説明

シート供給システム、シート供給装置および画像形成システム

【課題】共通のフレーム構造体を使用して小容量および大容量の各トレイを備える仕様の製品を製作し、いずれのトレイからもピックアップ部材により送り出されるシートの方向を略同じにし、シートの供給を良好に行う。
【解決手段】画像形成部を支持した一対の本体フレーム21間に、第1トレイを配置することで、一つの仕様の画像形成装置を製作する。また、一対の本体フレーム21の下に拡張部材200を取り付けることで、第1トレイよりも大容量の第2トレイを配置した他の仕様の画像形成装置を製作する。また、第2トレイ内の圧板132を第1トレイ内の圧板32よりもピックアップローラ33から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持したことで、シートが少ないときの両トレイ内の圧板の角度を略同じにし、両トレイからピックアップローラ33により送り出されるシートの方向を略同じにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ内のシートを送り出すためのシート供給システム、シート供給装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置などにおいて用紙などのシートを送り出すシート供給システムとして、共通の装置本体を使用して小容量の第1トレイを備える製品と、大容量の第2トレイを備える製品とを製作することが知られている(特許文献1参照)。この技術では、小容量の第1トレイを使用する仕様の製品には、装置本体の下部に設けた台板枠体の内側の空間に小容量の第1トレイを挿入し、大容量の第2トレイを使用する仕様の製品には、台板枠体の下に補助枠体を連結して台板枠体と補助枠体とで構成される内側の空間に大容量の第2トレイを挿入するようにしている。
【0003】
またこの技術では、各トレイ内の用紙を上方のピックアップローラに向け上昇させるための機構を、小容量と大容量の各トレイで異なる機構を用いている。具体的には、小容量タイプでは、第1トレイ内の用紙を圧板とバネを用いてピックアップローラに向け上昇させ、大容量タイプでは、第2トレイ内の用紙を、圧板を水平な姿勢で上下に平行移動させる機構を用いてピックアップローラに向け上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−120203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、用紙をピックアップローラに接近させる構造を小容量タイプと大容量タイプとで同じ構造、具体的には圧板を回動させることで圧板の先端側で用紙をピックアップローラに向け上昇させる構造にすることを考えている。しかしながら、圧板を回動させる構造において各トレイの圧板の長さを同じにすると、大容量タイプの深い第2トレイにおける圧板の最大角度(用紙がないときの角度)が、小容量タイプの浅い第1トレイにおける圧板の最大角度よりも大きくなる。これにより、大容量タイプにおいて第2トレイ内の用紙が少なくなった場合には、ピックアップローラと圧板の間から排出される用紙先端が小容量タイプのときよりも上方を向く。つまり、小容量タイプのときと小容量タイプのときとで、ピックアップローラの下流側に配置される分離部(たとえば分離ローラと分離パッド間のニップ部)に向けての用紙の供給角度が異なり、用紙の分離性能が変わったり、用紙が経路に衝突したりするなど、給紙が良好に行えなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、回動する圧板を備えた小容量および大容量の各トレイを備えるシート供給システムにおいて、いずれのトレイからもシートの供給を良好に行うことを目的とする。また小容量のトレイを装着できる本体フレームに小容量のトレイに代えて大容量のトレイを装着する装置において、大容量のトレイからのシートの供給を、小容量のトレイ仕様のものと同様に良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、所定枚数のシートを収容可能な第1トレイと、当該第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能な第2トレイとを備え、前記第1トレイと前記第2トレイとのいずれかを共通のピックアップ部材に対して装着し、前記各トレイ内のシートを前記ピックアップ部材により送り出すシート供給システムであって、前記各トレイは、前記シートを積載し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、共通のピックアップ部材に対して深さの異なる第1トレイと第2のトレイのいずれかを使用するシート供給システムにおいて、第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持したことで、シートが少ないときの第1トレイ内の圧板の角度に対して第2トレイ内の圧板の角度が著しく大きくなることがなく、いずれのトレイからも回動する圧板によってシートをピックアップ部材に同様に接近させ、ピックアップ部材により送り出されるシートの方向が略同じになる。したがって、いずれのトレイからでもシートの供給を良好に行うことができる。
【0009】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記各トレイから送り出されたシートに対し処理を行う処理部を支持し、前記処理部の下部に前記第1トレイを収容する収容空間を挟んで位置する一対の本体フレームと、前記一対の本体フレームの下に取り付け可能であり、前記収容空間を前記第2トレイを収容可能な大きさまで広げるための拡張部材とをさらに備え、前記ピックアップ部材は前記本体フレームに支持されている。
【0010】
この構成によれば、第1トレイを使用する装置では、一対の本体フレーム間に挟まれる収容空間に第1トレイを収容し、第2トレイを使用する装置では、一対の本体フレーム下に拡張部材を取り付けて、一対の本体フレーム間および拡張部材間に挟まれる収容空間に第2トレイを収容する。そして、いずれのトレイを使用した場合も、シートを共通のピックアップ部材により処理部へ送り出す。このとき、上記のように、いずれのトレイからでも送り出し方向が略同じであるから、処理部へシートを良好に供給することができる。さらに、第1トレイ全体および第2トレイの上部は、一対の本体フレーム間に位置するから、各トレイと処理部との相対位置を決めやすく、各トレイから処理部へのシートの供給を正確に行うことができる。
【0011】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記ピックアップ部材を、前記一対の本体フレーム間に支持され、前記各圧板に積載された前記シートの上面と略平行な軸線の周りに回転可能で、かつ外周で前記シートの上面と接触可能な回転部材とする。これによれば、各圧板の回動によってシートの上面を回転部材に接触させたとき、シートが少ない状態において回転部材の外周に接するシートの向きを略同じにでき、回転部材の回転によってそれぞれ略同様に送り出すことができる。
【0012】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記回転部材から送り出し方向下流側の位置に、当該回転部材により送り出されたシートを挟んで1枚ずつに分離する分離部の少なくとも一方を、前記一対の本体フレーム間に支持している。これによれば、上記のように各トレイから略同様の向きに送り出されたシートが共通の分離部に供給され、分離部において良好に1枚ずつに分離される。
【0013】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記第2トレイ内の圧板を、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向において長くする。これによれば、上記のように第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持することを、簡易な構成で実現できる。
【0014】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とを、略同じとする。これによれば、シートが少ないとき、両トレイからピックアップ部材により送り出されるシートの角度を略同じにでき、いずれのトレイからでもシートの供給を良好に行うことができる。
【0015】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記第1トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第1トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比と、前記第2トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第2トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比が略同じである。これによれば、上記のように両圧板の傾斜角度を略同じとする構成を、簡易な構成で実現できる。
【0016】
また、本発明は、上記構成において好ましくは、前記各トレイには、それぞれの圧板を、その端部を前記ピックアップ部材に対し接近させる方向に駆動する駆動機構が設けられ、前記各トレイの駆動機構は、それぞれの圧板の端部の前記ピックアップ部材に対する接近速度を略同じとする。これによれば、各トレイにおいて、シートがピックアップ部材に接近する際の圧力を揃え、シートの送り出しを良好にすることができる。また、このために、トレイの種類に応じて各駆動機構の制御を切り替える必要がないので、装置の構成を簡易化することができる。
【0017】
さらに、本発明は、前記課題を解決するため、シート供給装置として以下の構成を採用する。
このシート供給装置は、所定枚数のシートを収容可能な第1トレイを収容可能な収容空間を下部間に挟むように配置される一対の本体フレームと、前記一対の本体フレームの下に取り付けられ、前記収容空間を前記本体フレームの下方へ広げる一対の拡張部材と、前記第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能で、前記一対の本体フレームの下部間と前記一対の拡張部材間とにまたがった収容空間に配置される第2トレイと、前記一対の本体フレームの下部間の収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記各トレイ内のシート上面に接触可能なピックアップ部材とを備え、前記各トレイは、前記シートを載置し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1トレイを装着可能な一対の本体フレームに、拡張部材を取り付けることで、第1トレイに代えてそれよりも大容量の第2トレイを装着できるようにし、共通のピックアップ部材を使用して第2トレイからシートを送り出す。このとき、第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持したことで、シートが少ないときの第1トレイ内の圧板の角度に対して第2トレイ内の圧板の角度が著しく大きくなることがなく、第2トレイからピックアップ部材により送り出されるシートの方向を第1トレイの場合と略同じにすることができる。したがって、第2トレイからでもシートの供給を良好に行うことができる。さらに、第1トレイ全体および第2トレイの上部は、一対の本体フレーム間に位置するから、各トレイと処理部との相対位置を決めやすく、各トレイから処理部へのシートの供給を正確に行うことができる。
【0019】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記ピックアップ部材を、前記収容空間の上方において前記一対の本体フレーム間に支持され、前記圧板に載置された前記シートの上面と略平行な軸線の周りに回転可能で、かつ外周で前記シートの上面と接触可能な回転部材とする。これによれば、各圧板の回動によってシートの上面を回転部材に接触させたとき、シートが少ない状態において回転部材の外周に接するシートの向きを略同じにでき、回転部材の回転によって第2トレイからでも第1トレイの場合と略同様に良好に送り出すことができる。
【0020】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記回転部材から送り出し方向下流側の位置に、当該回転部材により送り出されたシートを挟んで1枚ずつに分離する分離部の少なくとも一方を、前記収容空間の上方において前記一対の本体フレーム間に支持している。これによれば、上記のように第2トレイからで第1トレイの場合と略同様の向きに送り出されたシートが共通の分離部に供給され、分離部において良好に1枚ずつに分離される。
【0021】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向における長さが長く、前記送り出し方向上流側の端部が前記本体フレームよりも下方の一対の拡張部材間に位置している。これによれば、上記のように第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持することを、簡易な構成で実現できる。また、第2トレイ内の圧板上のシート積載量を、第1トレイのそれよりも十分に大きくすることができる。
【0022】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とは、略同じである。これによれば、シートが少ないとき、第2トレイからピックアップ部材により送り出されるシートの角度を、第1トレイからの同角度と略同じにでき、第2トレイからでも第1トレイの場合と略同様に良好に送り出すことができる。
【0023】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記第1トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第1トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比と、前記第2トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第2トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比が略同じである。これによれば、上記のように第2トレイ内の圧板の傾斜角度を、第1トレイ内の圧板の傾斜角度と略同じとする構成を、簡易な構成で実現できる。
【0024】
また、本発明は、上記シート供給装置において好ましくは、前記各トレイには、それぞれの圧板を、その端部を前記ピックアップ部材に対し接近させる方向に駆動する駆動機構が設けられ、前記各トレイの駆動機構は、それぞれの圧板の端部の前記ピックアップ部材に対する接近速度が略同じとする。これによれば、各トレイにおいて、シートがピックアップ部材に接近する際の圧力を揃え、シートの送り出しを良好にすることができる。また、このために、トレイの種類に応じて各駆動機構の制御を切り替える必要がないので、装置の構成を簡易化することができる。
【0025】
さらに、本発明は、前記課題を解決するため、画像形成システムとして以下の構成を採用する。
この画像形成システムは、
(a)上部間に画像形成部を収容する一対の本体フレームと、
該一対の本体フレームの下部間に挟まれる収容空間に収容可能で、所定枚数のシートを収容可能な第1トレイと、
前記収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記第1トレイ内のシート上面に接触可能なピックアップ部材と
を備える仕様の画像形成装置、および
(b)上部間に前記画像形成部を収容する前記一対の本体フレームと、
前記一対の本体フレームの下に取り付けられ、前記収容空間を前記本体フレームの下方へ広げる一対の拡張部材と、
前記第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能で、前記一対の本体フレームの下部間と前記一対の拡張部材間とにまたがった収容空間に配置される第2トレイと、
前記収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記第2トレイ内のシート上面に接触可能な前記ピックアップ部材と
を備える他の仕様の画像形成装置
からなり、
前記各トレイは、前記シートを載置し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、共通の画像形成部、一対の本体フレームおよびピックアップ部材を使用して、一対の本体フレーム間に第1トレイを備えた仕様の画像形成装置と、一対の本体フレームの下に、拡張部材を取り付けることで、第1トレイに代えてそれよりも大容量の第2トレイを備えた他の仕様の画像形成装置とを提供することができる。いずれの仕様においても、共通のピックアップ部材を使用して各トレイから共通の画像形成部へ向けシートを送り出す。このとき、第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持したことで、シートが少ないときの第1トレイ内の圧板の角度に対して第2トレイ内の圧板の角度が著しく大きくなることがなく、両トレイからピックアップ部材により送り出されるシートの方向が略同じになる。したがって、いずれのトレイからでもシートの供給を良好に行うことができる。さらに、第1トレイ全体および第2トレイの上部は、一対の本体フレーム間に位置するから、各トレイと処理部との相対位置を決めやすく、各トレイから処理部へのシートの供給を正確に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、上記画像形成システムにおいて好ましくは、前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向における長さが長く、前記送り出し方向上流側の端部が前記本体フレームよりも下方の一対の拡張部材間に位置している。これによれば、上記のように第2トレイ内の圧板を第1トレイ内の圧板よりもピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持することを、簡易な構成で実現できる。また、第2トレイ内の圧板上のシート積載量を、第1トレイのそれよりも十分に大きくすることができる。
【0028】
また、本発明は、上記画像形成システムにおいて好ましくは、前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とは、略同じである。これによれば、シートが少ないとき、第2トレイからピックアップ部材により送り出されるシートの角度を、第1トレイからの同角度と略同じにでき、第2トレイからでも第1トレイの場合と略同様に良好に送り出すことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、小容量および大容量の各トレイを備えたシート供給システムにおいて、いずれのトレイからも回動する圧板によってシートをピックアップ部材に同様に接近させ、そして、送り出す方向を略同じにして良好に供給することができる。また、小容量のトレイを装着できる本体フレームに小容量のトレイに代えて大容量のトレイを装着したシート供給装置において、大容量のトレイのシートを、小容量のトレイ仕様のものと同様にピックアップ部材に接近させ、良好に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1トレイを備える画像形成装置の縦断面図である。
【図2】第2トレイを備える画像形成装置下部の縦断面図である。
【図3】第1トレイを備える画像形成装置のフレーム構造体を簡略的に示す斜視図(a)と、第2トレイを備える画像形成装置のフレーム構造体を簡略的に示す斜視図(b)である。
【図4】図3(b)のフレーム構造体の左側部分の分解斜視図である。
【図5】図3(b)のフレーム構造体の右側部分の分解斜視図である。
【図6】第1トレイの斜視図である。
【図7】第2トレイの斜視図である。
【図8】フレーム構造体と第1トレイとの関係を説明する正面図である。
【図9】フレーム構造体と第2トレイとの関係を説明する正面図である。
【図10】第1トレイの圧板の駆動機構の側面図(a)、第2トレイの圧板の駆動機構の側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<画像形成装置の全体構成>
本発明を、シート例えば用紙Pに画像を形成する画像形成装置に具体化した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
以下の説明において、方向は、画像形成装置使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって右側を「前側(手前側)」、紙面に向かって左側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「右側」、紙面に向かって手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0033】
図1に示すように、画像形成装置1は、フレーム構造体2に、シートに対して処理を行う処理部すなわち画像形成処理を行う画像形成部4と、その画像形成部4に用紙、OHPフィルムなどのシート(以下、用紙Pという)を供給するためのシート供給部3とを支持している。なお、画像形成装置として、小容量の用紙Pを収容する第1トレイ31を備えるものと、大容量の用紙Pを収容する第2トレイ110を備えるものとの2仕様が存在するが、まず第1トレイを備える画像形成装置1について説明する。
【0034】
フレーム構造体2は、図3(a)に示すように、互いに間隔をおいた左右一対の本体フレーム21の間を、後述する露光部5のフレーム、供給部3のフレーム38、およびタイバー25によって連結した枠構造のものである。各本体フレーム21は、前後方向(後述するトレイのスライド移動方向)と、上下方向とに延在する壁状の部材であり、互いに間隔をおいて平行に立つ。一対の本体フレーム21の上方および側外方は、外装カバー22に覆われ、一対の本体フレーム21間の前面開口部はフロントドア23により開閉可能に覆われている。外装カバー22の上面には、画像形成部4から排出される用紙Pを載置するための排紙トレイ22Aが形成されている。画像形成装置1は、机上に一対の本体フレーム21の下端(好ましくは脚を突出させてもよい)を当接して設置される。
【0035】
画像形成部4は、電子写真方式を用いて用紙上に画像を形成するもので、露光部5、プロセスカートリッジ6、および定着装置7などを備えている。
【0036】
露光部5は、レーザ方式、LED方式などを使用することができる。実施形態では、レーザ方式を用い、一対の本体フレーム21の上部間に橋渡した箱状のフレームに、図示しないレーザ発光部と、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。この露光部5は、レーザビームを、後述する感光ドラム61の表面上に高速走査にて照射する。
【0037】
プロセスカートリッジ6は、フロントドア23により開閉される開口部をとおして一対の本体フレーム21の上部間に着脱可能に支持され、感光ドラム61と、転写ローラ62と、符号を省略して示す帯電器、現像ローラ、層厚規制ブレードおよびトナー収容室とを備えている。
【0038】
このプロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム61の表面が、帯電器により一様に帯電された後、露光部5からのレーザビームの高速走査により露光され、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0039】
次いで、トナー収容室内のトナーが現像ローラによって感光ドラム61の静電潜像に供給されて、感光ドラム61の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム61と転写ローラ62の間で用紙Pが搬送されることで、感光ドラム61上のトナー像が用紙P上に転写される。
【0040】
定着装置7は、符号を省略して示すハロゲンヒータや定着フィルムやニップ板などを備えた加熱ユニット71と、加熱ユニット71のニップ板との間で定着フィルムを挟持する加圧ローラ72とを備えている。そして、このように構成される定着装置7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ユニット71と加圧ローラ72との間を通過する間に熱定着している。
【0041】
なお、定着装置7で熱定着された用紙Pは、定着装置7の下流側に配設される排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ22A上に排出される。
【0042】
<シート供給部>
[第1トレイ31を用いる場合]
シート供給部3は、一対の本体フレーム21の下部間に挟まれる収容空間に着脱可能に装着される第1トレイ31、前記収容空間の上方すなわち第1トレイ31内の用紙Pの前端部上方に配置されたピックアップ部材3、ピックアップ部材33によって送りされた用紙Pを一枚ずつに分離する分離部34、および搬送ローラ36,37などを備えている。
【0043】
第1トレイ31は、一対の本体フレーム21と平行(つまり、後述するトレイのスライド移動方向と平行に)に延在する一対の側壁311と、その一対の側壁311の下端間を連結する底壁314とを有する上面を開放した箱状をなし、用紙を上面に積載する圧板32を内部に備えている。第1トレイ31は、後述するように、一対の本体フレーム21に前後方向(高さ方向と直交する方向であって一対の本体フレーム21と平行な方向)にスライド移動可能に支持されている。
【0044】
ピックアップ部材3は、圧板32上に積載した用紙の上面と略平行な軸線の周りに回転可能で、かつ外周で前記シートの上面と接触可能な回転部材(たとえばローラ、ベルト)または吸引ノズルなどを適用可能であるが、実施形態ではローラ(以下、ピックアップローラという)を使用している。分離部34は、実施形態では用紙を挟むように対向するローラと摩擦パッド35を備えているが、一対のローラ、コーナー爪方式など公知の種々のものを使用することができる。
【0045】
実施形態では、ピックアップローラ3、分離部34のローラ、搬送ローラ36の一方のローラ36B、および搬送ローラ37は、第1トレイ31の収容空間の上方において一対の本体フレーム21間に橋渡して支持、または一対の本体フレーム21間を橋渡す供給フレーム38を介して間接的に本体フレーム21に支持されている。摩擦パッド35および搬送ローラ36の他方のローラ36Aは、第1トレイ31に支持されている。このため、第1トレイ31を前方(図1の右側)へ引き出したとき、分離部34のローラと分離パッド35との間、および、搬送ローラ36間のニップが開放される。なお、摩擦パッド35および搬送ローラ36の他方のローラ36Aは、供給フレーム38に支持されてもよい。
なお、供給フレーム38は、トレイから用紙を画像形成部4へU字形に湾曲して案内する案内経路38Aを有している。供給フレーム38は、下方に第1トレイ31を収容する高さの空間を残して、一対の本体フレーム21間を橋渡しその本体フレームに固定されている。
【0046】
第1トレイ31を画像形成装置1内に装着した状態において、第1トレイ31内の用紙Pは、ピックアップローラ33の回転により送り出され、分離部34で一枚ずつに分離される。その後、用紙Pは、搬送ローラ36,37により画像形成部4に搬送される。搬送ローラ37は、画像形成部4の上流側でいわゆるレジストローラとして機能し、用紙Pの先端の移動を一時的に止めて、用紙の斜行補正をするとともに、画像形成部4に対して所定のタイミングで送り出す。
【0047】
[第2トレイ110を用いる場合]
第1トレイ31よりも容量の大きい第2トレイ110を用いる仕様の画像形成装置100の場合、図3(b)に簡略的に示すように、一対の本体フレーム21の下にそれぞれ拡張部材200が連結固定される。すなわち、一対の本体フレーム21の下部の間に形成される第1トレイ31のための収容空間を下方へ広げるように、一対の本体フレーム21の下に一対の拡張部材200が配置される。第2トレイ110は一対の本体フレーム21の下部間と一対の拡張部材200間とにまたがって収容される。つまり、第2トレイ110は、上下方向において第1トレイ31よりも高く(内容積では深く)構成されている。
【0048】
フレーム構造体は、左右一対の本体フレーム21の間を、露光部5のフレームおよび供給部3のフレーム38によって連結した点では、前述した仕様の画像形成装置1と同様であるが、タイバー25を省略し、一対の拡張部材200の下端間を複数のタイバー210によって連結した構造である。一対の拡張部材200は、一対の本体フレーム21の前後方向長さにわたって延在する部材であり、本体フレーム21と同様に樹脂製のもので、画像形成部4はじめ各種装置を支持する十分な強度を有している。この仕様の画像形成装置は、机上に一対の拡張部材200の下端(好ましくは脚を突出させてもよい)を当接して設置される。
【0049】
画像形成部4、第1トレイ31を除くシート供給部3、およびそれらの駆動機構などは、大容量トレイ仕様の画像形成装置100と、小容量トレイ仕様の画像形成装置1とで共通のものが用いられる。外装カバー22は、本体フレーム21および拡張部材200からなるフレーム構造体を覆う大きさに形成される。
【0050】
第2トレイ110は、一対の本体フレーム21および拡張部材200に対向する一対の側壁111と、一対の側壁111の下端間を連結する底壁112とを有する上面を開放した箱状をなし、用紙を上面に積載する圧板132を内部に備えている。また、第2トレイ110は、前述した第1トレイ31に設けた摩擦パッド35および搬送ローラ36Aと略同様の構成となる摩擦パッド135および搬送ローラ136Aを備えている。なお、図2において、図1と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。また、図1および図2においては、便宜上、圧板32,132の動作前後の状態を両方とも図示する。
【0051】
[第1圧板32および第2圧板132]
第1圧板32および第2圧板132は、各トレイを画像形成装置に装着した状態において、その後端32A,132Aがピックアップローラ33から送り出し方向上流側に離れた位置で、各トレイ31,110の側壁内面に水平な軸32C,132Cの回りで回動可能に支持され、ピックアップローラ33と対向する前端32B,132Bがピックアップローラ33に向け接近離隔する方向に上下動するように構成されている。そして、第2圧板132を支持する軸132Cは第1圧板32を支持する軸32Cよりもピックアップローラ33から送り出し方向上流側に遠くにあり、第2圧板132は、第1圧板32よりも用紙Pの搬送方向に長く形成されている。
【0052】
各トレイにおいて、その高さ相当の用紙を収納するために、軸32C,132Cは各トレイの底壁近く、すなわち第1トレイ31の場合本体フレーム21の下端近くに位置し、第2トレイ110の場合本体フレーム21よりも下方の一対の拡張部材200間に位置している。このため、第2圧板132は、前端132Bをピックアップローラ33に最も接近させたとき、側面視において本体フレーム21の下端を横切るように延在する。
【0053】
このように第2圧板132を第1圧板32よりも長く形成することで、第2圧板132の前端132Bがピックアップローラ33に最接近した角度(第2圧板132の最大角度)を第1圧板32の最大角度と略同じにすることが可能になる。これにより、第2圧板132とピックアップローラ33の間から送り出される用紙Pの先端が、第1圧板32とピックアップローラ33の間から送り出される用紙Pの先端と略同様の角度で分離部34、およびフレーム38に形成した案内経路38Aに向かせることができ、用紙Pの供給、分離を良好に行うことができる。
【0054】
詳しくは、図1,2に示すように、第1圧板32の長さ(軸32Cから前端32Bがピックアップローラ33と対向する位置までの長さ)L1に対する、第1圧板32がトレイ31の底面31Aに沿う略水平位置からピックアップローラ33までの高さH1の比(L1:H1)と、第2圧板132の同長さL2に対する同高さH2の比(L2:H2)が略同じになるように構成されている。言い換えると、第1圧板32が底面31Aに対して最大に傾いたときの角度θ1と、第2圧板132が底面110Aに対して最大に傾いたときの角度θ2が略同じになるように構成されている。
【0055】
これにより、各トレイ31,110内において少なくなった用紙Pのピックアップローラ33に対する角度を、各トレイ31,110で略同じ角度にすることができるので、各トレイ31,110から分離部34および案内経路38Aに向かう用紙の角度を略同じにでき、用紙Pの供給、分離をより良好に行うことが可能となっている。
【0056】
[第1レール部R1および第2レールR2]
小容量の第1トレイ31は、一対の本体フレーム21の下部にそれぞれ形成された第1レール部R1に、前後方向にスライド移動可能に支持されている。第1レール部R1は、本体フレーム21の対向面に外方へ凹んだ溝状に形成され、本体フレーム21の前後方向長さにわたって延在している。第1トレイ31は、その左右両側壁311の外面に略水平に突出形成された突壁312を有し、その突壁312を第1レール部R1に前後方向にスライド移動可能に挿入して支持されている。なお、第1レール部R1は、突壁312の下面を支持する壁があればよいから、上記のように突壁312を上下から挟む溝状である必要はない。
【0057】
大容量の第2トレイ110は、一対の拡張部材200の下部にそれぞれ形成された第2レールR2に、前後方向にスライド移動可能に支持されている。第2レールR2は、一対の拡張部材200の下部からそれぞれ対向する方向に突出し、かつ第2トレイ110の底壁112の下側へ延びており、また本体フレーム21の前後方向長さにわたって延在している。なお、第2トレイ110も、第1トレイ31と同様に底壁から略水平に突出形成された突壁を、拡張部材200に凹んだ溝状に形成された第2レールR2に挿入して支持してもよい。
【0058】
第2トレイ110の上端は、ピックアップローラ33に対して第1トレイ31の上端と略同様の高さにある。つまり、第2トレイ110は拡張部材200の高さの分だけ第1トレイ31よりも深く形成され、第1トレイ31に収容される用紙Pの枚数(例えば、積載最大枚数250枚)よりも多くの枚数(例えば、積載最大枚数500枚)の用紙Pを収容可能となっている。
【0059】
拡張部材200によって支持される第2トレイ110は、その側壁を一対の第1レール部R1よりも高い位置まで延ばしているが、第1レール部R1に干渉しない。なお、第1レール部R1が、一対の本体フレーム21の対向面にそれぞれ外方へ凹んでいるので、第2トレイ110の側壁を、第1レール部R1に対し回避させることなく、本体フレーム21および拡張部材200の対向面に接近させることができ、一対の拡張部材200の間隔を小さく、すなわちプリンタ全体を小型にすることができる。また、拡張部材200によって大容量トレイ110の下側が支持されるので、例えば大容量トレイの上側が第1レール部R1に支持される構造に比べ、大容量トレイ110の歪みを抑えることが可能となっている。
【0060】
また、図5に示すように、第1レール部R1の前端部R11は、前側に向かうにつれて上下方向に広がるように形成されている。これにより、第1トレイ31の突壁312を第1レール部R1内に挿入しやすくなっている。同様に、一対の本体フレーム21の前端部の対向面、および拡張部材200のの前端部の対向面を、それぞれ左右方向に広がるように形成することで、第1トレイ31および第2トレイ110を挿入しやすくなる。
【0061】
[圧板の駆動機構]
第1トレイ31および第2トレイ110には、第1圧板32および第2圧板132を上下駆動するための第1駆動機構410および第2駆動機構420が設けられている。第1および第2駆動機構410,420としては、バネなどにより第1圧板32および第2圧板132をピックアップローラ33に向け押し上げる構成を用いることができるが、実施形態では、本体フレーム21に設けた駆動源46により第1圧板32および第2圧板132を上下駆動する。
【0062】
具体的には、第1トレイ31において、圧板32の下に、水平軸線のまわりに回動可能な押上部材412が設けられ、その押上部材の回動軸線と同軸上に扇型ギア413が連結され、さらに、その扇型ギアを回転させる入力ギア411、および中間ギヤ414が設けられている。その各ギヤは、第1トレイ31の一方の側壁311に支持されている。第2トレイ110にも、同様の構成の押上部材422、扇型ギア423、入力ギア421、および中間ギヤ424が設けられている。各トレイ31,110において、各ギヤは、同じ側の側壁311,111に支持されている。
【0063】
第1トレイ31および第2トレイ110は、画像形成装置に装着したとき、入力ギア411,421を、一方の本体フレーム21に設けた共通の駆動ギア415(図10)とかみ合う位置に備える。両トレイは、深さ(側壁の高さ)を異にするので、中間ギヤ414,424の位置を互いに異にする。両トレイにおいて入力ギア411,421および中間ギヤ414,424は共通部品であることが好ましいが、異なるものであってもよい。
【0064】
駆動ギア415は、本体フレーム21に設けられたモータなどの駆動源46によって駆動される。駆動ギア415により入力ギア411,421が回転させると、中間ギヤ414,424を介して扇型ギア413,423が回動し、押上部材412,422が扇型ギア413,423の回動中心を中心として回動し、押上部材412,422の前端が圧板32,132を押上げ、圧板32,132をピックアップローラ33に接近させる。圧板32,132上に載置された用紙Pの最上面が、ピックアップローラ33に接触する高さに達すると、公知のようにセンサが用紙Pの最上面の高さを検出し、駆動ギア415の回転を停止させる。用紙Pの送り出しにより用紙Pの最上面の高さが下がったことをセンサが検出すれば、再び駆動ギア415を回転させて圧板32,132を上昇させる。
【0065】
なお、第1トレイ31と第2トレイ110とでは、第1駆動機構410による第1圧板32の前端32Bの上昇速度(すなわち、ピックアップ部材に対する接近速度)と、第2駆動機構420による第2圧板132の前端132Bの上昇速度とが、同じになるように構成されている。たとえば、入力ギア411,421、中間ギヤ414,424、扇型ギア413,423からなるギア列の設定が、両駆動機構410と420とで異なる。
【0066】
具体的には、第2トレイ110の押圧部材422は、その長さが、第1トレイ31の押圧部材412の長さよりも長く形成され、第2駆動機構420の扇型ギア423は、第1駆動機構410の扇型ギア413よりも半径が大きく形成されている。これにより、第2圧板132の角速度が第1圧板32の角速度よりも遅くなるので、長さの異なる各圧板32,132の前端32B,132Bの上昇速度を同じにすることが可能となっている。
【0067】
このように各圧板32,132の前端32B,132Bの上昇速度を同じにすることで、用紙Pがピックアップローラ33に接触する際の圧力を揃えることができる。また、このために、トレイの種類に応じて各駆動機構410,420の制御を切り替える必要がないので、トレイの種類を検知するセンサなどが不要となり、装置の構成を簡易化することが可能となっている。
【0068】
[トレイの位置決め部]
各トレイ31,110において左右両側壁311,111のスライド移動方向に延在する外側面には、外方に突出した位置決め突部313,113が設けられ、これに対応する本体フレーム21の対向面には、位置決め凹部213が設けられている。各トレイ31,110において、位置決め突部313,113は、用紙搬送方向の前端寄り、つまりトレイ31,110を画像形成装置に装着した状態においてピックアップローラ33寄り位置に設けられている。言い換えると、位置決め突部313,113は、側面視において摩擦パッド35の近傍であって、トレイが異なっても摩擦パッド35および搬送ローラ36A,136Aからそれぞれ略同距離に位置する。
【0069】
位置決め凹部213は、本体フレーム21にその前端と対向方向との2面を開放して形成され、トレイのスライド移動によって位置決め突部313,113を、前端の開放側から受け入れる。位置決め凹部213は、位置決め突部313,113を嵌合した状態で、同突部に3方向から当接する位置決め面を有する溝状に形成されている。すなわち、第1の位置決め面213Bは、凹部213の下面を構成しスライド移動方向に延びる面であって、同突部に対し高さ方向下方から当接する。第2の位置決め面213Aは、凹部213の奥端面を構成し第1の位置決め面213Bと略直交して位置する面であって、同突部とトレイのスライド移動方向において当接する。第3の位置決め面213Cは、凹部213のスライド移動方向に延びる縦面であって、第1および第2の位置決め面213B,213Aとほぼ直交して位置し、同突部の先端と当接する。位置決め凹部213は、上面も開放した形状であってもよい。
【0070】
したがって、各トレイ31,110は、画像形成装置に装着したとき、位置決め突部313,113が位置決め凹部213に進入する際、第1の位置決め面213Bに下方から受けられることで、各トレイ31,110の前端側が上下方向において位置決めされ、ピックアップローラ33に各圧板32,132の前端32B,132Bが、分離部34のローラに摩擦パッド35が、搬送ローラ36Bにローラ36A,136Aがそれぞれ、上下方向において位置決めされる。また、位置決め突部313,113が奥端の第2の位置決め面213Aに当接することで、それら各部がそれぞれ、前後方向において位置決めされる。さらに、位置決め突部313,113先端の先端が、第3の位置決め面213Cと当接して、それら各部が左右方向において位置決めされるだけでなく、その位置近傍における、トレイ31,110の左右両側面とそれに対向する一対の本体フレーム21の面との間に間隔をあけ、スライド移動の際、両面が擦ることなく、スライド移動を円滑にする。
さらに、入力ギア411、421も駆動ギア415に対して同様に正確に位置決めされる。
【0071】
このように、第1トレイ31のみならず、拡張部材200で支持する第2トレイ110も、本体フレーム21に設けた位置決め凹部213に共通に位置決めされるので、トレイが異なっても、用紙とピックアップローラ33、分離部34および供給経路38Aとの関係が同等に維持され、同等の給紙性能を達成することできる。
【0072】
なお、位置決め突部313,113を本体フレーム21に、位置決め凹部213をトレイ31,110に設けるようにしてもよい。また、位置決め突部313,113が第1の位置決め面213Bに下方から受けられたとき、トレイ31,110の前方部分は、レール部R1,R2から浮き上がった状態にあってもよい。
【0073】
さらに、位置決め部313と突壁312は、入力ギヤ411、扇型ギア413および中間ギヤ414よりも左右方向外側に突出している。これにより、第1トレイ31を取り外して床等に置く際に、第1トレイ31が斜めになって左側の側壁311が床等に干渉した場合であっても、突壁312等によってギヤ411等が保護される。また、突壁312を駆動ギヤ411よりも外側に突出させているので、駆動ギヤ411の回転により生じる力を突壁312によって良好に受けることができる。
【0074】
<実施形態のまとめ>
以上のように構成することで、本体フレーム21および画像形成部4などを共通に使用して、小容量の第1トレイ31を使用する仕様と、大容量の第2トレイ110を使用する仕様の画像形成装置を構成することができるシート供給システムを提供することができる。つまり、一般的に使用される第1トレイ31を備える画像形成装置1の需要があるときは、本体フレーム21に第1トレイ31を組み合わせ、第2トレイ110を備える画像形成装置100の需要があるときは、本体フレーム21に拡張部材200を連結して第2トレイ110を組み合わせる。さらに、いずれのトレイからもピックアップ部材により送り出されるシートの方向が略同じになり、シートの供給を良好に行うことができる。また、第1トレイ31全体および第2トレイ110の上部は、一対の本体フレーム21間に位置するから、各トレイと画像形成部4との間に介在する部材を少なくでき、その結果、相対位置を決めやすくなり、各トレイから画像形成部4へのシートの供給を正確に行うことができる。
【0075】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、第1レール部R1を溝状、第2レール部R2を凸状としたが、本発明はこれに限定されず、凹凸関係は適宜逆にしてもよい。
【0076】
前記実施形態では、2種類のトレイを用いたが、3種類以上のトレイを用いることもできる。その場合、トレイの深さに応じて高さの異なる拡張部材200を用意する。
【0077】
前記実施形態では、シート供給システムおよびシート供給装置を画像形成装置に適用したが、シートを供給するためのシステムや装置等であれば、画像読取装置などどのようなものにも本発明を適用することができる。また、画像形成装置としては、電子写真方式に限らず、その他の画像形成方式、例えば感熱方式、インク滴噴射方式などであってもよい。また複写機や複合機などの一部をなす画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
2 フレーム構造体
21 本体フレーム
31 第1トレイ
32 第1圧板
33 ピックアップローラ
34 分離部
110 第2トレイ
132 第2圧板
132A 後端
132B 前端
200 拡張部材
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定枚数のシートを収容可能な第1トレイと、当該第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能な第2トレイとを備え、前記第1トレイと前記第2トレイとのいずれかを共通のピックアップ部材に対して装着し、前記各トレイ内のシートを前記ピックアップ部材により送り出すシート供給システムであって、
前記各トレイは、前記シートを積載し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とするシート供給システム。
【請求項2】
前記各トレイから送り出されたシートに対し処理を行う処理部を支持し、前記処理部の下部に前記第1トレイを収容する収容空間を挟んで位置する一対の本体フレームと、
前記一対の本体フレームの下に取り付け可能であり、前記収容空間を前記第2トレイを収容可能な大きさまで広げるための拡張部材とをさらに備え、
前記ピックアップ部材は前記本体フレームに支持されていることを特徴とする請求項1に記載のシート供給システム。
【請求項3】
前記ピックアップ部材は、前記一対の本体フレーム間に支持され、前記各圧板に載置された前記シートの上面と略平行な軸線の周りに回転可能で、かつ外周で前記シートの上面と接触可能な回転部材であることを特徴とする請求項2に記載のシート供給システム。
【請求項4】
前記回転部材から送り出し方向下流側の位置に、当該回転部材により送り出されたシートを挟んで1枚ずつに分離する分離部の少なくとも一方を、前記一対の本体フレーム間に支持していることを特徴とする請求項3に記載のシート供給システム。
【請求項5】
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向における長さが長いことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシート供給システム。
【請求項6】
前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とは、略同じであることを特徴とする請求項5に記載のシート供給システム。
【請求項7】
前記第1トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第1トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比と、前記第2トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第2トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比が略同じであることを特徴とする請求項6に記載のシート供給システム。
【請求項8】
前記各トレイには、それぞれの圧板を、その端部を前記ピックアップ部材に対し接近させる方向に駆動する駆動機構が設けられ、
前記各トレイの駆動機構は、それぞれの圧板の端部の前記ピックアップ部材に対する接近速度が略同じであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシート供給システム。
【請求項9】
所定枚数のシートを収容可能な第1トレイを収容可能な収容空間を下部間に挟むように配置される一対の本体フレームと、
前記一対の本体フレームの下に取り付けられ、前記収容空間を前記本体フレームの下方へ広げる一対の拡張部材と、
前記第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能で、前記一対の本体フレームの下部間と前記一対の拡張部材間とにまたがった収容空間に配置される第2トレイと、
前記一対の本体フレームの下部間の収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記各トレイ内のシート上面に接触可能なピックアップ部材と
を備え、
前記各トレイは、前記シートを載置し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とするシート供給装置。
【請求項10】
前記ピックアップ部材は、前記収容空間の上方において前記一対の本体フレーム間に支持され、前記圧板に載置された前記シートの上面と略平行な軸線の周りに回転可能で、かつ外周で前記シートの上面と接触可能な回転部材であることを特徴とする請求項9に記載のシート供給装置。
【請求項11】
前記回転部材から送り出し方向下流側の位置に、当該回転部材により送り出されたシートを挟んで1枚ずつに分離する分離部の少なくとも一方を、前記収容空間の上方において前記一対の本体フレーム間に支持していることを特徴とする請求項10に記載のシート供給装置。
【請求項12】
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向における長さが長く、前記送り出し方向上流側の端部が前記本体フレームよりも下方の一対の拡張部材間に位置していることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のシート供給装置。
【請求項13】
前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とは、略同じであることを特徴とする請求項12に記載のシート供給装置。
【請求項14】
前記第1トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第1トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比と、前記第2トレイ内の圧板の前記送り出し方向における長さに対する、該圧板が前記第2トレイの底面に沿う位置から前記ピックアップ部材までの高さの比が略同じであることを特徴とする請求項13に記載のシート供給装置。
【請求項15】
前記各トレイには、それぞれの圧板を、その端部を前記ピックアップ部材に対し接近させる方向に駆動する駆動機構が設けられ、
前記各トレイの駆動機構は、それぞれの圧板の端部の前記ピックアップ部材に対する接近速度が略同じであることを特徴とする請求項9から14のいずれかに記載のシート供給装置。
【請求項16】
(a)上部間に画像形成部を収容する一対の本体フレームと、
該一対の本体フレームの下部間に挟まれる収容空間に収容可能で、所定枚数のシートを収容可能な第1トレイと、
前記収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記第1トレイ内のシート上面に接触可能なピックアップ部材と
を備える仕様の画像形成装置、および
(b)上部間に前記画像形成部を収容する前記一対の本体フレームと、
前記一対の本体フレームの下に取り付けられ、前記収容空間を前記本体フレームの下方へ広げる一対の拡張部材と、
前記第1トレイよりも深く形成されて前記所定枚数よりも多いシートを収容可能で、前記一対の本体フレームの下部間と前記一対の拡張部材間とにまたがった収容空間に配置される第2トレイと、
前記収容空間の上方に配置され、前記収容空間に配置されている前記第2トレイ内のシート上面に接触可能な前記ピックアップ部材と
を備える他の仕様の画像形成装置
からなり、
前記各トレイは、前記シートを載置し当該シートを前記ピックアップ部材に接近させるべく、前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に離れた位置で回動可能に支持され、前記ピックアップ部材と対向する端部が前記ピックアップ部材に対し接近離隔するように上下動する圧板をそれぞれ備え、
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記ピックアップ部材から送り出し方向上流側に遠い位置で回動可能に支持されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項17】
前記第2トレイ内の圧板は、前記第1トレイ内の圧板よりも前記送り出し方向における長さが長く、前記送り出し方向上流側の端部が前記本体フレームよりも下方の一対の拡張部材間に位置していることを特徴とする請求項16に記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記第1トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度と、前記第2トレイ内の圧板がその端部を前記ピックアップ部材に対し最接近させた状態の当該圧板の傾斜角度とは、略同じであることを特徴とする請求項17に記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32217(P2013−32217A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248469(P2011−248469)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】