説明

シートベルトリトラクタ

【課題】車両前後方向におけるシートベルトリトラクタの姿勢変化や、車両のシートの仕様に応じた車幅方向における取付角度に対応することができる、汎用性の高いシートベルトリトラクタを提供する。
【解決手段】シートベルトリトラクタ10に配置されて車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサ30は、車両の幅方向に沿った第1軸線L1を中心として揺動自在に支持されて、シートバック12の傾動時に車両の前後方向に揺動すると共に、車両の前後方向に沿った第2軸線L2を中心として回動自在に支持されることで車両の前後方向及び車幅方向の両方向において水平に保持されるセンサハウジング50と、センサハウジング50の慣性体支持面51上に支持されて所定値以上の加速度が作用したとき中立位置から変位する慣性体35と、慣性体35の変位に連動して、ロック機構24をロック側へ作動させる作動部材36、37と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトリトラクタに関し、より詳細には、リクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルトリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるシートベルト装置は、シートバック内のシートベルトリトラクタから引き出されたシートベルトによって、シートに着座する乗員を拘束して車両衝突時等に乗員を保護するためのものである。シートベルトリトラクタは、車両衝突時等に水平方向に所定値より大きな加速度が作用すると、この加速度を加速度センサが検出して、シートベルトのロック機構を作動させ、これによりシートベルトを引き出し不能にする。加速度センサに使用される慣性体としては、ボールを使用したものや自立慣性体を使用したものが知られている。
【0003】
リクライニング式シートのシートバックに、この種の加速度センサを備えたシートベルトリトラクタを装備すると、シートバックのリクライニング角度によって、シートベルトリトラクタの取付姿勢が変化してしまうため、そのままでは適正に加速度を検出できなくなる。そこで、シートバックのリクライニング角度によらず、適正に加速度を検出できるようにした加速度センサを装備したシートベルト装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。特許文献1、及び2に記載のシートベルト装置は、シートクッションから突設されたシートバック支持アームとリクライニング回転軸との連結部分に、ケーブル進退装置を配置し、シートバックが回転すると、ケーブル進退装置とシートベルトリトラクタとの間に架け渡されたケーブルにより、加速度センサの姿勢を常に鉛直方向に向けるように制御して、加速度を適正に検出可能としている。また、シートバックに対するシートベルトリトラクタの車幅方向の取付角度は、シートベルトの滑らかな引き出しを確保するため、車種や車両のシート仕様によってそれぞれ異なる。特許文献3に記載のシートベルト装置は、車両の前後方向だけでなく、車幅方向の取付角度変化にも対応して、加速度センサの姿勢を鉛直方向に向けて調整可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−79867号公報
【特許文献2】特開2000−52921号公報
【特許文献3】特開2002−2446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、及び2に記載のシートベルト装置によると、シートバックのリクライニング角度、即ち、車両前後方向におけるシートベルトリトラクタの姿勢変化には、対応可能であるが、車幅方向の取付角度の変化には対応することができない。また、特許文献3に記載のシートベルト装置は、レーザ溶着または接合によって慣性センサの回転位置を固定することにより、車幅方向の取付角度変化にも対応可能としている。慣性センサの回転位置は、シート仕様によって異なるそれぞれの角度で固定されるので、加速度センサの姿勢が常に鉛直方向に向くようにするためは、シートベルトリトラクタの取付角度に合わせた専用部品が必要となる。しかし、多種に亘る仕様に合わせて多数の専用部品を設計、製作、在庫することは、コストを増大させる要因となり、好ましくない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両前後方向におけるシートベルトリトラクタの姿勢変化や、車両のシートの仕様に応じた車幅方向における取付角度に対応することができる、汎用性の高いシートベルトリトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じて、シートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備えており、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルトリトラクタにおいて、
前記加速度センサが、
前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、
前記車両の幅方向に沿った第1軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、
前記センサカバー内で前記慣性体支持面上に支持され、前記車両の前後方向における加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、
該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して、前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、
を備え、
前記センサハウジングは、前記車両の前後方向に沿った第2軸線を中心として前記センサカバーに対して回動自在で、且つ、前記車両の幅方向において水平に保持されるように構成されることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
(2) 前記センサカバーに前記第1軸線を中心として揺動自在に取り付けられるとともに、前記センサハウジングを前記第2軸線を中心として回動自在に取り付けるセンサホルダをさらに備えることを特徴とする(1)に記載のシートベルトリトラクタ。
(3) 前記センサハウジングは、その下部に設けられたウェイトによって、前記車両の幅方向において水平に保持されることを特徴とする(1)または(2)に記載のシートベルトリトラクタ。
(4) 前記センサハウジングは、前記センサホルダと係合して、前記第2軸線を中心とした回動位置を規制することで、前記車両の幅方向において水平に保持されることを特徴とする(1)または(2)に記載のシートベルトリトラクタ。
(5) 一端が前記加速度センサに連結されたケーブルを有し、前記シートバックとシートクッションとの連結部に配置されたケーブル長さ調節機構を更に備え、
前記シートバックの回動に応じて前記ケーブル長さ調節機構から延びるケーブル長さを調節して、前記シートバックの傾斜角度に拘わらず、前記加速度センサを水平に保持することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のシートベルトリトラクタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシートベルトリトラクタによれば、シートバックのリクライニング角度、即ち、車両前後方向におけるシートベルトリトラクタの姿勢変化や、車両のシートの仕様に応じたシートバックに対するシートベルトリトラクタの車幅方向における取付角度に対応して加速度センサを水平に保持することができ、汎用性の高いシートベルトリトラクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るシートベルトリトラクタを備えたリクライニング式シートの側面図、(b)はシートベルトリトラクタを備えたリクライニング式シートの後面図である。
【図2】(a)はシートベルトリトラクタの正面図、(b)はシートベルトリトラクタの側面図である。
【図3】シートベルトリトラクタの加速度センサの分解斜視図である。
【図4】車両幅方向に15°傾斜した状態で取り付けられるシートベルトリトラクタの正面図である。
【図5】車両幅方向に−15°傾斜した状態で取り付けられるシートベルトリトラクタの正面図である。
【図6】車両の前後方向に10°傾斜した状態におけるシートベルトリトラクタの側面図である。
【図7】リクライニングにより、車両の前後方向に60°傾斜した状態のシートベルトリトラクタの側面図である。
【図8】変形例のシートベルトリトラクタの加速度センサの要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るシートベルトリトラクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明のシートベルトリトラクタ10は、リクライニング式の車両用シート11のシートバック12内に取り付けられ、シートバック12とシートクッション13との連結部15に配置されたケーブル長さ調節機構14とケーブル16を介して連結されている。
【0012】
シートベルトリトラクタ10は、シートバック12のリクライニング角度に応じて、車両の前後方向に任意の角度で傾動する。また、車両の幅方向においては、シートベルトリトラクタ10からシートベルト17を滑らかに繰り出し可能とするため、車種やシート仕様によってそれぞれ異なる所定の角度θで取り付けられる。なお、以下の説明において、シートベルトリトラクタ10の基準取付姿勢は、シートバック12の基準傾斜角に合わせて車両の前後方向に略10°傾斜する(図6参照)と共に、車両の幅方向に略15°で傾斜する(図4参照)姿勢で、シートバック12に取り付けられているものとする。
【0013】
図2(a)及び図2(b)も参照して、シートベルトリトラクタ10は、シートバック12に固定されるリトラクタフレーム21を備えており、リトラクタフレーム21には、シートベルト17を巻き取るスピンドル22が回転可能に支持されている。スピンドル22の軸方向の一端側には、スピンドル22をシートベルト17の巻取り方向に付勢するリトラクタスプリング(図示略)が連結され、該リトラクタスプリングは、カバー23に収容された状態でリトラクタフレーム21に取り付けられている。
【0014】
スピンドル22の軸方向の他端側には、シートベルト17の引出動作をロックするロック機構24の一構成要素であるステアリングホイール25と、車両に作用する水平方向の加速度を検出し、検出された加速度に応じてロック機構24を作動させる加速度センサ30とが設けられている。ステアリングホイール25は、外周面に後述する作動部材(第1センサレバー36)の爪部64と係合する複数の係合爪25aが周方向に所定の間隔で離間して設けられている。また、スピンドル22の軸方向の他端側には、シートベルト17が所定量引き出された際にスピンドル22の回転をロックする公知の自動ロック機構(ALR)26が設けられている。
【0015】
図3も参照して、加速度センサ30は、リトラクタフレーム21に固定されることでシートバック12と一体的に傾動するプーリプレート31及びセンサカバー32を備える。プーリプレート31及びセンサカバー32で囲まれた空間には、プーリプレート31及びセンサカバー32に支持されて、車両の幅方向に沿った第1軸線L1を中心として揺動自在とされた樹脂製のセンサホルダ40と、センサホルダ40に取り付けられて、車両の前後方向に沿った第2軸線L2を中心として回動自在とされた樹脂製のセンサハウジング50と、センサハウジング50に格納された慣性体である鉄製のボール35と、ボール35の動きによりロック機構24を作動させる作動部材である第1センサレバー36及び第2センサレバー37と、が配設されている。
【0016】
具体的には、センサホルダ40は、下方に凹む略矩形枠状の枠体41と、枠体41の車幅方向両端、及び車両前後方向両端から、それぞれ上方に突設する2対の突起部42、43、即ち4つの突起部42a、42b、43a、43bと、を備える。車幅方向両端に設けられた突起部42a、42bには、それぞれ軸部44(44a、44b)が車幅方向外方に突出形成されており、プーリプレート31及びセンサカバー32に形成された支持孔31a及び32aに回動自在に嵌合する。また、突起部42bは、軸部44bを中心として下方に広がる扇形に形成され、扇形部の下面には、後述するプーリ71のギヤ74と噛合する扇形歯部45が形成されている。
【0017】
即ち、センサホルダ40は、車幅方向に沿った第1軸線L1を中心として揺動可能に、プーリプレート31及びセンサカバー32によって支持されている。これにより、シートバック12が傾動した時、センサホルダ40が、第1軸線L1を回転中心として揺動することで、常にセンサホルダ40を水平状態に保持することができる。
【0018】
車両前後方向両端に設けられた突起部43a、43bには、車両の前後方向に沿った第2軸線L2上にセンサハウジング支持孔46(46a、46b)が形成されている。軸部44a、44bの中心線である第1軸線L1と、センサハウジング支持孔46a、46bの中心線である第2軸線L2とは、同一平面上にあり、互いに直交する。
【0019】
センサハウジング50は、下方に凹むすり鉢状凹面である慣性体支持面51を上面に備えた慣性体支持部52と、慣性体支持部52の車両前後方向両端からそれぞれ上方に突設する一対の突起部53a、53bと、車両前後方向一端側において、車幅方向の両端から上方に突出して設けられた一対のレバー支持部54a、54bと、を備える。
【0020】
一対の突起部53a、53bからは、それぞれ軸部55a、55bが第2軸線L2方向外方に突出形成されている。また、一対のレバー支持部54a、54bには、第1軸線L1に対して平行とされた中心軸を有するレバー支持孔57a、57bが形成されている。また、慣性体支持部52の下部には、センサハウジング50を車両の幅方向において水平に保持するための鉄製のウェイト58が設けられている。
【0021】
センサハウジング50は、軸部55a、55bを、センサホルダ40のセンサハウジング支持孔46a、46bにそれぞれ嵌合させることで、第2軸線L2を中心として回動自在に組付けられる。
【0022】
慣性体であるボール35は、センサハウジング50の慣性体支持面(すり鉢状凹面)51上に載せられており、ボール35に所定以上の水平方向の加速度を受けたとき、中立位置から変位して車両、即ち、シートベルトリトラクタ10に作用する加速度を検知する。
【0023】
第1センサレバー36は、基端部に嵌合孔61が設けられたボス62を有し、先端部は、第2センサレバー37に当接する下部爪部63、及びステアリングホイール25に当接する上部爪部64が設けられた略Y字型に形成されている。第1センサレバー36は、図2(a)及び図2(b)に示すように、ステアリングホイール25の下方に配置されており、嵌合孔61が、リトラクタフレーム21に固定された支持軸33に回動自在に嵌合する。そして、嵌合孔61を中心として上方(図2(b)において時計方向)に回動することで、上部爪部64がステアリングホイール25の係合爪25aに係合して、ステアリングホイール25の回転を規制する。即ち、ステアリングホイール25と、第1センサレバー36とにより、ロック機構24が構成される。
【0024】
第2センサレバー37は、基端部に形成された回動軸65と、先端側に形成されてボール35の上面に被さる椀部66、及び椀部66の上面に形成されたリブ67と、を備える。回動軸65は、センサハウジング50のレバー支持孔57a、57bに回動自在に嵌合する。
【0025】
第2センサレバー37は、椀部66がボール35の上側に接触すると共に、リブ67の上面に第1センサレバー36の下部爪部63が当接している。そして、加速度によってボール35が中立位置から変位すると、回動軸65を中心として回動(図2(b)において反時計方向)し、下部爪部63を介して第1センサレバー36を上方に押し上げ(図2(b)において時計方向)、ステアリングホイール25の係合爪25aに上部爪部64を係合させる。なお、第1センサレバー36と第2センサレバー37とは、ボール35が変位した際に、反対方向に回動するように回動軸線の位置が互いに逆方向に設定されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、プーリ71は、加速度センサ30と反対側において、プーリプレート31の側面に配置され、プーリケース72に設けられた支軸73に回動自在に嵌合する。プーリ71に形成されたギヤ74は、プーリプレート31の窓34から突出するセンサホルダ40の扇形歯部45と噛合している。プーリ71とプーリケース72との間には、トーションスプリング75が配置されてプーリ71を図2(b)において反時計方向に付勢している。また、プーリ71には、ケーブル16を巻き付けるためのケーブル巻付溝76が外周面に設けられると共に、ケーブル16の上端側に固定されたエンドブロック77が挿入されるエンドブロック挿入孔78が側面に設けられている。ケーブル16が進退自在に延出するケーブル収容端部79は、リブ79aがプーリケース72の溝部72aに収容されることで、プーリケース72に支持されている。
【0027】
ケーブル16の下端側は、ケーブル長さ調節機構14(図1参照)に連結されている。ケーブル長さ調節機構14は、シートバック12のリクライニング角度に応じて、ケーブル長さ調節機構14から延びるケーブル16の長さを調節可能なものであれば特に限定されない。例えば、シートバック12と共に傾動する溝カムのカム溝に摺動自在に嵌合するスライダ(いずれも図示せず)を設け、このスライダにケーブル16の下端を連結することで、ケーブル16の長さをリクライニング角度に応じて伸縮させることができる。シートバック12のリクライニング角度と、ケーブル16の伸縮長さとの関係は、カム溝の形状によって任意に設定可能であるが、ここでは詳述しない。
【0028】
このようなシートベルトリトラクタ10は、車種やシート仕様ごとに異なる基準取付姿勢、例えば、車両の前後方向に略10°傾斜する(図6参照)と共に、車両の幅方向に15°傾斜した状態で(図4参照)、或いは、逆方向に15°傾斜した状態で(図5参照)で、シートバック12に取り付けられる。なお、シートベルトリトラクタ10が、車種やシート仕様によって車幅方向で異なる角度で取り付けられるのは、スピンドル22の車幅方向の傾きをシートベルト17の引き出し方向と一致させることにより、滑らかな引き出しを可能とするためである。
【0029】
このとき、センサホルダ40に対して第2軸線L2を中心として回動自在に組み付けられているセンサハウジング50は、ウェイト58の作用によって常に垂直方向に向いているので、シートベルトリトラクタ10のシートバック12への取付角度θ(車両の幅方向)に拘わらず、慣性体支持面51は車両の幅方向において常に水平状態となっている。従って、車幅方向におけるシートベルトリトラクタ10のシートバック12への取付角度θが、加速度センサ30の感度に影響を及ぼす虞はない。なお、慣性体支持面51が水平状態とは、慣性体支持面51の基準面(例えば、慣性体支持面51の上面)が水平であることを言う。
【0030】
次に、リクライニング式シート11の傾動について図6及び図7を参照して説明する。図6は車両の前後方向に10°傾斜した標準姿勢のシートベルトリトラクタの側面図、図7はリクライニングされて60°傾斜した状態のシートベルトリトラクタの側面図である。
【0031】
シートベルトリトラクタ10は、図6に示すように、車両の前後方向における傾きが10°である基準姿勢でシートバック12に取り付けられる。この状態において、センサハウジング50の慣性体支持面51が水平状態となるように、ケーブル長さ調節機構14から延びるケーブル16の長さを調節する。即ち、ケーブル16の長さを調節することによりプーリ71が回動し、プーリ71のギヤ74に扇形歯部45が噛合するセンサホルダ40が第1軸線L1を中心として揺動することで、慣性体支持面51が水平状態に調節される。
【0032】
また、図7に示すように、シートバック12を鉛直方向から60°後方に倒す(リクライニング)と、ケーブル長さ調節機構14が、ケーブル16を引込み、トーションスプリング75のバネ力に抗してプーリ71を回動させる。これにより、扇形歯部45がギヤ74に噛合するセンサホルダ40は、第1軸線L1を中心としてシートバック12の倒れる方向と反対方向、即ち、反時計方向に、シートバック12のリクライニング角度と同じ角度だけ回動する。
【0033】
これにより、シートバック12のリクライニング角度に拘わらず、センサホルダ40は、車両前後方向で水平状態に維持され、更にこのセンサホルダ40に車幅方向で水平に支持されるセンサハウジング50(慣性体支持面51)が、車両前後方向及び車幅方向共に、水平状態に維持される。
【0034】
車両の衝突などにより、加速度センサ30に所定値より大きな水平方向の加速度が作用すると、慣性体支持面51上に載せられている慣性体であるボール35は、中立位置から変位する。これにより、第2センサレバー37が回動軸65を中心として回動(図7において反時計方向)する。この第2センサレバー37の回動は、第2センサレバー37のリブ67に当接する下部爪部63を介して第1センサレバー36に伝達され、第1センサレバー36が嵌合孔61を中心として上方(図7において時計方向)に回動する。そして、上部爪部64が、ステアリングホイール25の係合爪25aに係合して、ステアリングホイール25の回転を規制することで、シートベルト17の繰り出しを阻止して乗員を拘束する。
【0035】
このように、センサハウジング50は、車幅方向及び車両の前後方向における傾きが常に水平状態で維持されるので、加速度センサ30は、車両進行方向に対して緩やかな減速度が作用した場合や、緩減速から急減速に移行した場合など、いずれの場合であっても加速度を適正に検出して、シートベルト17のロック遅れを生じることなく、シートベルト17の引き出しをロックする。
【0036】
上記したように、本実施形態のシートベルトリトラクタ10によれば、シートベルトリトラクタ10に配設されて車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサ30が、車両の幅方向に沿った第1軸線L1を中心として揺動自在に支持され、シートバック12の傾動時に車両の前後方向に揺動するセンサハウジング50と、センサハウジング50の慣性体支持面51上に支持されて加速度が所定値以上となった時に中立位置から変位する慣性体であるボール35と、ボール35の移動に連動してロック機構24をロック側へ作動させる第1センサレバー36及び第2センサレバー37と、を備え、更に、センサハウジング50は、車両の前後方向に沿った第2軸線L2を中心として回動自在である。これにより、シートベルトリトラクタ10は、シートバック12のリクライニング角度、即ち、車両前後方向におけるシートベルトリトラクタ10の姿勢変化に対応して、常に加速度センサ30を水平に保持することができる。また、シートベルトリトラクタ10は、車両のシート仕様によりシートバック12に対して車幅方向に異なる取付角度θで取り付けられても、加速度センサ30(センサハウジング50)を水平に保持することができる。従って、シートベルトリトラクタ10は、加速度センサ30が常に加速度を適正に検出して、車両衝突時等の緊急時にシートベルト17によって乗員を確実に拘束して保護することができる。
【0037】
(変形例)
変形例のシートベルトリトラクタは、センサホルダ及びセンサハウジングの形状の一部が異なるだけで、その他の部分は実施形態のシートベルトリトラクタと同様であるので、センサホルダ及びセンサハウジングのみを図8に示すと共に、同一部分には同一符号を付して説明を省略または簡素化する。図8は変形例のシートベルトリトラクタのセンサホルダとセンサハウジングとの分解斜視図である。
【0038】
本変形例のシートベルトリトラクタ10のセンサホルダ40Aは、車両前後方向両端に設けられた突起部43a、43bの内側対向面に、センサハウジング支持孔46a、46bの周囲に、後述するハウジング側3角突起56と係合可能なホルダ側3角突起47が突出形成されている。
【0039】
また、センサハウジング50Aは、車両前後方向両端に設けられた一対の突起部53a、53bの外側面に、軸部55a、55bの周囲全周に亘って、ホルダ側3角突起47と係合可能な複数のハウジング側3角突起56が突出形成されている。
【0040】
センサハウジング50Aは、軸部55a、55bが、センサホルダ40Aのセンサハウジング支持孔46a、46bに嵌合することで組付けられる。このとき、ホルダ側3角突起47とハウジング側3角突起56とを互いに係合させることで、センサホルダ40Aに対するセンサハウジング50Aの位置(第2軸線L2上の回転方向位相)を、任意位相で決めて、固定することができる。
【0041】
例えば、図4に示すような、シートベルトリトラクタ10が、車両の幅方向に角度15°傾斜した状態で取り付けられる場合において、センサホルダ40Aにセンサハウジング50Aを組み付ける際、センサホルダ40Aの軸部44a、44bの中心を通る第1軸線L1に対して、センサハウジング50Aを、シートバック12に対するシートベルトリトラクタ10の取付角度とは逆方向に15°傾斜させた状態で、ホルダ側3角突起47とハウジング側3角突起56とを係合させて組み付ける。
【0042】
従って、センサホルダ40Aに対するセンサハウジング50Aの取付角度が、シートベルトリトラクタ10のシートバック12への取付角度と逆方向に角度15°傾斜した状態で組み付けられたシートベルトリトラクタ10を、車両の幅方向に角度15°傾斜させてシートバック12に取り付けると、図4に示すように、センサハウジング50Aの慣性体支持面51は、車幅方向で水平状態に固定されて取り付けられることになる。
【0043】
上記したように、センサホルダ40Aに対するセンサハウジング50Aの組付け傾斜角度は、ホルダ側3角突起47とハウジング側3角突起56との係合位置を変更することで、任意の角度に、且つ容易に調整することができる。換言すれば、同一のシートベルトリトラクタ10を用い、シート仕様に合わせて、センサハウジング50Aを任意の角度θで傾斜させてセンサホルダ40Aに組み付けることで、複数のシート仕様に適合するシートベルトリトラクタ10が得られる。
【0044】
このように、シートバック12に対するシートベルトリトラクタ10の取付角度θに合わせて、センサハウジング50Aを角度−θ傾けてセンサホルダ40Aに組み付けることにより、シートベルトリトラクタ10の取付角度θ(車幅方向)に拘わらず慣性体支持面51を水平状態にすることができる。即ち、シートベルトリトラクタ10を、任意の取付角度θ(車幅方向)でシートバック12に取り付けても、慣性体支持面51を水平状態に維持することができ、加速度センサ30が適正に加速度を検出することができる。
【0045】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 シートベルトリトラクタ
11 リクライニング式シート
12 シートバック
13 シートクッション
14 ケーブル長さ調節機構
15 連結部
16 ケーブル
17 シートベルト
24 ロック機構
30 加速度センサ
32 センサカバー
35 ボール(慣性体)
36 第1センサレバー(作動部材)
37 第2センサレバー(作動部材)
40 センサホルダ
50 センサハウジング
51 慣性体支持面
58 ウェイト
L1 第1軸線
L2 第2軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向における加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサによって検出される加速度に応じて、シートベルトの引出動作をロックするロック機構とを備えており、車両に設けられるリクライニング式シートのシートバックに取り付けられるシートベルトリトラクタにおいて、
前記加速度センサが、
前記シートバックと一体的に傾動するセンサカバーと、
前記車両の幅方向に沿った第1軸線を中心として前記センサカバーに対して揺動自在に支持され、前記シートバックの傾動時に前記センサカバーに対して前記車両の前後方向に揺動し、且つ、慣性体支持面を備えたセンサハウジングと、
前記センサカバー内で前記慣性体支持面上に支持され、前記車両の前後方向における加速度が所定値以上となった際に中立位置から変位する慣性体と、
該慣性体が前記車両の前後方向に移動した際に連動して、前記ロック機構をロック側へ作動させる作動部材と、
を備え、
前記センサハウジングは、前記車両の前後方向に沿った第2軸線を中心として前記センサカバーに対して回動自在で、且つ、前記車両の幅方向において水平に保持されるように構成されることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記センサカバーに前記第1軸線を中心として揺動自在に取り付けられるとともに、前記センサハウジングを前記第2軸線を中心として回動自在に取り付けるセンサホルダをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記センサハウジングは、その下部に設けられたウェイトによって、前記車両の幅方向において水平に保持されることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記センサハウジングは、前記センサホルダと係合して、前記第2軸線を中心とした回動位置を規制することで、前記車両の幅方向において水平に保持されることを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
一端が前記加速度センサに連結されたケーブルを有し、前記シートバックとシートクッションとの連結部に配置されたケーブル長さ調節機構を更に備え、
前記シートバックの回動に応じて前記ケーブル長さ調節機構から延びるケーブル長さを調節して、前記シートバックの傾斜角度に拘わらず、前記加速度センサを水平に保持することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153268(P2012−153268A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14484(P2011−14484)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平
【復代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
【復代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
【Fターム(参考)】