説明

シリンダ装置を含む充填システム

【課題】粘性物を充填する際に、起動直後から規定量を小分けする充填システムを提供する。
【解決手段】粘性物を収容したホッパー11に接続するための第1の接続口211と、粘性物を小分け容器60に充填した小分け装置30に接続するための第2の接続口212とを有するシリンダブロック21と、シリンダブロック21内において回動することで、第1の接続口211を介してホッパー11からの粘性物の落下流入を許容し、小分け装置30への落下排出を禁止する第1の状態と、第2の接続口212を介して粘性物の小分け装置30への落下排出を許容し、ホッパー11からの粘性物の落下流入を禁止する第2の状態との間で切り替え可能な切り替えシリンダ22と、切り替えシリンダ22に対して進退するピストン25とを有し、ピストン25の先端部には、第1の接続口211に近づく程、切り替えシリンダ22の下死点端面から離れる斜面部251が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性物を所定量ずつ容器に充填するために使用されるシリンダ装置に関しており、特に羊羹を充填する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食料用の流動物や粘性物を小分けする充填装置として、以下の特許文献が開示されている。
流動状である具入りスープを小分けする充填装置は、流動体収容容器に連通する吸引口と小分けする容器への吐出口からなる定量切換え弁本体と、定量切換え弁本体に回転自在に嵌合された貫通口を有する内筒と、内筒内に摺動自在に嵌合されたピストンから構成されている。
そして、収容部から内筒の貫通口に連通させた状態で、ピストンを後退させることによりシリンダ内に粘性物を充填させる。その後内筒の貫通口を吐出口に連通させて、ピストンを押し出すことにより充填する方法が開示されている。(特許文献1、特許文献2、参照)
また、高粘性物を充填する方法についても、同様に回動自在の切換え弁及び、ピストンを用いた充填装置が開示されている。(特許文献3、特許文献4、参照)
【0003】
【特許文献1】特開2000−226100号公報
【特許文献2】特開2005−22666号公報
【特許文献3】特開昭54−94360号公報
【特許文献4】特開2000−219204号公報
【特許文献5】特開2001−328605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成における粘性物の充填装置において、装置起動後、充填量にばらつきが生じてしまい、材料の無駄および廃棄する手間が生じていた。
この点、本願発明者が鋭意研究を重ねた結果、粘性物をシリンダ内に降下する際に、ピストンの先端面が平坦であることにより、降下速度が遅い粘性物は途中でピストンヘッド端面から落下、若しくはピストンとシリンダ内壁との間で粘性物の橋渡が生じていた。そのため、ピストンの先端に粘性物を十分に張り付けられなく、ピストンを後退させてもシリンダ内に規定量の粘性物を充填できないことが原因であることが分かった。
そこで、本発明は、上記知見に基づき、シリンダ装置において、起動直後の充填量のばらつきを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、粘性物を収容したホッパーに接続するための第1の接続口と、粘性物を容器に充填した小分け装置に接続するための第2の接続口とを有するシリンダブロックと、シリンダブロック内において回動することにより、第1の接続口を介してホッパーからの粘性物の落下流入を許容し、第2の接続口を粘性物の小分け装置への落下排出を禁止させる第1の状態と、第2の接続口を介して粘性物の小分け装置への落下排出を許容し、第1の接続口をホッパーからの粘性物の落下流入を禁止させる第2の状態との間で切り替え可能な切り替えシリンダと、切り替えシリンダに対して進退するピストンとを有し、ピストンの先端部には、第1の接続口に近づく程、切り替えシリンダの下死点端面から離れる斜面部が形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
ノズル部を複数設けた際にも、各ノズル部から規定の充填量を小分けするために、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のシリンダ装置と、小分け装置とを含む充填システムであって、小分け装置は、シリンダブロックの第2の接続管から落下排出された粘性物を通す流下管と、流下管の下端に接続されて、水平方向に延びる水平管と、水平管に設けられる一対のノズル部と、一対のノズル部は、流下管の径方向中心を含んで、流下管の管路方向に延びる中心線を挟んで対称に位置し、中心線上に水平管の長手方向と直交する方向に延びる面を備えた仕切り板を含み、流下管を落下する粘性物を仕切り板により等分配し、水平管を介して各ノズル部から排出することを特徴とするものである。
【0007】
また、時間の経過に伴って、粘性物が冷えて硬化し、ホッパーから切り替えシリンダへ落下流入するのが困難となる。これを防ぐために、本発明の請求項6に記載の発明は、粘性物を収容したホッパーと請求項1から4のいずれかに記載のシリンダ装置とを含む充填システムであって、ホッパーは、ホッパーの内面および外面との間に、ホッパーに収容した粘性物を加熱するための熱交換媒体を収容する加熱体収容部を有することを特徴とした充填システムとするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、初期状態から規定量を充填することができるため、材料の無駄および廃棄する手間を無くすという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の充填システムの1実施例を示す概略図である。
【図2a】本発明の方向切換え弁の上面図である。
【図2b】本発明の方向切換え弁の正面図である。
【図3】本発明の小分け装置の概略図である。
【図4a】本発明のシリンダ装置の運転開始時の縦断面図である。
【図4b】本発明のシリンダ装置内に粘性物を落下投入する時の縦断面図である。
【図4c】本発明のシリンダ装置の切換え時の縦断面図である。
【図4d】本発明のシリンダ装置内から粘性物を落下排出する時の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0011】
(本願発明の概要)
図1、図2a,図2b及び図3を参照しながら、本発明の実施形態である充填システムの概要を説明する。ここで図1は、充填システム全体の概略図、図2aは、方向切換え弁(切り替えシリンダ)の上面図、図2bは、方向切換え弁の正面図、図3は小分け装置の正面図である。
X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する異なる三軸を示している。
なお、各座標軸の矢印方向を正方向とする。
【0012】
図1を参照して、本発明の充填装置は、粘性物である羊羹を収容する収容部10、羊羹を容器に小分けする小分け装置30、収容部10から流入した羊羹を小分け装置30に規定量供給する切換えシリンダ装置20とを含む。
なお、実施例および変形例においては、粘性物の例として羊羹を用いて説明するが、他の粘性物、例えばバター、みそ、チーズ、ジャム、マヨネーズ、ゼリー、ムース、プリン、ババロア、ブラマンジェなどであっても良い。
【0013】
図1に示すように収容部10は、ホッパー11およびこのホッパー11をシリンダブロック21に接続する投入管12を含む。ホッパー11は、内径が一定の同径筒状部111と、下方に向かって内径が漸減するテーパー筒状部112とを含む。そして、このホッパー11の内面および外面との間に、熱交換媒体を収容した加熱体収容部116を有する。また、この加熱体収容部116内に熱交換媒体を充填することができるように、導入口113を外周の側面上方とし、排出口114を外周の下面とする。そして、ホッパー11の外周の下面には、XY平面において120°の間隔で、ヒータ115を3ヶ所設けた構成とする。
ところで、図示例では、ホッパー11におけるテーパー筒状部112を満たす位置まで羊羹が充填されている。ホッパー11は、図示しない昇降装置により支持されている。ホッパー11に羊羹を投入する際には、この昇降装置を駆動することにより、ホッパー11を作業者の作業領域まで下降させる。
【0014】
切換えシリンダ装置20は、シリンダブロック21、これに内接する方向切換え弁22(切り替えシリンダ)、方向切換え弁22のY軸負方向の一端と密接してシリンダを形成するピストンガイド24、シリンダ内を摺動運動するピストン25、そして方向切換え弁22の他端に密接する軸受けハウジング23からなる。
【0015】
シリンダブロック21は、Y軸方向に延びる貫通孔を有して筒状に形成されており、シリンダブロック21の周壁部には、ホッパー11に連結した投入管12に接続される第1の接続口211、吐出管31に接続される第2の接続口212が設けられている。第1の接続口211は第2の接続口212よりも、径寸法を大きく設定し、かつY軸方向においてピストン25の下死点からより離れた領域に位置している。
【0016】
方向切換え弁22は、図2a、図2bのような支持部221と流入流出制御筒体222とからなる。
支持部221は円柱形状をしており、その外周は図示しないベアリングにより回転可能に支持される。支持部221の端部には、回転機構が取り付けられている。この回転機構により方向切換え弁22をY軸方向周りに正逆回転させることができる。
流入流出制御筒体222は、支持部221に近接する側を閉塞し、支持部221から離間した側を開口した有底筒状をした形状としている。
流入流出制御筒体222の内径はピストン25の外径と略等しく、ピストン25の摺動運動を可能にする。また、流入流出制御筒体222の外周面には、シリンダブロック21の第1の接続口211に接続可能な第1の開口部223が形成されている。さらに、流入流出制御筒体222の外周面には、第1の開口部223から周方向に60°回転させた位置に、第2の開口部224を形成している。第2の開口部224は、第1の開口部223よりも支持部221に近接した領域に形成している。第2の開口部224は、シリンダブロック21の第2の接続口212に接続可能である。
【0017】
第1の接続口211及び第1の開口部223が接続されると、第2の接続口212は、シリンダブロック21の内周面に接することにより閉塞される(以下、流入許容流出禁止状態という)。他方、第2の接続口212及び第2の開口部224が接続されると、第1の接続口211は、シリンダブロック21の内周面に接することにより閉塞される(以下、流入禁止流出許容状態という)。Y軸方向に延びる支持部221の中心を回転軸として、方向切換え弁22を60°の正逆範囲で回動させることにより、流入許容流出禁止状態と流入禁止流出許容状態との切り替えを行うことができる。
【0018】
このように第1の開口部223及び第2の開口部224を流入流出制御筒体222の周方向において異なる位置に形成することにより、切り替える際の方向切替え弁22の回転角度を小さくすることができる。これにより、迅速な切り替え作業が可能となり、生産効率を向上させることができる。
【0019】
次に、図3を参照しながら、方向切替え弁22を駆動する揺動シリンダ装置50について説明する。図3は、揺動シリンダ装置50のY矢視図である。揺動シリンダ装置50は、揺動シリンダ部51及びこの揺動シリンダ部51に対して進退するピストンロッド部52を含む。揺動シリンダ部51は、支持台53の上端部に設けられた揺動軸54に軸支されている。ピストンロッド部52の先端部は、方向切換え弁22のY軸正方向の端面に接続されている。
上述の構成において、ピストンロッド部52を揺動シリンダ部51に対して進退させると、揺動シリンダ部51が揺動軸54周りに揺動しながら、方向切替え弁22による切り換え動作を行うことができる。
このような実施例によれば、切り替え時における方向切替え弁22の回転角度を小さくできるため、揺動シリンダ装置50をエアーシリンダとした簡易な回転機構を採用することができる。これにより、コストを削減することができる。
【0020】
図1に示すように軸受けハウジング23は、筒状に形成されており、そのY軸正方向の端部には、YZ平面を含む平面方向に延びる取り付けフランジ231が形成されている。軸受けハウジング23の内面には、ベアリングが固定されている。このベアリングに対して、方向切替え弁22の支持部221が回転可能に支持されている。取り付けフランジ231は、シリンダブロック21のY軸正方向の端面に固定されている。固定手段には、ネジなどの締結部材を用いることができる。
【0021】
図1に示すように、ピストンガイド24は筒状に形成されており、そのY軸正方向の端部には、XZ平面を含む平面方向に延びる第1取り付けフランジ241及び第2取り付けフランジ242が形成されている。第1取り付けフランジ241は、第2取り付けフランジ242よりも外径寸法が大きく設定されており、かつ、第2取り付けフランジ242よりも方向切換え弁22に対してより離間した位置に形成されている。
第1取り付けフランジ241は、シリンダブロック21のY軸負方向の端面に固定されている。固定手段には、ネジなどの締結部材を用いることができる。第2取り付けフランジ242は、方向切換え弁22のY軸負方向の端面に接している。
ピストンガイド24及び方向切換え弁22の流入流出制御筒体222は、互いに内径寸法が等しく設定されており、XZ平面における位置が同じである。したがって、ピストンガイド24及び流入流出制御筒体222により、内径が一定のY軸方向に延びる連続管路が形成され、この連続管路内において、後述のピストン25が進退する。
【0022】
次に、ピストン25について詳細に説明する。ピストン25は円柱形状であり、ピストンガイド24及び流入流出制御筒体222により形成される連続管路内をY軸方向に進退する。ピストン25の先端部には、第1の開口部223に近づく程、方向切換え弁22の下死点端面から離れる斜面部251が形成されている。
なお、下死点端面とは、筒状の流入流出制御筒体222のY軸正方向の内側端面を意味する。
【0023】
ここで、ピストン25の斜面部251の傾斜角は、Z軸に対して15°〜25°に設定するのが好ましい。傾斜角の範囲を上記のように設定することにより、ホッパー11から落下してくる羊羹をピストン25の斜面部251に張り付きやすくする。また、斜面部251の傾斜角度を大きく設定しないことにより、ピストン25の押出力を逃げにくくする。
【0024】
また、ピストン25の先端部には、斜面部251に連続する平面部252が形成されている。この平面部252はZ軸方向に延びる。ここで、ピストン25の先端部を全て斜面部251で形成すると、斜面部251の下端部がエッジ形状となり、ピストン25を進退させた際に、ピストンガイド24と流入流出制御筒体222が接触して、粉が生じてしまう。このためエッジ形状が形成されないように、一部に平面部252を形成することにより、上記問題を解消することができる。
【0025】
次に、ピストン25を駆動する駆動手段について説明する。駆動手段は、モータ40、ボールネジ41、アーム42とを含む。モータ40が駆動されると、ボールネジ41を回転させて、このボールネジ41の回転動作に応じて、アーム42がY軸方向に進退する。
このモータ40には、サーボモータを用いることができる。このサーボモータを用いることにより、ピストン25のストローク量を簡単に変更することができる。これより充填量を変更する際に大幅な装置変更する手間を省けるため、カム機構で制御された充填装置の欠点を解消することができる。
【0026】
次に、ピストン25により第2の接続口212から押し出された羊羹を小分けするための小分け装置30について説明する。
図3を参照して、小分け装置30は、シリンダブロック21の第2の接続口212に嵌合する吐出管31と、この吐出管31の下部にフランジ311を介して連結される分岐管32と、分岐管32の先端に取り付けられる一対のノズル部33を含む。
【0027】
吐出管31は、薄肉円筒構造をしており、外径を分岐管32の流下管321の外径と略同じとし、Z軸方向において吐出管31の下端部と流下管321の上端部をフランジ311により結合させている。また、内径は、シリンダブロック21の第2の接続口212の内径と略同じにすることで、粘性物の落下排出を円滑に行うことができる。
【0028】
図3に示すように、分岐管32は、流下管321、水平管322、そして仕切り板323から構成される。
流下管321は、長手方向(図の上下方向)と直交する断面が円形であり、上下方向に延びる管路を形成している。水平管322は、長手方向(図の左右方向)と直交する内径断面および外径断面を矩形とし、左右方向に延びる管路を形成している。これらの断面は、上記に限定されるものではなく、他の形状とすることもできる。
【0029】
流下管321は、その一端がフランジ311を介して吐出管31に連結されており、その他端が水平管322の長手方向の中心位置に一体的に接続されている。
水平管322の両端は開口しており、これらの開口部は、栓で塞がれている。
また、仕切り板323は、流下管321の中心(断面の中心)を通ってZ軸方向に延びる延長線上に位置しており、水平管322の長手方向と直交する面を有している。
さらに、この仕切り板323を中心とした左右対称の位置に、一対のノズル部33を設ける。
【0030】
このノズル部33は、薄肉円筒構造であり、水平管322のZ軸方向下面に接続されている。さらに、ノズル部33の接続口は、水平管322の内底面よりも高い位置に形成されている。
この構造により水平管322の内底面に溜まる羊羹が、ノズル部33の接続口からノズル部33内に流入するのを抑制できる。
【0031】
次に上記のように構成された本発明の充填システムの使用方法について説明する。
ここで、初期状態においては、ホッパー11の導入口から熱交換媒体を導入することで、ホッパー11の内面と外面との間に形成された加熱体収容部116を熱交換媒体で満たした状態とする。
また、方向切換え弁22は、第2の接続口212及び第2の開口部224を接続した流入禁止流出許容状態(第2の状態)に設定されているものとする。また、ピストン25の斜面部251は、シリンダブロック21の第1の接続口211の直下に待機させるものとする。
【0032】
まず、ホッパー11に粘性状の羊羹を装填する。ホッパー11に充填された羊羹は、投入管12を介して重力落下し、方向切換え弁22の外面に当接することで、シリンダブロック21の第1の接続口211の近傍に停滞する。
次に、方向切換え弁22を回動することにより、流入禁止流出許容状態(第2の状態)から流入許容流出禁止状態(第1の状態)に切り換える。これにより、第1の開口部223と第1の接続口211が接続され、流入流出制御筒体222の内部に羊羹を落下流入させる。流入流出制御筒体222の内部に流入した羊羹は、重力落下してピストン25の斜面部251に付着する(図4a)。
その後、流入許容流出禁止状態において、ピストン25を後退させて粘性物を流入流出制御筒体222とピストンガイド24(以下、これらの部材を結合したものをシリンダという)内に充填させる。規定の充填量をシリンダ内に充填した後、ピストン25を待機させる。(図4b)
この充填動作後、方向切換え弁22を回動することにより、方向切換え弁22の第2の開口部224とシリンダブロック21の第2の接続口212を連通させ、流入許容流出禁止状態から流入禁止流出許容状態に切換える。(図4c)
次に、ピストン25を下死点まで前進させて粘性状の羊羹を押し込むことにより、第2の接続口212に嵌合した吐出管31からシリンダ内の粘性物を落下排出させる。(図4d)
羊羹を落下排出した後は、方向切換え弁22を回動することにより、再びシリンダブロック21の第1の接続口211と方向切換え弁22の第1の開口部223を連通させ、流入禁止流出許容状態から流入許容流出禁止状態に切換える。これにより、一つの小分け容器60に対する充填作業が完了する。
【0033】
ここで、流入禁止流出許容状態において、下死点に位置するピストン25を後退させることにより、流入流出制御筒体222の内部が負圧状態になり、吸引力を発生させることができる。これにより、小分け装置30の内部に溜まった羊羹をシリンダ内に吸引することができる。したがって、水平管322の内底面に溜まった羊羹が回収され、ノズル部33から小分け容器60に羊羹が液だれするのを防止できる。これにより、小分け容器60に充填される羊羹の液量が変動するのを抑制できる。
さらに、流入流出制御筒体222内に羊羹を引き込むことで、吐出管31内の羊羹をなくすことができる。これにより、方向切換え弁22の回動を円滑に行うことができる。
また、下死点に位置するピストン25を後退させて、ピストン25の平面部252を下死点端面から離間させることで、ホッパー11から落下流入した羊羹を斜面部251のみならず平面部252まで付着することができる。
【0034】
また、ホッパー11の内面と外面との間で形成された加熱体収容部116に、熱交換媒体を導入することで、ホッパー11に充填した羊羹を加熱して、ホッパー11から流入流出制御筒体222への落下排出を最後まで行うことができる。
羊羹は、ホッパー11に充填直後は、高温であるため粘度が低く、ホッパー11から流入流出制御筒体222へ落下流入することができる。しかし、時間が経過するにつれて、羊羹が冷えて硬化していき、粘度が高くなってしまう。そうすると、ホッパー11の内面、若しくは、投入管12に羊羹が張り付いてしまうため、流入流出制御筒体222への落下流入が困難となり、ホッパー11に充填した羊羹を全て小分け容器60に充填することができない。
そこで、このように充填された羊羹を硬化しないようにするために、ホッパー11の内面と外面との間に形成された加熱体収容部116に、熱交換媒体を導入することにより、ホッパー11内の羊羹を加熱して、羊羹の温度を高温の状態に保つことができる。これにより、ホッパー11内の羊羹を最後まで小分け容器60に小分けすることができる。
また、加熱体収容部116に導入した熱交換媒体と羊羹との間で熱交換されるにつれて、熱交換媒体が冷却されてしまう。そうすると、長時間に渡り充填装置を稼働させると、加熱体収容部116に収容した熱交換媒体が冷えて、ホッパー11内の羊羹を加熱することができなくなる。そこで、ホッパー11に設けたヒータ115により熱交換媒体を再度温めることにより、この問題を解消して、長時間に渡る充填動作を行うことができる。
なお熱交換媒体としては、例えば水を用いることができる。
【0035】
図4dに示すような流入禁止流出許容状態からピストン25により排出された羊羹は、吐出管31を通り分岐管32の流下管321に落下排出される。落下排出された羊羹は、水平管内322に設けられた仕切り板323に当たり、仕切り板323を挟んだ左右両側に均等に分配されて、水平管322に流入する。水平管322に分配流入した羊羹はそれぞれ、左右のノズル部33から排出され、ノズル部33下方に設けられた小分け容器60に充填される。このように、本実施例によれば、仕切り板323を設けることにより、左右両側のノズル部33に均等に羊羹を分配することができる。つまり、仮に仕切り板323を省略した場合には、流れやすい側のノズル部33に羊羹が偏在されることになるが、本実施例によれば、このような問題を解消することができる。
【0036】
ところで、ホッパー11の粘性物である羊羹をシリンダ内に充填する場合、羊羹は粘度が高いため、管路面(例えば筒状の管路12)に張り付いてしまう。このため降下速度が極めて遅くなり、シリンダ内に落下流入されにくくなる。これは、ピストン25を引いて発生する負圧を利用しても同じことで、この羊羹の粘度が障害となり、装置の起動直後から規定量をシリンダ内に充填することができない。
【0037】
この点、本願発明は、この障害となった羊羹の粘度を逆に利用して、シリンダ内に羊羹を充填することで、起動直後から規定の充填量をシリンダ内に充填できるようにしている。
具体的にこの粘度を利用するために本願発明は、(a)ピストン25の先端部(斜面部251と平面部252)を第1の開口部223に近づく程シリンダの下死点端面から離れる斜面部251とすること、(b)ピストン25の斜面部251における上部にホッパー11からの羊羹を落下させること、としている。
このような構成とすることにより、ホッパー11からの羊羹を落下させてピストン25の先端部(斜面部251と平面部252)にしっかりと張り付けた後に、ピストン25を引くことで、先端部に張り付いた羊羹の粘度により繋がっている羊羹も引き込んで、起動直後から規定の充填量をシリンダ内に速やかに充填できる。
これにより起動時の試運転により生じていた無駄な材料をなくすことでき、材料費を削減することができる。
【0038】
この点、特許文献3,4のような構成では、方向切換え弁を回動させる際に、ピストンを方向切換え弁の外側に待機させなければならないため、方向切換え弁の流入口下方にピストンの先端部を位置させることができない。このため羊羹をシリンダ内に落下流入させても、ピストンの先端部には羊羹を張り付けることができない。したがって、羊羹の粘度を利用した充填はできないため本願発明と同じ効果を得られない。
また、特許文献1においても、方向切換え弁の下側にピストンの先端部を位置させることはできるが、ピストンの先端部が平坦であるため、シリンダ内に落下流入した羊羹をピストンの先端部に張り付けることができなく、羊羹の粘度を利用した充填を行えない。
さらに特許文献2においても、ピストンの先端に傾斜部を設けているものの、シリンダの投入口(第1の接続口)に近づく程、シリンダの下死点端面から近づく斜面部であるため、同様に落下流入する羊羹をピストンの先端部に張り付けることができなく、本願発明のような効果を得ることはできない。
【0039】
このような羊羹(粘性物)特有の性質を加味して、本願発明の実施例では、前述の2つの特徴(a)(b)を有することにより、ピストン25の先端部251に羊羹を十分に張り付けることができる。これにより羊羹の特徴を利用して、起動直後から規定の充填量をシリンダ内に充填することで、ノズル部33から規定量を小分け容器60に充填できる。
【0040】
(変形例1)
本発明の実施例では、ピストン25の先端部における初期位置を方向切換え弁22の第1の接続口212の下方に位置させたが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の接続口212の下方から水平方向にシフトした位置に設定することもできる。この場合は、例えばガイド部材により第1の接続口212から落下投入する羊羹をピストン25の先端部に当てるものとする。
この構成により、ピストン25の待機位置を任意の位置に設定することができる。
【0041】
(変形例2)
本発明の実施例では、シリンダブロック21の第1の接続口211と第2の接続口212を連通するために、方向切換え弁22のY軸周方向において、それぞれ対応した第1の開口部223と第2の開口部224を設けることとしたが、第1の開口部223のみとしても良い。
この際、第1の開口部223が、シリンダブロック21上方の第1の接続口211と下方の第2の接続口212の両方に連通させることができるように、方向切換え弁22の移動量を大きくする必要がある。このため実施例の揺動シリンダ装置50として、エアーシリンダを例示したが、その代わりにACモータやステッピングモータ等を用いても良い。
【0042】
(変形例3)
本発明の実施例では、方向切換え弁22とピストンガイド24によりシリンダを構成したが、1つの部品でシリンダを構成しても良い。これにより、部品点数の削減を図ることができる。
【0043】
(変形例4)
本発明の実施例では、ノズル部33を2つ設ける構成にしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば4つ以上の偶数に設定することもできる。
4つのノズル部33とした場合は、分岐管32における水平管322を次のような形状に変更する必要がある。水平管322を左右方向に延びる管路および前後方向に延びる管路を形成し、それぞれの中央点において交わらせる。そして、各左右/前後の管路の長手方向(図の左右方向)と直交する外径断面および内径断面を矩形とする。ただし、断面形状は、矩形に限定されるものではなく、他の形状とすることもできる。
さらに、仕切り板323は、流下管321の中心(断面の中心)を通ってZ軸に延びる延長線上に位置させて、それぞれ左右/前後の水平管322の長手方向に直行した面を形成して、それらをお互いに略直角に交わった面とする。
このような仕切り板323により、複数のノズル部33を設けた場合でも均等に各ノズル部33に羊羹を排出することができる。したがって、一回のピストン25の充填動作により、充填して生成できる小分け容器60の数を増やすことで、生産性を向上させることができる。
【0044】
本発明を特定の態様により詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0045】
10 収容部
11 ホッパー
111 同径筒状部
112 テーパー筒状部
113 導入口
114 排出口
115 ヒータ
116 加熱体収容部
12 投入管
20 シリンダ装置
21 シリンダブロック
211 第1の接続口
212 第2の接続口
22 方向切換え弁(切り替えシリンダ)
221 支持部
222 流入流出制御筒体
223 第1の開口部
224 第2の開口部
23 軸受けハウジング
231 取り付けフランジ
24 ピストンガイド
241 第1の取り付けフランジ
242 第2の取り付けフランジ
25 ピストン
251 斜面部
252 平面部
30 小分け装置
31 吐出管
311 フランジ
32 分岐管
321 流下管
322 水平管
323 仕切り板
33 ノズル部
40 モータ
41 ボールネジ
42 アーム
50 揺動シリンダ装置
51 揺動シリンダ部
52 ピストンロッド部
53 支持台部
54 揺動軸
60 小分け容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性物を収容したホッパーに接続するための第1の接続口と、前記粘性物を容器に充填する小分け装置に接続するための第2の接続口とを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロック内において回動することにより、前記第1の接続口を介して前記ホッパーからの前記粘性物の落下流入を許容し、前記第2の接続口から前記小分け装置への前記粘性物の落下排出を禁止する第1の状態と、前記第2の接続口を介して前記粘性物の前記小分け装置への落下排出を許容し、前記ホッパーから前記第1の接続口への前記粘性物の落下流入を禁止する第2の状態との間で切り替え可能な切り替えシリンダと、
前記切り替えシリンダに対して進退するピストンとを有し、
前記ピストンの先端部には、前記第1の接続口に近づく程、前記切り替えシリンダの下死点端面から離れる斜面部が形成されていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記第1の状態において、前記第1の接続口を介して、前記切り替えシリンダの内部に落下流入する前記粘性物の落下位置に前記斜面部が位置することを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記第1の状態において、前記ピストンの先端部が、前記切り替えシリンダの下死点端面から離間していることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記第1の状態において前記第1の接続口に連通し、前記切り替えシリンダの外周上に形成された前記第1の開口部と、前記第2の状態において前記第2の接続口に連通し、前記切り替えシリンダの外周上に形成された前記第2の開口部とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシリンダ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のシリンダ装置と、前記小分け装置とを含む充填システムであって、
前記小分け装置は、前記シリンダブロックの前記第2の接続管から落下排出された前記粘性物を通す流下管と、
前記流下管の下端に接続されて、水平方向に延びる水平管と、
前記水平管に設けられる一対のノズル部と、
前記一対のノズル部は、前記流下管の径方向中心を含んで、前記流下管の管路方向に延びる中心線を挟んで対称に位置し、前記中心線上に前記水平管の長手方向と直交する方向に延びる面を備えた仕切り板を含み、
前記流下管において、落下する前記粘性物を前記仕切り板により等分配し、前記水平管を介して各前記ノズル部から排出することを特徴とする充填システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のシリンダ装置と、前記粘性物を収容した前記ホッパーとを含む充填システムであって、
前記ホッパーは、前記ホッパーの内面および外面との間に、前記ホッパーに収容した前記粘性物を加熱するための熱交換媒体を収容する加熱体収容部を有することを特徴とした充填システム。
【請求項7】
前記ホッパーは、前記加熱体収容部内の前記熱交換媒体を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項6に記載の充填システム。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図4d】
image rotate


【公開番号】特開2011−46432(P2011−46432A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198396(P2009−198396)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(505201858)株式会社アンゼン・パックス (1)
【Fターム(参考)】