説明

シリコーンの架橋

光学素子、特に眼内レンズ(IOL)の産生のための方法および材料が開示される。この眼内レンズは、任意の量(0〜99%)の屈折および/または形状を調節する化合物を、実質的に架橋された第1のポリマーマトリックス内に組み込んでいる。本発明の方法に従って産生される材料は、医療用レンズを特徴付ける際に有用な、特定の流体力学的パラメーターを示す。これらの医療用レンズは、屈折率を変えること、および/または刺激によって誘導される重合体化により形状を改変することによって、その屈折力を変える能力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、正規の米国出願第09/991560号(2001年11月21日出願)の一部継続出願であり、この米国出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
毎年、米国でおよそ2000,000件の白内障外科手術が、実施されている。この手順は、一般に、水晶体嚢前部に切開部を作り、白内障のクリスタリンレンズを取り出す工程、およびその場所に眼内レンズを移植する工程を包含する。移植されるレンズの能力は、(目の長さおよび角膜の曲率の術前の測定に基づいて)患者がさらなる矯正手段(例えば、眼鏡もしくはコンタクトレンズ)を用いることなく見ることが可能なように選択される。不運なことに、測定の誤差に起因して、そしてまたはレンズの位置がずれ得ることおよび創傷治癒に起因して、この手術を受ける患者全体の約半数は、術後に矯正なしの最適な視力を享受することはない。非特許文献1、非特許文献2。先行技術の眼内レンズの能力は、一般に、一旦移植された後は調整できず、代表的に、患者は、移植したレンズを異なる能力の別のレンズと置き換えるか、または諦めてさらなる矯正レンズ(例えば、眼鏡もしくはコンタクトレンズ)の使用を受け入れるかを選択せざるを得ない。代表的に、前者の利益が危険を上まらないので、前者がなされることはほとんどない。
【非特許文献1】Brandserら,Acta Ophthalmol Scand,1997年,第75巻,p.162−165
【非特許文献2】Oshikaら,J cataract Refract Surg,1998年,第24巻,p.509−514
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
移植後および創傷の治癒後に能力が調整され得る眼内レンズは、白内障手術に伴う術後の屈折の誤差に対する理想的な解決である。さらに、このようなレンズは、より広い用途を有し、そしてより代表的な状態(例えば、近視、遠視および乱視)を矯正するために使用され得る。例えば、角膜を再建するためにレーザーを用いるLASIKのような手術手順が利用可能であるが、容易に処置され得るのは軽度から中程度までの近視および遠視のみである。対照的に、眼鏡もしくはコンタクトレンズと同様に天然の目の屈折誤差を矯正する眼内レンズは、どんな患者の目の中にも移植され得る。移植されたレンズの能力が調整され得るので、不正な測定および/またはレンズの位置のずれおよび創傷治癒に起因する術後の屈折誤差は、インサイチューでうまく調整され得る。従って、このような移植されるレンズのための改善された材料(例えば、移植片が配置された後に屈折率および/または形状の変化を介して屈折力が改変され得る一連の機械的特性および/または光学的特性を有する材料)の需要が継続的に存在している。より具体的には、広範な範囲の患者に適合するように調製され得、それによってこの移植片が適切に構築されかつ構築後にさらなる侵襲性手順に頼ることなく改変され得る、移植片材料についての需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本発明は、光学素子のための材料、特に医療用レンズのための材料、このような材料を産生する方法、ならびにこのような材料を使用する方法に関する。一般に、光学素子を製造するための本発明の方法は、(a)第1前駆物質と屈折および/または形状改変組成物(RSMCもしくはRMC)とを含む、第1複合材を調製する工程;(b)第2前駆物質と第1前駆物質およびこの第2前駆物質の触媒とを含む第2複合材を調製する工程;(c)この第1複合材とこの第2複合材とを混合し、反応混合物を形成する工程;(d)この反応混合物を鋳型に入れる工程;(e)この反応混合物から実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成する工程であって、この実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスはその中に拡散したRSMCを有する工程;ならびに(f)光学素子をこの鋳型から取り出す工程を、包含する。この方法は、温度および圧力の変化、ならびに種々の比の前駆体、RSMCおよび触媒を用いて実施され得る。本発明の特定の実施形態は、好ましく有用な範囲の粘弾性特性(例えば、せん断弾性係数G’、またはせん断損失弾性係数G”(ポリマー系における架橋の指標))を示すIOL(移植可能眼内レンズ)に特に適する材料を調製するために使用され得る。本発明の方法に従って調製されたIOLの少なくとも1部分が適切な刺激(例えば、UV照射)に曝される場合、屈折および/または形状改変調節組成物(RSMC)は、第2の反応産物を形成し、この第2の反応産物は、ポリマーであってもよく、そしてさらに相互浸透するポリマーネットワーク(IPN)を生じてもよい。任意の形態での第2の反応産物の形成は、その屈折率および/または形状(曲率の半径)を変えることによってレンズの屈折力を変更する。
【0005】
上記は、下記の発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明の比較的広範な特徴および技術的利点を概説している。本発明のさらなる特徴および利点は、本明細書中下記で説明され、本発明の特許請求の範囲の対象を形成する。開示される概念および特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実施するために他の構造を改変するためもしくは設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者によって理解されるべきである。また、そのような等価物が、添付の特許請求の範囲に示される本発明の精神および範囲から逸脱しないことも、当業者によって理解されるべきである。本発明を特徴づけると考えられる新規な特徴は、添付の図面に関連して検討される場合、その構成および実施の方法の両方に従って、さらなる目的および利点とともに、以下の記載からよりよく理解されるであろう。しかし、各々の図面は例示および説明の目的のみのために提供されており、本発明の限定の定義として意図されないことが、特に理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、実質的に架橋された第1ポリマー材料を調製するための方法に関連し、特に、好ましくは製造後改変可能である光学素子(例えば、医療用レンズ)において有用な特定の値の機械的特性(例えば、せん断損失弾性係数G”)を有するポリシロキサンベースの材料に関連する。より具体的には、本発明は、眼内レンズ(IOL)のための材料を調製するための方法に関連し、ここでこの眼内レンズの光学特性(例えば、能力)は、本発明の実施形態に従って調製されたレンズが目の中に移植された後に、インサイチューで調整され得る。あるいは、この光学特性を、レンズを個人に合わせて調節する製造工程としてエキソビボで調整することもできる。
【0007】
本発明の方法は、IOLなどのような光学素子のために適した材料を産生する。この方法は、一般的に、(a)第1前駆物質と架橋剤と屈折および/または形状改変組成物(RSMC)とを含む、第1複合材を調製する工程;(b)第2前駆物質と、第1前駆物質および第2前駆物質とを反応させる触媒とを含む第2複合材を調製する工程;(c)第1複合材と第2複合材とを混合し、反応混合物を形成する工程;(d)この反応混合物を鋳型に入れる工程;(e)この反応混合物から実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成する工程であって、この実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、その中に拡散したRSMCを有する工程;ならびに(f)光学素子をこの鋳型から取り出す工程を、包含する。
【0008】
この実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、レンズの光学素子フレームワークを形成し、そして一般に、その機械的特性の多くを担う。用語「実質的に架橋されたポリマーマトリックス」は、本明細書中で使用される場合、複合材前駆物質の反応によって形成される光学素子(好ましくはレンズであり、より好ましくは眼内レンズである)において利用可能である、合成された材料(特に、シリコーンベースの材料)をいう。マトリックス中の反応性の材料は、完全に反応する必要はない。すなわち、高度に架橋されたマトリックスが形成される必要はない。しかしむしろ、この方法は、光学素子の種々の実施形態の形成を容易にするような架橋密度の範囲を有する材料を調製するために使用され得る。光学素子のこのような材料特性(例えば、せん断損失弾性係数G”)の変化は、特定の型の患者のためにレンズを個別に調整することを可能にする。
【0009】
この方法の1つの実施形態において、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成する2以上の前駆物質は、屈折および/または形状改変調節組成物(RSMC)の存在下で、触媒によって反応する。別の実施形態において、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、触媒およびさらなる前駆物質(架橋剤)とともに、屈折および/または形状改変調節組成物の存在下で形成される。別の筋書きの下では、RSMC成分は、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスの形成に適合性でなければならず、かつ、あまりこの形成を妨げてはならない。同様に、このRSMC成分からの反応産物もしくはポリマーマトリックスの形成もまた、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスの存在と適合性でなければならない。別の表現でいえば、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスとRSMCによって形成される第2のポリマーによって産生される任意のマトリックスとは、相分離するべきではなく、生じる光学素子の光透過性が影響されてはならない。
【0010】
本明細書中で規定されるRSMCは、1種の化合物であっても、化合物の組み合わせであってもよく、刺激によって誘導される重合体化(好ましくは光重合体化)が可能である。本明細書中で使用される場合、用語「重合体化」は、組成物の少なくとも1種の成分が類似の成分もしくは異なる成分のいずれかと少なくとも1つの共有結合もしくは物理的結合を形成するように反応する、反応をいう。この方法に従って形成された実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスおよびこの方法において使用されるRSMC組成物の性質は、光学素子の最終的用途に依存して変化する。しかし、一般に、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを生じる成分およびRSMCは、RSMCを含む成分が実質的に架橋された第1ポリマーマトリックス中に拡散可能であるように選択される。別の表現でいえば、ゆるい(loose)第1ポリマーマトリックス(低い架橋密度)は、より大きなRSMC成分と組み合わされる傾向にあり、そしてより堅く架橋された第1ポリマーマトリックスは、より小さなRSMC成分と組み合わされる傾向にある。
【0011】
適切なエネルギー源(例えば、熱もしくは光または圧力あるいは電気−磁気刺激)に曝露された際、屈折および/または形状改変調節組成物は、本発明の方法において使用される材料から調製された光学素子の曝露領域において反応産物(例えば、第2ポリマーマトリックス)を形成する。第2ポリマーマトリックスの存在は、この領域の光学素子の材料の特性を変え、その屈折および/または形状能力を調節する。一般に、第2ポリマーマトリックスの形成は、代表的に、光学素子の作用した部分の屈折率を上昇させる。曝露後、非曝露領域における屈折および/または形状改変調節組成物は、曝露領域に時間をかけて移動する。曝露領域へ移動するRSMCの量は、時間依存的であり、そして正確に制御され得る。十分な時間が許容される場合、RSMC成分は、再度平衡化しそして光学素子(すなわち、曝露領域を含む第1ポリマーマトリックス)全体に再度分布する。この領域がエネルギー源に再度曝露される場合、この領域に移動してきたRSMCは、重合体化して、この曝露領域において第2ポリマーマトリックスの形成をさらに増大する。この再曝露領域は、最初に曝露された領域と同じである必要はなく、達成されるべき所望の性質に依存する。このプロセス(曝露の後に適切な時間間隔により拡散させる)は、光学素子の曝露領域が所望の特性(例えば、能力、屈折率、もしくは形状)に達するまで繰り返されてもよい。この時点で、光学素子全体がエネルギー源に曝露され、レンズ全体の残留するRSMC成分の全てを反応させることによって所望のレンズ特性を「固定する(lock−in)」。別の言い方をすると、自由に拡散可能なRSMC成分は、もはや利用できず、その後光学素子をエネルギー源に曝露しても、その能力をこれ以上変えることはできない。図1および図2は、このプロセスを図示し、ここで、それぞれ屈折率および形状(すなわち曲率の半径)が、上述のプロセスによって変えられている(調節後固定する)。
【0012】
上述したように、屈折および/または形状改変調節組成物は、以下である限り、1種の成分であってもよく、もしくは多数の成分であってもよい:(i)第1ポリマーマトリックスの形成に適合性であり;(ii)第1ポリマーマトリックスの形成後に刺激によって誘導される重合体化が可能であり続け;かつ/または(iii)第1ポリマーマトリックス中を自由に拡散可能である。好ましい実施形態において、この刺激によって誘導される重合体化は、光によって誘導される重合体化である。
【0013】
本発明の光学素子は、エレクトロニクスおよびデータ保存産業において、多くの用途を有する。本発明の別の用途は、医療用レンズ(特に眼内レンズ)である。
【0014】
一般に、2種類の眼内レンズ(「IOL」)が存在する。眼内レンズの第1の種類は、目の天然のレンズと置き換わる。このような手順の最も一般的な理由は、白内障である。眼内レンズの第2の種類は、存在するレンズを補助し、永久的な矯正レンズとして機能する。この種のレンズ(時々、phakic眼内レンズと呼ばれる)は、前室もしくは後室の中に移植され、目の任意の屈折誤差を矯正する。理論的には、正常視(すなわち、無限光からの網膜上の完全な焦点)のために必要などちらの種類の眼内レンズの能力も、正確に計算され得る。しかし、実際には、術前能力測定における誤差、および/または目の中でレンズの位置がずれ得ること、ならびに創傷治癒のため、IOLを受ける患者全体の約半数のみしか、術後にさらなる矯正を必要としない最善の視覚を享受しないことが推測される。先行技術のIOLは、一般に、術後の能力改変が不可能であり、残りの患者は、外部レンズ(例えば、眼鏡もしくはコンタクトレンズ)のような他の型の視覚矯正または角膜手術、あるいは最悪の場合レンズ交換に頼らざるを得ない。これらの型のさらなる矯正手段の必要性は、本発明の眼内レンズの使用によって取り除かれる。本発明の方法を使用して調製された眼内レンズはまた、生じたレンズが生体適合性であるというさらなる要求を満たすことも、開示した。
【0015】
本発明の方法に従って調製される、適切な、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスの例示としては、以下が挙げられる:ポリアクリレート類(例えば、ポリアルキルアクリレートおよびポリヒドロキシアルキルアクリレート);ポリメタクリレート類(例えば、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(「PHEMA」)、およびポリヒドロキシプロピルメタクリレート(「PHPMA」);ポリビニル類(例えば、ポリスチレンおよびポリ−N−ビニルピロリドン(「PNVP」);ポリシロキサン類(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン(polydimethyldiphenlysiloxane))、ポリホスファゼン類、およびこれらのコポリマー。米国特許第4,260,725号およびその中に引用されている特許および参考文献(これらは全て、本明細書中で参考として援用される)は、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成するために使用され得る適切なポリマーのより具体的な例を提供する。
【0016】
好ましい実施形態において、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、一般に、得られるIOLが流体様および/または弾性性の行動を示す傾向があるような、比較的低いガラス遷移温度(「T」)を有し、そして代表的に、1以上の出発材料(ポリマーであり得る)を架橋することによって形成され、ここで、各ポリマー出発材料は、少なくとも1つの架橋可能な基を含む。適切な架橋可能な基の例示としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒドリド、アセトキシ、アルコキシ、アミノ、無水物、アリールオキシ、カルボキシ、エノキシ、エポキシ、ハロゲン化物、イソシアノ、オレフィン、ビニルおよびオキシム。より好ましい実施形態において、各ポリマー出発材料は、末端モノマー(エンドキャップとも呼ばれる)を含み、この末端モノマーは、ポリマー出発材料を構成する1種以上のモノマーで同一でも異なってもよいが、少なくとも1つの架橋可能な基を含む。言い換えると、この末端モノマーは、ポリマー出発材料を開始させそして終結させ、そして少なくとも1つの架橋可能な基をその構造の一部として含む。本発明の実施のために必須ではないが、ポリマー開始材料を架橋して実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成するメカニズムは、好ましくは、屈折および/または形状改変調節組成物を含む成分の、刺激によって誘導される重合体化とは別のメカニズムである。例えば、RSMCが光によって誘導される重合体化によって重合体化される場合、従って、ポリマー開始材料は、光によって誘導される重合体化以外の任意のメカニズムによって重合体化される架橋可能な基を有することが、好ましい。
【0017】
実質的に架橋可能な第1ポリマーマトリックスの形成のために特に好ましいクラスのポリマー開始材料は、架橋可能な基(アセトキシ、アミノ、アルコキシ、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ビニル、ヒドリドおよびメルカプトからなる群より選択される)を含む末端モノマーでエンドキャップされたポリシロキサン類(「シリコーン類」としても知られる)である。シリコーンIOLは、可撓性かつ折り曲げ可能である傾向にあるので、一般に、IOL移植手順の間、より小さな切開部が使用され得る。ポリマー開始材料の特に好ましいクラスの例は、ビニル官能性シリコーンとヒドリド官能性シリコーンとの間の、触媒存在下でのヒドロシリル化反応を使用するものである。この触媒は、好ましくは白金金属含有複合体であり、この一般型の系は、米国特許第5,411,553号などに記載の組成物と同様である。
【0018】
本発明において、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、好ましくは鋳型の中で形成される。この形成は、第1ポリマー開始材料および第2ポリマー開始材料由来の前駆物質の混合物、ならびに屈折および/または形状改変組成物および白金触媒を、形状形成鋳型内に注入するかもしくは分配し、そしてこの前駆物質を、屈折および/または形状改変組成物の存在下で硬化させることによって達成される。この硬化は、第1前駆物質および第2前駆物質(ならびに第3前駆物質)の触媒による重合体化を介して達成され、そして高い圧力および制御された温度において起こり得る。
【0019】
実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスが、シリコーンベースのマトリックスである場合、2種の前駆物質が、本発明の実施のために必要である。第1の前駆物質は、1種以上のビニル含有ポリオルガノシロキサン類を含み、そして第2の前駆物質は、シリコーン結合したヒドリド基を有する1種以上のオルガノシリコーン化合物を含む。このシリコーン結合したヒドリド基は、第1前駆物質のビニル基と反応する。
【0020】
第1前駆物質は、好ましくは、1分子あたり平均少なくとも2つのシリコーン結合したビニルラジカルを有する。ビニルラジカルの数は、1分子あたり2つから変動し得る。例えば、第1前駆物質は、2種以上のポリオルガノシロキサン類の混合物であり得、ここで、分子の幾つかは、1分子あたり2つよりも多いビニルラジカルを有し得、幾つかは1分子あたり2つよりも少ないビニルラジカルを有し得る。シリコーン結合したビニルラジカルはポリオルガノシロキサン類のα位および/もしくはω位(すなわち、末端位)に配置される必要はないが、このビニルラジカルの少なくとも幾つかは、これらの位置に配置されることが好ましい。ビニルラジカルは、好ましくは、ポリマー末端に配置される。何故なら、このようなポリシロキサン類は、経済的に産生され、そして申し分のない産物を提供するからである。しかし、第1前駆物質のポリマー性の性質ゆえに、その調製は、構造において幾つかのバリエーションを有する産物を生じ得、そして幾つかのビニルは、これらを末端位に有する目的があっても、末端位に存在しない場合がある。従って、得られたポリオルガノシロキサンは、分岐部位に配置されたビニルラジカルの部分を有し得る。
【0021】
第1前駆物質のポリオルガノシロキサンは、好ましくは本質的に直鎖状のポリマーであり、幾つかの分岐を有し得る。ポリオルガノシロキサンは、シリコーン1原子あたり平均2つより多いオルガノ基を有するシリコーン−酸素−シリコーン骨格を有し得る。好ましくは、第1前駆物質は、末端基にトリオルガノシロキサン単位を有するジオルガノシロキサン単位で作製されるが、少量のモノオルガノシロキサン単位およびSiO単位もまた存在し得る。このオルガノラジカルは、好ましくは、ラジカル1つあたり約10個未満の炭素原子を有し、各々独立して、メチル、エチル、ビニルプロピル、ヘキシルおよびフェニルのような一価の炭化水素ラジカル類、ならびにペルフルオロアルキルエチルラジカル類のような一価の置換炭化水素ラジカル類から選択される。第1前駆物質の例としては、ジメチルビニルシロキシエンドブロック化ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルビニルシロキシエンドブロック化ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシエンドブロック化ポリメチル−(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン、ジメチルシロキサン単位およびメチルフェニルシロキサン単位のジメチルシロキシエンドブロック化ポリジオルガノシロキサンコポリマー、ならびに、ジメチルシロキサン単位およびジフェニルシロキサン単位のメチルフェニルビニルシロキシエンドブロック化ポリジオルガノシロキサンコポリマーなどが挙げられる。ポリジオルガノシロキサンは、ジメチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチル−(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンモノメチルシロキサン単位、モノフェニルシロキサン単位、ジメチルビニルシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位、メチルフェニルビニルシロキサン単位、およびSiO単位のようなシリコーン単位を有し得る。第1前駆物質のポリオルガノシロキサンは、1種のポリマーであっても、ポリマー類の混合物であってもよい。これらのポリマーは、有機ラジカルの少なくとも50%を、メチルラジカルとして有し得る。第1前駆物質として有用な多くのポリオルガノシロキサンが、当該分野で公知であり、市販されている。好ましい第1前駆物質は、25℃で約500〜約200,000センチポイズの粘度を有するジメチルビニルシロキシ単位もしくはメチルフェニルシロキシ単位でエンドブロック化された、ポリジメチルシロキサンおよび/もしくはポリジメチルジフェニルシロキサン、またはこれらのコポリマーである。
【0022】
第2前駆物質としては、1分子あたり少なくとも2つ、好ましくは3つのシリコーン結合したヒドリド基(すなわち、水素原子)を含むオルガノシロキサン化合物が挙げられる。シリコーン結合したヒドリド基の各々は、好ましくは、異なるシリコーン原子に結合される。シリコーン原子の残りの原子価は、二価酸素原子もしくは一価ラジカル(例えば、1つのラジカルあたり1〜6個の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第3級ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、置換アルキルラジカル類、アリールラジカル類、置換アリールラジカル類など)によって充てられる。オルガノシリコーン化合物を含むシリコーン結合したヒドリド基は、以下の型のシロキサン単位を含むホモポリマー、コポリマーおよびこれらの混合物であり得る:RSiO1.5、RSiO、RSiO0.5、RHSiO、HSiO1.5、RHSiO0.5、HSiO、RHSiO0.5、およびSiOであって、ここで、Rは、一価のラジカル(例えば、上で規定したもの)である。例としては、ポリメチル水素シロキサン環状物、トリメチルシロキシおよびメチル水素シロキサンのコポリマー、ジメチル水素シロキシおよびメチル水素シロキサンのコポリマー、トリメチルシロキシとジメチルシロキサンとメチル水素シロキサンとのコポリマー、ジメチル水素シロキサン、ジメチルシロキサンおよびメチル水素シロキサンのコポリマーなどが挙げられる。
【0023】
第1前駆物質および第2前駆物質は、光学素子(特にIOL)に適した実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを産生するように、種々の比で混合可能である。すなわち、本発明の方法に従って産生される材料は、この組成物が目的とする様式で作用可能であるような物理的特性および化学的特性を有する。
【0024】
架橋剤として機能する第3前駆物質を含むさらなる複合材が、本発明に包含され得る。この材料は、第1前駆物質もしくは第2前駆物質と同一であっても異なっていてもよく、そして、本発明の特定の好ましい実施形態に従って産生される材料の粘弾性特性を場合に合わせて調製する(tailor)ために使用され得る。これは、特定の分子量、分枝状構造および官能性の、多官能性シリコーンであり得る。これは、特定の分子量、分枝状構造および官能性の、ビニル含有材料、もしくはヒドリド含有材料であり得、例えば、メチルヒドロシクロシロキサン、C20Si(CAS−68037−53−6)、および他の類似の官能性の材料であり得る。これらの材料は、含まれる特異的な官能基および所望の特性に依存して、他の複合材に添加され得る。好ましい第3前駆物質は、(上記のような)シリコーン結合したヒドリド基もしくはシリコーン結合したビニル基を有する環状シロキサンであるが、これに限定されない。ここで、特定の粘弾性特性(IOLがどのような例えば粘性せん断損失弾性係数G”を示すかを決定し、所望の値に制御され得る)の値を有する、本発明に従って調製された材料に含まれる場合に、この環状シロキサン中に十分な反応性の基が存在する。
【0025】
ポリマーのレオロジー特性は、構造を理解するために使用され得、次いで、この構造が特定の用途においてポリマーの性能にいかに作用するかを理解するために使用され得る。レオロジーは、処方物、分子量、分子量分布および架橋密度の変動の効果を理解するために使用され得る。特に、せん断様式で、低い程度のひずみ(代表的に、約2〜3%のひずみ、いわゆる「ひずみの線状面弾性領域」として知られる)で測定されたポリマーの動的機械特性が、使用され得る。測定される特性としては、せん断複合弾性係数(shear complex modulus)ならびにその構成要素であるせん断保存弾性係数(shear storage modulus)(G’)およびせん断損失弾性係数(shear loss modulus)(G”)が挙げられる。せん断速度もしくは周波数とともに変化すると考えられる値は、ラジアン/秒(rad/秒)で測定される。代表的に、幾つかの桁の強度の周波数の範囲が測定される。例えば、0.01rad/秒〜約100rad/秒の周波数範囲である。このような範囲は、種々の架橋の程度を有する架橋された系の特性を決定する際に有用である。このような特性を研究するために有用な分析技術は、しばしば、動的機械的分光法(DMS)もしくは動的機械的分析器(DMA)と呼ばれる。これらの特性および技術は、ポリマー分野の当業者に周知であり、そして本開示は、このような内容の手引きであることを意図されない。実質的に架橋された第1ポリマーネットワークもしくは実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスおよびRSMCを含む本発明の視点で、DMAは、種々の処方物の効果をレオロジー特性(特に、せん断損失弾性係数G”)において比較し、そして本発明の好ましい処方物において特に有用なその値の範囲を決定するために使用され得る。
【0026】
IOLは、可撓性でありかつ折り曲げ可能であることの両方を必要とし、そしてなお特定の形状を維持する必要があるため、処方物特性を予測し得る技術は、有用であり得る。従って、DMAは、RSMC含量の変動および/または架橋剤を含む第3前駆物質の付加に対する架橋の効果を理解し、そしてこれらの値を比較して、添付の表およびグラフによって示されるような有用な処方物を決定するために使用され得る。図1は、せん断損失弾性係数におけるRSMC(1,000g/モルのビスメタクリレートエンドキャップジメチルシロキサンマクロマー)の量の変動の効果を示す。G”の値は、RSMC濃度の上昇に伴って減少するようである。図2は、架橋剤の含量の変化によるG”の効果を図示する。これらの値は、一定のRSMCレベルにおいて架橋剤の含量を増大することに伴って、上昇するようである。また、G”の測定された周波数範囲にわたって実質的に一定もしくは線形の値を、本開示の目的のために、架橋(もしくは架橋されたネットワークの形成)の指標として採用した。従って、本発明の実施形態によって調製される種々の処方物のG”の範囲を規定することにより、一連の有用なIOLが調製され得る。このような範囲は、本発明の実施形態を使用して調製された材料について、図1および図2において示される。特に好ましい実施形態において、以下の反応産物:(a)1分子あたり少なくとも2つのシリコーン結合したビニルラジカルを有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン分子をさらに含む、第1複合材;(b)1分子あたり少なくとも3つのシリコーンヒドリド基を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン分子を含む、第2前駆物質;(c)シリコーンビニルラジカルへのシリコーン結合したヒドリドの付加を触媒することが公知である白金族金属含有触媒;ならびに(d)屈折および/または形状改変組成物を含む、製造された光学素子は、0.01ラジアン/秒〜約100ラジアン/秒の試験周波数範囲にわたって1×10〜約1.25×10Paの間のせん断損失弾性係数を示し得る。別の好ましい実施形態において、製造された光学素子は、架橋剤をさらに含み、この架橋剤は、1分子あたり少なくとも3つのビニル基を有するシリコーン化合物、1分子あたり少なくとも3つの水素化シリコーン部分を有するシリコーン化合物であってこのヒドリドは異なるシリコーン原子上に存在するシリコーン化合物、またはこれらの組み合わせからなる群より選択され、この架橋剤は、光学素子の約10重量%までの量で存在し、この光学素子は、本発明に方法を使用して得られ得る架橋の程度に依存して、少なくとも約1×10もしくはそれより高いせん断損失弾性係数G”を示す。
【0027】
白金族金属含有触媒成分が、本発明に実施形態において使用されることが好ましい。白金族金属触媒成分は、シリコーンベースのビニルラジカルへのシリコーン結合した水素原子(ヒドリド基)の付加を触媒することが公知である任意の白金族金属含有触媒であり得る。白金族金属含有触媒は、適合性である任意の公知の形態であり得、例えば、塩化白金(IV)酸、白金の塩、塩化白金(IV)水素酸および種々の複合体(例えば、白金金属含有族とのシリコーン複合体)である。白金族金属含有触媒は、任意の触媒量(例えば、第1前駆物質および第2前駆物質を合わせた重量に基づいて少なくとも0.1重量ppmの白金族金属(金属元素として計算)を提供するために十分な量)で使用され得る。好ましくは、第1前駆物質および第2前駆物質を合わせた重量に基づいて少なくとも約1重量ppm、例えば、少なくとも約20重量ppm、もしくは少なくとも30重量ppmまたは少なくとも約40重量ppmの白金族金属が、使用される。
【0028】
本発明の移植片の製造において使用される屈折および/または形状改変組成物(RSMC)は、上述の通りであり、そして好ましくは、生体適合性を満たす。屈折および/または形状改変組成物は、刺激によって誘導される重合体化が可能であり、そして以下である限り、1種の成分でも複数の成分でもよい:(i)実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスの形成に適合性であり;(ii)第1ポリマーマトリックスの形成後に刺激によって誘導される重合体化が可能であり続け;(iii)第1ポリマーマトリックス内に自由に拡散可能である。一般に、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスが形成されるために使用されるモノマーと同じ型のモノマーが、RSMCの成分として使用され得る。このモノマーは、しばしば、刺激によって誘導される重合体化が可能な官能基を含む。しかし、屈折および/または形状改変組成物が、第1ポリマーマトリックス中に拡散可能であり、この屈折および/または形状改変組成物は、一般に、第1ポリマーマトリックスネットワークよりも小さい(すなわち、より小さな分子量を有する)(すなわち、この拡散可能RSMC材料は、例えば実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスの架橋間の分子量より小さな分子量の材料である)傾向にあることが、好ましい(この概念は周知である)。1種以上のモノマーに加えて、屈折および/または形状改変組成物は、RSMCからの第2反応産物(もしくは第2ポリマーマトリックス)の形成を促進する他の成分(例えば、開始剤および合成剤)を含み得る。さらに、天然の目と同様のUV遮断特性を提供するために、UV吸収剤もまた、この屈折および/または形状改変組成物の成分として組み込まれ得る。
【0029】
好ましい実施形態において、この刺激によって誘導される重合体化は、光重合体化である。言い換えると、屈折および/または形状改変組成物を構成する1種以上の成分は、各々好ましくは、光重合体化可能な少なくとも1つの基を含む。このような光重合体化可能な基の例示的な例としては、アクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニルおよびビニルが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましい実施形態において、RSMCは、光開始剤(もしくは遊離のラジカルを産生するために使用される任意の化合物)を、単独でまたは合成剤の存在下で含む。適切な光開始剤の例としては、アセトフェノン類(例えば、置換ハロアセトフェノン類およびジエトキシアセトフェノン);2,4−ジクロロメチル−1,3,5−トリアジン;ベンゾインメチルエーテル;およびo−ベンゾイルオキシイミノケトンが挙げられる。適切な合成剤の例としては、p−(ジアルキルアミノ)アリールアルデヒド;N−アルキルインドリリデン;およびビス[p−(ジアルキルアミノ)ベンジリデン]ケトンが挙げられる。別の実施形態において、RSMCとしては、UV吸収剤が挙げられる。UV吸収剤の例としては、ベンゾフェノンおよびベンゾトリアゾールのファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
IOLの可撓性および折り曲げ可能である特性ゆえに、特に好ましいクラスのRSMCは、光重合体化可能な基を含む末端シロキサン部分でエンドキャップされたポリシロキサンである。このようなRSMCマクロマーの例示的な表現は、以下である。
【0031】
X−Y−X
ここで、Yは、任意の数のシロキサン単位から形成されるモノマーであっても、ホモポリマーであっても、もしくはコポリマーであってもよいシロキサンであり、XおよびXは、同一であっても異なっていてもよく、各々独立して、光重合体化可能な基を含む末端シロキサン部分である。Yの例示的な例としては、
【0032】
【化4】

および
【0033】
【化5】

が挙げられ、ここで、mおよびnは、各々独立した整数であり、そしてR、R、RおよびRは、水素、アルキル(第1級アルキル、第2級アルキル、第3級アルキル、シクロアルキル)、アリールおよびヘテロアリールからなる群より各々独立して選択される。好ましい実施形態において、R、R、RおよびRは、C〜C10アルキルもしくはC〜C10フェニルである。比較的高いアリール含量を有するRSMCマクロマーは、本発明のレンズの屈折率において取り大きな変化を生じることが見出されており、一般に、R、R、RおよびRの少なくとも1つはアリールであることが好ましく、特にフェニルであることが好ましい。より好ましい実施形態において、R、RおよびRは、同一であって、メチル、エチルもしくはプロピルであり、そしてRがフェニルである。別の実施形態において、R、R、RおよびRは、メチルである。
【0034】
XおよびX(またはRSMCマクロマーの描かれ方に依存してXおよびX)の例示は、各々以下:
【0035】
【化6】

であり、ここで、
およびRは、各々独立して水素、アルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり、そしてZは、光重合体化可能な基である。
【0036】
好ましい実施形態において、RおよびRは、各々独立して、C〜C10アルキルもしくはC〜C10フェニルであり、そしてZは、以下からなる群より選択される部分を含む光重合体化可能な基である:アクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニルおよびビニル。より好ましい実施形態において、RおよびRは、メチル、エチルもしくはプロピルであり、そしてZは、アクリレート部分もしくはメタクリレート部分を含む光重合体化可能な基である。
【0037】
特に好ましい実施形態において、RSMCマクロマーは、以下の式のマクロマーである。
【0038】
【化7】

ここで、XおよびXは同一であり、そしてR、R、RおよびRは、上で規定された通りである。このようなRSMCマクロマーの例示としては、ビニルジメチルシラン基でエンドキャップされたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー、メタクリルオキシプロピルジメチルシラン基でエンドキャップされたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサンコポリマー、およびメタクリルオキシプロピルジメチルシラン基でエンドキャップされたジメチルシロキサンである。
【0039】
任意の適切な方法が使用され得るが、トリフル酸(triflic acid)の存在下での1以上の環状シロキサン類の開環反応が、本発明のRSMCマクロマーの1つのクラスを作製する特に効率のいい方法であることが見出されている。簡潔にいうと、この方法は、環状シロキサンを以下
【0040】
【化8】

の式の化合物に、トリフル酸の存在下で接触させる工程を包含し、ここで、R、RおよびZは、前に規定した通りである。環状シロキサンは、環状シロキサンモノマー、環状シロキサンホモポリマー、もしくは環状シロキサンコポリマーであり得る。あるいは、1種以上の環状シロキサンが使用されてもよい。例えば、環状ジメチルシロキサンテトラマー(D)および環状メチル−フェニルシロキサントリマー(D’)は、トリフル酸の存在下で、ビス−メタクリルオキシプロピルテトラメチルジシロキサン(末端基)と接触して、ジメチル−シロキサンメチル−フェニルシロキサンコポリマーを形成し、このコポリマーは、メタクリルオキシプロピル−ジエチル(dhethyl)シラン基でエンドキャップされる。このコポリマーは、特に好ましいRSMCマクロマーである。別の好ましいRSMCマクロマーは、末端基を有するDとのみ接触させて、メタクリルオキシプロピル−ジエチル(dhethyl)シラン基でエンドキャップされたジメチルシロキサンを形成することにより、合成される。
【0041】
本発明のIOLは、本発明の方法において、バリエーションで製造され得、それによって、その中に拡散しているRSMCを含む1種以上の成分を有する実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスが生じ、ここで、このRSMCは、刺激によって誘導される重合体化によって第2ポリマーマトリックスを形成することが可能である。一般に、本発明のIOLを作製する方法は、本発明の光学素子を作製する方法と同じであって、上述してきた本発明の一般方法である。しかし、形成の種類(注入、圧縮など)は、作製される光学素子に依存する。例えば、この光学素子がプリズムである場合、プリズムの形状の鋳型が使用される。同様に、光学素子が眼内レンズである場合、眼内レンズ鋳型が使用される、などである。従って、本発明の方法は、調製の温度および/または光学素子(例えばIOL)を調製するために使用される温度の変動を包含し得る。本発明の特定の実施形態に従って光学素子を調製するための圧力は、およそ大気圧(すなわち、当業者に理解されるように、通常の大気の圧力の代表的な変動内の圧力である)から高い圧力まで変動し得る。特定の実施形態において、この圧力は、約20,000ポンドまで、およびそれ以上に及び得る。より好ましい実施形態において、この圧力は、約10,000ポンド〜約16,000ポンドの範囲であり得る。
【0042】
一般に、本発明の特定の実施形態に従う光学素子を調製するための温度範囲は、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成するために使用される反応混合物のおよそ凝固点(反応中心の拡散が開始する点)からこの方法において使用される触媒の分解温度まで変動し得る。本発明の別の実施形態において、この温度は、およそ室温から約50℃までの範囲であり得る。特定の好ましい実施形態において、この温度は、約30℃から約40℃までの範囲であり得る。
【0043】
また、特定の実施形態において、この温度および/または圧力は、一定であってもよく、もしくは可変であってもよく、あるいは、一定の温度もしくは圧力と可変の温度もしくは圧力との組み合わせであってもよい。本発明の文脈において、用語「約」は、測定値の通常の偏差を示すように解釈される。
【0044】
眼内レンズを調製することに関する本発明の方法の主要な利点は、IOL特性が、目の中への移植後に非侵襲的に改変され得ることである。例えば、目の長さおよび角膜の測定の不完全さ、ならびにレンズの位置のずれおよび創傷治癒に起因する能力計算の任意の誤差は、インサイチューで、外科的外来処置の後に、非侵襲的に改変され得る。
【0045】
IOL屈折率の変化に加えて、第2のポリマーマトリックスの刺激によって誘導される形成が、予測可能な様式でレンズの曲率を変えることによってIOL能力に影響を及ぼすことが見出されている。さらに、本発明の方法に従って産生されたレンズの粘弾性特性(すなわち、架橋密度)を制御する能力は、最終的なIOLの調節のさらなる制御を提供する。結果として、両メカニズムは、IOLが目の中に移植された後に、IOL特性(例えば能力)を調節するために利用され得る。一般的に、実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスおよびその中に拡散したRSMCを有するIOLを提供するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)レンズの少なくとも一部分を刺激に曝露し、ここでその刺激が、RSMCの反応を誘導して、第2の反応産物を形成する工程。この工程は、相互浸透可能なポリマーネットワーク(IPN)を形成し得る重合体化反応の形態をとってもよい。移植および創傷治癒の後、IOL特性が改変される必要がない場合、曝露される部分はレンズ全体である。レンズ全体の曝露は、移植されたレンズのこの時存在している(then−existing)特性を固定(lock−in)する。
【0046】
しかし、レンズの特徴(例えば、その能力)が改変される必要がある場合、次いで、レンズの一部分(レンズ全体より幾らか小さい部分)のみが、曝露される。1つの実施形態において、本発明のIOLを移植する方法は、さらに以下の工程を包含する:
(b)一定の時間の間隔を待つ工程;および
(c)レンズのこの部分を刺激に再度曝露する工程。
【0047】
この手順は、一般に、曝露されたレンズ部分におけるRSMCのさらなる反応(例えば、重合体化)を誘導する。工程(b)および工程(c)は、眼内レンズ(もしくは光学素子)が所望のレンズ特性に達するまでの任意の回数繰り返され得る。この時点で、この方法は、レンズ全体を刺激に曝露し、所望のレンズ特性を固定する工程をさらに包含し得る。
【0048】
別の実施形態において、レンズ特性が改変される必要がある場合、本発明のIOLを提供するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)レンズの第1の部分を刺激に曝露し、それによってこの刺激は、RSMCの重合体化を誘導する工程;および
レンズの第2の部分を刺激に曝露する工程。
【0049】
この第1レンズ部分および第2レンズ部分は、レンズの異なる領域を表すが、重複してもよい。必要に応じて、この方法は、第1レンズ部分の曝露と第2レンズ部分の曝露との間の時間の間隔を包含し得る。さらに、この方法は、第1レンズ部分および/または第2レンズ部分を、任意の回数(曝露の間の時間間隔をおいてもしくはおかずに)再曝露する工程を、さらに包含し得るか、あるいは、レンズのさらなる部分(例えば、第3レンズ部分、第4レンズ部分など)を曝露する工程を包含し得る。一旦、所望の特定が達成されると、次いで、この方法は、レンズ全体を刺激に曝露し、所望のレンズ特性を固定する工程をさらに包含し得る。
【0050】
一般に、1以上の曝露された部分の位置は、矯正される屈折誤差の型に依存して変動する。例えば、1つの実施形態において、IOLの曝露された部分は、レンズの中央領域である光学領域である(例えば、直径約4mm〜約5mm)。あるいは、1以上の曝露されたレンズ部分は、IOLの外周に沿ってもよく、もしくは特定の経線に沿ってもよい。好ましい実施形態において、この刺激は、光である。より好ましい実施形態において、この光は、レーザー源由来である。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
種々の量の(a)ジアセトキシメチルシランでエンドキャップされたポリジメチルシロキサン(「PDMS」)(36,000g/mol)、(b)ビニルジメチルシランでエンドキャップされたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー(「DMDPS」)(15,500g/mol)、および(c)UV光開始剤、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(「DMPA」)(表1に示される通り)を含む材料を、作製しそして試験した。PDMSは、第1ポリマーマトリックスを形成するポリマーの前駆物質であり、そしてDMDPSおよびDMPAは、共にRSMCを構成する。
【0052】
(表1)
【0053】
【表1】

DMDPSに対する重量%。
【0054】
簡潔にいうと、適切な量のPDMS(Gelest DMS−D33;36,000g/mol)、DMDPS(Gelest PDV−0325;3.0〜3.5モル%ジフェニル、15,500g/mol)、およびDMPA(AldrichDMDPSに対して1.5重量)を、一緒にアルミニウム鍋の中で計量し、DMPAが溶解するまで室温にて手動で混合し、そして減圧下(5mtorr)で2〜4分間脱気して、気泡を除去した。3枚のスライドガラスをプリズムの形態にセロテープ(登録商標)によって貼り合わせ、そして一端をシリコーン充填剤で密封して作製した鋳型の中に、得られたシリコーン混合物を注ぐことによって、光感受性のプリズムを製造した。このプリズムは、約5cm長であり、そして3枚のスライドガラスの寸法は、各々約8mmである。プリズム中のPDSMを、湿気硬化し、そして暗闇で室温にて7日間保存し、得られた第1ポリマーマトリックスが見苦しくなく、曇りがなく、そして透明であることを確かめた。
【0055】
光開始剤の量(1.5重量%のDMPA)を、25%に固定したRSMCマクロマー含量での事前の実験に基づいて、評価した。最大の屈折率調節を、1.5重量%および2重量%の光開始剤を含む組成物について観察した。一方で、屈折率の飽和は、5重量%で起こった。
【0056】
(実施例2)
(RSMCマクロマーの合成)
スキーム1によって図示したように、種々の比の市販の環状ジメチルシロキサンテトラマー(「D」)、環状メチルフェニルシロキサントリマー(「D」)を、トリフル酸によって開環し、そしてビス−メタクリルオキシルプロピルテトラメチルジシロキサン(「MPS」)を、1ポット合成で反応させた。米国特許第4,260,725号;Kunzler,J.F.,Trends in Polymer Science,4:52−59(1996);Kunzlerら,J.Appl.Poly.Sci.,55:611−619(1995);およびLaiら,J.Poly.Sci.A.Poly.Chem.,33:1773−1782(1995)。
【0057】
(スキーム1)
【0058】
【化9】

簡潔にいうと、適切な量のMPS、DおよびD’を、バイアル中で1.5〜2時間撹拌した。適切な量のトリフル酸を加え、そして得られた混合物を、さらに室温で20時間撹拌した。この反応混合物を、ヘキサンで希釈し、(この酸を)炭酸水素ナトリウムで中性化し、そして無水硫酸ナトリウムの添加によって乾燥させた。濾過およびヘキサンのロートエバポレーション(rotoevaporation)後、RSMCマクロマーを、活性炭カラムを通したさらなる濾過によって精製した。RSMCマクロマーを、70〜80℃の間で5mtorrの圧力で12〜18時間乾燥させた。
【0059】
フェニル、メチルおよび末端基組み込みを、重水によって水和した(deuterated)クロロホルム中で、内部標準テトラメチルシラン(「TMS」)なしで実施したH−NMRスペクトルから計算した。合成RSMCマクロマーの幾つかについての化学シフトの例示は、以下である。5.58モル%のフェニル含有1,000g/モルのRSMCマクロマー(以下の反応によって作製される:4.85g(12.5mmol)のMPS;1.68g(4.1mmol)のD’;5.98g(20.2mmol)のD;および108μl(1.21mmol)のトリフル酸:δ=7.56〜7.57ppm(m,2H)芳香族,δ=7.32〜7.33ppm(m,3H)芳香族,δ=6.09ppm(d,2H)オレフィン,δ=5.53ppm(d,2H)オレフィン,δ=4.07〜4.10ppm(t,4H)−O−CCHCH−,δ=1.93ppm(s,6H)メタクリレートのメチル,δ=1.65〜1.71ppm(m,4H)−O−CHCH−,δ=0.54〜0.58ppm(m,4H)−O−CHCH−Si,δ=0.29〜0.30ppm(d,3H),C−Si−フェニル,δ=0.04〜0.08ppm(s,50H)骨格の(CSi。
【0060】
5.26モル%のフェニル含有2,000g/モルのRSMCマクロマー(以下の反応によって作製される:2.32g(6.0mmol)のMPS;1.94g(4.7mmol)のD’;7.74g(26.1mmol)のD;および136μl(1.54mmol)のトリフル酸:δ=7.54〜7.58ppm(m,4H)芳香族,6=7.32〜7.34ppm(m,6H)芳香族,δ=6.09ppm(d,2H)オレフィン,δ=5.53ppm(d,2H)オレフィン,δ=4.08〜4.11ppm(t,4H)−O−CCHCH−,δ=1.94ppm(s,6H)メタクリレートのメチル,δ=1.67〜1.71ppm(m,4H)−O−CHCH−,δ=0.54〜0.59ppm(m,4H)−O−CHCH−Si,6=0.29〜0.31ppm(m,6H),C−Si−フェニル,δ=0.04〜0.09ppm(s,112H)骨格の(CSi。
【0061】
4.16モル%のフェニル含有4,000g/モルのRSMCマクロマー(以下の反応によって作製される:1.06g(2.74mmol)のMPS;1.67g(4.1mmol)のD’;9.28g(31.3mmol)のD;および157μl(1.77mmol)のトリフル酸:μ=7.57〜7.60ppm(m,8H)芳香族,δ=7.32〜7.34ppm(m,12H)芳香族,δ=6.10ppm(d,2H)オレフィン,δ=5.54ppm(d,2H)オレフィン,δ=4.08〜4.12ppm(t,4H)−O−CCHCH−,δ=1.94ppm(s,6H)メタクリレートのメチル,δ=1.65〜1.74ppm(m,4H)−O−CHCH−,δ=0.55〜0.59ppm(m,4H)−O−CHCH−Si;δ=0.31ppm(m,11H),C−Si−フェニル,δ=0.07〜0.08ppm(s,272H)骨格の(CSi。
【0062】
同様に、ジメチルシロキサンポリマーを何らメチルフェニルシロキサン単位を用いずに合成し、そしてメチルアクリルオキシプロピルジメチルシランでエンドキャップするために、D対MPSの比を、D’の取り込みなしで変えた。
【0063】
マクロマーの重量を、H−NMRおよびゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)によって計算した。分子量を、ユニバーサルキャリブレーション方法によって、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)標準を用いて得た。表2は、トリフル酸開環重合体化によって合成した他のRSMCマクロマーの特徴を示す。
【0064】
(表2)
【0065】
【表2】

ここで、Mn=平均分子量の数、およびn=ナトリウムD−ラインで測定した屈折率
10〜40重量%で、3〜6.2モル%フェニル含量を有する分子量1000〜4000g/モルのRSMCマクロマーは、完全に混合され、生体適合性であり、そしてシリコーンマトリックス中に組み込まれた場合に光学的に透明なプリズムおよびレンズを形成する。高いフェニル含量(4〜6モル%)および低分子量(1,000〜4,000g/モル)を有するRSMCマクロマーは、表1において使用されるRSMCマクロマー(ビニルジメチルシランでエンドキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー(「DMDPS」)(3〜3.5モル%ジフェニル含量,15,500g/モル))と比較して、屈折率変化を2.5倍増加し、そして拡散の速度を3.5〜5.0倍上昇させた。
【0066】
(実施例3)
0.23%の光開始剤(Irgacure 651,Ciba)の30% 1,000g/モル ビスメタクリレートエンドキャップポリジメチルシロキサン(RSMCマクロマー)中の混合によって、屈折および/または形状改変調節組成物を、作製した。この混合物に、70%の36,000g/モル ジアセトキシメチルシリルエンドキャップポリジメチルシロキサン(第1前駆物質)を添加し、そしてこの組成物全体をよく混合した。この混合物を、減圧下で10分間脱気し、次いで、シリンジに移した。20ゲージのカニューレを使用し、最終処方物をバブルラッププラスチック(bubble wrap plastic)(すなわち、「鋳型」)のバブル内に注入し、そして室温で24時間硬化させた。硬化した材料は、バブルの形状に適合し、そして所望の機械的特性を保有していた。
【0067】
(実施例4)
0.23%の光開始剤(Irgacure 651,Ciba)および0.02%のUVAM UV−吸収剤(2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ビニルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール,Chemica)の30% 1,000g/モル ビスメタクリレートエンドキャップジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサンコポリマー(マクロマー)中の混合によって、RSMCを作製した。この混合物に、35%の市販のシリコーン(MED−6820,NuSil)のB部液体成分および1〜5%のメチルヒドロシクロシロキサン架橋剤を添加し、そしてこの組成物全体を混合し、そして減圧下で10分間脱気した。最後に、この混合物に、35%の市販のシリコーン(MED−6820,NuSil)のA部液体成分および1滴の白金触媒(PC075,United Chemical Technology)を添加し、そしてこの組成物を混合し、そして減圧下で脱気した。この最終処方物を、シリンジに移した。20ゲージのカニューレを用い、これをバブルラッププラスチックのバブル内に注入するか,もしくはその医薬成分であるビタミンEを注いだ経口投薬カプセル内に注入した。このシリコーン混合物を,24時間40℃で硬化させた。硬化した材料は、バブルもしくはカプセルの形状に適合し、そして所望の機械的特性を保有していた。
【0068】
(実施例5)
0.23%の光開始剤(Irgacure 651,Ciba)および0.02%のUV−吸収剤(UVAM)の30% 1,000g/モル ビスメタクリレートエンドキャップポリジメチルシロキサン(マクロマー)中の混合によって、RSMCを作製した。この混合物に、35%の市販のシリコーン(MED−6820,NuSil)のB部液体成分および約1〜5%のメチルヒドロシクロシロキサン(CAS−68037−53−6)架橋剤を添加し、そしてこの組成物全体を混合し、そして減圧下で10分間脱気した。最後に、この混合物に、35%の市販のシリコーン(MED−6033,NuSil)のA部液体成分および1滴の白金触媒(PC075,United Chemical Technology)を添加し、そしてこの組成物を混合し、そして減圧下で脱気した。この最終処方物を、シリンジに移した。20ゲージのカニューレを使用し、最終処方物をバブルラッププラスチック(鋳型として寄与する)のバブル内に注入した。このシリコーン混合物を、35℃で24時間硬化させた。硬化した材料は、バブルの形状に適合し、そして所望の機械的特性を保有していた。
【0069】
(実施例6)
0.23%の光開始剤(Irgacure 651,Ciba)および0.02%のUV−吸収剤(UVAM)の30% 1,000g/モル ビスメタクリレートエンドキャップポリジメチルシロキサン(マクロマー)中の混合によって、RSMCを作製した。この混合物に、35%のシリコーンベースポリマー(MED−6820に類似する)および適切な量の架橋剤を添加し、そしてこの組成物全体を混合し、そして減圧下で10分間脱気した。最後に、この混合物に、35%のベースポリマーを白金触媒と共に添加し、そしてこの組成物を混合し、そして減圧下で脱気した。この最終処方物を、シリンジに移した。20ゲージのカニューレを使用し、最終処方物をバブルラッププラスチックのバブル内に注入するか、または2枚のコンタクトレンズの縁を糊付けして作製することによって鋳型を形成した袋内に注入した。得られたシリコーン混合物を、35℃で24時間硬化させた。硬化した材料は、使用した鋳型の形状に適合し、そして所望の機械的特性を保有していた。
【0070】
(実施例7)
バイアル中にて、0.00152gのIrgacure 369(Ciba,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1)光開始剤を、0.00160gのUVAM UV−吸収剤と混合し、そして1.20000gの1,000g/モルのマクロマーを計量し、そして完全に混合した。このバイアルに、1.40000gの市販のシリコーン(MED−6820)のB部(2部のシリコーンエラストマーがNuSil Technologyによって作製される(ロット番号20982))を添加し、そしてこの成分を完全に混合して、ラベルを貼った。次に、別のバイアルにおいて、1.40000gの市販のシリコーン(MED−6820)のA部(NuSil Technology,ロット番号20982)を0.01540gの白金含有触媒PC075(Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体UCT,ロット番号2005060)と共に計量し、そしてこの成分を、完全に混合してラベルした。両バイアルを、気泡を除去するために減圧下で脱気した。第1混合物を含むバイアルに、1.4gの第2混合物を添加し、そして成分を完全に混合した。混合物全体(約4g)を脱気し、そして1mm厚のスペーサーを有するクロムプレート(2x2 in)上に注ぎ、そして別のクロムプレートを上に置いて、圧縮鋳型を形成した。サンドイッチされた材料を、Carver press中で約10,000ポンドで圧縮し、40℃で48時間維持した。RSMCを含有する2”×2”×1mmの硬化したシリコーン板もしくはフィルムを、回収した。
【0071】
(実施例8)
バイアル中にて、0.0092gのIrgacure 651(Ciba,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)光開始剤、0.0016gのUVAM UV−吸収剤、および1.2000gの1,000g/モルのビスメタクリレートエンドキャップポリジメチルシロキサンマクロマーを、完全に混合した。このバイアルに、1.4000gの市販のシリコーン(MED−6820)のB部(ロット番号20982)を添加し、そしてこの成分を完全に混合して、ラベルを貼った。別のバイアルにおいて、1.4000gの市販のシリコーン(MED−6820)のA部(ロット番号20982)を計量し、そして0.0154gのPt−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体触媒PC075(UCT,ロット番号2005060)を添加して、そしてこの成分を、完全に混合してラベルした。両バイアルを、気泡を除去するために減圧下で脱気した。第1混合物を含むバイアルに、1.4gの第2混合物を添加し、そして成分を完全に混合した。混合物全体(約4g)を脱気し、そして1mm厚のスペーサーを有するクロムプレート(2x2 in)上に注いだ。第2のクロムプレートをスペーサーの上に置いて、サンドイッチされたクロムプレートの間の混合物を、Carver press中で10,000ポンドで圧縮し、これを40℃で48時間維持して硬化させた。RSMCを含有する2”×2”×1mmの硬化したシリコーン板もしくはフィルムを、回収した。
【0072】
(実施例9)
バイアル中にて、0.0092gのIrgacure 651(Ciba,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)光開始剤、0.0008gのUVAM UV−吸収剤、および1.2000gの1,000g/モルのビスメタクリレートエンドキャップポリジメチルシロキサンマクロマーを計量し、そしてこれらが完全に溶解するまで完全に混合した。これらのサンプルを、容器をアルミニウムホイルで覆うことにより、周囲の光の曝露から注意して保護した。このバイアルに、1.4000gの市販のシリコーン(MED−6820)のB部(ロット番号20982)を添加し、そしてこの成分を完全に混合して、ラベルを貼った。別のバイアルにおいて、1.4000gの市販のシリコーン(MED−6820)のA部(ロット番号20982)を計量し、そして0.0184gのPt−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体触媒PC075(UCT,ロット番号2005060)を添加して、そしてこの成分を、完全に混合してラベルした。両バイアルを、気泡を除去するために減圧下で脱気した。第1混合物を含むバイアルに、1.4gの第2混合物を添加し、そして成分を完全に混合した。混合物全体を脱気し、そして1mm厚のスペーサーを有するクロムプレート(2x2 in)上に注ぎ、そして別のクロムプレートを上に置いて、圧縮鋳型を形成した。サンドイッチされたクロムプレートの間のシリコーン混合物を、Carver press中で10,000〜15,000ポンドで圧縮し、これを40℃で48時間維持して硬化させた。RSMCを含有する2”×2”×1mmの硬化したシリコーン板もしくはフィルムを、回収した。
【0073】
(実施例10)
上記実施例に従って調製した板もしくはフィルムから切り出した2mm厚の8mmのディスクを、動的機械的分光法(DMA)をせん断様式で用いて、35℃で0.01〜100rad/秒の周波数範囲で、平行するプレートの間で試験し、せん断損失弾性係数G”(エラストマー材料の架橋を示す)を決定した。試験した周波数範囲にわたって比較的一定であるG”の値は、IOL処方物における十分な実質的な架橋の指標である。これらのスペクトルを、図1および図2に示し、データのまとめを表3および表4に示す。
【0074】
(表3)
(0.01rad/秒および100rad/秒における、RSMCマクロマー付加レベル0〜30%についてのG”値)
【0075】
【表3】

(表4)
(30% RSMC含有の実質的に架橋されたポリシロキサンマトリックス中のG”値における、メチルシクロシロキサン架橋剤付加レベルの効果)
【0076】
【表4】

表およびグラフから、RSMCマクロマー含量が増大するにつれせん断損失弾性係数が低下することがわかり、このことは、サンプルの有効な架橋の低下を示す。しかし、架橋剤メチルシロキサンの添加は、レンズ材料中の架橋を有効に制御するために使用され得る。特に、30%のRSMC化合物を含有する光学素子処方物へのこの特定の架橋剤の10重量%レベルでの添加(表4)は、約1%のRSMCマクロマー添加しか有さない表3に列挙した処方物のG”値と、実質的に類似のG”値を示すことに留意されたい。
【0077】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、種々の変更、置換および改変が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく本明細書中で行われ得ることが、理解されるべきである。さらに、本発明の用途の範囲は、本明細書中に記載されたプロセス、機械、製造、対象の組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることを意図されない。本発明の開示から当業者が容易に理解するように、本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、もしくは実質的に同じ結果を達成する、現在存在するプロセス、機械、製造、対象の組成物、手段、方法もしくは工程または後に開発されるプロセス、機械、製造、対象の組成物、手段、方法もしくは工程が、本発明に従って利用され得る。従って、添付の特許請求の範囲は、このようなプロセス、機械、製造、対象の組成物、手段、方法もしくは工程の範囲内を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従って調製された実質的に架橋された第1ポリマーマトリックス中の、1種のRSMCの0重量%から30重量%までの量の変化によって生じる、せん断損失粘弾性係数G”に対する効果を示すグラフプロットである。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従って調製された約30%のRSMC化合物を含む実質的に架橋された第1ポリマーマトリックス中に組み込まれた、架橋剤の0重量%から10重量%までの量の変化によって生じる、せん断損失粘弾性係数G”に対する効果を示すグラフプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を製造する方法であって、該方法は、以下:
(a)第1前駆物質と屈折および/または形状改変組成物(RSMC)とを含む、第1複合材を調製する工程;
(b)第2前駆物質と該第1前駆物質および該第2前駆物質のための触媒とを含む第2複合材を調製する工程;
(c)該第1複合材と該第2複合材とを混合し、反応混合物を形成する工程;
(d)該反応混合物を鋳型に入れる工程;
(e)該反応混合物から実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスを形成する工程であって、該実質的に架橋された第1ポリマーマトリックスは、該実質的に架橋された第1ポリマーマトリックス中に拡散した該RSMCを有する工程;ならびに
(f)該光学素子を該鋳型から取り出す工程
を、包含する方法。
【請求項2】
少なくとも1種の第3複合材を添加する工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセスであって、該第3複合材は第3前駆物質を含み、該第3前駆物質はさらに架橋剤を含む、プロセス。
【請求項3】
前記実施的に架橋された第1ポリマーマトリックスを圧力下で形成する工程をさらに包含する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記圧力は、およそ大気圧から1インチ平方あたり約20,000ポンドまでである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記圧力は、1インチ平方あたり約10,000から1インチ平方あたり約20,000ポンドまでの範囲内である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記圧力は、一定であるか、可変であるか、または一定の圧力と可変の圧力との組み合わせである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応混合物が、該反応混合物の凝固点より高い温度から前記触媒の分解温度までの温度で、前記鋳型中で形成される工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応混合物が、およそ室温から約50℃までの範囲内の温度で、前記鋳型中で形成される工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記温度が、約30℃〜約40℃の範囲内である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応混合物が、一定の温度で、可変温度範囲にわたって、または一定の温度と可変温度範囲との組み合わせにわたって、前記鋳型中で形成される工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1前駆物質は、1分子あたり少なくとも2つのシリコーン結合したビニルラジカルを有する少なくとも1種のポリシロキサン分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Si−H結合した基を2より多く有する単独のシリコーン原子が存在しない場合、前記第2前駆物質は、少なくとも3つのシリコーン結合したヒドリド基を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋剤は、1分子あたり少なくとも3つのビニル基を有するビニルシリコーン化合物、および1分子あたり少なくとも3つの水素化シリコーン部分を有するビニルシリコーン化合物からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記架橋剤は、15重量%までの量、好ましくは0〜10重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒は、シリコーン結合したビニルラジカルへのシリコーン結合したヒドリドの付加を触媒することが公知である白金族金属含有触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒は、前記反応混合物中に、金属元素として計算した場合、少なくとも約0.1重量ppmの白金族金属を提供するために十分に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RSMCは、生体適合性である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記RSMCは、ポリシロキサンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリシロキサンは、刺激によって誘導される重合体化が可能な官能基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記官能基は、アクリレート、アルコキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニルおよびビニルからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記屈折および/または形状改変化合物は、光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記光開始剤は、アセトフェノン、2,4−ジクロロメチル−1,3,5トリアジン、ベンゾインメチルエステル、O−ベンゾイルオキシイミノ−ケトンおよびこれらのシリコーン誘導体からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光学素子を激しく刺激し、それによって前記RSMCが反応産物を形成させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記反応産物は、ポリマーであるか、または相互浸透するポリマーネットワークである、請求項23
に記載の方法。
【請求項25】
前記RSMCは、式
X−Y−X
のマクロマーおよび光開始剤を含み、該式中、Yは、
【化1】

であり、Xは、
【化2】

であり、そしてXは、
【化3】

であり、該式中、mおよびnは、各々独立した整数であり、そしてR、R、R、R、RおよびRは、水素、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より各々独立して選択され、そしてZは、光重合可能な基である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記R、R、およびR、RおよびRは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より選択され、そしてRは、フェニルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記RSMCは、前記光学素子の約45重量%までを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に従って調製される、光学素子。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか一項に従って調製される、眼内レンズ。
【請求項30】
製造された光学素子であって、該光学素子は、以下:
(a)1分子あたり少なくとも2つのシリコーン結合したビニルラジカルを有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン分子をさらに含む、第1複合材;
(b)1分子あたり少なくとも3つのシリコーンヒドリド基を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン分子を含む、第2前駆物質;
(c)シリコーンビニルラジカルへのシリコーン結合したヒドリドの付加を触媒することが公知である白金族金属含有触媒;
(d)屈折および/または形状改変組成物;
(e)UV吸収剤
の反応産物を含み、該反応産物は、0.01ラジアン/秒〜約100ラジアン/秒の試験周波数範囲にわたって1×10〜約1.25×10Paの間のせん断損失弾性係数を示す、光学素子。
【請求項31】
請求項30に記載の製造された光学素子であって、1分子あたり少なくとも3つのビニル基を有するシリコーン化合物、1分子あたり少なくとも3つの水素化シリコーン部分を有するシリコーン化合物であって該ヒドリドは異なるシリコーン原子上に存在するシリコーン化合物、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される架橋剤をさらに含み、該架橋剤は、該光学素子の約15重量%までの量で存在する、光学素子。
【請求項32】
少なくとも約1×10のせん断損失弾性係数G”を示す、請求項31に記載の製造された光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−503368(P2008−503368A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516841(P2007−516841)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021989
【国際公開番号】WO2006/002201
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506364020)カルフーン ビジョン, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】