説明

シリコーン組成物およびその製造方法

(a)硬化性シリコーン樹脂、(b)高分子表面被覆を有する無機粒子、および(c)架橋性化合物を含むシリコーン組成物を開示する。(a)の硬化性シリコーン樹脂は、アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる官能基Rを有する単位を含む。高分子表面被覆は、オルガノポリシロキサンを含む。このオルガノポリシロキサンはRSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位を含む。Rは、アリール基、アルキル基、アルケニル基、水素、およびこれらの組合せから選ばれ、RはRと等しい。(c)の架橋性化合物は(a)および高分子表面被覆の少なくとも1つとの反応性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シリコーン組成物、およびこのシリコーン組成物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、硬化性シリコーン樹脂、高分子表面被覆を有する無機粒子、および架橋性化合物を含み、硬化したときに透明性を示すシリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン類は、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高いイオン純度、低いアルファ粒子放出、および種々の基材への良好な接着性を含む、特有の特性の組み合わせによって、種々の用途において有用である。特に、補強用充填剤(例えば、無機粒子など)を含有するシリコーン組成物は、非常に優れた機械特性および接着性が要求される用途において、一般的に使用されている。例えば、充填剤配合シリコーン組成物は、自動車産業、電子産業、建設業、電気機器産業、および航空宇宙産業において幅広く使用されている。
【0003】
処理された無機粒子を含有するシリコーン組成物は、当技術分野で公知である。例えば、従来の多くのシリコーン組成物は、オルガノシラン化合物で処理されたコロイダルシリカを含有する。しかし、多くの従来の処理された無機粒子は、シリコーン組成物中の一種以上の成分と相溶性がなく、このことが不十分な混合、終局的にはシリコーン組成物の不十分な補強の一因となっている。さらに、多くの従来の処理された無機粒子は、硬化時にシリコーン組成物のかすみの一因となるオルガノシラン化合物で処理されている。すなわち、硬化したとき、多くの従来のシリコーン組成物は、特に補強目的で、そのシリコーン組成物が、シリコーン組成物の100重量部に基づいて70重量部以上の処理された無機粒子で充填されている場合に、300nmから800nmの波長、すなわち可視スペクトルにおいて透明性を示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この結果、上述した不十分さをもたらさないシリコーン組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)硬化性シリコーン樹脂、(b)粒子上に形成された高分子表面被覆を有する無機粒子、および(c)架橋性化合物を含むシリコーン組成物を提供する。(a)の硬化性シリコーン樹脂は、アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる官能基Rを有する単位を含む。(b)の無機粒子の高分子表面被覆は、オルガノポリシロキサンを含む。このオルガノポリシロキサンは、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位(式中、Rはアリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる)を含む。RはRに等しく、Rがアリール基であるときはRもアリール基であり、Rがアルキル基であるときはRもアルキル基であり、Rがアルケニル基であるときはRもアルケニル基であり、かつ、Rが水素であるときはRも水素である。(c)の架橋性化合物は、(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の高分子表面被覆の少なくとも1つとの反応性を有する。
【0006】
本発明は、接着性シリコーン層と、ガラス状材料(vitreous material)から形成される基材とを含む複合品も提供する。接着性シリコーン層は、シリコーン組成物から形成され、基材に隣接し、かつ、基材に接触して配置される。
【0007】
加えて、本発明は、(a)硬化性シリコーン樹脂を準備する工程、(b)無機粒子を準備する工程、(c)架橋性化合物を準備する工程、(b)の無機粒子上に高分子表面被覆を形成させる工程、成分(a)、(b)、および(c)を混合してシリコーン組成物を製造する工程を含むシリコーン組成物の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の方法が、従来の方法と比較して優れた均一性およびより厚い表面被覆をもたらす、(b)の無機粒子上への高分子表面被覆の現場(in−situ:系内)での形成を提供することは有利なことである。
【0009】
さらに、この高分子表面被覆の現場での形成により、シリコーン組成物の従来の製造方法と比較して、少ない加工工程による生産コストの低減が可能になる。
【0010】
加えて、本発明の複合品は、意外にも、本発明のシリコーン組成物がシリコーン組成物100重量部に基づいて50重量部以上の(b)の無機粒子を含んでいる場合でも、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長、すなわち可視スペクトルにおいて、優れた透明性を有する。
【0011】
以下の詳細な説明を参照し、添付の図面に関連して考察することによって、本発明がよりよく理解され、本発明のその他の利点が容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、基材と、接着性シリコーン層とを含む複合品の断面図である。
【図1B】図1Bは、基材と、接着性シリコーン層と、中間層とを含む複合品の断面図である。
【図1C】図1Cは、基材と、接着性シリコーン層と、中間層と、第二の接着性シリコーン層と、第二の基材とを含む複合品の断面図である。
【図1D】図1Dは、基材と、接着性シリコーン層と、第二の基材とを含む複合品の断面図である。
【図1E】図1Eは、基材と、複数の接着性シリコーン層と、複数の中間層と、第二の基材とを含む複合品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1A−1Eを参照すると、本発明は、シリコーン組成物、このシリコーン組成物から形成された接着性シリコーン層Siを含む複合品10、およびこのシリコーン組成物の製造方法を包含する。
【0014】
本シリコーン組成物は、典型的には、耐火等級ガラス用基材と共に接着剤として用いられる。しかし、本発明のシリコーン組成物は、耐火等級ガラスを超えて、これらだけに限定されないが、高温包装材料および電子部品を含む、多くの用途を有し得ることを理解されたい。
【0015】
本シリコーン組成物は、(a)官能基Rを有する単位を含む硬化性シリコーン樹脂を含む。Rは、アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる。適するアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、およびナフチルが挙げられ、適するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、およびペンチルが挙げられる。適するアルケニル基としては、ビニル、アリル、およびプロペニルが挙げられる。本明細書に列挙されていない、その他のアリール基、アルキル基、およびアルケニル基も、本発明の目的に適し得ることを理解されたい。1つの実施態様では、Rは、アリール基、例えばフェニル基である。別の実施態様では、Rはアルケニル基、例えばビニル基である。官能基Rは、任意の適する分子位置、例えば側鎖および/または末端に存在し得るが、典型的には下記により詳細に説明するとおり、シリコーン組成物の他の成分との優れた相溶性を提供するために末端位に存在する。
【0016】
(a)の硬化性シリコーン樹脂は、典型的に、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位を有する。すなわち、当技術分野で公知の一般命名法によれば、(a)の硬化性シリコーン樹脂は、M単位、つまり一官能性単位;D単位、つまり二官能性単位;T単位、つまり三官能性単位;およびこれらの組み合わせから選ばれる単位を有する。
【0017】
本明細書で用いる、用語「硬化性シリコーン樹脂」は、硬化、すなわち架橋して固形の反応生成物を形成することができるシリコーンを含む樹脂を指す。1つの実施態様では、この反応生成物は、接着剤として有用である。一般に、硬化性シリコーン樹脂および硬化性シリコーン樹脂の製造方法は、当技術分野で知られている。本発明の目的のために、(a)の硬化性シリコーン樹脂は、過酸化物硬化性シリコーン樹脂、縮合硬化性シリコーン樹脂、エポキシ硬化性シリコーン樹脂、紫外線放射硬化性シリコーン樹脂、および高エネルギー放射線硬化性シリコーン樹脂から選ぶことができる。(a)の硬化性シリコーン樹脂は、下記により詳細に説明するとおり、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂であってもよい。
【0018】
適する過酸化物硬化性シリコーン樹脂は、典型的に、(i)オルガノポリシロキサンと、(ii)有機過酸化物との間の反応によって硬化される。オルガノポリシロキサンは、当技術分野で知られており、一般に、反応性有機基を有するシリコーンポリマーとして記述される。オルガノポリシロキサンの製造方法も当技術分野で知られており、典型的には、オルガノシロキサンおよび/またはオルガノシランを加水分解して加水分解物を生成させ、この加水分解物を重合させて、オルガノポリシロキサンを製造する工程を含む。オルガノシロキサンはジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであってよい。典型的に加水分解を受けてオルガノポリシロキサンを形成する、適するオルガノシランの1つの例は、アルコキシシラン、例えば、トリメトキシシランなどである。
【0019】
本発明の目的に適するオルガノポリシロキサンには、典型的に、反応性側鎖有機基および/または末端反応性有機基が含まれる。オルガノポリシロキサンのこのような適する反応性有機基の例として、以下に限定されないが、アリール、アルキル、アルケニル、および水素が挙げられる。
【0020】
有機過酸化物の例としては、以下に限定されないが、ジアロイルペルオキシド(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ジ‐p‐クロロベンゾイルペルオキシド、およびビス‐2,4‐ジクロロベンゾイルペルオキシドなど);ジアルキルペルオキシド(例えば、ジ‐t‐ブチルペルオキシドおよび2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(t‐ブチルペルオキシ)ヘキサンなど);ジアラルキルペルオキシド(例えば、ジクミルペルオキシドなど);アルキルアラルキルペルオキシド〔例えば、t‐ブチルクミルペルオキシドおよび1,4‐ビス(t‐ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなど〕;ならびにアルキルアロイルペルオキシド(例えば、過安息香酸t‐ブチル、過酢酸t‐ブチル、およびt‐ブチルペルオクトエートなど)が挙げられる。
【0021】
適する縮合硬化性シリコーン樹脂は、典型的に、(i)1分子あたり平均して少なくとも2個のヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサンと、(ii)加水分解性のSi‐OまたはSi‐N結合を有する三官能性または四官能性シランとの間の縮合反応によって硬化される。適するオルガノポリシロキサンには、上述により説明したものが含まれる(ただし、オルガノポリシロキサンが1分子あたり平均して少なくとも2個のヒドロキシ基を有することを条件とする)。ヒドロキシ官能性基は、同じでも異なっていてもよく、典型的には2から10個の炭素原子を有する。さらに、ヒドロキシ基は、分子の任意の位置、これらだけに限定されないが、末端位、側鎖位、または末端位および側鎖位の両方に位置していてよい。
【0022】
三官能性または四官能性シランの例としては、以下に限定されないが、アルコキシシラン〔例えば、CHSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCH、CSi(OCHCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、およびSi(OCなど〕;オルガノアセトキシシラン〔例えば、CHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、およびCH=CHSi(OCOCHなど〕;オルガノイミノオキシシラン〔例えば、CHSi[O‐N=C(CH)CHCH、Si[O‐N=C(CH)CHCH、およびCH=CHSi[O‐N=C(CH)CHCHなど〕;オルガノアセタミドシラン〔例えば、CHSi[NHC(=O)CHおよびCSi[NHC(=O)CHなど〕;アミノシラン〔例えば、CHSi[NH(s‐C)]およびCHSi(NHC11など〕;ならびにオルガノアミノオキシシランが挙げられる。
【0023】
縮合反応は、縮合反応を促進する縮合触媒によっても触媒され得る。縮合触媒の例としては、以下に限定されないが、アミン類;ならびに、鉛、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ビスマス、および鉄と、カルボン酸との錯体が挙げられる。スズ(II)のオクトエート、ラウレート、およびオレエート、ならびにジブチルスズの塩が特に有用である。
【0024】
適するエポキシ硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、(i)1分子あたり平均して少なくとも2個のエポキシ官能基を有するオルガノポリシロキサンと、(ii)硬化剤との間の反応によって硬化される。エポキシ官能基の例としては、以下に限定されないが、2‐グリシドキシエチル、3‐グリシドキシプロピル、4‐グリシドキシブチル、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチル、3‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)プロピル、2,3‐エポキシプロピル、3,4‐エポキシブチル、および4,5‐エポキシペンチルが挙げられる。エポキシ官能基は、同じでも異なっていてもよく、典型的には2から10個の炭素原子を有する。さらに、エポキシ官能基は、任意の適する分子位置、以下に限定されないが、末端位、側鎖位、または末端位および側鎖位の両方に位置していてよい。
【0025】
硬化剤の例としては、以下に限定されないが、無水物類(例えば、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、およびドデセニルコハク酸無水物など);ポリアミン類〔例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレンプロピルアミン、N‐(2‐ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N’‐ジ(2‐ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、m‐フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、アミノエチルピペラジン、4,4‐ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジシアンジアミド、2‐メチルイミダゾール、およびトリエチルアミンなど〕;ルイス酸類〔例えば、モノエチルアミン・三フッ化ホウ素など〕;ポリカルボン酸類;ポリメルカプタン類;ポリアミド類;アミドアミン類が挙げられる。
【0026】
適する紫外線硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、(i)放射線感受性官能基を有するオルガノポリシロキサンと、(ii)光開始剤との間の反応によって硬化される。放射線感受性官能基の例としては、以下に限定されないが、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、およびアルケニルエーテル基が挙げられる。放射線感受性官能基は、任意の適する分子位置、以下に限定されないが、末端位、側鎖位、または末端位と側鎖位の両方に位置していてよい。光開始剤の種類は、典型的には、オルガノポリシロキサンの放射線感受性官能基の性質によって決まる。光開始剤の例としては、以下に限定されないが、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、アセトフェノン、ベンゾフェノン、および、ベンゾインとその誘導体が挙げられる。
【0027】
適する高エネルギー放射線硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、(i)オルガノポリシロキサンポリマーと、(ii)高エネルギー放射線との間の反応によって硬化される。オルガノポリシロキサンポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、およびオルガノ水素ポリシロキサンが挙げられる。高エネルギー放射線の例としては、γ‐線および電子線が挙げられる。本明細書に列挙されていないその他のオルガノポリシロキサンポリマーおよび高エネルギー放射線の例も、本発明の目的に適し得ることを理解されたい。
【0028】
あるいは、(a)の硬化性シリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂であってもよい。適するヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、(i)1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、(ii)組成物を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノ水素シロキサンと、(iii)ヒドロシリル化触媒との間の反応によって硬化される。
【0029】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、平均式:RSiO(4−a)/2で表される単位を含む。Rは、上述により定義したとおりであり、aは、0.5≦a<2.5を満たす正の数である、ただし、このヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂が、1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有することを条件とする。アルケニル基は、同じでも異なっていてもよく、典型的には2から10個の炭素原子を有する。さらに、アルケニル基は、末端位、側鎖位、または末端位および側鎖位の両方に位置していてよい。
【0030】
ヒドロシリル化触媒は、任意の公知のヒドロシリル化触媒であってよい。ヒドロシリル化触媒は、典型的には、白金族元素、白金族元素を含有する化合物、またはマイクロカプセル化白金族元素含有触媒が挙げられる。白金族元素としては、以下に限定されないが、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムが挙げられる。白金族元素は、白金がヒドロシリル化反応において最適な活性を有するため、典型的には白金である。
【0031】
(a)の硬化性シリコーン樹脂は、典型的には、シリコーン組成物100重量部に基づいて5から95重量部、より典型的には40から80重量部の量でシリコーン組成物中に存在する。(a)の硬化性シリコーン樹脂がシリコーン組成物中に5重量部未満で存在する場合、典型的には、そのシリコーン組成物は有効に硬化しない、すなわち、シリコーン組成物は、典型的には、固化して架橋ネットワークを形成しない。同様に、(a)の硬化性シリコーン樹脂が、シリコーン組成物中に95重量部を超える量で存在する場合、シリコーン組成物は、典型的には、温度変化に対し所望されない寸法応答、すなわち、200ppm/℃を超える線熱膨張率(CTE)を有する。本発明の目的に適する(a)の硬化性シリコーン樹脂には、ダウコーニングコーポレーション(米国ミシガン州ミッドランド)から商業的に入手可能である、ヒドリシリル化硬化性シリコーン樹脂が含まれる。
【0032】
本発明の(b)の無機粒子は、以下に詳細に説明するとおり、その上に形成された高分子表面被覆を有する。(b)の無機粒子は、典型的には、金属酸化物である。この金属酸化物は、典型的には、SiO、Al、Al(OH)、ZrO、TiO、SnO、およびGeO、ならびにこれらの組み合わせから選ばれる。すなわち、本発明は、シリカベースの無機粒子のみに限定されず、幅広い範囲の非シリカベースの無機粒子を有効に含む。このことは、コストおよび入手可能性の判断に関して典型的に有益である。1つの実施態様では、(b)の無機粒子は、ヒュームドシリカ成分である。
【0033】
典型的には、(b)の無機粒子は、コロイダルシリカ成分である。コロイダルシリカは、水またはその他の溶剤媒体中のサブミクロンサイズのシリカ粒子の分散液である。特に、(b)の無機粒子は、典型的には、二酸化ケイ素である。コロイダルシリカは、典型的には、コロイダルシリカの100重量部に基づいて、約85重量部以下、より典型的には80重量部の二酸化ケイ素を含む。
【0034】
(b)の無機粒子は、典型的には、50nm未満、より典型的には20nm未満、最も典型的には15nm未満の粒径を有する。(b)の無機粒子の形状は重要ではないが、球状を有する無機粒子が典型的に他の形状を有する粒子よりも、シリコーン組成物の粘度により少ない増加をもたらす。
【0035】
(b)の無機粒子は、典型的に、室温、すなわち20から25℃で、3から9、より典型的には6から9のpH値を有する。(b)の無機粒子のpH値は、ASTM D4792に規定されるとおり、10mLの蒸留水中の10gの(b)の無機粒子のスラリーのpH値を測定することによって決定することができる。(b)の無機粒子のpH値が約3未満である場合には、シリコーン組成物は、硬化時に典型的に熱安定性の低減を示し、したがって温度変化に曝される用途には適さない。(b)の無機粒子のpH値が9を超える場合には、シリコーン組成物は、典型的に保管中に不安定であり、かつ/あるいは、硬化時に熱的安定性の低減を示す。
【0036】
(b)の無機粒子は、典型的に、(b)の無機粒子100重量部に基づいて、2%未満、より典型的には1重量%未満の水分含量を有する。(b)の無機粒子の水分含量は、ASTM D2216に規定されているとおりに、110℃で(b)の無機粒子を乾燥して重量損失を測定することによって決定することができる。特に、(a)の硬化性シリコーン樹脂がヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂である実施態様では、(b)の水分含量が約2重量%を超えている場合には、この水およびオルガノ水素シロキサンがヒドロシリル化触媒の存在下で反応し得る。この反応は、シリコーン組成物を硬化させるために必要なオルガノ水素シロキサンを消耗し、水素ガスを生成し、これによって、硬化時に、シリコーン組成物中に所望しない空洞(void)の形成が引き起こされ得る。
【0037】
(b)の無機粒子は、典型的に、シリコーン組成物100重量部に基づいて、5から95重量部、より典型的には40から95重量部、最も典型的には50から80重量部の量でシリコーン組成物中に存在する。すなわち、(b)の無機粒子は、硬化時のシリコーン組成物の透過性に悪影響を及ぼすことなく幅広い重量パーセント範囲でシリコーン組成物に存在することができる。(b)の無機粒子がこのように幅広い重量パーセント範囲で存在することができるのは、(a)の硬化性シリコーン樹脂と、(b)の高分子表面被覆とは相溶性があり、例えばRが高分子表面被覆の官能基と相溶性であること、ならびに(b)の高分子表面被覆が、典型的に、以下に詳細に説明するとおり、現場で形成されることによると考えられる。しかし、(b)の無機粒子が5重量部未満では、シリコーン組成物の補強は望ましくない。加えて、(b)の無機粒子が95重量部を超える場合には、シリコーン組成物は、典型的に、硬化したときに300nmから800nmの波長、すなわち可視スペクトルにおいて80%未満の透過性を示す。本発明の目的に適する(b)の無機粒子には、Nalco(米国イリノイ州Naperville)から市販されているNalco1330(登録商標)が含まれる。
【0038】
(b)の無機粒子上に形成される高分子表面被覆は、以下により詳細に説明するとおり、オルガノポリシロキサンを含む。このオルガノポリシロキサンは、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位を含む。すなわち、当技術分野で公知の一般命名法によれば、オルガノポリシロキサンは、M単位、つまり一官能性単位;D単位、つまり二官能性単位;T単位、つまり三官能性単位;およびこれらの組み合わせから選ばれる単位を含む。
【0039】
は、アリール基、アルキル基、アルケニル基、水素、およびそれらの組み合わせから選ばれる。適するアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、およびナフチルが挙げられ、適するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、およびペンチルが挙げられる。適するアルケニル基としては、ビニル、アリル、およびプロペニルが挙げられる。本明細書に列挙していない、その他のアリール基、アルキル基、およびアルケニル基も、本発明の目的に適し得ることを理解されたい。
【0040】
はRに等しく、Rがアリール基であるときはRもアリール基である。さらにRがアルキル基であるときはRもアルキル基である。Rがアルケニル基であるときはRもアルケニル基であり、かつ、Rが水素であるときはRも水素である。すなわち、RはRに等しく、この結果、(a)の硬化性シリコーン樹脂と、(b)の無機粒子の高分子表面被覆とは相溶性があり、近い屈折率値を有する。例えば、Rがフェニル基であり、(a)の硬化性シリコーン樹脂がフェニルベース樹脂となる場合には、Rもフェニル基であり、(b)の無機粒子上の高分子表面被覆がフェニル官能化される。したがって、(b)の無機粒子は、シリコーン組成物中の1種以上の成分と相溶性があり、このことが、シリコーン組成物の十分な混合および補強に寄与する。さらに、RはRと等しいので、複合品10が所望の透明性、すなわち、300nmから800nmの波長、すなわち可視スペクトルにおいて、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有すると考えられる。具体的には、RとRとが等しくなく、(a)の硬化性シリコーン樹脂と、(b)無機粒子の高分子表面被覆とが非相溶性であり、近い屈折率値を有さない場合には、複合品10は、典型的に、望ましくない透明性、すなわち300nmから800nmの波長でかすんだ外観を有する。RとRとが等しくない場合には、シリコーン組成物中の(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の高分子表面被覆の屈折率値の差が、硬化したときのシリコーン組成物のかすんだ外観に寄与する。逆に、RとRとが等しい場合には、RおよびRは近い屈折率値であり、すなわち、Rの屈折率とRの屈折率との間の差が0.03未満であり、これが硬化したときのシリコーン組成物の優れた透明性に寄与する。
【0041】
1つの実施態様では、Rがアリール基である場合に、オルガノポリシロキサンおよび/または(a)の硬化性シリコーン樹脂が、さらにアルケニル基を含んでいてよい。すなわち、R、したがってRがアリール基であっても、オルガノポリシロキサンはさらにアルケニル基を含んでいてよい。同様に、RおよびRがアリール基であっても、(a)の硬化性シリコーン樹脂がさらにアルケニル基を含んでいてよい。同様に、RおよびRはアリール基であっても、オルガノポリシロキサンおよび(a)の硬化性シリコーン樹脂の両方がさらにアルケニル基を含んでいてよい。適するアルケニル基には、上述により説明したものが含まれる。
【0042】
別の実施態様では、Rがアルケニル基である場合に、オルガノポリシロキサンおよび/または(a)の硬化性シリコーン樹脂が、さらにアリール基を含んでいてよい。すなわち、R、したがってRがアルケニル基であっても、オルガノポリシロキサンはさらにアリール基を含んでいてよい。同様に、RおよびRがアルケニル基であっても、(a)の硬化性シリコーン樹脂がさらにアリール基を含んでいてよい。同様に、RおよびRはアルケニル基であっても、オルガノポリシロキサンおよび(a)の硬化性シリコーン樹脂の両方がさらにアリール基を含んでいてよい。適するアリール基には、上述により説明したものが含まれる。
【0043】
上述により説明した実施態様で、アリール基およびアルケニル基は、任意の適する分子位置に存在していてよいが、典型的には末端に存在し、これにより、(a)と、(b)の高分子表面被覆との間の相溶性がもたらされ、(a)および(b)の高分子表面被覆に類似の屈折率値がもたらされる。
【0044】
オルガノポリシロキサンは、任意の数のSi‐O結合を含んでいてよい。オルガノポリシロキサンは、例えば、ジシロキサン、トリシロキサン、ポリシロキサン、および/またはポリシルセスキオキサンから形成され得る。加えて、オルガノポリシロキサンは、シクロシロキサンおよび/または非環式シロキサンから形成され得る。シクロシロキサンおよび非環式シロキサンは、典型的に3から12個、より典型的には3から10個、最も典型的には3から6個のケイ素原子を有する。オルガノポリシロキサンは、上述により説明したシロキサンの任意の組み合わせから形成され得ることを理解されたい。
【0045】
具体的には、オルガノポリシロキサンは、典型的には、オルガノシラン、例えば、アルコキシシランなどから形成される。オルガノポリシロキサンは、オルガノシランのブレンド、すなわち、2種以上の異なる型のオルガノシランから形成され得ることを理解されたい。例えば、オルガノポリシロキサンは、それぞれが3個のアルコキシ基を有する1種以上のアルコキシシランと、それぞれが2個のアルコキシ基を有する1種以上のアルコキシシランとから形成され得る。加えて、各アルコキシ基が、さまざまな数の炭素原子を含んでいてよいことを理解されたい。オルガノシランがアルコキシシランである場合、本発明の目的に適するアルコキシシランとしては、以下に限定されないが、メトキシシランおよびエトキシシランが挙げられる。オルガノポリシロキサンを形成し得るオルガノシランは、典型的には、フェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせから選ばれる。例えば、オルガノシランは、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、およびこれらの組み合わせから選ぶことができる。
【0046】
1つの実施態様では、オルガノポリシロキサンは、フェニルトリアルコキシシランと、ビニルトリアルコキシシランとから形成される。この実施態様では、ビニルトリアルコキシシランを、フェニルトリアルコキシシラン100モルに基づいて、典型的に、1から75モル、より典型的には5から50モル、最も典型的には10から40モルの量で使用し、すなわち反応させる。理論により縛られることを望まないが、ビニルトリアルコキシシランが前述したモル比で存在する場合には、300nmから800nmの波長において、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する複合品10が得られると考えられる。具体的には、ビニルトリアルコキシシランを、フェニルトリアルコキシシラン100モルに基づいて75モルを超えた量で使用する場合には、複合品10は、300nmから800nmの波長で望ましくない透明過性、すなわち、かすんだ外観を有する。
【0047】
本発明の目的に適するビニルトリアルコキシシランは、ビニルトリメトキシシランであり、ダウコーニングコーポレーション(米国ミシガン州ミッドランド)から市販されている。本発明の目的に適するフェニルトリアルコキシシランは、フェニルトリメトキシシランであり、ダウコーニングコーポレーション(米国ミシガン州ミッドランド)から市販されている。
【0048】
シリコーン組成物の(c)の架橋性化合物は、(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の高分子表面被覆の少なくとも1個と反応する。別の言い方をすれば、(c)の架橋性化合物は、(a)硬化性シリコーン樹脂、(b)無機粒子の高分子表面被覆、または(a)硬化性シリコーン樹脂および(b)無機粒子の高分子表面被覆の両方、のいずれかと反応性である。(c)の架橋性化合物は、(a)硬化性シリコーン樹脂および(b)無機粒子の高分子表面被覆のRおよびR、つまりアリール基、アルキル基、アルケニル基、および/または水素と架橋して、分子を結合しシリコーン組成物を硬化させる。例えば、(a)の硬化性シリコーン樹脂がヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂である実施態様では、(c)の架橋性化合物は、典型的には、少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を含む。この有機ケイ素化合物は、典型的に、下記平均式:
SiO(4−b−c)/2
(式中、Rは、脂肪族不飽和を含有しない、置換または非置換の一価炭化水素基であり、bは、0.7≦b<2.1を満たす正の数であり、cは、0.001≦c≦2.0を満たす正の数であり、0.8≦b+c<2.5である)
で表される単位を含む。本明細書において専門用語「脂肪族不飽和を含有しない」とは、置換または非置換の一価炭化水素基が脂肪族炭素‐炭素二重結合または炭素‐炭素三重結合を含有しないことを意味する。Rによって表される炭化水素基は、典型的に、1から18個、より典型的には1から6個の炭素原子を有し、分岐していても分岐していなくてもよい。Rによって表される炭化水素基の例としては、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、およびペンチルなどのアルキル基が挙げられる。典型的には、Rはメチルである。置換基の適する例としては、以下に限定されないが、‐Cl、‐Br、‐I、‐F、‐COH、‐O(O=C)CR(式中、Rは、CからCのヒドロカルビルである)が挙げられる。本発明の目的に適する有機ケイ素化合物は、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランであり、Gelest Inc.(米国ペンシルベニア州Tullytown)から市販されている。
【0049】
(c)の架橋性化合物は、典型的に、ヒドロシリル化触媒の存在下で、(a)および(b)の無機粒子の高分子表面被覆の少なくとも一つと架橋する。別の言い方をすれば、(c)の架橋性化合物が、ヒドロシリル化触媒の存在下で、(a)、(b)の高分子表面被覆、または、(a)および(b)の高分子表面被覆の両方、のいずれかと架橋する。このヒドロシリル化触媒は、当技術分野で公知の任意のヒドロシリル化触媒であってよく、以下に限定されないが、白金族元素、白金族元素を含有する化合物、またはマイクロカプセル化白金族元素含有触媒などである。典型的には、白金族元素は、ヒドロシリル化反応における白金の最適な活性に基づいて、白金である。
【0050】
(c)の架橋性化合物が有機ケイ素化合物を含む場合には、有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子が、典型的に、(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の高分子表面被覆の少なくとも一つの不飽和官能基、例えばビニル基と反応する。別の言い方をすれば、(c)の架橋性化合物の有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子が、典型的に、(a)、(b)の高分子表面被覆、または、(a)および(b)の高分子表面被覆の両方、のいずれかと反応する。有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂のケイ素原子結合アルケニル基とのモル比は、典型的に、0.7:1から1.5:1、より典型的には0.7:1から1.1:1である。これらの範囲外のモル比では、典型的には、シリコーン組成物の有効な架橋および硬化が促進されない。
【0051】
(c)の架橋性化合物は、典型的に、シリコーン組成物100重量部に基づいて2から50、より典型的には5から25重量部の量でシリコーン組成物中に存在する。(c)の架橋性化合物がシリコーン組成物中に2重量部未満または50重量部を超える量で存在する場合には、シリコーン組成物は、典型的には、適切に硬化しない。すなわち、シリコーン組成物は、典型的には、固化して架橋ネットワークを形成しない。本発明の目的に適する(c)の架橋性化合物の例として、以下に限定されないが、1,1,5,5‐テトラメチル‐3,3‐ジフェニルトリシロキサン、フェニルトリス(ジメチル水素シロキシ)シラン、および1,4‐ビス(ジメチルシリル)ベンゼンが挙げられ、これらは、Gelest Inc.(米国ペンシルベニア州Tullytown)から市販されている。
【0052】
ここで、図1Aを参照すると、本発明の複合品10は、基材と、基材Gに隣接かつ接触して配置される接着性シリコーン層Siとを含んでいる。この基材Gは、ガラス状材料(vitreous material)から形成される。ガラス状材料は、典型的に、窓または電子部品のディスプレーパネルを形成することが知られている任意の材料としてさらに定義される。基材Gを形成させるために使用することができる、適するガラス状材料の具体例としては、普通のシリカベースガラスまたは炭素をベースとするポリマーが挙げられる。しかし、本明細書に列記されていない他のガラス状材料も、本発明の目的に適し得ることを理解されたい。普通のシリカベースガラスの一つの具体例は、ソーダ石灰シリカガラスである。適するガラス状材料である炭素をベースとするポリマーの具体例としては、以下に限定されないが、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリカーボネート、およびポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0053】
接着性シリコーン層Siを、本発明のシリコーン組成物から形成させる。すなわち、接着性シリコーン層Siを、(a)硬化性シリコーン樹脂、(b)高分子表面被覆を有する無機粒子、および(c)架橋性化合物を含むシリコーン組成物から形成させる。上述により説明したとおり、接着性シリコーン層Siを、基材Gに隣接し、かつ、基材Gに接触して配置する。具体的には、接着性シリコーンSiは、例えばストリップ、フレーム、またはシートとして成形することができ、典型的に基材Gに隣接し、接着する。接着性シリコーン層Siは、典型的には、層、例えば基材Gの補強層、耐火層、追加的な基材などを基材Gに接着するために有用である。
【0054】
複合品10は、典型的に、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長、つまり可視スペクトルにおいて、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する。すなわち、予想外に、複合品10は、一般に、かすんだ外観を有さず、むしろ、300nmから800nmの波長の光を、複合品10を通して通過させる。とりわけ、シリコーン組成物が、前記シリコーン組成物100重量部に基づいて、70から95重量部の(b)の無機粒子を充填する場合でも、複合品10は、典型的に、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する。(a)の硬化性シリコーン樹脂と、(b)の高分子表面被覆との相溶性、例えば、RがRに等しいという事によって、複合品10の優れた透明性がもたらされ、かつ、このような高濃度の(b)の存在が可能になると考えられる。このように、複合品10およびシリコーン組成物は、典型的に、優れた透明性が必要とされる用途、例えば、耐火等級ガラス、電子部品、光起電部品、および光学部品の封止などに有用である。
【0055】
図1Bで説明する他の実施態様では、複合品10は、接着性シリコーン層Siに隣接かつ接触して配置される中間層Rをさらに含む。この実施態様では、複合品10は、層構造G/Si/R(ここで、図1Bで示すように、Gは基材Gを表し、Siは接着性シリコーン層Siを表し、Rは中間層Rを表す)により表すことができる。具体的には、中間層Rを、例えばストリップ、フレーム、またはシートとして成形させることができ、典型的に、接着性シリコーン層Siに隣接し、接着する。すなわち、接着性シリコーン層Siは、典型的に、基材Gと、中間層Rとの間に挟まれている。中間層Rは、典型的に、例えば、粉々になるのを最小限に抑えるために、基材Gを補強し、あるいはラミネーションするのに有用である。中間層Rは、典型的に、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組み合わせを含む。最も典型的には、中間層Rは、ポリカーボネートである。優れた透明性、例えば300nmから800nmの波長において80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性が必要とされる用途では、中間層Rは、有害な方法で透過性を妨げないことが好ましい。すなわち、中間層Rも、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において透明である。
【0056】
図1Cを参照すると、複合品10は、第二の接着性シリコーン層Siおよび第二の基材Gをさらに含む。第二の接着性シリコーン層Siは、典型的に、中間層Rに隣接かつ接触して配置され、前記シリコーン組成物から形成される。第二の接着性シリコーン層Siは、典型的に、上述により説明した接着性シリコーン層Siとは別個の層、つまり追加の層であるが、この第二の接着性シリコーン層Siも、典型的に、シリコーン組成物から形成されることを理解されたい。第二の接着性シリコーン層Siは、例えば、ストリップ、フレーム、またはシートとして成形することができ、典型的に中間層Rに隣接し、接着する。第二の接着性シリコーン層Siは、典型的に、基材G、第二の基材G、および/または中間層Rに、層、例えば補強層、耐火層、追加基材等を接着するためにも有用である。
【0057】
第二の基材Gは、典型的に、第二の接着性シリコーン層Siに隣接かつ接触して配置され、第二のガラス状材料から形成される。具体的には、第二の基材Gは、典型的に、第二の接着性シリコーン層Siに隣接し、接着する。すなわち、第二の接着性シリコーン層Siは、典型的に、中間層Rと、第二の基材Gとの間に挟まれる。
【0058】
第二のガラス状材料は、典型的に、上述により説明した任意の適するガラス状材料である。第二のガラス状材料と、前記ガラス状材料とは、同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。例えば、ガラス状材料と、第二のガラス状材料とは、普通のシリケートまたはシリカベースのガラス、例えばソーダ石灰ガラスであってよい。すなわち、ガラス状材料は、普通のシリケートまたはシリカベースガラスであって、第二のガラス状材料は、炭素ベースポリマーであってよい。あるいは、第二のガラス状材料が普通のシリケートまたはシリカベースガラスであって、ガラス状材料が炭素ベースポリマーであってよい。第二の接着層18と、第二の基材Gとを含む実施態様では、複合品10は、層構造G/Si/R/Si/G(ここで、図1Cで示すように、Gは、基材Gおよび第二の基材Gを表し、Siは、接着性シリコーン層Siおよび第二の接着性シリコーン層Siを表し、Rは中間層Gを表す)により表すことができる。
【0059】
予想外に、この実施態様では、複合品10は、典型的に、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長、つまり可視スペクトルにおいて、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する。すなわち、多層を含む複合品10も一般にかすんだ外観がなく、むしろ300nmから800nmの波長光を複合品10を通して通過させる。とりわけ、シリコーン組成物が、シリコーン組成物100重量部に基づいて70重量部以上の(c)の無機粒子を充填しても、複合品10は、典型的に80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透明性を有する。多層の接着性シリコーン層Siを含む実施態様、例えば接着性シリコーン層Si、第二の接着性シリコーン層Si、中間層R、基材G、および第二の基材Gを含む実施態様である場合でも、(a)の硬化性シリコーン樹脂と(b)の無機粒子の高分子表面被覆との相溶性、例えばRがRに等しいという事により、複合品10の透明性がもたらされると考えられる。このように、この実施態様の複合品10も、優れた透明性が必要とされる用途で有用である。
【0060】
図1Dを参照すると、さらに別の実施態様では、複合品10は、接着性シリコーン層Siに隣接かつ接触して配置され、第二ガラス状材料から形成される第二の基材Gをさらに含むことができる。この実施態様では、複合品10は、層構造G/Si/G(ここで、図1Dで示すように、Gは、基材Gおよび第二の基材Gを表し、Siは、接着性シリコーン層Siを表す)により表すことができる。この特別の実施態様は、複数基材を必要とする用途、例えば、複合ガラス窓などに有用である。この実施態様では、複合品10は、典型的に、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する。
【0061】
本発明の複合品10は、上述の実施態様に限定されないことを理解されたい。むしろ、少なくとも、基材Gと、基材Gに隣接かつ接触して配置される接着性シリコーン層Siとを含む複合品10の実施態様が意図されており、複数の構造(例えば、図1Cで説明されるG/Si/R/Si/G;図1Eで説明されるG/Si/R/Si/R/Si/G)に組み入れられ得る。さらに、本発明の複合品10およびシリコーン組成物は、補強ガラスまたは耐火ガラスが必要とされる用途だけに限定されることは意図されておらず、むしろフレキシブルディスプレー、光学部品の封止、光起電部品、高温包装材料、接着剤、およびコーティングを含む用途に有用であり得る。
【0062】
シリコーン組成物を製造する方法は、(a)硬化性シリコーン樹脂を準備する工程、(b)無機粒子を準備する工程、および(c)架橋性化合物を準備する工程を含む。典型的に成分(a)、(b)および(c)のそれぞれは独立成分として、つまり個々の非混合反応物質として準備される。加えて、前記オルガノポリシロキサンが、オルガノシランまたはオルガノシランのブレンドから形成される場合には、オルガノシランを、典型的に独立成分として同様に準備する。(b)の無機粒子は、典型的には、最初に高分子表面被覆なしに、すなわち未処理金属酸化物として、準備することを理解されたい。以下に詳しく記載するように、オルガノポリシロキサンは、典型的に、(b)の無機粒子の存在下でオルガノシランから形成される。上述により説明した任意の適するオルガノシランであってよいオルガノシランは、典型的に、アルコキシシラン(例えば、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせから選ばれる。
【0063】
本方法は、(b)の無機粒子上にオルガノポリシロキサンを含む高分子表面被覆を形成する工程も含む。本明細書で用いる専門用語「形成された」および「粒子上に形成された」は、オルガノポリシロキサンによる(b)の無機粒子の部分的な被覆および完全な被覆の両方を包含する。
【0064】
高分子表面被覆は、典型的に、(b)の無機粒子を被覆する。しかし、この形成工程には、(b)の無機粒子上に高分子表面被覆を形成させる任意の適する方法、例えば、以下に限定されないが、(b)をスプレーコーティングする工程、および(b)上に高分子表面被覆を、現場で、例えば、加水分解反応および縮合反応によって形成させる工程が含まれることを理解されたい。
【0065】
高分子表面被覆を形成させる工程は、(b)の無機粒子の存在下で、オルガノシランを重合させてオルガノポリシロキサンを形成させることとさらに定義することができる。すなわち、典型的な実施態様では、オルガノシランを重合させて高分子表面被覆を現場で形成させることによって、高分子表面被覆を形成させる。具体的には、重合工程は、典型的に、(b)無機粒子の存在下で、オルガノシランを加水分解して、加水分解したシランを形成させる工程を含む。別の言い方をすれば、オルガノシランは、加水分解反応を受けて、(b)の無機粒子の存在下で、加水分解されたシランを形成する。当技術分野で理解されるとおり、加水分解されたシランは、ヒドロキシル官能性、つまり少なくとも1個のOH基を有する。
【0066】
高分子表面被覆を形成させるために、オルガノシランを、典型的に、(b)と混合する。より具体的には、オルガノシランの加水分解反応を生じさせるために、典型的に、水およびアルコールを含む溶剤を(b)の無機粒子に添加して、反応前混合物を形成させる。その後、オルガノシランを、典型的に、この反応前混合物に添加して、反応混合物を形成させる。水は、典型的に、(b)の100重量部あたり1から5重量部の量で添加する。水は、液状またはスチームとして加えることができる。さらに、アルコールは、典型的に、水とオルガノシランとの相溶化剤として、すなわち反応混合物中の水とオルガノシランとを1つの相に存在させるために、(b)に加える。このように、アルコールは、典型的には、水および(b)に、多量、例えば(b)100重量部に基づいて50から900重量部、より典型的には100から300重量部の量で加える。適するアルコールとしては、以下に限定されないが、イソプロピルアルコールおよびブタノールが挙げられる。
【0067】
酸触媒も、典型的に、加水分解反応を触媒するために反応混合物に加える。酸触媒は、当分野で知られている任意の酸触媒、例えば、塩酸、硫酸、酢酸などであってよい。酸触媒は、典型的に、オルガノシラン100部あたり1から10重量部の量で加える。(b)の無機粒子が6未満または8を超えるpHを有する場合には、酸触媒は、加水分解反応を触媒するために必要とされないことを理解されたい。
【0068】
2リットルのバッチサイズで、(b)の無機粒子、水、およびアルコールの反応混合物を約500rpmで攪拌すると、典型的には、オルガノシランの加水分解反応がもたらされる。別の言い方をすれば、オルガノシランは加水分解して加水分解されたシランを形成する。具体的には、反応混合物を、典型的に、60から120℃の温度で、1から5時間激しく攪拌して、加水分解反応が平衡に到達させる。(b)の無機粒子、水、およびアルコールの反応混合物は、加水分解されたシランを形成し、加水分解反応の副生成物としてアルコールが生じる。
【0069】
オルガノシランを重合する工程は、典型的に、(b)の無機粒子の存在下でこの加水分解されたシランを縮合させて、オルガノポリシロキサンを形成させる工程をさらに含む。別の言い方をすれば、この加水分解されたシランは、典型的に、現場縮合反応によって縮合し、(b)の無機粒子に付着して、高分子表面被覆を形成する。この縮合反応により、加水分解されたシランからオルガノポリシロキサンが、副生成物としての水とともに形成される。この縮合反応は、典型的には、60から120℃の温度にて激しく攪拌する条件下で起こる。縮合反応の終了は、150℃より上に温度を上げることにより達成させることができる。得られる高分子表面被覆は、典型的には、(b)の無機粒子上で0.05μmの厚さである。
【0070】
対照的に、従来のオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンで処理された無機粒子は、典型的に、0.015μm未満の厚さを有する表面被覆を有している。したがって、シリコーン組成物を製造する本方法により、典型的に、優れた膜厚を有する均一な高分子表面被覆を有する(b)の無機粒子が提供される。さらに、このような優れた膜厚に基づいて、(b)の無機粒子の高分子表面被覆は、典型的に、高分子表面被覆中に、最少限の空洞しか有さない。したがって、成分(a)、(b)、および(c)、ならびにオルガノシランを混合する工程と、(b)の上に高分子表面被覆を形成させる工程、例えば、オルガノシランを重合して高分子表面被覆を現場で形成させる工程とによって、複合品10の優れた透明性がもたらされると考えられる。すなわち、高分子表面被覆中の空洞が最少限であることによって、300nmから800nm波長、つまり可視スペクトルにおいてかすんだ外観の一因となる光散乱が、最小限に抑えられる。
【0071】
本方法は、成分(a)、(b)、および(c)を混合してシリコーン組成物を製造する工程も含む。成分(a)、(b)、および(c)を、典型的に、室温付近で混合し、約5分間攪拌して、シリコーン組成物を製造する。この混合工程により、シリコーン組成物を製造するための成分(a)、(b)、および(c)の間の接触が可能になる。具体的に言うと、(a)の硬化性シリコーン樹脂および(c)の架橋性化合物を、典型的に、上述により説明した重量比で、粒子上に高分子表面被覆を有する(b)の無機粒子に加えて、シリコーン組成物を製造する。成分(a)、(b)、および(c)が一旦接触すると、シリコーン組成物が製造され、このシリコーン組成物は、典型的に、硬化した透明な樹脂、例えば、上述により説明した接着性シリコーン層Siである。すなわち、RとRとの相溶性に起因して(例えば、RがRに等しいため)、(a)の硬化性シリコーン樹脂は(b)の無機粒子上の高分子表面被覆と相溶性があり、(c)の架橋性化合物により架橋されて、接着性シリコーン層Siを形成する。この接着性シリコーン層Siを用いて、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において、80%以上、より典型的には85%以上、最も典型的には90%以上の透過性を有する複合品10を形成させることができる。
【0072】
本発明の方法は、(b)の無機粒子上に高分子表面被覆を現場で形成させる方法を有利に提供する。この方法は、従来の方法と比較して、優れた均一性およびより厚い表面被覆をもたらす。さらに、高分子表面被覆を現場で形成させることにより、シリコーン組成物の従来の製造方法と比較して、少ない加工工程による生産コストの低減が可能になる。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するもの見るべきではない。
【0074】
[透過性の測定]
透過性は、300nmから800nmの波長、つまり可視スペクトルにおける、サンプルを通る光の透過率(百分率)として表す。サンプルのパーセント透過率は,ASTM D1746−97に準拠して、タングステン‐ハロゲンランプが備え付けられたXL−211Hazegard Hazemeterを用いて測定する。
【0075】
[実施例1]
高分子表面被覆がその上に形成された無機粒子を製造する。無機粒子は、日産化学工業(株)(日本国東京都)から市販されているシリカゾルであり、このシリカゾルはさらにメタノールを含んでいる。このシリカゾルは、12nmの平均粒径を有し、シリカゾルの合計重量に基づいて30重量%のSiO濃度を有する。257グラムのシリカゾルを、攪拌器、冷却器、温度計、および2個の注入口が備え付けられた2リットルのガラス反応器に入れる。このシリカゾルを60℃に加熱する。フェニルトリメトキシシランと、ビニルトリメトキシシランとの組合せ物を含むオルガノシランを、10分間にわたって添加して、反応混合物を形成させる。組合せ物は、12.5グラム(0.063モル)のフェニルトリメトキシシランおよび3.1グラム(0.021モル)のビニルトリメトキシシランを含む。その後、反応混合物の温度を昇温させて、メタノールを反応混合物からフラッシュ(flash)させる。25.5グラムのn‐ブチルアルコールを反応混合物の体積を維持するために添加する。反応混合物の体積を維持するために、190グラムのトルエンを反応混合物に徐々に添加しながら、蒸留物を集める。反応混合物の温度が98℃に達した時点で、蒸留を止め、反応混合物の温度を95℃に4時間維持する。90グラムのトルエンを反応混合物に添加し、蒸留が始め、反応混合物の温度を110℃にまで昇温させ、その温度で蒸留を止める。高分子表面被覆を有する無機粒子を含む生成物が形成される。この生成物は、196グラムの質量を有し、この生成物の55重量パーセントがSiOである。生成物の粘度は、3.6MPa・sである。
【0076】
[実施例2]
シリコーン組成物を含む接着性シリコーン層を形成させる。40グラムのシリコーン樹脂、5グラムの1,1,5,5‐テトラメチル‐3,3‐ジフェニルトリシロキサン、および5グラムのフェニルトリス(ジメチル水素シロキシ)シランを、実施例1で形成させた、高分子表面被覆を有する無機粒子136グラムと混合して、混合物を形成させる。この混合物を、減圧下で約90から100℃に加熱して、高分子表面被覆を有する無機粒子からトルエンをフラッシュさせ、124グラムの質量を有するシリコーン組成物を形成させる。このシリコーン組成物を、触媒と混合して、混合物が白金を5ppmの量で含むようにする。このシリコーン組成物を、歯科用混合器で、2回連続して各30秒間混合する。その後、シリコーン組成物を長さ16インチ、幅16インチ、厚さ75μmの第一のPET基材上にスパチュラで塗りつける。その後、同じ大きさの第二のPET基材を、シリコーン組成物が第一のPET基材と第二のPET基材との間に配置されるように、シリコーン組成物上に置く。第一のPET基材および第二のPET基材を、それらの間に配置されたシリコーン組成物と共に、0.04インチの隙間を有するニップローラに供給する。第一のPET基材および第二のPET基材を、それらの間に配置されたシリコーン組成物と共に、130℃で8分間、その後145℃で30分間加熱して、接着性シリコーン層を形成させる。第一のPET基材および第二のPET基材を、それらの間に配置されたシリコーン組成物と共に、その後室温まで冷却し、第二のPET基材を剥がす。接着性シリコーン層は、第一のPET基材から剥がされ、2mmの厚さを有する。接着性シリコーン層は、ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmの波長で90%の透過性、および400nmで95%の透過性を有する。
【0077】
[実施例3]
複合品を実施例2のシリコーン組成物から形成させる。実施例2のシリコーン組成物を、長さ150mm、幅150mm、厚さ3.2mmであるガラス基板上に配置する。基板上に配置されたシリコーン組成物を含むこのガラス基板を、130℃で8分間、その後145℃で30分加熱して、接着性シリコーン層を形成させる。その後、基板上に配置された接着性シリコーン層を含むガラス基板を、室温に冷却する。複合品は優れた透明性を有する。
【0078】
[実施例4]
実施例2のシリコーン組成物を含む耐火等級ガラス窓を形成させる。実施例2のシリコーン組成物を、第一のガラス基板および第二のガラス基板(いずれも長さ150mm、幅150mm、厚さ3.2mmである)上に配置する。第一および第二のガラス基板を、シリコーン組成物が第一および第二のガラス基板間に配置されるように、重ねる。第一および第二のガラス基板を、それらの間に配置されたシリコーン組成物と共に、130℃で8分間、その後145℃で30分間加熱して、接着性シリコーン層を形成させ、それにより耐火等級ガラス窓を形成させる。その後、この耐火等級ガラス窓を室温に冷却する。この耐火等級ガラス窓は、優れた透明性を有する。
【0079】
比較例5]
シリコーン組成物を含む耐火等級ガラス窓を形成させる。シリコーン組成物は、実施例2のシリコーン組成物であるが、未処理コロイダルシリカをさらに含んでいる。耐火等級ガラス窓を、実施例4で説明した工程に従って形成させる。この耐火等級ガラス窓は、不透明である。
【0080】
実施例および比較例で説明したとおり、高分子表面被覆を有する無機粒子は、優れた透明性を有する接着性シリコーン層を与えるが、未処理コロイダルシリカなどの代替物は、不透明な接着性シリコーン層を与える。
【0081】
本発明を、実例を示すことによって記述してきたが、使用してきた用語は、限定することを意図するのではなく、むしろ説明することを意図していることが理解されるべきである。明らかに、上述した教示を踏まえて、本発明の多くの変更や変化が可能である。本発明は、具体的に記述されている方法とは別の方法で実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる官能基Rを有する単位を含む硬化性シリコーン樹脂;
(b)高分子表面被覆を有する無機粒子であって、前記高分子表面被覆が、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位(式中、Rはアリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる)を含むオルガノポリシロキサンを含む、無機粒子(ただし、RはRに等しく、Rがアリール基であるときはRもアリール基であり;Rがアルキル基であるときはRもアルキル基であり;Rがアルケニル基であるときはRもアルケニル基であり;かつ、Rが水素であるときはRも水素であることを条件とする);ならびに
(c)(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の前記高分子表面被覆の少なくとも1つとの反応性を有する架橋性化合物:
を含むシリコーン組成物。
【請求項2】
がアリール基である、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンおよび/または(a)の硬化性シリコーン樹脂が、さらにアルケニル基を含む、請求項2記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
がアルケニル基である、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンおよび/または(a)の硬化性シリコーン樹脂が、さらにアリール基を含む、請求項4に記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
(b)の無機粒子が金属酸化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物が、SiO、Al、Al(OH)、ZrO、TiO、SnO、およびGeOから選ばれる、請求項6記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
(b)の無機粒子が、コロイダルシリカ成分である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
(b)の無機粒子が50nm未満の粒径を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項10】
(b)の無機粒子が20nm未満の粒径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
前記高分子表面被覆および(a)の硬化性シリコーン樹脂が、互いに0.03以内の範囲にある屈折率を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項12】
(b)の無機粒子が、前記シリコーン組成物100重量部に基づいて、5から95重量部の量で前記シリコーン組成物中に存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項13】
(b)の無機粒子が、前記シリコーン組成物100重量部に基づいて、45から95重量部の量で前記シリコーン組成物中に存在する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項14】
前記オルガノポリシロキサンが、フェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、およびこれらの組合せの群から選ばれるオルガノシランの重合反応生成物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項15】
前記オルガノポリシロキサンが、ビニルトリアルコキシシランと、フェニルトリアルコキシシランとの重合反応生成物を含み、前記ビニルトリアルコキシシランが、前記フェニルトリアルコキシシラン100モルに基づいて5から75モルの量で反応されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項16】
(a)の硬化性シリコーン樹脂が、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項17】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂の単位が、下記平均式:
SiO(4−a)/2
(式中、Rは上述により定義したとおりであり、aは、0.5≦a<2.5を満たす正の数である)
で表される(ただし、前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂が、1分子あたり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を有することを条件とする)、請求項16に記載のシリコーン組成物。
【請求項18】
(c)の架橋性化合物が、少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を含む、請求項17に記載のシリコーン組成物。
【請求項19】
前記有機ケイ素化合物が、下記平均式:
SiO(4−b−c)/2
(式中、Rは、脂肪族不飽和を含有しない置換または非置換の一価炭化水素基であり、bは、0.7≦b<2.1を満たす正の数であり、cは、0.001≦b≦2.0を満たす正の数であり、かつ、0.8≦b+c<2.5である)
で表される単位を含む、請求項18に記載のシリコーン組成物。
【請求項20】
前記有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と、前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂のケイ素結合アルケニル基とのモル比が、0.7:1から1.5:1である、請求項18または19に記載のシリコーン組成物。
【請求項21】
(a)の硬化性シリコーン樹脂が、過酸化物硬化性シリコーン樹脂、縮合反応硬化性シリコーン樹脂、エポキシ硬化性シリコーン樹脂、紫外線硬化性シリコーン樹脂、および高エネルギー放射線硬化性シリコーン樹脂から選ばれる、請求項1から15および17から20に記載のシリコーン組成物。
【請求項22】
ガラス状材料から形成された基材と、
前記基材に隣接し、かつ、前記基材に接触して配置される接着性シリコーン層であって、
(a)アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる官能基Rを有する単位を含む硬化性シリコーン樹脂;
(b)高分子表面被覆を有する無機粒子であって、前記高分子表面被覆が、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位(式中、Rはアリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる)を含むオルガノポリシロキサンを含む、無機粒子(ただし、RはRに等しく、Rがアリール基であるときはRもアリール基であり;Rがアルキル基であるときはRもアルキル基であり;Rがアルケニル基であるときはRもアルケニル基であり;かつ、Rが水素であるときはRも水素であることを条件とする);ならびに
(c)(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の無機粒子の前記高分子表面被覆の少なくとも1つとの反応性を有する架橋性化合物
を含むシリコーン組成物から形成される、接着性シリコーン層と
を含む複合品。
【請求項23】
ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において80%以上の透過性を有する、請求項22に記載の複合品。
【請求項24】
ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において85%以上の透過性を有する、請求項22または23に記載の複合品。
【請求項25】
ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において90%以上の透過性を有する、請求項22〜24のいずれか1項に記載の複合品。
【請求項26】
前記接着性シリコーン層に隣接し、かつ、前記接着性シリコーン層に接触して配置される中間層をさらに含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載の複合品。
【請求項27】
第二の接着性シリコーン層および第二の基材をさらに含み、ここで、前記第二の接着性シリコーン層が、前記中間層に隣接し、かつ、前記中間層に接触して配置され、前記シリコーン組成物から形成されており、前記第二の基材が、前記第二の接着性シリコーン層に隣接し、かつ、前記第二の接着性シリコーン層に接触して配置され、第二のガラス状材料から形成されている、請求項26に記載の複合品。
【請求項28】
ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において80%以上の透過性を有する、請求項26または27に記載の複合品。
【請求項29】
前記接着性シリコーン層に隣接し、かつ、前記接着性シリコーン層に接触して配置され、第二のガラス状材料から形成された、第二の基材をさらに含む、請求項22〜28のいずれか1項に記載の複合品。
【請求項30】
ASTM D1746−97に準拠して測定して、300nmから800nmの波長において80%以上の透過性を有する、請求項29に記載の複合品。
【請求項31】
前記中間層が、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、またはこれらの組合せを含む、請求項26に記載の複合品。
【請求項32】
シリコーン組成物を製造する方法であって、以下の工程:
(I)アリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる官能基Rを有する単位を含む硬化性シリコーン樹脂(a)を準備する工程;
(II)無機粒子(b)を準備する工程;
(III)(b)の無機粒子上に、オルガノポリシロキサンを含む高分子表面被覆を形成させる工程[ここで、前記オルガノポリシロキサンは、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2、およびこれらの組合せから選ばれる単位(式中、Rはアリール基、アルキル基、アルケニル基、および水素から選ばれる)を含む(ただし、RはRに等しく、Rがアリール基であるときはRもアリール基であり;Rがアルキル基であるときはRもアルキル基であり;Rがアルケニル基であるときはRもアルケニル基であり;かつ、Rが水素であるときはRも水素であることを条件とする)]:
(IV)(a)の硬化性シリコーン樹脂および(b)の前記高分子表面被覆の少なくとも1つとの反応性を有する架橋性化合物(c)を準備する工程:ならびに
(V)(a)、(b)、および(c)を混合してシリコーン組成物を製造する工程:
を含む、方法。
【請求項33】
高分子表面被覆を形成させる前記工程が、(b)の無機粒子の存在下でオルガノシランを重合させて、前記オルガノポリシロキサンを形成させる工程であるとさらに定義される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オルガノシランの重合工程が、(b)の無機粒子の存在下で、前記オルガノシランを加水分解させて加水分解されたシランを形成させる工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記オルガノシランの重合工程が、(b)の無機粒子の存在下で、前記加水分解されたシランを縮合させて前記オルガノポリシロキサンを形成させる工程を含む、請求項34に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【公表番号】特表2012−509393(P2012−509393A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537578(P2011−537578)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/064969
【国際公開番号】WO2010/059710
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】