説明

シリンダヘッド

【課題】連続運転時の排気ガス冷却と暖気運転時の排気ガス保温とを両立可能な排気ポート構造を有するシリンダヘッドを提供する。
【解決手段】排気ポート1内に筒状部材である排気ポートライナ8を配置し、当該排気ポートライナ8外周面と前記排気ポート1内周面との間に微小隙間13を設けて構成されるシリンダヘッド10において、前記排気ポートライナ8外周面に伝熱部材を配置するとともに、当該伝熱部材と前記排気ポート内周面との間に微小隙間13aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに関する。特に、シリンダヘッドが有する排気ポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダヘッドが有する排気ポート内に、筒状部材を設けることにより、内燃機関の始動時(暖気運転時)に排気ガスから排気ポート内周面への熱の移動を抑制する断熱性と、内燃機関の連続駆動時に排気ガスから排気ポート内周面への熱の移動を促進する伝熱性とを確保したシリンダヘッドの技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、内燃機関の始動時における断熱性と内燃機関の連続駆動時における伝熱性との双方を確保し、排気ガスの過昇温を抑える、内燃機関の排気ポート構造が開示されている。具体的には、当該内燃機関の排気ポート構造は、シリンダヘッドの排気ポートに筒状の排気ライナが嵌合されたものであり、当該排気ライナの外周面と排気ポートの内周面との間に、空気断熱層として機能する微小隙間が形成されたものである。これにより、内燃機関の連続駆動時には、排気ライナが熱膨張して大きくなることで微小隙間が消失し、排気ライナの外周面が排気ポートの内周面に接触するので、排気ガスから排気ポート内周面への伝熱性が増し、排気ガスの温度低下が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている内燃機関の排気ポート構造では、内燃機関の連続駆動時において、排気ガスの冷却性能が低い。
【0006】
なぜなら、シリンダヘッドの排気ポート内周面(内壁面)には凹凸が存在するため、排気ライナが熱膨張しても、排気ライナの外周面と排気ポートの内周面とが完全に密着するわけではなく、排気ポート内周面に存在する凹凸の段差により排気ライナ外周面と排気ポート内周面との間に、隙間(空気断熱層)が生じてしまい、想定される伝熱性が得られない。その結果として内燃機関の連続駆動時において、排気ガスが十分に冷えないという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、連続運転時の排気ガス冷却と暖気運転時の排気ガス保温とを両立可能な排気ポート構造を有するシリンダヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
排気ポート内に筒状部材を配置し、当該筒状部材外周面と前記排気ポート内周面との間に隙間を設けて構成されるシリンダヘッドにおいて、
前記筒状部材外周面に伝熱部材を配置するとともに、当該伝熱部材と前記排気ポート内周面との間に隙間を有するものである。
【0010】
請求項2においては、
前記伝熱部材は、軟質金属コートであるものである。
【0011】
請求項3においては、
前記筒状部材は、当該筒状部材の内部を所定方向に仕切る仕切板を有し、
前記伝熱部材は、前記仕切板端部の延長上の前記筒状部材外周面に形成される凸部であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気ポートにおいて、内燃機関の始動時における断熱性と内燃機関の連続運転時における伝熱性とを確保するとともに、特に連続運転時において排気ガスの冷却性能を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシリンダヘッドを示す模式図であり、(a)は排気ポートが形成されたシリンダヘッド内部に配置された排気ポートライナを示す模式図、(b)は(a)におけるA−A矢視断面図。
【図2】図1(a)におけるB−B矢視断面図。
【図3】排気ポートに配置された排気ポートライナを示す断面図であり、(a)は図1(b)に示すA−A矢視断面図の排気ポート部分を拡大した断面図、(b)は(a)における点線丸印C部分を拡大した拡大図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るシリンダヘッドを示す模式図であり、(a)は排気ポートが形成されたシリンダヘッド内部に配置された排気ポートライナを示す模式図、(b)は(a)におけるA−A矢視断面図。
【図5】図4(a)におけるB−B矢視断面図。
【図6】排気ポートに配置された排気ポートライナを示す図であり、(a)は図4(b)に示すA−A矢視断面図の排気ポート部分を拡大した拡大図、(b)は(a)における点線丸印D部分を拡大した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
以下、本発明の第1の実施形態に係るシリンダヘッド10の構成について、図を用いて説明する。
【0015】
シリンダヘッド10は、シリンダブロック(図示せず)の上部に載置固定され、当該シリンダブロックに形成されるシリンダ(図示せず)に対して吸排気経路を形成するとともに、当該吸排気経路の開閉状態を切り換えるための吸排気バルブ(図示せず)を支持するための部材である。図1(a)には、排気ポート1及び吸気ポート2をシリンダヘッド10上側から見た状態が模式的に示されている。シリンダヘッド10の内部には、図1(a)に示すように、複数(本実施形態では4つ)の排気ポート1と、複数(本実施形態では4つ)の吸気ポート2と、複数(本実施形態では4つ)の燃焼室3と、排気ポート1内周面から所定距離離間して排気ポート1の上下に配置される冷却水通路であるウォータージャケット4、5(図2参照)と、複数(本実施形態では3つ)のオイル落し通路6、が主に形成されている。また、シリンダブロックには、シリンダブロック内に設けられたピストン(図示せず)を備える。また、燃焼室2は、シリンダブロック、シリンダヘッド10及びピストンにより形成される。
【0016】
排気ポート1は、図2に示すように、燃焼室3で発生した排気ガス(図2中の点線矢印)を燃焼室3からエキゾーストマニホールド(排気マニホールド)7ヘ排気するための流路であり、シリンダヘッド10の底部に形成される燃焼室3と、シリンダヘッド10の一端に接続されるエキゾーストマニホールド7とを連通する流路としてシリンダヘッド10に形成される。排気ポート1は、燃焼室3から斜め上方に屈曲して延出される。また、排気ポート1は、図1(a)に示すように二又に分岐した排気ポート1一端が排気ポート1中途部にて繋がり、ひとつの排気ポート1他端に集合するように形成されており、燃焼室3で発生した排気ガスが燃焼室3から二又の排気ポート1一端の各入口より導入され、当該導入された排気ガスの流れが図2に示すように略直角に曲がるように方向を変えてひとつの排気ポート1他端へと誘導することが可能となっており、排気ポート1他端に接続されたエキゾーストマニホールド7に排気ガスを導入可能である。こうして、排気ガスは、燃焼室3に開口する排気ポート1入口から導入されると排気ポート1上方へと流れていき、シリンダヘッド10外部に開口する排気ポート1出口を介してエキゾーストマニホールド7に誘導される。具体的には、燃焼室3において発生した排気ガスは、図示しない排気バルブを「開」状態とすることによって、排気ポート1を通じて、該排気ポート1に接続されるエキゾーストマニホールド7に向けて排気される。
【0017】
また、排気ポート1他端の排気ポート1出口近傍には、後述する排気ポートライナ8を排気ポート1出口側から排気ポート1内に挿通して嵌合可能なライナ嵌合部9が形成されている。ライナ嵌合部9は、排気ポート1他端の一部を構成する断面視角丸長方形状の空間であり、その内周面は上部内周面9a、下部内周面9b、側部内周面9c(図3(a)参照)とで形成されている。排気ポート1(ライナ嵌合部9)の内周面である上部内周面9a、下部内周面9b、側部内周面9cには、シリンダヘッド10の製造工程に由来する凹凸形状を有する(図3(b)では上部内周面9aの凹凸形状を示している)。
なお、図2においては、説明の便宜を図るために、排気ポート1の排気ガス入口側に配設される、排気ポート1入口を開閉するための排気バルブの図示を省略している。
【0018】
排気ガスは高温であり、シリンダヘッド10の下流に接続して配置されるエキゾーストマニホールド7や触媒等の過熱を避けるため、排気ポート1内を排気ガスが通過する際に当該排気ガスの冷却を行うことが必要である。このため、排気ポート1における上部内周面9a、下部内周面9bのそれぞれの裏側にあたる部位にはウォータージャケット4、5が形成されている(図2参照)。ウォータージャケット4、5は、複数燃焼室3の配列方向(図1における左右方向)に沿って延設されている。
【0019】
また、ウォータージャケット4、5には、ラジエータ(図示せず)等により適宜冷却された冷却水がポンプ(図示せず)等により導入され、当該冷却水がウォータージャケット4、5内を循環する。そして、排気ポート1内を通過する排気ガスと、ウォータージャケット4、5内を循環する冷却水とを排気ポート1内周面を介して熱交換させることによって、ウォータージャケット4、5が、排気ガスやシリンダヘッド10自体の温度を低下させる構成としている。
【0020】
オイル落し通路6は、図1に示すように、各排気ポート1の間にシリンダヘッド10上下方向に沿って形成された、内燃機関内を循環する潤滑油をシリンダヘッド10上部から下方に落とす(シリンダブロック側のオイル落し通路に流通させる)ための通路である。
【0021】
排気ポート1には、当該排気ポート1出口側において、前記ライナ嵌合部9よりも小径の筒状部材である排気ポートライナ8が嵌合されている。すなわち、排気ポートライナ8は、ライナ嵌合部9出口側に取り付けられたリング状のスペーサ11、エキゾーストマニホールド7を介して、排気ポート1出口近傍において排気ポート1他端に対してほぼ同軸となるように嵌合保持されている。本実施形態においては、シリンダヘッド10が有する4つの排気ポート1にそれぞれに対して、排気ポートライナ8が嵌合保持されている。
【0022】
排気ポートライナ8は、筒状の熱伝導に優れた熱伝導性金属部材(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼系等)であり、図2に示すように、筒状のライナ本体8aと、当該ライナ本体8aの軸方向両端部に連設されたライナ支持部8bと、後述する軟質金属コート部12と、を備える。
【0023】
ライナ本体8aは、排気ガス通路となる排気ポートライナ8(ライナ本体8a)の内周面8cを有しており、排気ポートライナ8がライナ嵌合部9に嵌合された状態で、燃焼室3から排出された排気ガスは、排気ガス通路となるライナ本体8aの内周面8cに接しながら通過してエキゾーストマニホールド7に流れる。
【0024】
ライナ本体8aには、当該ライナ本体8aの上部外周面8d及び下部外周面8eに伝熱部材である軟質金属コート部12が設けられている。軟質金属コート部12は、排気ポートライナ8を構成する金属材料よりも軟らかい軟質金属コート材をライナ本体8aの上部外周面8d及び下部外周面8eに溶射することにより被膜形成されたものである。
なお、軟質金属コート部12の形成方法としては、排気ポートライナ8を構成する金属材料よりも軟らかい被膜が形成できればよく、軟質金属コート材を溶射する方法に特に限定するものではない。例えば、排気ポートライナ8の素材よりも軟らかい金属シート等をライナ本体8aの上部外周面8d及び下部外周面8eに取り付ける構成としてもよい。
【0025】
ライナ支持部8bは、その厚さがライナ本体8aの厚さよりも薄く、ライナ本体8aと一体的に形成されている。また、ライナ支持部8bは、ライナ本体8a外形よりも小径に形成されている。また、ライナ支持部8bは、排気ポートライナ8を排気ポート1に嵌合した際にライナ嵌合部一端9dと前記スペーサ11とで拘束されるため、排気ポートライナ8が排気ポート1出口近傍にて安定して保持される。こうして、排気ポートライナ8は、ライナ支持部8bをライナ本体8aよりも厚さが薄くなるように形成していることにより、ライナ本体8aが熱膨張等の変形を生じた際にライナ支持部8bが撓み、排気ポート1内の径方向においてライナ本体8aはライナ支持部8bに対して相対変位可能である。
【0026】
図3に示すように、排気ポートライナ8を排気ポート1内に嵌合配置した状態において、ライナ本体8aの上部外周面8d及び下部外周面8eを含む外周面と、排気ポート1内周面(上部内周面9a、下部内周面9b、側部内周面9c)との間には、中空筒状の空気断熱層である微小隙間13が設けられている。この状態において、ライナ本体8aの外周面と排気ポート1内周面との間は、上部内周面9a、下部内周面9b、及び側部内周面9cのそれぞれの箇所において略等距離に保持されている。この略等距離に保持されている状態は、内燃機関が常温時の状態である。また、排気ポートライナ8外周面における上部外周面8d及び下部外周面8eには、所定厚さの軟質金属コート部12が配置されるため、排気ポート1内周面と軟質金属コート部12との間には、微小隙間13より当該軟質金属コート部12の厚さを差し引いた隙間間隔、すなわち微小隙間13より狭い隙間である微小隙間13aが形成される。
つまり、排気ポートライナ8が嵌合保持された排気ポート1においては、排気ポート1(ライナ嵌合部9)内周面と軟質金属コート部12が形成されていない排気ポートライナ8外周面との隙間が微小隙間13を形成し、一方、排気ポート1(ライナ嵌合部9)内周面と上部外周面8d側の軟質金属コート部12表面との隙間、及び排気ポート1(ライナ嵌合部9)内周面と下部外周面8e側の軟質金属コート部12表面との隙間が微小隙間13より狭い微小隙間13aを形成する。
【0027】
このように構成されたシリンダヘッド10では、内燃機関の始動時においては、排気ポートライナ8の温度は低いため、排気ポートライナ8の熱膨張変化は生じず、図3に示すように微小隙間13及び微小隙間13aを保持した状態である。そのため、微小隙間13及び微小隙間13aは空気断熱層として機能し、排気ポートライナ8から排気ポート1内周面への熱移動を抑制するので、排気ポートライナ8とシリンダヘッド10との間の伝熱性は抑えられ、内燃機関の始動時において、排気ガスの温度低下は抑えられる。
【0028】
また、内燃機関の連続駆動時には、高温の排気ガスがライナ本体8aを流れることにより、ライナ本体8aが加熱されて昇温するので、ライナ本体8aの径方向(ライナ本体8a外周面の外側方向)の熱膨張量が大きくなる。一方、シリンダヘッド10には冷却水通路であるウォータージャケット4、5が形成され、当該ウォータージャケット4、5に水を流すことによりシリンダヘッド10は冷却されるので、連続駆動時におけるシリンダヘッド10の温度は排気ポートライナ8の温度と比較して低温であるため、シリンダヘッド10の排気ポート1付近の熱膨張は少ない。そのため、ライナ本体8aの熱膨張が、ライナ本体8a外周面の外側方向に進んでいくと、微小隙間13a及び微小隙間13は縮小していくことになる。具体的には、微小隙間13aが消失し、先ずは軟質金属コート部12が排気ポート1上部内周面9a及び下部内周面9bに接触することになる。このように軟質金属コート部12が排気ポート1の上部内周面9a及び下部内周面9bに接触した状態においては、排気ポート1内壁面よりも軟らかい材質である軟質金属コート部12の表面が排気ポート1内周面の微小な凹凸に沿って変形し、当該凹凸を吸収するようにして排気ポート1に密着する。そのため、排気ポート1内周面に存在する凹凸による空気断熱層がほぼ完全に消失するように機能し、排気ポートライナ8から排気ポート1内周面への熱移動を促進するので、排気ポートライナ8外周面と排気ポート1内周面との間の伝熱性が増し、内燃機関の連続駆動時において、排気ガスの温度低下が促進される。
ここで、ライナ本体8aの側部外周面は、軟質金属コート部12を設けていないため、排気ポートライナ8が熱膨張しても排気ポート1内周面に存在する凹凸による空気断熱層は消失せず、この部分の熱移動量は軟質金属コート部12を有するライナ本体8a外周面から排気ポート1内周面への熱移動量に比べて小さい。
【0029】
本実施形態のシリンダヘッド10では、排気ポートライナ8と排気ポート1の間に所定の微小隙間13を設け、かつ軟質金属コート材を排気ポートライナ8外周面のうちウォータージャケット4、5に近接する面(本実施形態では、排気ポート1の上下位置に配置されたウォータージャケット4、5にそれぞれ近接する排気ポートライナ8の上部外周面8d及び下部外周面8e)に溶射塗布して軟質金属コート部12を形成したものである。これにより、始動時や暖気運転過程等のエンジンが冷えた状態においては、排気ポートライナ8の熱膨張が生じず、排気ポートライナ8と排気ポート1の間に空気断熱層となる微小隙間13、13aが存在するため排気ガスは冷やされずに保温された状態でシリンダヘッド10から排出される。
一方、内燃機関の連続運転時等のエンジンが暖まった状態においては、排気ポートライナ8が熱膨張することで軟質金属コート部12がシリンダヘッド10が有するウォータージャケット4、5に近い排気ポート1内周面に密着して排気ガスの熱を逃がし、排気ガスを効率的に冷却できる。その際、軟質金属コート部12は排気ポート1よりも軟らかい金属であるため排気ポート1内周面に存在する凹凸を埋めるように変形するので排気ポート1内周面に完全に密着することができる。また、排気ポートライナ8は、軟質金属コート部12のある方向(ウォータージャケット4、5に近い方向)にしか伝熱しないように構成しているため、軟質金属コート部12のない方向への伝熱、すなわちオイル落し通路6に近い方向への伝熱が抑えられ、オイル落し通路6を流れる潤滑油温度の過度の上昇を防止することができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態に係るシリンダヘッド20の構成について、図を用いて説明する。
第2の本実施形態に係るシリンダヘッド20において、前記排気ポートライナ8を除いた他の部分は、第1の実施形態に係るシリンダヘッド10と同様の構成であるため、その説明は省略し、第1の実施形態に係るシリンダヘッド10が有する排気ポートライナ8と異なる形状である排気ポートライナ18について詳細に説明を行うものとする。
【0031】
排気ポート1には、当該排気ポート1出口側において、前記ライナ嵌合部9よりも小径の筒状部材である排気ポートライナ18が嵌合されている。すなわち、排気ポートライナ18は、ライナ嵌合部9出口側に取り付けられたリング状のスペーサ11、エキゾーストマニホールド7を介して、排気ポート1出口近傍において排気ポート1他端に対してほぼ同軸となるように嵌合保持されている。本実施形態においては、シリンダヘッド20が有する4つの排気ポート1にそれぞれに対して、排気ポートライナ18が嵌合保持されている。
【0032】
排気ポートライナ18は、筒状の熱伝導に優れた熱伝導性金属部材(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼系等)であり、図5に示すように、筒状のライナ本体18aと、当該ライナ本体18aの軸方向両端部に連設されたライナ支持部18bと、後述する仕切板14と、当該仕切板14端部の延長上の排気ポートライナ18外周面に形成される凸部である突起部15と、を備える。
【0033】
ライナ本体18aは、排気ガス通路となる排気ポートライナ8(ライナ本体18a)の内周面18cを有する。また、排気ポートライナ8には、当該排気ポートライナ8の内部を左右に仕切る仕切板14が設けられている。
【0034】
仕切板14は、平板状の熱伝導に優れた熱伝導性金属部材(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼系等)である。仕切板14は、排気ガスから効率的に受熱するためにライナ本体18aよりも熱伝導性の高い素材で構成してもよい。仕切板14は、排気ポートライナ18内において、縦方向に沿って設けられている。
なお、本実施形態においては、排気ポートライナ8と仕切板14は別体として構成しているが、特に限定するものではなく、排気ポートライナと仕切板とを一体的に形成することも可能である。また、排気ポートライナには、複数の仕切板を設けてもかまわない。
【0035】
ライナ本体18aは、当該ライナ本体18a外周面において、排気ポートライナ18内に配置される仕切板14端部の延長上に鋭角な凸部である突起部15を有する。
【0036】
突起部15は、ライナ本体18a外周面の上部外周面18d及び下部外周面18eのそれぞれにおいてライナ本体18a幅方向略中央に、ライナ本体18aの軸方向一端から他端にかけてライナ本体18a軸方向と平行に形成されるとともに、突起部15の先端部が鋭角な山形形状である。2つの突起部15は、それぞれの先端部を上方及び下方に突出している。排気ポートライナ18がライナ嵌合部9に嵌合した状態で、燃焼室3から排出された排気ガスは、排気ガス通路となるライナ本体18aの内周面18c及び仕切板14の両側面に接しながら通過してエキゾーストマニホールド7に流れる。
なお、本実施形態においては、突起部15は、ライナ本体18aと一体的に形成しているが、特に限定するものではなく、突起部を別体としてライナ本体に取り付ける構成としてもよい。
また、本実施形態においては、ライナ本体18a外周面の上部外周面18d及び下部外周面18eにおいて突起部15をそれぞれ一箇所ずつ設けた構成としているが、特に限定するものではなく、複数箇所設ける構成してもよい。
【0037】
図6に示すように、排気ポートライナ18を排気ポート1に嵌合保持した状態において、ライナ本体18aの上部外周面18d及び下部外周面18eを含む外周面と、排気ポート1内周面(上部内周面9a、下部内周面9b、側部内周面9c)との間には、中空筒状の空気断熱層である微小隙間13が設けられている。この状態において、ライナ本体18aの外周面と排気ポート1内周面との間は、上部内周面9a、下部内周面9b、及び側部内周面9cのそれぞれの箇所において略等距離に保持されている。この略等距離に保持されている状態は、内燃機関が常温時の状態である。また、排気ポートライナ18外周面における上部外周面18d及び下部外周面18eでは、所定高さの突起部15を備えるため、当該突起部15は上部外周面18d及び下部外周面18eより突起部15の所定高さ分、排気ポート1内周面側に近接している。
【0038】
このように構成されたシリンダヘッド20では、内燃機関の始動時においては、排気ポートライナ18の温度は低いため、排気ポートライナ18の熱膨張変化は生じず、図6に示すように微小隙間13を保持し、突起部15の先端部は排気ポート1内周面に近接した状態である。そのため、微小隙間13が空気断熱層として機能し、排気ポートライナ18から排気ポート1内周面への熱移動を抑制するので、排気ポートライナ18とシリンダヘッド20との間の伝熱性は抑えられ、内燃機関の始動時において、排気ガスの温度低下は抑えられる。
【0039】
また、内燃機関の連続駆動時には、高温の排気ガスがライナ本体18aを流れることにより、ライナ本体18aが加熱されて昇温するので、ライナ本体18aの径方向(ライナ本体18a外周面の外側方向)の熱膨張量が大きくなる。また、仕切板14はライナ本体18a内に配置されているため、ライナ本体18aよりも高温に昇温されるので、仕切板14の上下方向の熱膨張量がライナ本体18aよりも大きくなる。一方、シリンダヘッド20には冷却水通路であるウォータージャケット4、5が形成され、当該ウォータージャケット4、5に水を流すことによりシリンダヘッド20は冷却されるので、連続駆動時におけるシリンダヘッド20の温度は排気ポートライナ18及び仕切板14の温度と比較して低温であるため、シリンダヘッド20の排気ポート1付近の熱膨張は少ない。そのため、ライナ本体18aの熱膨張が、ライナ本体18a外周面の外側方向に進んでいくと、微小隙間13は縮小していくとともに、突起部15が排気ポート1の上部内周面9a及び下部内周面9bに接触し、さらに食い込んでいくことになる。その結果として、突起部15が食い込んだ部分においては排気ポート1内周面の凹凸が消失し、突起部15が排気ポート1内周面に密着する。このように突起部15が排気ポート1内周面に食い込んで密着した状態においては、突起部15と対向する面である排気ポート1内周面に存在する凹凸による空気断熱層がほぼ完全に消失するように機能し、排気ポートライナ18から排気ポート1内周面への熱移動を促進するので、排気ポートライナ18外周面と排気ポート1内周面との間の伝熱性が増し、内燃機関の連続駆動時において、排気ガスの温度低下が促進される。
ここで、ライナ本体18aの側部外周面は、突起部15を設けないため、排気ポートライナ18が熱膨張しても排気ポート1内周面に存在する凹凸による空気断熱層は消失せず、この部分の熱移動量は突起部15を有するライナ本体8a外周面から排気ポート1内周面への熱移動量に比べて小さい。
【0040】
本実施形態のシリンダヘッド20では、排気ポートライナ18と排気ポート1の間に所定の微小隙間13を設け、かつ排気ポートライナ18内に縦方向に仕切板14を設けて、さらに排気ポートライナ18外周面のうちウォータージャケット4、5に近接する面(本実施形態では、排気ポート1の上下位置に配置されたウォータージャケット4、5にそれぞれ近接する上部外周面18d及び下部外周面18e)に仕切板14と延長上に鋭角な突起部15を形成したものである。排気ポート1内周面には凹凸が存在するが、内燃機関の連続駆動時に最も高温になる仕切板14が膨張することで突起部15が排気ポート1内周面に食い込むことで凹凸が埋まり熱伝導するので、本実施形態は第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 排気ポート
8 排気ポートライナ
10 シリンダヘッド
12 軟質金属コート部(伝熱部材)
13 微小隙間
13a 微小隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ポート内に筒状部材を配置し、当該筒状部材外周面と前記排気ポート内周面との間に隙間を設けて構成されるシリンダヘッドにおいて、
前記筒状部材外周面に伝熱部材を配置するとともに、当該伝熱部材と前記排気ポート内周面との間に隙間を有することを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項2】
前記伝熱部材は、軟質金属コートであることを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。
【請求項3】
前記筒状部材は、当該筒状部材の内部を所定方向に仕切る仕切板を有し、
前記伝熱部材は、前記仕切板端部の延長上の前記筒状部材外周面に形成される凸部であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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