例は、Mueller-Machに対する米国特許出願第2003/0006702号に認めることができ、そこでは、470nmのピーク波長を有する青色LEDからの一次光を受け、可視光スペクトルの赤色スペクトル領域で光を放射する(補足的)蛍光材料を有する光放出素子が開示されている。補足的蛍光材料を主な蛍光材料と併せて使用することにより、複合出力光の赤色成分を増加させ、したがって、白色出力光の演色を改良する。第一の実施態様では、主な蛍光材料は、Ceで付活され、Gdでドーピングされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)であり、補足的蛍光材料は、主なYAG蛍光材料をPrでドーピングすることによって生成する。第二の実施態様では、補足的蛍光材料は、Eu付活SrS蛍光体である。赤色蛍光体は、例として、(SrBaCa)2Si5N8:Eu2+であることができる。主な蛍光材料(YAG蛍光体)は、青色LEDからの一次光に応答して黄色光を放出する特性を有する。補足的蛍光材料は、青色LEDからの青色光および主な蛍光材料からの黄色光に赤色光を添加する。
【0075】
Srivastavaらに対する米国特許6,621,211号は、不可視UV LEDを使用して白色光を生成する方法を開示している。この特許では、蛍光体システムで使用する補足的緑色、橙色および/または赤色蛍光体の使用を記載している。この方式で生成される白色光は、以下の種類の三つの蛍光体および場合により第四の蛍光体に衝突する不可視放射によって生じるものである。第一の蛍光体は、575〜620nmのピーク放出波長を有する橙色光を放出し、好ましくは、式A2P2O7:Eu2+,Mn2+によるユーロピウムおよびマンガンでドーピングしたアルカリ土類ピロリン酸塩蛍光体を含む。
【0076】
あるいは、橙色蛍光体の式は、(A1−x−yEuxMny)2P2O7と記述することができ、ここで、0<x≦0.2および0<y≦0.2である。第二の蛍光体は、495〜550nmのピーク放出波長を有する青色−緑色光を放出し、二価ユーロピウム付活アルカリ土類シリケート蛍光体ASiO:Eu2+であり、ここで、AがBa、Ca、SrまたはMbの少なくとも一つを含む。第三の蛍光体は、420〜480nmのピーク放出波長を有する青色光を放出し、二つの市販されている入手可能な蛍光体として「SECA」、D5(PO4)3Cl:Eu2+、ここでDがSr、Ba、CaもしくはMgの少なくとも一つであるか、またはAMg2Al16O27(AはBa、CaもしくはSrの少なくとも一つを含む)もしくはBaMgAl10O17:Eu2+と記述することができる「BAM」のいずれかを含む。任意の第四の蛍光体は、620〜670nmのピーク放出波長を有する赤色光を放出し、フルオロゲルマニウム酸マグネシウム蛍光体MgO*MgF*GeO:Mn4+を含むことができる。本シリケート系緑色蛍光体は、米国特許第6,621,211号の公知の蛍光体とともに使用することが考察される。
【0077】
先に開示した本発明の例証的な実施態様の多数の変形は、当業者にとって容易に想到されるものである。よって、本発明は、添付の請求の範囲にあるすべての構造および方式を含むものとして解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】図1Aは、可視において放出する放射源と、放射源からの励起に応答して放出する蛍光体とを含み、システムから生成される光が蛍光体からの光と放射源からの光との混成である、白色光照明システムを構築するための一般的なスキームの概略表示である。
【図1B】図1Bは、不可視において放出する放射源を含み、放射源から出る光がシステムによって生成される白色光に実質的に寄与しない白色光照明システムの概略表示である。
【図2A】図2Aは、赤色光を提供するための赤色LED、青色光を提供するための青色LEDおよび緑色光を提供するための緑色LEDを使用する、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムを構築するための先行技術によるスキームの概略表示である。
【図2B】図2Bは、赤色光を提供するための赤色LEDと、青色光を提供し、緑色光を提供する緑色蛍光体に励起放射を提供するための青色LEDとを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図2C】図2Cは、青色光を提供し、赤色光を提供する赤色蛍光体および緑色光を提供する緑色蛍光体に励起放射を提供するための青色LEDを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図2D】図2Dは、任意の実質的な可視光を提供せず、代わりにそれぞれが赤色、緑色および青色光を放出する赤色、緑色および青色蛍光体に励起放射を提供するUV LEDを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図3A】図3Aは、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができる緑色照明システムの概略表示である。
【図3B】図3Bは、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができる緑色照明システムの概略表示である。
【図4】図4は、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができるプラズマディスプレイパネルの概略表示である。
【図5】図5は、Sr含有量に対して相対的にBa含有量を増加させた系統の例示的な緑色シリケート蛍光体、たとえば緑色を増加的に放出し、黄色をより少なく放出する蛍光体であって、式(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+F−、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+F−、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F−および(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F−を有し、それぞれ540、532、525および522nmで放出する蛍光体の放出スペクトルの集合を示す。
【図6】図6は、図3に記載された同じ例示的な蛍光体の励起スペクトルの集合を示す。
【図7】図7は、式(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+F−を有する本実施態様の例示的なシリケート系緑色蛍光体において、第一にSrを、その後BaをMgで置換する効果を示す、一連の本蛍光体の放出スペクトルのグラフである。
【図8】図8は、A3がフッ素である式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、yが、フッ素含有量を変えた一連におけるフッ素のモルパーセントを表示する式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.22]2SiO4−yFyで記述することができる例示的な組成の放出スペクトルの集合である。
【図9】図9は、この実験においてA3がF、ClまたはPのいずれかであり、これらの例示的な蛍光体のxが約2であり、この実験のための恒等式A1およびA2が[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yFy(yはA3のモルパーセントを表示する)によって定義される、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+におけるA3アニオンの関数としての放出強度のグラフである。
【図10】図10は、この実験においてA3がF、ClおよびPであり、この実験のためのA1およびA2の恒等式が、A3がFの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yFy、A3がClの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yClyおよびA3がPの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yPyによって定義される、存在するA3のモルパーセントの関数としての、最大放出強度が起こる波長のグラフである。
【図11】図11は、本実施態様のフッ素含有シリケート蛍光体を非フッ素含有シリケートと比較し、本実施態様においてA3アニオンが担う役割を裏付ける、励起スペクトルのグラフである。
【図12】図12は、A3がフッ素である場合の本緑色蛍光体の製造に関連し、実際には最終的に蛍光体となるフッ素のモルパーセントの関数として、例示的な焼結された蛍光体のフッ素含有量を二次イオン放出分光分析(SIMS)で測定した、焼結された蛍光体における出発材料のフッ素濃度のグラフである。
【図13】図13は、蛍光体含有システムで実現することができ、従来の緑色LED集積回路「チップ」に対して相対的に高められた明度を示す、二つの蛍光体を含有する緑色光放出システム(不可視UV−LED源を使用して緑色蛍光体を励起する)の放出スペクトルの比較である。
【図14】図14は、ここでは例示的なシリケート含有蛍光体の濃度を二つのレベルで変えることにより、青色におけるシステムの出力の効果を示す、(ここでもまた不可視UV LED励起源を使用する)もう一つの例示的な蛍光体含有緑色光放出システムの放出スペクトルを示す。
【図15】図15は、任意の本緑色蛍光体の変わる濃度を(可視青色光を放出する)青色LEDチップと併せて使用し、蛍光体濃度の関数として(概略的に)CIE図上にプロットした緑色以外の色(たとえば、緑色−青色またはシアン色)が得られることを、図12とは異なる方法で示す概略である。
【図16】図16は、比較のためにYAG:Ce化合物からのデータをプロットした、異なる温度で測定された例示的な緑色蛍光体の最大強度のグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2004年8月4日に出願され、「Novel phosphor systems for a white light emitting diode(LED)」という名称を付された米国特許出願連続番号第10/912,741号の一部継続出願である、2005年4月5日に出願され、「Novel silicate-based yellow-green phosphors」という名称を付された米国特許出願連続番号第11/100,103号の一部継続出願である。本出願は、2005年10月25日に出願された米国特許出願連続番号第11/258,679号の一部継続出願でもある。関連する出願は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、電磁スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートおよびこのようなシリケート系蛍光体を含む照明システムに関する。本緑色蛍光体は、他の用途のなかでも、緑色照明システム、プラズマディスプレイパネル(PDP)、白色照明システム(白色LED)および赤色−緑色−青色(RGB)照明システムで使用することができる。
【0003】
背景
白色LEDは、当技術分野において公知であり、比較的最近の革新である。LEDに基づく白色光照明源を製造することが可能になったのは、電磁スペクトルの青色/紫外領域で放出するLEDが開発された以降である。経済的には、白色LEDは、特に生産コストが下がり、技術がさらに開発されるにつれ、白熱光源(光電球)に取って代わる潜在性を有する。とりわけ、白色光LEDの潜在性は、寿命、堅牢性および効率において白熱電球のそれよりも優れていると考えられる。例として、LEDに基づく白色光照明源は、運転寿命では100,000時間、効率では80〜90パーセントという産業標準に適合するものと予想される。高い明度のLEDは、すでに交通用光信号といった社会部門に実質的な影響を及ぼし、白熱電球に取って代わっており、近い将来、家庭および企業での一般化されたライティング要件だけでなく、他の日常的な用途を提供したとしても驚くべきことではない。
【0004】
光放出蛍光体に基づく白色光照明システムを作るためのいくつかの一般的な手法がある。これまでのところ、大半の白色LED市販製品は、図1に示す手法に基づいており、放射源からの光が(蛍光体に励起エネルギーを提供することに加えて)白色光照明の色出力に直接的に寄与する。図1のシステム10を参照すると、放射源11(LEDであることができる)が電磁スペクトルの可視部分において光12、15を放出する。光12および15は同じ光であるが、例証的な目的のため、二つの個別のビームとして示す。放射源11から放出される光の一部分である光12が、放射源11からのエネルギーを吸収したのちに光14を放出する能力を持つフォトルミネッセント材料である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域で実質的に単色性の色であるか、または緑色と赤色、緑色と黄色もしくは黄色と赤色等の組み合わせであることができる。放射源11は、可視において、蛍光体13に吸収されない青色光も放出する。これは、図1に示す可視青色光15である。可視青色光15が黄色光14と混合し、図に示す所望の白色照明16を提供する。
【0005】
あるいは、白色光照明システムを作るためのより新しい手法では、スペクトルの紫外(UV)部分において光を放出する不可視放射源を使用する。この概念を例示する図2では、不可視において放出する放射源を含み、放射源から出る光が照明システムによって生成される光に実質的に寄与しない照明システムを例示する。図2を参照すると、実質的に不可視である光が放射源21から光22、23として放出される。光22は、光23と同じ性質を有するが、二つの異なる符番を使用して以下の点を例示する。光22を使用することにより、蛍光体、たとえば蛍光体24または25を励起することができるが、放射源21から放出される光23は、蛍光体に衝突せず、人間の視覚にとって実質的に非可視であるため、蛍光体からの白色光出力28に寄与しない。
【0006】
赤色−緑色−青色(RBG)バックライティングシステムは、図1Aに概略的に例示するように、当技術分野において公知である。これらの従来のシステムでは、バックライティングシステムに必要な三つの色である赤色、緑色および青色のそれぞれに個別のLEDチップを使用する。図1Aの従来のRBGシステムでは、赤色LED10を用いて赤色光10Lを提供し、緑色LED11を用いて緑色光11Lを提供し、青色LED12を用いて青色光12Lを提供する。このようなシステムの不都合として、それぞれのLEDに電気的電流制御器が要求され、図1Aのシステムでは三つの電流制御器が必要となる。
【0007】
当技術分野において必要とされるのは、青色LEDおよび/またはUV LEDチップの組み合わせと;本緑色蛍光体とUVチップおよび青色放出チップとの組み合わせと;プラズマディスプレイパネルにおける改良された緑色蛍光体と、RGBバックライティングシステムにおける新規な緑色蛍光体とを含むことができ、LEDチップへの電流を制御する電流制御器の数が低減される、本緑色蛍光体に基づく白色光照明システム、単色緑色照明システムおよび照明システムで使用するための改良された緑色蛍光体である。
【0008】
発明の概要
端的には、本発明の好ましい実施態様は、白色光照明システム(白色LEDなど)、単色光放出システム(緑色および/またはシアン色など)、プラズマディスプレイパネル(PDP)および赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムで使用するための、スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートを含む。
【0009】
とりわけ、実施態様は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで:
A1がMg、Ca、Ba、Znを含む少なくとも一つの二価2+カチオンまたはNa、K、Liを含む1+カチオンとY、Ce、Laを含む3+カチオンとの組み合わせであり;
A2がB、Al、Ga、C、GeおよびPの少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンであり;
A3がF、Cl、Br、C、NおよびSを含む1−、2−または3−アニオンであり;
xが1.5〜2.5の間(両方を含める)の任意の値である、
シリケート系緑色蛍光体を含む。
【0010】
式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。A1が実質的に等しい数の1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせである場合、この全体的な電荷を平均化すると、同じ数の2+カチオンによって達成される電荷に実質的に等しい。本実施態様のシリケート系緑色蛍光体では、xは、約1.5を超えるもしくはそれに等しく、かつ約2.0未満である任意の値を有するか、または約2.0を超え、かつ約2.5未満である任意の値であることができる。いくつかの実施態様では、xは2ではない。
【0011】
代替実施態様では、本発明の照明システムは、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と;式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが2.5〜3.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系橙色蛍光体と;緑色蛍光体および橙色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、を含む。
【0012】
本シリケート系緑色蛍光体の用途としては、白色光照明システム(いわゆる「白色LED)、実質的に単一に色付けられた光放出システム、たとえば緑色またはシアン色照明システム、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムおよびプラズマディスプレイパネル(PDP)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
発明の詳細な記載
本発明のさまざまな実施態様を本明細書に記載する。これらの実施態様としては、緑色照明システム、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステム、白色光照明システムおよびプラズマディスプレイパネル(PDP)における本シリケート系緑色蛍光体の使用が含まれる。本開示は、蛍光体の一般的な記載を含み、例示的な放出および励起スペクトルを供し、具体的なアルカリ土類元素を含める効果を論じる。A3がフッ素である場合の効果に具体的な重点を置き、A3アニオンを含める効果を論じる。そののち、主に緑色照明システムの場合について、シリケート系緑色蛍光体の濃度を変える効果を論じるが、これがRBGバックライティングシステム、白色光照明システムおよびプラズマディスプレイパネルにも適用されることが理解される。CIE図における緑色蛍光体の位置に対する濃度の効果も論じる。最後に、蛍光体放出強度に対する温度の効果を供する。
【0014】
本緑色蛍光体の例示的な有用性
従来のRBGバックライティングシステムについては、すでに図2Aを参照しつつ論じた。ここでもまた、このシステムが半導体集積回路(または「チップ」)である三つの光放出ダイオード(LED)を用いることに留意する。図2Aでは、赤色、緑色および青色光源のそれぞれに一つのLEDがある。このような先行技術によるシステムの一つの不都合として、電気的電流制御器がそれぞれのLEDに必要であるが、電流制御器が少ないほどよいことは当技術分野において公知である。図2Aの先行技術によるシステムは、三つの回路制御器を要する。
【0015】
対照的に、図2Bの新規なRBGシステムでは、(まさしく従来の場合のように)赤色LED20を用いて赤色光20Lを生成し、青色LED22を用いて青色光22Lを提供する。しかし、図2Aの緑色LED21は、青色LED22によって励起される緑色蛍光体23Pに取って代わっている。換言すると、青色LED22によって放出される放射のうち、一部分がRGBシステムの全体的な出力(青色光22L)に寄与し、残りが緑色蛍光体23Pを励起して緑色光23Lを作る。図2BのRGBシステムは、赤色LED20のための一つおよび青色LED22のための一つとして、二つのみの電気的電流制御器を要する。
【0016】
一つの電流制御器のみを要する代替RGBシステムを図2Cに示す。青色LED22は、図2Bのシステムのように、なおも青色光22Lを提供し、緑色蛍光体23Pを励起するために使用されるが、この場合は赤色蛍光体24Pも励起する。赤色蛍光体24Pは、赤色光24Lを生成する。図2Cのシステムは、LEDが一つのみ(青色LED22)であるため、一つのみの電気的電流制御器を必要とする。
【0017】
一つの電流制御器のみを要するRBGシステムのもう一つの構成を図2Dに示す。このシステムでは、紫外(UV)で放出する放射源を使用し、したがってUV LED25から出る放射は、実質的に不可視である。RBGシステムの青色部分を提供するため、青色蛍光体を使用する。図2Dを参照すると、UV LED25は、赤色蛍光体26Pに励起放射を提供し、赤色光26Lを生成する。また、緑色蛍光体28Pにも励起放射を提供し、緑色光を生成する。
【0018】
例示的な緑色照明システムを図3Aおよび3Bに示す。緑色照明システムの一部として、本シリケート系緑色蛍光体は、可視青色光を放出する青色LEDチップまたは実質的に不可視である励起放射を放出するUV LEDチップのいずれかによって励起することができる。
【0019】
図3Aの緑色照明システムでは、青色チップ30を利用し、励起放射32(可視青色光など)でシリケート系緑色蛍光体31を励起する。緑色蛍光体は、緑色光33を発する。図3Aの緑色照明システムからの光は、青色光32および緑色光33の両方を含む。緑色蛍光体31による青色光32から緑色光33への転換は、一部には、緑色蛍光体31によって吸収される励起光32の量に依存する。
【0020】
あるいは、緑色照明は、図3Bに例示するように、UV LED34を含むことができる。ここでは、実質的に不可視である放射35を使用し、緑色蛍光体31を励起する。ここでもまた、転換の効率は、緑色蛍光体31によるUV光35の吸収の割合によって決定される。しかしながら、この場合、図3Bの緑色照明システムから放出される緑色光36は、励起照明35が実質的に不可視であるにつれ、もっぱら緑色蛍光体31から放出される光からなる。
【0021】
本シリケート系緑色蛍光体は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に使用することができ、その一つの画素40を図4に概略的に例示する。図4を参照すると、通常のプラズマディスプレイパネルの画素は、支持背面ガラス42上に配置される構造用リブ41を含み、リブ41および背面ガラス42で形成されるくぼみ内に堆積させた新規なシリケート系緑色蛍光体43を有する。構造の上部には、前面ガラス45内に埋め込まれた透明電極44がある。任意の瞬時緑色蛍光体43の励起源として、透明電極44でプラズマ46を発生させる。励起時、緑色蛍光体43は可視光48を放出する。
【0022】
本実施態様の新規なシリケート系緑色蛍光体
本発明の実施態様は、概して、実質的に単一に色付けられた照明システム、RBGバックライティングシステム、プラズマディスプレイパネル(PDP)および白色光照明システム(白色光放出ダイオードなど)での使用のため、スペクトルの緑色領域で放出するように構成されるEu2+付活シリケートの蛍光に関する。
【0023】
とりわけ、本発明の緑色蛍光体は、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)を含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)または1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせであり、1+カチオンがK、NaおよびLiを含むことができ、3+カチオンがCs、Y、Ce、BiおよびLiを含むことができる、シリケート系化合物を含む。A1カチオン成分は、いくらかの2+カチオンと、実質的に等しい数の1+カチオンおよび3+カチオンとの組み合わせを含むことができる。
【0024】
A2は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)およびリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンである。
【0025】
A3は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、窒素(N)および硫黄(S)を含む1−、2−または3−アニオンである。
【0026】
xの値は、2.5〜3.5の間(両方を含める)の任意の整数または非整数である。本発明の一つの実施態様では、xは2ではない。式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。本発明の一つの実施態様では、A3が硫黄(S)であることができ、化合物に酸素がほとんどない、またはまったくないことができ、蛍光体は、実質的に酸化物ではなく硫化物である。
【0027】
G.BlasseらによってPhilips Research Reports第23巻第1号1〜120ページで教示されているように、β−Ca2SiO4:Eu、Sr2SiO4:EuまたはBa2SiO4:Eu組成の結晶構造は、Eu2+濃度を2原子パーセントとすると、K2SO4様である。したがって、本シリケート系緑色蛍光体は、類似のホスト格子を有すると考察される。
【0028】
アルカリ土類成分の効果
独創的な緑色蛍光体の光学的特性は、他の方式のなかでも、ストロンチウムに対するA1カチオンの比率を調節することによって制御することができ、A1がアルカリ土類元素、たとえばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは遷移金属元素、たとえば亜鉛(Zn)またはこれらの任意の組み合わせであることができる。独創的な概念のこの実施態様を定位置に配する例示的なデータセットを図5に例示する。
【0029】
図5は、式(Sr1−yBay)2SiO4:Eu2+Fを有する例示的な組成系統の放出スペクトルの集合であり、一般的な式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+においてA1がBaであり、A3がF(この一連の試験においてA2カチオンがなかったことに留意する)である。具体的には、三つの緑色蛍光体として、式(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+Fを有し、約522nmで放出するものと、式(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+Fを有し、約525nmで放出するものと、式(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fを有し、約532nmで放出するものとの放出スペクトルを、式(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+Fを有し、スペクトルの黄色領域でより放出する黄色シリケート系蛍光体の放出スペクトルと比較した。黄色蛍光体は、約540nnmで放出する。約450nmで放出する青色LEDで蛍光体を励起し、そのピークも図5の放出スペクトルに示す。
【0030】
図5を参照すると、当業者は、三つの緑色蛍光体が黄色蛍光体よりも約20パーセント強い強度で放出することに留意する。本発明者らは、先の研究において、(Sr1−xBax)2SiO4蛍光体システムでピーク放出が起こる波長位置が、x=1では(換言すると、アルカリ金属含有量が100パーセントBaであるとき)500nmでの緑色から、x=0のときには(100パーセントSr)580nmでの黄色に変化することを発見した。450nmでの同じ光源からの転換効率は、Baが0から約90%まで増加するとき、連続的な増加を示す。Srに対するBaの比率が0.3〜0.7である場合に得られる545nmのピーク放出波長は、YAG:Ceピーク放出波長に近い。
【0031】
同じ四つの蛍光体(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+Fの励起スペクトルの系統を図6に示す。当業者は、「励起スペクトル」が実際には放出スペクトルであり、放出される光の強度が励起放射の波長の関数として測定されることを理解する。換言すると、具体的な波長を抽出して蛍光体から放出される光を測定し、蛍光体に進入する放射の波長をスキャンする。この一連の実験で選定した波長は、蛍光体を450nmで励起したときにもっとも強い放出が起きた波長である。
【0032】
図6の具体的な例では、実験に使用した検出器は、(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F蛍光体によって放出される522nm光の強度を測定するように設定したが、これは、(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F蛍光体を450nmで励起したときにもっとも強い放出が起こる波長であったためである(図5を参照されたい)。検出器を522nmに設定すると、励起放射の波長が約300〜約560nmでスキャンされ、522nmでの放出が記録された。同様に、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+F蛍光体について、それぞれ525nm、532nmおよび540nm光の強度ならびに各サンプルについて約300〜約560nmでスキャンした励起放射の波長を測定するように検出器を設定した。
【0033】
図6のデータは、励起放射が約420nm未満の波長を有するとき、(522nm、525nmおよび532nmで放出する)三つの緑色蛍光体が励起放射に対してより応答性があることを示す。約420〜460nmの間では、522および525nm緑色蛍光体の曲線は、532緑色蛍光体および540黄色蛍光体の両方よりも低下する。四つの蛍光体のいずれも、約500〜520nmを越える波長を有する励起放射には応答しない。
【0034】
Ba以外の元素を使用し、蛍光体のSrを置換することができる。これらの代替元素としては、CaおよびMgが含まれる。Sr−Ba系シリケート蛍光体システムにおけるバリウムまたはストロンチウムのカルシウム置換では、概して、蛍光体の放出強度が低減され、カルシウム置換が40パーセント未満であるときには放出がより長い波長に移動する。Sr−Ba系シリケート蛍光体におけるバリウムまたはストロンチウムのいずれかに対する大量のマグネシウム置換では、概して、放出強度が低減され、放出がより短い波長に移動する。しかしながら、バリウムまたはストロンチウムに対する少量のマグネシウム置換(例として10パーセント未満)では、放出強度が高まり、放出がより長い波長に移動する。
【0035】
本シリケート系緑色蛍光体に少量のMgを添加することの効果を図7に示す。図7では、450nm励起下での蛍光体(Sr0.057Ba0.4Mg0.025)2SiO4:Eu2+Fおよび(Sr0.057Ba0.4Mg0.025)2SiO4:Eu2+Fの放出を測定し、実質的にMgを含有しない蛍光体の放出と比較した。Mgを有さない「対照」蛍光体は、式(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+Fで表示される。この一連の組成を選定した目的は、第一にSrをMgで置換してBa濃度を一定に保持し、その後、BaをMgで置換してSr濃度を一定に保持する効果を示すことであった。
【0036】
図7を参照すると、Mg添加により、放出の強度が増加することが見てとれる。三つの蛍光体のすべてについて、約540nmでの放出強度のピークに注目すると、三つのうちでもっとも低い放出強度を実証する蛍光体は、対照蛍光体(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+Fであった。BaをMgで置換した蛍光体は、対照蛍光体に対して相対的に約6〜7パーセントの放出強度の増加を実証し、SrをMgで置換した蛍光体は、対照蛍光体に対して相対的に約10パーセントの放出強度の増加を実証した。Mg包含により、ピーク放出が起こる波長がより長い波長(すなわち、わずかに黄色に向かい、緑色から離れる)に移行することも観察することができ、この効果は、SrをMgで置換する場合よりもBaをMgで置換する場合により顕著である。
【0037】
450nmでの励起放射のピーク高さにおける相違は、それらのピーク高さの相違が化学的効果よりも三つの蛍光体の粒度分布に関係しているので、この議論の目的にとって重要ではない。
【0038】
シリケート系緑色蛍光体にA2カチオンおよびA3アニオンを含める効果
本発明者らは、実験を実施し、特にA2カチオンがリンである場合およびA3アニオンが一価ハロゲンである場合について、このシリケート系緑色蛍光体にA2カチオンおよびA3アニオン包含を含める効果を描出した。いくつかの方法により、例示的な蛍光体の特性を光学的に特徴付けた。第一に、おそらくもっとも意義深いこととして、蛍光体から放出される光の強度を波長の関数として評価するため、A2またはA3イオンのいずれかの濃度を変えた一連の蛍光体組成について試験を実施した。このデータから、A2および/またはA3イオン濃度の関数としてピーク放出強度のグラフを構築することは有効である。ここでもまた、A2および/またはA3イオン濃度の関数としてピーク放出波長のグラフを構築することも有効である。
【0039】
例証的なデータを図8〜12に示す。独創的な概念を例示するために選定した蛍光体は、式[(Sr1−xBax)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yにおいてA3がF、ClおよびPからなる群より選択される場合の黄色−緑色蛍光体であった。このような組成について、リンの包含の結果を塩素およびフッ素で得られた結果と比較した結果を示す。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、化合物中のケイ素がリンで置換される一方、酸素がフッ素または塩素ドーパントで置換されると考えられる。
【0040】
図8を参照すると、組成[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yについて、フッ素のモルパーセント(mol%)がそれぞれ0、3.2、13.5、9.0、16.8および19.0である一連の六つの組成の放出スペクトルをとった。この実験における励起放射の波長は450nmであり、この青色LEDからの光は、後に生成される白色光照明に寄与するものと考慮することができる。図8の結果は、約10mol%までの濃度のフッ素で組成をドーピングすることにより、この蛍光体からの放出強度が有意に増加し、フッ素濃度をさらに増加させるにつれ、強度が下がりはじめることを示す。
【0041】
図8からのデータをわずかに異なる方法でプロットすることができる。図9でFについて三角形の記号を使用して示すように、各ピークの最大時における放出強度の値をフッ素含有量の関数としてプロットすることができる。例として、図8で最高強度を呈する曲線は、9mol%のフッ素含有量を有する組成で起こることから、図9でのFイオン曲線の最高点も9mol%のx軸上の場所で起こる。図9を興味深くしていること(およびこの様式でデータをプロットする理由)として、このようなプロットにより、異なるイオンを比較することができる。図9を参照すると、正規化ピーク放出強度をハロゲンフッ素(三角形)および塩素(円形)対リン(四角形)のドーピング濃度の関数としてプロットしており、ここでもまた、ホスト蛍光体は、SrおよびBaアルカリ土類成分のモル比率がそれぞれ0.7および0.3であるシリケートを含んでいた。
【0042】
図9のデータは、研究中であるこの具体的な蛍光体システムにおいて、フッ素アニオンがPおよびClに対して相対的に放出強度を増加させる能力を持つことを示す。興味深いこととして、Cl放出強度が9〜17mol%の範囲で比較的一定であり、9〜17mol%の範囲でもわずかな増加を示すことができた一方、FおよびP組成の両方が約9mol%でピークとなることに留意する。また、ClおよびP組成によってもたらされる増加が有意であり、最適化濃度での正規化強度において約40〜50%である一方、F組成が呈示した100%という膨大な増加のみを理由として、利点を有意と見なすことができないことにも留意すべきである。さらにまた、Cl組成の比較的平坦な曲線によって利点がもたらされることもでき、この事例では、組成の範囲(9〜17mol%にわたるCl含有量など)での放出の比較的一定な性質のため、製造の困難および/または含有量許容誤差の不一致を無視することができる。
【0043】
まさしく正規化ピーク放出強度を一連のA2およびA3イオン(この場合はA2イオンとしてのPおよびA3イオンとしてのF、Cl)のドーピング濃度の関数としてプロットすることができるように、ピーク放出が起こる波長を波長の関数としてプロットすることもできる。このデータを図10に示すが、ここでもまた、組成[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2(Si,P)O4−y(F,Cl)yの系統を対象とし、yの範囲は0〜19mol%である。前のように、励起放射の波長は約450nmであった。図10の結果は、ピーク放出波長がPの濃度に応じて有意に変わることはないが、FおよびClのドーパント濃度を約2〜4mol%の値に増加させると減少し、その後は徐々に増加することを示す。図11は、約450nmの励起波長で試験され、独創的なシリケート系蛍光体のフッ素含有量によって影響を受ける例示的な蛍光体からの励起スペクトルの例である。励起曲線を前に記載したように生成し、540nmで放出される光を励起波長の関数として測定した。このデータは、フッ素により、これらのシリケート系蛍光体の励起スペクトルが劇的に変化したことをあらためて明確に示す。これは、フッ素濃度の約10パーセントの増加(モルパーセント)のみで、430〜490nmの励起波長範囲(青色LEDの範囲内)における放出強度の100パーセントの増加が達成されたことから、「単色」(たとえば緑色)および白色照明システムの両方に多大な影響を有する。
【0044】
本シリケート系緑色蛍光体にA3イオンを含める多様な方法がある。一つの実施態様では、フッ素をNH4Fドーパントの形態で蛍光体組成に添加する。本発明者らは、NH4Fドーパント量が非常に小さい(約1%)場合、ピーク放出の位置がより短い波長に位置付けられ、NH4Fをより添加するにつれ、ドーパント量に応じて波長が増加することを見出した。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、Euでドーピングされた蛍光体のルミネッセンスは、化合物中にEu2+が存在し、4f65dlから4f7への電子遷移が生じることによるものと考えられる。放出バンドの波長位置は、ホストの材料または結晶構造に非常に大幅に依存し、スペクトルの近UV領域から赤色領域に変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと判断される。結晶場の強さが増加するとともに、放出バンドは、より長い波長に移行する。5d−4f遷移のルミネッセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言すると、Eu2+カチオンと周囲のアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオンおよびアニオンまでの平均距離にもっとも影響される。
【0045】
少量のNH4Fの存在下では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤として機能する。一般的に、融剤は、二つの方法のうちの一つで焼結処理を改良する。第一の方法では、液体焼結機構で結晶成長を促進し、第二の方法では、結晶粒から不純物を吸収および回収し、焼結材料の相純度を改良する。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体が(Sr1−xBax)2SiO4である。SrおよびBaの両方が非常に大きいカチオンである。不純物として考慮することができるより小さいカチオン、たとえばMgおよびCaが存在することができる。そのため、ホスト格子がさらに純化されることにより、対称性の結晶格子がより完全となり、カチオンとアニオンとの間の距離がより大きくなり、結果的に結晶場の強さが弱まる。こうした理由から、少量のNH4Fドーピングによって放出ピークがより短い波長に移動する。この少量のFドーピングによる放出強度の増加は、欠陥が少ない、より高い品質の結晶に起因するものである。
【0046】
NH4Fの量がなおもさらに増加すると、F−アニオンのいくらかがO2−アニオンに取って代わり、格子に組み入れられるようになる。電気的電荷の中性を維持するため、カチオン空位が生じる。カチオン位置の空位により、カチオンとアニオンとの間の平均距離が低減し、結晶場の強さが増加する。そのため、NH4F含有量がカチオン空位数の増加によって増加するにつれ、放出曲線のピークがより長い波長に移動する。放出波長は、結晶場の強さのみで決定される、基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップに直接的に関連する。フッ素および塩素による放出波長増加の結果は、もっとも可能性が高いのは酸素サイトの置換として、フッ素または塩素がホスト格子に組み入れられることの強い証拠である。他方、予想されるように、リン酸イオンの添加で放出波長が実質的に変化することはない。これは、ここでもまた、リン酸がカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって格子に容易に組み入れられてホスト材料の結晶場の強さを変化させることはないという証拠である。これは、特に、本質的に酸素サイトからなるEu2+イオンの周囲の結晶場に当てはまる。NH4H2PO4を添加することによって取得される放出強度の改良は、先に論じたように融剤薬剤として働くことを表す。
【0047】
フッ素含有シリケートと非フッ素含有シリケートとを比較する励起スペクトルは、図11に示すように、シリケート蛍光体を含有する本ハロゲン化物の本実施態様においてフッ素が担う重大な役割をさらに裏付けるものであった。図11に示す励起スペクトルは、励起波長に対し、540nmの波長における放出強度をプロットすることによって得られる。励起強度は、吸収に直接的に関連し、励起および励起レベルと基底レベルとの間の透過の確率で決定される。シリケート蛍光体へのフッ素の導入により、400nmより上で励起強度が劇的に増加することは、ここでもまた、フッ素がシリケート格子に組み入れられ、Eu+2の対称周囲を非対称構造に劇的に変化させ、放出および放出状態と基底状態との間の透過の確率を直接的に増加させることを強く表す。図11から、当業者は、シリケート蛍光体中の約10mol%のフッ素により、RGBバックライティングおよび白色LED用途にとってもっとも重要である450nm〜480nmの励起波長において非フッ素含有シリケート蛍光体の放出強度を約100%増加させることができることを見てとれる。
【0048】
これまでに図8に示したように、ハロゲン化物濃度が約10mol%よりも増加すると、放出強度は減少するか、または横ばいになる。これは、格子へのフッ素の組み入れに伴って導入される欠陥が多いほど、非放射中心がより多く生じ、Eu2+有効放出中心に移される吸収されたエネルギーが低減するという事実によるEu放出消光で説明することができる。図8の結果は、Eu放出消光が起こらない、フッ素による最大強度増加が約10mol%であることを表している。
【0049】
例示的な緑色照明システムと先行技術による緑色LEDとの比較
本実施態様による例示的な緑色照明システムは、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有するシリケート系緑色蛍光体と組み合わせる励起放射源を含み、A1、A2、A3およびxは先のとおりに定義される。緑色照明システムにおける例示的な緑色蛍光体の性能は、従来の緑色LED集積回路「チップ」のそれと比較することができる。このようなデータを図13に示す。
【0050】
式(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+Fを有し、約520nmで放出するものと、式(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+Fを有し、約525nmで放出するものとの二つの例示的な緑色蛍光体の放出スペクトルを、約400nmで放出する実質的に不可視であるUV LEDによってそれぞれ励起して測定した。これらの蛍光体は、それぞれ「Gl」および「G2」蛍光体と呼ぶことができる。この実験の文脈では、「明度」は、単にピーク高さではなく、図13の曲線下の積分面積として定義される。
【0051】
Gl蛍光体に基づく緑色照明システムは、約1527mcd(63lm/W)の明度を呈し、CIE座標が(0.206、0.603)であった。G2蛍光体に基づき、約400nmで励起放射を提供するUVチップ上にパッケージされた緑色照明システムは、約1855mcd(76lm/W)の明度を呈し、CIE座標が(0.280、0.620)であった。このデータを、約1119mcd(51lm/W)の明度を呈示した先行技術による緑色LEDと比較する。従来の緑色LEDのCIE座標は、(0.170、0.710)であった。したがって、図13は、従来の緑色LEDチップに対して相対的に、本蛍光体含有システムで実現することができる高められた明度を実証する。
【0052】
照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度を変える効果
照明システムにおいて本緑色蛍光体の濃度を変える効果を図14に示す。図14は、緑色光放出システムにおける二つの異なる濃度の例示的な蛍光体の放出スペクトルであり、緑色蛍光体は、不可視UV LED放射源を使用して励起される。この例示的な緑色蛍光体は、式(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+Fを有し、表記「G3」を与えられることができる。G3蛍光体は、450nm放射で励起されると、約532nmの波長でその最高強度光を放出する。図14Aと標識付けされた放出スペクトルでは、G3蛍光体の濃度は20%であり、12Bと標識付けされた放出スペクトルでは、この同じG3蛍光体の濃度は25%である。
【0053】
図14Aおよび14Bの比較は、緑色放出システムの全体的な放出(色の観点から)が緑色蛍光体の濃度を変えることによって制御できることを示す。図14Aでは、緑色蛍光体G3の20%濃度は、励起源からの450nm不可視青色光のすべてを吸収するうえで十分ではなく、この青色光のいくらかが検出器に向かう(主なピークの小さい肩部によって見てとれる)。しかしながら、濃度が25%に増加すると、図14Bに示すように、緑色照明システムに十分な緑色蛍光体が存在し、450nm青色チップLEDからの青色光の大半が吸収され、532nmでの主な緑色ピークの左側の小さい肩部がほぼ消失した。
【0054】
緑色照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度の増加がシステムの全体的な色出力に対して効果を有することは、図14Aおよび14Bで例証される二つのシステムのそれぞれのCIE座標を調べることによって見てとれる。図14AのCIE座標は、20%の緑色蛍光体G3で(0.328、0.580)であった。図14BのCIE座標は、25%の緑色蛍光体で(9.291、0.473)であった。これらの二つの照明のそれぞれの明度は類似していたが、まったく同じではなく、図14Aおよび14Bでそれぞれ1378mcdおよび1494mcdであった。これは、前のように、従来の緑色LEDの(0.170、0.710)のCIE座標での明度1119mcdと比較される。
【0055】
緑色照明システムにおいて緑色蛍光体の濃度が光学的特性に効果をもたらすことを例示する第二の用途は、CIE図である図13に見てとれる。白色光照明は、電磁スペクトルの可視部分からのさまざまな、またはいくつかの単色性の色を混合することによって構築され、スペクトルの可視部分はおよそ400〜700nmを含む。人間の視覚は、約475〜650nmの間の領域に対してもっとも敏感である。LEDのシステムまたは短い波長のLEDによってポンピングされる蛍光体のシステムのいずれかから白色光を生じさせるには、少なくとも二つの相補的な源からの光を妥当な強度比率で混合する必要がある。色混合の結果は、広くCIE「色度図」に呈示され、単色性の色が図の周辺部に、白色が中心に位置付けられる。したがって、目標は、結果として得られる光を図の中心の座標にマッピングすることができるように色を調合することである。
【0056】
もう一つの技術用語は、白色光照明のスペクトル特性を記載するために使用される「色温度」である。この用語は、「白色光」LEDについて何も物理的な意味を有さないが、当技術分野では、白色光の色座標を黒体源によって達成される色座標に関連付けるために使用される。高色温度LED対低色温度LEDがwww.korry.comに示されている。
【0057】
色度(CIE色度図上の色座標)がSrivastavaらによって米国特許第6,621,211号に記載されている。先に記載した先行技術による青色LED−YAG:Ce蛍光体白色光照明システムの色度は、いわゆる「黒体軌跡」またはBBLに隣接して6000〜8000Kの温度の間に位置する。BBLに隣接する色度座標を呈示する白色光照明システムは、プランクの放射式(同特許の第1段60〜65行に記載)に従い、このようなシステムは人間の観察者にとって心地良い白色光をもたらすために望ましい。
【0058】
演色評価数(CRI)は、照明システムを黒体放射体と比較する相対的な測定である。白色光照明システムによって照射される試験色のセットの色座標が、黒体放射体による放射を受ける同じ試験色のセットによって発生する座標と同じである場合、CRIは100に等しい。
【0059】
本開示で使用する図15のデータを得るために使用した緑色照明システムは、約450nmで励起放射を提供する青色LEDを被覆する本実施態様による例示的なシリケート系緑色蛍光体を使用し、結果をCIE図に概略的に示す。これらのシステムにおける緑色蛍光体の量は、青色LED上の蛍光体含有層の厚さを増加させることによって変え、これは、図15のCIE図上に位置付けられる緑色光照明システムの四つの図表示によって概略的に示すとおりであり、青色LED上の蛍光体量の四つの表示は、符番15A、15B、15Cおよび15Dで指定する。
【0060】
15Aの図で描かれる照明システムは、青色LED励起源単独でなり、この素子から放出される放射をCIE図上の約(0.20、0.15)のx−y座標にプロットすることができる。緑色蛍光体のいくらかによって青色LEDが被覆されるにつれ、したがって、いくらかの緑色光が450nm LEDからのいくらかの青色光と混合されるにつれ、全体的な色出力が図上の上方に移行し、座標(0.20、0.25)によっておよそ指示される位置に達する。この状況は、符番15Bに位置付けられる素子によって概略的に描かれ、青色−緑色の色を「シアン色」として記載することができる。
【0061】
青色LEDを被覆する緑色蛍光体の量がなおもさらに増加すると、符番15Cに示すように、色出力が(0.25、0.45)のCIE色座標まで増加する。蛍光体の量が増加し、四つの被覆のうちでもっとも厚くなると、15Dに概略的に示すように、色は約(0.30、0.50)となる。当業者は、蛍光体の量を変える様式が重要ではないことに留意する。例として、実質的に一定な濃度を有する蛍光体層の厚さを変化させることにより、または実質的に一定な厚さの層内で蛍光体の濃度を変化させることにより、蛍光体の量を変化(増加または減少のいずれか)させることができる。
【0062】
温度効果
新規なシリケート系緑色蛍光体について、温度に対する放出強度の依存性を図16に示す。図16は、それぞれ450nmで励起され、約20℃〜約180℃にわたる温度で測定された、「G2」および「G3」と標識付けされた二つの例示的な緑色蛍光体の最大強度のグラフである。グラフ中には、「A」と標識付けされたシリケート系黄色−緑色蛍光体からのデータも含まれる。
【0063】
図16から、この温度範囲、少なくとも120℃までは本緑色蛍光体の性能が本質的に一定であり、この範囲では蛍光体の放出強度が約10パーセントのみ減少することが見てとれる。約180℃に加熱すると、三つのこれらの新規なシリケート系蛍光体の強度は、すべて約70パーセントを上回ったままである。
【0064】
UVおよび青色LED放射源
特定の実施態様では、青色光放出LEDは、約400nm以上、かつ約520nm以下の波長範囲で主な放出ピークを有する光を放出する。この光は、1)蛍光体システムに励起放射を提供し、2)蛍光体システムから放出される光と組み合わされ、白色光照明の白色光をなす青色光を提供する、という二つの目的を果たす。
【0065】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上、かつ約500nm以下の光を放出する。別のもう一つの実施態様では、青色LEDは、約430以上、かつ約480nm以下の光を放出する。青色LED波長は、450nmであることができる。
【0066】
本明細書においては、本実施態様の青色光放出素子を総称的に「青色LED」として記載するが、当業者は、青色光放出素子が、青色光放出ダイオード、レーザダイオード、面放出レーザダイオード、共振空洞光放出ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス素子の少なくとも一つ(いくつかを同時に作動させることも考察される)であることができることを理解する。青色光放出素子が無機素子である場合、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体および酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0067】
代替実施態様では、新規な緑色蛍光体は、約400nm未満の波長で放出する放射源によって励起される。実質的に不可視である光を放出するこのような放射源は、UV LEDまたは青色LEDについて先に列挙した任意の他の種類の放射源であることができる。
【0068】
本発明の一つの実施態様では、緑色照明システムは、本明細書に記載する任意のシリケート系緑色蛍光体を、約430nm〜480nmにわたる放出ピーク波長を有するGaN系青色LEDと組み合わせることによって構築することができる。しかし、当業者は、本緑色蛍光体から放出される光を青色LEDと組み合わせることに加え、緑色光を他の可視青色放射源、たとえばアルミネート系青色蛍光体、アルミネート系緑色蛍光体ならびにシリケート系黄色および橙色蛍光体からの光と組み合わせることができることを理解する。これらのシステムを次に記載する。
【0069】
独創的な緑色蛍光体と他の蛍光体との組み合わせ
先の概念に沿って使用することができる青色蛍光体の例は、2005年7月1日に出願され、「Aluminate-based blue phosphors」という名称を付された、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとする米国特許出願(代理人整理番号第034172−013号、カリフォルニア州フレモント(Fremont)のIntematix Corporationに付与された出願)に記載されている。当然のことながら、市販のBAM蛍光体を含め、事実上、任意の青色蛍光体がこの用途に適切であることができるが、Intematix蛍光体が特に良好に働く。これらの蛍光体は、一般化された式(M1−xEux)2−zMgzAlyO[1+(3/2)y]によって記載することができ、ここで、MがBaまたはSrの少なくとも一つである。これらの青色蛍光体は、約420〜560nmにわたる波長で放出することができる。
【0070】
あるいは、本緑色蛍光体は、黄色蛍光体と組み合わせて使用することができ(青色LED励起源からの青色光の有無および青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体等の有無は問わない)、たとえば市販されている入手可能な黄色蛍光体(YAG:Ce蛍光体など)または2004年9月22日に出願され、「Novel silicate based yellow-green phosphors」という名称を付された、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとする特許出願(米国特許出願連続番号第10/948,764号)に記載されている概念に沿った黄色蛍光体と組み合わせて使用することができる。当然のことながら、事実上、任意の黄色蛍光体がこの用途に適切であることができる。これらの蛍光体は、一般化された式A2SiO4:Eu2+Dによって記載することができ、ここで、AがSr、Ca、Ba、Mg、ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、DがF、Cl、Br、I、P、SおよびNからなる群より選択されるドーパントである。あるいは、これらの蛍光体をA2Si(O,D)4:Eu2+として記述することができ、これは、Dドーパントがホスト結晶の酸素格子サイト上にあり、ケイ素格子サイト上には配置されないことを示す。これらは、約280〜490nmにわたる波長を有する光を放出するように構成される。
【0071】
あるいは、本シリケート系緑色蛍光体は、従来の市販されている入手可能な緑色蛍光体または「Novel aluminate-based green phosphors」という名称を付された米国特許出願に記載されている、本発明者らによって開発された新規なアルミネート系緑色蛍光体と組み合わせて使用することができる。この出願は、2005年1月14日に提出され、Ning Wang、Yi Dong、Shifan ChengおよびYi-Qun Liを発明者らとし、一般化された式M1−xEuxAlyO[1+(3/2)y]によって記載することができる化合物を開示している。この式では、Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Mn、Zn、Cu、Sm、TmおよびCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属である。これらのアルミネート系緑色蛍光体は、約500〜550nmにわたる波長を有する光を放出するように構成される。
【0072】
本緑色蛍光体と組み合わせて使用することができるシリケート系橙色蛍光体は、2005年10月25日に提出され、Shifan Chen、Tejei Tao、Yi DongおよびYi-qun Liを発明者らとする「Silicate-based orange phosphors」という名称を付された優先権主張出願(代理人整理番号第034172−054号)に記載されているように、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有する。式では、A1がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)もしくは亜鉛(Zn)、または1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせを含む少なくとも一つの二価カチオン(2+イオン)であり、A2がホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、caron(C)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)およびリン(P)の少なくとも一つを含む3+、4+または5+カチオンであり、A3がフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)および硫黄(S)を含む1−、2−または3−アニオンであり、xが2.5〜3.5の間(両方を含める)の任意の値である。任意の具体的な理論によって拘束されることを望むものではないが、式の記述から、A1カチオンがストロンチウム(Sr)に取って代わり、A2カチオンがケイ素(Si)に取って代わり、A3アニオンが酸素(O)に取って代わることが表される。
【0073】
当然のことながら、本シリケート系緑色蛍光体は、公知の黄色、橙色または赤色蛍光体とともに使用することができる。例として、Bognerらに対する米国特許第6,649,946号では、450nmで放出する青色LEDによって励起することができる、ホスト格子としてのアルカリ土類窒化ケイ素材料に基づく黄色〜赤色蛍光体を開示している。赤色〜黄色放出蛍光体は、ニトリドシリケート(nitridosilicate)タイプMxSiyNz:Euのホスト格子を使用し、ここで、MがCa、SrおよびBaの群より選定されるアルカリ土類金属の少なくとも一つであり、z=2/3x+4/3yである。材料組成の一つの例は、Sr2Si5N8:Eu2+である。このような赤色〜黄色蛍光体の使用は、一つ以上の赤色および緑色蛍光体とともに、青色光放出一次源について開示されている。このような材料の目的は、赤色の演色性R9を改良する(演色を赤色移行に調節する)だけでなく、全体的な演色性Raが改良された光源を提供することであった。
【0074】
本シリケート系緑色蛍光体とともに使用することができる赤色蛍光体を含む補足的蛍光体の開示のもう一つの例は、Mueller-Machに対する米国特許出願第2003/0006702号に認めることができ、そこでは、470nmのピーク波長を有する青色LEDからの一次光を受け、可視光スペクトルの赤色スペクトル領域で光を放射する(補足的)蛍光材料を有する光放出素子が開示されている。補足的蛍光材料を主な蛍光材料と併せて使用することにより、複合出力光の赤色成分を増加させ、したがって、白色出力光の演色を改良する。第一の実施態様では、主な蛍光材料は、Ceで付活され、Gdでドーピングされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)であり、補足的蛍光材料は、主なYAG蛍光材料をPrでドーピングすることによって生成する。第二の実施態様では、補足的蛍光材料は、Eu付活SrS蛍光体である。赤色蛍光体は、例として、(SrBaCa)2Si5N8:Eu2+であることができる。主な蛍光材料(YAG蛍光体)は、青色LEDからの一次光に応答して黄色光を放出する特性を有する。補足的蛍光材料は、青色LEDからの青色光および主な蛍光材料からの黄色光に赤色光を添加する。
【0075】
Srivastavaらに対する米国特許6,621,211号は、不可視UV LEDを使用して白色光を生成する方法を開示している。この特許では、蛍光体システムで使用する補足的緑色、橙色および/または赤色蛍光体の使用を記載している。この方式で生成される白色光は、以下の種類の三つの蛍光体および場合により第四の蛍光体に衝突する不可視放射によって生じるものである。第一の蛍光体は、575〜620nmのピーク放出波長を有する橙色光を放出し、好ましくは、式A2P2O7:Eu2+,Mn2+によるユーロピウムおよびマンガンでドーピングしたアルカリ土類ピロリン酸塩蛍光体を含む。
【0076】
あるいは、橙色蛍光体の式は、(A1−x−yEuxMny)2P2O7と記述することができ、ここで、0<x≦0.2および0<y≦0.2である。第二の蛍光体は、495〜550nmのピーク放出波長を有する青色−緑色光を放出し、二価ユーロピウム付活アルカリ土類シリケート蛍光体ASiO:Eu2+であり、ここで、AがBa、Ca、SrまたはMbの少なくとも一つを含む。第三の蛍光体は、420〜480nmのピーク放出波長を有する青色光を放出し、二つの市販されている入手可能な蛍光体として「SECA」、D5(PO4)3Cl:Eu2+、ここでDがSr、Ba、CaもしくはMgの少なくとも一つであるか、またはAMg2Al16O27(AはBa、CaもしくはSrの少なくとも一つを含む)もしくはBaMgAl10O17:Eu2+と記述することができる「BAM」のいずれかを含む。任意の第四の蛍光体は、620〜670nmのピーク放出波長を有する赤色光を放出し、フルオロゲルマニウム酸マグネシウム蛍光体MgO*MgF*GeO:Mn4+を含むことができる。本シリケート系緑色蛍光体は、米国特許第6,621,211号の公知の蛍光体とともに使用することが考察される。
【0077】
先に開示した本発明の例証的な実施態様の多数の変形は、当業者にとって容易に想到されるものである。よって、本発明は、添付の請求の範囲にあるすべての構造および方式を含むものとして解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】図1Aは、可視において放出する放射源と、放射源からの励起に応答して放出する蛍光体とを含み、システムから生成される光が蛍光体からの光と放射源からの光との混成である、白色光照明システムを構築するための一般的なスキームの概略表示である。
【図1B】図1Bは、不可視において放出する放射源を含み、放射源から出る光がシステムによって生成される白色光に実質的に寄与しない白色光照明システムの概略表示である。
【図2A】図2Aは、赤色光を提供するための赤色LED、青色光を提供するための青色LEDおよび緑色光を提供するための緑色LEDを使用する、赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムを構築するための先行技術によるスキームの概略表示である。
【図2B】図2Bは、赤色光を提供するための赤色LEDと、青色光を提供し、緑色光を提供する緑色蛍光体に励起放射を提供するための青色LEDとを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図2C】図2Cは、青色光を提供し、赤色光を提供する赤色蛍光体および緑色光を提供する緑色蛍光体に励起放射を提供するための青色LEDを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図2D】図2Dは、任意の実質的な可視光を提供せず、代わりにそれぞれが赤色、緑色および青色光を放出する赤色、緑色および青色蛍光体に励起放射を提供するUV LEDを使用する、新規なRGBバックライティングシステムの概略表示である。
【図3A】図3Aは、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができる緑色照明システムの概略表示である。
【図3B】図3Bは、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができる緑色照明システムの概略表示である。
【図4】図4は、本シリケート系緑色蛍光体を利用することができるプラズマディスプレイパネルの概略表示である。
【図5】図5は、Sr含有量に対して相対的にBa含有量を増加させた系統の例示的な緑色シリケート蛍光体、たとえば緑色を増加的に放出し、黄色をより少なく放出する蛍光体であって、式(Sr0.7Ba0.3)2SiO4:Eu2+F−、(Sr0.4Ba0.6)2SiO4:Eu2+F−、(Sr0.3Ba0.7)2SiO4:Eu2+F−および(Sr0.2Ba0.8)2SiO4:Eu2+F−を有し、それぞれ540、532、525および522nmで放出する蛍光体の放出スペクトルの集合を示す。
【図6】図6は、図3に記載された同じ例示的な蛍光体の励起スペクトルの集合を示す。
【図7】図7は、式(Sr0.6Ba0.4)2SiO4:Eu2+F−を有する本実施態様の例示的なシリケート系緑色蛍光体において、第一にSrを、その後BaをMgで置換する効果を示す、一連の本蛍光体の放出スペクトルのグラフである。
【図8】図8は、A3がフッ素である式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、yが、フッ素含有量を変えた一連におけるフッ素のモルパーセントを表示する式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.22]2SiO4−yFyで記述することができる例示的な組成の放出スペクトルの集合である。
【図9】図9は、この実験においてA3がF、ClまたはPのいずれかであり、これらの例示的な蛍光体のxが約2であり、この実験のための恒等式A1およびA2が[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yFy(yはA3のモルパーセントを表示する)によって定義される、式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+におけるA3アニオンの関数としての放出強度のグラフである。
【図10】図10は、この実験においてA3がF、ClおよびPであり、この実験のためのA1およびA2の恒等式が、A3がFの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yFy、A3がClの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yClyおよびA3がPの場合には式[(Sr0.7Ba0.3)0.98Eu0.02]2SiO4−yPyによって定義される、存在するA3のモルパーセントの関数としての、最大放出強度が起こる波長のグラフである。
【図11】図11は、本実施態様のフッ素含有シリケート蛍光体を非フッ素含有シリケートと比較し、本実施態様においてA3アニオンが担う役割を裏付ける、励起スペクトルのグラフである。
【図12】図12は、A3がフッ素である場合の本緑色蛍光体の製造に関連し、実際には最終的に蛍光体となるフッ素のモルパーセントの関数として、例示的な焼結された蛍光体のフッ素含有量を二次イオン放出分光分析(SIMS)で測定した、焼結された蛍光体における出発材料のフッ素濃度のグラフである。
【図13】図13は、蛍光体含有システムで実現することができ、従来の緑色LED集積回路「チップ」に対して相対的に高められた明度を示す、二つの蛍光体を含有する緑色光放出システム(不可視UV−LED源を使用して緑色蛍光体を励起する)の放出スペクトルの比較である。
【図14】図14は、ここでは例示的なシリケート含有蛍光体の濃度を二つのレベルで変えることにより、青色におけるシステムの出力の効果を示す、(ここでもまた不可視UV LED励起源を使用する)もう一つの例示的な蛍光体含有緑色光放出システムの放出スペクトルを示す。
【図15】図15は、任意の本緑色蛍光体の変わる濃度を(可視青色光を放出する)青色LEDチップと併せて使用し、蛍光体濃度の関数として(概略的に)CIE図上にプロットした緑色以外の色(たとえば、緑色−青色またはシアン色)が得られることを、図12とは異なる方法で示す概略である。
【図16】図16は、比較のためにYAG:Ce化合物からのデータをプロットした、異なる温度で測定された例示的な緑色蛍光体の最大強度のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで:
A1が少なくとも一つの二価2+カチオン、1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせまたはそれらの組み合わせであり;
A2が3+、4+または5+カチオンであり;
A3が1−、2−または3−アニオンであり;
xが1.5〜2.5の間(両方を含める)の任意の値である、
シリケート系緑色蛍光体。
【請求項2】
A1がMg、Ca、Ba、Zn、K、Na、Li、Bi、Y、LaおよびCeからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項3】
A2がB、Al、Ga、C、Ge、NおよびPからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項4】
A3がF、Cl、Br、NおよびSからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項5】
xが約1.5以上、かつ約2.0未満である任意の値である、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項6】
xが約2.0を超え、かつ約2.5未満である任意の値である、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項7】
xが2ではない、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項8】
緑色照明システムであって:
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と、
緑色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、
を含む緑色照明システム。
【請求項9】
放射源が、約410nm以上の波長を有する可視光を放出する青色LEDである、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項10】
放射源が、約410nm以下の波長を有する不可視光を放出する紫外(UV)LEDである、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項11】
A3がフッ素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項12】
A3が塩素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項13】
A3が硫黄である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項14】
A3が窒素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項15】
緑色照明システムが赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムの成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項16】
緑色照明システムがプラズマディスプレイパネル(PDP)の成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項17】
緑色照明システムが白色光照明システム(白色LED)の成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項18】
照明システムであって:
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と、
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが2.5〜3.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系橙色蛍光体と、
緑色蛍光体および橙色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、
を含む照明システム。
【請求項19】
A1がMg、Ca、BaおよびZnからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項20】
A2がB、Al、Ga、C、GeおよびPからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項21】
A3がF、Cl、BrおよびSからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項22】
放射源が、約410nm以上の波長を有する可視光を放出する青色LEDである、請求項18記載の照明システム。
【請求項23】
放射源が、約410nm以下の波長を有する不可視光を放出する紫外(UV)LEDである、請求項18記載の照明システム。
【請求項1】
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで:
A1が少なくとも一つの二価2+カチオン、1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせまたはそれらの組み合わせであり;
A2が3+、4+または5+カチオンであり;
A3が1−、2−または3−アニオンであり;
xが1.5〜2.5の間(両方を含める)の任意の値である、
シリケート系緑色蛍光体。
【請求項2】
A1がMg、Ca、Ba、Zn、K、Na、Li、Bi、Y、LaおよびCeからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項3】
A2がB、Al、Ga、C、Ge、NおよびPからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項4】
A3がF、Cl、Br、NおよびSからなる群より選択される、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項5】
xが約1.5以上、かつ約2.0未満である任意の値である、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項6】
xが約2.0を超え、かつ約2.5未満である任意の値である、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項7】
xが2ではない、請求項1記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項8】
緑色照明システムであって:
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と、
緑色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、
を含む緑色照明システム。
【請求項9】
放射源が、約410nm以上の波長を有する可視光を放出する青色LEDである、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項10】
放射源が、約410nm以下の波長を有する不可視光を放出する紫外(UV)LEDである、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項11】
A3がフッ素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項12】
A3が塩素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項13】
A3が硫黄である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項14】
A3が窒素である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項15】
緑色照明システムが赤色−緑色−青色(RGB)バックライティングシステムの成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項16】
緑色照明システムがプラズマディスプレイパネル(PDP)の成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項17】
緑色照明システムが白色光照明システム(白色LED)の成分(component)である、請求項8記載の緑色照明システム。
【請求項18】
照明システムであって:
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが1.5〜2.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系緑色蛍光体と、
式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有し、ここで、A1が少なくとも一つの二価2+カチオンであり;A2が3+、4+または5+カチオンであり;A3が1−、2−または3−アニオンであり;xが2.5〜3.5の間(含める)の任意の値である、シリケート系橙色蛍光体と、
緑色蛍光体および橙色蛍光体に励起放射を提供するための放射源と、
を含む照明システム。
【請求項19】
A1がMg、Ca、BaおよびZnからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項20】
A2がB、Al、Ga、C、GeおよびPからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項21】
A3がF、Cl、BrおよびSからなる群より選択される、請求項18記載のシリケート系緑色蛍光体。
【請求項22】
放射源が、約410nm以上の波長を有する可視光を放出する青色LEDである、請求項18記載の照明システム。
【請求項23】
放射源が、約410nm以下の波長を有する不可視光を放出する紫外(UV)LEDである、請求項18記載の照明システム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−515030(P2009−515030A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540105(P2008−540105)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/043234
【国際公開番号】WO2007/056311
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/043234
【国際公開番号】WO2007/056311
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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