説明

シンクロナイザリング

【課題】アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなくシンクロナイザリングのラジアルガタを規制すること。
【解決手段】ハブ2に対向して配設されるシンクロナイザリング1において、シンクロナイザリングの連結爪部11の内周壁部111と前記ハブ2のボス部20の外周壁201とが当接するように構成され、インロー構造を構成しているシンクロナイザリング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブに対向して配設されるシンクロナイザリングにおいて、シンクロナイザリングの内径部と前記ハブの外径部とが当接するように構成され、インロー構造を構成して、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するシンクロナイザリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシンクロナイザリングにおいては、図3および図4に示されるようにシンクロナイザリングSの外径側の複数の突出部Pの外周壁OをハブHの外周部OPの内周壁Iに当接させるインロー構造により、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のシンクロナイザリングの構造において、ラジアルガタを詰める場合、現状のシンクロナイザリングSの外径側の複数の突出部Pの外周壁Oについては鍛造粗材面であるので、新たに切削加工すなわち旋盤加工を実施し、交差レンジを小さくする必要があるため、結果として、コストアップ要因となるという問題があった。
【0004】
さらに、図5に示されるハブインデックスタイプのシンクロナイザリングSについては、円周3か所に突起部Tがあるため、切削加工必要部に対して旋盤加工が出来ないので、その他の手段および方法によって加工を加える必要があるため、さらにコストアップ要因となるという問題があった。
【0005】
そこで本発明者は、ハブに対向して配設されるシンクロナイザリングにおいて、シンクロナイザリングの内径部と前記ハブの外周壁とを当接させるという本発明の技術的思想に着眼してインロー構造を構成し、さらに研究開発を重ねた結果、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなくシンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという目的を達成する本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1に記載の第1発明)のシンクロナイザリングは、
ハブに対向して配設されるシンクロナイザリングにおいて、
シンクロナイザリングの内径部と前記ハブの中心側の外周壁とが当接するように構成され、インロー構造を構成している
ものである。
【0007】
本発明(請求項2に記載の第2発明)のシンクロナイザリングは、
前記第1発明において、
前記ハブの中心側の外周壁が、前記ハブのボス部の外周壁によって構成されている
ものである。
【0008】
本発明(請求項3に記載の第3発明)のシンクロナイザリングは、
前記第2発明において、
前記シンクロナイザリングの内径部が、前記シンクロナイザリングの連結爪部の内周壁部によって構成されている
ものである。
【0009】
本発明(請求項4に記載の第4発明)のシンクロナイザリングは、
前記第2発明において、
前記ハブは、環状の凹部が形成され、
中心部のボス部が軸方向に延在している
ものである。
【0010】
本発明(請求項5に記載の第5発明)のシンクロナイザリングは、
前記第3発明において、
前記シンクロナイザリングの連結爪部が、前記ハブの環状の凹部に介挿され半径方向に延在している
ものである。
【0011】
本発明(請求項6に記載の第6発明)のシンクロナイザリングは、
前記第4発明において、
前記シンクロナイザリングの連結爪部が、前記ハブの環状の凹部に介挿され半径方向に延在している
ものである。
【発明の効果】
【0012】
上記構成より成る第1発明のシンクロナイザリングは、ハブに対向して配設されるシンクロナイザリングの内径部と前記ハブの中心側の外周壁とが当接して、インロー構造を構成しているので、アンバランス力を発生させること無く、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0013】
上記構成より成る第2発明のシンクロナイザリングは、前記第1発明において、前記ハブの中心側の外周壁を構成する前記ハブのボス部の外周壁とシンクロナイザリングの内径部とが当接するので、アンバランス力を発生させること無く、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0014】
上記構成より成る第3発明のシンクロナイザリングは、前記第2発明において、前記シンクロナイザリングの内径部を構成する前記シンクロナイザリングの連結爪部の内周壁部と前記ハブのボス部の外周壁とが当接するので、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなく、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0015】
上記構成より成る第4発明のシンクロナイザリングは、前記第2発明において、前記環状の凹部が形成された前記ハブの軸方向に延在している中心部の前記ボス部の外周壁とシンクロナイザリングの内径部とが当接するので、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなく、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0016】
上記構成より成る第5発明のシンクロナイザリングは、前記第3発明において、前記シンクロナイザリングの連結爪部の内周壁部と前記ハブのボス部の外周壁とが当接するので、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなくシンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0017】
上記構成より成る第6発明のシンクロナイザリングは、前記第4発明において、前記ハブの環状の凹部に介挿され半径方向に延在している前記シンクロナイザリングの連結爪部の内周壁部と前記ハブのボス部の外周壁とが当接するので、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなく、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の最良の実施の形態につき実施例に基づき、図面を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
本第1実施例のシンクロナイザリングは、図1および図2に示されるようにハブ2に対向して配設されるシンクロナイザリング1において、シンクロナイザリングの連結爪部11の内周壁部111と前記ハブ2のボス部20の外周壁201とが当接するように構成され、インロー構造を構成しているものである。
【0020】
前記ハブ2は、同軸的に環状の凹部21が形成され、中心部において軸方向に延在している前記ボス部20と、外周側において軸方向に延在しており、外周壁にスプラインが形成されている外周部22と、前記ボス部20と前記外周部22とを連結して半径方向に延在する連結部23とから成る。
【0021】
前記シンクロナイザリング1は、軸方向において前記ハブ2に対向して同軸的に配設された略Z字状の横断面形状の環状部材10によって構成され、半径方向外方に放射状に突出した複数の外周突出部12と、前記ハブの環状の凹部に介挿され放射状に半径方向に延在している複数の連結爪部11と、外周突出部12と連結爪部11とを連結して半径方向に延在する円周部13とから成る。
【0022】
前記シンクロナイザリング1は、その複数の連結爪部11が、前記ハブ2の環状の凹部21に介挿され、半径方向に延在している。
【0023】
前記シンクロナイザリング1の内径部が、従来より加工されていた前記シンクロナイザリング1の前記連結爪部11の前記内周壁部111によって構成され、該シンクロナイザリング1の前記連結爪部が、前記ハブ2に形成された前記環状の凹部に介挿され半径方向に延在している。
【0024】
前記ハブ2に前記環状の凹部が同軸的に形成されることにより、軸方向に延在している前記中心部のボス部20の前記外周壁201が、前記ハブ2に形成された前記環状の凹部に介挿され半径方向に延在している前記シンクロナイザリング1の前記連結爪部11の前記内周壁部111に当接するように構成され、インロー構造を構成して、前記シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するように構成されている。
【0025】
上記構成より成る本第1実施例のシンクロナイザリングは、前記ハブ2に前記環状の凹部が形成されることにより、インロー構造を構成する軸方向に延在している前記中心部のボス部20の前記外周壁201が、前記ハブ2に形成された前記環状の凹部に介挿され半径方向に延在している前記シンクロナイザリング1の前記連結爪部11の前記内周壁部111に当接することにより、前記シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するものである。
【0026】
上記作用を奏する本第1実施例のシンクロナイザリングは、前記シンクロナイザリング1の当接部としての内径部を構成する前記シンクロナイザリング1の連結爪部11の内周壁部111と前記ハブ2のボス部20の外周壁201とが当接するので、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制するという効果を奏する。
【0027】
前記ハブ2に形成された前記環状の凹部に介挿され半径方向に延在している前記シンクロナイザリング1の中心側に位置する前記連結爪部11の前記内周壁部111が、前記ハブ2の中心側に位置する前記ボス部20の前記外周壁201に当接するものであるため、アンバランス力を発生させることが無くシンクロナイザリングのラジアルガタを規制することを実現するものである。
【0028】
前記シンクロナイザリング1のラジアルガタを規制するための当接部としての前記シンクロナイザリング1の内径部が、従来より加工されていた前記シンクロナイザリング1の前記連結爪部11の前記内周壁部111によって構成されているので、新たな切削加工その他の加工が不要であるため、コストアップを回避することが出来る。
【0029】
すなわち本第1実施例においては、前記シンクロナイザリング1の連結爪部11の内径部である前記内周壁部111を、前記ハブ2の前記ボス部20の外径部としての前記外周壁201とを当接部(図1および図2中斜線部で示すインロー部)とするインロー構造によって当接させることにより、ラジアルガタを規制するものである。
【0030】
前記シンクロナイザリング1と前記ハブ2との相対的な本ラジアルガタを詰める必要がある場合においても、現状のシンクロナイザリング1の連結爪11の内径部111は、他の理由により切削加工が実施されているため、新たな加工が不要のため、コストアップ要因とはならないという利点を有する。
【0031】
上述の従来の構造と本第1実施例の新構造では、従来構造に切削加工を加えることにより、新構造と同じラジアルガタを確保することは可能であり、同等の機能を実現し得るものである。しかし、本第1実施例の新構造は、上述の従来構造に比べ、切削加工工程を新たに加える必要はないので、コスト的に優位性を有している。
【0032】
上述の実施例は、説明のために例示したもので、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0033】
また上述の第1実施例においては、一例として前記シンクロナイザリング1の前記連結爪部11の前記内周壁部111と、前記ハブ2の中心側に位置する前記ボス部20の前記外周壁201とが当接する当接部(インロー部)とした例について説明したが、本発明としては図示したものに限定されるものではなく、必要に応じて前記シンクロナイザリング1および前記ハブ2の中心側に位置する部位を当接部(インロー部)とするその他の態様に適用することが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
ハブ2に対向して配設されるシンクロナイザリング1において、シンクロナイザリングの連結爪部11の内周壁部111と前記ハブ2のボス部20の外周壁201とが当接するように構成され、インロー構造を構成し、アンバランス力を発生させることが無いとともに、新たな切削加工を加えることなく、シンクロナイザリングのラジアルガタを規制する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施例のシンクロナイザリングを示す側面図である。
【図2】本第1実施例のシンクロナイザリングの図1中A−A線に沿う横断面図である。
【図3】従来のシンクロナイザリングを示す側面図である。
【図4】従来のシンクロナイザリングの図3中B−B線に沿う横断面図である。
【図5】従来のハブインデックスタイプのシンクロナイザリングを示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 シンクロナイザリング
2 ハブ
11 連結爪部
111 内周壁部
20 ボス部
201 外周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブに対向して配設されるシンクロナイザリングにおいて、
シンクロナイザリングの内径部と前記ハブの中心側の外周壁とが当接するように構成され、インロー構造を構成している
ことを特徴とするシンクロナイザリング。
【請求項2】
請求項1において、
前記ハブの中心側の外周壁が、前記ハブのボス部の外周壁によって構成されている
ことを特徴とするシンクロナイザリング。
【請求項3】
請求項2において、
前記シンクロナイザリングの内径部が、前記シンクロナイザリングの連結爪部の内周壁部によって構成されている
ことを特徴とするシンクロナイザリング。
【請求項4】
請求項3において、
前記ハブは、環状の凹部が形成され、
中心部のボス部が軸方向に延在している
ことを特徴とするシンクロナイザリング。
【請求項5】
請求項3において、
前記シンクロナイザリングの連結爪部が、前記ハブの環状の凹部に介挿され半径方向に延在している
ことを特徴とするシンクロナイザリング。
【請求項6】
請求項4において、
前記シンクロナイザリングの連結爪部が、前記ハブの環状の凹部に介挿され半径方向に延在している
ことを特徴とするシンクロナイザリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−239952(P2007−239952A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66338(P2006−66338)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】