説明

シートヒータ

【課題】シートに複数設けた各発熱体の発熱量を流れるように低下させる制御により、着座者に爽快感を与えることができるシートヒータを提供する。
【解決手段】シートヒータ1は、シート2の異なる位置に配設された3以上の発熱体(31〜35)と、発熱体ごとに通電を制御する制御部4とを備え、発熱体のうちの少なくとも1つを所定時間最小発熱量とするように通電し、且つ最小発熱量とする発熱体をその配設位置の順に移動させるようにした。これにより、シートヒータ全体から得られる温熱感を損なうことなく、シートヒータを長時間にわたって発熱させたときにシート表面と着座者との間に熱がこもって蒸れが生じるのを防止することができる。しかも、温熱の減少部位が流れるように移動する温熱ゆらぎによって着座者を刺激し、着座者に爽快なリフレッシュ感を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートヒータに関し、詳しくは、シートに複数設けた各発熱体の発熱量を制御することにより着座者に爽快感を与えることができるシートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等のシートの座面部や背もたれ部に発熱体を備え、着座者を暖めるシートヒータが用いられている。このようなシートヒータの多くは、シートヒータ全体の発熱体の発熱量を変化させたり、発熱体への通電をオン、オフしたりすることによって温度の調整がされている。
また、車両用シートヒータでは、着座した乗員を暖めるのみでなく、着座者に快適性を提供するものが知られている。例えば、着座者を支持する支持部材に備えられる発熱ユニットが複数のブロックに区分けされ、その発熱ユニットの運転に際し、発熱体の通電状態をブロック毎に変更して制御するヒータ装置が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−40185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等のシートに設けられるシートヒータは、1又は複数の発熱体に通電することによって着座者を暖めている。前記のとおり、多くのシートヒータではシートヒータ全体の発熱量を変化させることによって温度の調整がされているが、シートヒータを長時間にわたって使用したときには着座者との間に熱がこもって蒸れが生じ、快適性を損なうということがあった。また、発熱体への通電をオン、オフして温度調整を図る場合には、通電をオフしたときに着座者に温熱の低下を感じさせてしまうという問題があった。
特許文献1に記載された前記ヒータ装置によれば、発熱体を複数のブロックに分け、部分的に通電状態(オン、オフ)の変更を繰り返すことにより同一箇所を長時間にわたって加熱し続けることがないため、着座者を支持する支持部材と着座者との間で熱がこもって蒸れることがなくなる。しかし、1つの発熱体への通電をオフした場合には着座者に当該部位の温熱低下が体感され、温熱刺激を与えることはできても、そのような通電状態の変更を複数設けられた発熱体について規則性なく行ったのでは、着座者に対して温度変化を体感させることができない。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、シートに複数設けた各発熱体の発熱量を流れるように低下させる制御により、着座者に爽快感を与えることができるシートヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本第1発明のシートヒータは、シートの異なる位置に配設された3以上の発熱体と、前記発熱体ごとに通電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記発熱体のうちの少なくとも1つを所定時間最小発熱量とするように通電し、且つ前記最小発熱量とする前記発熱体をその配設位置の順に切り替えることを要旨とする。
本第2発明は、前記第1発明において、前記発熱体ごとに前記最小発熱量及びその継続時間が定められていることを要旨とする。
本第3発明は、前記第1又は第2発明において、前記制御部は、前記最小発熱量とする前記発熱体について前記最小発熱量とする直前の発熱量を所定時間増加させることを要旨とする。
本第4発明は、前記第1乃至第3発明において、前記3以上の発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿に対応する前記シートの各位置に配設されている発熱体を含むことを要旨とする。
本第5発明は、前記第4発明において、所定の位置に配設されている発熱体は、その他の位置に配設されている発熱体と比べて前記最小発熱量が小さい、及び前記最小発熱量の継続時間が長い、のいずれか又は両方とされることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートの異なる位置に配設された3以上の発熱体と、その発熱体ごとに通電を制御する制御部と、を備え、制御部は、発熱体のうちの少なくとも1つを所定時間最小発熱量とするように通電するため、シートヒータ全体から得られる温熱感を損なうことなく、シートヒータを長時間にわたって発熱させたときにシート表面と着座者との間に熱がこもって蒸れが生じるのを防止することができる。しかも、最小発熱量とする発熱体をその配設位置の順に切り替えるため、温熱の減少部位が流れるように移動する温熱ゆらぎによって着座者を刺激し、着座者に爽快なリフレッシュ感を与えることができる。
【0008】
前記発熱体ごとに前記最小発熱量及びその継続時間が定められている場合は、人体各部位の温熱感覚の相違や、各発熱体と着座者との間の熱のこもり易さに応じて最小発熱量及び継続時間を設定することができるため、着座者に対して部分的な温熱低下による違和感を与えることなく、より効果的にリフレッシュ感を与えることができる。
また、前記制御部は、最小発熱量とする発熱体の発熱量を最小発熱量とする直前の所定時間において増加させる場合は、その発熱体の部位をわずかに温度上昇させた後に下降させるため、着座者は最小発熱量となったときの変化をより刺激的に体感することができ、着座者の爽快なリフレッシュ感を増すことができる。
【0009】
前記3以上の発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿に対応する前記シートの各位置に配設されている発熱体を含む場合は、その各部位を最小発熱部が流れるように移動するため、着座者の肩から腿までの各部位に対して温熱ゆらぎを与え、爽快なリフレッシュ効果を奏することができる。
また、所定の位置に配設されている発熱体は、その他の位置に配設されている発熱体よりも小さい最小発熱量とする、及び長い最小発熱量の継続時間とする、のいずれか又は両方とされる場合は、熱がこもり易い部位の発熱体に対して、最小発熱量をより小さくしたり最小発熱量とする時間を相対的に長くしたりすることにより、肩から腿までの全体にわたる温熱サイクルの時間を変えることなく、効果的な温熱ゆらぎが得られ着座者に爽快なリフレッシュ感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本シートヒータを設けた自動車用シートの例を示す斜視図である。
【図2】シートの各部位に設けられた発熱体の発熱量の制御方法(1)を説明するための図表である。
【図3】制御方法1によるシート各部位の発熱体の発熱量の時間変化を示すグラフであり、(a)はシートの肩部、(b)は背部、(c)は腰部、(d)は尻部、(e)は腿部に設けられた発熱体の発熱量の時間変化を示す。
【図4】シートの各部位に設けられた発熱体の発熱量の別の制御方法2を説明するための図表である。
【図5】図4の制御方法2におけるステップS2の具体的な制御例を説明するための図表である。
【図6】シートの各部位に設けられた発熱体の発熱量の別の制御方法3を説明するための図表である。
【図7】シートの各部位に設けられた発熱体の発熱量の別の制御方法4を説明するための図表である。
【図8】図7の制御方法4におけるステップS1の具体的な制御例を説明するための図表である。
【図9】シートの腰部に設けられた発熱体による当該部位の初期状態からの温度変化と着座者による評価値とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.シートヒータの構成
以下、図1〜9を参照しながら本発明のシートヒータを詳しく説明する。
本シートヒータは、シートの異なる位置に配設された3以上の発熱体と、発熱体ごとに通電を制御する制御部と、を備える。本シートヒータが設けられるシートは特に限定されず、例えば、車両用シート、室内用シートのような様々なシートが挙げられる。
図1は、本シートヒータを設けた車両用シートの例を示す。車両用シート2は、背もたれ部21と座面部22からなっている。シートヒータ1は、シート2の異なる位置の表層に配設された発熱体31〜35、及び各発熱体と接続された制御部4を備えている。本例においては5つの発熱体を備え、着座者の肩、背、腰、尻及び腿の各部位に対応するシートの各位置に、肩部発熱体31、背部発熱体32、腰部発熱体33、尻部発熱体34及び腿部発熱体35が設けられている。各発熱体31〜35は、制御部4によりそれぞれ独立して通電が制御され、それによって発熱量が変化する。
【0012】
1つのシートに設けられる発熱体の数は3以上であれば限定されない。発熱体の数を3以上とするのは、最小発熱位置を順次切り替えることによってシートの温熱の減少部位が流れるように移動する温熱ゆらぎを得るためである。このような温熱ゆらぎにより着座者に対して爽快感があるリフレッシュ効果を奏する。各発熱体の配置や大きさも、シートに接する着座者の人体の部位ごとに温熱を与える限り特に問わない。また、隣り合う発熱体は隙間なく設けられてもよいし、隙間を空けて設けられてもよい。
前記3以上の発熱体は、着座者の肩、背、腰、尻及び腿の各部位に対応する上記発熱体31〜35を含むものとすることができる。更に、図1においては、肩部から膝部の5つに区分してそれぞれ発熱体が配設されているが、この区分に限られず任意の範囲で分割することができる。例えば、肩部から膝部までを6以上に分割してそれぞれ発熱体を設けてもよい。発熱体の数を増やすことによって、発熱体ごとの発熱量の変化を細やかにし、最小発熱領域の移動をなめらかにすることができる。また、シートを左右方向に区画して発熱体を設けてもよい。例えば、上記肩部を左右に分けて2つの発熱体を備えるようにしてもよい。
【0013】
各発熱体の材料や構造も特に限定されず、例えば抵抗発熱線や面状発熱体等を使用することができる。各発熱体は、好ましくは着座者と接するシートの表層部等に設けられる。この表層部には、シートと一体になってシートの外面を覆うように設けられたシートカバーを含むことができる。例えば、上記発熱体31〜35を、シート内部に設けられているクッション材とシートカバーとの間に設けることができる。
【0014】
制御部4は発熱体それぞれと接続されており、温熱ゆらぎを与えるよう所定時間ごとに発熱体ごとの発熱量を制御するように構成されている。上記所定時間は一律である必要はなく、発熱体の設けられている部位や発熱状態等によって異なる時間とすることができる。また、シートヒータの使用中常に温熱ゆらぎを生じさせる必要はなく、通電後の経過時間やシートの表面温度等によって、温熱ゆらぎを開始及び終了させることができる。シート各部位又は発熱体の温度を検出するための温度センサや、シート周辺の室温を検出するための温度センサ等が更に備えられてもよい。その場合には制御部4は、それらの温度を検知することによって、発熱量の大きさや温熱ゆらぎの制御開始・終了、上記所定時間等を変更することができる。
制御部4はハードウェアのみで構成されてもよいし、マイクロプロセッサ等を使用してハードウェアとソフトウェアとによって構成されてもよい。制御部4及び各発熱体用の電源は、例えば車両のバッテリから給電を受ける電源5により供給される。
【0015】
各発熱体の発熱量は、それぞれに対する通電(供給電力)を制御することによって変化させることができる。通電の制御方法は任意に選択することができ、例えば、パルス幅変調(PWM)、電圧制御、電流制御等が挙げられる。
シート上の部位ごとに、各発熱体を通常に発熱させる発熱量を基準発熱量として定めておくことができる。同じ発熱量であっても部位によって着座者の温熱感が相違し、また部位によって発熱体と着座者との間の熱のこもり方や蒸れの程度が異なるからである。発熱体ごとに基準発熱量を設定することによって、着座者の身体の各部位を適度に温めるようにすることができる。
【0016】
基準発熱量は、発熱体に常時一定の通電をしたときの発熱量を最大発熱量として、部位ごとに最大発熱量に対して一定の比率により定めておくことができる。例えば、前記発熱体31〜35を設けたシート2の場合、肩部発熱体31の基準発熱量はその最大発熱量の60%、背部発熱体32の基準発熱量はその最大発熱量の40%、腰部発熱体33の基準発熱量はその最大発熱量の40%、尻部発熱体34の基準発熱量はその最大発熱量の60%、腿部発熱体35の基準発熱量はその最大発熱量の70%程度とするように定める。これにより、通常の発熱量は腿部が大きく、背部や腰部が小さいようにすることができる。
各発熱体の基準発熱量は、発熱体ごとの最大発熱量や配設構造等によって適宜に設定されればよい。温熱ゆらぎの制御をしないときには、各部位の発熱体を基準発熱量の発熱に制御することができる。
【0017】
制御部4は、予め定められた制御シーケンスに基づき、複数の発熱体のうちの少なくとも1つを、所定時間の間、最小発熱量とするように通電する。この最小発熱量は、基準発熱量で発熱していた発熱体の部位を温度降下させるときの発熱量であり、各発熱体が接する人体の部位によって発熱体ごとに設定することができる。最小発熱量は、発熱体が設けられた部位ごとに、当該部位の温度降下が着座者に体感されるように、任意に定められればよい。好ましくは、各発熱体の最小発熱量は、その部位の温度が過度に下がり過ぎないようし、且つ、その後の温度上昇を速やかにするように、それぞれの最大発熱量の0〜20%程度の範囲で設定される。例えば、上記の背部発熱体32の場合、最小発熱量を最大発熱量に対して10%程度、すなわち基準発熱量(最大発熱量の40%)の1/4程度とすることができる。また、最小発熱量として発熱量が0、すなわち発熱体に通電しない状態を含めてもよい。
【0018】
2.シートヒータの制御方法及び動作
発熱体のうちの少なくとも1つを所定時間最小発熱量とするように通電し、その最小発熱量とする発熱体を配設位置の順に切り替える制御(温熱ゆらぎ制御)方法は、種々のパターンで設定することができる。温熱ゆらぎ制御を行わないときは、各発熱体をそれぞれの基準発熱量としておくことができる。そして温熱ゆらぎ制御を行うときには、例えば、所定時間ごとに、最小発熱量とする発熱体を肩部(発熱体31)から膝部(発熱体35)に向けて順番に切り替えたり、逆向きに切り替えたり、循環するように切り替えたりすることができる。
上記所定時間、すなわち発熱体の発熱量を変化させるタイミングは適宜に設定することができ、一定の時間ごとに発熱量を変更してもよいし、発熱体の部位によって異なる時間で発熱量を変更してもよい。また、温熱ゆらぎ制御開始後の経過時間やシート表層の温度、室温等によって異なる時間に設定されたり変更されたりしてもよい。
本シートヒータ1は、着座者に適切にリフレッシュ感を与えるように制御されればよく、例えば、以下に説明する各制御方法、又はそれらを組み合わせたものとすることができる。以下の制御方法では、シートに設けられた全ての発熱体に対して温熱ゆらぎ制御を行っているが、一部の範囲の発熱体(例えば、シートの背もたれ部に設けられた複数の発熱体)のみを対象として、同様の温熱ゆらぎ制御を行ってもよい。
更に、本シートヒータの制御方法を任意の条件で使用することができる。例えば、通電後一定時間は各発熱体を所定の温度を保つように発熱制御し、その後スイッチを用いて一定時間本シートヒータの制御方法を用いることにより、温熱ゆらぎによる効果をよりはっきりと体感することができる。また、シート等に設けられる温度センサ及び湿度センサ等によりシートの蒸れ等を検出する間、本シートヒータの制御方法を用いることにより、温熱ゆらぎによる効果をよりはっきりと体感することができる。
【0019】
(1)制御方法1
図2は、図1に示したシートの温熱ゆらぎ制御例を示す。肩部、背部、腰部、尻部及び腿部は、それぞれ着座者の当該部位に相対する発熱体31、32、33、34及び35を表わし、ステップS1〜S5は、所定時間(例えば、5〜20秒)ごとに順次行う発熱量の制御を表わしている。ステップS1〜S5の各継続時間(期間)は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
図表中のB、D及びEは各発熱体の発熱量を表わし、「B」は基準発熱量としている状態、「D」は第1の最小発熱量(例えば、最大発熱量の10%)としている状態、「E」は第1の最小発熱量よりも小さい第2の最小発熱量(例えば、発熱量が0)としている状態を示している。前記のとおり、基準発熱量Bは発熱体ごとに異なる値とすることができる。発熱体によって最小発熱量をD及びEの2レベルとしているのは、部位に応じて温度降下による体感が着座者に対して刺激的に与えられるようにするためである。本例では、腰部発熱体33及び尻部発熱体34の最小発熱量を他の部位の最小発熱量よりも一段と小さくすることにより、熱がこもり易い腰部及び尻部の温度降下を大きくしている。
【0020】
制御部4は、ステップS1からステップS5の順に、それぞれ基準発熱量Bで発熱している複数の発熱体31〜35のうちの1つを所定時間の間最小発熱量(D又はE)となるように通電し、且つ所定時間ごとに最小発熱量とする発熱体をその配設位置の順に切り替えるように通電を制御する。ステップ5で端の位置の腿部発熱体35を最小発熱量とした後は、ステップ1に戻って最小発熱量の発熱体が循環するように切り替えることができる。また、ステップS1からステップS5までとは逆順に、腿部から肩部に向けて順次発熱体を最小発熱量にするようにしてもよい。このような制御を行うことにより、着座者の身体に対して温度降下部位が流れるように移動する温熱ゆらぎをもたらし、温熱が抜ける爽快感を与えてリフレッシュ効果を得ることができる。
【0021】
図3は、図2に示した制御を行ったときの各発熱体の発熱量の変化を示す図である。同図(a)〜(e)は、それぞれ肩部、背部、腰部、尻部及び腿部に対応する発熱体31、32、33、34及び35を表わす。またステップS1〜S5はいずれも15秒間としており、同図はステップS1からS5までの1サイクルのみを示している。
各発熱体の発熱量は制御部4によりPWM制御されるものとし、図3(a)〜(e)の各縦軸はPWMのデューティ比(百分率)を示している。各発熱体の発熱量は、PWMのデューティ比に略比例するものとすることができる。例えば、デューティ比が100%のとき発熱量は最大発熱量である100%となり、デューティ比が10%のとき発熱量は10%となるものとする。
図3中に示すように、各発熱体31〜35の発熱量は、基準発熱量B、第1の最小発熱量D、及び第2の最小発熱量Eの3つの状態に制御されている。基準発熱量Bは発熱体ごとに設定されており、肩部(a)及び尻部(d)はデューティ比60%、背部(b)及び腰部(c)はデューティ比40%、腿部(e)はデューティ比70%とされている。また、第1の最小発熱量Dはデューティ比10%、第2の最小発熱量Eはデューティ比0%すなわち通電しない状態としている。
【0022】
最初のステップS1(15秒間)においては、肩部発熱体31が第1の最小発熱量Dとされ、それ以外の発熱体はそれぞれの基準発熱量Bとされる。これにより、着座者には肩部においてそれまでの温度からの低下を体感させることができる。
次のステップS2(15秒間)には、肩部発熱体31に隣接する背部発熱体32のみが第1の最小発熱量Dとされ、それ以外の発熱体はそれぞれの基準発熱量Bとされる。これにより、着座者には相対的な冷感が肩部から背部に移動したように体感させることができる。
続くステップS3(15秒間)には、背部発熱体32に隣接する腰部発熱体33のみが第2の最小発熱量Eとされ、それ以外の発熱体はそれぞれの基準発熱量Bとされる。これにより、着座者には相対的な冷感が背部から腰部に移動したように体感させることができる。また、熱がこもり易い腰部は一段と低い第2の最小発熱量Eとされているため、温度降下の刺激を強めることができる。
続くステップS4(15秒間)には、腰部発熱体33に隣接する尻部発熱体34のみが第2の最小発熱量Eとされ、それ以外の発熱体はそれぞれの基準発熱量Bとされる。これにより、着座者には相対的な冷感が腰部から尻部に移動したように体感させることができる。熱がこもり易い尻部は、基準発熱量B(デューティ比60%)と第2の最小発熱量E(デューティ比0%)との差を大きくしているため、冷感を強く与えることができる。
続くステップS5(15秒間)には、尻部発熱体34に隣接する腿部発熱体35のみが第1の最小発熱量Dとされ、それ以外の発熱体はそれぞれの基準発熱量Bとされる。これにより、着座者には相対的な冷感が尻部から腿部に移動したように体感させることができる。腿部も基準発熱量B(デューティ比70%)と第1の最小発熱量D(デューティ比10%)との差を大きくしているため、冷感を強く与えることができる。
その後、最初のステップS1の状態に戻り、以後、これを繰り返して制御することができる。
【0023】
(2)制御方法2
制御部4は、上記のように発熱体により最小発熱量を変更してもよいし、発熱体の配設位置により、その発熱体を最小発熱量とする時間を変更するように制御してもよい。例えば、腰部の発熱体及び尻部の発熱体について最小発熱量とする時間を長くすることができる。ただし、腰部及び尻部をそれぞれ最小発熱量とする時間(図2に示したステップS3及びS4)を単に長くしたのでは、順次流れるようなリフレッシュ感が損なわれて、当該部位の温度低下を強く感じさせることとなってしまう。これを避けるためには、例えば図4に示すように、前後のステップを含めて最小発熱量とすることができる。
【0024】
図4の制御方法では、腰部の発熱体は、ステップS3とその前後のステップS2及びS4において最小発熱量Dとされている。同様に、尻部の発熱体は、ステップS5とその前後のステップS4及びS6において最小発熱量Dとされている。この場合、ステップS2、S4及びS6においては、隣接する2つの発熱体が最小発熱量とされる。
また、図4の制御の1サイクル(ステップS1〜S6)に要する時間を、図2に示した1サイクル(ステップS1〜S5)に要する時間と同じとすることも可能である。このような制御により、1サイクルの時間を変えないで、且つ各発熱体に対するデューティ比を変更することなく、温熱のこもりがちな部位に効果的に冷感を与えるとともに、流れるような爽快感を与えることが可能になる。
【0025】
なお、図4に示すステップS3では、各発熱体の発熱量を調整している。ここで、発熱量の状態「A」は、その発熱体の基準発熱量より幾分(例えば、最大発熱量の10%)多い発熱量とし、発熱量の状態「C」は、その発熱体の基準発熱量より幾分(例えば、最大発熱量の10%)少ない発熱量とすることができる。このように各発熱体の発熱量を適宜調整することによって、着座者に与える爽快感を最適にすることが可能となる。
【0026】
図4に示した例では、特定の発熱体について、それを最小発熱量とするステップとその前後のステップとを合わせて最小発熱量に制御している。それにより、例えば、ステップS2において背部及び腰部が同時に最小発熱量Dとされることになる。この場合、ステップS2の制御は、図5に示すように、隣り合う発熱体について一部の時間のみが重なって最小発熱量Dとなるように制御することもできる。図5に示すステップS2は、背部及び腰部を基準発熱量BとするステップS21と、背部及び腰部を最小発熱量DとするステップS22とに分けられる。ステップS21とS22の各時間は適宜配分されればよい。また、背部と腰部とが異なるタイミングで切り替えられてもよい。このように隣り合う発熱体が同時に最小発熱量となる重複時間を適宜調整することによって、着座者に与えるリフレッシュ感を最適にすることも可能である。
【0027】
(3)制御方法3
図6に示す制御方法は、上記制御方法1と2とを組み合わせたものであり、制御方法2において腰部及び尻部を所定時間第1の最小発熱量Dとしていたのを、1段と小さい第2の最小発熱量Eとする例である。制御方法1と同様に、第2の最小発熱量を0%すなわち通電しない状態にすれば、所定時間、腰部及び尻部の温度を制御方法2の場合に比べて大きく低下させることができ、当該部位の熱こもりが大きい場合に、より効果的に蒸れを抑制することができる。
【0028】
(4)制御方法4
図7に示す制御方法は、制御方法2を基に、各発熱体を最小発熱量とする直前に一旦発熱量を増すように制御する例である。図中「A」は、それぞれの発熱体の発熱量を基準発熱量Bよりも増した状態を表わす。発熱量を増す程度は適宜設定されればよく、例えば、基準発熱量から最大発熱量の10%程度増加させた値とすることができる。このように、一旦発熱量をわずかに増加させた後にその発熱体を最小発熱量とすることによって、着座者には温度降下が刺激的に体感されるようになるため、より効果的にリフレッシュ感を与えることができる。
【0029】
図7に示した例では、隣り合う発熱体の一方の発熱量が増加し、同時に他方が最小発熱量となる期間が生じる。例えば、ステップS1においては、背部の発熱体が発熱量Aに増加するとともに、肩部の発熱体が最小発熱量Dとなっている。背部の発熱体の発熱量を増す時間が長いとその部位の温度が上昇し、温度が降下した肩部との差によって着座者に不快感を抱かせる場合がある。そこで、図8に示すように、当該ステップS1の終了前の一定時間のみ一方の発熱体の発熱量を増すように制御することが好ましい。例えば、図8においてステップS1を15秒間とした場合、ステップS1の終了前5秒間(S12)のみ、次に最小発熱量とする背部及び腰部の発熱量を増加させるようにすることができる。このような制御により、温度が低下した肩部に隣接する背部を短時間だけ温度上昇させ、着座者の爽快感が損なわれることを防ぐことができる。
【0030】
シートヒータの使用開始直後であってシートが冷えている初期状態においては、上記制御方法1〜4に例示したような温熱ゆらぎ制御を実施しないで、所定時間の経過後又は所定温度に達したときに、温熱ゆらぎ制御を実施するようにすることができる。それによってシートヒータの暖まりを速くし、着座者が熱く感じる条件のときに限って温熱ゆらぎを生じさせることができる。
【0031】
3.シートヒータの効果
図9は、本シートヒータにより温熱ゆらぎ制御を行った結果を表わす図である。図の横軸は前記シートヒータ1に通電を開始してからの時間を表わしている。図中で、温度Pは、着座者の尻部に当たるシート部位の表面温度の計測値を表わしている(左側目盛を参照。)。また、階段状に変化している評価値Qは、着座した被験者による体感の評価を1分ことに記録したものである(右側目盛を参照。)。体感は、冷たい(1)、やや冷たい(2)、やや暖かい(3)、やや熱い(4)、熱い(5)の5段階で評価しており、評価値3.5が快適と感じられる状態である。本例の温熱ゆらぎ制御は、前記制御方法2を繰り返し行う制御としている。
【0032】
周囲温度及び上記シート表面温度が10℃のとき、シートヒータ1への通電を開始した(時間:0分)。シートが冷えている初期状態では温熱ゆらぎ制御を行わず、各発熱体に基準発熱量となる通電を行うことによりシート温度を速く上昇させる。当初はシート表面が10℃であるため、着座者には「冷たい」と評価されている。
シートの尻部の温度は、発熱体に電流を流し始めてから急速に上昇し、10分経過するまでに30℃以上となるため、着座者にはやや熱いと感じられる(評価値3.75)。しかし20分から45分経過時までは、シート温度が緩やかに38℃程度まで上昇するため、着座者が快適と評価する状態が続く。更にシート温度が上昇すると、着座者は「熱い」と感じるようになる。60分経過時にはシート温度が39.1℃になっていた。
【0033】
そこで、60分経過時から5分間、温熱ゆらぎ制御を行った。そうすると、温熱ゆらぎ制御の開始1分後には着座者が「快適」と評価する状態となり、その後も涼しくて快適と体感される状態が継続した。本シートヒータの温熱ゆらぎ制御によって着座者に爽快感が与えられることが分かる。
温熱ゆらぎ制御の開始から5分後には、シートの尻部の温度が38.0℃であった。すなわち、温熱ゆらぎ制御による温度降下(p)は1.1℃に止まっている。本シートヒータの温熱ゆらぎ制御によるシート温度の低下はわずかであるため、着座者が得る温熱感は保たれることとなる。図9では尻部の温度の計測値を示したが、その他の部位においても、温熱ゆらぎ制御による温度降下は1.1〜1.3℃であった。
以上の結果から、本シートヒータは、シート各部位にわたり温熱感を保ったまま、着座者に爽快感を与えるリフレッシュ効果を奏することができるといえる。
【0034】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。
以上の説明では、発熱体が肩部、背部、腰部、尻部及び腿部に設けられる場合を挙げたが、発熱体の数や配設位置はこれに限らない。また、発熱体を設ける場所はシートのみに限られず、例えば、ふくらはぎや足の裏等を載せる足載せ台に発熱体を設け、シートに設けた発熱体とあわせて温熱ゆらぎ制御を行うことができる。更に、温熱ゆらぎ制御の対象は、シートに設けたすべての発熱体であってもよいし、その一部であってもよい。
温熱ゆらぎの制御方法として制御方法1〜4を例示したが、これらを種々に変形し又は組み合わせた制御方法とすることができる。最小発熱量とする発熱体は、配設位置の順に巡回するように切り替えるほか、一端と他端を往復するように切り替えてもよい。温熱ゆらぎの制御の開始及び終了時期や、1つの発熱体を最小発熱量とする時間等は、適宜に設定したり調整したりすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1;シートヒータ、2;シート、21;背もたれ部、22;座面部、31〜35;発熱体(順に肩部、背部、腰部、尻部、腿部)、4;制御部、5;電源、A;基準発熱量より大きい発熱量の状態、B;基準発熱量の状態、C;基準発熱量より小さい発熱量の状態、D;第1の最小発熱量の状態、E;第2の最小発熱量の状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの異なる位置に配設された3以上の発熱体と、前記発熱体ごとに通電を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記発熱体のうちの少なくとも1つを所定時間最小発熱量とするように通電し、且つ前記最小発熱量とする前記発熱体をその配設位置の順に切り替えることを特徴とするシートヒータ。
【請求項2】
前記発熱体ごとに前記最小発熱量及びその継続時間が定められている請求項1記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記最小発熱量とする前記発熱体について前記最小発熱量とする直前の発熱量を所定時間増加させる請求項1又は2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
前記3以上の発熱体は、着座者の肩、背中、腰、尻及び腿に対応する前記シートの各位置に配設されている発熱体を含む請求項1乃至3に記載のシートヒータ。
【請求項5】
所定の位置に配設されている発熱体は、その他の位置に配設されている発熱体と比べて前記最小発熱量が小さい、及び前記最小発熱量の継続時間が長い、のいずれか又は両方とされる請求項4記載のシートヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224122(P2012−224122A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91329(P2011−91329)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】