説明

シートリフター装置

【課題】組付け作業性を向上することができるシートリフター装置を提供すること。
【解決手段】円筒カム25のカム面と制御部材32の内輪32aとの間にくさび状の空間が複数形成され、各空間には回転体としてそれぞれ2個の第1ローラ33が収容されている。各空間に収容された2個の第1ローラ33間には、第1ガタ止めバネ34が挿入配置され、第1ガタ止めバネ34は、各第1ローラ33間に配置されたバネ部34aと、複数のバネ部34aを連結する連結部34bとから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションの高さを調整するシートリフター装置に係り、詳しくはシートリフター装置のクラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートには、シートクッションの高さを調整する車両用シートリフター装置が設けられたものがある。このようなシートリフター装置では、乗員がシート上に乗車した状態で、操作レバーの操作によりシートクッションの高さを調整可能となっている。
【0003】
シートリフター装置は、操作レバーによる正方向又は逆方向の入力トルクを入力することによってシートクッションの高さ調整を行うとともに、操作レバーを開放した状態でのシートクッションの位置を保持するクラッチ装置を備えている(特許文献1参照)。クラッチ装置は、円筒とカム部材との間に複数のローラが配置され、該ローラをカム部材に押圧することにより、操作レバーの回転の伝達と、シートクッションの下降による出力軸の回転を阻止とを行うようにしている。
【特許文献1】特開2003−93187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のクラッチ装置は、円筒とカム部材との間に形成された楔状の隙間に向かってローラを押圧するためにローラ間に挿入された板バネを有している。従って、円筒とカム部材との間に複数のローラ及び板バネを挿入しなければならないため、組付け作業性が極めて悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、組付け作業性を向上することができるシートリフター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操作部材の操作に従って出力軸を回動させ、該出力軸の回動によりシートクッションを上下方向に移動させるシートリフター装置において、前記操作部材又は前記出力軸が連結され円筒状の第1面を有する第1回動部材と、前記第1面と径方向に対向し前記第1面との間の距離が周方向に変化するように形成された複数のカム面を有する第2回動部材と、前記第1面とカム面との間に形成されるくさび状の空間に配置された複数の回転体と、前記第1面と前記カム面との距離が狭くなる端部方向へ前記回転体をそれぞれ付勢する複数のバネ部材と、前記複数のバネ部材を連結する連結部材と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、複数のバネ部材が連結部材により一体的に連結されているため、複数の回転体に対応する複数のバネ部材を同時に配置することができるため、組付け作業性を向上することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、操作部材の操作に従って出力軸を回動させ、該出力軸の回動によりシートクッションを上下方向に移動させるシートリフター装置において、前記操作部材の駆動操作時に、前記操作部材の操作力を前記出力軸に伝達可能に作動し、かつ前記操作部材の復帰時に、前記操作部材と前記出力軸との力の伝達を解除する第1クラッチ部と、前記操作手段の駆動操作時に、前記出力軸の回動を許容するように作動し、かつ前記操作手段の駆動操作以外のときに前記出力軸の回動を規制する第2クラッチ部とを備え、前記第1クラッチ部と前記第2クラッチ部のうちの少なくとも一方は、前記操作部材又は前記出力軸が連結され円筒状の第1面を有する第1回動部材と、前記第1面と径方向に対向し前記第1面との間の距離が周方向に変化するように形成された複数のカム面を有する第2回動部材と、前記第1面とカム面との間に形成されるくさび状の空間に配置された複数の回転体と、前記第1面と前記カム面との距離が狭くなる端部の方向へ前記回転体をそれぞれ付勢する複数のバネ部材と、前記複数のバネ部材を連結する連結部材と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、第1クラッチ部と第2クラッチ部とのうちの少なくとも一方に配置される複数のバネ部材が連結部材により一体的に連結されているため、複数の回転体に対応する複数のバネ部材を同時に配置することができるため、組付け作業性を向上することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記くさび状の空間には前記端部が周方向両側に形成されるとともに一対の前記回転体が配置され、前記バネ部材は一対の前記回転体を両端部の方向にそれぞれ付勢する、ことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、くさび状の空間に端部が周方向両側に形成され、一対の回転体が配置されるため、操作部材の操作により出力軸を正方向及び逆方向に回動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組付け作業性を向上することが可能なシートリフター装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示す車両用シート1は、シートクッション1aとシートクッション1aの後端上面から斜め上側に延びるシートバック1bとを備え、車両のフロアに固定されるロアレール2a,2b上に移動可能に支持される。シートクッション1aの下側には、シートクッション1aの座面の高さを調整するシートリフター装置3が設けられている。
【0014】
ロアレール2a,2bにはそれぞれアッパレール4a,4bが摺動可能に装着されている。アッパレール4a,4bには、シートクッション1aのベースフレーム5a,5bが昇降可能に支持されている。
【0015】
すなわち、アッパレール4aの前後端部にリフタリンク6a,7aの下端部が回動可能に支持され、そのリフタリンク6a,7aの上端部がベースフレーム5aの前後端部に回動可能に連結されている。同様に、アッパレール4bの前後端部にリフタリンク6b,7bの下端部が回動可能に支持され、そのリフタリンク6b,7bの上端部がベースフレーム5bの前後端部に回動可能に連結されている。また、リフタリンク7a,7bとベースフレーム5a,5bの連結部は筒状のトルクロッド9で連結されている。従って、ベースフレーム5a,5bは連動して昇降可能である。
【0016】
ベースフレーム5bにはクラッチ装置11が取着され、そのクラッチ装置11に操作部材としての操作レバー12が取着され、クラッチ装置11の出力軸にはピニオンギヤ13が設けられている。そして、操作レバー12の操作によりピニオンギヤ13が回転される。クラッチ装置11の後方において、ベースフレーム5bにはセクタギヤ14の基端側下部が回動可能に支持され、そのセクタギヤ14の先端部にはピニオンギヤ13に噛み合う歯部14aが形成されている。そして、ピニオンギヤ13の回転にともなってセクタギヤ14が回動するようになっている。セクタギヤ14の基端側上部と、リフタリンク7bの上端部は駆動リンク15で連結されている。駆動リンク15は、セクタギヤ14及びリフタリンク7bに対しそれぞれ回動可能に連結されている。従って、セクタギヤ14が回動されると、駆動リンク15を介してリフタリンク7bが回動され、トルクロッド9を介してリフタリンク7aが回動され、ベースフレーム5a,5bが連動して昇降される。
【0017】
次に、クラッチ装置11の具体的構成を説明する。
図3及び図4に示すように、クラッチ装置11は、略円筒状に形成された第1回動部材としてのケース21を備え、該ケース21は、図6に示すように、径方向外側に突出形成された複数の取付部21aにより、ベースフレーム5bに取付固定されている。ケース21の内側には出力軸22が配置され、該出力軸22はベースフレーム5bに回転自在に支持されている。
【0018】
出力軸22には、ベースフレーム5bの操作レバー12側に第2回動部材としてのロータカム23が一体形成され、ベースフレーム5bの反操作レバー12側にピニオンギヤ13が一体形成されている。ロータカム23は、略6角形板状に形成されて外周面がカム面23aとして構成され、各辺の中央位置に嵌着溝23bがそれぞれ形成されている。尚、出力軸22とロータカム23、出力軸22とピニオンギヤ13とをそれぞれ別体にて形成し一体回転するように係合してもよい。
【0019】
出力軸22には、図1及び図2に示す操作レバー12が取着される入力部材としてのレバー取付部24が回転自在に支持されている。図4に示すように、レバー取付部24は、円筒状に形成され出力軸22が挿通される第2回動部材としての円筒カム25と、該円筒カム25から径方向外側に向かって延びる板状のレバー係合部26とを備えている。レバー係合部26には、図9に示すように、操作レバー12が嵌着される複数(図において3個)の嵌着孔26aが周方向に沿って配列されている。これにより、レバー取付部24は、操作レバー12とともに回動する。出力軸22の先端部には、波型ばねや皿ばねからなる弾性体27とワッシャ28a,28bとがネジ29により取着され、該弾性体27によりレバー取付部24が軸方向に付勢されている。
【0020】
図7に示すように、円筒カム25は、軸(図において表裏方向)が直交する断面において、内周が円状に形成され、外周が略5角形状に形成されており、該円筒カム25の外周面がカム面25aを構成している。
【0021】
また、ケース21の内側には戻し部材31と制御部材32が配置されている。戻し部材31は円筒カム25の径方向外側に遊嵌されている。戻し部材31は、筒状部31aと、該筒状部31aから軸方向に沿って突出形成された複数の係合部31bとを備えている。係合部31bの数は、円筒カム25の形状に対応し、本実施形態では5個設けられ、周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0022】
戻し部材31の径方向外側には、制御部材32が遊嵌されている。制御部材32は、第1回動部材としての環状の内輪32aと、内輪32aから軸方向に沿って突出形成されるとともに周方向に沿って交互に配置された第1係合部32b及び第2係合部32cと、を備えている。内輪32aは、戻し部材31の係合部31bの径方向外側に配置されている。第1係合部32bは、ロータカム23の嵌着溝23bに所定のがたつきをもって嵌入されている。第2係合部32cは、内輪32aから径方向外側に向かって延びるとともに軸方向に沿って延びるL字状に形成され、軸方向に沿って延びる部分が第1係合部32bよりも径方向外側に配置されている。
【0023】
図4及び図7に示すように、第2面としての円筒カム25のカム面25aと第1面としての制御部材32の内輪32aの内周面と戻し部材31とロータカム23とにより囲まれるとともに、カム面25aに沿って配列され戻し部材31の係合部31bにより複数(5個)の空間が区画形成される。各空間は、内輪32aの内周面が円筒状に形成され、円筒カム25のカム面25aが多角形状に形成されているため、周方向両側に内周面とカム面25aとの距離がしだいに狭くなる端部が形成される。各空間には回転体としてそれぞれ2個の第1ローラ33が収容されている。図7に示すように、各空間に収容された2個の第1ローラ33間には、第1ガタ止めバネ34が挿入配置されている。図3に示すように、第1ガタ止めバネ34は、各第1ローラ33間に配置されたバネ部材としてのバネ部34aと、複数のバネ部34aを連結する連結部材としての連結部34bとから構成されている。第1ガタ止めバネ34は、板状のバネ部材を例えばプレス加工により形成されている。従って、複数のバネ部34aが同時に形成される。
【0024】
連結部34bは円環状又は有端環状に形成されるとともに、その内径は出力軸22が挿通される円筒カム25の内径よりもやや大きく形成され、軸方向においてロータカム23とベースフレーム5bとの間に配設されている。各バネ部34aは、ロータカム23の嵌着溝23b内に配設され、径方向外側に開口する軸方向視略コ字状に形成されている。バネ部34aは、周方向両側にそれぞれ配設された第1ローラ33を、同配設された方向に向かって付勢する。従って、各バネ部34aは、外周面が略多角形筒状に形成された円筒カム25の頂点側、即ち円筒カム25のカム面と該カム面と径方向に対向する制御部材32の内輪32a内周面とにより形成される略くさび状空間の狭い空間となる端部の方向へ第1ローラ33をそれぞれ付勢する。
【0025】
図4及び図6に示すように、第2面としてのロータカム23のカム面23aと第1面としてのケース21の内周面21bとベースフレーム5bとにより囲まれるとともに、カム面23aに沿って配列され制御部材32の第2係合部32cにより複数(6個)の空間が区画形成される。各空間は、ロータカム23のカム面23aが多角形状に形成され、ケース21の内周面21bが円筒状に形成されているため、周方向両側に内周面21bとカム面23aとの距離がしだいに狭くなる端部が形成される。各空間には回転体としてそれぞれ2個の第2ローラ35が収容されている。図6に示すように、各空間に収容された2個の第2ローラ35間には、第2ガタ止めバネ36が挿入配置されている。図3に示すように、第2ガタ止めバネ36は、各第2ローラ35間に配置されたバネ部材としてのバネ部36aと、複数のバネ部36aを連結する連結部材としての連結部36bとから構成されている。第2ガタ止めバネ36は、第1ガタ止めバネ34と同様に、板状のバネ部材を例えばプレス加工により形成され、複数のバネ部36aが同時に形成される。
【0026】
連結部36bは円環状又は有端環状に形成されるとともに、その内径は図4に示すように出力軸22の支持部22aが挿通される大きさに形成され、軸方向において円筒カム25とロータカム23との間に配設されている。各バネ部36aは、径方向外側に開口する軸方向視略U字状に形成されている。各バネ部36aは、外周面が略多角形筒状に形成されたロータカム23の頂点側、即ちロータカム23のカム面と該カム面と径方向に対向するケース21の内周面とにより形成される略くさび状空間の狭い空間となる端部の方向へ第2ローラ35をそれぞれ付勢する。
【0027】
図3に示すように、ケース21とレバー取付部24と戻し部材31には、それぞれフック部21c,24a,31cが径方向に重なるように形成されている。図8に示すように、各フック部21c,24a,31cは、戻しバネ37,38と係合し該戻しバネ37,38の弾性力により径方向に重なる位置に回動されるように付勢されることで、レバー取付部24と戻し部材31とをケース21のフック部21cに応じた中立位置に戻すために設けられている。
【0028】
図4に示すように、ベースフレーム5bはクラッチ装置11を支持する位置に補助フレーム16が取着される。この補助フレーム16はその基端部がベースフレーム5bに例えばボルト等で固定され、先端部はベースフレーム5bに対し所定間隔を隔てて平行となるように延設されている。
【0029】
補助フレーム16には貫通孔が形成されて第一の軸受部17が形成され、ベースフレーム5bには第一の軸受部17と中心線が重なるように貫通孔が形成されて第二の軸受部19が形成されている。第二の軸受部19の径は、第一の軸受部17の径より大きい径で形成されている。
【0030】
出力軸22はその中間部が第二の軸受部19に回転可能に支持され、先端部が第一の軸受部17に回転可能に支持されている。また、補助フレーム16とベースフレーム5bとの間で、ピニオンギヤ13にセクタギヤ14の歯部14aが噛み合わされている。
【0031】
図4に示すように、ピニオンギヤ13の側方において、出力軸22の先端部側面には互いに平行な2つの平面部22cが形成されている。出力軸22の先端部周囲にスパイラルスプリング41が配設され、そのスパイラルスプリング41の内周側端部26aは略平行に対向するように形成されている。図5に示すように、スパイラルスプリング41の内周側端部41a内側に平面部22cが当接するように出力軸22の先端部が嵌入され、スパイラルスプリング41の外周側端部41bが補助フレーム16とベースフレーム5bとの間に支持される掛止軸42に係合されている。従って、スパイラルスプリング41の付勢力はベースフレーム5bを支点として出力軸22に所要の回転トルクを付与し、そのトルクはベースフレーム5a,5bを上昇させる方向に作用する。
【0032】
次に、上記のようなクラッチ装置11を備えたシートリフター装置の動作を説明する。
操作レバー12をシート上昇方向に回動させると、操作レバー12が取着されたレバー取付部24が一体的に回動する。このレバー取付部24の回動により、図7に円筒カム25が例えば時計方向に回動し、円筒カム25のカム面25aと制御部材32の内輪32aとの間に配設された第1ローラ33が楔隙間に係合する(噛み込む)。これにより、円筒カム25の回動が制御部材32に伝達される。
【0033】
制御部材32が回動すると、図6に示す制御部材32の第1係合部32bがロータカム23の嵌着溝23b側面と係合し、ロータカム23が図において時計方向に回動する。この時、ロータカム23のカム面23aとケース21の内周面との間に配設された第2ローラ35は、第2係合部32cによりロータカム23の回動方向に押されて移動するため、楔隙間に係合しない(噛み込まない)。つまり、出力軸22は操作レバー12の操作に従って回動する。これにより、出力軸22のピニオンギヤ13と歯合するセクタギヤ14が回転される。セクタギヤ14の回動に基づいて、駆動リンク15を介してリフタリンク7a,7bが回動され、ベースフレーム5a,5bが上昇する。従って、シートクッション1aが上昇する。このとき、スパイラルスプリング41の付勢力が出力軸22の回転を助勢する方向に作用するため、操作レバー12の操作力が軽減される。
【0034】
操作レバー12を解放すると、シート1の重量及び乗員の体重による負荷によって、図6において、出力軸22が反時計方向に回動する。この時、出力軸22とロータカム23が一体回動し、このロータカム23の回動により、上記と同様に、ロータカム23のカム面23aとケース21の内周面との間に配設された第2ローラ35が楔隙間に係合する(噛み込む)。ケース21はベースフレーム5bに固定されているため、出力軸22の回動が阻止される。
【0035】
上記操作レバー12の解放により、戻し部材31とレバー取付部24は戻しバネ37,38により中立方向へ回動する。この時、第1ローラ33は、戻し部材31の係合部31bによって戻し部材31及びレバー取付部24の回動方向と同方向に移動し、噛み込まないため、中立方向への回動は規制されない。
【0036】
クラッチ装置11は、シート上昇方向に回動させた操作レバー12を中立方向へ回動する場合も、上記の操作レバー12を解放したときと同様に動作するため、該操作レバー12の回動が規制されない。尚、操作レバー11をシート下降方向に回動した場合、回動方向は異なるが上記と同様に動作するため、説明を省略する。
【0037】
即ち、上記のように形成及び配置されたクラッチ装置11において、図3に示すように、レバー取付部24、戻し部材31、第1ローラ33、第1ガタ止めバネ34、制御部材32(内輪32a)により第1クラッチ部51が構成される。そして、制御部材32(第1係合部32b及び第2係合部32c)、ロータカム23、第2ローラ35、第2ガタ止めバネ36、ケース21により第2クラッチ部52が構成される。そして、第1クラッチ部51は、操作レバー12の正方向又は逆方向の回転を第2クラッチ部52に伝達し、第2クラッチ部は、該第1クラッチ部からの入力トルクを出力軸22に伝達するとともに、シートクッション1aの下降による出力軸22の回転を阻止する。
【0038】
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)円筒カム25のカム面25aと制御部材32の内輪32aとの間にくさび状の空間が複数形成され、各空間には回転体としてそれぞれ2個の第1ローラ33が収容されている。各空間に収容された2個の第1ローラ33間には、第1ガタ止めバネ34が挿入配置され、第1ガタ止めバネ34は、各第1ローラ33間に配置されたバネ部34aと、複数のバネ部34aを連結する連結部34bとから構成されている。同様に、ロータカム23のカム面23aとケース21の内周面21bとの間にくさび状の空間が複数形成され、各空間には回転体としてそれぞれ2個の第2ローラ35が収容されている。各空間に収容された2個の第2ローラ35間には、第2ガタ止めバネ36が挿入配置され、第2ガタ止めバネ36は、各第2ローラ35間に配置されたバネ部36aと、複数のバネ部36aを連結する連結部36bとから構成されている。
【0039】
従って、複数のバネ部34a,36aをローラ33,35間に配置する手間が少なくなり、組付け作業性を向上することができる。また、各バネ部34a,36aは小さいため、取り扱うことが難しいが、連結部34b,36bに一体化されたガタ止めバネ34,36は大きくて扱いやすいため、区道今朝行政を向上することができる。
【0040】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態における第1ガタ止めバネ34の形状を適宜変更してもよい。例えば、図10(a)に示すように、ガタ止めバネ61のバネ部61aを折畳みにより形成してもよい。また、図10(b)に示すように、ガタ止めバネ62のバネ部62aを径方向内側に向かって折り曲げて形成してもよい。また、図10(c)に示すように、ガタ止めバネ63のバネ部63aを、周方向一方に向かって折り曲げて形成してもよい。また、図10(d)に示すように、ガタ止めバネ64の複数のバネ部64aを周方向の異なる方向から屈曲形成することにより形成してもよい。尚、第1ガタ止めバネ34と同様に、第2ガタ止めバネ36の形状を、例えば図10(a)〜(d)のように適宜変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、第1ガタ止めバネ34と第2ガタ止めバネ36の両方において、バネ部34a,36aを連結部34b,36bにより一体化したが、両ガタ止めバネ34,36の何れか一方のみを一体化してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、クラッチ装置11のケース21をベースフレーム5bに直接取付固定したが、出力軸22を支持するベースを設け、該ベースにケース21を固定してクラッチ装置11をユニット化してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、ロータカム23と固定部材としてのケース21、制御部材32と円筒カム25との間に回転体としてのローラ33,35を配置して回動を伝達するようにしたが、回転体の形状を適宜変更してもよい。例えば、球を用いてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、スパイラルスプリング41によりシートクッション1aを上昇させるように付勢したが、トーションバー等の他の弾性体により付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】車両用シートの斜視図。
【図2】シートリフター装置の斜視図。
【図3】クラッチ装置の分解斜視図。
【図4】クラッチ装置の断面図。
【図5】スパイラルスプリングの正面図。
【図6】図4のA−A線断面図。
【図7】図4のB−B線断面図。
【図8】戻しバネの説明図。
【図9】レバー取付部の説明図。
【図10】(a)〜(d)は別例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
1…車両用シート、1a…シートクッション、3…シートリフター装置、21…固定部材としてのケース、22…出力軸、23…ロータカム、23a…カム面、24…入力部材としてのレバー取付部、25…円筒カム、25a…カム面、31…戻し部材、32…制御部材、33…ローラ、34…第1ガタ止めバネ、34a…バネ部、34b…連結部、35…ローラ、36…第2ガタ止めバネ、36a…バネ部、36b…連結部、51…第1クラッチ部、52…第2クラッチ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の操作に従って出力軸を回動させ、該出力軸の回動によりシートクッションを上下方向に移動させるシートリフター装置において、
前記操作部材又は前記出力軸が連結され円筒状の第1面を有する第1回動部材と、前記第1面と径方向に対向し前記第1面との間の距離が周方向に変化するように形成された複数のカム面を有する第2回動部材と、前記第1面とカム面との間に形成されるくさび状の空間に配置された複数の回転体と、前記第1面と前記カム面との距離が狭くなる端部方向へ前記回転体をそれぞれ付勢する複数のバネ部材と、前記複数のバネ部材を連結する連結部材と、
を備えたことを特徴とするシートリフター装置。
【請求項2】
操作部材の操作に従って出力軸を回動させ、該出力軸の回動によりシートクッションを上下方向に移動させるシートリフター装置において、
前記操作部材の駆動操作時に、前記操作部材の操作力を前記出力軸に伝達可能に作動し、かつ前記操作部材の復帰時に、前記操作部材と前記出力軸との力の伝達を解除する第1クラッチ部と、
前記操作部材の駆動操作時に、前記出力軸の回動を許容するように作動し、かつ前記操作部材の駆動操作以外のときに前記出力軸の回動を規制する第2クラッチ部とを備え、
前記第1クラッチ部と前記第2クラッチ部のうちの少なくとも一方は、前記操作部材又は前記出力軸が連結され円筒状の第1面を有する第1回動部材と、前記第1面と径方向に対向し前記第1面との間の距離が周方向に変化するように形成された複数のカム面を有する第2回動部材と、前記第1面とカム面との間に形成されるくさび状の空間に配置された複数の回転体と、前記第1面と前記カム面との距離が狭くなる端部の方向へ前記回転体をそれぞれ付勢する複数のバネ部材と、前記複数のバネ部材を連結する連結部材と、
を備えたことを特徴とするシートリフター装置。
【請求項3】
前記くさび状の空間には前記端部が周方向両側に形成されるとともに一対の前記回転体が配置され、前記バネ部材は一対の前記回転体を両端部の方向にそれぞれ付勢する、ことを特徴とする請求項1又は2記載のシートリフター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−135847(P2007−135847A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333264(P2005−333264)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】