説明

シリコーン内包シリカナノ粒子

【課題】分散媒に分散された状態で、分散液の優れた透明性と保存安定性とを実現可能とする、シリコーン内包シリカナノ粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子は、シリカを含む外殻部と、外殻部に囲まれた中空部内に存在するシリコーンとを含む。電子顕微鏡を用いて測定した、シリコーン内包シリカナノ粒子の、平均一次粒径は10〜100nm、外殻部の平均外殻厚は2〜20nmである。シリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法は、シリコーン(成分A)と界面活性剤(成分B)と水を含む水系溶媒(成分C)とを含む乳化対象液を高圧乳化法により加圧して、シリコーン含有乳化滴を含んだ乳濁液を形成する工程(I)と、乳濁液とアルコキシシラン(成分D)とを混合して、外殻部と外殻部に囲まれた中空部内に存在するシリコーンとを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子を析出させる工程(II)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン内包シリカナノ粒子、及びその製造方法、並びに当該シリコーン内包シリカナノ粒子を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは、生体安全性や環境安全性に優れるとともに、低表面張力、水不溶性、高耐熱性など様々な物性を発現することから、潤滑剤、化粧料、毛髪剤、溶剤等、広範な用途に利用されている。しかしながら、一般的にシリコーンは水不溶性であり、水溶媒と相分離しやすいため、水を主溶媒とする製品にその高透明性を維持したまま安定に配合することは困難である。
【0003】
これに対し、特許文献1は、特定の動的表面張力を有する界面活性剤、水相、及び油相を含む混合液を、高圧乳化することにより、透明性、保存安定性の優れた水中油型乳化化粧料を開示している。この化粧料には、シリコーンを含む微細な油滴(乳化滴)が分散している。
【0004】
また、非特許文献1、2には、シリコーンがシリカ外殻によって包囲されたシリコーン内包シリカ粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128626
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.I.Goller,et.al.,Colloids and Surfaces A, 142, 281―285 (1998)
【非特許文献2】M.O‘Sullivan,et.al., Langmuir, 25, 7962―7966 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1が開示した従来技術で得られる、上記乳化滴を含む化粧料では、各成分間の表面張力のバランスが保たれれば、優れた透明性と保存安定性を保持できるものの、NaCl等の塩が共存すると、上記表面張力のバランスが崩れ、乳化滴が不安定となり、化粧料の透明性が失われる。特許文献1が開示する化粧料は、保存安定性、具体的には耐塩性が高くないため、イオン強度が高い成分が添加されると、高い透明性を維持できない。
【0008】
また、非特許文献1、2が開示したシリコーン内包シリカ粒子の粒径は500nm以上、シリカ外殻の外殻厚は30nm以上であるので、これらのシリコーン内包シリカ粒子を含む分散液の透明性は悪い。
【0009】
そこで、本発明は、分散媒に分散された状態で、分散液の優れた透明性と保存安定性とを実現可能とする、シリコーン内包シリカナノ粒子、及びその製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記分散液の一例として、前記シリコーン内包シリカナノ粒子を含むことにより、優れた透明性及び保存安定性を呈する化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子は、シリカを含む外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部内に存在するシリコーンとを含み、顕微鏡を用いて測定した、平均一次粒径が10〜100nm、前記外殻部の平均外殻厚が2〜20nmである。
【0011】
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法は、シリコーン(成分A)と界面活性剤(成分B)と水を含む水系溶媒(成分C)とを含む乳化対象液を高圧乳化法により加圧して、シリコーン含有乳化滴を含んだ乳濁液を形成する工程(I)と、前記乳濁液とアルコキシシラン(成分D)とを混合して、シリカを含む外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部内に存在する前記シリコーンとを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子を析出させる工程(II)とを含む。
【0012】
本発明の化粧料は、本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子は、顕微鏡を用いて測定した、平均一次粒径が10〜100nmであり、外殻部の平均外殻厚が2〜20nmであるので、当該シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液について、優れた透明性と保存安定性とを実現可能とする。また、本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法は、本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子を容易に製造できる。前記分散液の一例である本発明の化粧料は、前記シリコーン内包シリカナノ粒子を含むことにより、優れた透明性及び保存安定性を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1で得られたシリコーン内包シリカナノ粒子のTEM写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られたシリコーン内包シリカナノ粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<シリコーン内包シリカナノ粒子>
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子(以下「ナノ粒子」と称する場合もある。)は、シリカを含有する外殻部とその内側の中空部とを含む中空シリカナノ粒子の前記中空部にシリコーンが内包された構成をしている。
【0016】
電子顕微鏡で測定したシリコーン内包シリカナノ粒子の平均一次粒径は、10〜100nm、好ましくは10〜80nm、より好ましくは10〜50nmである。平均一次粒径が10nm以上であれば、粒子1個当たりのシリコーン内包量を多く確保でき、故に、シリコーンの性能発現性を高めることができ、好ましい。また、平均一次粒径が100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下であれば、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液の、保存安定性及び透明性が優れ、好ましい。上記シリコーン内包シリカナノ粒子の平均一次粒径は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0017】
電子顕微鏡で測定したシリコーン内包シリカナノ粒子の平均外殻厚は、2〜20nm、好ましくは2〜15nm、より好ましくは3〜12nmである。平均外殻厚が2nm以上、好ましくは3nm以上であれば、粒子強度が高くシリコーンを安定に内包でき好ましい。また、平均外殻厚が20nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは12nm以下であれば、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液の、保存安定性及び透明性が優れ、好ましい。
【0018】
電子顕微鏡で測定したシリコーン内包シリカナノ粒子の平均中空部径は、好ましくは2〜80nm、より好ましくは3〜50nm、更に好ましくは10〜30nmである。平均中空部径が、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは10nm以上であれば、粒子1個当たりのシリコーン内包量を多く確保でき、故に、シリコーンの性能発現性を高めることができ、好ましい。また、平均中空部径が、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下であれば、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液の、保存安定性及び透明性が優れ、好ましい。上記シリコーン内包シリカナノ粒子の平均中空部径は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0019】
動的光散乱法(DLS)で測定したシリコーン内包シリカナノ粒子の粒径(以下、DLS粒径)は、好ましくは10〜200nm、より好ましくは10〜100nm、更に好ましくは20〜80nmである。DLS粒径が、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であれば、粒子1個当たりのシリコーン内包量を多く確保でき、故に、シリコーンの性能発現性を高めることができ、好ましい。また、DLS粒径が、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下であれば、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液の、保存安定性及び透明性が優れ、好ましい。上記シリコーン内包シリカナノ粒子のDLS粒径は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0020】
<シリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法>
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法は、下記工程(I)及び工程(II)を含む。工程(I)では、シリコーン(成分A)と界面活性剤(成分B)と水を含む水系溶媒(成分C)とを含む乳化対象液を高圧乳化法により加圧して、シリコーン含有乳化滴を含んだ乳濁液を形成する。工程(II)では、前記乳濁液とアルコキシシラン(成分D)とを混合して、シリカを含む外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部内に存在する前記シリコーンとを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子を析出させる。
【0021】
以下に、分散媒に分散された状態のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法、具体的には、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む化粧料の製造方法を例に挙げて、本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法の一例について詳述する。
【0022】
[工程(I)]
(工程(I):混合液の調整)
本発明の製造方法の一例では、まず、シリコーン(成分A)を含む油相と、界面活性剤(成分B)と、水系溶媒(成分C)を含む水相とを含む乳化対象液を調整する。この乳化対象液は、後述する高剪断力処理の対象とされる。
【0023】
前記油相は、油性成分からなり、液体油成分であるシリコーン(成分A)を必須成分として含む。前記油相は、常温で固体ないしペースト状の成分を更に含有してもよい。前記液体油成分は、常温で液体であり、20℃の水と混合した場合に2相分離を生ずる油剤である。シリコーン(成分A)は、皮膚や毛髪に、柔軟性、滑沢性を与え、皮膜を形成して外部からの刺激物等の侵入を抑制する等々の効果を有する成分である。
【0024】
(成分A:シリコーン)
前記油相に含まれるシリコーンとしては、25℃で液状のシリコーンオイルが好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらのうち、コスト低減、シリコーン内包シリカナノ粒子の汎用性の向上、及びシリコーンの性能発現性を高める観点から、ジメチルポリシロキサンが好ましい。これらのシリコーンオイルは、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。尚、本発明で液状とは、25℃でウッベローデ粘度計で測定したときの粘度が1×10-22/s(10000cSt)以下のものを指す。シリコーン内包シリカナノ粒子の用途によるが、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性の向上及びシリコーンの性能発現性を高める観点から、シリコーンの25℃における上記粘度は、好ましくは0.5〜1000mm2/s、より好ましくは1〜100mm2/s、更に好ましくは5〜10mm2/sである。
【0025】
乳化対象液におけるシリコーンの含有量は、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)の透明性及び保存安定性の向上、並びにシリコーンの性能発現性を高めるの観点から、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜25質量%である。
【0026】
(成分E:常温で固体ないしペースト状の成分)
油相に含まれる常温で固体又はペースト状の成分としては、25℃で固体又はペースト状の脂肪族化合物(成分E)が好ましい。成分Eとしては、脂肪族アルコール、コレステロール、脂肪酸、脂肪族アミド誘導体及び脂肪族アミン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、又はベヘニルアルコール等の炭素数12〜24の飽和脂肪族アルコールが好ましい。脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はべヘン酸等の炭素数12〜24の飽和脂肪酸が好ましい。脂肪族アミド誘導体としては、タイプI〜タイプVIの天然セラミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、又はN−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルデカナミド等のセラミド類及びその類似物質が好ましい。脂肪族アミン誘導体としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン及びこれらのN−メチル体又はN,N−ジメチル体等のスフィンゴシン類、又は1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール等が好ましい。これらのうち、シリコーン(成分A)の乳化を容易にし、より小径のシリコーン含有乳化滴(以下「乳化滴」と略称する場合もある。)の形成を容易にする観点から、セタノール、ステアリルアルコール、コレステロール、ステアリン酸、パルミチン酸、セラミド類及びその類似物質、及びスフィンゴシン類からなる群から選択される少なくとも1つが好ましく、セラミド類及びその類似物質がより好ましい。具体的なセラミド類及びその類似物質の例としては、スフィンゴリピッドEが挙げられる。
【0027】
成分Eは、乳化滴表面の界面活性剤(成分B)の会合構造を安定化させると推察される。そのため、乳化対象液に成分Eが含まれていると、粒径が小さくても安定な乳化滴を容易に得ることができると考えられる。
【0028】
乳化対象液中の上記脂肪族化合物(成分E)の含有量は、シリコーン(成分A)の乳化を容易にし、より小さいシリコーン含有乳化滴の形成を容易にする観点から、シリコーン(成分A)1質量部に対し、好ましくは0.01〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0029】
乳化対象液における脂肪族化合物(成分E)の含有量は、シリコーン(成分A)の乳化を容易にし、より小さいシリコーン含有乳化滴の形成を容易にする観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0030】
乳化対象液中の前記油相の含有量は、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)の透明性及び保存安定性の向上、並びにシリコーンの性能発現性を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。
【0031】
前記油相には、成分A及び成分E以外に、紫外線吸収剤、薬効成分、着色剤等の油溶性成分が適宜配合される。
【0032】
(成分C:水系溶媒)
前記水相に含まれる水系溶媒は、水、又は、水と水溶性アルコール類とからなる混合溶媒であるが、水系溶媒は、水相の表面張力を下げる観点から、水溶性アルコール類を含んでいると好ましい。水溶性アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量400〜20000)、ソルビタン、ソルビトール、マルトース、マルトトリオース、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられるが、より小径のシリコーン含有乳化滴の形成を容易にする観点から、水系溶媒には、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールからなる群Aから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールが含まれていると好ましい。また、同様の観点から、水系溶媒には、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールからなる群Bから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールが含まれていると好ましい。よって、水系溶媒(成分C)には、より小径のシリコーン含有乳化滴の形成を容易にする観点から、前記群Aから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールと前記群Bから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールの双方が含まれていると好ましく、同様の観点から、前記群Aから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールと前記群Bから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコールの質量比(群A/群B)は、1/50〜10/1が好ましく、1/5〜1/1がより好ましい。
【0033】
乳化対象液中の水溶性アルコール類の含有量は、水相の表面張力を下げる観点から、好ましくは0.2〜66質量%、より好ましくは20〜40質量%である。また、水系溶媒(成分C)が前記混合溶媒である場合、水と水溶性アルコール類の質量比(水/水溶性アルコール類)は、水相の表面張力を下げる観点から、好ましくは10/1〜1/10であり、より好ましくは2/1〜1/1である。
【0034】
前記水相には、水系溶媒以外の水溶性成分として、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、薬効成分、植物成分等が適宜配合される。
【0035】
前記乳化対象液中の前記水相の含有量は、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)の透明性及び保存安定性の向上、並びにシリコーンの性能発現性を高める観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは60〜85質量%である。
【0036】
(成分B:界面活性剤)
本発明で使用する界面活性剤(成分B)は、親水性界面活性剤である。成分Bは、その対応する疎水部が炭素数12であるものを用いて0.2質量%水溶液の25℃における100msec時の動的表面張力を測定した値は、好ましくは57mN/m以下、より好ましくは56mN/m以下である。ここで、動的表面張力は、例えば、バブルプレッシャー法で測定する自動動的表面張力計BP−D3(協和界面科学社製)を用いて測定される。
【0037】
界面活性剤(成分B)としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びHLB9以上の非イオン性界面活性剤から選ばれ、その疎水基の炭素数は、好ましくは10〜24、より好ましくは12〜18である。炭素数が12〜18の疎水基としては、アルキル基又はアルケニル基である。本発明において、界面活性剤(成分B)として、動的表面張力が上記値を示す、疎水部の炭素数が12の親水性界面活性剤を用いることができるほか、当該親水性界面活性剤と該疎水部の炭素数のみが相違し当該炭素数が上記好ましい範囲内のものをも好適に使用できる。
【0038】
このような親水性界面活性剤のうち、N−ステアロイルアルギニンモノナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレン(6)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムが好ましい。これらの親水性界面活性剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよいが、なかでも、より小径のシリコーン含有乳化滴の形成を容易にする観点から、N−ステアロイルアルギニンモノナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、N−ラウロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性界面活性剤がより好ましく、N−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性界面活性剤が更に好ましい。
【0039】
乳化対象液における界面活性剤(成分B)の含有量は、乳化対象液を高圧乳化法により加圧して得られる乳濁液中の乳化滴の表面積等に応じて適宜調整すればよいが、シリコーン内包シリカナノ粒子の収率及び分散液における分散性を向上させ、粒径分布の狭いシリコーン内包シリカナノ粒子を得る観点から、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0040】
以上のことより、粒径が小さくても安定な乳化滴の形成を容易にし、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)の透明性及び保存安定性を向上させ、且つ、シリコーンの性能発現性を高める観点から、乳化対象液は、成分Aとしてジメチルポリシロキサンを、成分BとしてN−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性界面活性剤を、成分Eとして、セラミド類及びその類似物質を、成分Cとして、水と水溶性アルコール類とからなる混合溶媒を含み、乳化対象液中の、前記水相の含有量が60〜85質量%、前記油相の含有量が15〜30質量%であり、成分Aの含有量が15〜25質量%、成分Bの含有量が1〜3質量%、成分Eの含有量が1〜3質量%であり、前記水溶性アルコール類の含有量が20〜40質量%であると好ましく、さらに、水と水溶性アルコール類の質量比(水/水溶性アルコール類)が2/1〜1/1であるとより好ましく、さらに、前記水溶性アルコール類が、エタノールと、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールからなる群Aから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコール類と、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールからなる群Bから選ばれる少なくとも1種の水溶性アルコール類の双方を含んでいると一層好ましく、さらに、質量比(群A/群B)が、1/5〜1/1であるとより一層好ましい。
【0041】
乳化対象液の調整は、例えば、シリコーン(成分A)を含む油相及び界面活性剤(成分B)を、水系溶媒(成分C)を含む水相へ添加することで行える。シリコーン(成分A)を含む油相と界面活性剤(成分B)はこの順で添加してもよいし、同時に添加してもよい。また、水系溶媒(成分C)を含む水相は、シリコーン(成分A)を含む油相及び/又は界面活性剤(成分B)剤の添加の最中に撹拌されていてもよいし、添加後に撹拌されてもよい。
【0042】
乳化対象液の撹拌時間は、用いられる撹拌機の種類等に応じて異なるが、全体が均一に混合されている状態において、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは、2分以上である。
【0043】
上記撹拌に使用される撹拌機の種類について特に制限はない。撹拌機としては、例えば、磁気攪拌機、モーター攪拌機、ペンシルミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。市販の撹拌機としては、例えば、ディスパー(PRIMIX社製)、クリアミクス(M−テクニック社製)、キャビトロン(太平洋機工社製)等が使用できる。
【0044】
撹拌最中の乳化対象液の温度は、水系溶媒の蒸発を防いで乳化対象液中のシリコーン(成分A)及び界面活性剤(成分B)の濃度の変動を抑制し、且つ、乳化対象液における各成分分布の均一性を高める観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜90℃に保たれている。
【0045】
水系溶媒(成分C)が、水と水溶性アルコール類とからなる混合溶媒であり、当該混合溶媒に、水よりも沸点が低い水溶性アルコール類(以下「低沸点水溶性アルコール類」とも呼ぶ。)が含まれる場合、水系溶媒(成分C)の蒸発を防いで乳化対象液中のシリコーン(成分A)及び界面活性剤(成分B)の濃度の変動を抑制する観点から、下記の方法で乳化対象液を調製すると、好ましい。
【0046】
先ず、水系溶媒(成分C)の構成成分のうちの前記低沸点水溶性アルコール類以外の成分と、成分Aと、成分Bとを含む混合液を上記好ましい温度下で撹拌する。次いで、混合液の温度を前記低沸点水溶性アルコール類の沸点よりも低い温度に下げた後、当該混合液に低沸点水溶性アルコール類を添加して、乳化対象液を得る。また、乳化対象液の構成成分分布の均一性を高める観点から、水系溶媒(成分C)は、複数回に別けて他の成分と混合してもよい。具体的には、水系溶媒(成分C)の構成成分のうちの前記低沸点水溶性アルコール類以外の成分と、成分Aと、成分Bとを含む混合液の調製の際、水系溶媒(成分C)を構成する水の一部を使用し、当該混合液の構成成分分布の均一性を高めるべく前記混合液を充分に撹拌した後、撹拌後の混合液に、水系溶媒(成分C)を構成する水の他の一部(残部)を混合液に添加してもよい。添加される水の温度も、水系溶媒の蒸発を防いで乳化対象液中のシリコーン(成分A)及び界面活性剤(成分B)の濃度の変動を抑制し、且つ、乳化対象液における各成分分布の均一性を高める観点から、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。
【0047】
混合液の温度の前記低沸点水溶性アルコール類の沸点よりも低い温度へ降下は、乳化対象液の構成成分分布の均一性を高める観点から、混合液の撹拌下で行われると好ましい。また、温度の降下は、同様の観点から、徐々に行われると好ましく、室温下で撹拌することにより混合液の温度を降下させると、好ましい。
【0048】
[工程(I):乳濁液の調整]
本発明の製造方法の一例では、以上のようにして調整された乳化対象液を高圧乳化法により加圧して、シリコーン含有乳化滴が水相に分散された乳濁液を形成する。本発明の製造方法の一例では、高圧乳化法を採用することにより、平均一次粒径が小さく、且つ、粒径分布が狭い乳化滴を容易に得ることができるので、シリコーン内包シリカナノ粒子を容易に製造できる。
【0049】
乳化滴の平均一次粒径は、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)の透明性及び保存安定性の向上、並びにシリコーンの性能発現性を高めるの観点から、好ましくは0.01〜0.2μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。尚、乳化滴の平均一次粒径は、本発明の製造方法の一例によって製造されるシリコーン内包シリカナノ粒子中空部の径から推察できる。具体的には、本発明の製造方法により得られたシリコーン内包シリカナノ粒子を乾燥及び焼結させたもの、又は、シリコーン内包シリカナノ粒子を乾燥させて外殻部より内側に充填されたシリコーンを除去したものを透過型電子顕微鏡で観察し、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子(100〜150個)の中空部径(外殻部の内径)を写真上で実測し数平均値を算出することで、乳化滴の平均一次粒径を得ることができる。
【0050】
乳化対象液の高圧乳化は、例えば、高圧乳化分散機の高圧分散部で行う。高圧分散部は、細い流路を備える。高圧分散部の上記通路内に所定の圧力で押し込む高圧剪断処理を乳化対象液に行うことによって、乳化対象液が乳化して、乳濁液となる。
【0051】
高圧剪断処理は、例えば、最大剪断力が10,000s-1以上、例えば1×104〜1×108-1に相当する剪断力を付与できる高圧乳化分散機を用いて行える。好ましい高圧乳化分散機としては、取り扱い操作の簡便性の観点から、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製 M−110EHi)、スターバースト(スギノマシン社製、HJP−25005)、ナノマイザー(吉田機械工業社製)等が挙げられる。
【0052】
高圧分散部の形態としては、対抗衝突型、貫通型、ボール衝突型等のいずれであってもよい。対抗衝突型は、例えば、流路を途中で複数に分岐させ、再度合流する部分で各分岐路を流れる流体を衝突可能とする構造をしている。貫通型は、例えば、径が均一な複数の貫通孔が集積された構造をしている。ボール衝突型は、超高圧で噴射された原料をセラミックのボールに衝突させることにより原料の微粒化が行える構造をしている。
【0053】
乳化対象液の噴出圧力(高圧分散部における供給側の圧力)や乳化対象液の温度等の運転条件は、高圧乳化分散機の仕様により異なり、特に限定されないが、前記範囲の平均一次粒径の乳化滴を得、且つ、粒径分布を狭小化する観点から、噴出圧力は、好ましくは29〜294MPa、より好ましくは100〜250MPa、さらに好ましくは150〜200MPaである。背圧(高圧分散部の排出側の圧力)は、好ましくは0〜20MPa、より好ましくは5〜20MPa、さらに好ましくは10〜20MPaである。高圧乳化される直前の乳化対象液の温度は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜30℃であり、高圧乳化時の冷却温度は、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜30℃、更に好ましくは10〜20℃である。上記噴射圧力及び背圧は、高圧乳化分散機が備える圧力表示部によって確認できる。
【0054】
高剪断力処理の処理回数は、上記噴出圧力、背圧、及び希望するシリコーン含有乳化滴の平均一次粒径等に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは1〜10回であり、より好ましく3〜7回である。
【0055】
[工程(II):シリコーン内包シリカナノ粒子の析出]
本発明の製造方法の一例では、以上のようにして調整された乳濁液と、アルコキシシラン(成分D)とを混合して、乳化滴表面に、シリカを含む外殻部を形成して、外殻部と前記外殻部に囲まれた中空部内に存在する前記シリコーンとを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子を析出させ、シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液を得る。
【0056】
アルコキシシラン(成分D)は、そのまま乳濁液と混合してもよいが、アルコキシシランを所定の溶媒に添加して得たアルコキシシラン含有液を上記乳濁液と混合してもよい。当該溶媒としては、例えば、水やメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノール等のアルコール溶媒が挙げられるが、アルコキシシランの反応制御の容易性向上の観点から、メタノール、エタノールが好ましい。
【0057】
また、アルコキシシラン(成分D)と乳濁液とを含む反応液中の、シリコーン(成分A)及びアルコキシシラン(成分D)の含有量が、各々、後述の所望値となるように、希釈剤が添加されてもよい。希釈剤としては、上記で例示した乳化対象液を構成する水系溶媒(成分C)として好適なものを用いることができるが、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造(粒子径、外殻厚、粒子形状等)の均一性およびシリコーン内包シリカナノ粒子の汎用性の観点から、希釈剤として水が好ましい。
【0058】
乳濁液とアルコキシシラン(成分D)との混合の方法は、特に限定されるものではなく、乳濁液にアルコキシシラン(成分D)を添加してもよく、アルコキシシラン(成分D)に乳濁液を添加してもよく、また希釈剤に乳濁液とアルコキシシラン(成分D)を同時に添加してもよいが、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造(粒子径、外殻厚、粒子形状等)の均一性の向上の観点から、乳濁液にアルコキシシラン(成分D)を添加する方法が好ましく、希釈剤で濃度調整した乳濁液の希釈液にアルコキシシラン(成分D)を添加する方法がより好ましい。
【0059】
乳濁液又は乳濁液の希釈液とアルコキシシラン(成分D)とを含む液(以下、反応液とも言う)中のシリコーン(成分A)の含有量は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造(粒子径、外殻厚、粒子形状等)の均一性の向上観点から、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜1質量%、更に好ましくは0.2〜0.5質量%である。
【0060】
前記反応液には、さらに、後述するアルコキシシラン(成分D)のアルカリ触媒、PH調整剤が含まれていてもよい。
【0061】
[成分D:アルコキシシラン]
アルコキシシラン(成分D)は、加水分解によりシラノール化合物を生成するものをいい、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造においてシリカ源となる物質をいう。本発明の製造方法において使用するアルコキシシランとしては、ナノサイズの所望の構造のシリコーン内包シリカナノ粒子を得る観点から、下記一般式(1)〜(5)で示される化合物、又はこれらの組合せが好ましい。
SiZ4 (1)
1SiZ3 (2)
12SiZ2 (3)
13SiZ (4)
3Si−R2−SiZ3 (5)
【0062】
式中、R1はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R2は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Zはアルコキシ基を示す。
【0063】
一般式(1)〜(5)において、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造(粒子径、外殻厚、粒子形状等)の均一性の向上、及びコスト低減の観点から、R1はそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基が好ましく、具体的には、炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。R2は、同様の観点から、炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基が好ましい。Zは、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性の向上及びコスト低減の観点から、好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜4、更により好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基である。本発明の製造方法に用いるアルコキシシラン(成分D)としては、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造の均一性の向上の観点から、上記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがより好ましく、テトラメトキシシランが更に好ましい。
【0064】
反応液における、アルコキシシラン(成分D)の含有量は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造の均一性の向上、及びコスト低減の観点から、SiO2質量換算濃度で、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜1質量%である。SiO2質量換算濃度が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であると、生産性が向上し、コスト面で有利である。また、SiO2質量換算濃度が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下であると、シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液が、高粘度状態となることが回避され、ハンドリングし易くなり、また、得られるシリコーン内包シリカナノ粒子の構造の均一性が向上する。
【0065】
反応液における、シリコーン(成分A)の濃度に対するアルコキシシラン(成分D)の濃度比(アルコキシシラン(成分D)のSiO2質量換算濃度(質量%)/シリコーンの質量%)は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造の均一性の向上の観点から、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5、更に好ましくは1〜3である。上記濃度比が0.1以上であると、シリコーン内包シリカナノ粒子の外殻厚が適切な厚みとなり、且つ、外殻厚の均一性が高いので、外殻部の割れが抑制され、好ましい。一方、前記濃度比が10以下であると、粒子1個当たりのシリコーン内包量が多くなり、シリコーンの性能発現性の向上の観点から好ましい。
【0066】
反応液の調製の際、テトラアルコキシシラン(成分D)の乳濁液又は乳濁液の希釈液への添加は、全量を一度にしてもよいが、連続的にしてもよいし、断続的にしてもよい。生成する各粒子の凝集を防ぐためには、テトラアルコキシシラン(成分D)の反応終了まで、反応液を撹拌し続けることが好ましく、テトラアルコキシシラン(成分D)の添加終了後も、所定時間(例えば、10〜80℃で0.01〜24時間)撹拌し続けると好ましい。
【0067】
アルコキシシラン(成分D)添加最中及び添加後の反応液の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜50℃、更に好ましくは10〜40℃である。反応液の温度が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であると、反応液に含まれる水の凍結を抑制でき、均一な、アルコキシシラン(成分D)の加水分解及び/又は縮合反応が可能となり、好ましい。一方、前記反応液の温度が、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下であると、乳化滴が安定であるとともに、アルコキシシラン(成分D)の加水分解及び/又は縮合反応の急速な進行を抑制できるので、乳化滴表面にシリカを効率的に析出させることができ好ましい。
【0068】
反応液には、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造の均一性の向上の観点から、更にアルコキシシラン(成分D)のアルカリ触媒が含まれていると好ましい。アルカリ触媒の添加により、アルコキシシラン(成分D)の加水分解及び縮合反応が進行し、乳化滴表面にシリカが析出しやすくなり、シリコーン内包シリカナノ粒子が効率的に生成すると推定される。
【0069】
前記アルカリ触媒としては、特に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア等の無機アルカリや、水酸化4級アンモニウム等の有機アルカリ等が使用できる。シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性の向上及びコスト低減の観点から、アルカリ触媒としては、好ましくは水酸化ナトリウム、アンモニア及び水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ触媒、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ触媒、更に好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0070】
(成分F:カチオン性界面活性剤)
反応液には、界面活性剤(成分B)とは異なるカチオン性界面活性剤(成分F)が含まれていると好ましい。前記反応液がカチオン性界面活性剤(成分F)を含むことにより、乳化滴表面にシリカが効率的に析出する。そのメカニズムは定かではないが、カチオン性界面活性剤(成分F)の疎水部と乳化滴の疎水部との疎水的相互作用によりカチオン性界面活性剤(成分F)が乳化滴表面に局在化するとともに、カチオン性界面活性剤(成分F)のカチオン部とシリカ前駆体のシラノラートアニオン部(SiO-)との静電的相互作用により、乳化滴表面にシリカ前駆体が局在化する。故に、乳化滴表面にシリカが効率的に析出し、よって、乳化滴表面にシリカを含む外殻部が効率的に形成されると推察される。
【0071】
カチオン性界面活性剤(成分F)としては、シリコーン(成分A)の利用率の向上の観点から、下記一般式(6)及び一般式(7)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上の界面活性剤が好ましい。シリコーン(成分A)の利用率とは、反応液の調製に使用されるシリコーン(成分A)の量のうちの、外殻部により包含されるシリコーン(成分A)の量の割合を意味する。
【0072】
尚、一般式(6)及び一般式(7)中、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、X-は1価陰イオンを示す。
[R3(CH33N]+- (6)
[R34(CH32N]+- (7)
【0073】
上記一般式(6)及び一般式(7)におけるR3及びR4は、シリコーン(成分A)の利用率の向上の観点から、それぞれ独立して、好ましくは炭素数6〜18、さらに好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状アルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。ここで「各種」とは、n−体、iso−体、tert−体等の異性体全てを含む。
【0074】
一般式(6)及び一般式(7)におけるX-は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性の向上、コスト低減、及び構造の均一性の向上の観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、又は硝酸化物イオン等の1価陰イオンである。X-としては、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩素イオン又は臭素イオンであり、更により好ましくは塩素イオンである。
【0075】
一般式(6)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0076】
一般式(7)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジブチルジメチルアンモニウムブロミド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0077】
これらの第四級アンモニウム塩の中でも、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性の向上、コスト低減、及び構造の均一性の向上の観点から、特に一般式(6)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドがより好ましく、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドが特に好ましい。
【0078】
これらのカチオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
【0079】
反応液に含まれるカチオン性界面活性剤(成分F)の含有量は、混合液を高圧乳化法により加圧して得られる乳濁液中の乳化滴の表面積等に応じて適宜調整すればよいが、シリコーン内包シリカナノ粒子の収率及び分散性を向上させ、且つ、粒径分布の狭いシリコーン内包シリカナノ粒子を得る観点から、質量濃度で表すと、好ましくは0.002〜3質量%、より好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜1.8質量%であり、モル濃度で表すと、好ましくは0.1〜100ミリモル/Lであり、より好ましくは0.2〜80ミリモル/Lであり、更に好ましくは0.5〜70ミリモル/Lである。
【0080】
反応液の調製の際の、アルコキシシラン(成分D)とカチオン性界面活性剤(成分F)の乳濁液又は乳濁液の希釈液への添加順序は、特に制限されないが、乳化滴表面にシリカを含む外殻部を効率的に形成させる観点から、乳濁液又は乳濁液の希釈液へのカチオン性界面活性剤(成分F)の添加後に、アルコキシシラン(成分D)を添加することが好ましい。
【0081】
工程(I)で得られた乳濁液又は乳濁液の希釈液へのテトラアルコキシシラン(成分D)の添加速度は、反応系の容量や、テトラアルコキシシラン(成分D)の種類、乳濁液又は乳濁液の希釈液へ中に添加されるテトラアルコキシシラン(成分D)の濃度の上昇速度等を考慮して適宜調整することが望ましい。
【0082】
反応液の25℃におけるpHは、アルコキシシランを効率的に加水分解・脱水縮合させる観点から、好ましくは8.5〜12.0、より好ましくは9.0〜11.5、更に好ましくは9.5〜11.5である。反応液のpHの調整には、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、又は水酸化テトラメチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等を用いると好ましい。これらのpH調整剤は、界面活性剤(成分B)とシリコーン(成分A)と水系溶媒(成分C)とを含む乳化対象液の調整の際に、当該乳化対象液に添加されてもよい。反応液のpHは、pHメータ(例えば、堀場製作所株式会社、D−21)を用いて測定でき、電極の混合液への浸漬後1分後の数値である。
【0083】
乳濁液又は乳濁液の希釈液と、アルコキシシラン(成分D)との混合に要する時間(アルコキシシランの添加時間)は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性及び構造の均一性の向上の観点から、好ましくは0.01〜30分、より好ましくは0.1〜1分である。工程(I)で得られた乳化滴を含む乳濁液とアルコキシシラン(成分D)との混合に要する時間が、30分以内であると、アルコキシシラン(成分D)の加水分解及び縮合反応が進行して一部シリカが析出した状態でアルコキシシラン(成分D)がさらに供給される状態を抑制でき、シリカ粒子の副生を抑制できる。一方、乳濁液又は乳濁液の希釈液とアルコキシシラン(成分D)との混合に要する時間が、0.01分以上であると、反応液中のアルコキシシラン(成分D)の局所濃度が異常に高くなることを抑制でき、シリカ前駆体が乳化滴と相互作用する前にシリカ粒子として析出してシリカ粒子が副生すること、を抑制できる。
【0084】
工程(I)で得られた乳化滴とアルコキシシラン(成分D)との反応時間(アルコキシラン添加終了時点から攪拌終了時点までの時間)は、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性及び構造の均一性の向上観点から、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは1〜48時間である。工程(I)で得られた乳化滴とアルコキシシラン(成分D)との反応時間が、100時間以内であると、生産性の観点から好ましい。一方、工程(I)により得られた乳化滴とアルコキシシラン(D)との反応時間が、0.5時間以上であると、アルコキシシラン(成分D)の加水分解及び縮合反応が十分に進行し、乳化滴表面に外殻形成に適切な量のシリカが析出し、所望のシリコーン内包シリカナノ粒子が得られ、好ましい。
【0085】
上記の混合、反応に使用される撹拌機の種類について特に制限はない。撹拌機としては、例えば、磁気攪拌機、モーター攪拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等が挙げられ、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造容易性と構造の均一性の向上の観点から、磁気攪拌機、モーター攪拌機が好ましい。
【0086】
以上の工程(I)、工程(II)を経ることにより、水系溶媒(分散媒)にシリコーン内包シリカナノ粒子が分散された分散液、例えば、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む化粧料を得ることができる。
【0087】
本発明の製造方法のシリコーン内包シリカナノ粒子の一例では、上記工程(II)を経ることにより得られ、分散媒と分散媒に分散されたシリコーン内包シリカナノ粒子とを含む分散液からシリコーン内包シリカナノ粒子を分離した後、シリコーン内包シリカナノ粒子を乾燥させる工程をさらに含んでもよい。この場合、必要に応じて、分離されたシリコーン内包シリカナノ粒子に対して、乾燥前に、水洗を行ってもよい。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等が挙げられる。
【0088】
このように、シリコーン内包シリカナノ粒子を分散液から分離した後、種々の用途に使用する場合、本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子の外殻部に囲まれた中空部内には、少なくとも成分Aが含まれていればよい。
【0089】
分散液から分離されたシリコーン内包シリカナノ粒子は、他の化粧料、柔軟剤、潤滑剤、離型剤、粘着剤等に添加して用いることができる。
【0090】
<シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液>
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液、例えば、化粧料は、透明性に優れる。例えば、SiO2質量換算濃度が0.3〜0.6質量%のシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液において、波長550nmの光の透過率は、好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%である。波長550nmの光の透過率は、紫外可視吸光光度計(例えば、島津製作所製、Solid Spec−3700)により評価できる。
【0091】
本発明のシリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液、例えば、化粧料は、保存安定性(耐塩性)に優れる。外殻部によって覆われていないシリコーン含有液滴を含む分散液では、シリコーン含有液滴とNaCl等の塩とが共存すると、室温静置でも経時により分散液の透明性が低下するが、例えば、SiO2質量換算濃度が0.3〜0.6質量%のシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液は、NaCl等の前記塩が共存しても、室温静置1週間後でも透明性に変化は見られない。前記塩としては、NaCl以外に、KCl、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。故に、本発明によれば、化粧料の構成成分について選択の自由度を高めることができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明を説明する。後述する実施例及び比較例において、シリコーン内包シリカナノ粒子についての各種測定及び評価は、以下の方法で行った。
【0093】
(1)平均一次粒径、平均外殻部厚、及び平均中空部径(外殻部の平均内径)の測定
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2100)を用いて加速電圧160kVでシリコーン内包シリカナノ粒子の観察を行った。20〜30個のシリコーン内包シリカナノ粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部径、及び外殻部厚みを写真上で実測し、各々平均して、平均一次粒径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みを求めた。なお、シリコーン内包シリカナノ粒子の観察は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(応研商事株式会社製、200−Aメッシュ)に試料を付着させ、余分な試料をブローで除去したものを用いて行った。
【0094】
(2)DLS粒径の測定
動的光散乱光度計(DLS)(マルバーン株式会社製、商品名:データサイザーNano−ZS)を用いて、シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液を25℃にて測定し、溶媒(水)の屈折率1.333、溶媒(水)の吸収係数0、粒子の屈折率1.45、粒子の吸収係数0.01として算出した体積平均粒径をDLS粒径として得た。
【0095】
(3)透過率の測定
紫外−可視分光光度計(島津製作所製、Solid Spec−3700)を用い、1cm透明セルにシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液を入れ、波長550nmの光の透過率を測定した。
【0096】
(4)保存安定性(耐塩性)の評価
シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液に塩化ナトリウム(和光純薬製)を添加し、1週間室温(25℃)静置した後のシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液の透明性について、目視で評価した。結果は表1に示している。塩化ナトリウムの添加量は、塩化ナトリウムが添加されたシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液における塩化ナトリウム濃度が0.5質量%となるようにした。
A:変化無し
B:透明性低下した
【0097】
<製造例1(シリコーンを含む乳化滴の調製)>
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム(味の素製、アミソフトHS−11)10g、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム(味の素製、アミソフトHS−21)10g、擬セラミド(花王製、スフィンゴリピッドE)20g、ジメチルシリコーン(信越シリコーン製、KF−96(6cs)、25℃の粘度6mm2/s)200g、グリセリン(和光純薬製)144g、蒸留水(和光純薬製)24g、ジプロピレングリコール(和光純薬製)80gからなる混合液(80℃)を全体が均一になるように十分に磁気撹拌した。次いで、当該混合液の磁気攪拌下、この混合液に80℃の水338gを添加した後、約1時間かけて25℃まで冷却した。次いで、混合液に、55質量%エタノール水溶液174gを混合することにより、白濁した乳化対象液を得た。
【0098】
乳化対象液における各成分の質量%は、下記のとおりである。
(油相)
擬セラミド(成分E) 2質量%
ジメチルシリコーン(成分A) 20質量%
(水相)
水(成分C) 44質量%
グリセリン(成分C) 14.4質量%
ジプロピレングリコール(成分C) 8質量%
エタノール(成分C) 9.6質量%
(界面活性剤(成分B))
アミソフトHS−11(成分B) 1質量%
アミソフトHS−21(成分B) 1質量%
動的表面張力(疎水部炭素数12) 49.6mN/m
【0099】
尚、界面活性剤(成分B)の動的表面張力は、その対応する疎水部が炭素数12であるものを用いて0.2質量%水溶液の25℃における100msec時の動的表面張力を測定して得た値であり、バブルプレッシャー法で測定する自動動的表面張力計BP−D3(協和界面科学社製)を用いて測定した。
【0100】
次に、上記乳化対象液を、ボール衝突チャンバー(スギノマシン製)を装着した高圧乳化装置(スギノマシン製、スターバーストHJP−25005)に供給し、高剪断力処理を5回繰り返しを行うことにより、無色透明のシリコーン含有乳化滴を含んだ乳濁液(以下「シリコーン乳濁液」と称する。)を得た。高剪断力処理の条件は下記のとおりとした。
噴出圧力:180MPa
背圧:15MPa
高圧乳化される直前の混合液の温度:25℃
冷却温度:15℃
【0101】
<実施例1>
25℃磁気攪拌下の、製造例1により得られたシリコーン乳濁液10gに、水790gと、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(和光純薬製)1.66gとを添加して得た混合液(25℃)に、テトラメトキシシラン(東京化成製)12gを0.2分かけてさらに添加して反応液を得、得られた反応液の温度を25℃に保ちなから24時間攪拌することにより、シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液を得た。
【0102】
反応液における各成分の質量%は、下記のとおりである。
水酸化テトラメチルアンモニウム 0.05質量%
テトラメトキシシラン(成分D) 1.47質量%
水 97.25質量%
<製造例1>で調整したシリコーン乳濁液 1.23質量%
【0103】
反応液における、アルコキシシラン(成分D)の含有量は、SiO2質量換算濃度で、0.58質量%であり、シリコーン(成分A)の濃度に対するテトラメトキシシラン(成分D)の濃度比(テトラメトキシシラン(成分D)のSiO2質量換算濃度(質量%)/シリコーンの質量%)は、2.4/1である。
【0104】
このシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液の透過率は99%、DLS粒径は35nmであった。また、TEM観察の結果、平均一次粒径30nm、平均外殻厚5nm、平均中空部径20nmであった。更に、保存安定性(耐塩性)に優れていた。図1に、実施例1で得られたシリコーン内包シリカナノ粒子のTEM写真(倍率:80000倍)を示している。
【0105】
<実施例2>
25℃磁気攪拌下の、製造例1により得られた乳濁液10gに、水790gと、25%質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(和光純薬製)1.66gと、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成製)10gとを添加して得た混合液(25℃)に、テトラメトキシシラン(東京化成製)6gを0.2分かけてさらに添加して反応液を得、得られた反応液の温度を25℃に保ちなから24時間攪拌することにより、シリコーン内包シリカナノ粒子水分散液を得た。
【0106】
反応液における各成分の質量%は、下記のとおりである。
水酸化テトラメチルアンモニウム 0.05質量%
テトラメトキシシラン(成分D) 0.73質量%
ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(成分F) 1.22質量%
水 96.78質量%
<製造例1>で調整したシリコーン乳濁液 1.22質量%
【0107】
反応液における、アルコキシシラン(成分D)の含有量は、SiO2質量換算濃度で、0.29質量%であり、シリコーン(成分A)の濃度に対するテトラメトキシシラン(成分D)の濃度比(テトラメトキシシラン(成分D)のSiO2質量換算濃度(質量%)/シリコーンの質量%)は、1.2/1である。
【0108】
このシリコーン内包シリカナノ粒子水分散液の透過率は82%、DLS粒径は65nmであった。また、TEM観察の結果、平均一次粒径40nm、平均外殻厚10nm、平均中空部径20nmであった。更に、保存安定性(耐塩性)に優れていた。図2に、実施例2で得られたシリコーン内包シリカナノ粒子のTEM写真を示している(倍率:50000倍)。
【0109】
<比較例1>
テトラメトキシシランを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、シリコーン含有乳化滴水分散液を調製した。
【0110】
反応液における各成分の質量%は、下記のとおりである。
水酸化テトラメチルアンモニウム 0.05質量%
テトラメトキシシラン(成分D) 0質量%
水 98.70質量%
<製造例1>で調整したシリコーン乳濁液 1.25質量%
【0111】
以上の実施例1、2、及び比較例1で得られたシリコーン内包シリカナノ粒子の物性を下記表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
上記表1に示すとおり、シリコーン含有乳化滴を含む乳濁液にアルコキシシランを添加することにより、平均一次粒径が10〜100nm、平均外殻厚が2〜20nmである、シリコーン内包シリカナノ粒子を含み、透明性及び保存安定性に優れた分散液(化粧料)を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したとおり、本発明によれば、透明性及び保存安定性が優れた、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液(例えば、化粧料)を提供できるとともに、シリコーン内包シリカナノ粒子を含む分散液からシリコーン内包シリカナノ粒子を分離すれば、当該シリコーン内包シリカナノ粒子を種々の用途に使用することもできる。よって、本発明は、水を主溶媒とする製品、例えば、化粧料、潤滑剤、毛髪剤等の用途にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含む外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部内に存在するシリコーンとを含み、
顕微鏡を用いて測定した、平均一次粒径が10〜100nm、前記外殻部の平均外殻厚が2〜20nmであるシリコーン内包シリカナノ粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法であって、
シリコーン(成分A)と界面活性剤(成分B)と水を含む水系溶媒(成分C)とを含む乳化対象液を高圧乳化法により加圧して、シリコーン含有乳化滴を含んだ乳濁液を形成する工程(I)と、
前記乳濁液とアルコキシシラン(成分D)とを混合して、シリカを含む外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部内に存在する前記シリコーンとを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子を析出させる工程(II)とを含む、シリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)において、前記乳化対象液は、25℃で固体又はペースト状の脂肪族化合物(成分E)をさらに含む、請求項2に記載のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(II)において、前記乳濁液に、前記界面活性剤(成分B)とは異なる界面活性剤(成分F)をさらに添加し、前記界面活性剤(成分F)はカチオン性界面活性剤である請求項2又は3に記載のシリコーン内包シリカナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の前記シリコーン内包シリカナノ粒子を含む化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−683(P2013−683A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135508(P2011−135508)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】