説明

シロキサニルモノマーの精製方法

少なくとも1種の重合禁止剤の存在下でシロキサニルモノマーを精製する減圧蒸留法が開示されている。さらなる局面において、該重合禁止剤はアルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンであり得る。また、開示された方法により精製された化合物、及びそれから製造されるポリマーも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年11月22日に出願された米国出願第60/866,888号及び2007年3月2日に出願された米国出願第11/681/406号の利益を主張するものであり、これらの出願は参照によりその全文がここに組み入れられるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来のシロキサニルモノマーの蒸留では、モノマーが過剰な高温に曝されると、加熱中に発生する重合生成物が混入することがあり、それにより収量が低下してしまう。その一方、精製工程を低温で行なうと、例えば比較的高分子量のシロキサニルモノマーを蒸留で精製するのが困難になり得る。この困難性をさらに悪化させることには、減圧下で蒸留したシロキサニルモノマーは精製中に変色してしまうことがあり、製品の品質が低下する。
【0003】
従って、これらの欠点を解消し、重合生成物を実質的に含まず且つ変色のないシロキサニルモノマーの精製を可能にする精製方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中に具体化され広範に記載されるように、本発明は、1つの局面において、少なくとも1種の重合禁止剤の存在下でシロキサニルモノマーを精製するための減圧蒸留法に関する。さらなる局面において、該重合禁止剤は、アルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンであり得る。
【0005】
さらなる局面において、本発明は、開示された方法により精製された化合物及びそれから製造されたポリマーに関する。
【0006】
さらなる局面において、本発明は、開示されたポリマーを含む成型品、眼用レンズ、及びコンタクトレンズに関する。
【0007】
本発明の他の利点は、以下の記載に部分的に示され、部分的に該記載から自明であろう。あるいは、本発明の他の利点は、本発明の実施により理解され得る。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲中に特に明示されている要素及び組み合わせによって理解され達成されるだろう。以上の一般的記載及び以下の詳細な記載の両者は、模範的及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されるところの本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の発明の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解され得る。
【0009】
本願化合物、組成物、製品、装置、及び/又は方法が開示され説明される前に、それらが、他に断りがない限り特定の合成方法に限定されないこと、又は他に断りがない限り特定の試薬類に限定されないこと、それ自体当然に異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で用いられる用語は、特定の態様を記述するためのものに過ぎず、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本発明の実施又は試験において、ここに記載したものと類似する又は同等なあらゆる方法及び材料を用いることができるが、以下には方法例及び材料例を記載する。
【0010】
本明細書で言及する全ての文献は、それらの文献が引用されている方法及び/又は材料について開示及び記述する目的で、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書で議論する文献は、もっぱら本願出願日に先行する開示のために提供される。これらの記述は、本発明が先行発明よりも前に発明されたものではないとの自認であると解釈されるものではない。さらに、本明細書中に提示される文献の日付は、実際の発行日と相違する可能性があり、それらについては別途確認する必要があるだろう。
【0011】
A.定義
本願明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる、単数形の「1つの(a)」「1つの(an)」及び「該(the)」には、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、複数形の指示対象も包含される。従って、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」、又は「1つの残基(a residue)」には、2以上のそのような成分、ポリマー又は残基等の混合物も包含される。
【0012】
本明細書では、範囲は「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現されることがある。そのような範囲が表現される場合には、別の態様にはその特定の値から及び/又はその他の特定の値までが包含される。同様に、「約」なる先行詞を用いることによって数値が近似値で表現される場合、特定の数値が別の態様を形成するということが理解されるだろう。さらに、範囲のそれぞれの端点が、もう一方の端点との関連で有意でもあるし、またもう一方の端点とは独立して有意でもあるということも理解されるだろう。また、本明細書には多くの数値が開示されていること、及び、各数値が、その数値自体に加えて「約」その特定の値としてここに開示されてもいるということが理解されるべきである。例えば、「10」なる数値が開示されている場合には、「約10」も開示されているものとする。また、2つの特定の構成単位の間の各構成単位も開示されているということも理解される。例えば、10と15が開示されている場合には、11、12、13及び14も開示されているものとする。
【0013】
本願明細書及び特許請求の範囲で用いられる化学種の残基とは、特定の反応スキーム又はその後得られる処方物(formulation)若しくは化学製品中の化学種の結果物である部分を言い、該部分が実際にその化学種から得られるかどうかは問わない。従って、ポリエステル中のエチレングリコール残基とは、ポリエステル中の1つ以上の−OCH2CH2O−単位を言い、該ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されたかどうかは問わない。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基とは、ポリエステル中の1つ以上の−CO(CH2)8CO−部分を言い、セバシン酸又はそのエステルを反応させてポリエステルを得ることによって該残基が得られるかどうかは問わない。
【0014】
本明細書で用いられる「任意の」又は「任意に(で)」という語は、それに続けて記載される現象又は環境が生じても生じなくてもよいということ、及びその記載が当該現象又は環境が生じる場合と生じない場合とを包含するということを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる「ポリマー」という語は、比較的高分子量の天然又は合成の有機化合物(例えば、ポリエチレン、ゴム、セルロース)を指し、その構造は反復した小単位であるモノマー(例えば、エタン、イソプレン、β−グルコース)によって表すことができる。合成ポリマーは、典型的には、モノマーの付加重合又は縮合重合によって形成される。
【0016】
ポリマー(例えば、ポリ(メチルアクリレート))は、1以上のモノマーにより表され、かつ、式:
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、nは、ある特定のポリマー分子中のモノマー単位数又はポリマー分子集団中のモノマー単位の平均数を表す)
により表される構造を有し得るということが理解される。ある局面において、ポリマーは、nについて分布を有し、このnは、値の範囲又はおよその値として、例えば、nは約10〜約30である、又はnは約15である、のように表され得る平均値を有する、ポリマー分子集団として提供され得るということが理解される。また、該ポリマーは、例えば開始基及び停止基のような末端基をさらに含み得ることも理解される。ポリマーのために記載された式では、末端基(例えば開始基及び停止基)が任意に省略され得るが、これらの基はそのポリマー分子中に依然として存在し得る。
【0019】
本明細書で用いられる「オリゴマー」という語は、比較的低分子量のポリマーであって、反復単位数が2〜10、例えば、2〜8、2〜6、又は2〜4であるポリマーを指す。1つの局面では、オリゴマー集団は、平均反復単位数が約2〜約10、例えば、約2〜約8、約2〜約6、又は約2〜約4であり得る。
【0020】
本明細書で用いられる「共重合体」という語は、2つ以上の相異なる反復単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例えば、これに限定されないが、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体であり得る。
【0021】
本明細書で用いられる「減圧蒸留」という語は、ガス状蒸気が濃縮して純粋な液体になるように、大気圧程度(すなわち約1000 mbar又は約760 Torr)よりも低い圧力の下で蒸発又は沸騰を経て液体を精製する行為を指す。汚染物質及び混入物質は、典型的には、濃縮残渣中に残る。圧力は、例えば、約100 mbar未満、約10 mbar未満、約1 mbar未満、約0.1 mbar未満、約0.05 mbar未満、又は約0.02 mbar未満であり得る。蒸留装置は、典型的には、蒸留容器(加熱中に蒸留前の材料を保持する)、冷却器(蒸留された材料を冷却する)、及び受取容器(留出物を回収する)を含む。1つの局面では、蒸留には、化学蒸着は包含されない。
【0022】
本明細書で用いられる「薄膜蒸留」という語は、作業圧力を低下させることにより沸点を実質的に低下させた、短経路蒸留を指す。必要とされる高温及び長い滞留時間のために従来の減圧蒸留(ポットスチル又は蒸留塔)では破壊されるであろう生成物の熱分離が、これによって可能になる。そのような方法はまた「薄層蒸留」とも呼ばれ、種々の局面において、膜蒸留、流下膜蒸留、及び分子蒸留(短経路又は開放経路蒸留)が包含され得る。薄層蒸発(thin-layer evaporation)では、蒸発すべき液体は、典型的には、例えば重力、遠心力、又は機械式ワイパーによって機械的に散布され、それにより、典型的には0.5 mm未満、例えば0.3 mm未満、又は0.2 mm未満、又は0.1 mm未満の厚さの薄層が形成され、この薄層が減圧下で蒸発され得る。
【0023】
本明細書で用いられる「重合禁止剤」という語は、場合によっては「ラジカル阻害剤」又は「ラジカル捕捉剤」とも呼ばれ、重合過程を妨げるか又は遅らせる物質を指す。典型的には、このような阻害剤は、重合を開始できるラジカルの形成を遅らせるか又は妨げる。あるいは、このような阻害剤は、形成されたいずれかのラジカルと、重合開始工程及び/又は成長工程よりも大きな速度で反応することができる。適切な重合禁止剤の例としては、アルキルヒドロキノン及びヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0024】
1つの局面において、重合禁止剤は、開示された材料の蒸留の間に存在し得る。さらなる局面では、重合禁止剤は、蒸留の蒸留容器内に存在し得る。さらに他の局面では、重合禁止剤は、蒸留工程中に揮発するように選択され得る;すなわち、重合禁止剤の少なくとも一部が蒸留された生成物と共に存在することもあるだろう。さらなる他の局面では、重合禁止剤は、蒸留工程中に揮発しないように選択され得る;すなわち、重合禁止剤は非蒸留材料と共に残存し、蒸留された生成物中に実質的に存在しないこともあるだろう。さらに他の局面では、第2の重合禁止剤が蒸留の受取容器内に存在し得る。第2の重合禁止剤は、第1の重合禁止剤と同一でも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書で用いられる「シロキサニル」という語は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を指す。従って、例えば、シロキサニル基とは少なくとも1つのSi-O-Si部分を有する基を意味し、また、シロキサニル化合物とは少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。
【0026】
本明細書で用いられる「シロキサニルモノマー」という語は、少なくとも1つの重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有するシロキサニル化合物を指す。1つの局面では、重合可能な炭素−炭素不飽和結合は、アルキルアクリロイル部分(例えばアクリロイル又はメタアクリロイル部分)の一部であり得る。
【0027】
本明細書で用いられる「アルキルアクリル酸」という語は、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、その塩、及びその誘導体を指す。1つの局面において、アルキルアクリル酸はさらに置換されていてもよい。さらなる局面において、アルキルアクリル酸は、アクリル酸若しくはメタアクリル酸又はそのエステルである。
【0028】
本明細書で用いられる「加水分解性基」という語は、加水分解若しくは加溶媒分解によって水素に変換可能な基又は部分を指す。1つの局面において、加水分解性基は、常温又はその近傍で常圧又はその近傍にて水又はプロトン性溶媒への曝露により加水分解(すなわち水素基に変換)され得る。さらなる局面において、加水分解性基は、高温又は高圧下で水又はプロトン性溶媒への曝露により加水分解され得る。さらなる局面において、加水分解性基は、酸性若しくはアルカリ性の水又は酸性若しくはアルカリ性のプロトン性溶媒への曝露により加水分解され得る。
【0029】
本明細書で用いられる「アルキルヒドロキノン」という語は、アルキル置換1,4-ジヒドロキシベンゼンを指し、下記式:
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール又は加水分解性基であり、R及びRの少なくとも一方が水素を含み、Z、Z、Z及びZは独立して水素、アルキル基又は他の置換基を含んでいてよく、Z、Z、Z及びZのうちの少なくとも1つがアルキル基を含む)
で表すことができる。
【0032】
本明細書で用いられる「ヒドロキシナフタレン」という語は、場合によっては「ナフトール」とも呼ばれ、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたナフタレンを指し、下記構造で表すことができる。
【0033】
【化3】

【0034】
1つの局面において、ヒドロキシナフタレンは、例えば、1-ナフトール又は2-ナフトールであり得る。さらなる局面において、ヒドロキシナフタレンは、アルコキシナフトール、ジヒドロキシナフトール、又はジアルコキシナフトールであり得る。すなわち、ナフトールは、2つ以上のヒドロキシル基を有し、該ヒドロキシル基のうちの1つ以上が、例えばアルキル基又は他の置換基で置換されていてもよい。また、開示されたヒドロキシナフタレンは、例えばアルキル基又は他の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0035】
本明細書で用いられる「置換(された)」という語は、許容される有機化合物の置換基全てを包含することを意図している。広い局面において、該許容される置換基には、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が包含される。置換基の具体例としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、好適な有機化合物に対して1つ又はそれ以上で同一又は異なるものであり得る。本開示の目的のため、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/又はへテロ原子の原子価を満足させる本明細書記載の有機化合物の許容されるいかなる置換基をも有し得る。明示的に記載されない限り、本開示は、有機化合物の許容される置換基によって如何様にも限定されるものではない。同様に、「置換」又は「〜で置換された」という語には、そのような置換が置換される原子と置換基の許容される原子価に従い、また、該置換により安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などの変換を自発的に起こさない化合物が生じるという黙示の但し書が包含される。
【0036】
種々の用語を定義するに際し、種々の具体的な置換基を表すために本明細書では包括的記号として「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」が用いられる。これらの記号は如何なる置換基であってもよく、ここに開示されるものに限定されるものではない。一例においてそれらがある置換基として定義される場合、それらは別の例では他の置換基として定義され得る。
【0037】
本明細書で用いられる「アルキル」という語は、炭素原子1〜24個の分岐又は非分岐の飽和炭化水素基である。例えば、炭素原子は1〜12個又は1〜6個であり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等が挙げられる。アルキル基は置換でも非置換でもよい。本明細書において、アルキル基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。「低級アルキル」基は1〜6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0038】
明細書全体において、「アルキル」は一般に非置換アルキル基と置換アルキル基の両者をいうために用いられる;しかしながら、置換アルキル基はまた、アルキル基上の特定の置換基を明示して具体的に表現されることもある。例えば、「ハロゲン化アルキル」という語は、1つ以上のハライド、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素で置換されたアルキル基を特に指す。「アルコキシアルキル」という語は、以下の記載において、1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を特に指す。「アルキルアミノ」という語は、以下の記載において、1つ以上のアミノ基で置換されたアルキル基を特に指す。その他も同様である。「アルキル」が一例において用いられ且つ「アルキルアルコール」のような限定された語が別の例で用いられるような場合でも、「アルキル」なる語が「アルキルアルコール」等のような限定された語を包含しないということを意味しているわけではない。
【0039】
この例は本明細書に記載される他の基についても用いられる。すなわち、「シクロアルキル」のような語は非置換及び置換シクロアルキル部分を指す一方、置換部分は本明細書においてさらに具体的に特定されることがある;例えば、特定の置換シクロアルキルが例えば「アルキルシクロアルキル」といわれることがある。同様に、置換アルコキシが例えば「ハロゲン化アルコキシ」と具体的にいわれることがあり、特定の置換アルケニルが例えば「アルケニルアルコール」である場合がある。その他も同様である。この場合においても、「シクロアルキル」のような総括的な語と「アルキルシクロアルキル」のような限定された語が用いられている記載例は、該総括的用語が限定された語を包含しないということを意味するものではない。
【0040】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という語は、少なくとも3個の炭素原子から成る非芳香族炭素環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」という語は、上記に定義したシクロアルキル基の1種であり、「シクロアルキル」という語の意味範囲に包含される。「ヘテロシクロアルキル」とは、環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンのようなヘテロ原子と置き換わったものである。シクロアルキル基とヘテロシクロアルキル基は置換でも非置換でもよい。本明細書において、シクロアルキル基とヘテロシクロアルキル基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いられる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という語は、エーテル結合を介して結合されるアルキル又はシクロアルキル基を指す;すなわち、「アルコキシ」基は−OA1と定義することができ、ここでA1は上記定義によるアルキル又はシクロアルキルである。本明細書において、「アルコキシ」にはアルコキシ基のポリマーも包含される;すなわち、アルコキシは−OA1−OA2又は−OA1−(OA2)a−OA3などのポリエーテルであり得る。ここで、「a」は1〜200の整数であり、A1、A2、及びA3はアルキル及び/又はシクロアルキル基である。
【0042】
本明細書で用いられる「アルケニル」という語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式を有する炭素数2〜24の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)などの非対称構造には、E及びZ異性体の両者が包含されるものとする。このことは、非対称アルケンが存在している本明細書中の構造式において推測することができるし、あるいは結合記号C=Cによって明確に示され得る。本明細書において、アルケニル基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で用いられる「シクロアルケニル」という語は、少なくとも3個の炭素原子から成る非芳香族炭素環であって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合すなわちC=Cを含むものである。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルケニル」という語は、上記に定義したシクロアルケニル基の1種であり、「シクロアルケニル」という語の意味範囲に包含される。「ヘテロシクロアルケニル」とは、環の炭素原子のうちの少なくとも1個が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンのようなヘテロ原子で置き換わったものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は置換でも非置換でもよい。本明細書において、シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で用いられる「アルキニル」という語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する炭素数2〜24の炭化水素基である。本明細書において、アルキニル基は非置換でもよいし、また1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で用いられる「シクロアルキニル」という語は、少なくとも7個の炭素原子から成る非芳香族炭素環であって、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含むものである。シクロアルキニル基の例としては、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキニル」という語は、上記に定義したシクロアルケニル基の1種であり、「シクロアルキニル」という語の意味範囲に包含される。「ヘテロシクロアルキニル」とは、環の炭素原子の少なくとも1個が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリンのようなヘテロ原子で置き換わったものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は置換でも非置換でもよい。本明細書において、シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で用いられる「アリール」という語は、例えばこれに限定されないがベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等の何らかの炭素ベースの芳香族基を含む基である。「アリール」という語もまた「ヘテロアリール」を包含する。ヘテロアリールは、芳香族基の環中に組み込まれた少なくとも1個のへテロ原子を有する芳香族基を含む基として定義される。ヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄及びリンが含まれるが、これらに限定されない。同様に、「非ヘテロアリール」という語は、「アリール」なる語に包含されるものであるが、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含む基をいう。アリール基は置換でも非置換でもよい。本明細書において、アリール基は1つ以上の基で置換されていてもよく、該基としては置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、又はチオール等が挙げられるが、これらに限定されない。「ビアリール」という語は、アリール基のうちの特定の1種であり、「アリール」の定義に包含される。ビアリールとは、ナフタレンのような縮合環構造を介して互いに結合した2つのアリール基、又はビフェニルのような1個以上の炭素−炭素結合を介して連結した2つのアリール基をいう。
【0047】
相反する記述がない限り、楔又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、許容される各異性体、例えば各エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ混合物やスカレミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を包含するものとする。
【0048】
本発明の組成物を調製するために用いられる成分及び本明細書が開示する方法において用いられる組成物自体が開示されている。これら及び他の材料が本明細書に開示されており、そして、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合には、これらの化合物の様々な個々の組み合わせ、選択的な組み合わせ及び並べ替えは、明示的には開示されていないかもしれないが、いずれも具体的に意図されて本明細書に記載されているということが理解される。例えば、特定の化合物が開示され議論され、多数の化合物等の分子に対して施し得る多くの修飾が議論される場合、相反する記載が具体的に存在しない限り、該化合物の各種の組み合わせ及び並べ替えならびに可能な修飾が具体的に明示されているものとする。従って、一群の分子A、B及びCが開示され、併せて一群の分子D、E及びF並びにA−Dなる分子の組み合わせの例が開示されている場合には、それぞれが個別には記載されていなかったとしても、それぞれが個別にそして集合的に意図され、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているとみなされるということを意味している。同様に、これらのいかなるサブセットないしは組み合わせもまた開示されている。従って、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループが開示されているとみなされる。この概念は本願のあらゆる局面に適用され、例えば、これらに限定されないが、本発明の組成物の作製方法及び使用方法における工程に適用される。従って、実施可能なさらなる工程が種々存在する場合、それらのさらなる工程のそれぞれは、本発明の方法の態様のいかなる具体的態様ないしは組み合わせとも併せて実施可能であるということが理解される。
【0049】
本明細書に開示される組成物は一定の機能を有するということが理解される。開示される機能を遂行するための一定の構造上の要件が本明細書に開示されており、そして、開示される構造と関連性のある同様の機能を遂行可能な種々の構造が存在するということ、並びにこれらの構造が同様の結果を典型的に達成するだろうことが理解される。
【0050】
B.シロキサニルモノマーの減圧蒸留
1つの局面において、開示された方法は、シロキサニルモノマーが減圧高温下での従来の蒸留法に付された場合であっても、重合生成物による生成物の混入汚染が生じないか又は実質的に低減されたレベルで生じるという点、及び高収量を達成できるという点で、従来技術よりも有利である。さらに、例えば比較的高分子量のシロキサニルモノマーを蒸留によって精製するためには、比較的高温が精製工程の間に必要とされ得る。開示された方法によれば、重合禁止剤の存在下での蒸留によってかかる利点が達成される。1つの局面では、重合禁止剤は、1種以上のアルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含み得る。ヒドロキシナフタレン化合物が重合禁止剤として用いられるある局面では、黄色や褐色への変色が実質的に起こらず、高品質の製品を得ることができる。
【0051】
1つの局面において、本発明は、アルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含む少なくとも1種の重合禁止剤の存在下でシロキサニルモノマーを減圧蒸留する工程を含む、シロキサニルモノマーの精製方法に関する。さらなる局面において、該方法は、蒸留されたシロキサニルモノマーを回収する工程をさらに含む。モノマーは、例えば受取容器内に回収され得る。
【0052】
典型的には、最も高い重合禁止効果を有する化合物はヒドロキシナフタレンであり、次いで高い重合禁止効果を有する化合物はアルキル基を有するヒドロキノン化合物である。典型的には、具体的な化合物の重合禁止効果の順位は次の通りである:4-メトキシナフトール>2-t-ブチルヒドロキノン>2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン。
【0053】
一般に、重合禁止剤は、反応溶液を減圧蒸留(例えば薄膜蒸留)装置に供給する前に該溶液中に添加して溶解する。生成物への重合禁止剤の混和が品質上の問題を生じさせない限り、生成物中又は適した溶媒中に溶解した溶液としての重合禁止剤を、蒸気ラインの途中又は冷却器内での濃縮後の流れに導入することができる。
【0054】
1.ヒドロキシナフタレン
1つの局面では、少なくとも1種の重合禁止剤はヒドロキシナフタレンを含む。ヒドロキシナフタレンは、例えば、アルコキシナフトール、ジヒドロキシナフトール、又はジアルコキシナフトールであり得る。1つの局面では、ヒドロキシナフタレンは4-メトキシ-1-ナフトールである。
【0055】
1つの局面では、ヒドロキシナフタレンは下記1-ナフトール又はα-ナフトールであり得る。
【0056】
【化4】

【0057】
1-ナフトールは、任意で、例えば1つ以上のアルキル又はアルコキシ基でさらに置換されていてもよい。
【0058】
また、1-ナフトールは、任意に置換された下記ジヒドロキシナフタレンとして提供され得る。
【0059】
【化5】

【0060】
該ジヒドロキシナフタレンは、例えば、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、又は1,8-ジヒドロキシナフタレンであり得る。また、ナフトールは、トリヒドロキシナフタレン及び/又はテトラヒドロキシナフタレンとして提供され得る。さらにまた、ナフトールは、モノ-、ジ-、トリ-、及び/又はテトラ-ヒドロキシナフタレンを任意で含む、ナフトールの混合物として提供され得る。
【0061】
1つの局面では、ヒドロキシナフタレンは下記2-ナフトール又はβ-ナフトールであり得る。
【0062】
【化6】

【0063】
2-ナフトールは、任意で、例えば1つ以上のアルキル又はアルコキシ基でさらに置換されていてもよい。
【0064】
また、2-ナフトールは、任意に置換された下記ジヒドロキシナフタレンとして提供され得る。
【0065】
【化7】

【0066】
該ジヒドロキシナフタレンは、例えば、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、又は2,8-ジヒドロキシナフタレンであり得る。また、ナフトールは、トリヒドロキシナフタレン及び/又はテトラヒドロキシナフタレンとして提供され得る。さらにまた、ナフトールは、モノ-、ジ-、トリ-、及び/又はテトラ-ヒドロキシナフタレンを任意で含む、ナフトールの混合物として提供され得る。
【0067】
1つの局面において、あるヒドロキシナフタレンは光の作用により分解され得る(すなわち、光分解性であり得る)。光分解性ヒドロキシナフタレン禁止剤としては、4-メトキシ-1-ナフトール、4-ナフタレンジオール、及び1,5-ナフタレンジオールが挙げられる。光分解が望まれない場合、このようなヒドロキシナフタレン禁止剤の使用は、光への曝露を最小化又は排除しながら行なわれる。一方で、光分解が望まれる場合、ヒドロキシナフタレン禁止剤を反応から除去するため、例えば蒸留の完了後に光への曝露が行なわれる。
【0068】
2.アルキルヒドロキノン
さらなる局面では、少なくとも1種の重合禁止剤はアルキルヒドロキノンを含む。アルキルヒドロキノンは、例えば、2-t-ブチルヒドロキノン又は2,6-ジ-t-ブチルヒドロキノンであり得る。1つの局面では、アルキルヒドロキノンは2-t-ブチルヒドロキノンである。
【0069】
該アルキル基は、例えば、炭素数1〜12の置換又は非置換アルキル基を含む。1つの局面では、該アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルから選択される。さらなる局面では、該アルキル基は第3級アルキル基である。
【0070】
1つの局面では、アルキルヒドロキノンは下記構造:
【0071】
【化8】

【0072】
(式中、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール又は加水分解性基であり、R及びRの少なくとも一方が水素を含み、Z、Z、Z及びZは独立して水素、アルキル基又は他の置換基を含んでいてよく、Z、Z、Z及びZのうちの少なくとも1つがアルキル基を含む)
で表され得る。
【0073】
さらなる局面では、アルキルヒドロキノンは下記構造:
【0074】
【化9】

【0075】
(式中、Z、Z、Z及びZは独立して水素、アルキル基又は他の置換基を含んでいてよく、Z、Z、Z及びZのうちの少なくとも1つがアルキル基を含む。)
で表され得る。例えば、Z、Z及びZが水素でZがアルキルであってよい。また、Z及びZが水素でZ及びZがアルキル基であってよく、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。さらにまた、Z及びZが水素でZ及びZがアルキル基であってよく、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。さらにまた、Z及びZが水素でZ及びZがアルキル基であってよく、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。さらにまた、Z、Z、Z及びZのうちの3つ又は4つがアルキル基であってよく、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。
【0076】
また、開示されたアルキルヒドロキノンは、任意でさらに置換されていてもよい。
【0077】
3.シロキサニルモノマー
1つの局面において、開示された方法は、下記式(A1−1)又は(A1−2)で表されるシロキサニルモノマーを精製するために用いられ得る。
【0078】
【化10】

【0079】
(式中、Rは水素、炭素数1〜18の置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルを表し、Xは水素又は加水分解性基を表し、Aはシロキサニル基を表す。)
【0080】
さらなる局面では、Aは下記式(B1)で表される基である。
【0081】
【化11】

【0082】
(式中、Q〜Q11は独立して水素、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル、又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリールを表し;kは0〜200の整数を表し;a、b、及びcは独立して0〜20の整数を表す。ただし、k、a、b、及びcは同時に0ではない。)
【0083】
さらに他の局面では、Aは下記式(B2)で表される基である。
【0084】
【化12】

【0085】
(式中、Q21〜Q27は独立して水素、炭素数1〜18の置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルを表し;nは0〜12の整数を表す。)
【0086】
シロキサニルモノマーは、分子量約500〜約3000から選択され得る。例えば、その分子量は約500〜約2000、約500〜約1000、約1000〜約3000、約1000〜約2000であり、あるいは約500より大きく、約600より大きく、約750より大きく、又は約1000より大きい。
【0087】
4.蒸留条件
1つの局面において、蒸留は、例えば薄膜蒸留のような短経路蒸留である。
【0088】
さらなる局面では、蒸留は少なくとも110℃で、例えば少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、又は少なくとも150℃で行なわれる。
【0089】
ある局面において、開示される方法は、さらに他の工程を、例えば少なくとも1種の重合禁止剤の少なくとも一部を除去する工程を含み得る。重合禁止剤は、例えば、洗浄、濾過、又は後続の化学反応によって除去され得る。1つの局面では、少なくとも1種の重合禁止剤の少なくとも一部を除去する工程は、反応混合物をアルカリ性水溶液で洗浄することにより行なわれる。シロキサニルモノマーの色を消去又は減少させるのに有効であり得るので、少なくとも1種の吸着剤による処理も好適である。好適な吸着剤の例としては、活性炭、シリカ、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂、及び他の天然又は合成樹脂が挙げられる。1つの局面では、好適な吸着剤は活性炭である。
【0090】
5.薄膜蒸留
1つの局面において、薄膜(又は薄層)蒸留装置が減圧蒸留のために用いられ得る。そのような装置は、反応溶液を薄層状に拡散させる撹拌駆動装置部と、反応溶液薄層を減圧下で加熱し蒸発・濃縮させる加熱及び蒸発/濃縮部を具備した、公知の仕様の装置であってよい。そのような装置のいずれでも、蒸留操作は、その装置の操作に通常用いられる方法により行なうことができる。薄膜蒸留装置は、例えば、供給された溶液が内部撹拌翼により加熱部上に遠心力で拡散されて薄層を形成する遠心式蒸発器であってよく、横型でも立型でもよい。加熱部は円筒型でもテーパー型でもよく、その伝熱面積はそれほど重要ではない。とりわけ、高濃度まで蒸発できるので、円筒型の加熱部とワイパー様の撹拌翼とを具備し、該撹拌翼の先端が加熱部表面に遠心力により押し付けられてその表面を掻き取る、立型の流下膜式蒸発器を用いることができる。
【0091】
1つの局面では、減圧蒸留は、上記した薄膜蒸留装置を用いて、15 mmHg以下の減圧下、例えば約1〜約15 mmHgにて、加熱部を約160℃以下、例えば約150℃以下、約140℃以下、約130℃以下、約120℃以下、約110℃以下、又は約100℃以下の温度に維持して行なわれる薄膜蒸留によって達成され得る。蒸留時間は、供給量に応じて適宜調節することができる。使用する特定の薄膜蒸留装置の仕様書に従い、供給する溶液の量は、薄膜形成が不連続になる下限値から蒸発率が極限に達しそれ以上上昇しない上限値までの間で設定することができる。供給される溶液は、上記した条件の下、薄膜蒸留装置内で蒸留され、上記以外の条件は適宜調節することができる。
【0092】
さらなる局面では、必要に応じ、供給溶液から生じるミストを分離するために薄膜蒸留装置にミストセパレータが接続され得る。具体的には、市販の蒸留促進用充填材を充填した所望の高さのカラムを、薄膜蒸留装置から冷却器に至る蒸気ライン中に接続することができる。あるいは、ミストセパレータは、立型蒸発器中の上部蒸気排出口の上流に取り付けることができる。
【0093】
蒸留すべき供給溶液が主成分よりも低い沸点を有する成分(例えば不純物及び溶媒)を含んでいる場合、主成分の単離・精製よりも先に濃縮工程を行ない、そのような不所望の成分の濃度を例えば約1重量%未満まで減少させてもよい。この濃縮工程は、減圧蒸留用の薄膜蒸留装置を用いて行なうことができる。濃縮の条件は、約160℃以下の内部温度及び約50 mmHg以下の減圧を採用することができるが、それほど重要ではない。所望により、薄膜蒸留装置を予熱してもよい。反応溶液の予熱温度はそれほど重要ではなく、典型的には約120℃未満、例えば約100℃未満である。
【0094】
1つの局面では、反応溶液を減圧蒸留装置に供給する前に、シロキサニルモノマーよりも高い沸点を有する1種以上の不活性の液体が該反応溶液に添加され得る。この添加により、蒸留後に残る残渣(例えば、重合禁止剤、触媒、及び/又は高沸点の不純物を含む)の沈殿や析出を最小化することができる。そのような高沸点の液体は、例えば、タービン油、流動パラフィン、及びシリコーン油であり得る。
【0095】
6.モノマーの使用
1つの局面において、本発明は、開示された方法により精製された化合物に関する。精製されたモノマーは、その後の反応においてポリマー形成の出発物質として用いることができるということが理解される。すなわち、さらなる局面において、本発明はまた、少なくとも1種の開示された精製化合物残基を含むポリマーに関する。さらにまた、1つの局面において、本発明は、開示されたポリマーを含む成型品、眼用レンズ、又はコンタクトレンズに関する。
【0096】
少なくとも1種の重合禁止剤の少なくとも一部は、後の重合反応を促進するため、精製モノマーの重合の前に除去され得ることが理解される。
【0097】
精製アクリルモノマーは、例えば写真用組成物中に用いられることが知られている。例えば英国特許第1,231,222号及び米国特許第3,563,742号を参照のこと。そのような組成物は、膜形成性酸素透過性結合剤、重合性エチレン系不飽和モノマー、及び0.01〜5%光分解性ナフト-1-オール重合禁止剤を含む。そのような不飽和モノマーは、典型的には、重合禁止剤の存在下で蒸留されるものではなく、その代わりに該組成物の1成分である。好適な膜形成性酸素透過性結合剤は、ゼラチン、並びにポリビニルアセテートブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピリジン、及びポリビニルアルコール等のポリビニル樹脂を含む。一方、1つの局面において、結合剤は、開示された方法及び生成物中に実質的に又は完全に不在であり得ると考えられる。
【0098】
C.プラスチック成型体
プラスチック成型体は、開示された本発明の精製シロキサニルモノマーを単独で又は本明細書に記載される1種以上のコモノマー若しくは材料と重合することにより調製することができる。例えば、プラスチック成型体は、2つ以上のアミノ基を分子中に有する化合物、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物、2つ以上のメルカプト基を有する化合物、及び2つ以上のカルボキシル基を分子中に有する化合物からなる群より選択される1種以上の化合物と開示された精製モノマーを共重合することにより得ることができる。
【0099】
プラスチック成型体、特に眼用レンズを調製するためには、重合混合物中にさらなる材料を含ませてもよい。例えば、良好な機械物性と消毒液や洗浄液に対する良好な耐性を得るため、分子中に2個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する架橋剤を含ませることができる。共重合させるモノマー全量に対する架橋剤の比率は、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、さらに好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。
【0100】
得られるプラスチック成型体中における本発明のプラスチック成型体用材料の比率は、十分な酸素透過性と十分な親水性を両立させるという観点から、他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合しない場合には、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。1種以上の他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合する場合には、得られるプラスチック成型体中における本発明の材料及び他のシロキサニル基含有重合性材料の合計量の比率は、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。
【0101】
プラスチック成型体は、例えばこれらに限定されないが、紫外線吸収剤、色素、着色剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬及び栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤、これらの組み合わせ等のさらなる成分を含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態、重合形態、及び/又は共重合形態で含有され得る。
【0102】
プラスチック成型体調製のための(共)重合においては、重合をしやすくするために、過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が約40〜約120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で約1重量%までであり得る。
【0103】
本発明のプラスチック成型体用材料を(共)重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコール等のアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶剤;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン及びノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロへキサン及びエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;並びに石油系溶剤が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
本発明のプラスチック成型体用材料の重合方法及びプラスチックの成形方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、一旦、丸棒や板状に重合、成形しこれを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などを使用することができる。
【0105】
一例として、開示された精製シロキサニルモノマーをモールド重合法により重合して眼用レンズを製造する方法について、次に説明する。
【0106】
まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に材料組成物を充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってモールド間の空隙の形状に該組成物を賦型する。モールドは、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。眼用レンズを製造する場合には、2枚の対向するモールド部材間に空隙が形成されており、その空隙に材料組成物が充填される。空隙の形状や材料組成物の性状によっては、眼用レンズに一定の厚みを与えかつ空隙に充填した材料組成物の液モレを防止するためにガスケットを用いてもよい。空隙に材料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線又はこれらの組み合わせのような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱され、重合される。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、又は加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様では、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて約60℃〜約200℃の温度まで高めて行く条件が、眼用レンズの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0107】
本発明の材料から製造されるプラスチック成型体は、動的接触角(前進時、浸漬速度:約0.1mm/sec)が約130゜以下が好ましく、約120゜以下がより好ましく、約100゜以下がさらに好ましい。含水率は約3%〜約50%が好ましく、約5%〜約50%がより好ましく、約7%〜約50%がさらに好ましい。眼用レンズをコンタクトレンズとして使用した場合の装用者の観点から、酸素透過性は高いほど好ましい。酸素透過係数[×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)]は約50以上が好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上がさらに好ましい。引張弾性率は、約0.01〜約30MPaが好ましく、約0.1〜約7MPaがより好ましい。引張伸びは約50%以上が好ましく、約100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいとプラスチック成型体が破れにくいので、プラスチック成型体は引張伸びが大きいことが好ましい。これらの特性はWO03/022321に記載される試験方法を用いて測定することができる。
【0108】
該プラスチック成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬剤担体や、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも、コンタクトレンズ、眼内レンズ及び人工角膜などの眼用レンズに特に好適である。その中でも、眼用レンズ、とりわけコンタクトレンズに特に好適である。
【0109】
D.実験
下記実施例は、当業者に対し、特許請求の範囲に記載される化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法の作製方法と評価方法を十分に開示し説明するために記載されており、本発明の純粋な例示を与えることを意図するものであって、本願発明者らが自己の発明とみなしているものの範囲を限定することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度など)については正確を期するため多くの努力が払われたが、誤差やずれを考慮すべきである。他に断りがない限り、「部」は重量部を表し、温度は℃表記又は室温であり、圧は大気圧又はその近傍である。
【0110】
1.合成
a. 合成例1
1L三口丸底フラスコにメタアクリル酸(241.2 g)、アリルグリシジルエーテル(80.3 g)、メタクリル酸ナトリウム(22.7 g)および4−メトキシフェノール(1.14 g)を加え、メカニカルスターラーで撹拌した。フラスコをオイルバスに浸漬して100℃に昇温し、ガスクロマトグラフィー(GC)により反応を追跡しながら4時間加熱撹拌した。空気中で放冷後、トルエン(300 mL)を加え、1L分液ロートに移して0.5N水酸化ナトリウム水溶液(300 mL)で7回、次いで飽和食塩水(300 mL)で3回洗浄した。有機層を採取し、無水硫酸ナトリウムを加えて一晩乾燥した。濾過にて固形分を除去し、濾液を1Lナス型フラスコに回収して溶媒をエバポレートした。500 mLナス型フラスコに移し、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(0.23 g)を加えてさらに濃縮した(収量:226.74 g)。これにN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(0.23 g)を加えて減圧蒸留し、下記式(F1−1)及び(F1−2)で表される化合物の混合物を得た。
【0111】
【化13】

【0112】
b. 合成例2
200 mL三口丸底フラスコに滴下ロートと三方コックを接続した。三方コックは真空ポンプと窒素ラインに接続した。真空ポンプで器具内を減圧しながらヒートガンを用いて器具を加熱した後、窒素をフラスコに吹き込み常圧に戻した。この操作を3回繰り返し、器具内の水分を除去した。これにヘキサメチルシクロトリシロキサン(22.25g、0.1mol)とトルエン(25.7mL)を投入し、マグネチックスターラーで撹拌した。ヘキサメチルシクロトリシロキサンが完全に溶解した後、フラスコをウォーターバス(室温)に浸漬し、1.6mol/Lブチルリチウム ヘキサン溶液169ml(0.27mol)を34分間かけて滴下し、1時間室温で撹拌した。フラスコを氷・食塩浴で冷却し、無水テトラヒドロフラン(165mL)にヘキサメチルシクロトリシロキサン(66.75g、0.3mol)を溶解した溶液を60分かけて滴下した。冷却した状態で150分間、その後室温で45分間撹拌した。テトラヒドロフラン(100mL)にジメチルクロロシラン(39mL)を溶解した溶液を45分間かけて滴下し、1時間撹拌した。この溶液を約400mLの水で4回(計約1.6L)洗浄し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ひだ折り濾紙ろ過にて固形分を除去し、濾液をナス型フラスコに回収し、溶媒をエバポレートした。セミミクロ精留装置(相互理化学硝子製作所製、カタログ番号2004)を用いて精製し、下記式(F2)で表される化合物を得た(GC純度:99%)。
【0113】
【化14】

【0114】
c. 合成例3
メカニカルスターラー、撹拌翼、及びジムロート冷却管を取り付けた1L三口フラスコに、上記式(F1−1)及び式(F1−2)で表される化合物の混合物(103 g, 0.514 mol)、5%白金担持カーボン(和光純薬工業)及びトルエン(103 mL)を投入し、フラスコをオイルバスに浸漬して混合物を撹拌した。オイルバスを60℃に昇温し、上記式(F2)で表される化合物106 g (0.257 mol)を滴下した後、60分間加熱撹拌した。
【0115】
反応が完了した後、5%白金担持炭を除去するため、桐山ロートに濾紙を敷き、ロート半分の深さまでセライトを入れて減圧下で濾過した。濾過後、ロータリー真空エバポレータ(水浴温度:60℃)でトルエンを蒸発させた。濃縮後の残存液を広口ナス型フラスコに移し、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを残存液に対し2重量%の量で添加し、重合禁止剤を溶解した。スターラーバーをフラスコに入れ、フラスコをスタンドに固定した。混合物を撹拌下、液体窒素トラップを取り付けた真空ポンプで減圧した。ナス型フラスコをオイルバスに浸漬し、140℃に昇温した。140℃に達した時点より、混合物を撹拌しながら真空ポンプで1時間フラスコを吸引して上記式(F1−1)及び式(F1−2)で表される化合物の混合物の過剰分を除去し、下記式(F3−1)及び式(F3−2)で表される化合物の混合物を得た。得られた材料の透明度及び色を評価したところ、濁りは認められなかった(評価A)。
【0116】
【化15】

【0117】
d. 合成例4
300 mLのナス型フラスコに下記式(F4)
【0118】
【化16】

【0119】
で表される化合物(100 g, 0.3 mol)、メタクリル酸(103.4 g, 1.2 mol)、メタクリル酸ナトリウム(4.8 g, 0.05 mol)、及びp-メトキシフェノール(5.5 g, 0.04 mol)を投入し、空気中で100℃に加熱した。GCで式(F4)の化合物の面積%が0.1%以下まで減少するのを確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。ヘキサン(150 mL)を加え、0.5M 水酸化ナトリウム水溶液(250 mL)で3回、次いで2.6%食塩水(175 mL)で3回洗浄した。有機層に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥させ、濾過後に溶媒を蒸発させ、下記式(F5−1)及び式(F5−2)で表される化合物の混合物を得た。得られた材料の透明度及び色を評価したところ、濁りは認められなかった(評価A)。
【0120】
【化17】

【0121】
2.精製
a. 精製例1
上記合成例1で得られた式(F3−1)及び式(F3−2)で表される化合物の混合物(粗生成物)に5重量%の4-メトキシナフトールを加えて溶解した。UIC GmbH製のKDL5型薄膜蒸留装置(短経路蒸留装置)を用いて、下記条件1の下で粗生成物の予備蒸留を行ない、溶液を蒸留物と非蒸留物(残存溶液)に分離した。予備蒸留で得られた蒸留物を下記条件2の下で再度蒸留し(本蒸留)、生成物を蒸留物と非蒸留物(残存溶液)に分離した。
【0122】
i. 条件1
溶液を蒸留物と非蒸留物に分離した。蒸留温度:120℃。冷却管内部温度:40℃。内圧:完全真空(0.02 mbar以下、数値は装置に付属の真空計による表示に基づく)。ワイパー速度:350 rpm。供給速度:毎時170 g。
【0123】
ii. 条件2
本蒸留により材料を精製した。蒸留温度:140℃。冷却管内部温度:40℃。内圧:完全真空(0.02 mbar以下、数値は装置に付属の真空計による表示に基づく)。ワイパー速度:350 rpm。供給速度:毎時170 g。
【0124】
本蒸留の蒸留物(100重量部)にヘキサン(70重量部)を加えた。170重量部の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた洗浄及び液−液分離を3回繰り返した。次いで、170重量部の10重量%塩化ナトリウム水溶液を用いた洗浄及び液−液分離を2回繰り返した。無水硫酸ナトリウム(10重量部)で脱水した後、活性炭(5重量部)を加えて室温で1時間撹拌した。濾過後、溶媒を蒸発させ、式(F3−1)及び式(F3−2)で表される化合物の精製混合物を得た。結果を表1に示す。
【0125】
b. 精製例2及び3、並びに比較例1〜11
重合禁止剤として4-メトキシナフトールに代えて表1に示す化合物を用いたことを除き、例1と同様の操作を繰り返した。結果を表1に示す。
【0126】
c. 精製例4
上記合成例1で得られた式(F5−1)及び式(F5−2)で表される化合物の混合物(粗生成物)に5重量%の4-メトキシナフトールを加えて溶解した。UIC GmbH製のKDL5型薄膜蒸留装置(短経路蒸留装置)を用いて、下記条件1の下で粗生成物の予備蒸留を行ない、溶液を蒸留物と非蒸留物(残存溶液)に分離した。予備蒸留で得られた蒸留物を下記条件2の下で再度蒸留し(本蒸留)、生成物を蒸留物と非蒸留物(残存溶液)に分離した。
【0127】
i. 条件1
溶液を蒸留物と非蒸留物に分離した。蒸留温度:110℃。冷却管内部温度:40℃。内圧:完全真空(0.02 mbar以下、数値は装置に付属の真空計による表示に基づく)。ワイパー速度:350 rpm。供給速度:毎時350 g。
【0128】
ii. 条件2
本蒸留により材料を精製した。蒸留温度:130℃。冷却管内部温度:40℃。内圧:完全真空(0.02 mbar以下、数値は装置に付属の真空計による表示に基づく)。ワイパー速度:350 rpm。供給速度:毎時170 g。
【0129】
本蒸留の蒸留物(100重量部)にヘキサン(70重量部)を加えた。170重量部の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた洗浄及び液−液分離を3回繰り返した。次いで、170重量部の10重量%塩化ナトリウム水溶液を用いた洗浄及び液−液分離を2回繰り返した。無水硫酸ナトリウム(10重量部)で脱水した後、活性炭(5重量部)を加えて室温で1時間撹拌した。濾過後、溶媒を蒸発させ、式(F5−1)及び式(F5−2)で表される化合物の精製混合物を得た。結果を表2に示す。
【0130】
d. 精製例5及び6、並びに比較例12
重合禁止剤として4-メトキシナフトールに代えて表2に示す化合物を用いたことを除き、例1と同様の操作を繰り返した。結果を表2に示す。
【0131】
3.材料の評価
開示された材料と比較材料の透明度及び色を評価した。
【0132】
a. 透明度の評価法
評価すべき材料のサンプルをサンプルの20倍重量のアセトニトリル(例えば、1gのサンプルに対し約20gのアセトニトリルを使用することができる)に溶解し、該溶液の状態を目視により観察した。観察された状態の透明度又は混濁度(すなわち、透明か濁っているか)を評価し、下記の基準に従って評価した:
A.アセトニトリル溶液が透明
B.アセトニトリル溶液がごくわずかに混濁
C.アセトニトリル溶液がやや混濁
D.アセトニトリル溶液が中程度に混濁
E.アセトニトリル溶液が顕著に混濁
F.蒸留中に装置内で粘度が上昇又はゼリー状重合生成物が形成。蒸留を中断。
【0133】
評価した材料についての評価結果を表1及び2に示す。上記記載から、評価Aの材料が評価Bの材料よりも透明であり(すなわち濁りがより少ない)、評価Bの材料が評価Cの材料よりも透明であり、評価Cの材料が評価Dの材料よりも透明であり、評価Dの材料が評価Eの材料よりも透明であり、評価Eの材料が評価Fの材料よりも透明であることは明らかである。
【0134】
透明度又は混濁度のさらなる評価法も使用できるということも理解される。例えば、開示された材料と比較材料は、周知の光学的手法を用いて評価することができる。また、開示された材料と比較材料は、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等のクロマトグラフ法のような、周知の純度評価法を用いて評価できるということも理解される。理論に拘束されることを望むものではないが、一般に、より透明な(すなわち濁りがより少ない)材料はより純度が高い(例えば、蒸留中に重合又は分解から生じる不純物がより少ない)ものと考えられる。
【0135】
b. 色の評価法
評価すべき材料のサンプルをガラス試験管に入れ、着色の度合いを目視にて観察した。
【0136】
評価した材料についての評価結果を表1及び2に示す。色のさらなる評価法も使用できるということも理解される。例えば、開示された材料と比較材料は、周知の光学的手法(例えば、紫外/可視(UV/Vis)分光法)を用いて評価することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、一般に、着色のより少ない(すなわち無色又は淡色の)材料はより純度が高い(例えば、蒸留中に重合又は分解から生じる不純物がより少ない)ものと考えられる。
【0137】
【表1】

【0138】
【化18】

【0139】
【表2】

【0140】
本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、本発明に種々の修飾や変形を行なうことが可能であることは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明の他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と精神は各請求項によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含む少なくとも1種の重合禁止剤の存在下でシロキサニルモノマーを減圧蒸留する工程を含む、シロキサニルモノマーの精製方法。
【請求項2】
蒸留されたシロキサニルモノマーを回収する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の重合禁止剤がヒドロキシナフタレンを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシナフタレンがアルコキシナフトール、ジヒドロキシナフトール、又はジアルコキシナフトールである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシナフタレンが4-メトキシ-1-ナフトールである請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の重合禁止剤が、少なくとも1つのアルキル基を含むアルキルヒドロキノンを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル基が、炭素数1〜12の置換又は非置換アルキル基である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アルキル基が第3級アルキル基である請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記アルキルヒドロキノンが2-t-ブチルヒドロキノン又は2,6-ジ-t-ブチルヒドロキノンである請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記シロキサニルモノマーが、少なくとも1種の重合可能な炭素−炭素不飽和結合をアルキルアクリロイル部分中に含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記シロキサニルモノマーが下記式(A1−1)又は(A1−2)で表される請求項1記載の方法。
【化1】

(式中、
は水素、炭素数1〜18の置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルを表し;
Xは水素又は加水分解性基を表し;
Aはシロキサニル基を表す。)
【請求項12】
Aが下記式(B1)で表される基である請求項11記載の方法。
【化2】

(式中、
〜Q11は独立して水素、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル、又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリールを表し;
kは0〜200の整数を表し;
a、b、及びcは独立して0〜20の整数を表す。ただし、k、a、b、及びcは同時に0ではない。)
【請求項13】
Aが下記式(B2)で表される基である請求項11記載の方法。
【化3】

(式中、
21〜Q27は独立して水素、炭素数1〜18の置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルを表し;
nは0〜12の整数を表す。)
【請求項14】
前記蒸留が薄膜蒸留である請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記蒸留が少なくとも110℃の温度で行なわれる請求項1記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の重合禁止剤の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種の重合禁止剤の少なくとも一部を除去する工程は、アルカリ性水溶液での反応混合物の洗浄及び活性炭処理により行なわれる請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1記載の方法により精製された化合物。
【請求項19】
少なくとも1つの請求項18記載の化合物残基を含むポリマー。
【請求項20】
請求項19記載のポリマーを含む、成型品、眼用レンズ、又はコンタクトレンズ。

【公表番号】特表2010−510316(P2010−510316A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538411(P2009−538411)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/024325
【国際公開番号】WO2008/066758
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】