説明

シリンダ装置

【課題】保護カバーの製造コストを抑制しつつ複数の仕様に対応することができるシリンダ装置の提供。
【解決手段】シリンダ12と、シリンダ12から伸縮可能に延出されたロッド13とを備え、ロッド13にロッド13およびシリンダ12を覆う保護カバー14が取り付けられてもので、この保護カバー14が、樹脂材により形成されており、ロッド13およびシリンダ12を覆い一端部に第1の係合部47を有する第1の保護カバー体30と、第1の係合部47に係合する第2の係合部62を一端部に有する第2の保護カバー体31とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダと、このシリンダから延出するロッドとを備えたシリンダ装置において、ロッドおよびシリンダの保護を目的としてこれらを覆う保護カバーをロッドに取り付けたものがある。この種のシリンダ装置において、保護カバーを金属の部材とゴム製の部材との組み合わせで構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、シリンダ装置においては、仕様により、ロッドのストロークが異なったり、シリンダの長さが異なったりすることがあるが、仕様毎にそれぞれ専用の保護カバーを設けるのではコストが増大してしまうことになる。このため、例えば、長さの長い保護カバーを準備して、この保護カバーをシリンダの長さに応じて切断する技術がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−124887号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】発明協会公開技報公技番号2005−501021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、保護カバーを仕様に応じて切断するのでは、不要となり廃棄される部分が発生してしまうため、製造コストが増大してしまう。
【0007】
したがって、本発明は、保護カバーの製造コストを抑制しつつ複数の仕様に対応することができるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、保護カバーが、樹脂材により形成されており、ロッドおよびシリンダを覆い一端部に第1の係合部を有する第1の保護カバー体と、前記第1の係合部に係合する第2の係合部を一端部に有する第2の保護カバー体とからなる。
【0009】
また、本発明は、保護カバーが、樹脂材により形成されており、ロッドおよびシリンダを覆い一端部に第1の係合部を有する第1の保護カバー体と、前記第1の係合部に係合する第2の係合部を一端部に有し他端部に第3の係合部を有する第2の保護カバー体と、前記第3の係合部に係合する第4の係合部を一端部に有する第3の保護カバー体とからなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護カバーの製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置を示す一部を断面とした正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーのベース保護カバー体を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの連結保護カバー体を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの組立例を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの別の組立例を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの連結保護カバー体を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの組立例を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの別の組立例を示す部分断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの連結保護カバー体を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るシリンダ装置の保護カバーの組立例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「第1実施形態」
本発明の第1実施形態に係るシリンダ装置を図1〜図5を参照して以下に説明する。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係るシリンダ装置11は、流体である作動油が封入される略円筒状のシリンダ12と、このシリンダ12の中心軸上に配置されるとともにシリンダ12の一端の図示略の開口部から外部へ伸縮可能に延出するロッド13と、このロッド13の外部突出部分に取り付けられてロッド13とシリンダ12の前記した開口部側を覆う有蓋円筒状の保護カバー14とを有している。ロッド13のシリンダ12内の一端にはピストン15が固定されており、このピストン15がシリンダ12内を二室に区画するとともにシリンダ12の内部を摺動して二室の容積を変化させ、その際に生じる流体の流通抵抗で減衰力を発生させる。具体的に、このシリンダ装置11は、車両の懸架装置を構成する緩衝器となっている。
【0014】
ロッド13の突出先端側には、有孔円板状の蓋部17と、蓋部17の外周部から軸方向一側に延出する円筒状部18とを有する有蓋円筒状のキャップ19が、円筒状部18をシリンダ12側に配置した状態で蓋部17の中央において固定されている。
【0015】
そして、このキャップ19の蓋部17の円筒状部18とは反対側には、略円筒状の取付アイ21がその軸線をロッド13と直交させる姿勢で溶接により一体的に固定されており、この取付アイ21の内側にはラバーブシュ22が圧入されている。また、シリンダ12のロッド13とは反対側にも、略円筒状の取付アイ23がその軸線をシリンダ12と直交させる姿勢で溶接により一体的に固定されており、この取付アイ23の内側にはラバーブシュ24が圧入されている。シリンダ装置11は、ロッド13側の取付アイ21がラバーブシュ22を介して車体側へ、シリンダ12側の取付アイ23がラバーブシュ24を介して車輪側へ取り付けられることで、車輪の車体に対するストロークを減衰させる。
【0016】
保護カバー14は、キャップ19を介してロッド13に取り付けられてロッド13およびシリンダ12を覆うベース保護カバー体(第1の保護カバー体)30と、ベース保護カバー体30に連結される連結保護カバー体(第2の保護カバー体,第3の保護カバー体)31とからなっている。
【0017】
ベース保護カバー体30は、樹脂材により一体成形されている。ベース保護カバー体30は、図2に示すように、中央に貫通孔35が形成された有孔円板状の天板部36と、天板部36の外周縁部から天板部36の軸方向一側に延出する円筒状の嵌合円筒部37と、嵌合円筒部37の天板部36とは反対側の端部から径方向内方に若干突出する円環状の当接板部38と、当接板部38の内周縁部から当接板部38の軸方向に沿って嵌合円筒部37とは反対側に徐々に拡径するように延出する中間テーパ筒部39とを有している。
【0018】
また、ベース保護カバー体30は、中間テーパ筒部39の当接板部38とは反対側の端部から中間テーパ筒部39の軸方向に沿って当接板部38とは反対側に延出する円筒状の中間円筒部40と、中間円筒部40の中間テーパ筒部39とは反対側の端部から中間テーパ筒部39とは反対に徐々に拡径するように延出する係合テーパ筒部41と、係合テーパ筒部41の中間円筒部40とは反対側の端部から径方向内方に若干突出する円環状の係合段部42と、係合段部42の内周縁部から係合段部42の軸方向に沿って係合テーパ筒部41とは反対側に延出する円筒状の係合円筒部43とを有している。
【0019】
なお、上記した、天板部36、嵌合円筒部37、当接板部38、中間テーパ筒部39、中間円筒部40、係合テーパ筒部41、係合段部42および係合円筒部43は、同軸状に形成されている。また、中間円筒部40と係合円筒部43とは、互いに同外径および同内径に形成されている。
【0020】
ベース保護カバー体30は、係合円筒部43側を先端として図1に示すシリンダ12の取付アイ21側に被せられることになり、その際に、貫通孔35において天板部36に取付アイ21を通過させた後、嵌合円筒部37の内側にキャップ19の円筒状部18を嵌合させることでキャップ19に取り付けられる。このとき、ベース保護カバー体30は、天板部36においてキャップ19の蓋部17に当接し、当接板部38において円筒状部18の蓋部17とは反対側の端縁部に当接することで、キャップ19に対する軸方向移動が規制される。つまり、ベース保護カバー体30は、天板部36と、嵌合円筒部37と、当接板部38とが、キャップ19を介してロッド13に取り付けられる取付部45を構成している。
【0021】
そして、図2に示すように、ベース保護カバー体30は、その軸方向の一端部に形成された、径方向外側に凹む係合テーパ筒部41および係合段部42が連結保護カバー体31を係合させるための係合凹部(第1の係合部)47を構成している。この係合凹部47は、ベース保護カバー体30の全周にわたって形成されており、この係合凹部47を形成する、径方向外側に突出してリブ状をなすテーパ筒部41および係合段部42もベース保護カバー体30の全周にわたって形成されている。
【0022】
第1実施形態では、図2(a)〜図2(c)に示すように、中間円筒部40の軸方向長のみが異なる複数種類、具体的には三種類のベース保護カバー体30(A)〜30(C)が用意され、これらから選択された一つが用いられる。つまり、ベース保護カバー体30(A)は、軸方向長が短い中間円筒部40(A)を有することで全長が短くされており、ベース保護カバー体30(B)は、軸方向長が中間円筒部40(A)よりも長い中間円筒部40(B)を有することで全長がベース保護カバー体30(A)よりも長くされている。また、ベース保護カバー体30(C)は、軸方向長が中間円筒部40(B)よりも長い中間円筒部40(C)を有することで全長がベース保護カバー体30(B)よりも長くされている。
【0023】
図3に示す連結保護カバー体31も、樹脂材により一体成形されている。連結保護カバー体31は、円筒状の係合円筒部50と、係合円筒部50の軸方向一側の端部から軸方向一側に徐々に拡径するように延出する係合テーパ筒部51と、係合テーパ筒部51の係合円筒部50とは反対側の端部から径方向内方に若干突出する円環状の係合段部52と、係合段部52の内周縁部から係合段部52の軸方向に沿って係合テーパ筒部51とは反対側に延出する円筒状の係合円筒部53とを有している。
【0024】
また、連結保護カバー体31は、係合円筒部53の係合段部52とは反対側の端部から径方向外方に若干突出する円環状の段部54と、段部54の外周縁部から段部54の軸方向に沿って係合円筒部53とは反対側に延出する円筒状の中間円筒部55と、中間円筒部55の段部54とは反対側の端部から段部54とは反対側に徐々に拡径するように延出する係合テーパ筒部56と、係合テーパ筒部56の中間円筒部55とは反対側の端部から径方向内方に若干突出する円環状の係合段部57と、係合段部57の内周縁部から係合段部57の軸方向に沿って係合テーパ筒部56とは反対側に延出する円筒状の係合円筒部58とを有している。
【0025】
なお、上記した、係合円筒部50、係合テーパ筒部51、係合段部52、係合円筒部53、段部54、中間円筒部55、係合テーパ筒部56、係合段部57および係合円筒部58は、同軸状に形成されている。また、係合円筒部50と係合円筒部53とは、互いに同外径および同内径に形成されており、係合円筒部53よりも中間円筒部55の方が外径および内径が大径に形成されている。加えて、中間円筒部55と係合円筒部58とが、互いに同外径および同内径であって、ベース保護カバー体30の中間円筒部40および係合円筒部43とも同外径および同内径に形成されている。
【0026】
そして、連結保護カバー体31は、その軸方向の一端部に形成された、係合テーパ筒部51および係合段部52が、ベース保護カバー体30の係合凹部47および他の連結保護カバー体31の後述する係合凹部(第3の係合部)63に係合可能な径方向外方に突出する係合爪部(第2の係合部,第4の係合部)62を構成している。また、連結保護カバー体31の軸方向の他端部に形成された、係合テーパ筒部56および係合段部57が他の連結保護カバー体31の係合爪部62を係合させる径方向外方に凹む係合凹部63を構成している。
【0027】
ここで、径方向外側に突出してリブ状をなす係合テーパ筒部51および係合段部52からなる係合爪部62は連結保護カバー体31の全周にわたって形成されている。同様に径方向外方に凹む係合凹部63も連結保護カバー体31の全周にわたって形成されており、係合凹部63を形成する係合テーパ筒部56および係合段部57も径方向外側に突出してリブ状をなし連結保護カバー体31の全周にわたって形成されている。
【0028】
第1実施形態では、図3(a)〜図3(c)に示すように、中間円筒部55の軸方向長のみが異なる複数種類、具体的には三種類の連結保護カバー体31(A)〜31(C)が用意され、これらから選択された一つまたは複数が用いられる。つまり、連結保護カバー体31(A)は、軸方向長が短い中間円筒部55(A)を有することで全長が短くされており、連結保護カバー体31(B)は、軸方向長が中間円筒部55(A)よりも長い中間円筒部55(B)を有することで全長が連結保護カバー体31(A)よりも長くされている。また、連結保護カバー体31(C)は、軸方向長が中間円筒部55(B)よりも長い中間円筒部55(C)を有することで全長が連結保護カバー体31(B)よりも長くされている。
【0029】
図4に示すように、連結保護カバー体31は、係合爪部62の外周部において、ベース保護カバー体30の係合凹部47の内周部に係合されることになる。その際に、ベース保護カバー体30に対し連結保護カバー体31は、中間円筒部40の内周部に係合円筒部50の外周部を嵌合させ、係合テーパ筒部41の内周部に係合テーパ筒部51の外周部を嵌合させ、係合段部42に係合段部52を当接させ、係合円筒部43の内周部に係合円筒部53の外周部を嵌合させる。そのうち、係合テーパ筒部41および係合段部42からなる係合凹部47に、係合テーパ筒部51および係合段部52からなる係合爪部62が嵌合することで、ベース保護カバー体30および連結保護カバー体31が、軸方向および径方向に相対移動不可に連結される。ここで、係合円筒部53の軸方向長は、係合段部42および係合円筒部43を合わせた軸方向長と同等とされており、係合時に、ベース保護カバー体30の係合円筒部43と連結保護カバー体31の段部54との間に軸方向の隙間がなくなるように設定されている。
【0030】
また、図5に示すように、連結保護カバー体31(連結保護カバー体31(B)参照)は、係合爪部62の外周部において、他方の連結保護カバー体31(連結保護カバー体31(A)参照)の係合凹部63の内周部にも係合可能となっている。その際に、他方の連結保護カバー体31に対し一方の連結保護カバー体31は、中間円筒部55の内周部に係合円筒部50の外周部を嵌合させ、係合テーパ筒部56の内周部に係合テーパ筒部51の外周部を嵌合させ、係合段部57に係合段部52を当接させ、係合円筒部58の内周部に係合円筒部53の外周部を嵌合させる。そのうち、係合テーパ筒部56および係合段部57からなる係合凹部63に、係合テーパ筒部51および係合段部52からなる係合爪部62が係合することで、連結保護カバー体31および連結保護カバー体31が、軸方向および径方向に相対移動不可に連結される。ここで、係合円筒部53の軸方向長は、係合段部57および係合円筒部58を合わせた軸方向長と同等とされており、係合時に、他方の連結保護カバー体31の係合円筒部58と一方の連結保護カバー体31の係合段部54との間に軸方向の隙間がなくなるように設定されている。
【0031】
上記した複数のベース保護カバー体30(A)〜30(C)のうちの一つと、複数の連結保護カバー体31(A)〜31(C)のうちの少なくとも一つとを組み合わせて用いることにより、全長の異なる複数の保護カバー14を作製することができる。
【0032】
例えば、図4に示すように、ベース保護カバー体30(C)と連結保護カバー体31(A)とを組み合わせて保護カバー14を作製したり、図5に示すように、ベース保護カバー体30(A)と連結保護カバー体31(A)と連結保護カバー体31(B)とを組み合わせて保護カバー14を作製したりすることで、種々の全長を有する保護カバー14を作製することができる。勿論、連結保護カバー体31(A)〜31(C)を複数使用する場合、軸方向長が同じものを複数個連結させても良い。
【0033】
以上に述べた第1実施形態に係るシリンダ装置11によれば、保護カバー14が、樹脂材により形成されており、ロッド13およびシリンダ12を覆い一端部に係合凹部47を有するベース保護カバー体30と、係合凹部47に係合する係合爪部62を一端部に有する連結保護カバー体31とからなるため、ベース保護カバー体30に連結保護カバー体31を連結して保護カバー14とすることができる。よって、ベース保護カバー体30および連結保護カバー体31の少なくともいずれか一方に全長の異なるものを用意すれば、切断して残りを廃棄したりすることなく、ロッド13のストロークが異なったりシリンダ12の長さが異なったりする複数の仕様のシリンダ装置11に対して適正な全長の保護カバー14を取り付けることができる。したがって、保護カバー14の製造コストを抑制することができる。
【0034】
しかも、連結保護カバー体31が、ベース保護カバー体30の係合凹部47に係合する係合爪部62を一端部に有するとともに、他端側に他のベース保護カバー体30の係合爪部62を係合させる係合凹部63を有しているため、ベース保護カバー体30と複数の連結保護カバー体31とを連結して保護カバー14とすることもできる。したがって、ロッド13のストロークが異なったりシリンダ12の長さが異なったりする、さらに多様な仕様のシリンダ装置11に対して製造コストを抑制しつつ適正な全長の保護カバー14を取り付けることができる。
【0035】
加えて、ロッド13のストロークやシリンダ12の長さとは無関係に、軸方向長の異なる複数種類のベース保護カバー体30と、軸方向長の異なる複数種類の連結保護カバー体31とを用意し、いずれか一つのベース保護カバー体30と、一つ以上の連結保護カバー体31を組み合わせることで、多種類の仕様のシリンダ装置11に対して適正な軸方向長の保護カバー14を取り付けることができる。よって、製造用の金型を増やすことなく、多種類の軸方向長の異なる保護カバー14を作製することができる。
【0036】
また、ベース保護カバー体30の係合凹部47の内周部に連結保護カバー体31の係合爪部62の外周部を係合させるため、外側からの異物等の浸入を効果的に防止できる。
【0037】
また、係合凹部47を形成する、外周側に突出するリブ状の係合テーパ筒部41および係合段部42が、ベース保護カバー体30の全周にわたって形成されているため、係合テーパ筒部41および係合段部42によってベース保護カバー体30の剛性を高めることができる。よって、シリンダ装置11の伸縮時に保護カバー14がシリンダ12に接触することを防止できる。
【0038】
同様に、外周側に突出する係合爪部62と、係合凹部63を形成する係合テーパ筒部56および係合段部57とが、それぞれ、連結保護カバー体31の全周にわたってリブ状に形成されているため、係合爪部62と、係合凹部63を形成する係合テーパ筒部56および係合段部57とによって連結保護カバー体31の剛性を高めることができる。よって、シリンダ装置11の伸縮時に保護カバー14がシリンダ12に接触することを防止できる。
【0039】
「第2実施形態」
次に、本発明の第2実施形態に係るシリンダ装置を主に図6〜図8を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と共通の部分は同一称呼および同一符号とする。
【0040】
第2実施形態においては、連結保護カバー体31の一部構成を変更した連結保護カバー体70を有している。この連結保護カバー体70も、樹脂材により一体成形されており、図6に示すように、連結保護カバー体31と同様の係合円筒部50と係合テーパ筒部51と係合段部52と係合円筒部53とを有している。つまり、連結保護カバー体70も、連結保護カバー体31と同様の係合爪部62を有している。
【0041】
そして、連結保護カバー体70は、係合円筒部53の係合段部52とは反対側の端部から係合段部52とは反対側に徐々に拡径するように延出する中間テーパ部71と、中間テーパ部71の係合円筒部53とは反対側の端部から係合円筒部53とは反対側に延出する円筒状の大径円筒部72とを有している。
【0042】
この連結保護カバー体70においても、係合円筒部50、係合テーパ筒部51、係合段部52、係合円筒部53、中間テーパ部71および大径円筒部72は、同軸状に形成されている。また、大径円筒部72は、係合円筒部50および係合円筒部53よりも大径であって、係合爪部62よりも大径であり、ベース保護カバー体30の最大外径よりも大径の外径および内径となっている。
【0043】
第2実施形態では、図6(a)〜図6(c)に示すように、大径円筒部72の軸方向長のみが異なる複数種類、具体的には三種類の連結保護カバー体70(A)〜70(C)が用意され、これらから選択された一つが用いられる。つまり、連結保護カバー体70(A)は、軸方向長が短い大径円筒部72(A)を有することで全長が短くされており、連結保護カバー体70(B)は、軸方向長が大径円筒部72(A)よりも長い大径円筒部72(B)を有することで全長が連結保護カバー体70(A)よりも長くされている。また、連結保護カバー体70(C)は、軸方向長が大径円筒部72(B)よりも長い大径円筒部72(C)を有することで全長が連結保護カバー体70(B)よりも長くされている。
【0044】
図7に示すように、連結保護カバー体70は、第1実施形態の連結保護カバー31と同様、係合爪部62の外周部において、例えばベース保護カバー体30の係合凹部47の内周部に係合されることになる。その際に、係合テーパ筒部41に係合テーパ筒部51が嵌合し、係合段部42に係合段部52が当接することで、ベース保護カバー体30および連結保護カバー体70が、軸方向および径方向に相対移動不可に連結される。
【0045】
また、図8に示すように、連結保護カバー体70は、第1実施形態の連結保護カバー31と同様、係合爪部62の外周部において、他の連結保護カバー体31の係合凹部63の内周部にも係合可能となっている。その際に、係合テーパ筒部56に係合テーパ筒部51が嵌合し、係合段部57に係合段部52が当接することで、連結保護カバー体31および連結保護カバー体70が、軸方向および径方向に相対移動不可に連結される。
【0046】
そして、第2実施形態においては、上記した複数のベース保護カバー体30(A)〜30(C)のうちの一つと、複数の連結保護カバー体70(A)〜70(C)のうちの一つとを組み合わせたり、上記した複数のベース保護カバー体30(A)〜30(C)のうちの一つと、複数の連結保護カバー体31(A)〜31(C)のうちの少なくとも一つと、複数の連結保護カバー体70(A)〜70(C)のうちの一つとを組み合わせたりすることにより、全長が異なり、端部に大径円筒部72を有する複数の保護カバー14を作製することができる。
【0047】
例えば、図7に示すように、ベース保護カバー体30(C)と連結保護カバー体70(A)とを組み合わせて保護カバー14を作製したり、図8に示すように、ベース保護カバー体30(A)と連結保護カバー体31(A)と連結保護カバー体31(B)と連結保護カバー体70(B)とを組み合わせて保護カバー14を作製したりすることで、端部に大径円筒部72を有する種々の軸方向長の保護カバー14を作製することができる。この場合も、連結保護カバー体31(A)〜31(C)を複数使用する場合、軸方向長が同じものを複数個連結させても良い。
【0048】
以上に述べた第2実施形態に係るシリンダ装置11によれば、大径の大径円筒部72を有し、全長および大径円筒部72の軸方向長が異なる連結保護カバー体70を複数用意することで、保護カバー14の任意の位置から径を異ならせることができる。したがって、突起部を有し突起部の位置が異なる複数の仕様のシリンダ装置11等に対して、製造コストを抑制しつつ、適正な位置に適正な長さの大径円筒部72を有し適正な全長を有する保護カバー14を取り付けることができる。
【0049】
「第3実施形態」
次に、本発明の第3実施形態に係るシリンダ装置を主に図9,図10を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と共通の部分は同一称呼および同一符号とする。
【0050】
第3実施形態においては、連結保護カバー体31の一部構成を変更した連結保護カバー体80を有している。この連結保護カバー体80は、樹脂材により一体成形されており、図9に示すように、連結保護カバー体31と同様の係合円筒部50と係合テーパ筒部51と係合段部52と係合円筒部53とを有している。よって、この連結保護カバー体80も、係合爪部62を有している。
【0051】
そして、連結保護カバー体80は、係合円筒部53の係合段部52とは反対側の端部から係合段部52とは反対側に徐々に拡径するように延出して拡径テーパ部81が形成されており、この拡径テーパ部81の係合円筒部53とは反対側の端部から係合円筒部53とは反対側に徐々に縮径するように延出して縮径テーパ部82が形成されている。そして、軸方向に交互にこれら拡径テーパ部81および縮径テーパ部82が所定の複数形成されることで伸縮可能な蛇腹状をなす蛇腹部83を構成している。そして、蛇腹部83の係合爪部62とは反対側の端部は縮径テーパ部82となっており、この縮径テーパ部82の係合爪部62とは反対側の端部には、係合爪部62とは反対側に延出する円筒状の端部円筒部84が形成されている。端部円筒部84は、係合円筒部50および係合円筒部53と同外径および同内径に形成されている。
【0052】
この連結保護カバー体80においても、係合円筒部50、係合テーパ筒部51、係合段部52、係合円筒部53、蛇腹部83および端部円筒部84は、同軸状に形成されている。また、蛇腹部83は、最大外径が、係合円筒部50および係合円筒部53よりも大径であって、係合爪部62よりも大径であり、最小内径が、係合円筒部50、係合円筒部53および端部円筒部84と同内径となっている。
【0053】
図10に示すように、連結保護カバー体80は、第1実施形態の連結保護カバー31と同様、係合爪部62の外周部において、ベース保護カバー体30の係合凹部47の内周部に係合されることになる。その際に、係合テーパ筒部41に係合テーパ筒部51が嵌合し、係合段部42に係合段部52が当接することで、ベース保護カバー体30および連結保護カバー体80が、軸方向および径方向に相対移動不可に連結される。
【0054】
そして、第3実施形態においては、上記した複数のベース保護カバー体30(A)〜30(C)のうちの一つと、連結保護カバー体80とを組み合わせることにより、全長が異なり、蛇腹部83を有する複数の保護カバー14を作製することができる。
【0055】
例えば、図8に示すように、ベース保護カバー体30(B)と連結保護カバー体80とを組み合わせて保護カバー14を作製したりできる。
【0056】
以上に述べた第3実施形態に係るシリンダ装置11によれば、伸縮可能な蛇腹部83を有する連結保護カバー体80を有しているため、保護カバー14の任意の位置から伸縮可能な蛇腹部83を配置することができる。したがって、保護カバー14にダストブーツの機能を付加することができる。
【符号の説明】
【0057】
11 シリンダ装置
12 シリンダ
13 ロッド
14 保護カバー
30 ベース保護カバー体(第1の保護カバー体)
31 連結保護カバー体(第2の保護カバー体,第3の保護カバー体)
47 係合凹部(第1の係合部)
62 係合爪部(第2の係合部,第4の係合部)
63 係合凹部(第3の係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダから伸縮可能に延出されたロッドとを備え、前記ロッドに該ロッドおよび前記シリンダを覆う保護カバーが取り付けられたシリンダ装置において、
前記保護カバーは、樹脂材により形成されており、前記ロッドおよび前記シリンダを覆い一端部に第1の係合部を有する第1の保護カバー体と、前記第1の係合部に係合する第2の係合部を一端部に有する第2の保護カバー体とからなることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
シリンダと、該シリンダから伸縮可能に延出されたロッドとを備え、前記ロッドに該ロッドおよび前記シリンダを覆う保護カバーが取り付けられたシリンダ装置において、
前記保護カバーは、樹脂材により形成されており、前記ロッドおよび前記シリンダを覆い一端部に第1の係合部を有する第1の保護カバー体と、前記第1の係合部に係合する第2の係合部を一端部に有し他端部に第3の係合部を有する第2の保護カバー体と、前記第3の係合部に係合する第4の係合部を一端部に有する第3の保護カバー体とからなることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項3】
前記第1の保護カバー体の前記第1の係合部の内周部に前記第2の保護カバー体の前記第2の係合部の外周部を係合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−74996(P2011−74996A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226111(P2009−226111)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】