説明

シリコーンゴム組成物、その製造方法、加熱硬化性シリコーンゴム組成物および自動車用ゴムシール部品

【課題】金型成形時にシリコーンゴム成形物とバリを除去しやすく、シリコーンゴム成形物が耐燃料油性に優れた加熱硬化性シリコーンゴム組成物、そのためのシリコーンゴム組成物、その製造方法、耐燃料油性に優れた自動車用ゴムシール部品を提供する。
【解決手段】(A-1)ケイ素結合基の少なくとも48モル%がフルオロアルキル基であり、2個以上のケイ素結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(A-2)ケイ素結合ハロゲン置換有機基を有せず、2個以上のケイ素結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、(B)環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理された乾式法シリカ、(C)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーもしくはオルガノシランの加熱混合物であるシリコーンゴム組成物、その製造方法;シリコーンゴム組成物と(D)硬化触媒とからなる加熱硬化性シリコーンゴム組成物;その硬化物である自動車用ゴムシール部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンと乾式法シリカを主剤とするシリコーンゴム組成物、その製造方法、シリコーンゴム組成物と硬化剤とからなる加熱硬化性シリコーンゴム組成物、および、その組成物を硬化させてなる自動車用ゴムシール部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンルーム内で使用される燃料油と接触して使用するゴムシール部品としては、インテークマニホールド、スロットルボディ、インシュレーターバルブ、PCVバルブ等の部位に使用されるガスケットやO−リング等があり、一般的に、水素化ニトリルゴム製ゴムシール部品が使用されている。しかし、近年のエンジンの高性能化や排ガス規制対策等によるエンジンルーム内の使用雰囲気温度の高温化に伴い、より耐熱性能に優れたフルオロシリコーンゴム製ゴムシール部品の使用量が増加している。
【0003】
特開2004−269757号公報には、特定量のアルケニル基を含有するフルオロプロピルメチルポリシロキサン、シリカ系充填剤、硬化触媒からなるインテークマニホールドガスケット用フルオロシリコーンゴム組成物が提案されている。しかし、このようなフルオロシリコーンンゴムは高価であり、硬化前は、金属への密着性が強いため取り扱い・加工作業性に劣り、加熱成形時には離型性に劣るために、金型から取り出す際に製品が裂けるなどの不良率が高くなるという問題があった。
【0004】
これらのことから、フルオロアルキル基含有ジオルガノポリシロキサンを主成分とするフルオロシリコーンゴムとフルオロアルキル基を含まないジオルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムとの混合物が安価で、且つ、取り扱い作業性、金型離型性に優れており代替材料とされている。例えば、特開平10−89486には、フルオロシリコーンゴムとフルオロアルキル基を含まないシリコーンゴムとのブレンド物によりシリンダヘッドカバー用ガスケットを構成することが提案されている。
【0005】
しかし、フルオロシリコーンゴムの主成分であるフルオロアルキル基含有ジオルガノポリシロキサンとシリコーンゴムの主成分であるフルオロアルキル基を含まないジオルガノシロキサンとは相溶性が無いことから、加熱成形時の加工条件や製品形状によっては、その混合物を硬化してなる成形品が層状剥離して破損しやすいことが判明した。この傾向は、成形品が高温下や燃料油等により膨潤しやすい条件下にある時に顕著であり、具体的には、加熱成形時の金型から取り出す時や、高温下でバリを除去する際にバリと共に成形品が層状に裂けて破損したり、燃料油中に浸漬、或いは接触するなどの膨潤する条件下で成形品に層状の剥離・破壊が生じたりして製品機能を満足しないという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−269757号公報
【特許文献2】特開平10−89486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フルオロアルキル基含有ジオルガノポリシロキサンとフルオロアルキル基を含まないジオルガノシロキサンとシリカ系充填剤を主成分とする加熱硬化性シリコーンゴム組成物において、加熱した金型中で硬化させてできたシリコーンゴム成形物を取り出す際に層状剥離による破損が発生しにくく、そのため金型上のバリおよびシリコーンゴム成形物から延出したバリも除去しやすく、シリコーンゴム成形物を燃料油に接触状態または浸漬状態で使用しても層状剥離による破損が発生しにくい加熱硬化性シリコーンゴム組成物、そのためのシリコーンゴム組成物およびその製造方法を提供することにある。さらには燃料油に接触状態または浸漬状態で使用しても層状剥離による破損が発生しにくい自動車用ゴムシール部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、
[1] 下記成分(A-1)と成分(A-2):合計量100重量部、成分(B):10〜100重量部、成分(C):成分(B)の1〜10重量%の加熱混合物であることを特徴とするシリコーンゴム組成物。
(A-1)ケイ素原子に結合する基の少なくとも48モル%がフッ素原子置換アルキル基であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子に結合するハロゲン原子置換有機基を有せず、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
(ただし、成分(A-1)と成分(A-2)の重量比が70:30〜98:2である)、
(B)環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理された乾式法シリカ、
(C)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーもしくはオルガノシラン。;
[2] 成分(B)のBET法比表面積が40〜400m/gであり、嵩密度が70〜200kg/mであり、炭素原子含有量が1.7〜4.0重量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分含有量が0.30重量%以下であり、ヘキサン抽出率が3.0重量%以下であることを特徴とする[1]記載のシリコーンゴム組成物。;
[3] 成分(A-1)中のフッ素原子置換アルキル基がパーフルオロアルキル基であり、アルケニル基がビニル基であり、それら以外の有機基がメチル基であり、成分(A-2)中のアルケニル基がビニル基であり、それ以外の有機基がメチル基であることを特徴とする[1]または[2]記載のシリコーンゴム組成物。;
[4] [1]、[2] または[3]記載のシリコーンゴム組成物と、成分(A-1)と成分(A-2)の合計量100重量部当たり100重量部以下の(E)無機充填剤(ただし、成分(B)に該当するものを除く)とからなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。;
[5] [1]または[4]記載のシリコーンゴム組成物と、該シリコーンゴム組成物を硬化させるのに十分な量の(D)硬化触媒とからなることを特徴とする加熱硬化性シリコーンゴム組成物。;
[6] 硬化触媒が有機過酸化物、または、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒であることを特徴とする[5]記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物。;
[7] 自動車用ゴムシール部品用であることを特徴とする[5]または[6]に記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物。;
[8] 成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)および成分(C)を100℃未満で混合した後に、100℃〜170℃で均一になるまで混合することを特徴とする[1]記載のシリコーンゴム組成物の製造方法。;
[9] [5]または[6]記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物からなることを特徴とするゴムシール部品、特には自動車用ゴムシール部品。;
[10] 燃料油に接触して使用するものであることを特徴とする[9]記載のゴムシール部品、特には自動車用ゴムシール部品。
により解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、それを加熱した金型中で硬化させて成形したシリコーンゴム成形物を熱いまま取り出す際に層状剥離による破損が発生しにくいので成形加工性が優れており、成形加工時の収率が大きい。金型上のバリおよびシリコーンゴム成形物から延出したバリ、すなわち、上金型と下金型を密接させた際に該シリコーンゴム組成物収納部からその周辺部にあふれ出た該シリコーンゴム組成物が硬化してできたバリを除去する際にも、シリコーンゴム成形物は熱時の強度に優れ、層状剥離による破損が発生しにくいのでバリを除去しやすい。したがって、成形加工性が優れており、成形加工時の収率が大きい。
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、硬化剤と混合すれば上記のように優れた特性を有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物となる。
本発明に係るシリコーンゴム組成物の製造方法によれば、上記のように優れた特性を有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物の主剤であるシリコーンゴム組成物を効率よく的確に製造することができる。
上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化させることにより得られたシリコーンゴム成形物である、本発明に係る自動車用ゴムシール部品は、燃料油に接触状態または浸漬状態で使用しても層状剥離による破損が発生しにくく、耐燃料油性が優れている。また、圧縮永久歪が小さく、耐寒性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、下記成分(A-1)と成分(A-2):合計量100重量部、成分(B):10〜100重量部、成分(C):成分(B)の1〜10重量%の加熱混合物であることを特徴とする。
(A-1)ケイ素原子に結合する基の少なくとも48モル%がフッ素原子置換アルキル基であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子に結合するハロゲン原子置換有機基を有せず、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
(ただし、成分(A-1)と成分(A-2)の重量比が70:30〜98:2である)、
(B)環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理された乾式法シリカ、
(C)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーもしくはオルガノシラン。
また、本発明に係るシリコーンゴム組成物は、さらに(E)無機充填剤を配合して調製してもよい。
【0011】
成分(A-1)と成分(A-2)は、本発明に係るシリコーンゴム組成物および加熱硬化性シリコーンゴム組成物の主剤であり、ともにジオルガノポリシロキサン1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するので、(D)硬化剤の作用により架橋する。
成分(A-1)と成分(A-2)成分の分子構造は、直鎖状または一部に分岐を有する直鎖状である。
【0012】
成分(A-1)は、ジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合する基の少なくとも48モル%がフッ素原子置換アルキル基、すなわち、フルオロアルキル基であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有する。
フッ素原子置換アルキル基としては、1-フルオロメチル基、1,1-ジフルオロメチル基、1,1,1-トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基等の炭素原子数1〜10のフッ素原子置換アルキル基が例示される。これらのうちでは性能と製造容易な点で3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
成分(A-1)において、フッ素原子置換アルキル基がケイ素原子に結合する基の48モル%未満であると耐燃料油性等の特性が不十分となる。また、フッ素原子置換アルキル基がケイ素原子に結合する基の55モル%を超えると、そのようなジオルガノポリシロキサンは製造が容易でなく実用的でない。
【0013】
ジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合するアルケニル基として、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、架橋反応性と製造容易な点で好ましくはビニル基である。アルケニル基は、ジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端に存在してもよく、分子鎖側鎖に存在してもよく、また、分子鎖末端と分子鎖側鎖の両方に存在してもよい。フッ素原子置換アルキル基およびアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル等の炭素原子数6〜10のアリール基;トリル基、ベンジル基等の炭素原子数7〜10のアラルキル基が例示される。製造容易な点で好ましくはメチル基である。なお、分子鎖末端に水酸基、すなわち、シラノール基が結合していてもよい。
【0014】
成分(A-1)は、架橋性の点でアルケニル基が1分子中に少なくとも2個存在する必要があるが、ケイ素原子に結合する基の0.1〜1モル%がアルケニル基であることが好ましく、0.125〜0.5モル%であることがより好ましい。これは、ケイ素原子に結合する基中のアルケニル基の割合が上記下限未満であると、硬化物の圧縮永久歪の値が大きくなりすぎることがあるからであり、また、ケイ素原子に結合する基中のアルケニル基の割合が上記上限を超えると硬化物の硬さが実用範囲以上になり、破断伸びが小さくなりすぎ、引張強さ、引裂強さ等の機械的強度が低下する場合があるからである。
【0015】
成分(A-1)の重量平均分子量は、100,000以上が好ましく、200,000〜9,000,000の範囲であることがより好ましく、450,000〜4,500,000の範囲であることが特に好ましい。なお、成分(A-1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーション(GPC)により測定して求めることができる。すなわち、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC-8020 ゲルパーミエーション(GPC)に屈折検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-L カラム2個を取り付けたものを使用し、試料は2重量%クロロホルム溶液として測定に供し、重量平均分子量既知の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、標準ポリスチレン換算して重量平均分子量を求めることができる。
【0016】
成分(A-1)として、下記のジオルガノポリシロキサンが例示される。
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・ビニルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体。
【0017】
成分(A-2)は、ハロゲン原子置換有機基を含有せず、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンである。このアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル等の炭素原子数6〜10のアリール基;トリル基、ベンジル基等の炭素原子数7〜10のアラルキル基が例示され、好ましくはメチル基である。成分(A-2)中、アルケニル基は1分子中に少なくとも2個存在する必要があるが、ケイ素原子に結合する基の0.1〜1モル%がアルケニル基であることが好ましく、0.125〜0.8モル%であることがより好ましい。これは、ケイ素原子に結合する基中のアルケニル基の割合が上記下限未満であると、圧縮永久歪の値が大きくなりすぎることがあるからであり、また、ケイ素原子に結合する基中のアルケニル基の割合が上記上限を超えると得られる硬化物の硬さが実用範囲以上になり、破断伸びが小さくなりすぎ、引張強さ、引裂強さ等の機械的強度が低下する場合があるからである。
【0018】
成分(A-2)の重量平均分子量は、100,000以上が好ましく、200,000〜9,000,000の範囲がより好ましく、450,000〜4,500,000の範囲が特に好ましい。なお、成分(A-2)の重量平均分子量は、前述したようにゲルパーミエーション(GPC)により測定して求めることができる。
【0019】
成分(A-2)の具体例として、下記のジオルガノポリシロキサンがある。
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。
成分(A-1)は、そのフッ素原子置換アルキル基がパーフルオロアルキル基であり、アルケニル基がビニル基であり、それら以外の有機基がメチル基であるジオルガノポリシロキサンであり、成分(A-2)は、そのアルケニル基がビニル基であり、それ以外の有機基がメチル基であるジオルガノポリシロキサンであるという組合せが、相溶性や硬化物の物性の点で好ましい。
【0020】
成分(A‐1)と成分(A-2)は、70:30〜98:2、好ましくは80:20〜90:10の重量比で他成分と混合される。成分(A-1)の配合比率が上記範囲の下限未満であると、これらを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られたシリコーンゴムは、燃料油に浸漬されたり、燃料油に接触し続けたときに膨潤しすぎるからである。一方、成分(A-1)の配合比率が上記範囲の上限を超えると、コストが高価となり、且つ、これらを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物のロール作業性が低下するからである。
【0021】
成分(B)は、その表面が環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより疎水化処理された乾式法シリカであり、成分(A-1)、成分(A-2)との混合物を粘土状ないし半固形状とする作用がある。また、これらを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムに優れた機械的強度を付与する。作用機構は不明であるが、これらを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムの耐燃料油性を向上させる作用がある。
【0022】
成分(B)は、これを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムの機械的特性と耐燃料油性の点で、そのBET法比表面積が40〜400m/gであり、嵩密度が70〜200kg/mであり、炭素原子含有量が1.7〜4.0重量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分含有量が0.30重量%以下であり、ヘキサン抽出率が3.0重量%以下であることが好ましい。
【0023】
成分(B)のBET法比表面積は、好ましくは40〜400m/gであり、より好ましくは100〜400m/gである。成分(B)の嵩密度は、好ましくは70〜200kg/mであり、より好ましくは80〜150kg/mである。嵩密度は以下の方法で測定する。表面疎水化処理された乾式法シリカを1L(1000cc)のメスシリンダーに1000ccの目盛りまで投入する。この際、該乾式法シリカが沈降するので、投入後3分間はその体積が1000ccを保持するように該乾式法シリカを補充し続ける。3分間経過後、メスシリンダー中の該乾式法シリカの重量を測定し、その測定値をkg/mで表して嵩密度とする。
【0024】
成分(B)のカールフィッシャー法で測定した水分含有量は、好ましくは0.30重量%以下であり、より好ましくは0.25重量%以下である。カールフィッシャー法で測定した水分含有量は、表面疎水化処理された乾式法シリカを110℃のオーブン中で10時間乾燥後、この乾燥後の乾式法シリカの水分量をカールフィッシャー法で測定して求める。
【0025】
成分(B)の炭素原子含有量は、好ましくは1.7〜4.0重量%であり、より好ましくは1.8〜3.5重量%である。炭素原子含有量は、表面疎水化処理された乾式法シリカのケイ素原子結合メチル基を1000℃、酸素ガス雰囲気下にて熱分解して炭酸ガスに変換し、この炭酸ガス中の炭素量を微量炭素分析装置により定量して求める。炭素原子含有量は、環状ジメチルシロキサンオリゴマーである疎水化処理剤により表面疎水化処理された乾式法シリカ表面の処理度合い、あるいは疎水化度合いを示している。
【0026】
成分(B)のヘキサン抽出率は好ましくは3.0重量%以下であり、より好ましくは2.5重量%以下である。ヘキサン抽出率は、表面疎水化処理された乾式法シリカのn−へキサン抽出前の炭素原子含有量(B)とへキサン抽出後の炭素原子含有量(A)を測定し、(B−A)/B×100(単位%)により算出する。なお、表面疎水化処理された乾式法シリカのへキサン抽出は、攪拌機と還流冷却管付き500ccのフラスコに表面疎水化処理された乾式法シリカ20gとn−ヘキサン150gを入れ、30分間煮沸した後、ろ過することによりおこなう。なお、ヘキサン抽出率は、乾式法シリカに結合せずに付着している環状ジメチルシロキサンオリゴマーである疎水化処理剤の含有度合いを示している。炭素原子含有量が大きく、ヘキサン抽出率が小さいということは、環状ジメチルシロキサンオリゴマーである疎水化処理剤が乾式法シリカ表面に化学的に結合している度合いが大きいことを意味すると考えられる。
【0027】
乾式法シリカの表面疎水化処理に使用する環状ジメチルシロキサンオリゴマーとして、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、これらの混合物が例示される。その重合度の上限は、好ましくは20であり、より好ましくは10である。乾式法シリカを環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理する方法は公知であり(例えば、特公昭36−15938号公報、米国特許第2,938,009号明細書、特公平5−25893号公報参照)、乾式法シリカを液状の環状ジメチルシロキサンオリゴマーと所定時間接触させ加熱処理している。特公平5−25893では併せて嵩密度増加処理も行っている。本発明で使用される環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理された乾式法シリカは、処理条件を鋭意工夫することにより、嵩密度、炭素原子含有量、水分含有量およびへキサン抽出率を前記したとおりに調整したものである。本成分の配合量は、成分(A-1)と成分(A-2)の合計料100重量部に対して10〜100重量部の範囲である。これは、10重量部未満であると硬化物の機械的強度が十分でなく、100重量部を超えると成分(A-1)と成分(A-2))への配合が困難になるためである。かかる観点から20〜70重量部の範囲が好ましい。
【0028】
(C)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーもしくはオルガノシランは、成分(A-1)と成分(A-2)と成分(B)の相溶性を向上させるための成分である。成分(C)のシラノール基以外のケイ素原子に結合する有機基として、1-フルオロメチル基、1,1-ジフルオロメチル基、1,1,1-トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基等の炭素原子数1〜10のフッ素原子置換アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル等の炭素原子数6〜10のアリール基;トリル基、ベンジル基等の炭素原子数7〜10のアラルキル基が例示される。好ましくは、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基、メチル基、フェニル基からなる群から選択される基である。ここで、ジオルガノシロキサンオリゴマーとは、数平均分子量から計算される数平均重合度、すなわち一分子中のジオルガノシロキサン単位の数が平均で2〜20である低重合度のジオルガノポリシロキサンを意味する。
【0029】
かかる成分(C)として、以下のジオルガノシロキサンオリゴマーおよびオルガノシランが例示される;分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンオリゴマー、分子鎖片末端シラノール基・他末端メチル基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、分子鎖片末端シラノール・他末端メチル基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー、分子鎖片末端シラノール・他末端メチル基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、分子鎖片末端シラノール基・他末端メチル基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体オリゴマー;トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール。
中でも分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンオリゴマーが、成分(A-1)と成分(A-2)と成分(B)との相溶性を顕著に向上させるので好ましい。特に数平均重合度が3の分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンオリゴマーが好ましい。
【0030】
成分(C)の配合量は、成分(B)の1〜10重量%の範囲であり、好ましくは2〜8重量%の範囲である。これは、成分(C)の配合量が上記範囲下限未満であると、本発明のシリコーンゴム組成物および加熱硬化性シリコーンゴム組成物の取り扱い作業性や保存安定性が低下したり、流動性が損なわれて成形性が低下する場合があるからである。一方、成分(C)の配合量が上記範囲上限を超えると、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシリコーンゴム成形品の耐燃料油性、すなわち、燃料油に浸漬状態または接触状態で使用時の強度が低下する場合があるからである。
【0031】
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、成分(A-1)と成分(A-2)と成分(B)と成分(C)を100℃未満で混合した後に、100℃〜170℃で均一になるまで混合することにより製造することができる。
詳しくは、下記の2工程により調製される。
工程1:成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)および成分(C)を100℃未満でほぼ均一に混合する。
工程2:工程1で得られた混合物を、さらに100℃〜170℃で均一になるまで混合する。
工程1の成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)および成分(C)の混合、工程2の加熱下での混合にはバンバリーミキサー、ニーダーミキサー等の加熱・冷却手段を備えた従来公知の混合装置を使用することが好ましい。
【0032】
工程1における成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)および成分(C)の混合は、室温で行ってもよいが、50℃以上100℃未満で行うことが好ましく、80℃以上100℃未満で行うことがより好ましい。加熱することによって、成分(A)の粘度が低下して成分(B)の配合が容易になるからである。
【0033】
工程2における加熱温度は、100℃〜170℃であるが、120℃〜150℃であることが好ましい。これは、上記範囲下限未満であると、本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物の成形加工性が十分でなく、耐燃料油性も不十分となることがあるからであり、また、本発明に係るシリコーンゴム組成物や加熱硬化性シリコーンゴム組成物の保管中に組成物が固くなり成形加工性が低下する場合もあるからである。一方、上記範囲上限を超えると、加熱下混合中にゲルが生じる場合があるからである。工程2の加熱下での混合時間は30分〜6時間であることが好ましく、1時間〜4時間であることがより好ましい。
【0034】
本発明に係るシリコーンゴム組成物には、(E)無機充填剤(ただし、成分(B)に該当するものを除く)を配合してもよい。成分(E)として、粉砕石英粉末、珪藻土粉末、球状シリカ微粒子等の非補強性シリカ系充填剤;アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム粉末;酸化マグネシウム粉末、マイカ粉末が例示される。中でも、石英粉末や珪藻土粉末などの非補強性シリカ系充填剤は、通常安価であり、加熱硬化性シリコーンゴム組成物の取り扱い作業性を向上し、その硬化物であるシリコーンゴムの機械的特性を損なうことなく、燃料油浸漬時の膨潤度を低下する作用があるので好ましい。成分(E)は、成分(A-1)と成分(A-2)の合計量100重量部当たり100重量部以下を配合することが好ましく、5〜50重量部がより好ましい。もちろん、成分(B)の配合量、シリコーンゴム成形物の用途、成分(E)の種類等によって好ましい配合量は異なることがある。
シリコーンゴム組成物と成分(E)の混合は、工程2終了後にシリコーンゴム組成物を冷却してから成分(E)を投入して混合することによってもよいが、2本ロールや3本ロールを使用して混合してもよい。
【0035】
(D)硬化触媒は、前記シリコーンゴム組成物や、前記シリコーンゴム組成物と成分(E)の混合物に配合して加熱硬化させるための成分である。シリコーンゴム用の従来公知の硬化触媒である有機過酸化物、および、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒の組み合わせが例示され、好ましくは有機過酸化物である。
【0036】
有機過酸化物の具体例として、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキシンが挙げられる。これらは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。硬化触媒の配合量は、シリコーンゴム組成物を硬化させるのに十分な量であるが、上記有機過酸化物の配合量は、成分(A-1)と成分(A-2)の合計量100重量部当たり0.1〜5重量部とすることが好ましい
【0037】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒は、成分(A-1)および成分(A-2)をヒドロシリル化反応により架橋して硬化させる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは好ましくはメチルハイドロジェンポリシロキサンであり、白金系触媒は好ましくは塩化白金酸、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。常温での硬化を抑制するためにヒドロシリル化反応抑制剤を併用することが好ましい。
【0038】
シリコーンゴム組成物には、任意成分である成分(E)、必須成分である成分(D)のほかに、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、耐油性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、金型離型剤等を本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0039】
本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、工程1、工程2に続いて、工程3:工程2により得られたシリコーンゴム組成物を冷却後、成分(D)を配合する工程を実施することにより製造することができる。
工程3では、混合中に昇温すると硬化が始まるので、冷却可能な2本ロールや3本ロールを使用することが好ましい。着色剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、耐油性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、金型離型剤等の任意成分は、工程3において成分(D)を配合する前に配合することが好ましい。
【0040】
本発明に係るゴムシール部品、特には自動車用ゴムシール部品は、本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムから成り、耐熱性、耐寒性が要求される自動車のエンジンルーム内のゴムシール部品に好適である。特に自動車、船舶、航空機等の燃料油に浸漬されて使用される、あるいは燃料油に接触して使用されるゴムシール部品に好適である。具体的には、インテークマニホールド、スロットルボディ、インシュレーターバルブ、PCVバルブ等の部位に使用されるガスケットやO−リングが挙げられる
【0041】
尚、本発明における”燃料油に接触して使用される”とは、液体状態の燃料油に直接浸漬や接触した状態で使用される場合だけでなく、気化あるいは蒸発した燃料油と接触した状態で使用される場合も含まれる。燃料油としてガソリン、アルコール含有ガソリン、灯油、軽油、重油が例示される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
以下の例中の配合量部数は、特に断りのない限り重量基準である。
【0043】
以下の実施例と比較例で成分として使用した材料の内容と略号は次のとおりである。
(1−1) 成分(A-1)、
a−1:分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(重量平均分子量608,000、3,3,3-トリフルオロプロピル基含有量49.7mol%、メチル基含有量50.0mol%、ビニル基含有量0.29mol%)
(1−2)成分(A-2)
a−2:分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(重量平均分子量600,000、メチル基含有量99.4mol%、ビニル基含有量0.57mol%)
【0044】
(2) 乾式法シリカ
b−1(成分(B)):オクタメチルシクロテトラシロキサンにより表面疎水化処理された乾式法シリカ(シリカメーカ製、BET法比表面積160m/g、炭素原子含有量2.0重量%、嵩密度100kg/m、水分量0.10重量%、へキサン抽出率1.8重量%)
b−2:ジメチルジクロロシランにより表面疎水化処理された乾式法シリカ(シリカメーカ製、BET法比表面積180m/g、炭素原子含有量1.6重量%、嵩密度50kg/m、水分含有量0.19重量%、へキサン抽出率1.3重量%)
b−3:表面未処理の乾式法シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル200、アエロジルは該社の登録商標、BET法比表面積が200m/g、炭素原子含有量0重量%、嵩密度50kg/m、水分含有量0.30重量%、へキサン抽出率0重量%)
【0045】
(3) 成分(C)
シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマー:分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンオリゴマー(数平均重合度:3)
(4) 成分(E)
石英粉末:MIN−U−SIL 10(U.S.Silica Company 製、MIN−U−SILは該社の登録商標、圧縮時嵩密度721kg/m3、非圧縮時嵩密度673kg/m3、中位径3.4μm、比重2.65)
石英粉末:MIN−U−SIL 5(U.S.Silica Company 製、MIN−U−SILは該社の登録商標、圧縮時嵩密度659kg/m3、非圧縮時嵩密度577kg/m3、中位径1.7μm、比重2.65)
珪藻土:ラヂオライトF(昭和化学工業株式会社製、ラヂオライトは該社の登録商標、平均粒径18.7μm)
(5) 成分(D)
有機過酸化物:2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン
【0046】
加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化後の特性は、以下の方法で硬化させて測定、評価した。
[Oリング成形性]
加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形して外径245mm、内径145mm、断面直径5mmのシリコーンゴム製Oリングを作製し、Oリングを金型から取り出す際のバリ切りの状態を調べた。バリをOリングから容易に除去できた場合を良好とし、バリを除去する際にOリングに裂け目が入ったり、Oリングが切れたりした場合を破損とした。
【0047】
[機械的特性]
加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形して厚さ2mmのシリコーンゴムシートを作製した。このシリコーンゴムシートを所定の試験片に打抜き、JIS K6251の引張試験方法にて引張強さと引張破断伸びを、また、JIS K6253の硬さ試験方法に従ってタイプAデュロメータを使用して硬さを測定した。製品機能上、硬さ60度以上、引張強さ5.0MPa以上、引張破断伸び150%以上を好適とする。
【0048】
[圧縮永久歪率]
加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状シリコーンゴム試験片を作製した。JIS K6262に従って、得られた試験片を金属板間で25%圧縮させた状態で175℃で72時間放置した後、金属板間から取出して室温になるまで放置し、厚さを測定して圧縮永久歪率を計算した。
【0049】
[耐燃料油性]
機械的特性測定用と同じ厚さ2mmのシリコーンゴムシートを打抜いて、50mm×20mmの長方形のシリコーンゴム試験片を得た。得られた試験片をJIS K6258に従って、40℃の試験用燃料油(2,2,4−トリメチルペンテン/トルエン=40/60)中に72時間浸漬し、体積変化率を測定した。体積変化率は、小さい値ほど耐燃料油性に優れ、+60%以下を好適とする。
また、浸漬試験を行ったシリコーンゴム試験片の長さ50mmの側辺の中間部に奥行き1mmの切込みを入れ、該試験片の両端を掴んで反対方向に引張ることにより引き裂き、破断面の状態を調べた。破断面がほぼ均一であった場合を通常破断とし、破断面が2層以上に層状に剥離するなどして不均一になった場合を層状剥離破断とした。
【0050】
[実施例1、実施例2、比較例1〜比較例4]
表1に示す成分の配合量で、加熱硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。調製方法は下記のとおりである。
ミキサー中で上記成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)、成分(C)を80℃でほぼ均一に混合した。加熱処理ありとした実施例と比較例では更に120℃で2時間混合して均一な半固形状物を得た。得られた混合物を50℃以下に冷却後、上記成分(E)(MIN−U−SIL 10)を投入して均一になるまで混合した。混合物を取出して2本ロール上で上記成分(D)を配合した。
【0051】
かくして得られた加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形し、更にポストキュア(後架橋)のために200℃のオーブン中に4時間放置することにより、評価用のシリコーンゴム成形物を得た。前記の方法に従ってシリコーンゴム成形物の機械的特性、圧縮永久歪、Oリング成形性、および、耐燃料油性を測定、評価した。測定、評価結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
[比較例5]
表2に示す成分の配合量で、上記実施例と同様にして、シリコーンゴム組成物5−1、シリコーンゴム組成物5−2をそれぞれ調製し、9:1の配合比でシリコーンゴム組成物5−1、シリコーンゴム組成物5−2を2ロールミルで均一に混合した。得られた混合物について上記実施例と同様にして、加熱硬化性シリコーンゴム組成物を調製し、評価用のシリコーンゴム成形物を作製し、前記の方法に従って機械的特性、圧縮永久歪、Oリング成形性、耐燃料油性を測定、評価した。測定、評価結果を表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
[実施例3]
表3に示す成分の配合量で、加熱硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。調製方法は下記のとおりである。
ミキサー中で上記成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)、成分(C)を80℃でほぼ均一に混合した。更に120℃で2時間混合して均一な半固形状物を得た。得られた混合物を50℃以下に冷却後、混合物を取出して2本ロール上で上記成分(D)を配合した。
かくして得られた加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形し、更にポストキュア(後架橋)のために200℃のオーブン中に4時間放置することにより、評価用のシリコーンゴム成形物を得た。前記の方法に従ってシリコーンゴム成形物の機械的特性、圧縮永久歪、Oリング成形性を測定、評価した。測定、評価結果を表3に示した。
【0056】
[実施例4、実施例5]
表3に示す成分の配合量で、加熱硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。調製方法は下記のとおりである。
ミキサー中で上記成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)、成分(C)を80℃でほぼ均一に混合した。更に120℃で2時間混合して均一な半固形状物を得た。得られた混合物を50℃以下に冷却後、上記成分(E)(MIN−U−SIL 5またはラヂオライトF)を投入して均一になるまで混合した。混合物を取出して2本ロール上で上記成分(D)を配合した。
かくして得られた加熱硬化性シリコーンゴム組成物を金型内で170℃、10分間プレス成形し、更にポストキュア(後架橋)のために200℃のオーブン中に4時間放置することにより、評価用のシリコーンゴム成形物を得た。前記の方法に従ってシリコーンゴム成形物の機械的特性、圧縮永久歪、Oリング成形性を測定、評価した。測定、評価結果を表3に示した。
【0057】
【表3】

【0058】
各実施例と比較例1との対比から、成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)、成分(C)を混合後さらに120℃で2時間混合したシリコーンゴム組成物を含有する本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、さらに120℃で2時間混合しないシリコーンゴム組成物を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物と比較して、Oリング成形性および試験用燃料油浸漬後の破断面が均一になる点において優れていることがわかる。
【0059】
各実施例と比較例2との対比から、成分(B)として特定の表面疎水化処理乾式法シリカを含有する本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、上記成分(B)に代えてヘキサン抽出量等が異なる表面疎水化処理乾式法シリカを使用したシリコーンゴム組成物と比較して、圧縮永久歪が小さく、且つ試験用燃料油浸漬後の破断面が均一になる点において優れていることがわかる。
【0060】
各実施例と比較例3との対比から、特定量の成分(C)成分を含有する本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、成分(C)の配合量が過剰であるシリコーンゴム組成物と比較して、試験用燃料油浸漬後の破断面が均一になる点において優れていることがわかる。
【0061】
各実施例と比較例4との対比から、成分(B)として特定の表面疎水化処理乾式法シリカを含有する本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、表面未処理の乾式法シリカを含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物と比較して、Oリング成形性および試験用燃料油浸漬後の破断面が均一になる点において優れていることがわかる。
【0062】
各実施例と比較例5との対比から、成分(A-1)、(A-2)、(B)、(C)を同時に混合後さらに加熱下混合した本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、成分(A-1)、成分(B)、成分(C)を混合後さらに加熱下混合したシリコーンゴム組成物と、成分(A-2)、成分(B)、成分(C)を混合後さらに加熱下混合したシリコーンゴム組成物とを混合したシリコーンゴム組成物と比較して、Oリング成形性および試験用燃料油浸漬後の破断面が均一になる点において優れていることがわかる。
【0063】
実施例1と実施例2の対比から、成分(A-2)の配合量が多くなると試験用燃料油浸漬後の体積変化率が大きくなる傾向があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、燃料油に浸漬あるいは接触して使用する自動車用ゴムシール部品を成形するのに有用であり、耐熱性、耐寒性、圧縮永久歪等が要求されるエンジンルーム内の燃料油と接触して使用されるゴムシール部品の製造に好適である。このようなゴムシール部品としては、具体的には、インテークマニホールド、スロットルボディ、インシュレーターバルブ、PCVバルブ等の部位に使用されるガスケットやO−リングが例示される。本発明に係るシリコーンゴム組成物は、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物を製造するのに有用である。本発明に係るシリコーンゴム組成物の製造方法は、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物の主剤であるシリコーンゴム組成物を製造するのに有用である。本発明に係る自動車用ゴムシール部品は、自動車のエンジンルーム内の燃料油に接触状態または浸漬状態で使用されるゴムシール部品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例と比較例で耐燃料油性試験に使用したO−リングの平面図である。
【図2】図1のO−リングのX-X'断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 O−リング




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A-1)と成分(A-2):合計量100重量部、成分(B):10〜100重量部、成分(C):成分(B)の1〜10重量%の加熱混合物であることを特徴とするシリコーンゴム組成物。
(A-1)ケイ素原子に結合する基の少なくとも48モル%がフッ素原子置換アルキル基であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、
(A-2)ケイ素原子に結合するハロゲン原子置換有機基を有せず、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン
(ただし、成分(A-1)と成分(A-2)の重量比が70:30〜98:2である)、
(B)環状ジメチルシロキサンオリゴマーにより表面疎水化処理された乾式法シリカ、
(C)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーもしくはオルガノシラン。
【請求項2】
成分(B)のBET法比表面積が40〜400m/gであり、嵩密度が70〜200kg/mであり、炭素原子含有量が1.7〜4.0重量%であり、カールフィッシャー法で測定した水分含有量が0.30重量%以下であり、ヘキサン抽出率が3.0重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
成分(A-1)中のフッ素原子置換アルキル基がパーフルオロアルキル基であり、アルケニル基がビニル基であり、それら以外の有機基がメチル基であり、成分(A-2)中のアルケニル基がビニル基であり、それ以外の有機基がメチル基であることを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
請求項1記載のシリコーンゴム組成物と、成分(A-1)と成分(A-2)の合計量100重量部当たり100重量部以下の(E)無機充填剤(ただし、成分(B)に該当するものを除く。)とからなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1または請求項4記載のシリコーンゴム組成物と、該シリコーンゴム組成物を硬化させるのに十分な量の(D)硬化触媒とからなることを特徴とする加熱硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
硬化触媒が有機過酸化物、または、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒であることを特徴とする請求項5記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
自動車用ゴムシール部品用であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
成分(A-1)、成分(A-2)、成分(B)および成分(C)を100℃未満で混合した後に、100℃〜170℃で均一になるまで混合することを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項5または請求項6記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物からなることを特徴とする自動車用ゴムシール部品。
【請求項10】
燃料油に接触して使用するものであることを特徴とする請求項9記載の自動車用ゴムシール部品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−31227(P2008−31227A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203854(P2006−203854)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】