説明

シリンダヘッドガスケット

【課題】シリンダボアを形成する円筒部の上面での不凍液入冷却水の浸入による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができるオープンデッキタイプのエンジンに使用するシリンダヘッドガスケットを提供する。
【解決手段】第1金属基板10のシリンダボア用孔2の周縁部に形成した折り返し部12内に、内周側平坦部21を挿入して第2金属基板20を配置し、この内周側平坦部21の外周側に第1ハーフビード22を設け、更に、折り返し部12内で、前記内周側平坦部21と第1金属基板10との間に、第1フルビード31を有する円環状のビード板30と、その外周側に第2ハーフビード42を設けた中間板40を配置し、第2ハーフビード42の傾斜部の内周側の位置42aを、シリンダブロック50のシリンダボア51を形成する内筒部52の外周側の位置52bに、一致又はその内周側に沿わせて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンデッキタイプのエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持してシールを行うシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットは、自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)等のエンジン部材の間に挟まれた状態で、ヘッドボルトにより締結され、燃焼ガス、オイル、冷却水等の流体をシールする役割を持っている。
【0003】
一方、エンジンをシリンダブロックの形態で分けると、シリンダブロックにおけるシリンダヘッドとの接合面に冷却水通路が無いクローズドタイプのエンジンと、シリンダブロックにおけるシリンダヘッドとの接合面が冷却液通路として開いているオープンデッキタイプのエンジンとがある。図12に示すように、オープンデッキタイプのエンジンの場合には、エンジンブロック50のシリンダヘッドに近い部分に冷却液通路(ウォータージャケット)52があり、冷却性能の面と軽量化の面で有利で、かつ、開口部があるので製造が容易となる。
【0004】
このオープンデッキタイプのエンジン用のシリンダヘッドガスケットに関係して、シリンダブロックの円筒部と冷却水通路の外側を成す外壁部との両方に亙って介挿される基板のシリンダ孔の内周に沿ってグロメットを設け、シリンダスリーブより内側に形成されるグロメットの最大厚さ部によりシリンダボアの燃焼ガスのシールを行うと共に、冷却水通路を隔てた両側に形成した段差ビードにより冷却水をシールする金属ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このシリンダヘッドにおいては、冷却水通路とシリンダボアの間における冷却水のシール対策として段差ビードが設けられているが、この段差ビードの角部の位置が、冷却水通路の壁面(円筒部の外壁面)よりも内周側にあり、冷却水がシリンダライナ(円筒部)の上面に浸入した状態になっている。そのため、シリンダブロックの接合面で、アルミニウム合金に対する不凍液入冷却水(LLC)の浸入による電界腐食が生じて、この部分のシール性能が低下する可能性が生じるという問題がある。
【0006】
シリンダボアと冷却水通路との間のシール性能が低下すると、燃焼ガスが冷却水通路に入り込んで冷却水の循環を妨げるので、大きなエンジントラブルの原因となる。そのため、シリンダボア側のシールが、ボルト孔側や外部側のシールに比べて重要となる。そして、この電界腐食を防止するためには、このシリンダライナの上面に冷却液通路の冷却液が直接接触する部分を減少させることが重要となる。従来技術においては、この不凍液入冷却水の浸入による電界腐食に対する考慮が不十分であり、シールラインは設けられるものの、冷却水通路との関係に細心の注意が払われず、シリンダライナ上面への浸水を十分に防いでいなかった。
【特許文献1】特開平10−281290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、オープンデッキタイプのエンジンに使用するシリンダヘッドガスケットにおいて、シリンダボアを形成する円筒部の上面における不凍液入冷却水の浸入による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができるシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、オープンデッキタイプのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟持されてシール機能を発揮し、第1金属基板をシリンダボア用孔の周縁部に折り返し部を形成すると共に、該折り返し部内に、第2金属基板を内周側平坦部を挿入して該第2金属基板を配置し、該第2金属基板において、前記内周側平坦部の外周側に第1ハーフビードを設けて該第1ハーフビードの外周側の平坦部が前記折り返し部側に配置されるように形成し、更に、前記折り返し部内で、第2金属基板の前記内周側平坦部と第1金属基板との間に、第1金属基板側に凸となる第1フルビードを有する円環状のビード板を積層して配置したシリンダヘッドガスケットにおいて、前記外周側平坦部と前記第1金属基板との間に、内周側から外周側に行くに伴い前記第2金属基板側から前記第1金属基板側に行くように傾斜した第2ハーフビードを設けた中間板を配置し、該第2ハーフビードの傾斜部の内周側の位置を、シリンダブロックのシリンダボアを形成する内筒部の外周側の位置に、一致又はその内周側に沿わせて配置して構成される。
【0009】
また、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記第1フルビードと、前記第2ハーフビードとの間において、前記第1金属基板に前記折り返し部側に凸となる第2フルビードを設けて構成される。
【0010】
あるいは、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記第1金属基板に第3金属基板を積層して形成すると共に、該第3金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に第3フルビードを有し、前記中間板の第2ハーフビードに対向する位置に第3ハーフビードを有して形成される。
【0011】
あるいは、上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、オープンデッキタイプのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟持されてシール機能を発揮し、第1金属基板をシリンダボア用孔の周縁部に折り返し部を形成すると共に、該折り返し部内に、第2金属基板を挿入して配置し、前記折り返し部内で、第2金属基板と第1金属基板との間に、第1金属基板側に凸となる第1フルビードを有する円環状のビード板を積層すると共に、該ビード板の外周側に内周側から外周側に行くに伴い前記第1金属基板側から前記第2金属基板側に行くように傾斜した第2ハーフビードを設けた中間板を積層し、更に、前記第1金属基板の折り返し部側に第4金属基板を積層したシリンダヘッドガスケットにおいて、該第4金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に前記ビード板側に凸となる第4フルビードを有し、前記中間板の第2ハーフビードに対向する位置に、内周側から外周側に行くに伴い前記第1金属基板側の折り返し部側から前記第2金属基板側に行くように傾斜した第4ハーフビードを有して形成すると共に、該第4ハーフビードの傾斜部の内周側の位置を、シリンダブロックのシリンダボアを形成する内筒部の外周側の位置に、一致又はその内周側に沿わせて配置して構成される。
【0012】
また、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記第1金属基板に第5金属基板を積層して形成すると共に、該第5金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に前記ビード板側に凸となる第5フルビードを有して形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、第2ハーフビード又は第4ハーフビードの傾斜部の内周側の位置を、シリンダブロックのシリンダボアを形成する内筒部の外周側の位置に、一致又はその内周側に沿わせて配置するので、冷却水通路とシリンダボア間のシール性能を維持したまま、シリンダボアを形成する円筒部の上面における不凍液入冷却水の浸水部分を減少して不凍液入冷却水の浸入を抑制でき、この部分の不凍液入冷却水による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができる。また、この第2ハーフビード又は第4ハーフビードによる押圧力が内筒部の外周側に沿って発生するので、内筒部に発生する応力の最適化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明に係るシリンダヘッドガスケットの実施の形態について説明する。なお、図1〜図14は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、シリンダボア用穴の大きさ、シリンダライナ、水穴、ビードの大きさ、形等の寸法を実際のものとは異ならせて、誇張して示している。
【0015】
図2、図3、図5、図6に示すように、本発明に係る実施の形態のシリンダヘッドガスケット1、1Aは、多気筒エンジン用のオープンデッキタイプのエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)のエンジン部材の間に挟持されるメタルガスケットであって、シリンダボアの高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路や冷却オイル通路等の冷却水やオイル等の流体をシールする。
【0016】
これらのシリンダヘッドガスケット1、1Aが用いられるオープンデッキタイプのエンジンでは、図1、図4、図7、図14に示すように、シリンダブロック50は、シリンダボア51が形成されている円筒部(ブロックライナー)52と、外壁部53とから形成される。また、この内筒部52と外壁部53により冷却水通路(ウォータージャケット)54が形成される。また、外壁部53には、水穴55やオイル穴56や締結ボルト用のボルト穴57が設けられ、円筒部52にも水穴55が設けられている。
【0017】
このオープンデッキタイプのエンジンのシリンダブロック50では、シリンダヘッドとの接合面において冷却水通路54が開口しているので、剛性の維持が難しくボア変形し易いが、冷却性能面で有利であり、また、鋳造し易い。また、円筒部52には、シリンダボア51側にシリンダスリーブ(シリンダライナ)52aが嵌合している。このシリンダスリーブ52aは、耐磨耗性、耐焼き付き性、耐熱性、強度に優れている特殊鋳鉄で形成され、円筒部52と外壁部53は、軽量性に優れているアルミ合金で形成される。
【0018】
そして、第1実施の形態のシリンダヘッドガスケット1は、図2及び図3に示すように、第1金属基板(金属基板:金属構成板)10、第2金属基板20、ビード板30、中間板40を有して構成される。この第1及び第2金属基板10、20やビード板30、中間板40は、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等で形成される。特に第1金属基板10には耐熱性や耐腐食性に優れた材料であるアニール材を使用し、また、ビード板30には弾力性に優れた材料であるバネ材を使用する。
【0019】
また、これらの金属板10,20,40は、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製造され、シリンダボア用穴(燃焼室用穴)2、冷却水の循環のための水(図示しない)、潤滑油の循環のためのオイル穴(図示しない)、締結ヘッドボルト用のヘッドボルト穴(図示しない)等が形成される。
【0020】
図2及び図3に示すように、この第1金属基板10をシリンダボア用穴2の周縁部に折り返して曲がり部11と折り返し部(フランジ部)12を形成すると共に、この折り返し部12内に、第2金属基板20の内周側平坦部21を挿入して第2金属基板20を配置する。この第2金属基板20では、内周側平坦部21の外周側に、外周側に行くに伴い折り返し部12側に開く第1ハーフビード22を設けて、この第1ハーフビード22の外周側平坦部23が面厚方向に関して折り返し部側12に配置されるように形成する。
【0021】
また、折り返し部12内において、第2金属基板20の内周側平坦部21と第1金属基板10との間に、第1金属基板10側に凸となる第1フルビード31を有する円環状のビード板30を積層して配置する。更に、外周側平坦部23と第1金属基板10との間に、内周側から外周側に行くに伴い第2金属基板20側から第1金属基板10側に開くように傾斜した第2ハーフビード42を設けた中間板40を配置する。この第2ハーフビード42の内周側に形成された内周側平坦部41を第1ハーフビード22の外周側に配置する。また、第1フルビード31と、第2ハーフビード42との間において、第1金属基板10に折り返し部12側に凸となる第2フルビード13を設けて構成する。
【0022】
これらの構成によれば、折り返し部12により、燃焼ガスが第2金属基板20やビード板30に接触するのを防止できるので、第1金属基板10には耐熱性や耐腐食性に優れた材料を使用し、第2金属基板20やビード板には弾力性に優れた材料を使用することができ、それぞれの材料の特性を活かした組み合わせでガスケット1を構成できる。従って、シール性、耐熱性、耐腐食性、耐久性等の各種性能に優れたガスケットとすることができる。
【0023】
また、第1ハーフビード22を設けたため、第1ハーフビード22の内周側平坦部21を折り返し部12の内側に収めやすくなり、内筒部52の鍔部の幅が狭い場合でも、折り返し部12内に第2金属基板20の一部21を挿入できるので、折り返し部12の弾力性の向上と挿入部21のストッパ機能による亀裂発生防止を図ることができる。
【0024】
また、第2フルビード13を設けた構成により、シリンダヘッドガスケット1への押圧力が増加して第1フルビード31が押圧された時に、第2フルビード13がその押圧力を分担でき、第1フルビード31のへたりを防止できる。
【0025】
そして、本発明においては、図1〜図3に示すように、第2ハーフビード42の傾斜部の内周側の位置42aを、内筒部12の外周側(外壁面)の位置52bに一致させて配置して構成する。この構成により、この第2ハーフビード42の角部の位置42aが、円筒部52の外壁面52bと一致しているので冷却水は円筒部52の上面に殆ど浸入しない状態となる。そのため、シリンダボア51を形成する円筒部52の上面での不凍液入冷却水による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができる。なお、この図1〜図3の構成のシリンダヘッドガスケット1では、従来技術の標準品よりも、歪振幅が4ヶ所の平均値で約12%低減するという実験結果を得られている。
【0026】
次に、第2実施の形態について説明する。図4〜図6に示すように、この第2実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aでは、中間板40Aに設けた第2ハーフビード42の傾斜部の内周側の位置42aを、内筒部12の外周側の位置52bに沿わせて内周側に形成する。つまり、例えば、一定の距離Dを持たせて、第2ハーフビード42の傾斜部の内周側の位置(図4では点線で図示)42aを、内筒部12の外周側の位置52bよりも内周側に配置する。その他の構成は、第1実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同じである。
【0027】
この構成により、この第2ハーフビード42の角部の位置42aが、円筒部52の外壁面52bに沿って一定の距離Dで内周側に配置されるので、冷却水は円筒部52の上面における冷却水が浸入する部分が非常に狭い範囲となる。そのため、シリンダボア51を形成する円筒部52の上面での不凍液入冷却水による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができる。なお、必ずしも一定の距離Dとする必要はない。つまり、距離Dを可変してもよい。
【0028】
次に、第3実施の形態について説明する。図7及び図8に示すように、この第3実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Bでは、図1〜図3の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Bの第1金属基板10において、第2フルビード13を省くと共に、この第1金属基板10に新たな第3金属基板60を積層して形成する。この第3金属基板60は、ビード板30の第1フルビード31に対向する位置に第3フルビード61を有し、更に、中間板40の第2ハーフビード42に略対向する位置に第3ハーフビード62を有して形成される。この第3フルビード61はビード板30側に凸となるように形成される。また、第3ハーフビード62は内周側から外周側に行くに連れて第1金属基板10側に寄るように形成される。つまり、第3ハーフビード62より外周側で、第3金属基板60は第1金属基板10側に当接する。その他の構成は、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同じである。
【0029】
この構成により、この第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1の作用効果に加えて、第1フルビード31の部位と第2ハーフビード42の部位におけるバネ性を向上させることができる。なお、第2フルビード13が無い分だけシールライン数は減少する。
【0030】
また、第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aにおいて、第2フルビード13を省くと共に、この第1金属基板10に新たな第3金属基板60を積層して第4の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを構成してもよい。
【0031】
次に、第4実施の形態について説明する。図9及び図10に示すように、この第4実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Cでは、オープンデッキタイプのシリンダブロック50とシリンダヘッドとの間に挟持されてシール機能を発揮し、第1金属基板10をシリンダボア用孔2の周縁部に折り返し部12を形成する。それと共に、この折り返し部12内に、第2金属基板20を挿入して配置し、折り返し部12内で、第2金属基板20と第1金属基板10との間に、第1金属基板10側に凸となる第1フルビード31を有する円環状のビード板30を積層する。
【0032】
また、このビード板30の外周側に内周側から外周側に行くに伴い第1金属基板10側から第2金属基板20側に行くように傾斜した第2ハーフビード42を設けた中間板40を積層し、更に、第1金属基板10の折り返し部12側に第4金属基板70を積層する。
【0033】
この第4金属基板70は、ビード板30の第1フルビード31に対向する位置に第4フルビード71を有して形成される。この第4フルビード71はビード板30側に凸となるように形成される。また、中間板40の第2ハーフビード42に対向する位置に、第4ハーフビード72が設けられる。この第4ハーフビード72は、第1金属基板10側の折り返し部12側から第2金属基板20側に行くように傾斜して設けられる。また、第5金属基板80は、ビード板30の第1フルビード31に対向する位置にビード板30側に凸となる第5フルビード81を有して形成される。この第5フルビード81を設けることにより、第1フルビード31の部位におけるバネ性を向上させることができる。
【0034】
そして、第4ハーフビード72の傾斜部の内周側の位置72aを、シリンダブロック50のシリンダボア51を形成する内筒部52の外周側の位置52bに、一致させて配置する。この構成により、この第4ハーフビード72の角部の位置72aが、円筒部52の外壁面52bと一致しているので冷却水は円筒部52の上面に殆ど浸入しない状態となる。そのため、シリンダボア51を形成する円筒部52の上面での不凍液入冷却水による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができる。
【0035】
また、図示していないが、第4ハーフビード72の傾斜部の内周側の位置72aを、シリンダブロック50のシリンダボア51を形成する内筒部52の外周側の位置52bの内周側に例えば一定の距離Dで沿わせて配置すると、この構成により、この第4ハーフビード72の角部の位置72aが、円筒部52の外壁面52bに沿って一定の距離Dで内周側に配置されるので、冷却水は円筒部52の上面における冷却水が浸入する部分が非常に狭い範囲となる。そのため、シリンダボア51を形成する円筒部52の上面での不凍液入冷却水による電界腐食を防止できて、シール性能を向上させることができる。なお、必ずしも一定の距離Dとする必要はない。つまり、距離Dを可変してもよい。
【0036】
なお、参考までに、図11〜図13に、この第2ハーフビード42の角部の位置42aが、円筒部52の外壁面52bに沿わずに、シリンダボア用穴2から一定距離Wxで配置されるシリンダヘッドガスケット1Xを示す。この構成では、図11に示すように、シリンダブロック50における冷却水通路54とシリンダボア51との距離Wx+Wyが変化するため、第2ハーフビード42の傾斜部の内周側の位置42aと、内筒部12の外周側の位置52bとの距離Wyが変化する。この距離Wyは、図11及び図12に示すように、ボルト穴57近傍では小さいが、図11及び図13に示すように、ボルト穴57の相互間の中央部では大きくなるために、冷却水は円筒部52の上面に浸入した状態となる。そのため、シリンダボア51を形成する円筒部52の上面での不凍液入冷却水による電界腐食を防止できない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施の形態のシリンダヘッドガスケットの構成を説明するためのオープンデッキタイプのエンジンのシリンダブロックの部分上面図である。
【図2】本発明の第1実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態のシリンダヘッドガスケットの構成を説明するためのオープンデッキタイプのエンジンのシリンダブロックの部分上面図である。
【図5】本発明の第2実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の第2実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図4のB−B断面図である。
【図7】本発明の第3実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のA−A断面図に相当する図である。
【図8】本発明の第3実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のB−B断面図に相当する図である。
【図9】本発明の第4実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のA−A断面図に相当する図である。
【図10】本発明の第4実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す、図1のB−B断面図に相当する図である。
【図11】参考としてのシリンダヘッドガスケットの構成を説明するためのオープンデッキタイプのエンジンのシリンダブロックの部分上面図である。
【図12】参考としてのシリンダヘッドガスケットを示す、図9のA−A断面図である。
【図13】参考としてのシリンダヘッドガスケットを示す、図9のB−B断面図である。
【図14】オープンデッキタイプのエンジンのシリンダブロックの一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、1A、1B、1C シリンダヘッドガスケット
2 シリンダボア用穴(燃焼室用穴)
10 第1金属基板
12 折り返し部(フランジ部)
20 第2金属基板
21 第2金属基板の内周側平坦部
22 第1ハーフビード
30 ビード板
31 第1フルビード
40 中間板
42 第2ハーフビード
50 シリンダブロック
51 シリンダボア
52 円筒部(ブロックライナー)
52b 円筒部の外壁面
53 外壁部
54 冷却水通路(ウォータージャケット)
60 第3金属基板
61 第3フルビード
62 第3ハーフビード
70 第4金属基板
71 第4フルビード
72 第4ハーフビード
80 第5金属基板
81 第5フルビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンデッキタイプのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟持されてシール機能を発揮し、第1金属基板をシリンダボア用孔の周縁部に折り返し部を形成すると共に、該折り返し部内に、第2金属基板を内周側平坦部を挿入して該第2金属基板を配置し、該第2金属基板において、前記内周側平坦部の外周側に第1ハーフビードを設けて該第1ハーフビードの外周側の平坦部が前記折り返し部側に配置されるように形成し、更に、前記折り返し部内で、第2金属基板の前記内周側平坦部と第1金属基板との間に、第1金属基板側に凸となる第1フルビードを有する円環状のビード板を積層して配置したシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記外周側平坦部と前記第1金属基板との間に、内周側から外周側に行くに伴い前記第2金属基板側から前記第1金属基板側に行くように傾斜した第2ハーフビードを設けた中間板を配置し、該第2ハーフビードの傾斜部の内周側の位置を、シリンダブロックのシリンダボアを形成する内筒部の外周側の位置に、一致又はその内周側に沿わせて配置したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
前記第1フルビードと、前記第2ハーフビードとの間において、前記第1金属基板に前記折り返し部側に凸となる第2フルビードを設けたことを特徴とする請求項1記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
前記第1金属基板に第3金属基板を積層して形成すると共に、該第3金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に第3フルビードを有し、前記中間板の第2ハーフビードに対向する位置に第3ハーフビードを有して形成されることを特徴とする請求項1記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
オープンデッキタイプのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟持されてシール機能を発揮し、第1金属基板をシリンダボア用孔の周縁部に折り返し部を形成すると共に、該折り返し部内に、第2金属基板を挿入して配置し、前記折り返し部内で、第2金属基板と第1金属基板との間に、第1金属基板側に凸となる第1フルビードを有する円環状のビード板を積層すると共に、該ビード板の外周側に内周側から外周側に行くに伴い前記第1金属基板側から前記第2金属基板側に行くように傾斜した第2ハーフビードを設けた中間板を積層し、更に、前記第1金属基板の折り返し部側に第4金属基板を積層したシリンダヘッドガスケットにおいて、
該第4金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に前記ビード板側に凸となる第4フルビードを有し、前記中間板の第2ハーフビードに対向する位置に、内周側から外周側に行くに伴い前記第1金属基板側の折り返し部側から前記第2金属基板側に行くように傾斜した第4ハーフビードを有して形成すると共に、
該第4ハーフビードの傾斜部の内周側の位置を、シリンダブロックのシリンダボアを形成する内筒部の外周側の位置に、一致又はその内周側に沿わせて配置したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項5】
前記第1金属基板に第5金属基板を積層して形成すると共に、該第5金属基板は、前記ビード板の第1フルビードに対向する位置に前記ビード板側に凸となる第5フルビードを有して形成されることを特徴とする請求項4記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−202568(P2008−202568A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42213(P2007−42213)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】