説明

シロキサンオリゴマーの製造方法及び保護被膜形成方法

【課題】耐擦傷性に優れた無機系の保護被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物に好適なシロキサンオリゴマーを提供する。
【解決手段】 一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類を加水分解縮合してシロキサンオリゴマーを製造する方法であって、水溶液が弱アルカリ性を示す塩をオルガノトリアルコキシシラン類に対して0.1〜200ppm添加するシロキサンオリゴマーの製造方法。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜10の有機基を表す。Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコート剤に好適なシロキサンオリゴマーの製造方法及び耐擦傷性に優れた透明な保護被膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルコキシシラン及びまたはその加水分解縮合物であるシロキサンオリゴマーやシロキサンポリマーを用いたハードコート剤が使用されるようになってきた。
【0003】
シロキサンポリマー等をアルコキシシランの縮重合により得る方法において、触媒として酸性または塩基性物質を用いることは広く知られている。
【0004】
塩基性物質を用いるアルコキシシランの加水分解縮合の方法としては、アルカリ土類金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法で得られる縮合物は高分子量で、シラノール基をほとんど含まないシルセスキオキサン構造である。低分子量の縮合物を得る方法としては、アルコキシシランをアンモニア水等のアルカリ性触媒でpHを調整して部分加水分解縮合した後、酸性触媒下で加水分解する方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法で得られる縮合物はアルカリ性触媒下では部分的にしか加水分解されておらず、アルコキシ基の量を少なくするためには酸性触媒下での加水分解が必要となる。このような方法で得られるシロキサンオリゴマーを用いて保護被膜を形成した場合、特に紫外線の照射により保護被膜を形成した場合において耐擦傷性が良好な保護被膜が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開昭54− 72300号公報
【特許文献2】特開平 3−54279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐擦傷性に優れた無機系の保護被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物に好適なシロキサンオリゴマーの製造方法を提供することにある。また、このシロキサンオリゴマーを用いた耐擦傷性に優れた透明な保護被膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水溶液が弱アルカリ性を示す塩を触媒として特定量用いて、アルコキシシラン類を加水分解縮合し得られたシロキサンオリゴマーと、活性エネルギー線感応性酸発生剤とを併用することにより、活性エネルギー線の照射で速やかに硬化し、且つ良好な耐擦傷性を有する透明な保護被膜が形成されることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類を加水分解縮合してシロキサンオリゴマーを製造する方法であって、水溶液が弱アルカリ性を示す塩をオルガノトリアルコキシシラン類に対して0.1〜200ppm添加するシロキサンオリゴマーの製造方法である。
【化1】

【0008】
(式中、Rは炭素数1〜10の有機基を表す。Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表す。)
さらに、本発明は前記製造方法により得られるシロキサンオリゴマー(A)、及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線照射により前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる保護被膜形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐擦傷性に優れた無機系の保護被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物に好適なシロキサンオリゴマーが得られる。また、このシロキサンオリゴマー及び活性エネルギー線感応性酸発生剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、その基材の上に耐擦傷性に優れた透明な保護被膜が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の説明において、活性エネルギー線感応性酸発生剤(B)を「酸発生剤(B)」という。
【0011】
<一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類>
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素数1〜10の有機基を表す。Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表す。)
一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、p−ビニルフェニレントリメトキシシラン及びp−ビニルフェニレントリエトキシシランが挙げられる。
【0013】
これらの中で、オルガノトリアルコキシシラン類の加水分解・縮合反応が速い点で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0014】
オルガノトリアルコキシシラン類は1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0015】
また、本発明では発明の効果を妨げない範囲内で一般式(2)で表されるテトラアルコキシシラン類又はアルキルシリケート類をオルガノトリアルコキシシラン類と併用させることもできる。
【化2】

【0016】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表す。nは1〜20のいずれかの整数を表す。)
【0017】
一般式(2)で表されるテトラアルコキシシラン又はアルキルシリケート類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、イソブチルシリケート及びn−ブチルシリケートが挙げられる。
【0018】
<水溶液が弱アルカリ性を示す塩>
本発明における水溶液が弱アルカリ性を示す塩は、5質量%水溶液のpHが7.5〜10.5になる塩である。水溶液が弱アルカリ性を示すことにより、加水分解縮合反応の極めて微妙な制御が可能となる。具体的な塩としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等の塩が挙げられる。
【0019】
塩は、アルコキシシラン類に対して0.1〜200ppm添加する。塩の添加量が0.1ppm未満では保護被膜の耐擦傷性を向上させる効果が得られにくい。また、塩の添加量が200ppmを超えると被膜の外観や基材への密着性が劣る傾向にある。さらに、酸発生剤による保護被膜の形成の妨げにもなる。本発明においては、保護被膜の物性の観点から塩の添加量はアルコキシシラン類に対して1〜100ppmであることがより好ましい。
【0020】
<シロキサンオリゴマー(A)>
本発明におけるシロキサンオリゴマー(A)は、一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類を加水分解縮合してシロキサンオリゴマーとするに際し、触媒として、水溶液が弱アルカリ性を示す塩をオルガノトリアルコキシシラン類に対して0.1〜200ppm用いて反応させて得られたものである。
【0021】
シロキサンオリゴマー(A)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で500〜50,000が好ましい。シロキサンオリゴマー(A)の重量平均分子量を500以上とすることで活性エネルギー線硬化性組成物の成膜性を向上することができると共に、得られる保護被膜の耐擦傷性を向上することができる。また、シロキサンオリゴマー(A)の質量平均分子量を50,000以下とすることで得られる保護被膜の均一性と透明性を高めることができる。
【0022】
シロキサンオリゴマー(A)は1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0023】
<酸発生剤(B)>
本発明で使用する酸発生剤(B)は、可視光線、紫外線、熱線、電子線等の活性エネルギー線の照射により酸を発生し、シロキサンオリゴマー(A)に重縮合反応を起こさせる化合物である。これらの中で、可視光線、紫外線照射により酸を発生する光感応性酸発生剤、及び熱線により酸を発生する熱感応性酸発生剤が好ましい。更に、活性が高いとプラスチック材料に熱劣化を与えにくいことから、光感応性酸発生剤がより好ましい。
【0024】
光感応性酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩化合物等が挙げられる。
【0025】
光感応性酸発生剤の具体例としては、みどり化学(株)製のMPI−103、MPI−105及びMPI−109、三新化学工業(株)製のサンエイドSI−60、サンエイドSI−80及びサンエイドSI−100、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア250、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−15及びSP−170、米国ユニオンカーバイド社製のサイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6992及びサイラキュアUVI−6950、ダイセル・サイテック(株)製のUvacure1590並びに日本曹達(株)製のCI−2734、CI−2855、CI−2823及びCI−2758等が挙げられる。
【0026】
酸発生剤(B)の配合量は特に限定されないが、シロキサンオリゴマー(A)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。酸発生剤(B)の配合量が0.01質量部以上で、活性エネルギー線硬化性組成物が光照射によって短時間に硬化し、良好な保護被膜が得られる傾向にある。また、酸発生剤(B)の配合量が10質量部以下で、保護被膜の表面硬度や耐擦傷性が良好となる傾向にある。本発明においては、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性及び保護被膜の物性の点で、酸発生剤(B)の配合量はシロキサンオリゴマー(A)100質量部に対して0.05〜5質量部がより好ましい。
【0027】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物はシロキサンオリゴマー(A)及び酸発生剤(B)を含有するが、固形分濃度調整、分散安定性向上、塗付性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒を含有することができる。
【0028】
有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類及び芳香族化合物類が挙げられる。
【0029】
有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシエチルアルコール、2−(メトキシメトキシ)エチルアルコール、2−ブトキシエチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、1−エトキシ−2−プロピルアルコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0030】
有機溶剤の配合量は、シロキサンオリゴマー(A)100質量部に対して0〜5,000質量部が好ましく、0〜1,000質量部がより好ましい。有機溶剤の配合量が1,000質量部以下で、固形分が低くなりすぎて塗膜が薄くなるという問題が生じ難くなり、耐擦傷性が良好な保護被膜が得られる傾向にある。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて、高分子化合物、コロイド状シリカ、コロイド状金属、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0032】
<基材>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は塗装材やインキ材等として基材の表面に塗付された後に、活性エネルギー線の照射により硬化される。
【0033】
本発明に使用される基材としては、例えば、金属板、金属缶等の金属材料、紙、木質材等の天然材料、セラミック等の無機質材、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック成形物、PET、ポリオレフィン等のフィルム及び電着塗装板、ラミネート板等の複合材料が挙げられる。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を基材の表面に塗付する方法としては、例えば、スプレー法、ロールコーター法、グラビアコーター法、フレキソ法、スクリーン法、スピンコーター法、フローコーター法、静電塗装法等の公知の方法が挙げられる。
【0035】
<保護被膜>
本発明においては、基材の表面に塗付された活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより保護被膜が形成される。
【0036】
本発明に使用される活性エネルギー線としては、例えば、真空紫外線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0037】
活性エネルギー線の具体例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマーレーザー及び太陽光を光源とする光が挙げられる。
【0038】
これらの中で、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯及びメタルハライドランプを光源とした光が好ましい。
【0039】
活性エネルギー線は1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0040】
本発明においては、活性エネルギー線硬化性組成物を活性エネルギー線照射により硬化する際に、必要に応じて加熱硬化と併用することができる。
【0041】
加熱硬化を併用する際の加熱時期としては、必要に応じて、活性エネルギー線照射前、活性エネルギー線照射と同時又は活性エネルギー線照射後のいずれかの時期から選ばれる少なくとも1時期を選択することができる。 加熱方法としては、例えば、赤外線ヒーターによる照射法及び熱風による循環加熱法が挙げられる。
【0042】
加熱温度としては、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物の温度が50〜100℃となる温度が好ましい。また、加熱時間としては、活性エネルギー線照射前に加熱する場合は1〜20分間、活性エネルギー線照射と同時に加熱する場合は0.2〜10分間、及び活性エネルギー線照射後に加熱する場合は1〜60分間が好ましい。
【0043】
本発明においては、保護被膜の厚みは特に限定されないが、通常、0.5〜100μm程度である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により説明する。以下の記載において「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0045】
[実施例1]
(1)シロキサンオリゴマー(A1)の合成
撹拌機付き反応容器中に、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、分子量136.2)36.0g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、分子量198.3)4.0g及びイソプロピルアルコール20.0gを加え、攪拌して均一な溶液とした。次いで、反応容器中に1%酢酸ナトリウム水溶液0.3gと水29.7gを加え、攪拌しながら80℃で3時間加熱することにより加水分解・縮合を行った。即ち、オルガノトリアルコキシシラン類に対して酢酸ナトリウムを75ppm添加した。更に、反応容器中にイソプロピルアルコールを追加して全体を100gとし、固形分濃度20%のシロキサンオリゴマー(A1)の溶液を得た。シロキサンオリゴマー(A1)のGPCによる重量平均分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は約700であった。
【0046】
尚、本発明において、固形分濃度とは、完全に加水分解・縮合した場合に得られるシロキサンオリゴマーを溶液全体に対して算出した質量分率を意味する。
【0047】
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の調製
撹拌機付き容器中に、上記シロキサンオリゴマー(A1)の溶液500部(固形分として100部)に、酸発生剤(B)として(4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株)製、商品名:MPI−105)の50%γ−ブチロラクトン溶液4部(固形分として2部)、溶媒としてイソプロピルアルコール100部、γ−ブチロラクトン150部及びブチルセロソルブ100部、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.1部を添加し、混合して活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
【0048】
(3)活性エネルギー線硬化性組成物の基材の表面への塗付膜の形成
基材として、長さ10cm、幅10cm及び厚み3mmのアクリル板(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトEX)を使用し、この表面に、乾燥後の厚みが3〜4μmになるように上記(2)で調整した活性エネルギー線硬化性組成物(1)を適量滴下した後、バーコーティング法(バーコーターNo.26使用)にて塗付し、室温で約60分間自然乾燥し、基材の表面に活性エネルギー線硬化性組成物(1)の塗付膜を形成させた。
【0049】
(4)保護被膜の形成
上記(3)で得られた、表面に活性エネルギー線硬化性組成物(1)の塗付膜を形成させた基材を、コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ((株)オーク製作所製紫外線照射装置、商品名:ハンディーUV−1200、QRU−2161型)を用いて、積算光量3,000mJ/cmとなるように紫外線を照射した。次いで、熱風乾燥機にて90℃で20分間加熱し、アクリル板の表面に保護被膜を形成し得た。
【0050】
尚、積算光量は紫外線光量計((株)オーク製作所製、商品名:UV−351型)を用いて測定した。
【0051】
(5)保護被膜の評価
得られた保護被膜を以下の方法により評価した。得られた保護被膜は外観、耐擦傷性いずれも良好であった。評価結果を表1に示す。
【0052】
(5−1)外観
表面に保護被膜を形成させたアクリル板の積層体の透明性、クラック及び白化の有無を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:透明で、クラック及び白化も認められなかった。
×:不透明な部分が認められた、又はクラック若しくは白化が認められた。
【0053】
(5−2)耐擦傷性
表面に保護被膜を形成させたアクリル板の積層体の保護被膜を有する表面を#0000のスチールウールで9.8×10Paの圧力を加えて10往復擦り、1×1cmの範囲に生じたキズの本数により以下の基準で評価した。
A :キズ0本(光沢面あり)
B :キズ1〜9本(光沢面あり)
C+:キズ10〜49本(光沢面あり)
C−:キズ50〜99本(光沢面あり)
D :キズ100本以上(光沢面あり)
E :光沢面が消失
【0054】
[比較例1]
1%酢酸ナトリウム水溶液0.3gを添加しない以外は実施例1と同様にしてシロキサンオリゴマー(A’1)を合成した。シロキサンオリゴマー(A’1)のGPCによる重量平均分子量を測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は約900であった。さらに実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物の調製、活性エネルギー線硬化性組成物の基材の表面への塗付膜の形成、保護被膜の形成及び保護被膜の評価を実施した。評価結果を表1に示した。
【表1】

【0055】
A1:実施例1で得た固形分濃度20%のシロキサンオリゴマー(A1)の溶液
A’1:比較例1で得た固形分濃度20%のシロキサンオリゴマー(A’1)の溶液
B1:(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートの50%γ−ブチロラクトン溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるオルガノトリアルコキシシラン類を加水分解縮合してシロキサンオリゴマーを製造する方法であって、水溶液が弱アルカリ性を示す塩をオルガノトリアルコキシシラン類に対して0.1〜200ppm添加するシロキサンオリゴマーの製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10の有機基を表す。Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により得られるシロキサンオリゴマー(A)、及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線照射により前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる保護被膜形成方法。

【公開番号】特開2009−263576(P2009−263576A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117557(P2008−117557)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】