説明

シートリフター

【課題】シートの幅方向の寸法バラツキがあっても、ロッドをリンクに取り付けることができるシートリフターを提供することを課題とする。
【解決手段】シートの幅方向の一方の側に設けられたチルトリンク(第1リンク)51と、シートの幅方向の他方の側に設けられたチルトリンク(第2リンク)151と、一端部がチルトリンク51に取り付けられ、他端部がチルトリンク151に取り付けられ、チルトリンク51の動きをチルトリンク151に伝達するロッド321とを有し、チルトリンク51、チルトリンク151の少なくとも一方のリンクに、該リンクの回転平面と直交する方向に延出し、ロッド321の周面と当接可能な第1面55、155を形成し、第1面55、155にロッド321の周面を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンクを用いてシートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフターに関する。
【背景技術】
【0002】
リンクを用いてシートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフターでは、シートの幅方向の一方の側のリンクの動きをロッドを介してシートの幅方向の他方の側のリンクへ伝達するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−283900号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ロッドを例えばリンクに取り付ける場合、ロッドの端面がリンクに溶接で取り付けられている。
しかし、シートの機構部品の寸法精度、組み付け精度のバラツキにより、シートの幅方向の寸法バラツキが発生し、ロッドの端面をリンクに溶接できない場合がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、シートの幅方向の寸法バラツキがあっても、ロッドをリンクに取り付けることができるシートリフターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、リンクを用いてシートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフターにおいて、シートの幅方向の一方の側に設けられた第1リンクと、シートの幅方向の他方の側に設けられた第2リンクと、一端部が前記第1リンクに取り付けられ、他端部が前記第2リンクに取り付けられ、前記第1リンクの動きを前記第2リンクに伝達するロッドとを有し、前記第1リンク、第2リンクの少なくとも一方のリンクに、該リンクの回転平面と直交する方向に延出し、前記ロッドの周面と当接可能な第1面を形成し、該第1面に前記ロッドの周面を取り付けたことを特徴とするシートリフターである。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記ロッドの周面の周方向で、前記第1面との当接部分と異なる部分で当接する第2面を前記第1面が形成されたリンクに形成したことを特徴とする請求項1記載のシートリフターである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1−2に係る発明によれば、前記第1リンク、第2リンクの少なくとも一方のリンクに、該リンクの回転平面と直交する方向に延出し、前記ロッドの周面と当接可能な第1面を形成し、該第1面に前記ロッドの周面を取り付けたことにより、シートの幅方向の寸法バラツキがあっても、ロッドをリンクに取り付けることができる。
【0008】
特に、シートは、第1の生産現場で、シートの前後方向の位置調整を行うシートトラック、シートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフター等の機構を組み立て、第2の生産現場でクッション材やシート表皮を組み付けている。第1の生産現場では、シートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッドまで組み付けた組立体を第2の生産現場へ輸送しているが、組立体の幅方向の中央部分は空間が多く、輸送効率が悪い。よって、第1の工場から第2の工場へは、シートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッドをバラバラに送り、第2の工場でシートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッド組み立てることが提唱されている。このような場合、第2工場での組み立ての際に、シートの幅方向の寸法バラツキは頻繁に発生するが、本発明によれば、バラツキがあっても、ロッドをリンクに取り付けることができる。
【0009】
又、第1面がリンクに力が作用する2つの点の間にある場合、リンクの剛性が低下するが、第1面にはロッドの周面が取り付けられるので、剛性の低下を防止できる。
請求項2に係る発明によれば、前記ロッドの周面の周方向で、前記第1面との当接部分と異なる部分で当接する第2面を前記第1面が形成されたリンクに形成したことにより、ロッドの周面の周方向で、第1面、第2面の2カ所でロッドを保持するので、ロッドの位置決め、取り付けが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1−図4を用いて説明する。図1は本形態例の発明部分を説明する分解斜視図、図2は本形態例のシートの内部から見たアウタ側の機構を説明する図、図3は本形態例のシートの内部から見たインナ側の機構を説明する図、図4は図1のA方向矢視図である。
【0011】
最初に、図2−3を用いて、本形態例のシートリフターを有するシートの全体構成を説明する。
図2に示すように、アウタ側のシートトラック1は、フロアに対してブラケット3,5を介して設けられるロアレール7と、ロアレール7に対して移動可能に係合するアッパレール9とからなっている。
【0012】
又、図3に示すように、インナ側のシートトラック101は、フロアに対してブラケット103,105を介して設けられるロアレール107と、ロアレール107に対して移動可能に係合するアッパレール109とからなっている。尚、本形態例では、アッパレール9,109側には、図示しないモータが設けられ、アッパレール9,109内に、アッパレール9,109の長手方向に沿って前記モータによって回転駆動されるねじ棒が設けられている。ロアレール7,107内には、前記ねじ棒に螺合するナット部材が取り付けられ、前記モータを駆動することにより、アッパレール9,109はロアレール7,107に対して移動するようになっている。
【0013】
図2、図3に示すように、アッパレール9,109上には、ベース11、111が設けられている。
図2に示すように、ベース11の前部には、ピン13を用いてフロントリンク15の一方の端部側が回転可能に設けられている。ベース11の後部には、ピン17を用いてリアリンク19の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。フロントリンク15の他方の端部側は、ピン21を用いて、シートクッションのアウタ側のロアアーム(サイドフレーム)23の前部に回転可能に取り付けられている。リアリンク19の他方の端部側は、ピン25を用いてシートクッションのロアアーム(サイドフレーム)23の後部に回転可能に取り付けられている。よって、ベース11と、フロントリンク15と、ロアアーム23と、リアリンク19とで、四節回転機構が形成されている。
【0014】
同様に、図3に示すように、ベース111の前部には、ピン113を用いてフロントリンク115の一方の端部が回転可能に設けられている。ベース111の後部には、ピン117を用いてリアリンク119の一方の端部が回転可能に取り付けられている。フロントリンク115の他方の端部側は、ピン121を用いてインナ側のロアアーム123の前部に回転可能に取り付けられている。リアリンク119の他方の端部側は、ピン125を用いてロアアーム123の後部に回転可能に取り付けられている。よって、ベース111と、フロントリンク115と、ロアアーム123と、リアリンク119とで、四節回転機構が形成されている。
【0015】
又、図2に示すように、リアリンク19には、ピン25を中心とするセクタギヤ19aが形成されている。ロアアーム23には、セクタギヤ19aに螺合するピニオン27が設けられている。このピニオン27は、ロアアーム23に設けられた図示しないモータによって回転駆動されるようになっている。
【0016】
ロアアーム23には、リクライニング機構31を介して、シートバックのアウタ側のアッパアーム33が設けられている。図3に示すようにロアアーム123は、リクライニング機構131を介して、シートバックのインナ側のアッパアーム133が設けられている。
【0017】
アッパアーム33の上端側とアッパアーム133の上端側は、図示しないフレームより接続され、シートバックフレームを構成している。更に、図1、図2に示すように、ロアアーム23とロアアーム123との間には、ピン25、ピン125が嵌合するロッド29が設けられている。シートバックフレーム、ロッド29等のアウタ側とインナ側との接続される部品により、ロアアーム23とロアアーム123とは一体化されている。よって、図示しないモータによってピニオン27が回転駆動されると、リアリンク19はベース11に対して回転し、ロアアーム23、123はベース11に対して昇降するようになっている。
【0018】
シートクッションの前部には、シートクッションの前部を傾斜させるチルト機構が設けられている。
図2に示すように、ロアアーム23の前部には、チルトリンク(第1リンク)51が配置される。このチルトリンク51は、図1に示すように、中間部に穴51aが形成され、図2に示すようにピン21を用いてロアアーム23に回転可能に設けられている。チルトリンク51の上端部側には穴51bが形成され、下端部側には、穴51cが形成されている。
【0019】
図3に示すように、ロアアーム123の前部には、チルトリンク(第2リンク)151が配置される。このチルトリンク151は、図1に示すように、中間部に穴151aが形成され、図3に示すようにピン121を用いてロアアーム123に回転可能に設けられている。チルトリンク151の上端部側には穴151bが形成されている。
【0020】
図2、図3に示すように、ロアアーム23、ロアアーム123の上部には、内側からシートクッションを押し上げるチルトパン201が設けられている。チルトパン201の回転基端部側には、ロアアーム23の側面に延出する基端部側アーム203と、ロアアーム123の側面に延出する基端部側アーム205とが形成されている。基端部側アーム203、205には、長穴203a、205aが形成されている。そして、長穴203aを挿通するピン207により、基端部側アーム203はロアアーム23に回転可能に取り付けられている。又、長穴205aを挿通するピン209により、基端部側アーム205はロアアーム123に回転可能に取り付けられている。
【0021】
チルトパン201の回転半径方向の中間部には、ロアアーム23の側面に延出する中間部側アーム211と、ロアアーム123の側面に延出する中間部側アーム213とが形成されている。中間部側アーム211、213には、穴211a、213aが形成されている。そして、中間部側アーム211の穴211aと、チルトリンク51の穴51bとに係合するピン221により、中間部側アーム211はチルトリンク51に回転可能に取り付けられている。又、中間部側アーム213の穴213aと、チルトリンク151の穴151bとに係合するするピン223により、中間部側アーム213はチルトリンク151に回転可能に取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、チルトリンク51の下部側には、穴51cが形成されている。図2、図4に示すように、ロアアーム23には、ブラケット301を介してチルトモータ303が設けられている。このチルトモータ303の出力軸には、ねじ棒305と図示しないナットとからなる変換機構307が設けられ、ねじ棒305は変換機構307のハウジングに対して進退するようになっている。そして、図1に示すように、ねじ棒305の先端部には、穴305aが形成され、図2に示すように、ねじ棒305の穴305a、チルトリンク51の穴51cを挿通するピン311を用いて、ねじ棒305とチルトリンク51とは接続されている。
【0023】
図1に示すように、チルトリンクの穴51a、51bが設けられる面と、ねじ棒が取り付けられる穴51cが設けられる面とは同一平面上になく、オフセットしている。これは、ロアアーム23の内側の面に設けたチルトモータ303、変換機構307の機構的制限により、ねじ棒305とロアアーム23との間に所定の間隔が必要となるからである。このオフセットを実現するために、チルトリンク51には、リンクの回転平面と直交する方向に延出する第1面55が形成されている。
【0024】
又、チルトリンク151にも、リンクの回転平面(図1において、矢印C方)と直交する方向に延出する第1面155が形成されている。
そして、チルトリンク51の第1面55には、ロッド321の一方の側の周面が、チルトリンク151の第1面155には、ロッド321の他方の側の周面が溶接により取り付けられている。
【0025】
そして、図2、図3に示すように、チルトモータ303が駆動されると、ねじ棒305が進退する。ねじ棒305の進退により、チルトリンク51が穴51a(ピン21)を中心に回転する。チルトリンク51の回転は、ロッド321を介してチルトリンク151へ伝達され、チルトリンク151は穴151a(ピン121)を中心に回転する。チルトリンク51、チルトリンク151が回転することにより、チルトパン201前部側がピン207,ピン209を支点として昇降し、シートクッションの前部が傾斜する。
【0026】
尚、本形態例では、チルトリンク51には、ロッドの321周面の周方向で、第1面55との当接部分と異なる部分で当接する第2面57を第1面55に隣接して形成した。チルトリンク151には、ロッドの321周面の周方向で、第1面155との当接部分と異なる部分で当接する第2面157を第1面155に隣接して形成した。
【0027】
上記構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)チルトリンク51,151に第1面55,155を形成したことにより、シートの幅方向の寸法バラツキがあっても、ロッド321をチルトリンク51,151に取り付けることができる。
【0028】
特に、シートは、第1の生産現場で、シートの前後方向の位置調整を行うシートトラック1、101、シートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフター等の機構を組み立て、第2の生産現場でクッション材やシート表皮を組み付けている。第1の生産現場では、シートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッドまで組み付けた組立体を第2の生産現場へ輸送しているが、この組立体の幅方向の中央部分は空間が多く、輸送効率が悪い。よって、第1の工場から第2の工場へは、シートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッドをバラバラに送り、第2の工場でシートの幅方向の一方の側の機構,他方の側の機構,これらの機構を連結するロッド組み立てることが提唱されている。このような場合、第2工場での組み立ての際に、シートの幅方向の寸法バラツキは頻繁に発生するが、本形態例によれば、バラツキがあっても、ロッド321をチルトリンク51,151に取り付けることができる。
(2)チルトリンク51では、第1面55がチルトリンク51に力が作用する2つの点(穴51bと穴51c)の間にあり、チルトリンク51の剛性が低下するが、第1面55にはロッド321の周面が取り付けられるので、剛性の低下を防止できる。
(3)チルトリンク51,151に第2面57,157を形成したことにより、ロッド321の周面の周方向で、第1面55,155、第2面57,157の2カ所でロッド321を保持するので、ロッド321の位置決め、取り付けが容易となる。
【0029】
尚、本発明は、上記形態例に限定するものではない。上記形態例では、チルトリンク51,151に第1面55,155を設けたが、チルトリンク51だけ第1面55を形成し、ロッド321の端面をチルトリンク151に取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本形態例の発明部分を説明する分解斜視図である。
【図2】本形態例のシートの内部から見たアウタ側の機構を説明する図である。
【図3】本形態例のシートの内部から見たインナ側の機構を説明する図である。
【図4】図1のA方向矢視図である。
【符号の説明】
【0031】
51,151 チルトリンク
55,155 第1面
321 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクを用いてシートクッションの高さや傾斜を変えるシートリフターにおいて、
シートの幅方向の一方の側に設けられた第1リンクと、
シートの幅方向の他方の側に設けられた第2リンクと、
一端部が前記第1リンクに取り付けられ、他端部が前記第2リンクに取り付けられ、前記第1リンクの動きを前記第2リンクに伝達するロッドとを有し、
前記第1リンク、第2リンクの少なくとも一方のリンクに、該リンクの回転平面と直交する方向に延出し、前記ロッドの周面と当接可能な第1面を形成し、
該第1面に前記ロッドの周面を取り付けたことを特徴とするシートリフター。
【請求項2】
前記ロッドの周面の周方向で、前記第1面との当接部分と異なる部分で当接する第2面を前記第1面が形成されたリンクに形成したことを特徴とする請求項1記載のシートリフター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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