説明

シンコナ基材ニ官能性有機触媒及びそれを用いたキラル性ヘミエステルの製造方法

本発明は、シンコナ基材ニ官能性有機触媒及びそれを用いたキラル性ヘミエステルの製造方法に関し、さらに詳しくは、スルホンアミド官能基を含むニ官能性シンコナアルカロイド触媒を用いてプロキラルまたはメソ−環状酸無水物から非対称化反応を通してキラル性ヘミエステルを製造する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンコナ基材ニ官能性有機触媒及びそれを用いたキラル性ヘミエステルの製造方法に関し、さらに詳しくは、スルホンアミド官能基を含むニ官能性シンコナアルカロイド触媒を用いてプロキラルまたはメソ−環状酸無水物から非対称化反応を通してキラル性ヘミエステルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、純粋な鏡像異性体化合物に対する重要性が浮上してきている。特に、製薬産業で純粋な鏡像異性体化合物はラセミ化合物に比べてしばしば低い副作用と高い力価を示していることから、活用度が非常に高い。純粋な鏡像異性体を得るための通常的な有機合成方法は、しばしば天然物から得られるキラル補助剤を使用するか、またはラセミ化合物の分割がある。キラル補助剤は触媒量ではない当量で使用しなければならなく、自然から発見される化合物であるので構造的制限がある。分割剤を用いるラセミ体の分割方法は所望しない鏡像異性体は捨てられることを意味し、収率が低く浪費的な短所がある。
【0003】
Odaら(J.Oda, J. Chem. Soc. Perkin Trans I.1997, 1053)は、シンコナアルカロイドである、(+)−シンコニンを触媒量(10mol%)用いて環状酸無水物の開環反応を遂行してキラル性ヘミエステルを製造する方法を報告した。しかし、上記方法は4日間の長時間の反応時間と鏡像選択性(enantioselectivity)が低い(最大69%ee)問題がある。
【0004】
Bolmら(C. Bolm, J. Org. Chem. 2000, 65, 6954)は、キニジンを10mol%環状酸無水物の開環反応を遂行して最大91%eeまで鏡像選択性を有するキラル性ヘミエステルを製造する方法を記載している。この時、高価のペンピジンを1当量使用しなければならなく、−55℃で最大6日間反応させなければならない短所がある。
【0005】
一方、Dengらは韓国特許登録第10−0769381号で有機触媒を用いたキラル性ヘミエステル製造する効率的な方法として、変形されたビス−シンコナアルカロイド,例えば、(DHQD)2AQNを触媒として用いる方法を報告した(Y. Chen, S. -K. Tian, L. Deng, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 9542-9543)。上記の触媒を用いる場合、高い鏡像選択性により反応を成功的に終結させることができるが、長すぎる長時間の反応時間(最大140時間)が必要とされ、触媒の使用量が相対的に多いだけでなく、高い鏡像選択性を得るためには低温(−20℃〜-40℃)を保持しなればならないため、産業的に応用するには問題がある。更には触媒の大量合成が非常に難しい問題点も報告されていた(Y. Ishii et al., Organic Process Research & Development, 2007, 11, 609-615)。
【0006】
既存の合成方法では、高い鏡像選択性を有するキラル性ヘミエステルを得るためには低温で長時間反応させる短所があり、より効率的な触媒及び製造方法の開発が求められている実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録第10−0769381号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Oda, J. Chem. Soc. Perkin Trans I.1997,1053
【非特許文献2】C. Bolm, J. Org. Chem. 2000, 65, 6954
【非特許文献3】Y. Chen, S. -K. Tian, L. Deng, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 9542-9543
【非特許文献4】Y. Ishii et al., Organic Process Research & Development, 2007, 11, 609-615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記の技術を分析した結果、高い鏡像選択性 を得るために低い温度と長時間の反応時間が必要な主要原因として、シンコナアルカロイド触媒構造内のキラル三級アミン、例えばキヌクリジンの窒素原子が求核体を活性化させる単一作用触媒の役割を果たすものと推定した。
【0010】
そこで、本発明者らは、シンコナアルカロイドの構造を変形させて出発物質であるメソ−環状酸無水物、即ち、求電子体と求核体を同時に活性化することができるニ官能性触媒を考案、合成しており、酸素を含む非プロトン性溶媒中で上記の誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド有機触媒の存在下でプロキラルまたはメソ−環状酸無水物とアルコールを求核体として反応させる場合、室温で1〜10時間内に高い鏡像選択性を有するキラル性ヘミエステルを製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
従って、本発明の目的は、誘導体化されたニ官能性シンコナ−アルカロイド触媒を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含むアミンをスルホニル誘導体と反応させる工程を含み、上記誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒を合成する方法を提供ことにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を有機溶媒内で上記誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒の存在下で、求核体と反応させることによってキラル性ヘミエステルを效果的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、本発明は、下記式(I)で示される化合物を提供する:
[式(I)]
【化1】

[式(I)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表す。]
また、本発明は上記式(I)の化合物の存在下で、プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を求核体と反応させる工程を含むキラル性ヘミエステルの製造方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、下記式(3)で示されるアミンを、下記式(4)で示されるスルホニル誘導体と反応させる工程を含む上記式(I)の化合物の製造方法を提供する:
[式(3)]
【化2】

[式(4)]
【化3】

[式(3)及び(4)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表し、
Zはハロゲン原子を表す。]
【発明の効果】
【0016】
本発明の誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒は、天然物から容易に得られるキニーネ、キニジン、ヒドロキニンまたはヒドロキニジンから合成でき、金属触媒とは違って毒性が低く、化学的に安定しているので、産業的利用価値が高い。また、大気中で反応を遂行でき、高温や低温ではなく室温でも高い鏡像選択性を有し、反応後、容易に触媒を回収して再使用することができる。
【0017】
本発明の製造方法によれば、有機溶媒中で上記スルホンアミド残基により誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒の存在下で、−20℃〜室温でアルコールによるプロキラルまたはメソ−環状酸無水物の開環反応を遂行して、様々な構造のキラル性ヘミエステルを短時間内で、非常に高い 鏡像選択性で合成できる。
【0018】
当該技術分野の熟練者は、それ以上の実験無しに、本願に記載された特定の態様と同等なほとんどの態様を認識するか、または確認することができる。このような同等物は下記請求範囲に含まれたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のニ官能性シンコナアルカロイド触媒Q−BTBSA、HQ−BTBSA、QD−BTBSA、Q−PTSA、Q−OTSA、Q−MTSA、Q−1−NSA及びQ−2−NSAの構造式を示す図である。
【図2】実施例1に記載された本発明の方法で合成されたQ−BTBSA触媒に対するH−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1に記載された本発明の方法で合成されたQ−BTBSA触媒に対する13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1に記載された本発明の方法で合成されたQ−BTBSA触媒に対する19F−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、下記式(I)の化合物に関する:
[式(I)]
【化4】

[式(I)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表す。]
【0021】
上記式(I)の化合物は下記式(1)で示される化合物または下記式(2)で示される化合物であることが好ましい。
[式(1)]
【化5】

[式(2)]
【化6】

[式(1)及び(2)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表し、
Yは炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または4〜11員環のアリールを表す。]
【0022】
また、上記式(1)または式(2)の化合物は下記式(1a)または式(2a)で示される化合物であることが好ましい。
[式(1a)]
【化7】

[式(2a)]
【化8】

[式(1a)及び(2a)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
好ましくは、Arはハロゲン、アミノ、6〜10員環のアリール、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数2〜6のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換された6〜10員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、または炭素数1〜6のアルコキシを表していても良い。
より好ましくは、Arはハロゲン、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜4のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数2〜4のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜4のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換されたフェニル基またはナフチル基を表していても良い。
また、上記Rは水素または炭素数1〜4のアルコキシであることが好ましい。
さらに、上記式(1a)の化合物は、
が水素を表し、
が炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルを表していても良い。
上記式(2a)の化合物は、
が水素を表し、
が炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルを表していても良い。
【0023】
また、上記式(1)または式(2)の化合物はそれぞれ下記式(1b)または式(2b)で示される化合物であることが好ましい。
[式(1b)]
【化9】

[式(2b)]
【化10】

[式(1b)及び(2b)において、
Rはエチルまたは−CH=CHを表し、
Arは4〜11員環のアリール基を表す。]
上記式(1b)及び(2b)において、Arは3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パラ−トルエン、オルト−トルエン、メタ−トルエン、パラ−ビニルベンゼン、1−ナフタレン、2−ナフタレン及びフェニルよりなる群から選択されていても良い。
【0024】
本願で使用される用語"アルキル"とは直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換されたシクロアルキル基及びシクロアルキル置換されたアルキル基を含む飽和された脂肪族基のラジカルを意味する。好ましい具体例において、本願で他の記載がない限り、直鎖または分枝鎖アルキルはその主鎖に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C−C30、分枝鎖の場合C−C30)、より好ましくは、20個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルはこれらの環状構造に3〜10個の炭素原子、より好ましくは、5、6または7個の炭素を有する。
【0025】
さらに、明細書と特許請求の範囲の全般にわたって使われた用語"アルキル"とは、"非置換されたアルキル"及び"置換されたアルキル"の両者を含むように意図され、後者は炭化水素主鎖の一つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有したアルキル残基を意味する。このような置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル、アルコキシ、及びエステル、ホスホリル、アミン、アミド、イミン、チオール、チオエーテル、チオエステル、スルホニル、アミノ,ニトロまたは有機金属残基が挙げられる。炭化水素鎖で置換された残基は適した場合それ自体が置換されても良いものとして当業者は理解しなければならない。例えば、置換されたアルキルの置換基としては、置換された形態及び非置換された形態のアミン、イミン、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィンを含む)、スルホニル(スルフェート及びスルホネートを含む)、及びシリル基だけでなく、エーテル、チオエーテル、セレノエーテル、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、−CF、−CNなどであっても良い。典型的な置換されたアルキルは下記に記載される。シクロアルキルはアルキル、アルケニル、アルコキシ、チオアルキル、アミノアルキル、カルボニル置換されたアルキル、CF、CN等でさらに置換されていても良い。
【0026】
用語"アルケニル"及び"アルキニル"とは上記記載されたアルキルと長さ及び可能な置換面で類似な不飽和脂肪族基を意味するが、それぞれ一つ以上の二重または三重炭素−炭素結合を含有する。
【0027】
本願で使用されるように、用語"アミノ"とは−NHを意味し、用語"ニトロ"とは−NOを意味し、用語"ハロゲン"とはF、−Cl、−Brまたは−Iを意味し、用語"チオール"とは−SHを意味し、用語"ヒドロキシル"とは−OHを意味し、用語"スルホニル"とは−SO−を意味し、用語"有機金属"とは金属原子(例えば、水銀、亜鉛、鉛、マグネシウムまたはリチウム)またはジフェニルメチルシリル基のような炭素原子に直接結合されたメタロイド(例えば、ケイ素、ヒ素またはセレニウム)を意味する。
【0028】
本願で使用された用語"アルコキシ"とは酸素ラジカルが結合された上記定義されたアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどを含む。用語"エーテル"は酸素により共有結合された二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は−O−アルキル、−O−アルケニル、または−O−アルキニルの一つによって表現され得るアルコキシ、またはその類似体である。
【0029】
本願で使用された用語"アリール"とは0〜4個のヘテロ原子を含んでいても良い4〜11員環、より具体的に6〜10員環の単環及び融合環芳香族基、例えばベンゼン、ナフタレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン及びピリミジンなどを含む。芳香族環は一つ以上の環位置で上記記載された置換基、例えばハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、または−CF、−CN等で置換されていても良い。
【0030】
本願で使用された用語"ヘテロ原子"とは炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄、リン及びセレニウムである。
【0031】
本発明では、詳細に説明された実施例に示されるように、アリール基の置換基の電子的性質や立体的障害は触媒の活性にほとんど影響を与えなく、光学選択性にも大きな影響を与えないものと明らかにされた。従って、当該技術分野の熟練者は、本願に記載された発明の特定態様について、上記の言及された置換基以外の式(1)または式(2)の化合物に対してこれ以上の日常的な実験を行うことなく、類似の結果が得られることを認識するか、または確認することができる。このような同等物は本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【0032】
また、本発明は触媒量の上記式(I)の化合物の存在下で、プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を求核体と反応させる工程を含むキラル性ヘミエステルの製造方法に関するものである。
【0033】
本発明のキラル性ヘミエステルの製造方法は下記反応式(1)の反応を通して製造され得る。
[反応式(1)]
【化11】

【0034】
本願で使用される用語"求核体"は当分野に認知されており、本願では反応性電子対を有した化学的残基を意味する。求核体の例としては、水、アミン、メルカプタン及びアルコールのような荷電されない化合物、及びアルコキシド、チオレート、カルバニオン及び様々な有機及び無機アニオンのような荷電された残基を含む。例示的なアニオン性求核体には、ヒドロキシド、アジド、シアニド、チオシアネート、アセテート、ホルメートまたはクロロホルメート、及びビスルフィトのような簡単なアニオンがある。有機カプレート(organocuprate)、有機亜鉛(organozinc)、有機リチウム、グリニヤール試薬、エノラート、アセチリドなどのような有機金属試薬は、適当な反応条件下で適した求核体であっても良い。水素化物は基質の還元が求められたとき、適した求核体であっても良い。
【0035】
用語"求電子体"とは当分野に認知されており、上記定義された求核体から電子対を受けることができる化学的残基を意味する。本発明の方法で有用な求電子体としては、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、環状スルフェート、カーボネート、ラクトン、ラクタムなどのような環状化合物がある。非環状求電子体としては、スルフェート、スルホネート(例えば、トシラート)、クロリド、ブロミド、ヨージドなどがある。
【0036】
用語"触媒量"とは当分野に認知されており、反応物を基準にして化学量論的量を意味する。本願で使用されたように、触媒量は反応物を基準にして0.0001〜90モル%、好ましくは0.001〜50モル%、より好ましくは0.01〜10モル%、最も好ましくは0.1〜5モル%を意味する。
【0037】
下記さらに詳細に論議されるように、本発明で考察される反応は、鏡像選択的、ジアステレオ選択的、及び/又はレジオ選択的な反応を含む。鏡像選択的反応は非キラル反応物を一つの鏡像異性体が付加されたキラル生成物に転換させる反応である。鏡像選択性は次ぎの通りに定義された"鏡像体過剰率"(ee)として一般的に定量化される:
[数1]
%鏡像体過剰率A(ee)=(%鏡像異性体A)−(%鏡像異性体B)
【0038】
上記式でAとBは形成された鏡像異性体である。鏡像選択性と共に使用されるさらに別の用語は"光学純度"または"光学活性"を含む。鏡像選択的反応はe.e.が0より大きな生成物を生成させる。好ましい鏡像選択的反応はe.e.が20%より大きな、好ましくは50%より大きな、より好ましくは70%より大きな、最も好ましくは80%より大きな生成物を生成させる。
【0039】
上記求核体はメソ−環状酸無水物の開環反応のために用いられ、アルコール、チオールまたはアミンであることが好ましい。このとき、アルコールはメタノール、エタノール、2−プロペン−1−オル、トリフルオロエタノール、ベンジルアルコール、プロパノールまたはイソプロパノールが挙げられ、好ましくはメタノールが挙げられる。上記アルコールはメソ−環状酸無水物化合物に対して、1〜100当量、好ましくは1〜20当量、最も好ましくは1〜10当量で使用されても良い。
【0040】
上記プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物は環状酸無水物、置換されたコハク酸無水物または置換されたグルタル酸無水物であることが好ましい。
【0041】
上記求核体はプロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を基準にして、1〜20当量で使用することが好ましい。
【0042】
上記式(I)の化合物はプロキラルまたはメソ−環状酸無水物を基準にして、0.1モル%〜30モル%で使用することが好ましい。好ましくは0.1〜20mol%、最も好ましくは0.1〜10mol%で使用されても良い。
【0043】
上記反応は非プロトン性溶媒の存在下で遂行されることが好ましい。
【0044】
上記非プロトン性溶媒としては、エチルビニルエーテル、ジメトキシエタン、メチルt−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンがあり、好ましくはジイソプロピルエーテル、またはメチルt−ブチルエーテルなどを単独または2種以上使用することができる。より好ましくはジイソプロピルエーテルである。
【0045】
また、反応温度は−50〜100℃、好ましくは−20〜50℃、より好ましくは−20〜30℃であり、最も好ましくは5〜25℃で遂行されていても良い。
【0046】
本発明の具体例によれば、誘導体化された式(I)の化合物に対する比較及び様々なプロキラルまたはメソ−環状酸無水物に対して、メタノールを求核体として用いて立体選択的開環反応について調べており、当該ヘミエステルは既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従ってヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応させ、ヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させた後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して鏡像体過剰率を決定した。また、当該触媒は酸−塩基抽出過程を用いて容易に再使用できることが明らかにされた。
【0047】
本発明を通して製造された様々なキラル性ヘミエステルは、性質の異なる二つのカルボニル基を含んでいるので、通常的な工程によって立体化学的または製薬学的に有用なキラル性化合物を合成するのに使用することができる。
【0048】
また、本発明は下記式(3)で示されるアミンを、下記式(4)で示されるスルホニル誘導体と反応させる工程を含む上記式(I)の化合物の製造方法に関する:
[式(3)]
【化12】

[式(4)]
【化13】

[式(3)及び(4)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表し、
Zはハロゲン原子を表す。]
【0049】
上記式(3)の化合物は下記式(3−1)または式(3−2)で示される化合物であることが好ましい。
[式(3−1)]
【化14】

[式(3−2)]
【化15】

[式(3−1)及び(3−2)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
【0050】
また、上記式(3)の化合物は、下記式(3−1a)または(3−2a)で示される化合物であることが好ましい。
[式(3−1a)]
【化16】

[式(3−2a)]
【化17】

[式(3−1a)及び(3−2a)において、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
好ましくは、上記Yはハロゲン、アミノ、4〜11員環のアリール、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換されたアリールを表しても良い。
【0051】
上記スルホニルクロリド誘導体は置換または非置換されたベンゼンスルホニルクロリドまたはナフタレンスルホニルクロリドを使用することが好ましい。
【0052】
本発明の上記式(I)の化合物の製造方法は下記反応式によって製造されていても良い。
[反応式(2)]
【化18】

[反応式(3)]
【化19】

[反応式(2)または反応式(3)において、
Rはエチルまたは−CH=CHであり、
Arはアリール基である。]
好ましくは,上記反応式(2)または反応式(3)で、Arは置換または非置換されたベンゼンまたはナフタレンである。
より好ましくは、上記反応式(2)または反応式(3)で、Arは3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パラ−トルエン、オルト−トルエン、メタ−トルエン、パラ−ビニルベンゼン、1−ナフタレン、2−ナフタレン及びフェニルよりなる群から選択されていても良い。
【0053】
以下、本発明を下記実施例により詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明の内容を例示するだけであり、発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0054】
<実施例>
ニ官能性シンコナアルカロイド誘導体化された有機触媒の一般的な合成方法
シンコナアルカロイドからエピマー化反応によって製造されたアミンを塩基存在下で1当量のスルホニルクロリド誘導体と反応させる工程を含み、誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒を合成した。上記式(I)の有機触媒は文献[Organic Letters 2005, 7, 1967]に詳細に記述された9−アミノ(9−デオキシ)エピシンコナアルカロイドから合成できる。例えば、ジヒドロキニーネまたはキニーネをトリフェニルホスフィンとジイソプロピルアゾダイカルボキシラートを用いてジフェニルホスホリルアザイドと反応させ、ヒドロキシ基をアミンと置き換えた後、スルホニルクロリド誘導体と反応し、分離精製して製造した。
【0055】
<実施例1>
Q−BTBSA(キニーネ−(ビス)−3,5−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(3.54g、10.94mmol)溶液に、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリド(3.42g、10.94mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(1.52mL、10.94mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−BTBSA(5.9g、89.5%)を白色固体として得た。
【化20】

1H NMR (300 MHz, d6-DMSO, 110℃) δ 0.58 - 0.65 (m, 1H), 1.18 - 1.25(m, 1H), 1.33 - 1.67 (m, 3H), 2.14 - 2.31 (m, 1H), 2.45 - 2.52 (m, 1H, overlapped with DMSO), 2.60 - 2.73 (m, 1H), 2.88 - 3.13 (m, 2H), 3.20 - 3.40 (m, 1H), 3.93 (s, 3H), 4.91 (t, J=1.5, 0.5H), 4.97(td, 3J=17.1, 3J=1.5, 2J=1.5Hz, 1.5H), 5.78(ddd, 3J=17.1, 3J=10.5, 3J=6.9Hz, 1H), 7.33-7.38(m, 2H), 7.47(d, J=2.4Hz, 1H), 7.82(d, J=9Hz, 1H), 7.90-8.00(m, 3H), 8.54(d,4 J=4.2Hz, 1H) ppm;
13C NMR(100MHz, d6-DMSO, 110℃) δ; 25.49, 27.26, 27.45, 38.97, 40.11, 55.27, 55.49, 58.59, 102.32, 113.61, 120.87, 122.41 (q, J(C-F)=271Hz), 124.47, 126.52, 127.19, 130.84(q,2J(C-C-F)=34Hz), 131.42, 141.67, 144.53,145.02, 146.91, 157.83 ppm;
19F NMR(376MHz, d6-DMSO, 45℃) δ -62.2 ppm
【0056】
<実施例2>
QD−BTBSA(キニジン−(ビス)−3,5−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(II)(1.89g、5.84mmol)溶液に、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリド(1.83g、5.84mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.9mL、6.4mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQD−BTBSA(2.69g、76.8%)を白色固体として得た。
【化21】

【0057】
<実施例3>
HQ−BTBSA(ヒドロキニーネ−(ビス)−3,5−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(III)(1.25g、3.84mmol)溶液に、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリド(1.20g、3.84mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.54mL、3.84mmol)を加えた。混合液を室温で1時間撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の10%メタノール)で精製してHQ−BTBSA(1.8g、77.9%)を白色固体として得た。
【化22】

【0058】
<実施例4>
Q−PTSA(キニーネ−パラ−トルエンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(30mL)中のアミン(I)(1.29g、3.99mmol)溶液に、パラ−トルエンスルホニルクロリド(0.76g、3.99mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.61mL、4.39mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(20mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の10%メタノール)で精製してQ−PTSA(1.0g、52.5%)を白色固体として得た。
【化23】

【0059】
<実施例5>
Q−OTSA(キニーネ−オルト−トルエンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(2.42g、7.48mmol)溶液に、オルト−トルエンスルホニルクロリド(1.426g、7.48mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(1.14mL、8.23mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−OTSA(2.86g、80%)を白色固体として得た。
【化24】

【0060】
<実施例6>
Q−MTSA(キニーネ−メタ−トルエンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(2.44g、7.54mmol)溶液に、メタ−トルエンスルホニルクロリド(1.44g、7.54mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(1.15mL、8.29mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−MTSA(2.85g、79.1%)を白色固体として得た。
【化25】

【0061】
<実施例7>
Q−1−NSA(キニーネ−1−ナフタレンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(30mL)中のアミン(I)(1.3g、4.0mmol)溶液に、1−ナフタレンスルホニルクロリド(0.91g、4.0mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.67mL、4.8mmol)を加えた。混合液を室温で4時間撹拌し、蒸留水(30mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−1−NSA(1.6g、77.5%)を白色固体として得た。
【化26】

【0062】
<実施例8>
Q−2−NSA(キニーネ−2−ナフタレンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(1.88g、5.81mmol)溶液に、2−ナフタレンスルホニルクロリド(1.32g、8.81mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.97mL、6.98mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(40mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−2−NSA(2.35g、79%)を白色固体として得た。
【化27】

【0063】
<実施例9>
Q−BSA(キニーネ−ベンゼンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(2.48g、7.67mmol)溶液に、ベンゼンスルホニルクロリド(2.03g、11.51mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.97mL、9.20mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(40mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−BSA(2.88g、81%)を白色固体として得た。
【化28】

【0064】
<実施例10>
Q−4−VBSA(キニーネ−4−ビニルベンゼンスルホンアミド)触媒の製造
アルゴン下、室温で、無水メチレンクロリド(50mL)中のアミン(I)(2.10g、6.49mmol)溶液に、4−ビニルベンゼンスルホニルクロリド(1.97g、9.74mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(0.82mL、7.79mmol)を加えた。混合液を室温で一晩撹拌し、蒸留水(40mL)を加え、10分間撹拌した後、有機層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(酢酸エチル中の5%メタノール)で精製してQ−4−VBSA(2.73g、86%)を白色固体として得た。
【化29】

【0065】
<実施例11>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を10mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、91%収率)を得た。下記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)を96%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
[反応式(4)]
【化30】

1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.36 - 1.62(m, 4H), 1.72 - 1.84(m, 2H), 1.96 -2.10(m, 2H), 2.80 - 2.92(m, 2H), 3.68(s, 3H); 13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 23.8,23.9, 26.1, 26.4, 42,5, 42.7, 51.9, 174.2, 180.3
【0066】
<実施例12>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で2時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、92%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を95%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0067】
<実施例13>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を1mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で6時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、92%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を95%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0068】
<実施例14>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を0.5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で20時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、89%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を93%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分,t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分).
【0069】
<実施例15>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−PTSA)を10mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、95%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を92%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0070】
<実施例16>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−1−NSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、95%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を92%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0071】
<実施例17>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−2−NSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、95%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を92%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0072】
<実施例18>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジイソプロピルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、99%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を96%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分).
【0073】
<実施例19>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをメチルt−ブチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−4−VBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、99%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって鏡像体過剰率を95%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分).
【0074】
<実施例20>
20℃で無水物(1a)0.5mmolをジイソプロピルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−4−VBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、99%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を95%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【0075】
<実施例21>
−20℃で無水物(1a)0.5mmolをジイソプロピルエーテル10mLに溶解した後、有機触媒(Q−4−VBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で4時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2a、99%収率)を得た。上記反応式(4)の既に知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を97%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=8.50分、t(主生成物)=11.79分)。
【化31】

【0076】
<実施例22>
20℃で無水物(1b)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2b、92%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を96%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=11.04分、t(主生成物)=14.25分)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 2.32-2.65 (m, 4H), 3.02-3.12 (m, 2H), 3.69(s, 3H), 5.68 (m, 2H); 13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 25.68, 25.86, 39.58, 39.70,52.10, 125.18, 125.30, 173.82, 179.66.
【0077】
<実施例23>
−20℃で無水物(1b)0.5mmolをメチルt−ブチルエーテル10mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で4時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2b、92%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を98.3%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=11.04分、t(主生成物)=14.25分)。
【0078】
<実施例24>
−20℃で無水物(1b)0.5mmolをジイソプロピルエーテル10mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2b、92%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を99%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=11.04分、t(主生成物)=14.25分)。
【化32】

【0079】
<実施例25>
20℃で無水物(1c)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で4.5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2c、90%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を96%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=12.27分、t(主生成物)=20.35分)。
【化33】

1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 1.35-1.58 (m, 4H), 1.75-1.83 (m, 2H), 2.57-2.62 (m, 2H), 2.82-3.04 (m, 2H), 3.69 (s, 3H); 13C NMR(75MHz,CDCl3)δ23.98, 24.17, 39.96, 40.22, 40.52, 46.83, 51.42, 172.98, 179.01.
【0080】
<実施例26>
20℃で無水物(1d)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2d、90%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を94%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=18.90分、t(主生成物)=24.93分)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 1.34 (bd, J=9.0Hz, 1H), 1.50(dt, J=9.0Hz and1.8Hz, 1H), 3.01 - 3.41(m, 4H), 3.59(s, 3H), 6.21(dd, J=5.0 and 3.0Hz, 1H), 6.33(dd, J=5.0 and 3.0Hz, 1H); 13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 46.23, 46.72, 48.08,48.37, 48.93, 51.67, 134.46, 135.71, 173.00, 178.15.
【0081】
<実施例27>
20℃で無水物(1d)0.5mmolをジイソプロピルエーテル10mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2d、90%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を97.5%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=18.90分、t(主生成物)=24.93分)。
【化34】

【0082】
<実施例28>
20℃で無水物(1e)0.5mmolをジエチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、室温で6時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2e、88%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を95%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=10.86分、t(主生成物)=11.31分)。
【化35】

1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 1.42 (bd, J=9.0Hz, 1H), 2.13(bd, J=9.0Hz, 1H), 2.62(m, 2H), 3.09(m, 2H), 3.65(s, 3H), 6.22(m, 2H);13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 45.49, 45.52, 45.90, 47.47, 47.57, 51.97, 138.00, 138.19, 174.00, 180.13.
【0083】
<実施例29>
−20℃で無水物(1f)0.5mmolをメチルt-ブチルエーテル20mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2f、95%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を98%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=15.0分、t(主生成物)=11.0分)。
1H NMR (300MHz, CDCl3):δ 1.02-1.21 (m, 6H), 2.71- 2.79 (m, 2H), 3.66(s, 3H); 13C NMR(75MHz,CDCl3):δ 14.8, 14.9, 42.3, 42.4, 52.0, 175.2,180.3.
【0084】
<実施例30>
−20℃で無水物(1f)0.5mmolをジイソプロピルエーテル50mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で9時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(ent−2f、99%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を99%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=11.0分、t(主生成物)=15.0分)。
【化36】

【0085】
<実施例31>
−20℃で無水物(1g)0.5mmolをメチルt-ブチルエーテル5mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を10mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で4時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2g、95%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を91%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=33.5分、t(主生成物)=30.3分)。
1H NMR (300MHz, CDCl3):δ 1.05 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 2.2 - 2.6 (m, 5H), 3.68(s, 3H); 13C NMR(75MHz,CDCl3)δ 19.9, 27.2, 40.6, 40.6, 51.7, 172.9,178.8.
【0086】
<実施例32>
−20℃で無水物(1g)0.5mmolをジイソプロピルエーテル10mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を5mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で5時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(ent−2g、95%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を87%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=30.3分、t(主生成物)=33.5分)。
【化37】

【0087】
<実施例33>
−20℃で無水物(1h)0.5mmolをメチルt-ブチルエーテル15mLに溶解した後、有機触媒(Q−BTBSA)を10mol%加え、メタノール10当量を一度に加え、−20℃で4時間撹拌した。この反応を稀塩酸水溶液(1N、3mL)を用いて急冷させた。水層を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出し、合わせられた有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン中に25%酢酸エチル)で精製してヘミエステル(2h、97%収率)を得た。知らされた方法(H. Han, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 3301-3304)に従って、ヘミエステルと(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンを反応してヘミエステルに対応するエステルアミドに転換させることによって、鏡像体過剰率を94%になるように決定した。鏡像選択性は高性能液体クロマトグラフィーを用いて測定した(Hypersil、40:1、核酸:イソプロピルアルコール、1mL/分、t(副生成物)=24.1分、t(主生成物)=12.1分)。
1H NMR (300MHz, CDCl3):δ 2.6- 2.8 (m, 4H), 3.56 (s, 3H), 3.58- 3.67(m, 1H), 7.10 - 7.35 (m, 5H); 13C NMR(75MHz,CDCl3):δ 37.9, 40.2, 40.5,51.7, 127.1, 127.2, 128.7, 142.3, 172.2, 177.8.
【0088】
下記表1は実施例11〜33のそれぞれの非対称化反応に対する収率及び立体選択性を示す。
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の誘導体化されたニ官能性シンコナアルカロイド触媒は天然物から容易に得られるキニーネ、キニジン、ヒドロキニンまたはヒドロキニジンから合成でき、金属触媒と違って毒性が低く、化学的に安定しているので、産業的利用価値が高い。また大気中で反応を行うことができ、高温や低温ではなく室温でも高い鏡像選択性を有しており、反応後、容易に触媒を回収して再使用することができる。さらに、上記触媒を用いて様々な構造のキラル性ヘミエステルを短時間内に非常に高い鏡像選択性 で合成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される化合物:
[式(I)]
【化1】

[式(I)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表す。]
【請求項2】
前記式(I)の化合物は、下記式(1)で示される化合物または下記式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
[式(1)]
【化2】

[式(2)]
【化3】

[式(1)及び(2)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表し、
Yは炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または4〜11員環のアリールを表す。]
【請求項3】
前記式(1)または前記式(2)の化合物は下記式(1a)または式(2a)の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の化合物:
[式(1a)]
【化4】

[式(2a)]
【化5】

[式(1a)及び(2a)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
【請求項4】
Arはハロゲン、アミノ、6〜10員環のアリール、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数2〜6のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換された6〜10員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数2〜6のアルキニル、または炭素数1〜6のアルコキシを表す、ことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Arはハロゲン、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜4のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数2〜4のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜4のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換されたフェニル基またはナフチル基を表す、ことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
は水素または炭素数1〜4のアルコキシを表す、ことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
前記式(1a)の化合物は、
が水素を表し、
が炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルを表す、ことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
前記式(2a)の化合物は、
が水素を表し、
が炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数2〜4のアルケニルを表す、ことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
前記式(1)または前記式(2)の化合物は、それぞれ下記式(1b)または式(2b)で示される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の化合物:
[式(1b)]
【化6】

[式(2b)]
【化7】

[式(1b)及び(2b)において、
Rはエチルまたは−CH=CHを表し、
Arは4〜11員環のアリール基を表す。]
【請求項10】
Arが3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パラ−トルエン、オルト−トルエン、メタ−トルエン、パラ−ビニルベンゼン、1−ナフタレン、2−ナフタレン及びフェニルよりなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)の化合物の存在下で、プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を求核体と反応させる工程を含むキラル性ヘミエステルの製造方法。
【請求項12】
前記求核体がアルコール、チオールまたはアミンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物が環状酸無水物、置換されたコハク酸無水物または置換されたグルタル酸無水物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記求核体を前記プロキラル化合物またはメソ−環状酸無水物を基準にして、1〜20当量で使用することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記式(I)の化合物を前記プロキラルまたはメソ−環状酸無水物を基準にして、0.1モル%〜30モル%で使用することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
反応は非プロトン性溶媒の存在下で行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
下記式(3)で示されるアミンを、下記式(4)で示されるスルホニル誘導体と反応させる工程を含む請求項1の式(I)の化合物の製造方法:
[式(3)]
【化8】

[式(4)]
【化9】

[式(3)及び(4)において、
Xは1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン残基を含む有機基を表し、
Yはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはアリールを表し、
Zはハロゲン原子を表す。]
【請求項18】
前記式(3)の化合物が下記式(3−1)または(3−2)で示される化合物であることを特徴とする請求項17に記載の方法:
[式(3−1)]
【化10】

[式(3−2)]
【化11】

[式(3−1)及び(3−2)において、
Arは4〜11員環のアリールを表し、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
【請求項19】
前記式(3)の化合物が下記式(3−1a)または(3−2a)で示される化合物であることを特徴とする請求項17に記載の方法:
[式(3−1a)]
【化12】

[式(3−2a)]
【化13】

[式(3−1a)及び(3−2a)において、
〜Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数1〜12のアルコキシまたは4〜11員環のアリールを表す。]
【請求項20】
Yはハロゲン、アミノ、4〜11員環のアリール、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルキル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルケニル、ハロゲンで置換または非置換された炭素数1〜6のアルコキシよりなる群から選択された一つ以上の置換基で置換または非置換されたアリールを表す、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−528349(P2011−528349A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518633(P2011−518633)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006169
【国際公開番号】WO2010/008117
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(506394418)スンキュンクワン ユニヴァーシティー ファウンデーション フォー コーポレイト コラボレイション (10)
【Fターム(参考)】