説明

シリンダ装置

【課題】ライダーリングが摩耗しても、ピストンとシリンダが接触せず、かつピストンとシリンダの隙間を小さく設定して、ピストンリングからのガス漏れ量を低減し、体積効率を向上させる。
【解決手段】ピストン14は上部ピストン片16と下部ピストン片18とがピストンロッド28にボルト26で固定されている。上部ピストン片16の凹部16fと下部ピストン片18の凹部18fとが対面してリング状切欠部30を形成し、該リング状切欠部30に可動ピストン片20が遊嵌されている。上部ピストン片16及び可動ピストン片20の外周面16a、18aに刻設されたリング状凹溝16b、18bにライダーリング22,24が環装され、可動ピストン片20の外周面20aに刻設されたリング状凹溝20bにピストンリング32が環装されている。ライダーリング22,24の摩耗量に応じて、可動ピストン片20がピストン半径方向へ移動してピストンリングのシール性能を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフリー式圧縮機等に適用されて好適であり、シリンダ内面とピストン外周面間からの被作動流体の漏れ量を低減して、体積効率を向上させたシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動圧縮機及び膨張機は、金属製のピストンと、このピストンが摺動自在に支持された金属製のシリンダとから構成されている。図5に従来の往復動圧縮機のシリンダ装置を示す。図5は、横型往復動圧縮機を例に取っている。図5において、従来のシリンダ装置100は、ステンレス鋳物又は鉄鋳物等で製作されたシリンダ102と、鉄鋳物又はアルミ鋳物等で製作され、シリンダ102の内部で往復動するピストン104とからなる。ピストン104の外周面104aに複数のリング状のピストンリング用凹溝106及びライダーリング用溝108が刻設されている。
【0003】
ピストンリング用凹溝106にピストンリング110が環装され、ライダーリング用溝108にライダーリング112が環装されている。ピストン104の中心軸Cに沿って円筒形の凹部104bが穿設され、該凹部104bにピストンロッド114が嵌合されている。ピストン104の端面104cに凹部104dと貫通孔104eが穿設されている。凹部104d及び貫通孔104eにボルト116が挿入され、ボルト116がピストンロッド114の端面に形成された雌ネジ穴114aに螺合することにより、ピストン104とピストンロッド114とを結合している。なお、ピストンロッド114に雄ネジを付け、ピストン104を挟んでナットで結合しても良い。
【0004】
図5に示すように、ピストンの外周面には、ピストンとシリンダ内壁との間の隙間をなくし、圧縮ガスが漏れるのを防止するピストンリングと、ピストンを円滑に案内し、ピストンとシリンダとの接触及びカジリを防止するためのライダーリングとを環装している。
特許文献1の図1には、かかるピストンリングとライダーリングとを装着した縦型のオイルフリー式往復動圧縮機が開示されている。
【0005】
これに対し、縦型の給油式往復動圧縮機では、ピストンとシリンダとの潤滑性が油により確保されているため、特許文献1の図2に開示されているように、ピストンリングのみを備え、ライダーリングは不要とされている。
【0006】
縦型の往復動圧縮機に対して、横型の往復動圧縮機では、重力がピストンの半径方向に加わるため、特許文献2及び3に開示されているように、給油式往復動圧縮機でもライダーリングが設けられている。ライダーリングはピストンの摺動に従って次第に摩耗してくるが、この摩耗を低減するため、特許文献4に開示されているように、ライダーリングを自己潤滑性を有する材料で構成する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−63174号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開平10−281066号公報
【特許文献3】特開平10−281067号公報
【特許文献4】特開昭54−79806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
往復動圧縮機等において、従来のピストンは、ライダーリングが摩耗した場合でも、金属製ピストンがシリンダライナと接触しないように、ピストンとシリンダライナとの隙間を大きくしていた。このため、ピストンリングの合い口からのガス漏れが多く、体積効率の低下を招いていた。
【0009】
特に、横型往復動圧縮機の場合、ライダーリングの下側部分の摩耗が激しくなるので、ピストンの中心軸がシリンダライナに対して偏心してくる。この偏心によりピストンがシリンダライナと接触することを防ぐために、ピストンとシリンダライナの隙間をより大きく取る必要があり、この大きな隙間のためガス漏れ量が大きくなっていた。
なお、ピストンとシリンダライナ間のガス漏れの程度は、潤滑油を用いないオイルフリー式圧縮機の場合に大きくなる。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ピストンリング合い口隙間からの漏れ量を低減することにより体積効率を向上させ、なおかつライダーリングが摩耗してきたときでも、金属製ピストンとシリンダ内面間の接触を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明のシリンダ装置は、
シリンダ内を摺動するピストンの外周面にシリンダ内面とピストンの外周面との間に隙間をシールするためのピストンリングと、ピストンの動きを案内するライダーリングを環装してなるシリンダ装置において、
前記ピストンが、ピストン中間部の外周面に形成されたリング状切欠部と、該リング状切欠部に遊嵌され、ピストンの外径より大きくかつシリンダライナ内径よりも小さい外径を有するリング状の可動ピストン片と、ピストンの上部及び下部の外周面に夫々装着されたライダーリングと、該可動ピストン片の外周面に装着されたピストンリングと、からなり、
該ライダーリングの摩耗に応じて該可動ピストン片をピストンの半径方向に移動させてシリンダ内面とピストンとの間の隙間をシールするように構成したものである。
【0012】
本発明装置では、前記可動ピストン片を設けることにより、ライダーリングの摩耗によりピストンの中心軸がシリンダの中心軸から偏心した場合でも、該可動ピストン片がピストンの半径方向に移動してシリンダ内の中心位置に位置する。これによって、可動ピストン片がシリンダ内壁と接触しても、強い押付力が生じないので、摩耗を低減できると共に、可動ピストン片とシリンダ内壁との間の隙間を小さく設定でき、ピストンリング合い口からのガス漏れ量を小さくできる。従って、シリンダ装置の体積効率を向上できる。
【0013】
本発明装置において、ピストンが、互いに分離した上部構成体及び下部構成体をピストンロッドに固定して構成され、該上部構成体及び下部構成体には夫々互いに対面して前記リング状切欠部を形成する凹部が形成されているとよい。これによって、可動ピストン片を遊嵌するリング状切欠部を形成したピストンの製造が容易になる。
【0014】
本発明装置において、可動ピストン片とピストンの上部又は下部との間にシール材を介装するようにするとよい。これによって、可動ピストン片とピストンの上部又は下部との間から被作動流体がピストンの内部に浸入しなくなるため、体積効率を向上できる。
【0015】
本発明装置において、可動ピストン片が自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料で構成されているとよい。可動ピストン片を自己潤滑性材料、例えば、黒鉛と耐摩耗性に優れるアルミニウム−20w%シリコン合金を複合化した自己潤滑性複合材料等で構成すれば、可動ピストン片とシリンダ内壁との潤滑性を向上でき、磨耗を低減できる。
あるいは、可動ピストン片を耐摩耗性の優れた四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等のフッ素樹脂、又はテフロン(登録商標)等で構成してもよい。また、可動ピストン片を耐摩耗性の良いエンジニアリングプラスチックで構成してもよい。
【0016】
これによって、可動ピストン片の摩耗を低減でき、可動ピストン片とシリンダ内壁との間の小さい隙間を維持できる。なお、可動ピストン片をAl等の金属で製作し、ライダーリングを装着しても良い。
【0017】
本発明装置において、ピストンのリング状切欠部又は凹部に接する可動ピストン片の表面に自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料でできた被膜を形成するとよい。これによって、可動ピストン片の摩耗を低減でき、可動ピストン片とシリンダ内壁との間の小さい隙間を維持できる。
【0018】
また、本発明装置がオイルフリー式シリンダ装置である場合でも、ライダーリングの摩耗に伴ってピストンが半径方向に移動しても、可動ピストン片をシリンダ中心に維持する事ができるので、可動ピストン片とシリンダ内壁との隙間を小さく設定する事ができ、ピストンリング合い口隙間からの漏れ量を最小にする事ができる。
【0019】
本発明装置において、可動ピストン片がピストンの軸方向に沿って複数に分割されたリング状分割片で構成されるとよい。ピストンロッドの他端がクランク軸に接続されて円形運動をする構成の場合、ピストンロッドはシリンダ内を往復運動しながら中心軸に対してピストン半径方向へ傾斜する。そのため、ピストンに半径方向の動きが発生し、その移動量はピストンの下部ほど大きくなる。
【0020】
これに対して、前記構成とすることにより、ピストンの半径方向の動き量に応じて各リング状分割片が夫々独立してピストン半径方向に移動できる。これによって、各リング状分割片のピストン半径方向への移動を最小限にできるので、各リング状分割片とシリンダ内壁との隙間を最小限にできる。そのため、ピストンリング合い口隙間からの漏れ量を最小にする事ができると共に、各リング状分割片に生じる偏摩耗を低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明装置によれば、シリンダ内を摺動するピストンの外周面にシリンダ内面とピストンの外周面との間に隙間をシールするためのピストンリングと、ピストンの動きを案内するライダーリングを環装してなるシリンダ装置において、ピストンが、ピストン中間部の外周面に形成されたリング状切欠部と、該リング状切欠部に遊嵌され、ピストンの外径より大きくかつシリンダライナよりも小さい外径を有するリング状の可動ピストン片と、ピストンの上部及び下部の外周面に夫々装着されたライダーリングと、該可動ピストン片の外周面に装着されたピストンリングと、からなり、該ライダーリングの摩耗に応じて該可動ピストン片をピストンの半径方向に移動させてシリンダ中心部に維持するように構成したので、可動ピストン片がシリンダ内壁と接触しても、強い押付力が生じない。そのため、可動ピストン片の摩耗を低減でき、可動ピストン片とシリンダ内壁との間の小さい隙間を維持できる。また、可動ピストン片が常にシリンダ内壁の中心位置に位置することで、可動ピストン片とシリンダ内壁との隙間を小さく設定する事が可能となり、ピストンリングのシール性能を向上できる。従って、シリンダ装置の体積効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシリンダ装置の第1実施形態に係る正面視断面図である。
【図2】前記シリンダ装置の斜視図である。
【図3】本発明のシリンダ装置の第2実施形態に係る正面視断面図である。
【図4】本発明のシリンダ装置の第3実施形態に係る正面視断面図である。
【図5】従来のシリンダ装置の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0024】
(実施形態1)
本発明をオイルフリー式横型往復動圧縮機に適用した第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るオイルフリー式横型往復動圧縮機10Aの正面視断面図であり、図2は該往復動圧縮機10Aのピストン14の斜視図である。
図1及び図2において、ステンレス等金属製のシリンダ12の内部にピストン14が配置されている。ピストン14は、上部ピストン片16、下部ピストン片18、及び上部ピストン片16と下部ピストン片18との間に配置される可動ピストン片20とで構成されている。上部ピストン片16及び下部ピストン片18は、Al等の金属製でできている。
【0025】
上部ピストン片16は、短尺円筒形状をなし、その円形の外周面16aの外径寸法φαは、円筒形状のシリンダ12の内壁12aの内径寸法φγに対して、φγ=φα+3mmの関係をなしている。下部ピストン片18も短尺円筒形状をなし、その円形の外周面18aの外径寸法は上部ピストン片16と同一である。上部ピストン片16の外周面16aには、リング状の凹溝16bが刻設され、該凹溝16bにライダーリング22が環装されている。下部ピストン片18の外周面18aにも、同様に、リング状の凹溝18bが刻設され、該凹溝18bにライダーリング24が環装されている。
【0026】
上部ピストン片16の端面の中心に、ボルト26の頭部26aを挿入するための円筒形の凹部16cが穿設されている。該凹部16cに中心軸Cの方向に貫通孔16dが穿設されている。また、上部ピストン片16の底面には、下部ピストン片18の中央に設けられた凸部18cと嵌合する円形の凹部16eが刻設されている。該凸部18cの中心に、貫通孔16dと一致する開口を有する貫通孔18dが穿設されている。下部ピストン片18の中心軸Cに沿って、円筒形の凹部18eが穿設され、該凹部18eにピストンロッド28が挿入されている。
【0027】
ピストンロッド28の端面には、ボルト26の雄ネジ部26bと螺合する雌ネジ穴28aが形成されている。下部ピストン片18の凸部18cに上部ピストン片16の凹部16eを嵌合し、この状態で、ボルト26を貫通孔16d及び18dを貫通させて、雌ネジ穴28aに螺合させている。これによって、上部ピストン片16と下部ピストン片18とをピストンロッド28に位置決め固定している。上部ピストン片16に形成された凹部16fと下部ピストン片18に形成された凹部18fとが対面して、リング状切欠部30を形成している。
【0028】
このリング状切欠部30にリング状をなす可動ピストン片20が遊嵌されている。可動ピストン片20は、前述の耐摩耗性の良い自己潤滑性材料やフッ素樹脂、プラスチック又はテフロン(登録商標)で構成されていても良いし、Al等の金属材料でできた可動ピストン片20に前述の自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料を用いたピストンリングを取り付けても良い。
【0029】
可動ピストン片20の円形の外周面20aの外径寸法φβは、シリンダ12の内壁12aの寸法φγに対して、φγ=φβ+0.5mmの関係をなしている。即ち、可動ピストン片20の外周面20aの外径寸法φβは、上部ピストン片16又は下部ピストン片18の外径寸法φαより大きく、かつシリンダ内壁12aの寸法φγより微小寸法だけ小さい。そのため、可動ピストン片20とシリンダ内壁12a間の隙間は、上部ピストン片16又は下部ピストン片18とシリンダ内壁12aとの間の隙間より小さくなっている。
【0030】
可動ピストン片20の外周面20aには、3個もしくは複数のリング状の凹溝20bが刻設され、該凹溝20bにピストンリング32が環装されている。ピストン14は、ライダーリング22及び24によって、シリンダ内壁12aの中心軸とピストン14の中心軸Cとが一致するように位置決めされ、ピストン14とシリンダ内壁12aとの接触及びカジリを防止している。また、ピストンリング32によってピストン14とシリンダ内壁12aとの隙間をなくし、該隙間から圧縮ガスが漏れるのを防止している。
【0031】
上部ピストン片16の凹部16fには、リング状の凹溝16gが刻設され、該凹溝16gにOリング34が環装されている。このOリング34によって、上部ピストン片16と可動ピストン片20との間から圧縮ガスがピストン14の内部に侵入するのを防止している。なお、Oリングを環装する凹溝は可動ピストン片20側に刻設することも可能である。
【0032】
本実施形態の往復動圧縮機10は、シングルアクティングであるので、上部ピストン片16と可動ピストン片20間にOリング34を設けるだけで、ピストン14の内部へ圧縮ガスが侵入するのを防止できる。なお、往復動圧縮機10がダブルアクティングのときは、下部ピストン片18と可動ピストン片20との間にもOリング等のシール部材を設ける必要がある。
【0033】
かかる構成において、横型往復動圧縮機10は、ピストン14およびピストンロッド28の重力がライダーリング24の下部に加わるため、ライダーリング24の下部に偏摩耗が発生する。このため、ピストン14の中心軸Cがシリンダ内壁12aの中心軸から下方へ外れてくる。これに対し、本実施形態の横型往復動圧縮機10では、ライダーリング22及び24の摩耗量に応じて、可動ピストン片20がピストン14の半径方向に移動するため、可動ピストン片20の外周面20aとシリンダ内壁12aとの間の隙間を維持できる。また、可動ピストン片20は前述の耐摩耗性材料でできているため、摩耗量が少なく、該隙間を維持できる。
【0034】
可動ピストン片20がピストン14の半径方向に移動でき自重も軽いため、可動ピストン片20がシリンダ内壁12aと接触しても、強い押付力が生じない。そのため、可動ピストン片20の摩耗を低減できるので、可動ピストン片20とシリンダ内壁12aとの間の隙間を小さく維持できる。また、可動ピストン片20が常にシリンダ内壁12aの中心位置に位置することができるので、可動ピストン片20とシリンダ内壁12aとの隙間を小さく設定する事が可能となる。そのため、ピストン14とシリンダ内壁12a間のピストンリング32のシール性能を向上できる。従って、往復動圧縮機10の体積効率を向上できる。
【0035】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図3により説明する。図3において、本実施形態の圧縮機10Bは、前記第1実施形態と同様のオイルフリー式横型往復動圧縮機である。可動ピストン片20は、Al等の金属材料でできている。そして、可動ピストン片20の外周面、及び上部ピストン片16の凹部16f又は下部ピストン片18の凹部18fと接する可動ピストン片20の摺接面を前記自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料でできた被膜36で覆っている。その他の構成は、前記第1実施形態と同一である。
【0036】
本実施形態によれば、前記第1実施形態で得られる作用効果に加えて、可動ピストン片20の外周面、凹部16f又は下部ピストン片18の凹部18fと接する可動ピストン片20の摺接面に被膜36を設けたことにより、可動ピストン片20の外周面及び該摺接面の摩耗を低減できて、上部ピストン片16又は下部ピストン片18と可動ピストン片20との間の隙間から被作動流体がピストン14の内部に浸入するのを防止できる。また、可動ピストン片20のピストン半径方向の移動が円滑になるので、可動ピストン片20とシリンダ内壁12aとの間の小さい隙間を維持できる。
【0037】
(実施形態3)
次に、本発明装置の第3実施形態を図4に基づいて説明する。本実施形態の横型往復動圧縮機10Cは、第1実施形態の横型往復動圧縮機10Aと同様のシングルアクティングである。また、本実施形態の圧縮機は、給油式の往復動圧縮機である。図4において、ピストン40は、Al等の金属でできた一体型のピストンであり、中間部にリング状切欠部30がもうけられている。ピストン40の外周面40aにリング状凹溝40b及び40cが刻設され、これらリング状凹溝にライダーリング22及び24が環装されている。
【0038】
リング状切欠部30に、2個の可動ピストン片42及び44が遊嵌されている。可動ピストン片42,44の外周面42a、44aには、夫々2個ずつリング状の凹溝42b、44bが刻設され、該凹溝には夫々ピストンリング32が環装されている。ピストン40の可動ピストン片42に接する摺接面40cにリング状凹溝40dが刻設され、該リング状凹溝40dにOリング34が環装されている。また、可動ピストン片42の可動ピストン片44に対面する摺接面には、リング状凹溝42cが刻設され、該リング状凹溝42cにOリング46が環装されている。
【0039】
ピストン40のリング状切欠部30の奥側面に、貫通孔40eが穿設され、該貫通孔40dにピストンピン48が嵌入されている。貫通孔40eの両端開口付近にスナップリング50が装着され、ピストンピン48が貫通孔40dから外れるのを防止している。
ピストンピン48の中央部位にコネクティングロッド52がベアリング54を介して回動自在に装着されている。なお、本実施形態で、シリンダ内壁12aの寸法と、ピストン40の外径寸法と、可動ピストン片42、44の外径寸法との関係は、前記第1実施形態と同一である。
【0040】
本実施形態では、コネクティングロッド52の他端は、図示省略のクランク軸に接続されて円形運動をするため、コネクティングロッド52はシリンダ12内を往復運動しながら中心軸Cに対してピストン半径方向へ傾斜する。そのため、ピストン40の半径方向の動きが発生し、その移動量はピストンの下部ほど大きくなる。
【0041】
前記構成とすることにより、ピストン40の半径方向の動き量に応じて、各可動ピストン片42,44が夫々独立してピストン40の半径方向に移動できる。即ち、クランク軸に近い可動ピストン片44のほうがピストン半径方向への移動量が多くなる。そのため、各可動ピストン片42,44は、各々の位置でのピストン40の半径方向移動量に応じた分だけ移動できるので、より正確にシリンダ内壁12aの中心軸に位置できる。
【0042】
従って、可動ピストン片42、44とシリンダ内壁12aとの隙間を小さくできるので、ピストンリング32の合い口隙間からの漏れ量を最小にできる。また、可動ピストン片42,44に装着されたピストンリング32のシリンダ内壁12aに対する押付力が過大にならないので、ピストンリング32の偏磨耗が抑えられ、シリンダ内壁との間のシール性能を保持できる。
【0043】
従って、往復動圧縮機10Cが横型であっても、ピストンリング32の偏摩耗を抑えることができるので、体積効率を向上できる。また、両可動ピストン片42,44間にOリング46を介装しているので、両可動ピストン片42,44間から圧縮ガスがピストン40の内部に侵入するのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、シリンダ装置において、ライダーリングが摩耗した場合でも、ピストンとシリンダとの間の隙間を小さく設定でき、ピストンリングの合い口からの漏れ量を低減して、体積効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10A、10B オイルフリー式横型往復動圧縮機
10C 給油式横型往復動圧縮機
12 シリンダ
12a シリンダ内壁
14,40 ピストン
16 上部ピストン片
18 下部ピストン片
20 可動ピストン片
22,24 ライダーリング
26 ボルト
28 ピストンロッド
30 リング状切欠部
32 ピストンリング
34,46 Oリング
42,44 可動ピストン片(リング状分割片)
48 ピストンピン
50 スナップリング
52 コネクティングロッド
C ピストン中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を摺動するピストンの外周面にシリンダ内面とピストンの外周面との間に隙間をシールするためのピストンリングと、ピストンの動きを案内するライダーリングを環装してなるシリンダ装置において、
前記ピストンが、ピストン中間部の外周面に形成されたリング状切欠部と、該リング状切欠部に遊嵌され、ピストンの外径より大きくかつシリンダライナ内径よりも小さい外径を有するリング状の可動ピストン片と、ピストンの上部及び下部の外周面に夫々装着されたライダーリングと、該可動ピストン片の外周面に装着されたピストンリングと、からなり、
該ライダーリングの摩耗に応じて該可動ピストン片をピストンの半径方向に移動させてシリンダ内面とピストンとの間の隙間をシールするように構成したことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記ピストンが、互いに分離した上部構成体及び下部構成体をピストンロッドに固定して構成され、該上部構成体及び下部構成体には夫々互いに対面して前記リング状切欠部を形成する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記可動ピストン片とピストンの上部又は下部との間にシール材を介装したことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記可動ピストン片が自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記ピストンのリング状切欠部又は凹部に接する前記可動ピストン片の表面に自己潤滑性材料又は耐摩耗性材料でできた被膜を形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
シリンダ装置がオイルフリー式シリンダ装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載のシリンダ装置。
【請求項7】
前記可動ピストン片がピストンの軸方向に沿って複数に分割されたリング状分割片で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−196431(P2011−196431A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62651(P2010−62651)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】